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昼間はフランス大使館で枯山水サラウンディング(=アンビエント・ミュージック)、夜は品川プリンスでフラミンゴス(=ドゥー・ワップ)、そして、深夜はディプロのDJだー。遊びっぱなしー。
3時という深い時間帯にもかかわらずディプロの前も後もフロアはぎっしりで、例によって実に踊りにくい。前半のハイライトはいまだに"バッキー・ダン・ガン"。マイクで煽りまくるディプロが背広を着ていて、それこそバッキー木村に見えてくる(ウソ、"ナイト・オブ・ファイアー"とかかけてないし)。セカンド・サマー・オブ・ラヴはダンス・ミュージックからヴォーカルが消えていく過程だったけれど、それもニュー・レイヴといわれはじめた辺りからMCが入る曲が増えはじめ、その夜もうるさいほどMCのオン・パレード。そうでなければディプロが隙あらばとマイクを握る。むしろこの雰囲気はセカンド~直前に近く、マッドチェスターがレイヴ・カルチャーを広めたと信じて疑わない方々には申し訳ないけれど、イギリスのロック・ミュージックがビート・フリークと化していく直接の要因はゴー・ゴーや遅くともデフ・ジャム・ショックがその引き金だったことを思い出す。エイジ・オブ・チャンスやポップ・ウイル・イート・イットセルフ、それにジーザス&メリー・チェインからワールド・ドミネイション・インタープライジィズに至るまで、ロックがダンス・ビートと出合った時のダイナミズムは88年にはほぼ出尽くしていた。
その当時のインディ・ロックーダンス・クロスオーヴァーが持っていたアグレッシヴなムードを想起させるだけでなく、ディプロとスウィッチのメイジャー・レイザーが放った最大のヒット・シングル"ポン・ド・フロアー"にリミックスで起用されていた新人MCのデビュー・ミニ・アルバムがマリアージュ(!)から。フレイミン・ホッツからの初期リリースも採録され、エレクトロ・ゲットー・スタイルの猥雑なヒップホップが連打されたあげく、ラストは「誰かが妊娠する!」と繰り返しながら歌って踊るヒップ・ハウス。正直、どうなの、この終わり方は......と思いますが、デフ・ジャム以前とバイリ・ファンキ以降をつなぐセンスに揺るぎはなく、マントロニクスやマン・パリッシュの系譜に置いても、まー、許されるでしょう。マッシヴ・アタックがサンプリングしまくっていた"ゲット・ステューピッド"あたりからはホントに直結してる感じ(つーか、久しぶりに"ゲット・ステューピッド"を聴いたら、こっちがオリジナルなのにマッシュ・アップにしか聴こえなくなっているという......)。
ネプチューンズの高速回転から真面目にサウスをやろうとしている(?)曲も。そして、とくに楽しいのが、やはりメイジャー・レイザーのプロデュースによる"ホールド・ザ・ライン"。使いまわしのトラックだろうけど、それで、この破壊力は大したものです。ディプロ帝国はまだ広がり続けている......
三田 格