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エクシーが「〈ナイト・スラッグス〉! 〈ナイト・スラッグス〉!」とうるさいので、ディプロの編集したダブステップのコンピレーションを紹介しよう。〈ナイト・スラッグス〉のコンピレーションは、若い人にまかせた。あれはやっぱ、週末あっぱらぱ~になって踊りたくて踊りたくて仕方のない若者のいわばゲットー系、新種のハウス・ミュージックでしょう。〈ナイト・スラッグス〉の主宰者のひとり、エルヴィス1990(L-Vis 1990)は〈マッド・ディセント〉からもシングルを出しているし......という強引な展開からはじめよう。
2010年の後半にはジャイルス・ピーターソンの〈ブラウンウッド〉までもが、このシーンを無視することを止めて、ダブステップ/グライムのコンピレーションCDを発表している。ジャジーな連中にも通用するとにらんでの企画だろうけれど、それでは〈マッド・ディセント〉のアプローチはどうかと言えば、オーヴァーグラウンドとアンダーグラウンドのブレンド、ポップと硬派のシャッフル、いかにもディプロらしい企画である。
アルバムはブリストルのジョーカーとジンズによる"リ・アップ"からはじまる。メジャー・レイザー、スクリームやラスコ、ベンガやキャスパ......といったコマーシャルな連中、そしてジェームス・ブレイクやアントールド、ゾンビーやスターキーといったアンダーグラウンドな連中、そして口汚い南部のラッパー、リル・ジョン......などを並列させる。カナダのダブステッパー、DZやストックホルムの女性ダブステッパー、リトル・ジンダーのように、ここ数年の国際的な広がりも見せている。ダブステップというと、暗くアングラな印象を抱いている人がいまだにいることに驚くが(まあ、たしかに今世紀初頭の世界的に暗いムードを反映しているとも言えるのだけれど)、しかしここ2~3年はパーティ・ミュージックとして世界のさまざまな都市に広がっている。ディプロは彼なりの視点を持ってシーンにアクセスしてこの編集盤を選曲しているが、ポイントはまさにそこだ。そしてそれは、彼のこの10年の冒険――バイリ・ファンク、ボルチモア、ダンスホールなどの延長にあることがわかる。
あるいは、メジャー・レイザーのスクリームによるリミックス、UKのドクター・P"スウィート・ショップ"のようなピアノ・ハウスとダブステップのレイヴ的結合、ラスコのキラー・トラック"コックニー・サグ"のパンク的アティチュードなどなど......ディプロから見える多様性をうまく展開している。ジェームス・ブレイクに関しては、〈ヘムロック〉からのデビュー・シングルの"スパーリング・ザ・ハウス"を選んでいる点も気が利いている。
アルバムのクローサーはラスコによるグライミーな歌モノのハウス"ホールド・オン"。2010年に〈マッド・ディセント〉からリリースされたヒット・シングルだ。ダブステップのまさに(日本を除く)インターナショナルな成功を象徴させる1枚である。
野田 努