ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Galen & Paul - Can We Do Tomorrow Another Day? | ポール・シムノン、ギャレン・エアーズ
  2. interview with Shinya Tsukamoto 「戦争が終わっても、ぜんぜん戦争は終わってないと思っていた人たちがたくさんいたことがわかったんですね」 | ──新作『ほかげ』をめぐる、塚本晋也インタヴュー
  3. KLF KARE. ——ザ・KLFが介護をサポートする!?
  4. Oneohtrix Point Never - Again
  5. Philip K. Dick ——もういちどディックと出会うときが来た——『壊れゆく世界の哲学 フィリップ・K・ディック論』刊行記念トークショー
  6. interview with IO KoolBoyの美学  | KANDYTOWN、イオ、キャンディタウン、喜多見
  7. 『壊れゆく世界の哲学 フィリップ・K・ディック論』 - ダヴィッド・ラプジャード 著  堀千晶 訳
  8. Lost New Wave 100% Vol.1 ——高木完が主催する日本のポスト・パンクのショーケース
  9. J.A.K.A.M. ——11月27日に新たなアルバム『FRAGMENTS』をリリース
  10. interview with JUZU a.k.a. MOOCHY 生き方を求めて  | ムーチー、インタヴュー
  11. DETROIT LOVE TOKYO ──カール・クレイグ、ムーディーマン、DJホログラフィックが集う夢の一夜
  12. yeule - softscars | ユール
  13. Columns 11月のジャズ Jazz in November 2023
  14. Zettai-Mu “KODAMA KAZUFUMI Live in Osaka 2023” ──大阪のロングラン・パーティにこだま和文が登場
  15. AMBIENT KYOTO 2023最新情報 ──撮りおろしの作品動画が期間限定公開、コラボ・イベントも
  16. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ
  17. JUZU a.k.a. MOOCHY -
  18. interview with Gazelle Twin UKを切り裂く、恐怖のエレクトロニカ  | ガゼル・ツイン、本邦初インタヴュー
  19. ANOHNI and The Johnsons - My Back Was a Bridge for You to Cross
  20. KODAMA AND THE DUB STATION BAND - ともしび

Home >  Reviews >  Album Reviews > Major Lazer- Free the Universe

Major Lazer

Bass MusicDancehallHip HopHouseReggae

Major Lazer

Free the Universe

Mad Decent / Traffic

Amazon iTunes

北中正和 May 09,2013 UP

 カリブ海の音楽といえば、椰子の浜辺のリゾートの涼風やこんがり灼けた美女が反射的に浮かぶようにわれわれは洗脳されている。
 気持ちのいいイメージを思い浮かべることに反対する理由は何もないのだが、ジャマイカ生まれのダンスホールやそれがスペイン語圏の島々の音楽と結びついたレゲトンは、その光景にとどまらない部分も持っている。それらの音楽はカリブ海のストリート/アンダーワールドに深く根ざす一方、ヒップホップやマイアミ・ベースやイギリスのダブステップやブラジルのバイリ・ファンキなど世界各地のエレクトロニックなダンス・ミュージックとも通底しているからだ。
 地すべり的なその現象を象徴的に物語っているのがレゲトンの人気者ドン・オマール・フィーチャリング・ルセンゾの"ダンサ・クドゥロ"だろう。映画『ワイルド・スピードMEGAMAX』に使われたこの曲は、アンゴラのダンス・ミュージック、クドゥロをもとにしてポルトガル人DJルセンゾが放ったヒットのリメイクで、YouTubeでの視聴が4億4千万回を越えている。

 さて、バイリ・ファンキの支持者でもあるDJディプロが主宰するメジャー・レイザーは、ダンスホールを基調にしているが、ビートは通常のダンスホールより多様で越境的。ウェブの『IMDb』に引用されている、ディプロにプロデュースを依頼したのは「音楽の根拠地を持たない感覚が自分と似ているので、ふたりが組めば根拠地のなさを根拠地にできると思ったから」という意味のM.I.A.の言葉(引用出典は不明)もなるほどという感じだ。
 この4年ぶりの2作目では、前作でチームを組んでいたスウィッチが去り、新しいDJたちとチームを組んでいるらしい。今回フィーチャーされているのはエレファント・マン、シャギー、ワイクリフ・ジョンといった有名どころから、ロック系のブルーノ・マーズ、ダーティ・プロジェクターズ、ヴァンパイア・ウィークエンドまでと幅広い。
 ときには尖鋭的に、ときにはロックぽく、ときには下世話に、柔軟にビートを切りかえながらアルバムは進んでいく。ディープなヒップホップを聴いた後にブラック・アイド・ピーズに出会ったときのような親しみやすさもおぼえる。
 ミシシッピ生まれでアメリカ南部を転々として育ったディプロには、まだまだ隠している音楽の引き出しがありそうだが。

北中正和