「Nothing」と一致するもの

Jun Togawa - ele-king

 Youtuberとしてすっかりお馴染みになった戸川純が久々にライヴの現場に戻ってきます。今週、土曜日。フレディーマーキュリーの誕生日です。

 この日は11回目を迎える「無機質な狂気」というはっちゃけたイヴェントで、戸川純と頭脳警察、そして町田康率いる汝、我が民に非ズの3バンドがドドーンと共演いたします。上を下への大騒ぎになりそうですね。そして、9月23日には〈JET SET〉が『20TH JUN TOGAWA』を初めてアナログ盤でリリースします。戸川純が20周年を記念してGOD MOUNTAINからリリースした洋楽のカヴァー集。パティ・スミスのアレやスラップ・ハッピーのアレなど、戸川純が影響を受けた20世紀の名曲がついにヴァイナルになってしまいます。アナログ・レコードの匂いを嗅ぐのが好きな人はたまりませんね。ちゃんと曲名を教えろよというクレーマーのような方はここをクリックして下さい。そのまま購入画面に進めます→https://www.jetsetrecords.net/i/814005776069/

 噂によると9/12発売の別冊少年チャンピオンでも掟ポルシェ。の連載に戸川純のインタヴューが掲載されるそうです。内容は不明です。いま再びギャグマンガの最高峰と化している少年チャンピオンに戸川純と掟ポルシェ。ですよ。時代は何周すれば気がすむんでしょう。阿部共実も載ってるし→https://www.akitashoten.co.jp/b-champion

ライヴ詳細

9/5(土)渋谷クアトロ「無機質な狂気 第11夜」
開場17:00 開演17:30
チケットは完売。配信チケットのみ発売中。
https://w.pia.jp/t/mukisitunakyouki
戸川純は、アーカイブはありません。

出演

汝、我が民に非ズ
Vo.町田康/Sax.浅野雅暢/Key.大古富士子/Gt.中村’JIZO’敬治/Ba.瀬戸尚幸/Dr.高橋結子

頭脳警察
PANTA/TOSHI/澤 竜次/宮田 岳/樋口素之助/おおくぼけい

戸川純
Vo.戸川純/Ba.中原信雄/Key.ライオン・メリィ/Dr.矢壁アツノブ/Key.山口慎一/Gt.ヤマジカズヒデ

O.A. 赤いくらげ

DJナカムラルビイ

Ai Aso - ele-king

 サンO)))スティーヴン・オマリーが〈editions Mego〉傘下で主宰する〈Ideologic Organ〉からリリースされたシンガーソングライター朝生愛の新作『The Faintest Hint』を繰り返し聴いている。「音楽」と「音の間」、そして「個」と「無」のあいだを揺れ動くような声とギターが心地良い。
 オマリーと Boris の Atsuo がプロデュースを手掛け、ミックスとマスタリングを中村宗一郎が担当しているのだから、サウンドも悪いはずがない。名盤という言葉すら出てしまいそうなほどである。ちなみに Boris も “Scene”、“Sight” の2曲に参加している。

 〈Ideologic Organ〉からのリリースは本作が2014年の『Lone』から続いて2作目だが、日本の〈Pedal Records〉から『Lavender Edition』(2004)、『Umerumonoizen』(2005)、『カモミールのプール = Chamomile Pool 』(2007)、〈P.S.F. Records〉から『あいだ = Aida』などの素晴らしいアルバムをリリースしている。
 フォークからサイケ、ポップスまで、さまざまな音楽の深い理解を示している朝生愛の音楽は、とてもシンプルだが、同時に豊穣でもある。かすかな音の連なりだが、存在する力もある。音楽の構造だけではなく、響きや空間性をとても意識しているからだろう。声とギターが重なって鳴るとき、その「あいだ」の感覚が豊穣なのである。思わず金延幸子とギャラクシー500を継承するような音楽として、などと安易に語りたくなってくるが、しかしその音楽を聴きはじめると、そんな戯言などまったく無意味なことに気が付く。なぜならここには「朝生愛の音楽」が、ただただ、ごく当たり前に存在しているからである。

 音の響きをたしかめるようにゆっくりとギター演奏される1曲め “Itsumo” の、その最初の一音からして他にはない個の音楽が鳴っている。この曲にはアルバム全体を通底するトーンと旋律の原型がある。間奏の素朴なシンセサイザーと微かなノイズも楽曲を彩る。Boris の静謐なアンサンブルが麗しい2曲め “Scene” も彼女の音楽は自然に存在している。朝生愛は、自分の音楽をただ鳴らしている。アルバム中、屈指の名曲といえる4曲め “I’ll do it my way” の歌詞にある「わたしの泳ぎ方」とでもいうべき音楽。つつましく、かすかで、しかし、強い意志を持ってアルバムの最初から終わりまでたしかに存在している音楽。私たち聴き手は、その事実に静かな衝撃を受け、口をつぐみ、ただ、その音に耳を澄ますことしかできなくなるだろう。

 そのような朝生愛の音楽の本質である「ほかにない個の音楽」を際立たせるオマリーと Boris の Atsuo によるプロデュース・ワークも的確である。ミニマルなアンサンブル、微かなノイズ、控えめなシンセサイザーが、その「声」の重なるとき、「空間的」、つまり「あいだにあるもの」としか言いようがないサウンドが生まれているのだから。簡素なメロディとシンプルにして幽玄な放つアコースティック・ギターの響きは、透明な空気や水のように空間と感覚に浸透していく。
 ドローンな音響が鳴り響く8曲め “Sight” が終わったあと、アルバム最終曲である9曲め “0805” のアコースティック・ギターと声の静謐なレイヤーが鳴りはじめたとき、このアルバムの本質である「あいだ=間」の概念がもっとも象徴的に実現している。

 朝生愛の音楽は必要最小限の声とギターで成立するミクロコスモスだ。声とギターの「あいだ」を聴くこと。微かにうごめくかすかな音とノイズに耳を澄ますこと。ジュディ・シル、マーク・フライ、リンダ・パーハクスなどと比べてもまったく遜色のない白昼の光のごときエクスペリメンタル・フォークの誕生である。

Banksy - ele-king

 バンクシーが北アフリカから欧州を目指す難民たちを乗せた救助船に資金調達したことがいま話題になっている。ピンクに塗られたその大きな船は、任務遂行のために8月18日にスペインのヴァレンシアを出港し、地中海の真ん中なかで、子ども4人を含む89人を救った。

 フランスのアナキスト/フェミニストの名前にちなんで「ルイズ・ミシェル」と名付けられたその船には、救助活動に参加している欧州各地からの活動家が乗っていた。長年にわたって活動してきたドイツの人権活動家、Pia Klemp氏がガーディアンに語ったところによると、あるときいきなりバンクシーから「やあ、Pia。私はあなたのことを新聞で読んだ」というメールが来たという。「私はイギリスのアーティストで、移民危機についてやることがあり、お金を持ってられません。新しいボートか何かを買うために、使ってもらえますか?」
 ドイツ人の活動家も最初は信じられなかったそうだ。バンクシーは救助そのものには関わっておらず、あくまで資金提供のみだったというが……。

 北アフリカからの難民問題は数年前から話題になっている。多くの貧困者たちがヨーロッパを目指し密航し、そして多くの人たちが地中海で死ぬか、あるいはイタリアなどの沿岸警備隊員ボートに見つけられ、リビアの強制収容所に帰されている。2020年だけでもすでに514人の難民が海に溺れ死んだと言われているが、くだんのPia Klemp氏は、2016年〜2018年に1万4千人の溺れそうだった難民を救った。
 先月もバンクシーはパレスチナの病院への資金援助ため一連の絵をチャリティ競売にかけて寄付している。日本では小池都知事にまで愛でられ、コンビニ雑誌でも特集され、政治的でイケているグラフィティ・アートとして消費されつつあるバンクシーだが、これこそバンクシーだ。

Frankie Knuckles - ele-king

 近々発売される、〈DJ International〉が手掛けるハウスのコンピレーション・シリーズ『Jackmaster』の最新盤「7」に、シカゴ・ハウスのゴッドファザー、フランキー・ナックルズの“Carefree(I Am A Star)”が収録され、これがシングル・リリースされる。

 シングルには、ロッキー・ジョーンズ(レーベルのボス)とチップ・Eによるリミックスも収録されるそうです。

Lotic - ele-king

 ロンドンの〈Houndstooth〉と契約したロティックの新曲“Cocky(生意気)”がやばいです。

 これは5月に発表した“Burn A Print”に続く新曲で、ロティックはコンセプトについてこう話している。「女の子たちのための歌。いつもあなたが自分の価値を把握して、それを自分で認めてあげるためのリマインダー。もしショッキングだったり気に障るようなものに聞こえたとしても、この歌はあなたがそもそも自分に嘘をつかないでいられるよう手助けするもの。そして何よりこの歌は、あなたが成長して、成功して、自信を持つことを祝福している」
 うーん、アルバムが楽しみです。

KGE THE SHADOWMEN - ele-king

 ラッパーとして、すでに20年以上のキャリアを持つ KGE THE SHADOWMEN (カゲ・ザ・シャドメン)。ソロとしてはもちろんのこと、千葉出身のアーティストを中心に結成されたクルー、TEAM 44 BLOX の一員としての活動や、DJ/プロデューサーである HIMUKI とのユニット、KGE & HIMUKI では通算3枚のアルバムをリリースするなど、様々な形で作品制作やライヴを行なってきた。その一方で、彼のことをいわゆる「客演キング」として認識している日本語ラップ・ファンも多いだろう。特に印象深かったのが仙台のグループ、GAGLE のアルバムに収録されたふたつの曲 “舌炎上” (2014年『VG+』収録)と “和背負い” (2018年『VANTA BLACK』収録)だ。日本のヒップホップ・シーンでもテクニカルなラップで評価の高い GAGLE の HUNGER と互角に渡り合い、さらに “和背負い” では天性のスキルと強烈な個性を持つラッパー、鎮座DOPENESSを交えた3MCによるセッションが実にスリリングかつ凄まじい格好良さで、個人的にも KGE THE SHADOWMEN のソロを待ちわびていた感すらある。そのタイミングでリリースされた、ソロ名義では11年ぶりのリリースとなる2ndアルバム『ミラーニューロン』だが、こちらの期待を軽く上回る素晴らしい快作である。

 KGE THE SHADOWMEN のラップの魅力は巧みなフロウとラップが映える声の良さで、そこに説得力あるリリックが重なれば、もはや怖いものはない。アルバムの冒頭を飾る “俺のHIPHOP” はそれらの要素が全てが合わさった1曲で、16FLIPISSUGI)によるキックの効いたトラックに乗せて、ヒップホップに捧げた紆余曲折な人生を振り返りながら、自らの深い覚悟を宣言する。この曲に限らず、本作での彼のアティチュードは実に自然体で、無理に虚勢を張ったりもせずに、自分の弱ささえも包み隠さず言葉にする。決して短くはないアーティストとしてのキャリアが、いまの自然体な彼を作り上げているのは間違いないが、そんな嘘のない言葉だからこそ、彼のリリックは実にストレートに心に突き刺さってくるし、特に30代、40代と年を重ねたリスナーであれば共感できる部分も大いに違いない。特に家族へ捧げた “こんな俺だけど” や “ジャム&マーガリン” での KGE THE SHADOWMEN の言葉が持つ力と暖かさは、決して誰にでも表現できるものではないだろう。

 「客演キング」であるがゆえに、本作にも当然、ゲスト勢が多数参加しており、注目はやはりすでに名前の出ている HUNGER と鎮座DOPENESSだろう。HUNGER と GOCCI (LUNCH TIME SPEAX)が参加した “葉隠” でのハイプレッシャーなマイクリレーは迫力十分。さらに度肝を抜かれたのが鎮座DOPENESSとの “TRANCE注意報” で、Grooveman Spotの金属質でエッジの効いたトラックにふたりが変幻自在に言葉を放ち、カオスな空間を作り出す。他に SONOMI、CHIYORI、菅原信介と3人のシンガーをそれぞれゲストに迎えているのだが、いずれも異なるタイプの曲でいずれも見事な出来だ。ちなみにプロデューサーも多彩なメンツを揃えているのだが、個人的には DJ Mitsu the Beats のシンプルなループが実に心地良く響く “毎日Walkin'” がラスト・チューンとしても実にしっくりきて、好みな一曲。実は7分以上もあるのだが、この曲のように、良い意味でマイペースに彼のラッパーとしての活動がこれからも続いていくことを期待したい。

Pole - ele-king

 ヴラディスラフ・ディレイの新作も迫力あったし、ベアトリス・ディロンはUKだけど彼女のアルバムにはベルリンのミニマル・ダブからの影響を感じたし、そしてPole(ポール)の5年ぶりの新作もかなり良さげです。

 1998年に登場したPoleことステファン・ベトケは、当時数多あるベーシック・チャンネルのフォロワーたちのなかでも抜きんでた存在のひとつで、彼自身のレーベル〈~scape〉の展開とともにミニマル・ダブを進化させたイノヴェイターでもある。2003年に〈ミュート〉から5枚目のアルバムを出しているが、この度はそれ以来の同レーベルからのリリースで、5年ぶり9枚目のアルバムとなる。(2017年にはベルリンの前衛シーンの伝説、コンラッド・シュニッツラーとの共作も出している)

 新作のタイトルは『フェイディング』。“記憶の喪失”がコンセプトで、ふとケアテイカーを思い出す人もいるかと思うが、認知症になった母親が作品の契機にあるそうだ。「自分の母親が当時認知症にかかっていて、彼女が91年にもわたって積み上げてきた彼女の記憶すべてを無くしていく様子を見ていたんだ。まるでその様は、生まれたてで彼女の人生がはじまったばかりのような感じに思えた。まさしく、まだ中身が空っぽの箱のような」
 それでサウンドはどうかと言えば、アンビエント、ダブ、そしてジャズが少々といった感じの構成だが、音の空間性が素晴らしく、その重いテーマに対して音は決して重々しくはない。クラブで鳴らすというよりは、あきらかに家で聴く音楽で、これは注目してもいいでしょう。リリースは11月6日(金)です。

■「Röschen」 (Official Audio)

Pole
Fading

Mute/トラフィック

https://smarturl.it/pole2020
https://www.facebook.com/pole.stefanbetke
https://pole-music.com/

interview with Jessy Lanza - ele-king

 ジェシー・ランザは……、いやこれはもう、柴崎祐二君あたりが喜びそうなポストモダン・ポップのアーティストだ。カナダ出身で米国に移住した彼女と、その才能はJunior Boys名義の諸作で保証済みのカナダ在住のプロデューサー、ジェレミー・グリーンスパンとのコンビによって作られるエレクトロ・ポップな音楽は、過去現在のいろんな音楽の美味しいところの組み合わせによって作られているが、今回のアルバムで言えば、アレキサンダー・オニールもその影響に含まれる。
 80年代にポストパンクなんかを聴いていたリスナーからすると、ブラコンの代名詞はその対極の文化だったりするのだが、ジェシーと同じく〈ハイパーダブ〉のミサもジャネット・ジャクソンとブランディなどと言っているし……。もうこれは完全に文脈(歴史)は削除され、その表層(残響)だけが舞い上がっていると、しかしこれが時代におけるひとつのセンスであって、あるいはこれこそヴェイパーウェイヴがはからずとも描いたのであろうリアル無きあとの我らが幻影世界なのだろうけれど、この先の話は柴崎君に任せるとして話をジェシーに戻そう。
 そう、とにかくジェシー・ランザ(&ジェレミー・グリーンスパン)は、そのポストモダン的感性と抜群のミックス・センス(フットワーク、エレクトロ・ファンク、ハウス、ニューオーリンズのバウンス……そしてYMO等々、すべてがフラットな地平における広範囲および多方面からの影響のハイブリッド)によって2016年のセカンド・アルバム『Oh No』を作り上げ、いっきに評価を高めている。たしかに、シカゴのゲットー・ダンスと細野晴臣を混ぜ合わせるというのはなかなかの実験であり、まあ、その前にも彼女はカリブーの『Our Love』(2014)で歌っていたり、あるいは90年代から活動しているベテランのテクノ・プロデュサー、モーガン・ガイストとも共作したりと、シンガーとしての才能は早くから認められてきたのだろう。技巧的にうまい歌手ではないが、彼女には雰囲気があるのだ。
 去る7月、ジェシー・ランザは待望の3枚目『All The Time』をリリースしたばかりで、すでに欧米ではかなりの評判になって露出も多い(なぜか彼女は日本では過小評価されている)。今作をひらたく言えばよりポップになった作品で、まだ世界がコロナでパニックになる直前に聴いた先行発表の“Lick In Heaven”には、ぼくも心躍るものがあった。
 ほかに推薦曲を挙げておくと、フットワーク調の“Face”、ディープ・ハウス調の“Over And Over”、メランコリックなダウンテンポの“Anyone Around”や“Badly”、ブラコンの影響下なのだろう“Alexander”や“Ice Creamy”、あぶく音とアンビエントの“Baby Love”……と、すでにアルバム収録の10曲のうちの8曲も挙げているではないですか。総じてスウィートで、ファッショナブルで、洗練されていて、良く比較されるFKAツィグスより軽妙で、グライムスと違って自身のエゴよりも楽曲が優先されている。息抜きにはちょうど良いアルバムだが、もしジェシー・ランザと対面で話す機会があったら言ってあげたい。君が好きな音楽はその当時はね……いや、でもいまマライア・キャリーやニュー・エディションを聴いたら良かったりするのかな?

見渡してみると、怒っている人ってとても多いのよ。何でそんなに怒ってるの? って思わされる。地下鉄に乗っているときとか、周りにたくさん人がいるからイライラするのは簡単なのよ。

いまNY? カナダ?

JL:いまはシリコンバレーにいる。

シリコンバレーはどんな様子ですか? 後ろに木がたくさん見えますが……

JL:ここ数ヶ月、自分の自宅から離れたところに住んでいるのよ。義家族と一緒に過ごしているから、高校生に戻ったみたい。家の離れにツリーハウスがあるから、そこをスタジオみたいにして使っているの。

この数か月、ほとんどを家で過ごしていると思うんですが、日々どんな風に暮らしていますか?

JL:このツリーハウスをスタジオにするためにいろいろと設置していじったりしていた。それもひと通り落ち着いたから、いまは新しい音楽を作っているところ。『All The Time』のMVを作ったりしていたわ。ツアーができないから、アルバムを出したあともどうにかして忙しくしなきゃって感じ。

作品を出して、ライヴをやって、プロモーションしてという音楽ビジネスのルーティーンがいま通じなくなっていますが、こうした難しい事態をどう考えていますか?

JL:まさにその変化の過程だから、何もわからないっていうのが正直なところ。ライヴができるようになるまでには、まだかなり時間がかかるっていう状況を飲み込んでいる最中ね。幸いなことにいまは家族と一緒にいるから、精神的には安定しているかな。はっきり言って、災難よ。

答えは誰もわからないですからね……。いま、考え中というところでしょうか?

JL:そう。どうすればいいかなあ・・・って、考えているところ(苦笑)。

よく聴いている音楽をいくつか教えて下さい。やはり、ご自宅でもポップに拘った選曲なんでしょうか?

JL:バンドキャンプで友だちの曲を聴くことが多いわ。メインストリームのアーティストではないけど。ただ、音楽を聴くより本を読む時間の方が多いの(笑)。断然多いわね。アルバムが完成したあと、ちょっと疲れちゃって。ベッドに寝転んで本を読んでいたい気分だったのよ。

何を読んでるんですか?

JL:『SNSをやめるべき10の理由』みたいな本(おそらく『今すぐソーシャルメディアのアカウントを削除すべき10の理由』のこと)があるんだけど、それがけっこう面白いのよ。

ツリーハウスでそれを読んでるんですね(笑)。

JL:そうそう(笑)。いま読んでるのはそれで、他にはマヤ・アンジェロウの『歌え、翔べない鳥たちよ』も素敵だった。この2週間で読んだのはその2冊かな。

この状況で悲しくて落ち込むこともあると思うんですが、いまの話だと、そんなときも音楽を聴くよりも本ですか?

JL:そうね。いまはベッドでゆっくり本を読む時間にはまっているの。

『All The Time』はコロナ前に制作された作品ですが、それがコロナ渦にリリースされたことを、あなたはどんな思いで見守っていましたか?

JL:もちろん、もともとはツアーの予定もあったからそれができなくなったのは悲しい。でも、ライヴ配信でDJセットの配信をしたりとか、ツアーに行っていたとしたらできなかったことができた。それはポジティヴなことだと思う。それに、MVにも充分時間がかけられたしね。いつも通りツアーをしていたら、忙しくなって逃していたかもしれないことにゆっくり向き合えたのは、この状況のなかで良かったことね。

でも、こういう暗いご時世において、あなたの音楽はワクワクするものだと思います。その音楽面に関して、ジェレミー・グリーンスパンとあなたはどんな関係性で進めているのですか?

JL:作業自体は別々に進めたわ。私はニューヨークにいて、彼はカナダのハミルトンにいたから。会わないといけないときは私が車でニューヨークからカナダに行ってた。私の家族がカナダにいるから、そういう意味でもちょうど良かったの。週末にカナダまでドライブして、音楽を作って、また車で戻ってくるっていうのは楽しかったわ。彼との曲作りはエキサイティングだし。

ニューヨークからカナダまで車を運転するんですか?

JL:そうなの。ニューヨークで大きなバンを持っていて、それはこっち(シリコンバレー)にも持ってきたんだけど、それで8時間ぐらい。8時間って聞いたら長いけど、運転していると楽しくてあっという間よ。

『Pull My Hair Back』や『Oh No』では、いろんなクラブ・ミュージックを折衷しながら作っていましたが、今作の『All The Time』において参照した音楽があれば教えて下さい。

JL:今回のアルバムを作っているときはセンチメンタルな気分だったのよね。ホームシックになってたし。だから、郷愁を感じるような、エモーショナルなシンガーソングライターの曲なんかが心に刺さってた時期だった。そういう感情をアルバム作りに落とし込んでいたわ。

ということは、具体的な音楽というよりは、そのときの感情を活かして作ったという方が近いでしょうか? もしくは、本や映画からインスピレーションをもらいますか?

JL:本や映画は、音楽作りにかなり影響するわね。映画の映像とかセリフを参考にすることがけっこうある。それと合わせて、怒りの感情を抱いたときに曲を書いたりするの。なんで感情がこんなにかき乱されてるのか、なんでこんな気持ちになっているのかわからなくて、それを消化するために曲を書く感じ。だから、1ヶ月後とかにそのとき自分が作った曲を聴くと、その感情が思いっきり表われてて面白いのよ。

他のアーティストの音楽を聴いて、それを参考にしたり、感化されたりということもあるんでしょうか。もし具体的な例があれば、教えてください。

JL:もちろん、それもある。このアルバムを作っているときは、アレクサンダー・オニールの曲をたくさん聴いていたの。今回、かなり影響を受けたわね。彼の音楽がどんなものか知りたくて、カヴァーしてみたりもして。それを自分の音楽に反映させたの。

たとえば“Face”なんかユニークな曲だと思いましたが、あのリズムはどこから来ているんですか?

JL:あの曲は、モジュラーでいろいろと実験をしていたときにできた曲なの。今回のアルバム作りの前に、機材をたくさん買ったのよ。使い方がわからないものもいろいろ買って、いじってみようと思って。だから、あんな感じでちょっと変わった曲になったの。

そういう実験をしながらレコーディングしたんですか?

JL:そうそう。細切れに録音して、それをあとから組み合わせた。

今回は、よりポップなアルバムを作りたかったの。キャッチーで、みんなに覚えてもらえるような曲を作ることが今回の目標だったから。それがいちばん表われているのが“Lick In Heaven”かなと思うわ。

“Lick In Heaven”をはじめ、今作はより歌のメロディラインがはっきりしているというか、すごく気を遣っていると思ったんですね。やはりそこは意識しました?

JL:今回は、よりポップなアルバムを作りたかったの。キャッチーで、みんなに覚えてもらえるような曲を作ることが今回の目標だったから。それがいちばん表われているのが“Lick In Heaven”かなと思うわ。

ちなみに歌詞についてのあなたの考えを教えて下さい。あなたにとって良い歌詞とはどんなものなのでしょう?

JL:今回のアルバムに関して言えば、全体的に怒りが反映されているのよ。さっきも少し言ったけど、自分がなぜこんなに怒っているのかがわからないっていう感情がすごくあったの。制作当時にね。いつも怒っているような人になりたいわけでは全然ないのに、そうなってしまったから、それを自分の音楽作りに活かしたのね。最終的には、怒りっぽい自分を受け入れてた。(編注:とくに1曲目の“Anyone Around”、そして“Lick In Heaven”にも怒りがあります)

怒りの原因は何だったんですか? 自分でもわからない?

JL:あはは、それがわからないからさらにイライラしたのよ(笑)。原因になるようなことは何もなかったの。具体的にはね。でも、他人の苛立ちに気づいてしまって、それに影響されたっていうのはあるかもしれない。見渡してみると、怒っている人ってとても多いのよ。何でそんなに怒ってるの? って思わされる。アルバムを作っているときもそれを考えてた。ポジティヴに、平和な毎日を送った方がいいってわかってるのに、なんでわざわざ怒るんだろうって。

ニューヨークという、都会にいるときにその怒りを感じていたっていうことですか?

JL:そうね。地下鉄に乗っているときとか、周りにたくさん人がいるからイライラするのは簡単なのよ。いちど気になりはじめたら、ずっと気になってしまう。みんなが敵みたいに思えてくるというか。被害妄想よね。無数の他人の中で毎日過ごすのは、なかなか大変なことだから。

そういう感情を抱えていながら、キャッチーでポップなアルバムを作ったというのが面白いですね。

JL:どのアルバムのときも、そのとき抱えている感情とは逆の音楽性にしたいのよ。今回に関して言えば、自分がずっと醜い状態だったから(笑)、それとは逆の音楽を作りたかった。それが、感情の整理に役立つのよ。そう考えると、これは音楽に関しても歌詞に関しても言えることだけど、自分の感情を昇華させられるようなものがいいものだと思うわ。

この夏はどんな風に過ごす予定ですか?

JL:ずっとこのツリーハウスかな(笑)。カナダにも行きたいけど、アメリカとカナダの移動がまだ無理だから。最初は7月に解禁されるって言われていて、そのあと8月になって、またそれが延期になっちゃった。だから、しばらくはここにい続けるしかないわね。

でもすごく居心地が良さそうですよね。

JL:最高よ。空気もきれいで、ずっといても全然平気な環境だから、ちょうどよかったかも。

また、ライヴ配信などの予定もありますか?

JL:それが次の大きなプロジェクトね。実は、アルバムを最初から最後までプレイする配信を計画中なの。このツリーハウスで、いつもとはちょっと違うセットにしてやろうかなと思ってる。

Tatsuhisa Yamamoto - ele-king

 ジャズ、実験音楽、ロック、エレクトロニック……などなど、あらゆる尖っている音楽シーンで引っ張りだこの前衛ドラマー、山本達久。石橋英子、坂田明、ジム・オルーク、青葉市子、UA、七尾旅人などのバックも務め、カフカ鼾のメンバーとしても活動している。
 先日、9月/10月と山本達久が自身初となるソロ・アルバムを2枚連続でリリースすることが発表された。
 まずは9月18日にオーストラリの実験派オーレン・アンバーチの〈Black Truffle〉から『ashioto』。
 10月7日には日本の〈NEWHERE MUSIC〉から『ashiato』。

Powell - ele-king

 先般、新たなプロジェクト「ƒolder」をスタートさせたばかりのパウウェルが、UKのオンライン・マガジン『The Quietus』の企画で、お気に入りの本を紹介している。遊び心と同時にコンセプチュアルな側面もあわせもつパウウェルであるが、やはり相当な読書家だったようだ。
 なんでも、もう一度音楽をつくりはじめるために、いったん音楽から離れる必要があったとのことで、ここ一年はレコードをほとんど聴かずに、ひたすら哲学や文学を渉猟していたという。「デリダを読むのは好きな音楽を聴くのに似ていて、脳がばらばらに引き裂かれる感じがする」「ドゥルーズはめっちゃ読んだよ。彼は音楽についても多く書いているしね」「ボードリヤールは読み込んできたわけじゃないけど、現実が死んでしまったという彼の考えは、パンデミックのいまこそあてはまる気がする」(意訳)などなど、1冊1冊についてその魅力を語っている。
 カフカやマンなどの小説、以前から好きだと公言していたクセナキスについての本、さらにはサメにかんする本までリストアップされているが(幼いころは海洋生物学者になりたかったらしい)、邦訳のある著作も多いので、気になった方は試しに手にとってみるのもいいかも。

■パウウェルのお気に入りの本

アレクサンダー・クルーゲ『Lernprozesse mit tödlichem Ausgang』
スーザン・ソンタグ『反解釈』&「沈黙の美学」(『ラディカルな意志のスタイルズ』)
ジャック・デリダ『ポジシオン』&『Artaud le Moma』
ジル・ドゥルーズ+クレール・パルネ「英米文学の優位について」(『ディアローグ』)
フランツ・カフカ『城』
スーザン・ケイシー『The Devil's Teeth』
ペーター・スローターダイク『Sphären I – Blasen』
トーマス・マン『ファウストゥス博士』
アルフィア・ナキプベコヴァ「Performing Nomos Alpha by Iannis Xenakis: Reflections on Interpretive Space」(『Exploring Xenakis: Performance, Practice, Philosophy』)
リナ・ボ・バルディ『Stones Against Diamonds』
デイヴィッド・シルヴェスター『フランシス・ベイコン・インタヴュー』
ジャン・ボードリヤール『完全犯罪』
J・H・ロニー兄「もう一つの世界」

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