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KGE THE SHADOWMEN

Hip Hop

KGE THE SHADOWMEN

ミラーニューロン

PYLORHYTHM

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大前至   Aug 27,2020 UP

 ラッパーとして、すでに20年以上のキャリアを持つ KGE THE SHADOWMEN (カゲ・ザ・シャドメン)。ソロとしてはもちろんのこと、千葉出身のアーティストを中心に結成されたクルー、TEAM 44 BLOX の一員としての活動や、DJ/プロデューサーである HIMUKI とのユニット、KGE & HIMUKI では通算3枚のアルバムをリリースするなど、様々な形で作品制作やライヴを行なってきた。その一方で、彼のことをいわゆる「客演キング」として認識している日本語ラップ・ファンも多いだろう。特に印象深かったのが仙台のグループ、GAGLE のアルバムに収録されたふたつの曲 “舌炎上” (2014年『VG+』収録)と “和背負い” (2018年『VANTA BLACK』収録)だ。日本のヒップホップ・シーンでもテクニカルなラップで評価の高い GAGLE の HUNGER と互角に渡り合い、さらに “和背負い” では天性のスキルと強烈な個性を持つラッパー、鎮座DOPENESSを交えた3MCによるセッションが実にスリリングかつ凄まじい格好良さで、個人的にも KGE THE SHADOWMEN のソロを待ちわびていた感すらある。そのタイミングでリリースされた、ソロ名義では11年ぶりのリリースとなる2ndアルバム『ミラーニューロン』だが、こちらの期待を軽く上回る素晴らしい快作である。

 KGE THE SHADOWMEN のラップの魅力は巧みなフロウとラップが映える声の良さで、そこに説得力あるリリックが重なれば、もはや怖いものはない。アルバムの冒頭を飾る “俺のHIPHOP” はそれらの要素が全てが合わさった1曲で、16FLIP (ISSUGI)によるキックの効いたトラックに乗せて、ヒップホップに捧げた紆余曲折な人生を振り返りながら、自らの深い覚悟を宣言する。この曲に限らず、本作での彼のアティチュードは実に自然体で、無理に虚勢を張ったりもせずに、自分の弱ささえも包み隠さず言葉にする。決して短くはないアーティストとしてのキャリアが、いまの自然体な彼を作り上げているのは間違いないが、そんな嘘のない言葉だからこそ、彼のリリックは実にストレートに心に突き刺さってくるし、特に30代、40代と年を重ねたリスナーであれば共感できる部分も大いに違いない。特に家族へ捧げた “こんな俺だけど” や “ジャム&マーガリン” での KGE THE SHADOWMEN の言葉が持つ力と暖かさは、決して誰にでも表現できるものではないだろう。

 「客演キング」であるがゆえに、本作にも当然、ゲスト勢が多数参加しており、注目はやはりすでに名前の出ている HUNGER と鎮座DOPENESSだろう。HUNGER と GOCCI (LUNCH TIME SPEAX)が参加した “葉隠” でのハイプレッシャーなマイクリレーは迫力十分。さらに度肝を抜かれたのが鎮座DOPENESSとの “TRANCE注意報” で、Grooveman Spotの金属質でエッジの効いたトラックにふたりが変幻自在に言葉を放ち、カオスな空間を作り出す。他に SONOMI、CHIYORI、菅原信介と3人のシンガーをそれぞれゲストに迎えているのだが、いずれも異なるタイプの曲でいずれも見事な出来だ。ちなみにプロデューサーも多彩なメンツを揃えているのだが、個人的には DJ Mitsu the Beats のシンプルなループが実に心地良く響く “毎日Walkin'” がラスト・チューンとしても実にしっくりきて、好みな一曲。実は7分以上もあるのだが、この曲のように、良い意味でマイペースに彼のラッパーとしての活動がこれからも続いていくことを期待したい。

大前至