「PAN」と一致するもの

interview with Alexis Taylor (Hot Chip) - ele-king

 ホット・チップは、UKポップ音楽のお家芸と言える、ソウルやダンス・ミュージックを折衷するエレクトロ・ポップなロック・バンドで、そのサウンドには多幸感とメランコリーが交錯している。20年という彼らの長いキャリアにおいてバンドは着実に成長し、UKシンセ・ポップとしては、いわばニュー・オーダーの後継者というか、いまや今世紀における代表的な存在と言えるのかも。じっさい2019年の前作『A Bath Full of Ecstasy』は批評家から絶賛され、今作『Freakout/Release』も注目のアルバムとなった。
 以下、日本のファンを代表して斎藤辰也──ホット・チップ以外は、ほとんどクラシック・ロックばかり聴いているようだが──その彼にまずはファン目線の解説を書いてもらった。その後に続くインタヴューともどもお楽しみください。

 ミュージシャンがつまらない作品が出すと僕は追いかけるのをさっさとやめて悪態をつきがちなのですが、ホット・チップのことは14年近く追いかけています。僕がホット・チップをこんなにも好きでいるのは、彼らの音楽はつねに歌心を大事にしているからです。メロディとハーモニーを大事にしたやわらかい歌声でもって、ダンスビートの上で、人としての弱さや苦悩を明かしているからです。そうした歌を聴かせてくれるバンドは貴重です。LCDとかジンジャールートなんかでは、とてもじゃないけどダメなのです。この歌とハーモニーを実現できるバンドは、ホット・チップ以外にいないでしょう。
 新型コロナに罹患して部屋にこもることになって思いついたのは、好きなミュージシャンのレコードを、キャリアの初めから最後まで、1日中ぶっ通しで聴くことでした。ボブ・ディラン。ニーナ・シモーン。ヴェルヴェッツ。大好きなビートルズとビーチ・ボーイズも聴きました。しかし、僕のすべてだと思い込んでいたその2組は、決していまの僕のすべてではないことに気づくことになりました。
 部屋を侵食するレコードの山の中から10枚しか残せないとしたら、僕はまずホット・チップの作品から『ワン・ライフ・スタンド』を選ぶでしょう。5枚でもそうします。3枚でも、そうしましょう。1枚なら………シド・バレットのセカンドだと心に決めているので、大変な拮抗が生じます。だけど、いまな、ら、『ワン・ライ、フ・スタ、ンド』を、選、ぶ。かもし、れま、せん(大変な拮抗が生じています)。ホット・チップをこれから知る人にもこのアルバムを薦めます。タイトルどおり、彼らの音楽は一生の付き合いができそうな包容力があります。無理をしないで、いつでもありのままで向き合える、そんな気持ちにさせてくれます。弱いことは恥ずかしいことではないんだよと、そう言ってくれる気がするのです。ここでもし、そんなの要らないとあなたが言うのであれば、そもそも音楽なんて聴かなくていいと思います。
 2008年の『ワン・ピュア・ソウト』の可愛いけどなんか変なMVを観たとき、シンセ主体の音楽を忌避してロックとヒップホップだけを聴いてきた僕の中で、とんでもないレベルで、なにかが弾けました。折衷という言葉では説明できません。その音楽の中に、僕が好きなもの以外にも、なにかわからないけど色んなものがトロトロになって煮込まれているのを感じたのです。いま食べてるので喩えますが、未知の具材たっぷりのカレーの鍋を覗き込んだと思ったら、画面の向こうから鍋の中身が飛び出して、全身にぶっかけられた。そんな衝撃でした。それ以降、彼らの作品や足跡を追いかけて、それまで知らなかった数々の音楽の扉を叩くことになりました。ニューウェイヴ。テクノ。ハウス。ノイズ。エレクトロ。音楽の広さを音楽を通じて教えてくれるバンドなんて、他にはビートルズくらいしか思いつきませんが、ホット・チップが教えてくれたのは、僕の大好きなビートルズやビーチ・ボーイズが教えてくれなかったものでした。ホット・チップが現代のバンドで、それをリアルタイムで聴くことができるのは、とてもラッキーなことだと思います。
 ホット・チップは結成から20年以上が経ちました。ダンスフロアの流行り廃りに流されることもなく、メンバーの入れ替わりもないまま自分たちの地盤を固めることができたのは、アレクシス・テイラー&ジョー・ゴダードのふたりを核としたソングライティング、そして、それを彩るためのサウンド作りにメンバーが力を注いできた結果であると思います。まずもって馴染みやすいメロディと真摯な歌詞を大切にしながら、男性的な“強さ”を回避するアレクシスとジョーの優しい歌声が響いて、メンバーのハーモニーが重なり、それらをダンスのリズムとシンセサウンドが讃える。アレクシスとジョーのマイクリレーやハーモニーは、まるでブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴの掛け合いが現代に生まれ変わって、同じバンドにいるかのようです。こうしたヴォーカルワークの美しいバンドは、他に類を見たくても、なかなか見れないと思います(メンバーのアレクシスと初めて会ったとき、僕はビーチ・ボーイズの未発表アルバム『スマイル』のブートの箱を渡しました。「なんでこれを僕にくれようと思ったの?」と言いつつニヤついた彼の笑顔は最高に面白かった。それに、彼とジョーなら『スマイル』は没にしないでしょう)。
 今作、『フリークアウト/リリース』では、前作で強固になったダンスビートを引き継いでいますが、これまでのアルバムよりもシリアスなムードが通底しており、一聴すると重々しい印象が残るかもしれません。だけど、僕から述べておきたいのは、前述したようなバンドのあり方は変わっていないということです。明るい音楽で哀しいことを歌うように、人としての弱さや苦悩を隠しませんでした。そういったシンパシーを音楽の上で感じさせてくれます。ただただアッパーなダンスナンバーにもできたはずの“ブロークン”で「時々思う/僕は壊れている/もう壊れようがないほど」と歌うのを聴いて、僕は駅のホームで涙を流しながら歩いていました。いい大人が道端で目を赤くしているのは、通りがかった人にしてみれば不気味だったと思います。でも、不意にそういうことをさせてくる音楽なんです。(斎藤辰也)


右にいるのが質問に答えてくれたアレクシス・テイラー、その隣にいるのがジョー・ゴダード。

僕個人としては、大仰な政治的声明を打ち出そうとすることを楽しいとは思わないね。政治ってものは、自分の音楽にはほとんど入り込んでこない物事だ、そう感じる。ジョーの方なんじゃないかな、音楽にもうちょっと政治が入ってくるのは?

4月からツアーが続いていますが、いまUKのライヴ状況は、いかがでしょうか? コロナ前の感じに戻ってきていますか?

アレクシス:そうだね、ライヴ/コンサートの状況について言えば、ほんとなにもかもが戻ってきている。会場も再開し規制もなくなったし。けれどもフェスティヴァル、たとえば何万もの人間が集うグラストンベリーのようなイヴェントは、結局数多くの感染者を出すことになった。だから、ある面では物事は「ノーマル」に戻ったけれども、やはりウィルスは依然消え去ってはいない。単に、人びとは感染しても以前ほど具合が悪くならなくなっただけであって、それはたぶんワクチン接種に少し守られているからだろう。
というわけで……たとえば自分たちがフェスでプレイして観客を眺めていても、以前みたいにCOVIDについて考えることはなくなった、そう言っていいと思う。というのも、みんなマスクを着けなくなったから。だから、カルチャーという意味では非常に変化したし、前より少し良くなったっていうのかな、規制が緩まったおかげで。けれどもそれと同時に、COVIDに感染するたび——僕自身、1ヶ月前くらいだったっけ? ウィルスに感染したし、その都度あれがどれだけ不快な体験かを思い出させられるっていう。

前作『A Bath Full of Ecstasy』に引き続き、今作『Freakout/Release』もじつにパワフルなアルバムになったと思います。まずはサウンドについてお訊ねしますが、先行発表された “Down”は、力強いファンクのリズムが強調されていますよね。LCDサウンドシステムなんかともリンクするファンク・パンクを彷彿させます。

アレクシス:うん。

それに表題曲の“Freakout/Release”や“Hard To Be Funky”にも強力なリズムがありますが、こうしたビート感、躍動感は、自然に生まれたものなのでしょうか? それともこれは今作において意図したことだったのですか?

アレクシス:リズム・トラック群やグルーヴ、あるいはファンキィな要素に関して言えば、自分たちはとくに「今回はこれまで作ってきた作品とは違う」とは考えていないと思う。過去の作品以上にそれらの要素が強調されていると人びとが感じるだろう、僕たちにそういう意識はなかった、と。けれども、うん、いま言われたように、僕たちは踊るのにすごくピッタリなものを作ろうとしていたね。そうやって人びとにエンジョイしてもらえるなにかを、音楽と人生と踊ることとを祝福できるなにかを人びとに与えたいと思っていた。ただ、思うに、いまの質問にあった印象/感想は――良い感想だけれども、僕たち自身はべつにこれといって、より「パンク・ファンク調」な方向を目指してはいなかったんだ。あれはとにかく、そうだなぁ、たぶん“Down”で使ったサンプリングに導かれたものだったんじゃないかな? あの曲で僕たちはファンク・チューンをサンプリングしたし、それが僕たちを音楽的にあの方向性に引っ張っていった、と。それもあるし、おそらく今回は、アル(・ドイル)があの曲やそれ以外のいくつかのトラックでも生演奏でベース・ギターをもうちょっと弾いているし、彼はLCDサウンドシステムでもプレイしているから、それもあったのかもしれない。彼がふたつのバンドでプレイするベースの奏法はやはり似通ってくる、と。

通訳:いま話に出た“Down”のサンプル、あれはUniversal Togetherness Bandのトラックですが——

アレクシス:そう。

斉藤:たぶん2015年あたりから、ソウルのレコードをサンプリングすることが新曲において増えてきている印象を受けます。これは意図的にそうしているのでしょうか? たとえば、70〜80年代のソウル/ディスコ/ファンク音楽の、そのルーツにお返ししよう、みたいな思いは大事でしょうか?

アレクシス:んー……もしかしたら、僕たちにもそうした思いはあるのかも? だけど、僕たちはずっとソウル/ファンク・ミュージックが好きだったからね。ファースト・アルバムを作ったときですら——あれはサンプリングではなかったけれども、たとえば“Keep Fallin’”のような曲をプレイしていたわけだし、あれはかなりこう、ファンク・ミュージックを作るためのプリミティヴかつ安上がりでローファイな試み、そういう風に聞こえる曲だと思う。とはいえまあ、ソウル・ミュージックからの影響はあるよね、僕たちのもっとも大きな影響源のひとつだと思う。おそらく……まあ、サンプル音源にソウル寄りな変化が起きているとしたら、それは要は、ジョー(・ゴダード)が買っているレコード次第なんじゃないかと思う。というのも、僕自身はレコードからサンプリングはしないし、ネタとして使えそうなセクションを探そうとしてレコードを聴くこともないから。
 でも、そうは言いつつ、この同じアルバムで僕は「ファンキィであることについて」の歌(=“Hard To Be Funky”)を書いたわけだし、ということは、うん、たぶんその同じスレッドがこのアルバムの曲の多くにも流れているってことなのかもしれない。でも、いま言われたように、2015年以来、僕たちが「ダンス/ソウル音楽のルーツに敬意を表して」みたいにサンプル音源を選んでいるとか、べつにそういう意図的な決定ではなかったんだ。ただ単に、僕たち自身がああいうスタイルの音楽をずっと好きだからああなった、そういうことだと僕は思う。でまあ、要は、ジョーがレコード屋でなにか発見して、「お、これはグレイトな曲! ぜひサンプリングしたい」と思いついたってだけのことじゃないかと。

斉藤:今回、マイク・ホーナーと、ソウルワックスと、Superorganismのメンバーであるトゥーカンをアルバム制作に抜擢した意図やきっかけはなんですか?

アレクシス:まあ、前作『A Bath Full Of Ecstasy』をやったときも、マイク・ホーナーと一緒に作ったからね。マイクはすごく、すごく優秀だし、とにかく一緒にスタジオで過ごしていても本当に気持ちの良い人で。僕たちが彼と一緒にやることにした理由はそれだったし、彼は僕たちの求めていたサウンドを掴むのを助けてくれた。
 ソウルワックスについては、……ジョーの思いつきだったはずだけど、彼が「ソウルワックスにこの2曲を送ってみないか」と言い出して。彼らに聴いてもらい、何を持ち込んでくれるか試しに見てみよう、と。そのうちの1曲は“Down”で、あれは結局彼らにプロダクションを手伝ってもらわずに済んで、ミックスだけやってもらった。もう1曲が“Freakout/Release”で、あれはこう、僕たちからすれば半分くらいまで出来上がっていた感じで――曲は書いたものの、サウンドがどうもいまひとつジャストに収まらない、と。それであの曲をソウルワックスに送り、共同プロデュースおよび追加プロダクションをお願いしたんだ、純粋に、あの曲をフィニッシュさせるためにね。
 ホット・チップではコラボに関してはかなりカジュアルに物事が進むんだよ。今作でプレイしてくれたほかのコラボレーター、たとえばドラマーのIgor Cavalera(イゴー・カヴァレラ)、彼はセパルトゥラ(※メタル・バンド)のメンバーだったことで知られる人で——彼は“Eleanor”でドラムをプレイしてくれたけど、あれはメタルっぽい曲ではないよね。それからCadence Weapon(ケイデンス・ウェポンaka ローランド・ペンバートン)については、僕たちはあの“The Evil That Men Do”でラップを入れたいと考えていて、ジョーが彼のことを思いついた。彼とは昔、一緒にツアーをやったこともあった仲だし、運良くタイミングも合って、彼はグレイトなヴァースをあの歌のために書いてくれた。それからシンガーのLou Hayter(ルー・ヘイター)、彼女は僕たちのスタジオの近所に住んでいて、知り合いだし僕たちと一緒にDJをやったこともあるんだけど、まだコラボはやったことながくてね。で、ある日、彼女に「この“Hard To Be Funky”という曲で女性ヴォーカルが必要なんだけど、トライしてみる気はある?」と訊ねてみて、それで彼女がスタジオまで来てくれて、2、3時間で録ったんじゃないかな。そんな感じで、なにもかも……そうだなぁ、かなりこう、フレンドリーな、集団型な音楽の作り方だね。
 トゥーカンに関しては、彼は以前、僕のシングルをミックスしてくれたことがあって。トゥーカンは良い要素を持ち込んでくれた。彼がミックスを担当してくれたトラックの多くは、シングルになっていったね。

“Down”は、曲はパワフルなディスコ・ファンクですが、その歌詞は、質者には「労働」について書かれているように思いました。

アレクシス:うんうん。

じっさいのところ、これは、どんなところから生まれた言葉なのでしょうか? 

アレクシス:COVIDのせいで、僕たちは長いこと集まって一緒に作業することができなかった。だからあの曲はほんと、「遂に僕たちも、スタジオで一堂に会することができた」ってことについて語っているというか……僕にとってはこの自分の「仕事」、僕にとっての仕事であるミュージシャンをやること、歌をクリエイトすることは大事なんだ、と再確認してるっていうのかな。いや、ある意味、僕の周囲にいる人びとやホット・チップの面々、プロデューサーとしてのジョーはそういう風に見ていないのかもしれないよ。ただ、僕たちは努力しなくちゃらないんだ、自らにムチをぴしゃっと叩いてがんばり、この音楽をできる限り良いものにしなければならない、と。
 というわけであの曲は、この曲を上手く機能させるために自分は自らを捧げるというか、自分はこの曲をできる限り良いものにするために努力したい、と言っている、そういう感じの曲で。うん、だからあれは一種の……「仕事」、そして「一所懸命働くこと」というテーマ、そしていかにしてこのとある恋愛関係に意味を見出すことができるかについて掘り下げたもの、というかな。ある面では音楽についての歌だし、ある面では誰かとのロマンチックな関係の意図的なメタファーにもなっていて、うん、そのふたつの異なる意味合いのある歌だね。だから、その意味ではかなり曖昧な曲と言えるけれども、一種こう、働くこと/なにかに取り組むことは楽しい行為になり得るってことを歌ってもいて……そうだね、がんばって働くことの肉体性という概念を、リズミックな働きぶりを祝福しているというのかな。だから1曲のなかにいろんなことが込められている。

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自分たちにはそんなに多くの規範/ルールみたいなものはないと思う。ただ、今作に関して言えば、たぶん1曲を除いて、作った曲のすべてはまずまずダンサブル、あるいはファンキィと呼べるものだったんじゃないかな。

あなたは、おそらく前作『A Bath Full of Ecstasy』から、意識的に政治や経済といったトピックを歌のなかに盛り込んでいるように思いますが、しかし音楽面においては、それがポップ・ミュージックであることにことだわっていますよね?

アレクシス:そうだな、意見や批判はダイレクトに表現していると思う。ただし、それらは多くの場合、政治的に声高ではない、という。そうは言いつつ、今作の“The Evil That Men Do”では、かなり政治的にはっきり意見を述べているけれども……。僕たちの歌の歌詞のいくつかは、聴き手が読み取り理解するのにちょっと手間のかかるものもあるとはいえ、逆にもっとダイレクトなものもあるし、その両方のケースがあるんじゃないかな。とにかく曲次第で違うね。でもたしかに、僕個人としては、大仰な政治的声明を打ち出そうとすることを楽しいとは思わないね。政治ってものは、自分の音楽にはほとんど入り込んでこない物事だ、そう感じる。ジョーの方なんじゃないかな、音楽にもうちょっと政治が入ってくるのは? 僕はお説教めいた、人びとに教えを垂れるような表現の仕方をやるよりも、もっと、あくまでパーソナルな視点から話をしようとしている。

そもそも今作『Freakout/Release』を制作する上でのいちばんモチベーションはなんだったのでしょうか?

アレクシス:まあ、僕たちはかなり長いこと、全員でそろって一緒になにかに取り組むことができなかったわけだよね。僕はその間もソロ・レコード(『Silence』/2021)を作ったとはいえ、あの作品では本当に、リアルタイムでのコラボレーション、他のプレイヤーに来てもらい自分と一緒に音を出すという作業を含めることができなかった。ロックダウン中に作った作品だったからね。
 だからたぶん、ホット・チップのレコードを作る段になった頃までには、僕たち5人が同じ空間に一緒に集まるのが可能になったし、とにかくなにかエキサイティングなものを作りたい、全員で一緒にジャムり、僕たちが音楽を演るのを楽しんでいる、聴き手にもそれが伝わるようなものを作りたいと思ったんだろうね。
 それ以外の点で言えば、僕たちはある種の生々しい、パンキーなエネルギーを音楽に持ち込むことにも興味を抱いていたと思うけれども、結果的に、それほどパンクっぽい要素は残らなかったね。ごく一部、たとえば“Freakuout/Release”には、いわゆる「ロック」っぽい感触があるとはいえ……。僕たちはディストーションにも関心があったとはいえ、レコードが完成する頃までには、制作当初に考えていたそうした事柄のいくつかは抜け落ちていった、というのかな。だから、とてもディストーションの効いたピアノ・パートを用いたトラックがひとつあって、“Freakout/Release”もあり、また“Down”でもディストーションは使ったし、それらの楽曲を繋げてまとめる要素はあったものの、最終的にそのディストーションのかかったピアノを使った曲はアルバムから落とすことになった。ゆえにその面、ディストーションの哲学というか、ディストーションに対して僕たちの抱いていた関心、という面は伝わりにくくなったね。
 うん……だから、僕たちには「これ」といったしっかりした計画はなかったんだ。とにかく、再び全員で一緒に音楽を作れることになってワクワクしていただけだし、それ以外で言えば、ビースティ・ボーイズのあの曲、“Sabotage”だけど、僕たちはあれをライヴでよくプレイしているし、どうすればあのエネルギーの一部を自分たちの音楽のなかにも取り込めるだろう、ということを考えていた。

通訳:あなたたちがライヴで“Sabotage”をカヴァーするのを聴くのは、ほんと楽しいです。すごく楽しそうに演奏しているのがありありと分かるので。

アレクシス:うん、そうだよね。

多くの人間にとって本当にきつい時期だったし、いまだにそれは続いている。そのせいで職を失った者もいるし、久しぶりに対人関係にさらされ、社交面でどう振る舞えばいいかの自信を無くした人だっていると思う。

斉藤:ホット・チップのアルバムを完成とするにあたって、最低限守っている規範意識、あるいは自分たちなりの基準のようなものはありますか?

アレクシス:フム、自分たちにはそんなに多くの規範/ルールみたいなものはないと思う。ただ、今作に関して言えば、たぶん1曲を除いて、作った曲のすべてはまずまずダンサブル、あるいはファンキィと呼べるものだったんじゃないかな。スローで静かな、全体のノリから浮いている曲は1曲だけだったってことだし、それはこのレコードに収録しないことになったんだ、バンドの他の面々はあの曲は今作の楽曲群にそぐわないと感じていたから。
 ただ、僕たちはとにかく、自分たちにとって「ベストな曲だ」と感じられるものを選んでいこうとしているだけだ。僕たちの作る音楽は相当に折衷的だし。最近の僕は、昔よく聴いていたバンドに立ち返っていてね。たぶん自分は20 年以上聴いていなかったバンドだと思うけど、ウィーンを。

通訳:おお、ウィーンですか(笑)! 

アレクシス:(苦笑)うん、彼らの作品を聴き返していたんだけど——

通訳:笑ってしまってすみません、意外だったので、つい。でも私もウィーンは好きです。

アレクシス:僕もだよ! でまあ、いまの自分がああしてウィーンの音楽を聴き返しているうちに、彼らのレコードってどれだけ折衷的で混ぜこぜかを思い出したんだ。彼らって、サウンド面で言えば、1枚のレコードのなかで別のバンドが20組くらいプレイしてるって感じじゃない?

通訳:(笑)ええ。

アレクシス:で、彼らはホット・チップの初期にかなり影響が大きかった存在だったことを思うと、ってことは僕たちも常にこの、幅広いスタイルの選択肢をもつことが許される地点にいたんじゃないか? と。だから、ひとつの曲から次の曲へ、そこでガラっと変わっても構わないわけ。

今回は自分たちで設計したスタジオでの録音で、あなた自身も完成度には満足していると思います。アルバム全体には、ある種の暗さが通底しているように思えるのですが。“The Evil That Men Do”やポップ・ソングである“Guilty”のような曲にも、もちろん最後のじつに印象的な“Out Of My Depth”にも。

アレクシス:そうだな……アルバム曲のなかでも、たぶんもっともシリアスに響くんじゃないかと僕が思う歌詞――っていうか、コーラスと曲名がいちばん重そうに聞こえるのは“The Evil That Men Do”だと思うけど、あれはジョーが書いた言葉なんだ。だから、それは僕には説明できないとはいえ、彼がああいう声明を打ち出す必要性を感じていたのは、僕にも見えた。だから、この社会における男たちの振る舞いについて、彼らは自分たちの行動にどんな責任を負っているか、そして僕たち誰もが自らの振る舞いにどう責任を負っているか、その点についてジョーは何か言わずにいられなかった、と。彼があの曲で述べている声明はそれ、我々はみんな、なんらかの償いをしなくてはいけないってことだろうし……これまでずっと続いてきたひどい振る舞いの数々、そしてそれらが他の人びとにどんな影響をもたらしてきたか、そこに対する一種の「気づき」が必要なんじゃないかな。

通訳:なるほど。

アレクシス:そうは言っても、これはなにも、「男性的な振る舞い」だけがネガティヴなものだ、そう言っているわけではないんだよ。ただ、多くの破壊的な行為やネガな振る舞いの数々、それらはなるほどたしかに男性的なもののように思える、そう、かなり主張はしやすいよね? というわけで、あの曲はその点について歌っているし、この時点で——だから、イギリス内ではいろんな物事が植民地主義を基盤に築かれてきたわけで、その事実が社会全体から疑問を浴びはじめている、そういういまの時期を認識している曲なんだと思う。要するにブリテンの土台は、この「植民地主義」ってものの上に成り立っているわけだし、そこでジョーは、「その点を我々は認識しなくちゃいけない」って言っているっていう。そうやって、思うに彼は、一からやり直そう、これまで続いてきた実にネガで、破壊的で、人種差別で、暴力的な振る舞いの数々から教訓を学ぼうじゃないか、そう言っているんじゃないかな。
 で、君の挙げた曲のなかで、僕が歌詞面でもっと多く貢献したもので言えば、あれらはとにかく……今回のアルバムを作っていた間に僕が感じていたあれこれに関して、もしくは自分の周辺にいる人びとが困難な時期を潜っていた姿を観察し描いたもの、そのどちらかじゃないかと思う。だから、彼らが体験し感じていたことを表現しようとした、というか……いや、どちらかではなくて、その両方だな、僕自身が感じていたパーソナルなこと、そして僕の周りの愛する、大事な人びとが状況に悪戦苦闘していた、その両方について歌っている。というのも多くの人間にとって本当にきつい時期だったし、いまだにそれは続いている。いやだから、なにもかもをいったん一時停止せざるを得なかったわけで、その余波/反動はやっぱり大きいよ。そのせいで職を失った者もいるし、それだけじゃなく、たとえばここしばらく隠遁者めいた暮らしを送ってきたせいで、久しぶりに対人関係にさらされ、社交面でどう振る舞えばいいかの自信を無くした人だっていると思う。そうした多くのもろもろが合わさって、物事は2年前以来困難なものになっている、と。だからだと思う、今回のアルバムでは君が言ったような、やや暗いテーマがあるのは。
 だけど、そうは言いつつ“Out Of My Depth”のような曲は、とくにいまに限らず、僕のこれまでの人生のどの時点で生まれてもおかしくないものだと思う。あの曲は……物事が自分の思うようにいかないと感じる、あるいは自分にはコントロールできないと思うときのことを、「深みからなんとか泳いで水面に出る(swimming out of your depth)」というメタファーを使って表現している。要するに、ネガティヴな側面にこだわってグズついているのではなく、その状況から自分を引っ張り出す手段をなんとかして見つけていかなくちゃならないんだよ、と。そういう、一種のモチベーション高揚っぽい感情があるし、その感覚はいまに限らず、どの時期でも通用するものだと思う。

UKには、OMDやウルトラヴォックス、ABCやヒューマン・リーグ、ニュー・オーダーやペット・ショップ・ボーイズなど、素晴らしい楽曲と言葉をもったシンセポップ・バンドが、ホット・チップ以前にいくつも出てきています。こうした歴代のUKバンドのなかで、あなたがとくに共感しているバンドがあったらぜひ教えてください。

アレクシス:ニュー・オーダー、ヒューマン・リーグ、それにデペッシュ・モードだね。

通訳:ああ、デペッシュもですよね、なるほど。

アレクシス:うん。でも……(軽くため息をつきつつ)いま名前の挙がった連中以外にも、グレイトな音楽を作ったシンセポップ・バンドはほかにもいると思うんだ、たとえばユーリズミックスとかは僕も大好きだし。ただ……いま言われたようなバンドは、まあ、これはちょっとおかしな話に聞こえるかもしれないけど、彼らの作ったレコードは——もちろんそれぞれファンタスティックな作品だとはいえ——僕自身にとっては、そのほかにもっと大切なレコードがある、という存在なんだよね。だからまあ、彼ら(英シンセポップ勢)の作品はホット・チップというバンドの基盤を成す作品群ではない、っていうのかな。僕たちが目指しているサウンドは必ずしもそれらではない、と。おそらく、僕たちがその手のバンドの音楽をいくつか聴くようになったのは、もっと最近の話じゃないかと思う。
いや、もちろんメンバーによって差はあるし、たぶんオーウェン(・クラーク)は、そういったバンド、OMDの音楽なんかには長く親しんできただろうね。でも、僕からすれば、いま名前の出たバンドのなかでよく知っていると言えるのはニュー・オーダーだけで、彼らの音楽は若い頃から本当によく聴いてきた。で、ヒューマン・リーグに関しては、そうだなぁ、15年くらい前に初めて少し聴き始めたし、アルバムまでは細かく知らないんだ。シングルをいくつか知っているくらいで、それらのシングルは素晴らしいとはいえ、自分にヒューマン・リーグについて詳しい知識があるとは、お世辞にも言えない。ABCはほんと、ラジオでかかる有名な曲以外は知らないし……ああ、それにスクリッティ・ポリッティ、彼らも僕にとってかなり重要な存在だと思う。でも、それらUKのシンセポップ系バンド以上に、僕にとって大事なのは——ソウル・ミュージックだと思う。たとえばスティーヴィー・ワンダーやカーティス・メイフィールド、マーヴィン・ゲイ。それにヒップホップ、プリンスのレコード、そしてUSのインディペンデントなローファイ系の音楽、それらの方がおそらく、僕個人の音楽の趣味という意味では、もっと大事だろうね。

The Comet Is Coming - ele-king

 UKジャズ・シーンにおける重要グループのひとつ、ザ・コメット・イズ・カミング。エレクトロニック・ミュージック寄りのデュオ、サッカー96のふたり──シンセ担当のダナログとドラムス担当のベータマックス──に、サックスのシャバカ・ハッチングスを加えたこのトリオの新作が、9月23日に発売される。題して『極超次元拡張ビーム(Hyper-Dimensional Extension Beam)』。録音はピーター・ゲイブリエルのスタジオでおこなわれたそうだ。
 そしてなんと、嬉しいことに来日公演も決定。12月1日から3日にかけ、渋谷と大阪をまわります。前回来日時のフジで素晴らしいパフォーマンスを披露した彼ら、今回の単独公演も必見だ。

ロンドンを拠点にフロアを揺らし続けるコズミック&レイヴなジャズ・トリオ、
名門インパルスから待望のニュー・アルバムをリリース

●シンセサイザーのダナログ(ダン・リーヴァーズ)、サックスのシャバカ(シャバカ・ハッチングス)、ドラムのベータマックス(マックス・ハレット)の3人によるコズミック&レイヴなジャズ・トリオ、ザ・コメット・イズ・カミング。ロンドンを拠点に活動し、マーキュリー賞にノミネートもされている彼らが、待望のニュー・アルバムをリリース

●シンセサイザー、サックス、ドラムという特異な編成でパンクロック、ジャズ、トランス等様々なジャンルを横断しダンスフロアを揺らし続けているザ・コメット・イズ・カミング。本作はイギリスにあるピーター・ガブリエル所有のリアルワールド・スタジオでレコーディングされた。バンドの長年のエンジニアであるクリスチャン・クレイグ・ロビンソンと共に、トリオは4日間のレコーディングを敢行。その後ダナログとベータマックスが録音を入念にサンプリングし、深遠かつ首尾一貫した音楽的メッセージを持つ今回の作品が生み出されたという。

●12月に待望の来日公演も行うことも決定! 2019年以来約3年振り2度目の来日で、12月1日と2日に渋谷WWW、12月3日に大阪の LIVE HOUSE ANIMA での計3公演となっている。


The Comet Is Coming / HYPER DIMENSIONAL EXPANSION BEAM
ザ・コメット・イズ・カミング / ハイパー・ディメンショナル・エクスパンション・ビーム
2022.9.23 リリース Impulse!
配信 / 輸入盤

収録曲
01. CODE
02. TECHNICOLOUR
03. LUCID DREAMER
04. TOKYO NIGHTS
05. PYRAMIDS
06. FREQUENCY OF FEELING EXPANSION
07. ANGEL OF DARKNESS
08. AFTERMATH
09. ATOMIC WAVE DANCE
10. THE HAMMER
11. MYSTIK


ザ・コメット・イズ・カミング プロフィール
2018年、サンズ・オブ・ケメットで米国インパルスからメジャー・デビュー(アルバムは英国マーキュリー・プライズにノミネートされる快挙)を飾った、現行UKジャズの中心人物シャバカ・ハッチングス(キング・シャバカ)率いる大本命ユニット。
サックスのキング・シャバカ、シンセサイザーのダナログ、ドラムのベータマックスによって2013年に結成。2015年末に12インチとデジタ ル配信のみでリリースされたデビューEP『The Prophecy』は英DJ Mag 誌で10点中9.5点の高評価を獲得し、ジェイミー・カラムも自身のラジオ番組で「最高のニューカマー」と絶賛。翌2016年にはデビュー・フル・アルバム『Channel The Spirits』を発表。そして2019年、満を持してメジャー・デビュー作をドロップ。

シャバカ・ハッチングス プロフィール
シャバカ・ハッチングスは1984年、ロンドン生まれ。6歳の時にカリブ海に浮かぶ西インド諸島の国、バルバドスに移り住むが、その後、イギリスに戻り、以来、ロンドンのジャズ・シーンの中心を担っているサックス奏者。1960年代のジョー・ハリオットやエバン・パーカー以来の創造性を持つと言われ、その独特でパワフルなプレイからしばしば「カリスマ」もしくは「サックスのキング」と評される。
現在、コメット・イズ・カミング、サンズ・オブ・ケメット、そして、シャバカ・アンド・ジ・アンセスターズの3つを主要プロジェクトとしており、プロジェクトを跨いで JazzFM や MOBO のジャズ・アクト・オブ・ジ・イヤーなど数々の賞を受賞している。

■来日公演情報
The Comet is Coming Japan Tour 2022
2022年12月1日(木) 渋谷 WWW
2022年12月2日(金) 渋谷 WWW
2022年12月3日(土) 大阪 LIVE HOUSE ANIMA
チケット情報等詳細は後日発表!

■ザ・コメット・イズ・カミング リンク情報
ユニバーサルミュージック https://www.universal-music.co.jp/the-comet-is-coming/
Twitter: https://twitter.com/cometcoming
Facebook: https://www.facebook.com/thecometiscoming
Instagram: https://www.instagram.com/cometcoming/

■シャバカ・ハッチングス リンク情報
本国公式サイト http://www.shabakahutchings.com/
Twitter: https://twitter.com/shabakah
Facebook: https://www.facebook.com/shabakahutchingsmusic/
Instagram: https://www.instagram.com/shabakahutchings/
YouTube: https://www.youtube.com/user/shabakahutchings/featured

interview with Black Country, New Road - ele-king

 デビューしてからの3年間、ブラック・カントリー・ニューロードの活動の歴史は激動だった。ヴォーカルを担当していたメンバーの性的暴行が告発されたことによって前身バンド、ナーヴァス・コンディションズの解散が余儀なくされたとき、残ったメンバーのほとんどは再び集まりバンド活動を続けることを決意した。ステージの端でギターを弾いていたアイザック・ウッドの前にマイクが置かれ、ツイン・ドラムだったドラムは一台になり、サウス・ロンドン・シーンの新しいバンド、ブラック・カントリー・ニューロードはそんなふうにして姿を現した。喋るように唄うアイザック・ウッドのヴォーカルは鬼気迫るような迫力で、スリリングなポストパンクのサウンドと絡むそれは最初のライヴから何かとんでないことが起きていると感じさせ、ライヴを重ねるごとにその評価はどんどん高まっていった。熱を帯びるサウス・ロンドンのシーンのさなか、2020年にリリースされた1stアルバム『For the first time』はそんな狂気に充ちたライヴを続けていた時期を封じ込めたアルバムで、ファンもその熱を真っ向から受け止め、より一層に大きな評判を呼んだ。次に何が起きるのかわからないというスリルがそこに存在し、もしかしたらいま、この瞬間こそが歴史に残るような瞬間になるのではないかと小さな世界の中でそう大げさに思わせるようなドキドキと期待感が確かにそこに存在していたのだ。

 そしてパンデミックがあった。2022年2月に発表された2ndアルバム『Ants From Up There』はライヴの熱狂を受けて制作された1stアルバムと打って変わって、観客のいない彼ら7人の間で作られたアルバムだった。ワイト島での3週間に渡った共同生活の中でレコーディングされた2ndアルバムは危険なポストパンクの匂いが消え柔らかくノスタルジックに響く、まるで違ったバンドになったみたいな新しいブラック・カントリー・ニューロードの姿がそこにあった。
 だがこれらの曲が観客のもとに届けられるツアーがおこなわれることはなかった。2ndアルバムがリリースされる直前にヴォーカル/ギターのアイザック・ウッドがバンドを脱退するという発表があったのだ。「精神的な問題で、これ以上ステージに立つことは難しい」。Facebook上でそんなメッセージを受け取ったバンドは彼の意思を尊重した。そして長い話し合いの末に、残された6人のメンバーはこの活動を継続することを決めた。予定されていたツアーをキャンセルし、その後に出るライヴでは1stアルバムと2ndアルバムの曲は演奏しない。誰も見たことのない、新しいブラック・カントリー・ニューロードの姿で再びスタートを切ると彼らは決めたのだ。

 ここにあるのはリアルタイムのドラマだ。その判断がどのような結果を生んだのか、それをいまの時点で考えるのは早すぎる。だが後から結果を見ただけではわからない、その過程にだけ存在する特別な何かがあるのだ(それはこれまでのBC,NRの活動が証明していることでもある)。6人でバンドを続けるという選択、アイザックひとりが担当していたヴォーカルを分け、新たに作った曲、新たな姿のバンドでこの夏のライヴに彼らは臨んだ。フジロックで初来日を果たしたブラック・カントリー・ニューロードのドラム、チャーリー・ウェインとキーボードのメイ・カーショウのふたりにバンドのこれまでと、そしてこれからについて話を聞いた。


向かって左がチャーリー・ウェイン(ドラム)、右がメイ・カーショウ(キーボード)

ロンドンのシーンのトレンドっていうのは僕らよりもうちょっと若いとか、あるいはもうちょっと多くロンドンでプレイしているバンドたちによって作られているって思っている(ウェイン)

初来日のフジロックはどんな印象でしたか?

カーショウ:凄く良かったと思う。日本でプレイしたかったというのが叶ったのも良かったし、やってみてもっとプレイしたいってふうにも思って。何よりお客さんがリスペクトしてくれているっていうか曲をしっかり聞いてくれているみたいな感じがして嬉しかったな。他のフェスだとけっこう隣の人と話しながらだったりするんだけど全然そんなことなくて。

今回、プレイする曲はすべて新曲ということで、かなり特殊で難しいシチュエーションだったと思いますが、その点はどうでしたか?

ウェイン:曲作りってことでいうと、いまもってありとあらゆるものを集めているって感じなんだ。1月にブッキング・エージェントから夏のフェスティヴァルの話が来て、新曲を持っていくこともできるって話になって、それで僕たちはそうすることを選んで曲を書きはじめた。でも、全部を新曲にするっていうのは本当に難しかったのは確かで、明らかにいまも発展途上。まだ曲は完成していないんだけど、でもその期間は楽しかったしエキサイティングな時間でもあったと思うよ。期限までに曲をプレイ可能な状態にしなきゃいけないってプレッシャーから来るストレスも同時にあったんだけどね。でも凄くエキサイティングだった。

現在はタイラー(・ハイド)とメイ(・カーショウ)とルイス(・エヴァンス)の3人がそれぞれヴォーカルを担当していますよね? その3人がヴォーカルを担当することになった経緯を教えてください。

カーショウ:最初はみんなで唄うってプランもあって。っていうのは誰かひとりがメインでヴォーカルを担当するとその人のプレッシャーが凄いことになると思ったからで。みんな唄えるんだからそうしたらいいじゃないって。でもライヴまでの準備期間が4ヶ月しかなかったから、一から曲を作るんじゃなくてメンバーが個人で作っていた曲を膨らませる方向にシフトして。で、その曲はタイラーが持ってきたのもあればルイスや私が持ってきたのもあって、自然とそのまま元の曲を作った人が唄うことになったって感じかな。

編集部:バンドにブレインみたいな人はいないんですか? 方向性を決めたりする。

カーショウ:ブレインはいないかな。みんなで決める感じで。

ウェイン:うん。そういう誰かひとりがいると違うんじゃないかってなっちゃうし、演奏してても楽しくなくなっちゃうかもしれないし。だからお互いのパートを尊重して任せる感じかな。

カーショウ:その分話し合いは凄くするよね。友好的な口論みたいな「ちょっとちょっと、ここさぁ~」みたいな感じで。

今後も確たるメイン・ヴァーカルを決めないこのスタイルでやっていくのですか?

カーショウ:いまのところはこの形だけど、アルバムを作るときはどうなるかな?

ウェイン:いまはまだ全然アルバムの曲を書いていなくて、そのときになったら考えようって。でも歌詞を書いて頭に描いたコンセプトをそこに落とし込んで、それを複数人でやると感情的に分散してしまうような、一貫したスルーラインが見えない音楽になってしまう危険性があると思うんだ。それを避けるっていうのは今後凄く重要になってくる。

僕たちは結局、ある意味でバラバラになってしまったんだと思う。忙しくなっていろんなことをやらなきゃいけなくなって、妥協しなきゃいけないこともあって。(ウェイン)

まだアルバムの曲作りをしていないとのことで難しい質問になってしまうかもしれませんが、これから3rdアルバムはどんな方向性に進んでいくと思いますか。

ウェイン:いいアルバムになる方向(笑)。

カーショウ:これから作るから探していかなきゃね。

ウェイン:けど全然違う感じになると思う。1stアルバムと2ndアルバムも全然違ったものになったし。2ndアルバムはそのときの状況もあったけど1stとは違うものを作りたいっていうのが出発点だったから。だから今度のアルバムもいろんな理由で全然違う感じになると思う。でも聞いていて楽しめなかったりプレイして良くないって僕らが信じられないようなアルバムを出す気はないから……うん、だからやっぱり良いアルバムになるな(笑)。

(配信で)ライヴを見ていて思ったのですが、いまはフルートを多用していますよね? 2ndアルバムでも使っていましたけどより比率があがったような印象で。

ウェイン:実のところルイスはもともとフルート奏者なんだよね。

カーショウ:そうそう。だから曲の雰囲気に合うって彼が思ったから使っているって感じじゃない?

そのフルートが合うような感じに2ndアルバムで曲が変わったというのはなぜだったのでしょうか?

カーショウ:それはなんだろう? そのときに聞いている音楽の影響だったのかな。あとはロックダウンのときに感じたことの影響とか。

ウェイン:うん、いろいろな状況の影響はあるよ。1stアルバムの曲を書いてたときはライヴをいっぱいやってた時期で、尖ってて奇妙で魅力的な、グルーヴィな音楽を作りたかったんだ。でも2ndアルバムには恐れる観客はいなくて、代わりにみんなで集まって集中してアルバムを作れるって状況だった。その点についてはとてもラッキーだと思ってて。同じようなアルバムを作るのはつまらないって思いもあったし、こうやってみんなで集まって音楽を作れるってことは幸せだって感じるような、そういう感情になったってことが2ndアルバムの曲作りにも反映されたんだと思う。

編集部:2ndアルバムから似た雰囲気を感じたのですが、70年代のプログレッシヴ・ロック・バンド、ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーターは聴いたことがありますか?

ウェイン:聞いたことはあるけど影響を受けたかっていわれるとどうだろう? でもメンバーの誰かが聞いて影響を受けていてそれが反映されたっていうのはあるかもしれない。僕らみんな全然違う音楽から影響を受けていて、それがこのバンドをユニークにうまく機能させているってところがあるから。

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でも同時に全員これからも一緒にやっていこうっていう気持ちも強く持っていたと思う。(カーショウ)

ちなみにいまはどんなバンドがお気に入りなんですか?

カーショウ:ジョアンナ・ニューサムが好き。

あぁそれはライヴを見て感じました。メイのヴォーカルの曲はそんな感じがするなって。

カーショウ:本当? 良かった。

そのことについて聞きたいのですが、メイのヴォーカルの曲で “The Boy” という曲がありますよね? チャプターがあって寓話を元にした劇みたいで、いままでのBC,NRの曲とは全然違う感じの印象の曲で。この曲はいつ頃作られたのですか?

カーショウ:いつだったかな? 今年のはじめの方? 曲のベースをそのくらいの時期に作って。バンドに持っていく前はもっとフォークっぽかったんだよね。ピアノで作ってて、そこからまたいろいろと変わっていったんだけど。

じゃあまさにジョアンナ・ニューサムにハマってた頃?

カーショウ:(日本語で)はい。そうです。ふふっ。

それこそこの曲はフルートに合うような音楽で。 最近UKのバンドでフルートを使っている人たちが増えてきている印象があって。ルイスがフルートを吹いてるマーサ・スカイ・マーフィーとかイーサン・P・フリンとか、あとはブルー・ベンディとか。その流れに沿っている部分もあるのかなと感じたのですが、いかがでしょう? BC,NRの1stアルバムが出た頃と2ndアルバムが出た頃ではロンドンのシーンの空気もだいぶ変わったんじゃないかと思うのですが。

ウェイン:うん。でも僕らはロンドンのミュージック・シーンのバンドだとは思うけど、でもそれに答えるのに適したチームとは言えないんじゃないかって。っていうのはロンドンのシーンのトレンドっていうのは僕らよりもうちょっと若いとか、あるいはもうちょっと多くロンドンでプレイしているバンドたちによって作られているって思っているからで。僕たちもロンドンでプレイするのは本当に大好きなんだけど、でもいまは充分にロンドンでプレイできてるとは言えなくて。ロンドンのバンドは僕たちに影響を与えてるし、僕たちもその一翼を担っているって思ってもいるけれど、ロンドンのシーンがどうかって説明するのはちょっと難しいかな。それは中にいるせいで俯瞰して全体像をとらえるのが難しいっていうのもあるのかもしれないけど。

ありがとうございます。それでこれは何度も聞かれてうんざりかもしれませんが、アイザックがバンドを脱退するとわかったときに解散せずにこのままバンドを続けると決断したときの状況を教えていただける嬉しいです。

カーショウ:とても長い話し合いがあって……名前を変えて新しいバンドとしてスタートした方がプレッシャーが少ないんじゃないか、そうした方が比べられることもないんじゃないかって、私とジョージア(・エラリー)はそんなふうに考えてた。でも他のみんなはそうじゃなくて。みんなで決めて、もちろんいまは私もこれで良かったって思っているんだけど。

ウェイン:僕たちは結局、ある意味でバラバラになってしまったんだと思う。忙しくなっていろんなことをやらなきゃいけなくなって、妥協しなきゃいけないこともあって。

カーショウ:でも同時に全員これからも一緒にやっていこうっていう気持ちも強く持っていたと思う。

ウェイン:うん、どちらにしても間違いなく僕たちは一緒にプレイし続けただろうね。でも新しいバンドとしてスタートしたとしても比較されることは避けられなかった。名前を変えなかったからより直接的に比較されるわけだけど。でもなんていうか僕たちはまったく違うバンドじゃなくて、音楽的にも同じような世界観を持ち続けているバンドで……。難しいけど。でも名前を変えないってことに決めて、いまはそれがうまく機能していてその点では嬉しく思っているんだ。

明確なものとかパーソナルなものとか具体的な歌詞は書きたくなくて、それで自分が出てくるような話じゃなくて、ハリネズミとかモグラとか動物が出てくるストーリーを書いたんだと思う。(カーショウ)

1stアルバムのインタヴューでルイスが「音楽よりも友情の方が大切さ」と言っていてそれが印象に残っています。ライヴの最初に披露された “Up Song” でメンバー6人全員が声を合わせて「BC,NR friends forever」と唄っていて、ある種の決意表明みたいにも思えたのですが、この部分を全員で唄うというのはどういう意図があったのですか?

ウェイン:ルイスはそんなこと言ってたんだ? でも僕だったら「音楽よりもお金の方が重要だ」って言うな(笑)。もちろん冗談だけど。

カーショウ:「BC,NR friends forever」っていうのもはじめはジョークだったんだよね。最初にやる曲としてちょっと面白いかなって。

ウェイン:結構こういうのってあるんだよね。ジョークからはじまった音楽的エフェクトが長く続けていくうちに音楽的にも感情的にも意味を持っていくみたいな。ほんと馬鹿なんだけどスタジオで練習しているときに誰かがやりはじめて。で、いざそれをステージに持ってくとみんな「イェー!」って盛り上がってくれて。最初にこれを披露したのはブライトンだったんだけど、初めて聞いたのにみんな「あぁああっー」って感じで超盛り上がってくれて、それでこれ凄いクールじゃんみたいな。

カーショウ:最初はその部分違ったよね? あれ? なんだっけBC,NRの後? 「BC,NR ~」(歌い出すメイ)……ダメ思い出せない。でもとにかく最初は全然違う文脈だった。

ウェイン:僕らはしばしば感情をハイジャックされるシチュエーションにおちいるんだ。

カーショウ:“Up Song” はもともとはタイラーが作った曲で歌詞もタイラーが書いたんだけど、そこにみんなで言葉を付け加える感じで。

ウェイン:そうそう。曲の構成を考えるとき、最初のラインが凄く響いたんだ。それでここのヴォーカル・ブレークに何か追加しようとして……アーケイド・ファイアに “Neighborhood #3 (Power Out)” って曲があるよね? 1stアルバムの。その曲に「we find a way!」って叫ぶ小さなセクションがあるんだけど、そんな感じにしたかったんだ。

歌詞でいうと、メイの “The Boy” はどんなところから歌詞が出てきたんですか? 何かインスピレーションのもとになったようなお話があったんですか?

カーショウ:具体的にはないな。(日本語で)わかんない。なんだろう、頭の中にあったものを出したって感じだったから。でもとにかくこの曲を書いたときは明確なものとかパーソナルなものとか具体的な歌詞は書きたくなくて、それで自分が出てくるような話じゃなくて、ハリネズミとかモグラとか動物が出てくるストーリーを書いたんだと思う。

編集部:ちなみにここ(取材場所)は日本のすばらしいレコード店のひとつで、BIG LOVEというお店ですが、ふだん音楽を聴くときは配信やストリーミング、デジタルで聞くことが多いですか?

カーショウ:Spotifyで聞くことが多いかな。アーティストにとっては良くないのかもしれないけど、それで聞いちゃう。YouTubeでも聞くし。ジョアンナ・ニューサムはストリーミングで配信してないから、それは買って聞くみたいな。そんな感じ。

ウェイン:僕もそうだな。アーティストに支払われる金額が少ないからSpotifyで聞くのはあんまりよくないのかもしれないって思ってはいるんだけど。でもルイスはプレイヤーを持っているから、ルイスの家に行ってみんなでレコードを聞くこともあるよ。みんなで聞くときはそっちの方が良いし。でもほとんどデジタルだなぁ。

編集部:自分たちはアナログ盤を出していて複雑な気持ちになりません?

カーショウ:Spotifyがもっとお金を払ってくれたら自分たちもレコード買えるのに。(日本語で)冗談。

最後にここまでの活動を振り返るという意味で、1stと2ndアルバムの曲でそれぞれ好きな曲を教えてもらえますか?

カーショウ:1stは演奏するのが楽しい曲が多いよね。

ウェイン:うん楽しかった。

カーショウ:でも “Track X” は別。あの曲はちょっと演奏するのがストレスだった。私とルイスとアイザックがそれぞれ違うビートで演奏するから、あの人たちの演奏を聞かないようにしようってするのが本当に大変で。好きなのは “Science Fair”、2ndアルバムの曲だと “Haldern” が好きだな。

ウェイン:そうだな、僕のお気に入りは……ちょっと定番過ぎて言うの恥ずかしいんだけど、でも1stだとやっぱり “Sunglasses” が好きだな。で、2ndだと “Basketball Shoes”(笑)。

カーショウ:ほんと定番(笑)。

ウェイン:うん(笑)。でも、本当に曲として素晴らしいんだよ!

Björk - ele-king

 しかし、なんでいま“ガバ”なんでしょう。このところ気になっていたんです。例のThe Ephemeron Loopとその変名Petronn Spheneもそうだけど、話題のLady Neptuneなんか聴いてもガバじゃないかと。そういえば、以前yukinoiseも書いていたな。かといって自分はもうガバを聴く年齢でもないし……とか。で、ビョークの新作もガバだって???

 この、世界規模で影響力のあるアイスランドのアーティストにとって10枚目のスタジオ録音盤となるアルバムの内容が、ガーディアンの取材で少し明らかになった。見出しにいわく「いかにして、悲しみ、帰郷、そしてガバが彼女の新作を作ったのか」
 手短に言えば、コロナ禍で帰省中、自宅で「クレイジーなDJナイト」を開いたときにハードコア・レイヴ・サウンドに魅了されてしまったと。「地面に穴を掘るような」「きのこのアルバム」という新作には、ガバとトライバルを融合させるインドネシア人デュオ、Gabber Modus Operandiが参加していることも明らかにされている。
 なんにせよ楽しみだし、これで世界にガバが拡散されてしまうのかと思うと、なんだか変な気持ちになったりもする。2017年の『Utopia』以来のスタジオ・アルバム『Fossora』は、〈One Little Independent〉から秋に発売。

[8月25日追記]
 ビョークの来日公演が決定した。来年2023年の3月、東京と神戸で開催。どうやら上記の新作とは異なるコンセプトのようで、「オーケストラル」と題されたコンサートは、ビョーク+32人のオーケストラという編成。「コーニュコピ」と題されたほうは海外ではすでに披露されているもので、ステージ・デザイナー Chiara Stephenson やメディア・アーティスト Tobias Gremmler とのコラボレイションになっている模様。最新のビョークのステージ、ぜひ体験してみたいですね。

■orchestral(オーケストラル)

björkの肉声と32人のオーケストラだけで構成され、スピリチュアルな空間を創りだす。まさにbjörkの原点がここに在る。

tokyo march 20 (mon) 東京 ガーデンシアター
kobe march 25 (sat) 神戸ワールド記念ホール

■cornucopia(コーニュコピ)

Lucrecia MartelとBiörkが監督し、James Merryを共同演出として迎え入れ制作された作品で、2019年春、NYのThe Shed で行われたワールドプレミア公演にてその幕を開けた。ステージデザイナーのChiara Stephenson が編み出す環境デザインの中にメディア アーティストTobias Gremmler が創作するデジタルビジュアルデザインが映える。NY誌はこれを「街のステージを飾る最も素晴らしい光と音の展示」と呼び、The New Yorker誌は「ファンタジーを変遷するための武器」として表現したビョークを称賛した。Björk自身の音楽を今まで以上に深く掘り下げ追求したコーニュコピアが日本でも遂に披露される。

tokyo march 28 (tue) 東京 ガーデンシアター
tokyo march 31 (fri) 東京 ガーデンシアター

Japan official HP:https://smash-jpn.com/bjork2023
Info:SMASH(03-3444-6751)

Alchemy Records - ele-king

 JOJO広重が1984年に大阪で設立した、関西アンダーグラウンド・シーンを代表するレーベル〈Alchemy〉。自身がリーダーを務める非常階段をはじめ、赤痢やハナタラシ、THE原爆オナニーズや想い出波止場など多くのバンドを送り出してきた同レーベルだが、そのリイシュー・プロジェクト「Alchemy Records Essential Collections」が始動している。
 すでにCDがリリースされ、秋にLPの発売が予定されているものに SOB階段『NOISE,VIOLENCE & DESTROY』、Slap Happy Humphrey『Slap Happy Humphrey』、Angel'in Heavy Syrup『Angel'in Heavy Syrup』、ほぶらきん『グレイテストヒッツ』、赤痢『私を赤痢に連れてって』の5作がある。
 また、Angel'in Heavy Syrup「僕と観光バスに乗ってみませんかc/w春爛漫」(7”)、赤痢『PUSH PUSH BABY~LOVE STAR』(CD/LP)、シェシズ『約束はできない』(LP)、想い出波止場『水中JOE』(LP)、ウルトラ・ビデ『ザ・オリジナル・ウルトラ・ビデ』(LP)の5タイトルも今秋から来年にかけリリース予定。詳しくは下記よりご確認を。

1984年にJOJO広重(非常階段 他)が設立した〈Alchemy Records〉のリイシュー・プロジェクト!

1984年6月にノイズ・ミュージシャンであるJOJO広重が設立した〈Alchemy Records〉。リリース作品はJOJO広重がリーダーをとるバンド非常階段のアルバムをはじめ、ノイズ、パンク、サイケデリックなど幅広いジャンルをフォローしています。
その関西のインディーの雄、〈Alchemy Records〉の代表的なアーティスト/アルバムのリイシュー企画「Alchemy Records Essential Collections」がこの度始動します。


アーティスト名:SOB階段
タイトル:NOISE,VIOLENCE & DESTROY
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年6月2日(水)
LP:2022年10月19日(水)
品番
CD:ALPCD-1
LP:ALPLP-1
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き
★CD盤限定ボーナストラック収録

■トラックリスト
01. INTRODUCTION
02. NOT ME
03. SUDDEN RISE OF DESIRE
04. TRAP
05. FUCK OR DIE
06. NOISE, VIOLENCE&DESTROY
07. RISING HELL
08. LOOK LIKE DEVIL
09. NEVER AGAIN
10. TO BE CONTINUED
11. NEVER AGAIN *CD盤限定ボーナストラック
12. EPILOGUE *CD盤限定ボーナストラック


アーティスト名:Slap Happy Humphrey
タイトル:Slap Happy Humphrey
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年6月2日(水)
LP:2022年10月19日(水)
品番
CD:ALPCD-2
LP:ALPLP-2
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き
★CD盤限定ボーナストラック収録

■トラックリスト
01. 地平線
02. たとえばぼくが死んだら
03. 逆光線
04. センチメンタル通
05. G線上にひとり
06. みんな夢でありました
07. 蒼き夜は
08. ふるえているね
09. スナフキンのうた(Slap Happy Humphrey Ⅱ) *CD盤限定ボーナストラック


アーティスト名:Angel'in Heavy Syrup
タイトル:僕と観光バスに乗ってみませんかc/w春爛漫
フォーマット:7inch
レーベル:P-VINE
発売日:2022年10月19日(水)
品番:ALP7-1
価格:¥2,255(税込)(税抜:¥2,050)
★初回完全限定生産

■トラックリスト
A. 僕と観光バスに乗ってみませんか
B. 春爛漫


アーティスト名:Angel'in Heavy Syrup
タイトル:Angel'in Heavy Syrup
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年7月6日(水)
LP:2022年11月2日(水)
品番
CD:ALPCD-3
LP:ALPLP-3
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き
★CD盤限定ボーナストラック収録

■CD/LPトラックリスト
01. S.G.E (Space Giant Eye)
02. きっと逢えるよ
03. ぼくと観光バスに乗ってみませんか
04. Underground Railroad
05. My Dream
06. Crazy Blues(bonus track) *CD盤限定ボーナストラック


アーティスト名:ほぶらきん
タイトル:グレイテストヒッツ
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年7月6日(水)
LP:2022年11月2日(水)
品番
CD:ALPCD-4
LP:ALPLP-4
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■CDトラックリスト
01. 私はライオン
02. いけいけブッチャー
03. 牧場の少女
04. アックンチャ
05. 山はサンタだ
06. 陽気なサイパネ人
07. こがねむし(黄金虫)
08. ピーピーパピパピー
09. 暴れん坊将軍K
10. 村のかじや
11. 頭がほしい
12. ペリカンガール
13. アメリカこけし
14. 魚うり
15. ゴースン
16. センチメンタル・ヘッケル(カラオケ)
17. 単位踊
18. とんがりとしき
19. どまぐれじんぎ
20. 京阪牛乳
21. はちぶんぶ
22. かもられてかも
23. まらだしガンマン危機一髪
24. 金勝は信楽守る山
25. ゴースンゴー
26. 俺はなんでも食う男
27. わらびもち
28. ピコリーノ
29. おおがみらす
30. 俺はなんでも食う男 (2)
31. ああ我れ身に油をぬりて勇気百倍まっ先かけて突撃せん
32. うさぎ音頭で大暴れ
33. ますかきラッキー
34. ゴースンのテーマ
35. どくろ忍者の歌
36. 怪人タツドロド
37. ライオン丸のテーマ
38. 大仏小仏
39. 水中まつり
40. ゴースン,城を攻める
41. ゴースンの子守り歌
42. 猪股蟇衛門
43. タイガージョー
44. 秘密兵器コンパニオン
45. ゴースン鉄工所
46. ゴースンの川下り
47. 死んだら赤貝
48. 赤五筒~完~
49. 潜水艦
50. 京阪牛乳(un released studio track 1)
51. 京阪牛乳(un released studio track 2)

■LPトラックリスト
A01. 私はライオン
A02. いけいけブッチャー
A03. 牧場の少女
A04. アックンチャ
A05. 山はサンタだ
A06. 陽気なサイパネ人
A07. こがねむし(黄金虫)
A08. ピーピーパピパピー
A09. 暴れん坊将軍K
A10. 村のかじや
A11. 頭がほしい
A12. ペリカンガール
A13. アメリカこけし
A14. 魚うり
A15. ゴースン
A16. センチメンタル・ヘッケル(カラオケ)
A17. 単位踊
A18. とんがりとしき
A19. どまぐれじんぎ
A20. 京阪牛乳
A21. はちぶんぶ
A22. かもられてかも
A23. まらだしガンマン危機一髪
A24. 金勝は信楽守る山
A25. ゴースンゴー
B01. 俺はなんでも食う男
B02. わらびもち
B03. ピコリーノ
B04. おおがみらす
B05. 俺はなんでも食う男 (2)
B06. ああ我れ身に油をぬりて勇気百倍まっ先かけて突撃せん
B07. うさぎ音頭で大暴れ
B08. ますかきラッキー
B09. いけいけブッチャー
B10. 暴れん坊将軍K
B11. 魚うり
B12. アメリカこけし
B13. 山はサンタだ
B14. とんがりとしき
B15. ゴースン
B16. 私はライオン
B17. 村のかじや
B18. 牧場の少女
B19. アックンチャ
B20. 不思議な魔法びん
B21. 陽気なサイパネ人
B22. ミネソタの玉子売り


アーティスト名:赤痢
タイトル:私を赤痢に連れてって
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年8月3日(水)
LP:2022年11月2日(水)
品番
CD:ALPCD-5
LP:ALPLP-5
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■CDトラックリスト
01. デスマッチ
02. 4649
03. ヨーレイヒ
04. どろどろ大江戸
05. ウィウィロック
06. だーらだら(駄獣)
07. 春
08. 仏滅ラプソディー
09. カメレオン
10. ファック
11. ちった
12. エンドレス
13. ナンバー
14. ニャンニャンで行こう
15. 赤痢作用(セキリプロセス)
16. 夢見るオマンコ

■LPトラックリスト
A1. デスマッチ
A2. 4649
A3. ヨーレイヒ
A4. どろどろ大江戸
A5. かつかつロック
A6. だーらだら(駄獣)
A7. 青春
B1. 仏滅ラプソディー
B2. カメレオン
B3. ファックしよう
B4. ちった
B5. エンドレス


アーティスト名:赤痢
タイトル:PUSH PUSH BABY~LOVE STAR
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年11月16日(水)
LP:2022年2月15日(水)
品番
CD:ALPCD-6
LP:ALPLP-9
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■CD/LPトラックリスト
01. PANCH
02. ORILLA
03. ベリー・グウ
04. HAPPY NEW YEAR
05. 俺のドジ
06. 駄馬
07. サバビアン
08. 19才
09. ラブラブショックラブショック
10. CHOCOLATE BLUES
11. くすり天国
12. 睡魔


アーティスト名:シェシズ
タイトル:約束はできない
フォーマット:LP
レーベル:P-VINE
発売日
LP:2022年12月21日(水)
品番:ALPLP-6
価格:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■LPトラックリスト
A1. I'm dancing in my heart~祭歌
A2. 連舞
A3. 君が目
A4. 火の海
A5. 月と明り窓
B1. 約束はできない
B2. 黒い瞳の
B3. カチューシャ
B4. 불의 바다
B5. 輪舞
B6. 三度目は武装して美しく無関心


アーティスト名:想い出波止場
タイトル:水中JOE
フォーマット:LP
レーベル:P-VINE
発売日
LP:2022年1月7日(水)
品番:ALPLP-7
価格:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■LPトラックリスト
A1. 22次元
A2. サムライ ACID CONTEMPORARY
A3. BLUES FOR TURN TABLE
A4. ROUTE 99999
A5. 水中JOE
A6. 中核
A7. SHOOTING DUB
B1. 太ッ腹(玉砕ワルツ)
B2. ハウ
B3. N.C.C.P1701-1
B4. 第三ROCK
B5. IN
B6. SEA MONK


アーティスト名:ウルトラ・ビデ
タイトル:ザ・オリジナル・ウルトラ・ビデ
フォーマット:LP
レーベル:P-VINE
発売日
LP:2022年1月18日(水)
品番:ALPLP-8
価格:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■LPトラックリスト
A1. インプロビゼーション・アナーキー(屋根裏'79)
A2. わかえらんわからんしゅびしゅびだ(屋根裏'79)
A3. やくざなコミューン(屋根裏'79)
A4. 落ちこんだらあかへんで(屋根裏'79)
A5. メリーゴーランド(屋根裏'79)
A6. 恋するベイリー(ギャルソン'78)
A7. 嫌われもののパンク(屋根裏'79)
A8. 大怪獣の歌
B1. 単なる曲(太奏'78)
B2. ポニーテイルのかわいいあの娘(ガレージ'79)
B3. 世界はひとつ(ガレージ'79)
B4. ウギャギャでパンクPart2(ガレージ'79)
B5. そしてジャマイカへ(日和'79)
B6. ラッパのあれ(医大'79)
B7. キンタロイド(恐怖'79)

HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS - ele-king

文:ジェイムズ・ハッドフィールド(訳:江口理恵)[8月19日公開]

 1960年代に入ってしばらくするまで、カヴァー・ヴァージョンというのはロック・バンドが普通にやるものだった。ビートルズの最初の2枚のアルバムに収録されている曲の半分近くは他のアーティストの作品だ。初期のローリング・ストーンズは、自らのソングライターとしての才能を証明するよりも、ボ・ディドリーを模倣することの方に関心があった。しかし、LPがロック・ミュージックのフォーマットに選ばれるようになると、ファンはアーティストにより多くの革新を期待し、レーベルもオリジナルの音源の方が金になることに気付き出した。カヴァー・ヴァージョンは、ありふれたお馴染みのものから、ロック・ミュージシャンがより慎重に意図を持って使うものになっていった。敬意を表したり、いつもの定番曲に新風を吹き込んだり、キュレーターとしてのテイストをひけらかしたり、あるいは完全に冒涜的な行為を行うための。

 『きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか』の収録曲では、これらのことの多くが、時に同時進行で行われている。灰野敬二が70歳の誕生日を迎えたわずか数週間後にCDとしてリリースされたこの変形したロックのカヴァー集は、実質的にはパーティ・アルバムであり、クリエイターの音楽的ルーツを探る、疑いようのない無礼講なツアーのようだ。全曲を英語のみで歌う灰野敬二が、角のあるガレージ・ロック・スタイルのコンボ(川口雅巳(ギター)、なるけしんご(ベース)、片野利彦(ドラム))のヴォーカルを務め、ロックの正典ともいうべき有名曲のいくつかを、ようやくそれと認識できるぐらいのヴァージョンで披露している。

 灰野がカヴァー・バンドのフロントを務めるというのはそれほどばかげた考えではない。彼の1990年代のグループ、哀秘謡では、ドラマーの高橋幾郎、ベースの川口とともに、50年代・60年代のラジオのヒット曲の、幻覚的な解釈をしてみせた。ザ・ハーディ・ロックスの前には、よりリズム&ブルースに焦点を当てたハーディ・ソウルがあり、その一方で灰野はクラシック・ロックの歌詞を即興のライブ・セットに取り入れることでも知られていた。つまり、このアルバムが、一部の人間が勘違いしそうな、使い捨てのノヴェルティのレコード(さらに悪くいえば、セルフ・パロディのような行為)ではないことを意味している。

 2017年に、ザ・ハーディ・ロックスを結成したばかりの灰野にインタヴューしたとき、彼はバンドがやっていることを「異化」という言葉で表現した。これは英語では“dissimilation”あるいは“catabolism”と訳されるが、ベルトルト・ブレヒトの、観客が認識していると思われるものから距離を置くプロセスである“Verfremdung”の概念にも相当する。ここでは“(I Can’t Get No ) Satisfaction”のように馴染み深い曲でさえ、じつに奇怪にきこえる。キース・リチャーズの3音のギター・フックが重たいドゥームメタル・リフへと変わり、灰野が喉からひとつひとつの言葉をひねり出すような激しさで歌詞を紡ぐ。驚くべきヴォーカル・パフォーマンスを中心にして音楽がそのまわりを伸縮し、次の“Hey Hey Hey”への期待で、いろいろな箇所で震えて停止してしまう。

 あえて言うまでもないが、灰野は中途半端なことはしない。レコーディング・エンジニアの近藤祥昭が、不規則で不完全な状態を捉えたこのアルバムでの灰野のヴォーカルは、まるで憑りつかれているかのようだ。金切り声や唾を吐く音が多いにもかかわらず、何を歌っているのか判別するのはそれほど難しいことではない。バンドは重々しい足取りでボブ・ディランの“Blowin’ In The Wind”をとりあげているが、それはもっとも不機嫌な不失者のようでオリジナルとは似ても似つかないが、それでもディラン自身が2018年のフジロックフェスティバルで演奏したヴァージョンよりは曲を認識できる。

 注意深く聴くとたまに元のリフが無傷で残っているのがわかるが、音の多くの素材は、不協和音のコード進行や故意に不格好なリズムで再構築されている。このバンドの“Born To Be Wild”では、有名なリフレインに辿り着く前に灰野がジョン・レノンの“Imagine”からこっそりと数行滑り込ませている。“My Generation”では、崩壊寸前の狂気じみた変拍子でヴァースに突進していく。川口が灰野のヴォーカルに合わせて支えるように、しばしば、エフェクターなしでアンプに直接つないだ生々しいギターの音色を響かせる。なるけと片野は、様々なポイントでタール抗の中をかき分けて進むかのように演奏している。

 ビッグネームのカヴァーが多くの人の注目を引くだろうが、ザ・ハーディ・ロックスは、日本のMORでも粋なことをしている。アルバムのオープニング曲の“Down To The Bones”は、てっきり『Nuggets』のコンピレーションの収録曲を元にしていると思っていたが、YouTubeのプレイリストを見て、これが実際には1966年に「骨まで愛して」で再デビューした歌謡曲のクルーナー、城卓矢のカヴァーだと判明した。“Black Petal”は、水原弘の“黒い花びら”をプロト・パンク風の暴力に変えるが、日系アメリカ人デュオのKとブルンネンの“何故に二人はここに”については、灰野にかかっても救いようのない凡庸さだ。

 もっとも異彩を放つのは、アルバム終盤に収録されたアカペラ・ヴァージョンの“Strange Fruit”だろう。これは奇妙な選択であり、「Black bodies swinging in the southern breeze(黒い体が南部の風に揺れる)」という歌詞を静かに泣くように歌い、本当の恐怖を伝える灰野の曲へのアプローチの仕方には敬意を表するが、私はこの曲を再び急いで聴こうという気にはならない。しかし、アルバム全体は非常に面白く、このクリエイターの近寄り難いほど膨大なディスコグラフィへの入り口としては、理想的な作品である。



HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS


きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか
(“You’re either standing facing me or next to me”)


P-Vine Records

by James Hadfield

Until well into the 1960s, cover versions were just something that rock bands did. Nearly half of the songs on the first two Beatles albums were by other artists. The early Rolling Stones were more interested in channeling Bo Diddley than in proving their own abilities as songwriters. But as the LP became the format of choice for rock music, fans began to expect more innovation from artists, while labels came to realise there was more money to be made from original material. Cover versions went from being ubiquitous to something that rock musicians used more sparingly, and intentionally: to pay respects, put a fresh spin on familiar staples, flaunt their curatorial taste, or commit acts of outright sacrilege.

The songs on “You’re either standing facing me or next to me” are many of these things, sometimes all at once. Released on CD just a few weeks after Keiji Haino celebrated his 70th birthday, this collection of deformed rock covers is practically a party album, and a distinctly un-reverential tour of its creator’s musical roots. Singing entirely in English, Haino acts as vocalist for an angular, garage rock-style combo (consisting of guitarist Masami Kawaguchi, bassist Shingo Naruke and drummer Toshihiko Katano), who serve up just-about-recognisable versions of some of the most famous entries in the rock canon.

The idea of Haino fronting a covers band isn’t as absurd as it may seem. His 1990s group Aihiyo, with drummer Ikuro Takahashi and Kawaguchi on bass, did strung-out interpretations of radio hits from the ’50s and ’60s. The Hardy Rocks were preceded by the more rhythm and blues-focused Hardy Soul, while Haino has also been known to incorporate lyrics from classic rock songs into his improvised live sets. All of which is a way of saying that this isn’t the throwaway novelty record that some might mistake it for (or, worse, an act of self-parody).

When I interviewed Haino in 2017, not long after he’d formed The Hardy Rocks, he used the term “ika” (異化) to describe what the band were doing. The word can be translated as “dissimilation” or “catabolism” in English, though it also corresponds with Bertolt Brecht’s idea of “Verfremdung”: the process of distancing an audience from something they think they recognise. Even a song as familiar as “(I Can’t Get No) Satisfaction” sounds downright freaky here. Keith Richards’ three-note guitar hook is transformed into a lumbering doom metal riff, as Haino delivers the lyrics with an intensity that suggests he’s wrenching each word from his own throat. It’s a remarkable vocal performance, and the music seems to expand and contract around it, at various points shuddering to a halt in anticipation of his next “Hey hey HEY.”

As if it needed stating at this point, Haino doesn’t do anything by halves, and his vocals on the album—captured in all their ragged imperfection by recording engineer Yoshiaki Kondo—sound like a man possessed. But for all the shrieks and spittle, it’s seldom too hard to figure out what he’s actually singing. The band’s lumbering take on Bob Dylan’s “Blowin’ in the Wind”—like Fushitsusha at their most morose—may sound nothing like the original, but it’s still more recognisable than the version Dylan himself played at Fuji Rock Festival in 2018.

Listen closely and you can pick out the occasional riff that’s survived intact, though more often the source material is reconfigured with dissonant chord sequences and deliberately ungainly rhythms. The band’s version of “Born To Be Wild” eventually gets to the song’s famous refrain, but not before Haino has slipped in a few lines from John Lennon’s “Imagine.” On “My Generation,” they hurtle through the song’s verses in a frantic, irregular meter that’s constantly on the verge of collapse. Kawaguchi matches Haino’s vocals with a bracingly raw guitar tone, often jacking straight into the amp without any effects pedals. At various points, Naruke and Katano play like they’re wading through a tar pit.

While it’s the big-name covers that will grab most people’s attention, The Hardy Rocks also do some nifty things with Japanese MOR. I was convinced that album opener “Down To The Bones” was based on something from the “Nuggets” compilations, until a YouTube playlist alerted me to the fact that it was actually “Hone Made Ai Shite,” the 1966 debut by kayōkyoku crooner Takuya Jo. “Black Petal” turns Hiroshi Mizuhara’s “Kuroi Hanabira” into a bracing proto-punk assault, though the band’s take on “Naze ni Futari wa Koko ni,” by Japanese-American duo K & Brunnen , is a pedestrian chug that even Haino can’t salvage.

The most out-of-character moment comes near the end of the album, with an a cappella version of “Strange Fruit.” It’s an odd choice, and while I can respect the way that Haino approaches the song—delivering the lyrics in a hushed whimper that conveys the true horror of those “Black bodies swinging in the southern breeze”—it isn’t a track that I’ll be returning to in any hurry. But the album as a whole is a hoot, and an ideal entry point into its creator’s intimidatingly vast discography.

ジェイムズ・ハッドフィールド

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文:松山晋也[9月5日公開]

 9月7日に出るLPが届いた昨日だけで立て続けに3回聴いた。いま、そのハードさに改めて打ちのめされている。LP版は、11曲収録のCD版よりも2曲少ない9曲入りなのだが、「最初からLPを念頭に作ったアルバム」と灰野が語るとおり、サウンド全体のヘヴィネスと密度が強烈で、ハーディ・ロックスというユニット名に込められた灰野の思いもより明瞭に伝わってくる。5月に出たCDを買った人もぜひLPの方も聴いてほしいなと思う。ひとりのファンとして。

 ロックを極限までハードに表現すること──ハーディ・ロックスという名前に込められた灰野の思いは明快である。実際、ライヴ・パフォーマンスも極めてハードだ。灰野+川口雅巳(ギター)+なるけしんご(ベイス)+片野利彦(ドラム)から成るこのユニットでは灰野はギターを弾かず、ヴォーカルに専念している(曲によってはブルース・ハープも吹く)のだが、1回ライヴをやると体調が完全に回復するまで半年かかると本人は笑う。それくらい尋常ではないエネルギーを放出するわけだ。しかし、ハード=ラウドということでもない。バンドの演奏も灰野のヴォーカルもなるほどラウドではあるけど、彼らの表現の核にあるのは音量やノイズや速度では測れない何物かだ。原曲の歌詞やメロディに埋め込まれた思いや熱量にどこまで誠実かつ繊細に向き合えるのか、という “覚悟” が一音一音に刻み込まれている。その覚悟の真摯さ、強固さを灰野は「ハーディ」という造語で表明しているのだと思う。

 ハーディ・ロックスは、海外の楽曲(ロックや、R&B、ジャズなど)や日本の歌謡曲を英語でカヴァするためのプロジェクトとして数年前にスタートした。98年にアルバム『哀秘謡』も出た歌謡曲のカヴァ・プロジェクト=哀秘謡、2010年代にやっていたソウルやR&Bのカヴァ・プロジェクト=ハーディ・ソウルの延長線上というか、総決算的プロジェクトと言っていい。これら3つのプロジェクトに共通しているのは、“なぜ(原曲は)こんな演奏と歌い方なんだ!” という原曲に対する愛と不満だろう。
 今回のアルバム(CD版)に収録された曲目は以下のとおり。このうち⑤⑥の2曲はLP版ではカットされている。

① 城卓矢 “Down To The Bones(骨まで愛して)”
② ボブ・ディラン “Blowin’In The Wind”
③ ステッペンウルフ “Born To Be Wild”
④ エディ・コクラン/ブルー・チア “Summertime Blues”
⑤ バレット・ストロング/ビートルズ “Money (That’s What I Want)”
⑥ Kとブルンネン “Two Of Us(何故に二人はここに)”
⑦ ローリング・ストーンズ “(I Can’t Get No) Satisfaction”
⑧ ドアーズ “End Of The Night”
⑨ 水原弘 “Black Petal(黒い花びら)”
⑩ ビリー・ホリデイ “Strange Fruit”
⑪ フー “My Generation”

 ① “骨まで愛して” と⑥ “何故に二人はここに” は『哀秘謡』でも日本語でカヴァされていたが、今回の英語ヴァージョンと聴き比べてみると、20数年の歳月が灰野の表現にどのような変化/深化をもたらしたかよくわかる。“骨まで愛して” は『哀秘謡』版ではリズムもメロディも極限まで解体されていたが、その独特すぎる間合いと呼吸が今回はロック・バンドとしてのノリへと昇華された感じか。“何故に二人はここに” の『哀秘謡』版は灰野にしては意外なほどシンプルだったが、今回はそのシンプルさに拍車をかけたダイレクトなガレージ・ロック調。灰野の作品でこれほどポップな(演奏のコード進行もヴォーカルのメロディもほぼ原曲どおり!)楽曲を私は聴いたことがない。LPに収録されなかったのは、時間的制限という問題もあろうが、もしかしてシングル盤として別に出したかったからでは?とも勘ぐってしまう。ちなみに灰野が14才のとき(66年)に大ヒットした “骨まで愛して” は、発売当時から灰野はもちろん知ってはいたが、本当に惹かれたのは後年、前衛舞踏家・大野一雄のドキュメンタリー映画『O氏の死者の書』(73年)の中で、サム・テイラー(たぶん)がテナー・サックスで吹くこの曲をBGMに大野が豚小屋で舞うシーンを観たときだったという。また、第二のヒデとロザンナとして売り出されたKとブルンネンの “何故に二人はここに”(69年)は、『哀秘謡』を作るときにモダーン・ミュージック/P.S.F レコードの故・生悦住英夫から「歌詞が素晴らしい曲」として推薦されたのだとか。

 海外の曲の大半は、灰野が10代から愛聴してきた、あるいは影響を受けた作品ばかりだと思われるが、中でも④ “Summertime Blues” と⑧ “End Of The Night” に対する思い入れは強いはずだ。なにしろブルー・チアとドアーズは、灰野のロック観の土台を形成したバンドだし。70年代前半の一時期、灰野は裸のラリーズの水谷孝とともにブルー・チアの曲だけをやるその名もブルー・チアというバンドをやっていたこともあるほどだ。だから、曲の解釈や練り上げ方にも一段とキレと余裕を感じさせる。ジム・モリスンがセリーヌの「夜の果てへの旅」にインスパイアされて書いた “End Of The Night”(ドアーズの67年のデビュー・アルバム『The Doors』に収録)は短いフレーズのよじれたリフレインから成るドラッギーな小曲だが、原曲と同じ尺(約2分50秒)で演奏されるハーディ・ロックスのヴァージョンは、ドアーズが描いた荒涼たる虚無の原野を突き抜けた孤立者としての覚醒を感じさせる。灰野敬二の表現者としての原点というか、灰野の心臓そのもののように私には思えるのだ。

 その他、特に面白いのが、アカペラによる⑩ “Strange Fruit(奇妙な果実)” か。彼らは最初これを演奏付きで何度も試してみたのだが、どうもしっくりこず、最終的にヴォーカルだけにしたのだという。なるほど、この歌で描かれる凄惨な情景、木に吊り下げられた黒い躯の冷たさにここまで肉薄したカヴァはなかなかないだろう。あと、③ “Born To Be Wild(ワイルドで行こう!)” の途中で突然ジョン・レノン “イマジン” のワン・フレーズが挿入されているのも興味深い。ノー・ボーダーな野生児による宇宙との一体化という歌詞の共通点から挿入したのか、単なる直感や気まぐれなのか、そのあたりは不明だが。

 これらのカヴァ・ワークは、“何故に二人はここに” 以外はいずれも、ちょっと聴いただけでは原曲が何なのかわからないほどメロディもリズムも解体されており、ビーフハート作品のごとく極めて微妙なニュアンスに溢れた演奏の背後には、かなり長時間の集団鍛錬があったはずだ。抽象的な言葉を多用する灰野のヴィジョンをサウンドとして完璧に具現化するためだったら、すべての楽器を灰野自身が担当した方が録音もスムースだろうし、実際それは可能だと思うのだが、それをあえてやらないのがこのユニットの醍醐味だろう。誤解や齟齬によって生まれる別の匂いを楽しむこと、「わからないということを理解する」(灰野)ことこそが灰野にとっては大事なのだから。

 振り返れば、灰野の目はつねに “音楽の始原” という一点だけを見つめてきた。灰野のライヴでいつも驚かされるのは、どんな形態、どんな条件下であっても我々は音楽が生まれる瞬間を目撃できるということである。ここにあるのは、誰もが知っている有名な曲ばかりだが、同時に誰も聴いたことがない曲ばかりでもある。

松山晋也

Tonalism - ele-king

 きたる8月20日、渋谷PARCOの上階(SUPER DOMMUNE&ComMunE)で興味深いイベントが開催される。アンビエント・ミュージックとヴィジュアル・アートをオールナイトで楽しむ試みで、その名も「Tonalism」。ネットラジオ局のdublabが2006年から開催しているイベントだ。やけのはらやあらべえ、FUJI||||||||||TAらが出演、マシューデイヴィッドの収録ライヴ配信もあります。聴くもよし、観るもよし、寝るもよし、参加者各人思い思いの過ごし方ができるイベントのようだ(枕や寝袋も持参できる模様)。詳しくは下記をチェック。

LA発、オールナイト・リスニングエクスペリエンス「Tonalism (トーナリズム)」が日本初開催!

夕暮れから夜明けにかけて、風景画のように変化し続けるアンビエント・ミュージックとビジュアルアートの融合をロングセットで楽しむ「Tonalism (トーナリズム)」。渋谷PARCO10FのComMunEとROOFTOP PARK、9FのSUPER DOMMUNEの2フロアを往来しながら、異なる音響空間で瞑想的なライブミュージックを楽しめる、この日だけのスペシャルな環境となっている。前半は、SUPER DOMMUNEでのトーク、DJの配信も実施。LAからはSam Gendelらを輩出した〈LEAVING RECORDS〉を主宰し、dublabコミュニティの一員でもあるMatthewdavidのライブセットも収録配信が決定。ComMunEの特設会場では、日本屈指の才能を持つアーティスト、DJをキュレーション。ビジュアルは大阪が誇るビジュアルアート・ラボCOSMIC LABのColo Müllerが空間を変貌させる。Tonalismのコンセプトでもある、集団でのリスニングエクスペリエンスを実現する、初の試みに、ぜひ参加頂き、思い思いにフロアに座り、ときには寝ながら、夢と現実のはざまを行き交うマインドフルネスの世界に誘われてください。

参加アーティスト

AKIE
ATSUKO HATANO | 波多野敦子
COLO MÜLLER
FUJI||||||||||TA
MATTHEWDAVID(収録)
RAY KUNIMOTO | 國本 怜
SAKURA TSURUTA
TARO NOHARA
YU ARAUCHI+HIROKI CHIBA | 荒内佑+千葉広樹
YUSAKU ARAI | 荒井 優作
TOMOYA KISHIMOTO | 岸本 智也(ヴィデオエンジニア)

Tonalism
2022年8月20日(土) 20:00〜 8月21日(日)6:00
SUPER DOMMUNE + ComMunE | 渋谷PARCO
(〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO9F・10F)
一般(18歳以上)5,000円
https://tonalism2022.peatix.com
※完全限定販売、予定枚数終了しだい発売終了となります。

DOMMUE番組概要
2022年8月20日(土) 20:00〜 24:00
dublab.jp presents Tonalism「Collective listening experience」
at SUPER DOMMUNE(渋谷PARCO 9F)

<第一部> 「ユニークベニュー×アンビエント・ミュージックで創られる体験」
■司会 : 原 雅明(dublab.jp / rings)
■出演 : 齋藤 貴弘(弁護士、JNEA、dublab.jp)

<第二部> 「DJ for Tonalism 」
■DJ : TARO NOHARA、Akie

<第三部>「Special Live from LA」
■出演:Matthewdavid(収録)

主催:
株式会社トゥー・ファイブ・ワン
企画制作:
原 雅明(dublab.jp / rings)
玉井 裕規(dublab.jp / epigram inc.)
金子 和司(dublab.jp / epigram inc.)

協力: 
epigram inc. / GENELEC JAPAN Inc. / DOMMUNE / ComMunE / 渋谷PARCO / infusiondesign inc. /株式会社ティーアンドイー

【dublab.jpとは】
アメリカ、ロサンゼルスの非営利ネット・ラジオdublabの日本ブランチとして有志により2012年に設立された。世界中に多くのリスナーを持ち、絶大な支持を集めてきたdublabの協力のもと、日本独自の視点から、音楽、アート、カルチャーを紹介する放送やイヴェントをおこなっている。
https://dublab.jp

interview with Hudson Mohawke - ele-king

 トラップ(ラップ・ミュージックのではなく、ダンス・ミュージックのそれ)のヒットメイカーとしてハドソン・モホークが自身の名をメジャー・シーンにまで轟かせたのはいまから遡ることちょうど10年前、2012年のことだ。彼とモントリオールのプロデューサー、ルニスによって結成されたユニット TNGHT がリリースしたEP「TNGHT」は、2010年代初頭からトラップがビート・ミュージックから巨大なダンスフロアを沸き立たせるサウンドへと進化する過程を語るには欠かせない作品であり、そのサウンドの鮮やかさはいまもなお保たれている。2015年にはソロ名義では 2nd アルバムとなる『Lantern』をリリース、その後もカニエ・ウェスト、クリスティーナ・アギレラ、FKA・ツイッグスなど数々のビッグネーム・アーティストとのコラボや Apple のCMへの起用、ゲーム『Watch Dogs 2』のサウンドトラックを手がけるなど、フロアからデジタルな画面の中までをも席巻してきた。

 そして悪夢のようなパンデミックが世界中を襲った2020年、マッチョでクレイジーなアートワークが特徴の未発表音源集「B.B.H.E.」「Poom Gems」「Airborne Lard」のミックステープ3作品を突如リリース。この作品群にはビート・ミュージックやヒップホップ、IDMなどと自由度が高く、かつレイヴィーな彼のエッセンシャル的サウンドがみっちりと詰め込まれており、彼がビートメイカーの神童として登場してから、世界中のシーンを席巻するいちプロデューサーになるまでの道筋をリスナーに深く実感させたはずだ。そうして2020年代初頭も、ハドソン・モホークはサウンドの進化をじわじわと重ねながらユニークなアイデアを世に放出し、ついに2022年のこの夏、新作としては7年ぶりとなるニュー・アルバム『Cry Sugar』を引っ提げてエレクトロニック・ミュージック・シーンに華々しく帰ってきた。

 アメリカの退廃といった背景がある本作は、マシュマロマンとジャックダニエルの瓶が描かれたアートワーク、けたたましい彩度で次々と繰り出されるサイケなティザームービーは彼らしいユニークさがありながらもどこか薄暗さを感じさせる。アシッドでレイヴィーな “Bicstan” ではカオスに弾けながら、壮大なストリングスが響く “Lonely Days”、ブラック・ミュージックからのインスピレーションが感じられる “3 Sheets To The Wind” ではメロディアスな側面を垣間見せ、7年の間にアップデートされたサウンドの裏に潜む彼の心象が伺えるだろう。

 カオスな現実に対して独自のレイヤーを高精細に投影し、創造性を体現するハドソン・モホークが今日のシーンに示すものは一体何か。この10月には来日も決定し、待望の帰還を果たす彼に話を聞いた。

人気のレコードを作ることに成功すれば、それを再び作ることはもちろん難しくはない。でも、創造的に自分が面白いと思うことができ、満足できるものを作るためには、そのアプローチじゃダメなんだ。

今年で自身としてはデビューEPのリリースから14年、TNGHT としてのデビューから10年とアーティスト活動の節目を迎える頃になります。ファースト・アルバムのリリースや(“Chimes” が) Apple のCMで起用されたこと、ゲーム『Watch Dogs 2』のサウンドトラックを手がけるなどいくつかのターニング・ポイントがあったと思います。この十数年の軌跡をどのように振り返りますか?

ハドソン・モホーク(以下HM):多くを学んだ10数年だったと思う。いい意味で、成功するぞという意欲に駆り立てられて突き進んできた10数年だったと思うね。僕はすごくシャイな性格だから、本当は積極的に何かをやるタイプではないはずなんだけど、仕事に関しては成功したいという大きな向上心を持っていたんだ。金銭的な成功というよりは、音楽で自分のメッセージを伝えられるようになりたいという成功。活動の中で起こったことのいくつかは、僕の想像をはるかに超えたものもあったね。良い意味でも悪い意味でも。この10数年内には、すごくエキサイティングな瞬間もあったし、同時に、こんなことになるなんて、と、自分が行きたくない方向に物事が進むこともあった(笑)。でもまあ、人生ってそういうものだから仕方がない(笑)。

ロックダウン中はどのように過ごしていましたか。住んでいたのはLAでしょうか? 当地の状況を教えてください。

HM:ロックダウンの直前に、パンデミックが起こるとは知らずに、LAに自分のスタジオを買ったんだ。でも、そのタイミングは良かった。家の他に時間を過ごす場所を持つことができたからね。誰かに会う必要まではなかったけど、もしそのスタジオを持っていなかったら、ずっと家にこもりきりになってたと思う。家以外どこにも行けなかった人たちは、本当によくやったと思うよ(笑)。期間中はほとんどLAにいたけど、イギリスにまた入れるようになった段階で、すぐ戻ったんだ。僕の姉妹がコロナ期間中に子どもを産んだけど、ずっと会えていなかったから。僕にとって初の姪っ子なんだけど、彼女が1歳になるまで会えなくてさ。でも、ロックダウン中にLAにいられたのはよかったと思う。あの街は開放感があって、閉じこもるのに悪い場所じゃないからね。

パンデミック下の2020年にリリースされた未発表音源集「B.B.H.E.」「Poom Gems」「Airborne Lard」のミックステープ3作品はあなたのビート・ミュージックやヒップホップ、IDMなどといったサウンドのエッセンスが多彩に詰め込まれているように感じました。あのタイミングでリリースに至った経緯を教えてください。

HM:もう何年も、未完成のトラックがいろいろなハードドライヴにたくさん放置されていたんだ。それをわかってはいたんだけど、まあ、もうそれらのトラックを完成させることはないだろうなと思っていた。忙しくて時間がないし、何か劇的なことが起こらない限り、そのための作業をすることはないだろうって。でも、パンデミックという劇的な何かが起こって、作業をする時間ができた、というわけ。その曲の中には、ライヴやラジオでだけ披露したことがあるものもあって、周りから「あの曲はどうなったの?」なんて聞かれることもけっこうあったんだよね。だから、完全な自由な気持ちで新作作りに挑みたければ、そういった曲の数々をまず世に送り出す必要があると思った。外に出して処分するってわけじゃないけど、振り返って作業すべきものがあるっていう気持ちを持ったまま新しい作品にとりかかるのは少し落ち着かなくて。まっさらなクリーンな気持ちで新作にとりかかりたかったから、あのミックステープをリリースして、まずは気持ちをリセットすることにしたんだ。

状況から目をそらして、全てがうまくいっているようなフリをするレコードは作りたくなかった。物事がうまくいっていないことは事実で、いま世界はゾッとするような状況下にある。僕は、それを認識しつつも希望を抱くようなアルバムを作りたかったんだ。

いま現在の(ダンス・ミュージックの)トラップは、10年代にシーンで勃興した初期に比べ、ビート・ミュージックの文脈からメインストリームのヒップホップやダンス・ミュージックにも浸透し、かなり異なるサウンドへと進化を遂げたように思います。EDMやヒップホップに影響を与えたトラップ・ミュージックの立役者としてあなたの名が挙げられることが多々ありますが、進化過程をどのように見つめていたか興味があります。

HM:僕がルニスと曲を作りはじめたとき、トラップ・ミュージックはラップの一種とみなされていた。当時はまだEDMではなくて、ラップ・ミュージックのサブジャンルだったんだ。だから、僕自身はEDMとしてのトラップがあまりしっくりこないんだよね。僕とルニスが作った最初のレコードは、あれは偶然でき上がったとさえ言える作品で、ふたりでただ楽しみながら音楽を作っていた結果でき上がったのがあの TNGHT のアルバムなんだけど、あれを作っていたときは、あの作品をパフォーマンスしたいとか、人にどう受け取って欲しいなんて思ってもみなかった。でもリリースされると、これまた偶然人気になってしまった。もちろんそれは嬉しいことだったよ。でも、そのあとあれと同じ音楽を作ることを人びとから求められるようになってしまって、僕はそこにフラストレーションを感じるようになってしまったんだ。そして結果的に、トラップ・ミュージックはジャンルとしての進化が止まってしまったと思う。フェスティヴァルで盛り上がるエキセントリックな音楽になってしまってからは。トラップ・ミュージックといえば花火、みたいになってしまったし、男性アーティストが中心になった。あのときは、僕もルニスも、これは自分たちが進みたい方向じゃないなと思ったね。あれはもう、僕たちがアルバムを作っていたときに作りたいと思っていた音楽とは方向が全然違ってしまっていたから。だから僕たちは、少し距離を置くことにしたんだ。トラップというものが、もう何なのかわからなくなってしまったから。もちろんトラップは僕のキャリアの一部であり、ディスコグラティの一部でもある。でも、僕は自分の音楽がトラップだと認識される必要はないと思っているし、僕は新しいアイディアで、あのときの音楽とは全く違うものを作りたいと思ってる。人気のレコードを作ることに成功すれば、それを再び作ることはもちろん難しくはない。でも、創造的に自分が面白いと思うことができ、満足できるものを作るためには、そのアプローチじゃダメなんだ。同じことを繰り返さず、何か新しいものを作ってこそ、自分の創造性を満たすことができる。所属しているレコード会社が自由に好きな音楽を作ることを認めてくれているのは、すごく幸運だと思うね。あと20年同じレコードを作りつづけろ、なんてレーベルもきっとあると思うから。

前作『Lantern』はポップ・シーンを席巻するハウシーな要素だけでなく、ここ数年のベース・ミュージックやハイパーポップなどに繋がる要素も含まれているかと思います。近年のシーンの流れを踏まえ、前作からどのように制作軸やサウンド面がアップデートされていったか教えてください。

HM:それをどう思うかは聴く人次第だとは思う。僕自身は、自分が作る音楽の核は変わらず存在しつつ、少しだけ洗練されたと感じるかな。今回のアルバムでは、他のプロジェクトの中でさえも試したことのないサウンドに挑戦してみたりもしたからね。生演奏をここまでフィーチャーしたことも初めて。これまでそれをやってこなかったのは、自分の音楽がシンセやサンプルベースだったから。だから、ここまで生演奏をフィーチャーしていると、今回のサウンドを嫌う人も必ずいると思う。でも、やっぱり僕にとっていちばん大切なのは、自分自身が納得のいくサウンドを作ることなんだ。

今作はハウスやUKG、ガバ~ハードコアといった様々なダンス・ミュージックの要素がありつつ、一方ではアッパーなだけでない側面も感じさせますよね。改めてアルバムのコンセプトを教えてください。

HM:コンセプトはひとつではないんだけど、メインのひとつを説明すると、いま僕たちは、怖くて、気が遠くなるような世界の中に生きているけど、その状況から目をそらして、全てがうまくいっているようなフリをするレコードは作りたくなかった。物事がうまくいっていないことは事実で、いま世界はゾッとするような状況下にある。僕は、それを認識しつつも希望を抱くようなアルバムを作りたかったんだ。

アルバムの制作はいつ頃からはじめましたか? 構想のインスピレーションを受けたものなどがあれば教えてください。

HM:制作をはじめたのは、たぶん2020年の初めだったと思う。インスピレーションというか、僕がつねに意識していたのは、自分自身の鳥肌が立つようなサウンドを作ること。パンチが効いて、明るくて、エキサイティングでありながら、効いた瞬間にゾクッとするような作品をイメージしながら作業したんだ。例えば、高揚感のあるサウンドと30秒間の奇妙なインタールードが組み合わさっているとかね。自分自身が聴きたくなるような、自分自身がその展開に驚かされるような作品を作るというアイディア、自分自身を驚かせたいという気持ちが、アルバムのインスピレーションだったと思う。

制作中に気になったトピックやアーティスト、作品は何かありますか? あるいは制作期間だけでなく、近年気に入っているアーティストや作品があれば教えてください。

HM:おもに聴いていたのは、ライラ・プラムク(Lyra Pramuk)の『Fountain』っていうアルバム。アルバムを聴いて泣くなんてめったにないんだけど、あのアルバムを聴いたときは涙が出た。ドラムもシンセも使われていなくて、アルバム全体がひとりの人間の層でできているんだ。まるで聖歌隊みたいなんだけど、人数はひとりだけ。あのアルバムは本当にたくさん聴いたな。自分のアルバムにも少しは影響していると思う。10分間の曲なんかもあって、聴いたらきっと気に入ると思うよ。是非チェックしてみて。

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自分自身が聴きたくなるような、自分自身がその展開に驚かされるような作品を作るというアイディア、自分自身を驚かせたいという気持ちが、アルバムのインスピレーションだったと思う。

アルバム・タイトル「Cry Sugar」は70年代のソウル・グループであるダイソンズ・フェイシズに由来しています。その曲をサンプリングした “3 Sheets To The Wind” のように、アルバムではソウルやゴスペルのサンプル、浮遊感のあるヴォーカルがユニークに織り交ぜられています。かつてなくブラック・ミュージックへの愛を表現している作品のようにも思えましたが、それは2020年の事件が関係していますか?

HM:2020年の事件に関係しているかはわからないけど、僕自身は、さっきトラップのEDM化の話をしたけど、そういった音楽や TNGHT の音楽にソウルフルな要素が欠けているからなんじゃないかと思う。トラップって、けっこう白人化してしまったと思うんだよね。TNGHT 以外の僕の音楽は、これまでもラップやヒップホップといったソウルフルな音楽の影響がたくさん反映さていた。でも、TNGHT の僕だけを知っている人たちは、僕の音楽のその側面を知らないんじゃないかと思う。だから、その僕の音楽の根源的なものを見せようとした部分はあったと思うね。

今作の制作プロセス、機材面などは以前に比べて何か変化はありましたか?

HM:これまでとは少し違ったんだ。LAにいる何人かの友人のひとりが、TV・オン・ザ・レディオのメンバーのデイヴ(・シーテック)なんだけど、彼とはすごく親しくて、僕も彼もふたりとも機材オタクでさ(笑)。ロンドンでは彼みたいな友だちはいなかった。僕はつねに違う機材を試したいタイプなんだけど、ロンドンでは同じタイプの人があまりいなくて。でもLAでデイヴに出会った。彼は、試したい機材があると即手に入れるんだ(笑)。まるでおもちゃで遊ぶかのように、いろいろな機材を散りばめ、それを使いこなす彼を見ているのは刺激的だったし、僕は彼の機材を使えたおかげで新しい機材にお金を使わなくてすんだから、すごく良かった(笑)。

アルバム・リリース後、どのようなパフォーマンスをしていきたいと考えてますか?

HM:あのとき、もうツアーはやりたくないと思ったんだ。毎日がパーティーだったし、気分的にもあまりいい状態ではなかったから。でも、しばらくそれから離れたおかげで、またツアーをやるのがいまはすごく楽しみになった。音楽シーンや音楽文化の動きや変化はものすごく早い。5、6、7年ギグをしてなかったり、アルバムをリリースしていないと、オーディエンスもガラっと変わっていると思う。だから、いまライヴをするということがどういう感じなのかをこの目で見て体感するのがすごく楽しみなんだ。10月には日本でもショーがあるし、ヨーロッパでもいくつかフェスに出る。いまいちばん興奮しているのは、それがどんなショーになるかがまったく予想できないこと。何が起こるか、どんなショーになるのかが全くわからない。それはもちろん強くもあるけど、同時に楽しみでもあるんだよね。

パンデミックの状況を鑑みつつ、各所でフェスやイベントが再開されていますが、パフォーマンスにおいてムードの変化は感じますか?

HM:フェスにはいくつか行ったけど、変化を感じたかどうかはなんとも言えないな。実際のところムードがどんな感じか、判断するのがすごく難しいと思う。またショーが再開して皆やっと普通に戻りそれを楽しんでいるように見えるけど、なんとなくそこには心配もまだ隠れているような感じがする。だからわからないな。完全に前のように戻るには、もう少し時間がかかりそうな感じはするね。

トラップって、けっこう白人化してしまったと思うんだよね。TNGHT 以外の僕の音楽は、これまでもラップやヒップホップといったソウルフルな音楽の影響がたくさん反映さていた。でも、TNGHT の僕だけを知っている人たちは、僕の音楽のその側面を知らないんじゃないかと思う。

“Lonely Days” はストリングス使いが印象的で、アルバム全体のなかで浮いているように感じました。「孤独な日々」という曲名ですが、ご自身の体験が反映された曲でしょうか?

HM:そうだね。もちろんパンデミックもその一部だけど、LAで数年暮らして感じた孤独も反映されているんだ。LAって広大な場所で、果てしなく広がっているから、ときには誰にも会わない日があったりもするんだよね。LAは、友だちに会いたいと思ったときに、サッと会いにいけるような環境じゃない。みんなお互い遠くに住んでいるし、僕はLAに越してきたときは車が運転できなかったから、なおさら大変だった。だから、最初の数年はものすごく孤独を感じたんだよね。それが映し出されているんだ。

パンデミック下では多くのアーティストが自己内省の機会を得ていましたが、自身も過去やキャリアを振り返ることはありましたか?

HM:いつもだったら、周りが動き続けているから、人ってなかなかそういう機会はないよね。でも良い意味で、僕らは今回そのチャンスをもらえた。だから僕もここ10数年のことを振り返ったし、最初に話したように、良い意味で想像を超えたこともあれば、悪い意味で想像を超えたこともあったな、と考えていたね。

パンデミックの影響で制作やライフスタイルに大きな変化はありましたか?

HM:僕は、いままで早起きを楽しんだことなんて一度もなかった。これまでは早起きが大嫌いだったのに、パンデミックに入ってから、朝方人間になって、それを楽しむようになったんだ。自分でもびっくりだよ。

今作では楽観主義と持続可能性を強く意識し、ご自身も健康面を優先されているとのことですが、日頃から健康面で実践していることは何かありますか?

HM:ははは(笑)。それってプレスリリースに書いてあった? あれは僕の友だちが書いたんだけど、あの資料のほとんどはでっちあげなんだ(笑)。超真面目なプレスリリースにうんざりしちゃってさ。無理やり賢くきこえるような文章を書いたりとか。だから、でっちあげの方が面白いんじゃないかと思ったんだ(笑)。一応早起きはしてるけどね(笑)。あとはときどきジムに行く。

今回のアルバムでいちばん好きな曲は “Bicstan” なのですが、クラシックなハウスの旋律が根底にありながらもリズミカルなガバキック、フーバー音やアシッド音などレイヴィーな要素が散りばめられています。ここ近年ではレイヴ・カルチャーのリヴァイヴァルの流れが生まれてきていますが、あなたにとってのレイヴ・カルチャーとは何ですか?

HM:レイヴ・ミュージックは、ラジオから流れてくるポップの次に僕が最初に夢中になったアンダーグラウンドの音楽。かなり前の話だね。レイヴ・ミュージックにハマったのは9歳とか10歳のときだった。1995年くらいかな。僕には年上の従兄たちがいて、彼らが皆パーティーに行ってたんだ。それに影響を受けてレイヴ・ミュージックが大好きになったから、僕の音楽はもう長いことレイヴ・ミュージックにインスパイアされてる。あのサウンドとエナジーは、僕のハートのそばにずっとあるもの。いまレイヴ・ミュージックのリヴァイヴァルが起こっているのはちょっと変な感じがするけど、流行りに関係なく、レイヴ・ミュージックはずっと僕の一部なんだ。

通訳:ありがとうございました。

HM:ありがとう。10月に日本に行けるのを楽しみにしているよ。

[ハドソン・モホーク来日情報]

SQUAREPUSHER
W / LIVE VISUALS BY DAITO MANABE / Rhizomatiks

SPECIAL GUESTS
HUDSON MOHAWKE (DJ SET)
DAITO MANABE

10/25 (TUE) 梅田 CLUB QUATTRO
10/26 (WED) 名古屋 CLUB QUATTRO
10/27 (THU) 渋谷 O-EAST
10/28 (FRI) 渋谷 O-EAST

イベント詳細はこちら:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10760

Squarepusher - ele-king

 ついにこの日が来た。長らく延期になっていたスクエアプッシャーの来日公演だけれど、ようやく振替の日程と会場が決定した。10月25~28日、大阪・名古屋・東京を巡回。真鍋大度に加え、なんとハドソン・モホークもDJで帯同。これはすごいショウになりそうだ。
 なお東京公演は、なくなってしまった新木場スタジオコーストにかわり、渋谷O-EASTでの「2 DAYS」開催となる。新日程の詳細は下記をチェック。

interview with HASE-T - ele-king

 ダンスホールのベテラン・プロデューサーの新たな挑戦だ。もともとパンク少年だった HASE-T は1980代後半からレゲエ・ディージェイとして活動を開始、『Sentiment』(1997年)、『SOUND OF WISDOM』(1998年)、『OVER & OVER』(2001年)という3枚の作品を発表後、プロデューサーの活動に移行する。その後、数多くのダンスホールのコンピレーションのプロデュース等を手掛けてきた。すなわち、プロデュース活動20周年を記念する『TWENTY』はサード・アルバム以来のソロ・アルバムとなる。レゲエを基盤としつつ、そこだけに留まらない多彩なリズムとメロディ、サウンドを取り入れ、自らも歌詞を書き、歌い、音楽における言葉の力に向き合った作品でもある。

 「ボブ・マーリーの曲がぜんぶ歌詞もわかって日本語のように頭に入ってきたら人生が変わる」と HASE-T は語る。これまで幾度となくジャマイカに渡り、そこで音楽を作り、ジャマイカの酸いも甘いも知っている音楽家の説得力のある言葉だ。が、ジャマイカとの距離が表現されているのも本作の肝だ。

 HASE-T のキャリアを振り返ることは、日本のダンスホール・レゲエの歴史の一端に触れることでもあり、個人的には日本におけるヒップホップとレゲエの発展史におけるミッシング・リンクを発見する経験でもあった。それこそ先行曲は、HASE-T が80年代後半から付き合いのあるスチャダラパーの3人と、シンガーの PUSHIM との共作曲 “夕暮れサマー” である。心地良いリディムに乗って BOSE がくり出す “サマージャム’95” のセルフ・パロディには、HASE-T が抱く時代への違和感と通じる真っ当な時代認識がある。アルバムの話を皮切りに、自身のバイオグラフィーやジャマイカでの経験をはじめ、大いに語ってくれた。

ランキンさんを出待ちして、自己紹介をして「手伝わせてください!」って直談判した。それからスピーカーを運ばせてもらうようになって、そのあいだに歌も歌わせてもらうようにもなって。最初にランキンさんに会ったときはまだ10代でしたね。

レゲエが基盤にありつつ、いろんな音楽が自然に混じった作品に仕上がっていますよね。

HASE-T:プロデューサー活動の20周年でどんなアルバムを作ろうかまず考えたわけです。自分がプロデューサーで歌わない前提でダンスホールのコンピレーションを作っていたときは、ジャマイカの新しいトレンドを意識したり、そこにヒップホップを混ぜたらどうなるかを実験もしたりしていた。けれども、いざソロ・アルバムでみずからも歌うとなると、最先端のリズムトラックが自分の表現に合わない。まず、そこのバランスを取ろうと考えましたね。

例えば、CDのみに収録されるボーナストラックの11~15曲めは直球のダンスホールですよね。

HASE-T:そうですね。ボーナストラックは過去自分のレーベルでリリースしていた曲のリミックス中心に収録しています。普通にダンスホール・レゲエのレーベルだったのでおのずと直球のダンスホールになってます。
 あと、RYO the SKYWALKER に歌ってもらった “Black Swan” はいまのジャマイカの最先端のオケに近いものですね。そういうイケイケなのは今回は自分らしくないなと。けれどバランスとしていまっぽいオケも入れたかったので、それに合うと思ったアーティストに参加オファーをして、自分が歌うオケはもうちょっとスカっぽい曲とか90年代っぽいレゲエにしようとか、自由にチョイスにしました。90年代のレゲエがお題の場合は当時使っていたドラムマシーンの音を使ったりとその辺はこだわって作ってます。そういう意味でも、このアルバムが現在のダンスホール・レゲエを表現するアルバムだとは1ミリも考えていなくて、あくまでも自分が好きな音楽をやった作品ですね。

多彩なビートやリズムがあるのが本作のひとつの特徴ですよね。

HASE-T:これは種明かしになっちゃうけれど、後半の “Walk On By” と “Go Around (Album Version)” はアフロですね。

たしかに。アフロビーツ/アフロフュージョンですね。

HASE-T:めちゃくちゃ聴いていますね。レマ(Rema)にまずハマりました。バーナ・ボーイ(Burna Boy)も。

僕はウィズキッド(Wizkid)のアルバム『Made in Lagos』が好みでけっこう聴きました。

HASE-T:ウィズキッドも好きですね。いまのジャマイカの音楽、レゲエはアフロビーツを、アフロビーツはレゲエを吸収して進化しているなという感じでいいなと思って聴いています。

スティクリが出てきたときは本当に斬新でした。機材もいまみたいなDTMがあったわけじゃなくて〔……〕プリミティヴだけど、音はデジタルという組み合わせですよね。スタジオに楽器を持たずに、キーボードを持っていく姿が未来的でカッコ良かったんです。

HASE-T さんは80年代後半からレゲエ・ディージェイとして活動をはじめられてから、その後ジャマイカに何度もわたり、00年代以降はプロデューサーの活動に移行されていきますね。最初にどのようにしてレゲエの世界に足を踏み入れましたか?

HASE-T:やっぱりランキン(・タクシー)さんですよね。当時日本で「ダンスホール・レゲエをやりたい、聴きたい」ってなったら、ランキンさんの TAXI Hi-Fi(ランキン・タクシーのサウンドシステム)のところに行くしかなかった。やっている人が他にいなかったんですよ。それぐらい少数派だったから。80年代後半の当時、ランキンさんは自分で作った小さいスピーカーをハイエースに乗っけて、いろんなクラブを回ってレゲエをかけていたんです。俺も歌いたかったから、ランキンさんを出待ちして、自己紹介をして「手伝わせてください!」って直談判した。それからスピーカーを運ばせてもらうようになって、そのあいだに歌も歌わせてもらうようにもなって。最初にランキンさんに会ったときはまだ10代でしたね。

そんな若かったんですね。HASE-T さんは元々パンク好きの少年だったと聞きました。

HASE-T:そうですね。イギリスの初期パンクから入って、ずっとイギリスのロックを聴いていましたよ。ザ・スミスまでは聴きましたけど、その後イギリスのロックには興味を失ってしまって。パンクを聴いていると自然とレゲエに行くじゃないですか。ザ・クラッシュのアルバム『サンディニスタ!』(1980年)で歌っているマイキー・ドレッドを聴いたりして。それからジャマイカの音楽を聴こうとしたけれど、ジャマイカの情報を当時日本で手に入れるのは本当に難しかったですね。「イエローマンって誰だろう?」とかそういうレベルですから。でも、とにかく聴き漁っていく。

同時期にヒップホップも入ってきていましたよね?

HASE-T:当時公開された『ワイルド・スタイル』(日本公開は1983年)も観ましたけど、自分はコンピュータライズドされていくレゲエの方に「なんだこれ!?」っていうメチャクチャ感を強く感じてそっちにドーンと行ってしまうわけです。パンク上がりだったのもあって、シュガーヒル・ギャングとかのディスコのノリが自分のなかで熱くなくて。

いわゆる「ブラコン」の延長に聴こえてしまった、と。

HASE-T:そういうことです。「ベストヒットUSA」とかをぜんぜん楽しめなかったタイプだったので、ヒップホップに関してはビースティ・ボーイズの『ライセンス・トゥ・イル』(1986年)や〈デフ・ジャム〉からハマっていった感じですね。で、二十歳のころに行ったニューヨークとジャマイカがカルチャー・ショック過ぎて。音楽をやりに行っているのに自分のちっぽけさを見つめ直してしまう経験でした。

コンピュータライズドされていくレゲエの虜になったということですが、HASE-T さんも多大な影響を受けたスティーリー&クリーヴィの魅力とは何でしょうか?

HASE-T:自分のなかでスティクリはダンスホール・レゲエを作った人たちという認識です(*)。当時、ジャマイカにもアメリカの音楽の情報は入ってきていただろうけど、とうぜんいまほど情報はなかったわけです。そういう情報がない状況でジャマイカの人らのアメリカへの憧れと感覚で作っていたのがあのオケだと思っています。スティクリが出てきたときは本当に斬新でした。機材もいまみたいなDTMがあったわけじゃなくて、テープを回して電子楽器をシーケンスなしで弾いてドラムとベースを作っていく。手法はプリミティヴだけど、音はデジタルという組み合わせですよね。スタジオに楽器を持たずに、キーボードを持っていく姿が未来的でカッコ良かったんです。

その後、ジャマイカのスタジオで音楽作品を作っていくぐらい現地の音楽の世界に入り込んでいくわけですよね。

HASE-T:最初はダンスホールのリディムを打ち込みでどうやって作るのかを知りたかったんです。ドラムマシーンを買って見よう見まねでやっていたけれど、どうしてもわからなくて。当時日本でダンスホールのリディムを作っていたのは、V.I.P. Crew の人たちをはじめ数人しかいなかったと思いますね。それで作り方を知りたくて90年代のはじめにジャマイカに行きました。ジャマイカのスタジオは「すみません、見せてください」って行くとけっこう入れてくれるんですよ。ジャミーズやペントハウスといった当時のジャマイカのスタジオを巡りましたね。当時のスタジオはほとんど全部行ったんじゃないかな。

本格的にプロデューサーとして活動しはじめるのが00年以降ということは、それだけノウハウや作り方を会得するまで時間がかかったということですか?

HASE-T:そうですね。わからないことだらけだったので時間がかかりました。けど、ジャマイカでエンジニアがミックスをする姿をみてなぞが解けたというか、目から鱗でした。エンジニアが卓の前に座ってミックスする姿がまるで楽器を弾いているみたいで驚きました。各チャンネルにそれぞれ楽器の音が入っていて、ベース、キック、スネア、ピアノ、シンセとかその複数のチャンネルを曲に合わせてミュートして、その場で曲を作っていく。エンジニアが曲を作っていることをそこで初めて知って。最初に観たミックスはスキャッタ(SKATTA)でした。そのときはまだ駆け出しエンジニア、トラックメーカーな感じでしたけど、その後彼はニーナ・スカイの大ヒット曲 “Move Ya Body” でも使われた “Coolie Dance” のリディムで世界的ヒットを出した人になりましたね。彼が卓を触る姿は神がかって見えて、またカッコ良くやるんですよ(笑)。卓のミュート・ボタンを押すときの決めポーズみたいのもあって。そうやってヴァイブスで曲を作っているのを見て、「これはすげえ」って思いました。

まさにダブですね。

HASE-T:そう。ルーツ・レゲエ、ダブからダンスホールまで、脈々と受け継がれて繋がってるんだなと。そういう伝統芸みたいな作り方をスタジオで目の当たりにして一気になぞが解けました。

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弱者に優しくないと感じます。それはすごい思う。強い人は何やっても強くて、弱い人は何やっても弱くて、誰も助けてくれない。そういうことを空気で感じていたら若い子らもどうでもいいやって、自分の未来が輝くように思えないんじゃないかな

2011年に 24x7 レコードにアップされたインタヴューを読みまして。そこで、スティーヴン・マクレガー(Stephen "Di Genius" McGregor)を面白いプロデューサーとして挙げています。彼はドレイクやジョン・レジェンドらにも曲を書いていますし、レゲエ、ヒップホップ、R&Bを横断していきますね。HASE-T さんも00年代に入ってから、さまざまなダンスホールのコンピレーションを手掛け、ヒップホップのラッパー、レゲエのディージェイ、シンガーの方々と制作していきます。

HASE-T:ジャマイカのダンスホール・レゲエはその音を世界で華咲かせるにはヒップホップを混ぜていくというのがあった。そうやって混ぜながらやっていて、ダンスホールだけでも行けるんじゃないっていう扉を00年代初頭に開いたのがショーン・ポールだった。彼がメジャーに行ってドカンとヒットして、そこからスティーヴンの世代につながっていく。ダンスホールの世界史ということで言えば、そのふたりの登場は大きかったですね。00年代初頭にジャマイカに行ってMTVを観ていると、レゲエのアーティストがたくさん出るようになって、ダンスホールがブレイクしたなと認識しましたね。

HASE-T さんがプロデューサーとして関わって記憶に残っているディージェイやシンガー、ラッパーにはどんな人がいますか?

HASE-T:本当にたくさんの人とやってきましたからね(笑)。ラッパーでは、KREVA がすごかったです。『TREASURE HOUSE RECORDS STREET RYDERS VOL.1』というコンピに収録された “醤油ベビ” でやっていますね。歌い直しなしの一発録りでしたね。そこまで気持ち良くスパッと終わる人はいなかったです。あと、ラッパ我リヤとは、『DANCEHALL PREMIER』というコンピの “MAJIKADEABINA” という曲でやりましたし、そのシリーズの『DANCEHALL PREMIER 2』の “湾岸BAD BOYS” には BOSE と ANI が参加していますね。
 さらに遡れば、自分のソロ・アルバム『Sentiment』(1997年)に収録された “この街でPart.2” は、MAKI(THE MAGIC)くんにトラックを作ってもらって、MR.DRUNK 名義で MUMMY-D にラップしてもらって、ミックスが(ILLICIT)TSUBOI くんで、ネタをスクラッチしたのが WATARAI くんでした。MUMMY-D は、“音の種族”(『SOUND OF WISDOM』収録)とソロ曲をリミックスしてくれましたね。

このあたりは日本のヒップホップとレゲエの関係について考えるときに重要な歴史ですね。

HASE-T:ジャンルの架け橋とかはあんまり当時考えてなくて、普段のクラブ活動の中にみんながいたというか、自然な流れというかそんな感じです。振り返ると重要な歴史とか言われるかもですが、自然な流れの結果ですかね。
記憶に残っているラッパーと言えば、今回のスチャダラパーもほぼ一発録りで終わりましたね。1時間で歌録り終わっています。

今回スチャダラパーと PUSHIM さんとの “夕暮れサマー” の共作はどのように実現したんですか? PUSHIM さんとの出会いについてもご自身の note に書かれていました。また、ドラム・パターンとサックスのアレンジのアイディアは SHINCO さんが出したそうですね。

HASE-T:スチャダラパーと PUSHIM がやったら合うんじゃないかなという感覚的なアイディアがはじまりです。PUSHIM と出会ったのが00年ぐらい。その頃の大阪では、PUSHIM、NG HEAD、RYO the SKYWALKER、JUMBO MAATCH、TAKAFIN、BOXER KID ら大阪のシーンを作る人たちが地下で集まってふつふつしていた時代。スチャダラパーとは80年代後半に芝浦のインクスティックであった「DJアンダーグラウンドコンテスト」で会っているからかなり古いです。そのコンテストは自分も出演してました。

“夕暮れサマー”で BOSE さんは、“サマージャム’95” のリリックをセルフ・パロディしている箇所もありますね。

HASE-T:そういうサーヴィスまでしてくれたからありがたいですよ。ANI さんの「棒アイス/ガリガリ齧り」もなかなか出てこないだろうし、やっぱりすごい人たちだなって思いました。SHINCO は繊細かつ大胆なセンスもあって、今回の楽曲の BOSE、ANI ラップ部分後半8小節は、彼のアイディアのサンプリング・ネタが大元にあって、それを自分が最終的にアレンジ、弾き直しているんですよ。

HASE-T「夕暮れサマーfeat. スチャダラパー&PUSHIM」

HASE-T:それと、今回は言葉重視のアルバムにするのを意識したんです。前半は直球の言葉で、後半にすこし何を言っているかわからないけれど、トータル的に感じてもらえるようにストーリー性も意識しました。例えば、“いいわけないよ” はすごく直球です。

「いいわけなんてないよ/世界が悲鳴をあげて痛いよ」からはじまり、「今まであった森が今無いよ/代わりににょきにょき伸びたビルばかりだよ」と続きますね。自然破壊と気候変動について言及されています。

HASE-T:歌詞を書いていて「いいわけなんてないよ/世界が悲鳴をあげて痛いよ」って言葉が出てきて、そこから頭の中にあることがぽろぽろ出てきたと言うか、初めからお題で「気候変動」について書こうとか決めて書いたわけじゃないです。あと、言葉重視と言うのは、かつてランキンさんと家が近かった時期にいっしょにタクシーで帰ったことがあるんです。そのときランキンさんが「音楽は言葉の力なんだよね」ってボソッと言って、そのことについて話したことをいまもよくおぼえています。その言葉に影響された感じです。自分はむかしからRCサクセションが好きで聴いていていま改めて聞くと言葉が生きてるなと。直球で歌詞を書けるようになったのは年齢も関係してるかなとも思いますが。

ボブ・マーリーの曲がぜんぶ歌詞もわかって日本語のように頭に入ってきたら人生が変わるような音楽だと思う。そういう消費物じゃない音楽がもっとあってもいいし、作ってもいいんじゃないかなって

歌詞には全体を通していまの時代に対する違和感が出ていると思うのですが、いまの時代の何にいちばん違和感を抱きますか?

HASE-T:弱者に優しくないと感じます。それはすごい思う。強い人は何やっても強くて、弱い人は何やっても弱くて、誰も助けてくれない。そういうことを空気で感じていたら若い子らもどうでもいいやって、自分の未来が輝くように思えないんじゃないかなって思います。このままじゃいかんよねと。自分は政治活動をするわけではないので、作品のなかで何かを伝えたいと考えて。音楽は半分は言葉ですし、それこそボブ・マーリーの曲がぜんぶ歌詞もわかって日本語のように頭に入ってきたら人生が変わるような音楽だと思う。そういう消費物じゃない音楽がもっとあってもいいし、作ってもいいんじゃないかなって。

含みのある歌詞ということで言えば、“深海魚” が面白かったです。

HASE-T:“深海魚” は正直レゲエ・マナーでもないし、ヒップホップでもないし、言葉数の少ない歌ですね。自分の中ではバラード感覚。

HASE-T さんがレゲエやダンスホールなどこれまで吸収してきた音楽を用いて自分の音楽作品に落とし込んでいく段階に入ったということですよね。

HASE-T:そういうことですね。音楽のジャンルごとに表現のルールみたいなものがあると思うんだけど、それを守りつつ、けど壊して自分のフィルターを通して自由につくる感じですかね。あと、作品を出してからライヴをやるつもりでもいます。やりたいことがあって、それをやるには練習のための準備期間が必要なんです。ただ単純にバンドでアルバムを再現するということではなく、それこそスティクリみたいなコンピューター・バンドというかメジャー・レイザーのようなサウンドシステムのラバダブセットを消化したエレクトロニック・ミュージックというか、そういうイメージです。どこまでやれるかわからないですが……

そこまで見えているんですね(笑)。メンバーは?

HASE-T:それをこれから探そうとしているんですよ。例えば、アスワドの曲のインストをやったり、ダンスホールのインストをやったりしつつ、ゲストが歌って、俺もたまに歌う。MPCを使ってフィンガードラムでレゲエができる人がいたらいいですね。

それは面白そうですね。

HASE-T:ジャマイカに行くと、スタジオやディージェイや踊っている人、何を観ても「すげえ!」ってなるんです。最初はやっぱりジャマイカ最高ってなりますし、それぐらい魅力のある島なんです。すべてをわかったつもりじゃないけど、「ジャマイカ最高」からジャマイカの嫌なところを体験したりして、好き、嫌い、けどここは好き、ここだけは嫌いとか、好き嫌いの周期は3、4周はしたと思います。またあるとき、サウンドシステムを観に行って、朝方若い子らが輪になってワッショイワッショイ踊っているのを観たとき、「若いなあ」って引いて観ている自分に気づいて、それは「ジャマイカ最高」からのひとつの区切りになるきっかけになりましたね。自分も元々はハードコアなレゲエ野郎ではありますけど、いまはちゃんと自分のフィルターを通して音楽をやりたいんです。その延長で長らくやっていなかったセレクター(DJ)も自分のフィルターを通した選曲で復活したいと考えていますね。

*編註:じっさいは、ディジタル・ダンスホールの画期はウェイン・スミスの85年の楽曲 “Under Mi Sleng Teng”(通称 “Sleng Teng”)とされる。カシオのキーボードのプリセット音を用いたそのリディムを手がけたのは、プリンス・ジャミー。鈴木孝弥『REGGAE definitive』135頁参照。

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