「TT」と一致するもの

Felix K - ele-king

 5月末から『アンビエント・ディフィニティヴ』の編集に突入してしまったので......2ヶ月遅れの紹介です。ベルリンからドローンも取り混ぜたドラムン・ベースの新展開で、〈ハード・ワックス〉傘下に設けられた〈ヒドゥン・ハワイ〉を共同で運営するフェリックス・Kのデビュー・トリプル・パック(アナログはグレー・ヴァイナル)。先行した〈アルファカット〉やDブリッジの〈イグジット〉と同じくビートを強調せず、オフを多用し、ダブとして聴かせる要素が強いあたりはクルーダー&ドーフマイスターを思わせるものの、全体的にはもっとストイックで、さりげなくインダストリアル・ドローンへと流れていく部分はやはり旧来のものとは一線を画している。ベーシック・チャンネルとドラムン・ベースの融合は意外な広がりを見せているというか。

 〈ヒドゥン・ハワイ〉からは、もっと過激にドローンだかドラムン・ベースだかわからないほど融合しているものもリリースはされているけれど(ドローン・ベース?)、『フラワーズ・オブ・ディストラクション』ではそこは行ったり来たりの範疇にとどめられていて、いわばドローンはダンス・アルバムにおけるアンビエント・パートのような役割を果たしている。そこで煽られる雰囲気は不穏でありながらも、それに疎外されるようなものではなく、まるで沼から這い上がるかのようにしてダンス・ビートが立ち上がったかと思えば、再び、それが当然であるかのようにして暗く沈んだドローンへと戻っていく。曲名は"フラワーズ・オブ・ディストラクション1"から"フラワーズ・オブ・ディストラクション14"と続き、最後が"フラワー・オブ・ホープ"。しかし、これも、けっして明るい曲ではない。何かに耐えているような響きに終始する。

 エレキング9号のインダストリアル特集で、僕は同傾向のフィズ『ザ・コモンズ』を指して「踊れるスロッビン・グリッスル」というようなことを書いてしまった。しかし、その表現は『フラワーズ・オブ・ディストラクション』が世に出るまで控えておくべきだったかもしれない。90年代のドラムン・ベースが持っていた楽観性や高揚感はここには微塵もなく、個人的な閉塞感だけが宙を舞う。内向性と攻撃性が共存し、何度聴いてもヨーロッパの暗闇に引きずりこまれるだけである。ラース・フォン・トリーアーの磁場に。底なしのメランコリアに。ずぶずぶずぶずぶと......。

 あるいは、最後のところでリズムがもうひとつ納得がいかなかったけれど、やはりイグジットからリリースされたダン・ハーバーナムによるアンビエント・ドラムン・ベースの試み、『フロム・ザ・ノウン』にもかなり興味深いものがあり、ベーシック・チャンネルとドラムン・ベースの融合にはさらなるポテンシャルが感じられることも確か。ダブステップとドローンが境界線を失ったブリストルのエンプティセットやローリー・ポーターらとの共振も期待しつつ、行く末を気にしてみたい。

 似たようなテイストなので、さらに2ヶ月遡ってマイルス(・ウィッテイカー)名義のファースト・ソロも。デムダイク・ステアとして先に知名度を上げているものの、それ以前にミル&アンドリーとしてアンディ・ストットと共にダブステップのプロジェクトをやっていたウィッテイカーがストットのテクノ路線に刺激されたものかと思ったけれど、『ラグジュアリー・プロブレムズ』のようなソリッドでインダストリアルな仕上げにはこだわらず、トランスを思わせる生暖かいアンビエントまであって(現シーホークスのジョン・タイがやっていたMLOなどを思い出す)、『フラワーズ・オブ・ディストラクション』よりは柔軟性のある世界観を押し広げている。暗く波打つようなビートもどこかにファニーさがあり、全体に「夜は墓場で運動会」といったところだろうか(『君に届け』の肝試しみたいな?)。『フェイント・ハーティッド(=ぼんやりとした心)』にはデリック・メイが見え隠れするような曲まであって、それはそれで驚くというか。


interview with Soggy Cheerios - ele-king


ソギー・チェリオス
1959

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 「Soggy Cheerios(ソギー・チェリオス)」チェリオスとはアメリカ産のシリアルで、形容詞「ソギー(ふやけた)」が頭に乗っかるとまさにいま食べられようとしているかのようだが、彼らがなぜ新バンドにそんな名前をつけたのかを、頭のふやけた私は残念ながら訊きそびれてしまった。もちろんわからなくはない。どころかいくつかの暗喩さえよみとれる。いや、これはむしろ、音楽を何度も聴き、何倍も愉しみ、深く考えるとともに彼らに併走するための入り口のひとつであるにすぎない。彼らとは鈴木惣一朗と直枝政広である。ワールド・スタンダードとしてインストゥルメンタル主体の汎音楽を長年追求し、文筆家として『モンド・ミュージック』で音楽の間口を広げ、プロデューサーとしても後進に影響を与えつづけけた才人、鈴木惣一朗。かくいう私も彼の音楽と文章から多くを学び、前職の『スタジオ・ボイス』時代は私にとって彼の仕事はサブカルチャーの文脈で音楽を語るためのひとつの指標でもあったが、会うのは今回がはじめてだった。と書いて自分でもびっくりしたが出会いにおそすぎることはない。それは鈴木惣一朗ともうひとりのソギー・チェリオス、カーネーションの直枝政広、ともに1959年、亥年生まれの彼らが2013年のいま、はじめていっしょに音楽をつくりはじめたのと似ている。たがいに30年のキャリアすべてを背負ってつくりあげた『1959』の言葉と音のみならず、そこかしこから聞こえる唸り、軋み、擦れ、それをひっくるめた馥郁たる(という形容こそがふさわしい)空気には時間の厚みを感じないわけにいかない。音はアコースティックに比重を置いたシンプルなものだが、マチズモな音楽の常套句である「骨太」が骨粗鬆症にみえるほど、中身がしっかり詰まっている。つまりはロックだが通り一遍のそれではない。だって「お餅」や「お麩」、「イノシシ」を歌った歌なんかあるんだから。


「いまいえよ、いまいったほうがいいよ」という声がどこからか聞こえてきて(笑)、「今度音楽やろうよ」と声をかけたの。(直枝)



片づけして帰ろうとしたら、何気なくポンといわれて。非常にさわやかに僕には聞こえたんですよ。(鈴木)


直枝:京都に行ったらいつも行く護王神社ってのがあるんだけど、そこはイノシシの神社なんですよ。そこには水晶でできた亥の牙の形のキーホルダーがあってそれを買うんだけど、その牙すぐに取れちゃうんだよね(笑)。

鈴木:それミサンガと同じなんじゃない。取れたときに願いごとが叶う。

直枝:たしかに、ソギーのレコーディングが終わったときに取れたんだよ。

鈴木:成就したんだ。

そのレコーディングはいつはじまったんですか?

鈴木:録音は3~4月で、5月頭には終わったかな。

直枝:実質2週間ちょっとでできたんじゃなかったかな。

そういえば、ちょうど3月くらい、紙の『ele-king』の前号で湯浅さんと直枝さんに対談していただいたとき、惣一朗さんといっしょにレコード屋にいったら、「もう買わなくていいんじゃない」といわれたとおっしゃっていましたよね。

直枝:『サージェント・ペパー』ね(笑)。欲しいなと思って見ていたら、押し戻されたって話ね。

鈴木:だって直枝くん、オデオン盤の『サージェント・ペパー』をまだ買おうとするんだよ。直枝くんがそんなもん買ったら、僕はどうすればいいのよって話ですよ。

なるほど。僕らはこれ以上音楽聴かなくていいじゃない、ってことではなかったんですね。

直枝:そうじゃない。そうじゃないよね?

鈴木:『サージェント・ペパー』はもういいじゃないかって。

直枝:俺は何度でも繰り返し聴きたい。『サージェント・ペパー』から何度でもはじめたいんだよ。くすんで見えるかもしれないけど、いまにはいまの響きがあるんだ。そのためにいま、ステレオをアップグレードして接続を変えたり針を掃除したりしているわけでしょ。それで輝きが出てきたりするんだよ。

よいものも悪いものも含め、いまの耳で聴かないといけないってことですね。

直枝:買わないとダメですね。

おふたりとも音楽を聴くことでは人後に落ちないと思うんですが。

鈴木:人後に落ちないどころか聴きすぎです(笑)。前にレコードを売るならそれ以上買えって教えられたことがあって。

直枝:誰にそんなこと教えられるのよ(笑)?

鈴木:Hがつくひと(笑)、細野さん。それはそうだなって思ったんですね。とにかくいっぱい聴いて、それを自分のなかで濾過するというかね。

惣一朗さんのそのスタンスが『モンド・ミュージック』などを通じて、私たちの世代を影響して、ひとつの価値観をつくったと思いますよ。

鈴木:聴き方は匠みたいなものだから、直枝くんは直枝くんで『サージェント・ペパー』をいまの耳で聴くんだろうし、それはもういいんじゃないかとも思いもするけど(笑)、何度も聴けるほどロック・カルチャーはタフなものだとあらためて思うようになってきたというのはありますね。去年、一昨年くらいからかな。リマスタ盤とか出尽くして買うものもなくなってきちゃって、アナログを聴き直すようになったんです。とくに震災以降。最初はシンガー・ソングライターやジャズのアルバムを買っていくなかで、もう一回ふれあっていくわけですよ。ビーチ・ボーイズでもなんでも。さすがに『スマイル』は僕にはもういい。でも『フレンズ』はやっぱりもう一回聴きたいアルバムかな。直枝くんだったら『オランダ』かもしれない。それをもう一度アナログ盤で聴くようになってきて、そのなかに(僕は)今までロック・カルチャーをやってこなかったなという伏線があった。そんなとき、直枝くんと会って刺激されたところはありますね。


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惣一朗くんのドラムは音が小さいんだけど、ふたりの世界にすごく合っていて、演奏をみていたら星が降ってくるような感じがしたの。それが音楽の不思議、ひとがプレイすることのすばらしさを感じた最初かもしれないですね。(直枝)


ソギー・チェリオスの話は直枝さんからですか?

直枝:そうそう。

どういうきっかけで?

直枝:僕たちひとの音楽が好きで――

鈴木:語り部的にね(笑)。

直枝:そうそう。よく対談とかするわけ。ポール・マッカートニーのマニアックな話とかになるとかならず話が来るんだけど、そんなことが何度が続いたんですよ。惣一朗くんと対談したある日、ちょうど僕は一週間、あまり寝てなくて頭おかしかったのかもしれないけど、「いまいえよ、いまいったほうがいいよ」という声がどこからか聞こえてきて(笑)、「今度音楽やろうよ」と声をかけたの。

鈴木:片づけして帰ろうとしたら、何気なくポンといわれて。非常にさわやかに僕には聞こえたんですよ。

学校の放課後にクラス・メイトにいわれた感じですね。

鈴木:そうそう。その言葉がスパンって僕のこころに入ってきたの。僕は「やろうよ」といってプロデュースしてきたから、逆にひとにいわれることはあまりなかったわけ。直枝くんがどうしてそういってくれたのか、その後、僕は一週間ほど咀嚼したんだけど、ああいってくれるなら本気で考えてみようかなと思ったの。この音楽業界に入ってからの直枝くんと僕の30年。さっきいっていた、ロック・カルチャーをわかったっていうんじゃなくて、もう一回対峙してみたいなという気持ち、ビートルズやポールをこれだけ楽しく聴いているんだから、ザ・バンドにももう一度対峙できるだろうし、わかったふりでいる気はさらさらないし、聴けば聴くほど発見があるということ、ロック・カルチャーの歴史はたかだか50年ほどだけど、それをわかったふうにはしたくなかった。そういったいろんなものが直枝くんの言葉でつながった感じはありましたね。

直枝:僕は理屈じゃなかったんだな。82年くらいにすきすきスウィッチのおっかけやっていたんですよ。

直枝さん、影響受けたっておっしゃっていましたもんね。

直枝:パンゴとかすきすきとかが好きで、あと「天国注射の昼」なんかも観にいっていたクチなんで。その82年くらいのすきすきのドラマーが惣一朗くんだったの。そのとき僕は鈴木惣一朗くんというひとは知らないけれども、横浜のとてつもない小さいバーというかライヴハウスで聴いて、そのときの影響で"夜の煙突"をつくることができた。すべて佐藤幸雄さんと惣一朗くんのおかげなんですよ。惣一朗くんのドラムは音が小さいんだけど、ふたりの世界にすごく合っていて、演奏をみていたらライヴハウスに星が降ってくるような感じがしたの。それが音楽の不思議、ひとがプレイすることのすばらしさを感じた最初かもしれないですね。

鈴木:そんなのを観てくれているとは思わなかったからね。

直枝:あそこにいたんだよ(笑)。

鈴木:ついでにいうと、すきすきスウィッチのキーパーソンである佐藤幸雄に去年の夏僕は再会したのね。

活動を再開したんですよね?

鈴木:レコーディングもしていて、ディスク・ユニオンから8月に出るんですよ。3枚同時リリース(註:『それでもはじめて』『ここへきてはじめて』『ライヴ・レコーディング・アット・ラストワルツ』)で40曲録ったかな。

それはソノシートじゃないですよね(笑)?(註:すきすきスウィッチの『忘れてもいいよ』はソノシート5枚組だった)

鈴木:今度はCDです(笑)。彼と再会していくこと、直枝くんと会っていくこと、去年で僕はワールド・スタンダードの活動を止めたので、休んでもいいかなとも思っていた。でもそういった出会いがこういうふうにまわって、いっしょに音楽をやることが自然なことのように思えるようになった。直枝くんに、いっしょに音楽をやらないかといわれて、今度は佐藤くんに僕のほうからいっしょにやらないかと声をかけた。それは僕が直枝くんに声をかけてもらったことで刺激されたのかもしれないですね。

いっしょに音楽をやることに惣一朗さんが驚いたのは、お互い違う場所で音楽をやっているという認識があったからでしょうか?

鈴木:直枝くんは確固たるものを持っている男だから。

お互いそうだと思いますよ。

鈴木:僕はあまりひとのコンサートは観に行かないんだけど、カーネーションは何度か観に行ったことがある。で、びっくりしちゃうわけよ。このレコーディングに入る前にも渋谷の〈WWW〉で観て、もうびっくりして飛んで帰っちゃった。

私も拝見しましたけど濃密でしたよね。

鈴木:理屈じゃないよね。身体から発せられる光みたいなもので。それが同い年で2013年にやっている。確固たるものがあるひとといっしょに音楽ができるだろうかという不安が僕にもあったし、でもやってみようかなと思ったのは、非常にさわやかに「惣一朗くんいっしょにやろうよ」って中学生みたいな感じでほんとうにいってくれたのが、彼の人柄だろうけれども、そんなふうにいえるひとは素敵だなと思ったし、もっと覗いてみたかったんですよ。

直枝:ほんとうに上から「いえ」って聞こえてきたんだ。それは俺、節目節目によくあるんだよ。あと、エブリシング・プレイというバンドを惣一朗くんがやっていたとき、『ポッシュ』ってアルバムが発売中止になったんですけど、そうなる前のテスト盤をうちの最初のマネージャーが彼からもらって、そのカセット・コピーを僕は聴いていたことがあったの。89年かな。それを聴いたときは同い年でこんなに音楽的に成熟したヤツがいるのかと思ったんだよね。僕にないものばかりもっていた。そのとき僕は、作品をつくってきて、批評の部分であれ、歌詞のつくり方であれサウンドであれ、ロック・バンド特有の悩みを抱えていたときだったんだけど、そんなときにエブリシング・プレイはここまで想像力豊かな、それも内省を怖がらないサウンド志向の音楽をつくっていた。しかも同世代。それはすごいと思った。ニューエスト・モデルとか岡村靖幸とか、自分にはない何かをもっているひとたちを僕はそのころつねに意識していて、それでようやく自分で納得いくものがつくれたのが92年の『天国と地獄』というアルバムで、これだったら惣一朗くんたちにも聴かせられるクオリティだと思ったんだよ。

自分にないものをもっているひとを意識するのは、ミュージシャンであるとともにいちリスナーであるということだと思うんですよ。

鈴木:成熟したクリエイターは本来いちばんいいリスナーでもあるはずなんです。いっぱいアルバムを聴いたらいいクリエイターになれるし、逆もあるんですね。だから、よくあるけど、自分の音楽しか聴かないアーティスト、周辺しか聴かないひと、洋楽を全然聴かない邦人アーティストはほんと悔しいよね。

そういうひとにかぎってオリジナリティを云々しますからね。

鈴木:ジェームス・テイラーは知っていますとか。でもあとは自分の音楽ばっかりとか(笑)。もっといろんな世界があるわけで、なぜそこに触手が伸びないのかな、とは思いますね。根本的なかけちがいというか、ものをつくるとか音楽のあり方のかけちがいがあるんですよ。直枝くんと僕が似ているのは、そこは健康的に思春期に育ったっていうのがあるんだと思う。それが1959年生まれの特徴というか、ビートルズはすでにいなくて、スタートから終わっているんだけど、終わっているということは出そろっているということでもある。ジミ・ヘンドリクスは死んでいたけど、ほかはまだ生きていたわけだし。

直枝:あの当時は独特な疲労感をもったロックが出てきた時期だったんだよね。

鈴木:アーリー70Sには倦怠期があったよね。

直枝:同世代にはヘヴィ・メタル好きが多いんですよ。ツェッペリンが初来日したころですね。あとデヴィッド・ボウイが来日したし、いくつか分かれ道があるんですよ。バングラディシュのコンサートもあって。

鈴木:そっちだ(笑)!

直枝:俺たちはそっちなの(笑)。いっこ上の兄ちゃんたちは「おまえ、レッド・ツェッペリン聴かないでどうすんだよ!」っていうんだけど、でも俺は「ボブ・ディラン聴いているから」って断ったことあるもん(笑)。大学入るとそういうひとばかり。ブラック・サバスとか。そういうなかで俺らはオリジナルの曲をつくっていたりしたんだけどね。


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ふたりでザ・バンドのセカンドみたいな、あのべードラの軋み、床鳴り感がほしいというのははじめからいっていたね。それが音楽だから。(鈴木)


ソギー・チェリオス
1959

Pヴァイン

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おふたりが原風景として共有しているものは当然ありますよね。

直枝:あるある。新築の家の棟上げ式にみんなで行って、上から投げたお菓子とかお餅を拾うとかね。

鈴木:それが1曲目("ロックンロールが空から降ってきた日")の「空から紅白の餅が降ってきた」なんだよね。

あの一節はレトリックではなくて、棟上げ式なんですね(笑)。

鈴木:なんで棟上げ式の話を直枝くんとしたのかは憶えてないんですけど(笑)。

直枝:でも僕がお餅好きだというのを彼は気に入ってね。

鈴木:お正月にさ、50個くらい食べたって話を聞いて。

直枝:そんなに食べたら死んじゃうよ(笑)。12個くらいだよ。一食でね。

それもすごいですね(笑)。

鈴木:次の日も食べるんだってさ、12個。さすが大食漢と思ったんだけど、僕はお麩が好きだよ、と言ったの。お味噌汁にしみじみになっているやつがね。それで「お麩」と「お餅」みたいな言葉が歌詞に入るんですね。

直枝:今回、ふたりでつくるにあたって、まず詞のやりとりからはじめたんです。

鈴木:全部詞先なんです。

そうなんですね! 楽曲のクレジットが気になったんですけど。

鈴木:みんなそういうね(笑)。

直枝:共作です。共作にしたんですね。

全曲ですか?

直枝:自分が投げたアイデア、キーワードを受けたひとが曲をつくるというふうに決めたの。

鈴木:レノン=マッカートニーですよね。詳しいひとが聴いたらどっちに主導権があるかわかるかもしれないけど、クリエイティヴの部分でほんとうに僕と直枝くんは共作したので、クレジットとしてはソギー・チェリオスで正しいということですね。印税も山分けだ!(笑)。

ナマナマしい話ですね。

鈴木:ハハハハ。

直枝:投げられた歌詞のアイデアをもとに楽曲をまとめたほうが歌う。

カラーはあると思いますけど、共作なんですね。

直枝:共作にすることの色を出したいんですよ。

その作業はいうは易しですけどけっこうめんどくさい気がしますね。

直枝:最初はとまどいましたよ。メールのやりとりで、あえてスタッフの横尾さんにもCCを入れるんですよ。

客観性を出すために。

鈴木:M的な気持ちだよね。

直枝:そうしたら、惣一朗くんが猪の歌を書いてきたりして。俺、猪の歌なんてどうやってつくればいいのよって思った。

鈴木:「ネーウシトラウータツミー」で、おもしろい歌をつくってくれよと思ってメールするんだけど、直枝くん真面目だから。

直枝:「タツミー」だけじゃ曲になんねえなって、「Touch Me」を加えたのは俺だよ。

鈴木:ザ・フーの「See Me Feel Me Touch Me」("We're Not Gonna Take It")みたいなね。

直枝:それでロックになるんだよ。

鈴木:ちょっと切ない曲になって、僕が思っていたのはちがったけど、それは化学変化が起きたってことだからね。

こういう感じの曲をつくろうという参照のようなものは――

鈴木:それだとおもしくないから固有名は話さないようにしたの。曲調が明るいとか暗いとかも話してない。だからそれがどうなるのかわからない。

直枝:惣一朗くんはまっさきに4曲あげちゃったんだけど、俺のもらったお題は餅とかお麩とか猪とか、とんでもないものばかりだったからね。

惣一朗さんはすぐに書き終わったんですか?

鈴木:すぐ! テレビみながら(笑)。ものすごく不真面目にやっていたの。不真面目っていうとなんだけど、構えたりしないようにしていた。みんな僕が直枝くんとやるとなると、すごく凝った、ニッチなポップ、『ペット・サウンズ』みたいなのつくるのかなって思われるじゃない?

そう思うのが普通ですよね。

鈴木:最初に直枝くんといっていたのは、すごくシンプルにやるということだったんです。いい曲を書きたい気持ちも捨てたいって、僕たしか最初の段階でいったんだよ。だからテレビみながら歌詞を書いたり、直枝くんがみたら怒りそうなつくり方をした。

直枝:怒るよ(笑)。

最初にアイデアを投げかけるほうは勇気が要る気がしますね。

直枝:惣一朗くんが最初に投げてくれたから助かったんだけどね。

鈴木:ただ信頼関係がないとそんなことできないし、(歌詞を)変えてもいいよ、と直枝くんにいってもらって。詞先だと一文字でも変えるとブーイングが出るひともいるし、リミックスみたいにシャッフルしたりなかなかできないんですけど、それもアリにしたんですよ。それはこの年齢とスキルがあったからできたといまは思えるし、もし10年若かったらもっとぶつかったと思う。「ああおもしろいね」とお互いいえるまで30年が必要だったかもしれない。そう考えると、これはいいタイミングでいっしょにやったんだなと思った。いくらでもこれまでやる機会はあったけど、2013年だからこういう内容になったし、こういう共作のスタイルになったんだと思う。

レコーディングはどんな感じで進めたんですか?

直枝:スタジオに入って、いきなりドラムをセットして「じゃあやろうか」って。

スタジオはどちらだったんですか?

鈴木:目黒倉庫っていう武蔵小山にあるスタジオで上が葬儀屋で、その下のスナックを改装したスタジオですね。

直枝:地下でブースが一個しかない。

鈴木:そこは、アノニマスっていうグループがあるんですけど、そのバンドの山本哲也くん所有のスタジオなんですよ。

直枝:アップライトが置いてあってね。

鈴木:それとパールのボロボロのドラムが置いてあるだけであとは何もないの。そこに機材をもっていった。で、アコギを弾きながらドラム叩いたり、クリックとアコギを入れたり、まずそういうトラックを最初に録って。

直枝:それでベーシック録ったら、「直枝くん、ベース弾いて」って言うわけ。俺人前でベース弾かないんだけど(笑)。なんだろうなこいつと思いましたね。

鈴木:ガンガン弾いてほしかったのよ。直枝くん、おもしろいベース弾くからさ。ギターみたいに弾くから、ポール系なんですよ。ベースをチョーキングするんだもん。

直枝:いいじゃん(笑)。

鈴木:それで4リズム、ピアノ、ベース、ドラム、ギターと歌ができて、そこにコーラスを乗せた......だけのすごくシンプルなつくりなんだけど、聴いたらすごく完成されたものにきこえたんですよ。僕は80トラックとか積むプロダクションをすることもあるし、静かな音でも比較的(トラックを)積む方なんだけど、今回は12トラックくらいでけっこうできちゃっているんですよね。それで夕方にはお蕎麦屋さんに行っていた。

ちゃきちゃち録っていったんですね。

直枝:早いんだもん。この人休まないのよ。

鈴木:で、休めって怒るわけよ。働いていて怒られたのはじめだよ(笑)。

直枝:プレイバックも聴かないんだもん。

なぜ聴かないんですか?

鈴木:わかっているからですよ。僕はプレイバックはここ10年くらい聴かないし、録っているときにOKだってわかっているから。みんなプレイバックで確認するけど、あれ時間のムダですよ。


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(ヤイリは)中学生のころから弾いているから僕のなかでヴィンテージになっているんですよ(笑)。40年くらい経っているから。はじめて買ったギターで中学時代に戻ってみようと気持ちもあったんだけど――(鈴木)

音がすごくいいですよね。ここしばらくローファイな音楽がもてはやされていましたが、そういった音楽ともちがうローファイさがあっていいと思いました。

鈴木:季節もね、楽器がちょうど乾いている時期で。

直枝:いい時期だったね。ふたりでザ・バンドのセカンドみたいな、あのべードラの軋み、床鳴り感がほしいというのははじめからいっていたね。それが音楽だから。

鈴木:直枝くんはいつも革靴履いていて、ギブソン弾くときにものすごくタップするわけ。それがすごい入ってますよ。1曲目からタップの音が。

弦のグリスの音とか、楽音以外の音がふんだんに入っていますよね。

鈴木:別に示し合わせたわけじゃなくて、直枝くんはギブソンのJ-50、いわゆる名器をもってきたんですけど、僕はヤイリの井上陽水モデルっていうウェットなヤツをもってきたんですよ。

なぜヤイリだったんですか?

鈴木:中学生のころから弾いているから僕のなかでヴィンテージになっているんですよ(笑)。40年くらい経っているから。はじめて買ったギターで中学時代に戻ってみようと気持ちもあったんだけど――

直枝:コンセプチュアルだね(笑)。

鈴木:後づけだよ(笑)。直枝くんはアコギをエレキのように弾いたり、ベースをエレキのように弾くじゃない。

直枝さんは乱暴ですからね。それが恰好いいんだけど。

直枝:俺、乱暴なの(笑)?

ワイルドということです(笑)。

鈴木:僕は直枝くんはもっとエレキを弾くのかなと思ったんだけど、アンプつなげないといけないし、アコギだったらパッとできるでしょう。

"君がいない"のイントロの最後の音の減衰の仕方が奇妙だったんですが、あれは何か操作しているんですか?

鈴木:あれはトゥールズ上でエディット・リサイジングしているから。そんなところまでよく聴いてますね。

直枝:俺がいないところでそういうことやっているのよ。それがショックなのよ。「この男!」みたいな(笑)。

鈴木:ちょっと早くしたりもしていますよ。もちろんキーはいっしょですが。直枝くんがいると何かいわれるから。

直枝:そりゃいうよ(笑)! 俺はもういいっぱなしだから。「なんできみひとりで決める」というと落ち込むんだよ(笑)。

鈴木:またこの話する? 僕は"知らない町"をつくっている途中で落ち込んだんですよ。

直枝:絶対こっちのほうがいいよっていうアレンジがあったんですよ。

鈴木:曲がどんどんペンタングルみたいになっていくんですよ。それは僕の最初のイメージとはちがった。それを理解するのに一週間ほどかかったんですけど、その間落ちちゃった。自分はなんて無力なんだと思った。

直枝:自意識強すぎ(笑)。

鈴木:そうかもしれないけど、直枝くんは歌だって上手いし、直枝くんは僕の歌も上手いって褒めてくれたけど――

直枝:ドノヴァンみたいな声だよね。

鈴木:でも自分では「いやー」と思うんだよ。で、すごいオケができちゃって、僕のなかにはないメタファーだからそれを受け入れるのに時間がかかったんですよ。そのとき「惣一朗くん、これはバンドなんだからさ」っていわれてハッとしたの。それで「友だちになってください」ってメールを、こういうふうにいっちゃうとギャグみたいだけど、そのときは真剣に書いたんですよ。

直枝:ほんとに。そういったメールが来たんだよ。

鈴木:バンドつくったつもりだったけど、途中でバンドになった、というかね。

直枝:俺は最初からそのつもりだったんだけど、だからいいたいこともいうし、それがお互いやっている意味があるということだから。

鈴木:でもいい方がキツイの。僕がヘラヘラしていると、「何ヘラヘラしてんだよ」って。50過ぎてそういわれると辛いですよ(笑)。あと譜面をろくすっぽ書いてなかったら、「何でちゃんと譜面書かないんだよ」っていうんだよ。たしかにその通りなんだけど、もうちょっといい方ってもんが、ひととしてあるじゃないですか、ねえ? 横尾さん! みたいなね(笑)。

なんで横尾さんが引き合いに出されるんですか(笑)。

鈴木:そんなことで帰宅して落ち込んでいたりすると、朝4時くらいにメールが来るわけ。「惣一朗くん、ごめんなさい」って。「ごめんなさい」って、なんてこのひとまたスパンというんだ。その素直さ。これは本気で僕に接してくれるんだろうし、そんなふうにメールをくれるなら、やっていけるなって、そこではじめてバンドになったっていうか。

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バンドつくったつもりだったけど、途中でバンドになった、というかね。(鈴木)


ソギー・チェリオス
1959

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おふたりにとってバンドというのはどういうものですか?

鈴木:それはすごくいい質問だ。いい質問すぎて答えようがないくらい(笑)。

直枝:バンドっていうのは運命的なことなんですよ。ひとが集まって音楽をやるってことは。だからそれは、やるとなった以上、ひととしてやらなきゃならないことなんです。適当なことはできない。捨て曲もあってはならないし、そんな気持ちではできない。

鈴木:僕よく思うんだけど、仕事をいっしょにしながら、これが友だちだったら最高だなと思うときがあるの。普通に学生のころの友だちでいっしょに音楽はつくっていないじゃないですか。友だちで仕事をいっしょにするなんて、最高なわけよ。ジョンとポールがやり合いながら最後まで信頼関係が壊れなかったのをみると、それが友だち、それがバンドなんだって思う。けれど、ザ・バンドでは、ロビー・ロバートソンとリヴォン・ヘルムはけっして仲良くはなかった。でもそれがよい緊張感を生んでいいアルバムにつながっていった。

直枝:バンドそれぞれに育ち方もあるんだけどね。たまたま俺は余計な、考えなくてもいいことを考えてきたタイプなのかもしれないですけど。

直枝さんはバンドマンだという意識は強いですか?

直枝:その言葉は重くてイヤなこともあるんだけど、それが運命だと思えば、受け入れるという意味でバンドマンかもしれない。セッションに呼ばれて、このように弾いてくださいって、僕はあまり頼まれないということを考えると、もしかして僕はバンドのなかで成り立つ音楽をやっているのかもしれない。でも僕を必要としてくれるひとはどこかにいると思うから、一所懸命やるしかない。それしかないんだよね。

ソギー・チェリオスはこれからどうしたいというのはあるんですか?

鈴木:まずはライヴやんなきゃいけない。インストア・イヴェントとか。先々のことを含めると、まだまだ続けたいですね。でもこのひと忙しいからね。

直枝:惣一朗くんだってそうじゃない。

鈴木:曲づくりはちょうど乗ってきたとこなんですよ。『1959』はフォーマットをつくった、最初の一枚だとも思っているので。あと僕にとっては別の命題として歌を歌うというのがあるからね。いままでやってこなかったことが直枝くんとならやっていけると思うんだよ。

惣一朗さんのヴォーカルは味がありますよね。

鈴木:ありがとうございます(笑)。直枝くんは褒めてくれるんですよ。「名人芸だ」っていわれたことがあった。

どこのパートですか?

直枝:(モノマネ入りで)「時間は薄切りの~」("きみがいない")ってとこですよ(笑)。

たしかに印象に残りますね。惣一朗さんはヴォーカリストとして参照にしたひとはいましたか?

鈴木:70年代の拓郎さんとかをよく聴いていたんですよ。

直枝:好きだよね、俺ら。

鈴木:はっぴいえんどとかはちみつぱいはもちろん入っているけど、吉田拓郎さんのことをここ近年考えていたんですよ。大病されたりしたじゃないですか、そういうこともあって、直枝くんにも『つま恋』のCDが出たねって話をしていたんですよ。ようするに、これだけ洋楽を聴いてきた上でドメスティックなフォークをどういうふうに消化するというとなんだけどね。

直枝:その意味でも完全に中学生だったんだよ。だから俺はたまにいったの。それあまりにもドメスティックすぎるんじゃないかなあ......って(笑)。

鈴木:"曇天 夕闇 フェリー"とかね。

直枝:あれはコードを一回解体してつくり直したんですよ。

もうちょっとフォーキーだったんですね。

鈴木:フォーキーだったらジェシー・ハリスみたいなもんだけど、フォークだったの(笑)。

直枝:ライ・クーダーがとりあげるトラディショナル・フォークだったらまだいいんだけど、「どフォーク」だったんだよ(笑)。どうしようと思ったんだけど、いいムードのメロディだから現場で解体して、シンプルに重くしたんですよね。でも彼に重くしたいっていうと、進んで弾いてくれるんだよ。「じゃあこうしたらいいのかな」って。「ああ、それいい」って、コードを弾いたら「それ繰り返せばいいじゃん」ってそういうこっち側のジャッジの仕方でやっていくと、惣一朗くんは無意識をいじられるからすごくイヤなんだろうね。

鈴木:分析されてるなあ(笑)。

直枝:でもバンド組むってことはそのイヤがる部分をなくすことなんだよ。それがイヤなのは、プロデューサーで俯瞰した視点で指示ばっかりしていたからだよ(笑)。

鈴木:すごいプロデュースされた気がするんだよね。

直枝:でもそこに乗ってくれたじゃない。乗ってくれて「いい」っていうんだけど、後で落ちこむんだよこの人(笑)。

さっき惣一朗さんがはっぴいえんどとかはちみつぱいとおっしゃいましたが、最後の"とんかつの唄"に細野さんと鈴木慶一さんが参加しているのは、おふたりの来歴を考えてのことですか?

直枝:そうだし、半年前から俺らはミーティングを重ねてきたんだけど、惣一朗くんのなかには細野さんと慶一さんに歌ってもらうというアイデアは最初からあったんだよね。

鈴木:最初は僕らのオリジナルで歌ってもらって、僕らが後ろでニヤニヤしているっていうのを考えたんだけど、結局カヴァーになったね。

直枝:でも惣一朗くんはきっと曲はつくれなかったと思うよ、気を遣っちゃって。

鈴木:"夏なんです"みたいな曲書いたりしてね。

直枝:こういうひとだから。怒られるようなことしないから。それにじっさい怒られたらよくないわけで。

鈴木:その通り。

直枝:惣一朗くんは制作ノートをつけていて、そこにいつもメモしているんですよ。「お餅」「お麩」とか、54歳と54歳で足したら108歳とかね。そのころには彼はもう、このプロジェクトのことで、細野さんにお伺いを立てていたんですよ、個人的に。

細野さんに、直枝さんとやると伝えたんですね。

鈴木:それで直枝くんには、細野さんを気にし過ぎても仕方ない、といわれて、ああこれは卒業式でもあり入学式でもあるんだな、と思った。細野さんと慶一さんにはオマージュとかリスペクトはいくらでもあるけど、そうしたアルバムをつくってもふたりとも満足しないのはわかりきっていますから。吹っ切っていこうと(笑)。そのくらいの勢いで行こうと直枝くんにいわれたとき、身震いするくらい「そうだな」って思ったんです。

Illuha - ele-king

 来週26日に書店に並ぶ『AMBIENT definitive 1958-2013』では、その年々にリリースされた代表作に選定された1枚だけが大きく扱われているのだが、2011年度のそれは、伊達伯欣の『Otoha』だ。同じく2011年には、伊達伯欣+コーリー・フラーによるイルハのデビュー・アルバム『Shizuku』も〈12k〉から出ているので、そちらにするべきだったかもしれないが、こういう選択は監修者(=三田格)に委ねられる。
 『Shizuku』は、リリース当時は欧米ではいきなり評判となった作品で、いまではダウンロードでしか聴けないのが残念と言えるほど、いわゆる非日常的なサイケデリックではない側のアンビエントとしての質が高い。『ミュージック・フォー・エアポーツ』が好きな人が好む作品だろう。まる1ヶ月、アンビエントを聴いて書くために部屋に籠もっていた三田格も舌を巻いたように、イルハは何か持っている。何を持っているのだろう......。僕が彼らの音楽に触れたのは、2012年4月21日の養源寺だったが、たしかに印象に残っている。最初の音が鳴ったその瞬間から、何の説明もなく、音は聴き手の気持ちを押し広げる。すると、イルハの音響を特徴付ける多彩な音の断片(ピアノ、チェロ、ギター、あるいは自然音や具体音等々)が、まさに音の「しずく」となって、いろんな角度から聴こえるのだ。

 『Shizuku』は、米国北部ベリングハムの古教会での録音を東京で編集した作品で、チェロの生演奏を活かし、モダン・クラシカルな感性が東洋的な間の宇宙に注がれている、最高に美しいアルバムだったが、それは「音楽が聴こえる」「音が鳴っている」というよりも、具体音やフィールド・レコーディングを効果的に使った、「音のしずくが舞っている」感じなのだ。『Interstices』には、僕が本堂の畳の上で聴いたライヴの前日の演奏が1曲目に収録されている。『Shizuku』のクライマックスとなっている、和歌を詠む"聖夜"は2曲目に収録。それぞれ長尺の全3曲はライヴ演奏ならではの......というか、イルハのライヴならではの、細かい音々が、心地よい夜風に吹かれながら、散りゆく花びらのように舞っているのである。七尾旅人はかつて「ゆれている/ゆれている」と歌ったが、音は舞い、景色はゆれて、現実世界が官能的に見える、こんな気分にさせる音楽はなかなかない。彼らの新しいアルバムが楽しみだ。

PROM (AVERY ALAN + SEM KAI) - ele-king

2012年に設立されたアーティストコレクティブPROM。国内外のシーンの繋がりを目標に、東京を軸に様々な企画を手がけている。PROM主宰のパーティ「PROM NITE」ではこれまでにNEON INDIAN、LE1F、HEEMS (DAS RACIST)などのアーティストを召還。次の「PROM NITE」は8/2に代官山ユニットでLAのレーベル〈FADE TO MIND〉よりR&BシンガーKELELAとDJ、TOTAL FREEDOMを招いて開催決定。

■PROMオフィシャルWEB 
https://www.tokyoprom.com

■ele-king内関連ページ
https://www.ele-king.net/interviews/003100/
https://www.ele-king.net/news/003201/



Ynfynyt Scroll - Butch Queen (AiR DJ Remix) -#FEELINGS
Baauer - Harlem Shake (MikeQ x Jay R Neutron QB Remix) - Queen Beat
Rihanna - Diamonds (Dj Sliink Remix)
Destiny's CVNT - Nuclear (Cmore Edit by CUNT TR4XXX)
Tempa T - Next Hype (50 Carrot's A Day Keeps The Doctor Away Remix)
Bok Bok - Silo Pass - Night Slugs
Rabit - So Clean (Drippin' Remix) - #FEELINGS
Mike Jones feat. Slim Thug and Paul Wall - Still Tippin' - Swishahouse
Marcus Price & Carli - Flaska & Bas (Ben Aqua Remix) - #FEELINGS
Rizzla - Church - Fade To Mind
Fatima Al Qadiri - Hip Hop Spa (Nguzunguzu Remix) - UNO NYC
Usher - There goes my baby (Chopped & Screwed by Dj Michael 5000 Watts & Swishahouse) - Swishahouse
Hint - Lock The Door (feat. Zed Bias) - Tru Thoughts Records
Lil Silva - Venture - White Label
French Fries - Space & Smoke (Justin Martin Remix) - DIRTYBIRD
Jam City - Her - Night Slugs
Tony Quattro & Doctor Jeep - Forth & Seek (feat B. Ames) - Trouble & Bass Recordings
KW Griff - Bring in the Katz (feat. Pork Chop) - Night Slugs
Cakes Da Killa - Rapid Fire (feat. Dai Burger) - DTM Records

Cuushe / Airy Me, goat / NEW GAMES - ele-king

Cuushe - Airy Me

Video directed by 久野遥子

 この夏4年ぶりのアルバムのリリースを控えている京都出身のクーシー、ゆらめく電子音と美しい歌が織りなす最高のメランコリーを作っている、注目すべき女性アーティストだ。グルーパーとジュリアン・ホルターの溝を埋めるとでも形容したらいいのか......、昨年発表したEP『Girl you know that I am here but the dream』(ミニCD3枚組という変則リリース)ではジュリア・ホルターやティーン・デイズらがリミキサーとして参加、デムダイク・ステアのマイルスがマスタリングしているが、これも瞬く間に完売。新作は間違いなく、より幅広く聴かれるであろう。
 そんな彼女が2009年のデビュー・アルバム『Red Rocket Telepathy』収録の"Airy Me"のヴィデオを発表した。映像は、久野遥子が約2年の歳月をかけて手描きで完成させたという渾身の作品で(このために3000画を描いたという)、まあ、どうぞご覧下さい。まったく素晴らしいです。

goat - NEW GAMES (live)


 7月17日にアルバム『NEW GAMES』を〈UNKNOWNMIX〉から発表したばかりの、関西のバンド、ゴート。佐々木敦が「このクールに発狂するグルーヴを聴け!」と興奮しているが、たしかにおしゃっる通り、作品はとんでもなく良い。通のあいだでは東の空間現代、西のゴートと呼ばれているらしいが、これも一種のポストパンク的なるもののひとつなのだろう。
 あるいは、コニー・プランクを彷彿させるかのようなアフリカへのアプローチとでも言ったらいいのか、ジャズとテクノの往復のなかで展開されるポリリズムは圧倒的で、このグルーヴはシャックルトン、もしくはマーク・エルネストゥスのジェリ・ジェリ(あるいはZ's、あるいはリップ・リグ&パニックの再評価など)にも通底している。recommend!!


Pet Shop Boys - Vocal


 最後にこれは......20年前は若かった方と現在若い方へ、です。

(((さらうんど))) - ele-king

 よく磨かれた鏡の上をスッと滑る光のような、あるいはプリズムを通じてパッと散らばっていく光の粒のようなシンセサイザー......そのよく澄んだ音色、豊かな立体感。イントロダクション"Welcome to Brand New Age"からして、音の鳴りがすごい。60年代、〈モータウン〉のサウンド・エンジニアたちはスタジオの床が擦り減るくらい、つまりグルーヴを身体で確認するために立ちっぱなしで作業していたというが、この(((さらうんど)))のチームはと言えば、煌めく音の、その光の反射率でも測ったのではないだろうか。それくらい、音の鳴りがまずもって素晴らしい。
 「空気の振動を聴くという行為そのもののなかに、既に報酬が含まれている」――ここのところ、そんなことをまたくよくよと考えているが、それ以外の具体的な感想や、それ以上の分析めいたものは、おそらく副次的なものに過ぎない。品質管理が驚くほど徹底された本作に、そんなプリミティブな領域が確保されているとすれば、それはエンジニアである得能直也(ここ1年ではVIDEOTAPEMUSICの佳作『7泊8日』や、ceroの大躍進作『My Lost City』、また最近ではフル・アルバムを控える注目株、森は生きているのシングル「日々の泡沫」のマスタリングなどを手掛ける)によるところが大きいのだろう。

 だが、そんな透明な体験を助けもし、また邪魔をもするのがこのポップスという音楽だ。そこには言葉がどこまでも付きまとい、時には歌い手のエゴを前面化させる。だからそもそも、僕が昨年、一十三十一の『City Dive』や、この(((さらうんど)))にどうしようもなく惹かれたのは、ポップスの純然たる機能性というものがそこで批評的に復元されているように思えたからだし、だから一十三十一がこの夏、前作で得た自信をスムースにフィードバックし、新作『Surfbank Social Club』においてもやはり、シティ・ガールとサマー・ビッチのあいだで優雅に微笑んでいるのを、悪いとは思わない。それは、終わらない夏の国の甘いファンタジーだ。
 だとすれば (((さらうんど)))は、この『New Age』で、もうちょっと込み入ったジレンマを抱えながら帰ってきたように思える。たしかに、より丹念に気密化されたシンセ主体のウワモノ、ディスコ~ハウスのエッセンスをポップスのフォーマットに落とし込む、跳ねるようなリズム・セクション、あるいはサックス(後関好宏)やギター(Kashif)によるテクニカルなソロ・パートは、どれを取ってもバンドの状態の良さ、充実感がビシビシと伝わってくるし、鴨田潤(a.k.a イルリメ)の優しい歌声は、ポップ・シンガーとしてすっかり板についた感がある。

 が、彼らは機能性の復権/その保守、というレヴェルではどうにも我慢がならなかったようだ。彼らはより大胆に、機能性から普遍性への飛躍を目指しているように思う。そう、鴨田はいま、20年前にこの国で打ち鳴らされた小沢健二の音楽を、「理想を歌うポップス」と呼び、より確信的にポップスを標榜している。前作において、佐野元春のカヴァー"ジュジュ"に比べればいくらか遠慮がちに思えたヴォーカルのメロディも、本作では多様なゲストから助力を得ることによってさらにポップに磨かれている。
 リード曲であるシングル"空中分解するアイラビュー"はもちろん、メンバーであるCrystal作曲によるハウシーな"Imagination.oO"、そして彼と砂原良徳が共作した、続く"きみは New Age"は、アルバム序盤のダメ押しとなる。また、スカートの澤部渡による"Neon Tetra"は生音とエレクトロニクスの配合が絶妙なアレンジに、ceroの荒内佑による"Swan Song's Story"は極上のアーバン・ポップに仕上げられ、鴨田による新しいアンセム"Hocus Pocus"が最後に待っているのだから、まったく甲乙付け難い(そして相変わらず、完璧な曲順!!)。

 「POP」なき時代に、それでもポップスを目指して――。この『New Age』は、そういう大きな野心を持って43分をドライヴする。とても情熱的に。一義的には、その目標はほとんど達成されていると言えるだろう。
 もちろん、そこに懐疑的な眼差しを向ける人もいるかもしれない(小沢健二の最近の話題と言えば、例えば倖田來未による"ラヴリー"のカヴァーなんかだったし、若年層のシティ・ボーイにはずいぶん分の悪い方向性だろう、あるいは)。小言が許されるなら、僕はその視線を鴨田自身が先回りして歌詞を綴ったような"Neon Tetra"の言葉が少し気になった。彼の知性がそうさせるのだろうが、『LIFE』期の確信的な小沢健二に限って言えば、おそらくはそのメタ・ヴァージョンは原理的に存在し得なかったはずである。
 であればこそ、鴨田は言葉としてのポップス論を、少なくとも楽曲内に持ち込むべきではなかったのではないだろうか。ほんの少しの隙を見せた本当に数少ない場面で、彼はその誘惑に負けているようにも思う(アルバムに寄せられた公式声明「New Ageのプロローグ」においても驚くほど饒舌だ)。大原大次郎の鮮烈なまでにスタイリッシュなジャケット・デザインに比べて、言葉にはまだ脂肪分が多い気もする。

 だが......ポップスの良し悪しを知る最良の方法は、口に出して、一緒に歌ってみることだ。歌詞カードを読んでいるだけでは分からないものが、そこで見つかることもある。だから、言葉の表面を眺めて、そこから浮かぶ何かをここでつらつらと書き連ねるには、まだ時期があまりにも早いだろう。ひとつだけ言うなら、離別のシーンや感情が多い気がして、表層をすくうだけでは分からない何かが、自分で書いた言葉を使うなら「ポップスの報酬」が、その奥にこそ隠されているような気もしたのだが......。
 ともかく、僕は『New Age』をとても気に入っている。ほとんどが前作の成果を踏襲した順当なフォロー・アップだが、鴨田がひと時だけイルリメに戻るような"Soul Music"の、サイケデリックなプロダクションもいい。と言うか、だいたい、これ以上のセカンド・アルバムをどうやって想像できようか。この夏は、このキラキラの音楽で部屋の空気を振るわせていようと思う。床に立って、グルーヴをたしかめ、できれば一緒に声を出しながら。ひこうき雲を消えてから探すのでは、遅すぎる。

PROM NITE feat KELELA + TOTAL FREEDOM - ele-king

 ジェイムス・ブレイクの「CMYK」がサンプリングで作られた曲の、久しぶりのメガヒットだったことを忘れちゃいないか? つまり、テイ・トウワのreviewでも少し書いたことだが、やっていることは、ダブル・ディー&スタンスキー、M/A/A/R/S、初期のボブ・ザ・ベース、ザ・KLF、初期のコールドカット、初期のマッシヴ・アタック、初期のDJシャドウ......なんかと同じなのだ。何も変わっちゃいない。ベース・ミュージック(UKガラージ/ジャングル)には、ダンス・ミュージックにおけるパンキッシュなエートスがある。「盗め」である。昔はサンプラーとレコードを使って「盗め」だったのが、いまではPC一台で、「盗め」......だ。そこだけが更新されている。

 餌食になっているのは主にR&Bだが、R&B人気は安定しているし、相乗効果にもなっているんじゃないかな。結局、金のない貧乏学生にR&Bシンガーを雇う金などないのだから、どっかから「盗め」。盗んで、そして、創作しよう。ゆえに〈ナイト・スラッグス〉はもっとも重要なレーベルとなって、そこに共振する格好でアメリカのLAから〈フェイド・トゥ・マインド〉もやって来た。斎藤もキクリンも「Fade to Mind」のキャップを被っている。あのデザインはたしかにそそられる。

 東京ではじまった新しいパーティ「PROM NITE」は、思いきりその流れを汲んでいる。オーガナイザーもまだ20代なかばのAvery AlanとSem Kaiというアメリカ人/日本人のコンビ。彼らのフレッシュな〈ミキシング〉は、Bok BokからRihannaやテキサスのラップ、HintからJam CityやKW Griffまで、迫力満点に展開される。これこそレイヴの精神と言わんばかりの、ある種清々しささえ漂うこの音楽に1-DRINKやTOBY FELTWELLのようなベテランが関わっているのも良い。フライヤー書いているのはスケシンだし。
 今回来日するのは、〈フェイド・トゥ・マインド〉からデビューするR&Bシンガー、KELELA。実はいま、Araabmuzik、Blood Orange、Jam City、Kingdom、Nguzunguzu、Girl Unitなどをプロデューサーに迎えての最初のミックステープの発表を控えている。incとも全米ツアーを経験しているほどの期待の歌手だ。(R&Bサンプル全盛の今日では、本物のシンガーの需要がおそろしく高いことは、ジェシー・ウェア人気を見ればわかるでしょう)
 〈フェイド・トゥ・マインド〉からはもうひとり、Total Freedomも来日する。 KingdomやNguzunguzuなどとならんで、レーベルの顔である。8月2日金曜日、代官山ユニットで会おう!

Live performances by
KELELA
TOTAL FREEDOM
DJ by
TOBY FELTWELL (C.E)
1-DRINK
IRIKI (RADD LOUNGE)
RIE (GRIEN MONSTER)
WRACK (CHEMICAL MONSTERS)
AVERY ALAN + SEM KAI (PROM)

2013/08/02/(FRI)
OPEN: 22:00
DOOR: 3000YEN
ACCESS: 代官山ユニット <https://www.unit-tokyo.com/>

Presented by American Apparel <https://www.americanapparel.co.jp/>

More info at <https://www.tokyoprom.com/...>


ele-king presents
THE DODOS Japan Tour 2013
- ele-king

【THE DODOS】

 2006年にメリック・ロング(ヴォーカル ギター)がドードーバードという個人プロジェクトとして活動を開始。その後ローガン・クローバー(ドラム)が参加しドードーズとしてスタート。自主制作でアルバムをリリース、そしてツアーを繰り返し注目を浴びて行きます。 2008年からはFRENCHKISS RECORDSに在籍し、アルバムを三作リリース。特にニーコ・ケースも参加した前作の『No Color, More Life』は、ビルボードにランクインされるなど自身最高のヒットをゲットしました。 そして満を持しての新作『キャリアー』はPOLYVINYLに移籍して間違いなく最高傑作に!彼等の持ち味である確かなテクニックから生まれるパーカッシヴなギター奏法、そしてパワフルなビートは今作でもバリバリ。フォーキーに、パンキッシュに、スリリングに、カラフルに疾走しまくります。そして明らかにこれまで以上に顕著になっているのは、エモーショナルで涙腺直撃のソングライティングではないでしょうか。とんでもなくパワーアップ!王道のインディー・ロック・ファンならヨダレ垂れまくりのメロディーがとてつもなくオンパレードしているのです。 聴いて!そして来て!間違いなく2013年後半は、ここ日本でもドードー鳥が羽ばたきます!!

For Fans of...デス・キャブ・フォー・キューティー、ピンバック、ヴァンパイア・ウィークエンド、モデスト・マウス、スケルトンズ、アニマル・コレクティヴ、プロミス・リング、エリオット・スミス、アメリカン・フットボール etc etc





ライヴとの連動シリーズ、「Beckon You !!」 スタート!!!!
作品を購入→ライヴに行ったら会場でキャッシュ・バックしちゃいます!!


注目の新世代アーティストを中心に作品とライヴを連動させちゃうのが
この「Beckon You !!(来て来て〜おいでおいで〜の意)」シリーズ。
ザ・ドードーズ 『キャリアー』貼付のステッカーを公演当日にお持ち下さい。
その場で500円をキャッシュバック致します。
もちろん前売り券でも当日券でもオッケーです!


ele-king presents
THE DODOS Japan Tour 2013

(チケット発売7/20(土)〜)

10/22(火) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
THE DODOS / allon beausoleil
adv ¥3,800 door ¥4,300 (without drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:207-760)
ローソンチケット(Lコード:78311)
e+

【allon beausoleil】

 オレゴン州、ポートランド出身のSSW。ギターリストやボーカリストとしてバンド活動を初め、その後ソロ活動へ。Beck, Rickie Lee Jones, The Head and the Heart, Sonic Boom, The Dandy Warholsなどと各国でステージを共にし、その後、ポートランドからニューヨークへ、そして東京へ移住。そして今は、世界を飛び回りライヴを行なっている。ニュー・アルバム 『Prince Charming of Darkness』 では、ポップ、フォーク、エクスペリメンタリズムの間を彷徨い、そして、そのあくなき音の探究者としての旅に終わりはない。






10/23(水) 心斎橋CONPASS (06-6243-1666)
THE DODOS / NOKIES!
adv ¥3,800 door ¥4,300 (without drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:207-760)
ローソンチケット(Lコード:56069)
e+

【NOKIES!】

 大阪南堀江にあるFLAKE RECORDS初の日本人契約アーティストとして2011年2月にデビュー。その圧倒的な洋楽感と抜群のメロディ、アレンジセンスは高く評価され、特に多くのアーティストに支持される事に。ライブパフォーマンスも定評があり、FUJI ROCK 2011のROOKIE A GO GO STAGEへの出演や8otto、miila & The Geeksとのイギリスのフェス出演やフランス、パリ含むヨーロッパツアー、世界最大の音楽見本市SXSW出演〜それを皮切りにシカゴ、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンジェルス、ラスベガスと渡る全米ツアー、みやこ音楽祭では、くるりやLAMA、在日ファンク、KIMONOS、黒猫チェルシー等と並び堂々のメインステージにも抜される。更にはSTYROFOAM、FRENCH FILMS、CASIOKIDS、RAZIKA、DESMOND & THE TUTUSなどの日本ツアーもサポート。2013年にはりくるりが新たに始めたイベントWHOLE LOVE KYOTOのメインメンツに抜擢。引き続き精力的にライブ活動中。

10/25(金) 渋谷O-nest (03-3462-4420)
THE DODOS / ROTH BART BARON
adv ¥3,800 door¥4,300 (without drink)
open 18:30 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:207-760)
ローソンチケット(Lコード:78311)
e+

【ROTH BART BARON】

 2008年結成の東京出身ロックバンド。2010年に自主制作による1stEP「ROTH BART BARON」をセルフリリース。ギター、バンジョー、マンドリン、ピアノ、和太鼓、グロッケン、マリンバ、フィドルなど多種多様な楽器を使い、壮大なサウンドスケープと美しいメロディ、剥き出しの感情と生命力に満ちあふれた歌詞が作り出す圧倒的な世界観は日本の音楽シーンだけに留まらず、SoundCloudをはじめとする音楽系SNSサイトから多くの賞賛コメントを受けるなど、海外での評価も高い。2012年12月13日には2年ぶりのNEW EP「化け物山と合唱団」をリリース。SLEEPERS FILMと制作した Music VideoをYouTubeにて公開中。




*各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。


主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン スペースシャワーネットワーク  
TOTAL INFO:ele-king / P-VINE RECORDS 03-5766-1335
event@ele-king.net
www.ele-king.net

ザ・ドードーズ 『キャリアー』

PCD-20278
定価2,100yen
Release:2013.9.4
解説:佐藤一道(Monchicon!)

Amazon


1. Transformer
2. Substance
3. Confidence
4. Stranger
5. Relief
6. Holidays
7. Family
8. The Current
9. Destroyer
10. Death
11. The Ocean
12. Reaction -Bonus Track-

Various Artists - ele-king

 ポストパンクが何を歌っていたか、当時の音楽新聞から解説した名著『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』を読んで、アーティストがちゃんとイタリアのアウトノミアや「千のプラトー」のドゥルーズやガタリ、後に『帝国』を執筆するネグリなんかと同じように物事を考えていてびっくりしました。
 パンクが状況主義的に考え、行動していたというのを裏付けるような、その後の事実に感動しました。
 日本でも、浅田彰先生の『逃走論─スキゾ・キッズの冒険』をハウスマヌカンまで読んでいたから「千のプラトー」なんて言葉はなんとなく聞いていたのですが、『逃走』というイメージが強過ぎて、逃げればいいんじゃないのと若者は安直に考えていたというか、学生運動後のしらけ世代以降を肯定していった感じで、ヨーロッパの新しい運動は日本では何となく空気のように漂っていただけのような気がします。
 でも、ほとんどの人がよくわかっていなかった。パティ・スミスでさえわかっていなかった。彼女の引退の理由のひとつとして、79年だったか正確な日付は忘れたのですが、彼女のイタリアのコンサートが、イタリアのアウトノミアから派生した過激な労働闘争の場になってしまい、暴動寸前となり、死ぬほどの恐怖を感じたからというのがあるんですが、煙幕が立ち込める『地獄の黙示録』のワン・シーンのような光景を見て彼女は「スゲェ」とは思わず、もうこんなのこりごりだと思ったのです。
 でも、海外の若者たちはちゃんとそのメッセージを受け止めていて、それがオキュパイ運動とかにつながるわけで、日本も何もわかっていないかというとそういうわけではなく、首相官邸前には20万人もの人が集まったし、レイシストたちへのアンティファはたった半年で、レイシストのデモを中止に追い込むことまで出来た。
 世界同時革命はありうるということなんです。成功するか、どうかは知らないですけど。

 で、『スケアート・トゥ・ゲット・ハッピー』です。『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』の"その後"を音で編集したアルバムです。いろんなレーベルをこ超えてこんなことがよくできたなと思います。
 そして、『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』以降のしらけ世代、暗黒時代、アルバム・タイトルにあるように、この世代は笑うことを拒否し、雨が降れば傘もささずに、フード付きの服(アノラック)のフードで雨をしのぎながら下を向いて歩いた世代なのです。そんな音楽が面白いのか......、面白かったのです。『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』世代よりもちゃんと音楽をしようくらいの違いで、ほかは何ひとつ違いはなかったのです。
 聴いていて楽しかったです。『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』と同じくらいいまの音楽に利用できるアイデアが一杯ありました。いや『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』よりメランコリックなメロディ、音はいまの音楽に共鳴しているように感じました。
 若者はいつの時代も変わらないということでしょうか、とにかく、当時を知っている人も当時を知らない人にも聴いて欲しい、ガレージ・パンクの『ナゲッツ』がパンクに多大な影響を与えたように、『スケアート・トゥ・ゲット・ハッピー』もそういうオムニバスです。
 次は暗いことに疲れたマッドチェスター世代からブリットポップ、グランジという世代のオムニバスが作られるんでしょうけど、楽しみ。僕が作りたいかな。

interview with Airhead & James Blake - ele-king

(1)空気頭登場 (取材:野田努)


Airhead
For Years

R & S Records/ビート

Amazon iTunes

 エアヘッド、空気頭、自らを藤枝静夫の代表作を名乗る23歳のロンドン子、ロブ・マックアンドリューズがジェイムス・ブレイクのバンドのギタリストとして、去る6月上旬、来日したので取材した。彼のデビュー・アルバム『フォー・イヤーズ』がリリースされる直前のことだった。
 エアヘッドは、名前も良いが、音も良い。とくに10インチの「Wait」が僕は好きだ。ジェイムス・ブレイクの旧友だが、ビートの組み方が明らかにヒップホップ寄りで、ソウル・ヴォーカルのエディットも滑らかだ。センスが良いとしか言いようがない。
 
 会ったのは、同じ日のジェイムス・ブレイクの取材の前の時間だった。渋谷でエアヘッドと話してから、青山でジェイムス・ブレイクを取材した。
 僕がもっとも驚いたのは、ジェイムス・ブレイクの背の高さである。僕も180cmと高いほうだが、彼は190はあるぐらいに見える。学生時代はテニスをやっていたそうで、体格もがっちりしていて、どう見てもヒキコモリでもオタクでもないぞ、いかにも育ちが良さそうな、文武両道といった感じ。印象に残った言葉は、エアヘッドを指して、「あいつ、アホだろ」と呟いたブレイクの言葉。ふたりの友情、ふたりの深い関係性が読み取れやしないか。
 とまれ。時間順に行きます。まずは、ロブ・マックアンドリューズ。エアヘッドのインタヴューから。6月5日、よく晴れた正午、渋谷のカフェ。柔和で、謙虚な青年だった。

18歳未満のときも、偽のIDカードを作って、僕はクラブに入り込もうとして......、昔からジェイムス・ブレイクやベンとは友だちだったんですけど、みんなで「クラブ行こうぜ~!」って、偽のIDを作って行ったのに入れてもらえなかったり(笑)。

この後、ジェイムス・ブレイクと会うんですよ。

ロブ:ホント? アハハハハハ。

うちは基本、オンライン・マガジンなんですが、実は紙でも出していて、ほら、2011年のベスト・ワンをジェイムス・ブレイクのアルバムにしたんですよ。

ロブ:イエイエ(笑)、いいね。

じゃ、よろしくお願いします。ギターを弾きはじめたのは?

ロブ:11歳のときからです。いま23歳なので、もう12年ぐらい弾いています。

2010年に〈ブレインマス〉からシングルを出していますが、打ち込みをやる以前、ギタリストとしてはどんな活動を?

ロブ:最初は物真似で、自分で曲も作ってましたね。11歳の頃はロックにハマって、エレクトリック・ギターを弾いてましたが、途中からアコースティック・ギターにハマってカントリーを弾きました。ミシシッピ・ジョン・ハートが大好きになって、ものすごく影響を受けました。15歳になってから打ち込みにハマって、電子音楽を作るようになりました。

電子音楽を作るようになったきっかけは何だったんですか?

ロブ:友人の従兄弟が実験的な音楽を聴いていて、彼を介して知ったんです。それから、15歳のときにアンチコンのクラウデッド、オッド・ノッザムなんかにハマって、自分でも作りたいと思ったんです。自分が持っているパソコンで作れるんだってことも知って。

ああ、なるほど、アンチコンかぁ。あなたの作品を聴いたとき、ビートメイカーだなと思ったんですよね。

ロブ:なははは、アリガト(笑)。

去年、あなたのシングル「Wait」が都内のレコ屋に並んだときも、ヘッズが買ってましたよ。

ロブ:それはとても嬉しいですね。実はその曲は2009年に出来ていたんですね。でも、僕は、作るだけで出すことがうまくないんです(笑)。その曲はずっと放置されていたんですが、いまジェイムス・ブレイクのマネージャーをやっているダンが、「これは早く出したほうが良い」って、動いてくれたんです。彼はいま僕のマネージャーもやっています。

当時のアンチコンはもっともイルなレーベルでしたが、クラウデッドみたいな不気味な音楽のどこに惚れたんですか?

ロブ:やっぱユニークで変わっていますから。クラウデッドのファースト・アルバムなんかはとくにそうだったと思います。1曲のなかに6つぐらいの違う要素があって、繋がらないものが繋がってしまうというか。あの頃のアンチコンやクラウデッドのサンプルは、古いレコードから取られていたので、オーガニックで、ナチュラルな響きがあったと思うんですね。そこが、僕のなかで、カントリー/ブルースから電子音楽への橋渡しになったんだと思います。
 完全な電子音楽......というか、シンセの音を好きになるのは、アンチコンにハマってから数年後のことだったんです。やっぱ若い頃は、シンセの音に抵抗がありました。

生まれと育ちは?

ロブ:ロンドン。

ロンドンのクラブ・シーンとはどうやって繋がるんですか?

ロブ:クラブとはすごく強い結びつきがあります。18歳未満のときも、偽のIDカードを作って、僕はクラブに入り込もうとして......、昔からジェイムス・ブレイクやベンとは友だちだったんですけど、みんなで「クラブ行こうぜ~!」って、偽のIDを作って行ったのに入れてもらえなかったり(笑)。でも、18歳になって晴れてクラブに行けるようになりました。
 僕は18歳からは、リーズという北部の街の大学に進学したので、その頃はロンドンにはいなかったんですけれど、その街にはウエスト・インディアン・コミュニティ・センターがあって、そこで初めてデジタル・ミスティックズやマーラやコーキのショーを見ました。初めてダブステップを聴いたのはそのときです。コミュニティ・センターのサウンドシステムも素晴らしくて、手作りで、ものすごい迫力のある音を出していました。だから、ロンドンのクラブと繋がっていたんではなく、ロンドンのクラブに影響を受けていたと言ったほうが正確ですね。ジェイムスと一緒に〈ヘッスル・オーディオ〉とか、マウント・キンビーとか追いかけて、あと〈プラスティック・ピープル〉にも遊びに行きましたね。いまではジェイムスたちと一緒に〈プラスティック・ピープル〉でイベントをやっているわけですから、面白いモノですね。

ジェイムスとはいつから知り合い?

ロブ:中学校が一緒だったんですね。だから、12年ぐらいの付き合いになります。

当時のふたりにとっての音楽的なヒーローは誰だったんですか?

ロブ:中学のときは別々の楽器やっていたから、お互い共通する音楽的ヒーローはいなかったと思います。ジェイムスはピアニストだったし、アート・テイタムとか好きだった。彼に直接訊いてみないとわからないけど。僕はロックが好きだったので、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェペリンがヒーローで、それからブルーズが大好きになった。僕とジェイムスの好みが一致するのはダブステップ以降です。17歳、18歳の頃で、ジェイムスはディアンジェロの『ヴードゥー』をよく聴いていましたよ。

名盤ですね。

ロブ:本当にそうですね。

偽のIDを作ってまでしてクラブに行きたかった理由は何なんですか?

ロブ:ロンドンのクラブがすごく盛り上がっていたんです。ジャングルがすごくて、ゴールディーやグルーヴライダーのようなDJがプレイしていました。僕やジェイムスはとにかくそのなかの一部になりたくて......。ロンドンには本当に素晴らしいサウンドシステムもあるし、良いDJがたくさんいる。クラブで遊びたいというよりも、音楽が聴きたいっていう感じでした。音楽のためにクラブに行ってました。

がっつり踊るほうですか?

ロブ:アハハハ......、気分によります。自分のドリンクに何が入っていたかによりますね(笑)。お酒を飲んだくらいなら、まあ、静かに大人しく音楽を聴いていますが、何か別のときは騒ぐこともあります。でも、自分はあんまり踊りがうまくないので、踊らないようにしています(笑)。

ハハハハ。

ロブ:ニューヨークのディープ・スペースというパーティで、フランソワ・ケヴォーキアンのDJを聴いたときは、ちょっとお酒を飲んだだけなのに、ものすごく踊りました(笑)。ジェイムスやベンや僕の彼女と一緒に行ったんですけど、結婚式で酔っぱらったおじさんみたいに、踊ってしまいました。

フランソワの何が良かったんですか?

ロブ:まさに音楽が良かったんです。ディミトリ・フロム・パリもプレイしていました。彼のDJも良かったです。音楽の質とクラブの雰囲気がすごく良かったんです。オーディエンスも、ミーハーな感じではなく、音楽を聴きに来ている感じでした。通っぽい人たちばかりで、良い雰囲気でした。

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自分の名前がジェイムス・ブレイクみたいにキャッチーな名前だったら良かったんですけど......、まあ、何か名義が必要だなって考えていたときに、友だちが彼女に向かって「おまえはエアヘッドだ」って言ったことがあって、エアヘッドというのは、「何も考えていない」、「おばかさん」という意味なんですが、「あ、それもらった」と思って、使っています(笑)。

あなたの世代から見て、ハウス・ミュージックはどこがいいんですか?

ロブ:ハウスはいままた人気が出てきているんです。プロデューサーも、ダブステップ風のトラックよりもハウスっぽいトラックを作っています。ハウスのキックやテンポが踊りやすいからだと思います。ダブステップではひとりで下を向いて踊っている感じが、ハウスだと上を見上げたり、お互い見つめ合ったり、DJを見たり......DJをやっているほうとしてはやり楽しいんです。ハウス・ミュージックは、20年、30年前からあるものなので、僕ら世代がその伝統に新しい解釈を加えることはとても良いことだと思います。僕自身も最近はオマー・Sやムーディーマン、セオ・パリッシュを聴いているので、個人的にもハウスの影響を受けています。

僕は、1991年~1992年のロンドンのレイヴに何回か行って、当時のエネルギーを感じているのですが、あの時代のイギリスは失業者も多かったし、社会的に暗い時代が長く続いて、そうした背景がパーティへのエネルギーにもなっていたようなところがありましたが、現在のダンス・カルチャーにもそうした社会的な背景は関係していると思いますか?

ロブ:僕は、UKのクラブ・カルチャーにはドラッグ・カルチャーが関わっていると思います。91年のUKではエクスタシーが流行っていました。それがあの高まりに繋がったんだと思います。ダブステップにはウィードの影響があったんです。数年前まではクラブのなかで吸えたんですが、法律が変わっていまでは吸えなくなりました。それでダブステップは下火になって、ハウス・ミュージックに変わったんだと思います(笑)。僕は、いまのキッズがフラストレーションを爆発するためにダンスに向かっているとは思っていません。なんて言うか......、90年代とは違う気がします。たとえば、90年代にはフリー・パーティがありました。フライヤーもない、シークレットのパーティです。電話をして場所を訊いていくようなね。

行ってました(笑)。

ロブ:羨ましいです。しかし、政府がバカな法律を作ってしまったお陰で、フリー・パーティが出来なくなりました。8人以上が集まってしまってはダメっていう法律です。

その反対のデモにも行きました(笑)。

ロブ:ハハハハハ。とにかく、そういうレイヴができなくなってしまったことが僕は大きいと思います。昔といまはそこに大きく違います。

ところで、エアヘッド(空気頭)という名義はどこに由来するんですか?

ロブ:自分の名前がジェイムス・ブレイクみたいにキャッチーな名前だったら良かったんですけど......、まあ、何か名義が必要だなって考えていたときに、友だちが彼女に向かって「おまえはエアヘッドだ」って言ったことがあって、エアヘッドというのは、「何も考えていない」、「おばかさん」という意味なんですが、「あ、それもらった」と思って、使っています(笑)。


Airhead
For Years

R & S Records/ビート

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ハハハハ。今回のデビュー・アルバム『フォー・イヤーズ』にはどのようなコンセプトがあるのでしょうか?

ロブ:過去4年間作ってきた音楽の集大成という意味です。ただひたすら、僕は音楽を作っていました。アンビエントにハマってアンビエントを作ったこともあります。なので、アンビエントも入っています。ダンス・ミュージックにハマったときはダンス・ミュージックを作りました。そうやって曲を作っていって、1枚のアルバム分できたということです。決まったコンセプトはないんです。

そのアンビエントの曲は"Masami"ですよね。日本人の女の子の名前でしょう?

ロブ:そうかもしれませんね。僕は曲名を考えるのがものすごく下手です(笑)。この曲名は、たまたま友人の家に行ったときに開いてあった本のなかにあった名詞でした。

マサミさんと付き合っていたわけじゃないんですね(笑)。

ロブ:違います(笑)。でも、そう答えたほうが面白かったですよね。

ハハハハ。女性が歌っている曲が2曲ありますね。シンガーについて教えて下さい。

ロブ:ふたりともジェイムス・ブレイクを介して知り合いました。"Callow"で歌っているのは、キャサリンという人です。ジェイムスとは同じ大学でした。彼女は、ジェイムスが前回来日したときに一緒に行っています。

あー、あのときの彼女でしたか。フロントアクトのギター持って歌っていた。

ロブ:そうです。"Autumn"で歌っているのはアンドレアという人で、彼女はメキシコでのショーのサポートをしてくれました。彼女はメキシコに住んでいるので、メールで曲のやりとりをしながら、彼女がロンドンに来たときにスタジオで録音しました。

『フォー・イヤーズ』を出したことで、あなたの方向性にどのような変化があると思いますか? いままでのような、アンダーグラウンドなリリースも続けていきますか? よりポップな方向に行きますか?

ロブ:ポップ路線は考えていません。ダンス路線を考えています。最近はDJをやることが楽しいです。もっとたくさんDJをやりたいです。セットのなかに自分の曲を入れたいと思っています。ようやくダンス・ミュージックを作れるようになったので。

わかりました。どうもありがとうございました。

ロブ:サンキュー。

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(2)ジェイムス・ブレイク登場 (取材:木津毅/写真:Teppei Kishida)

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James Blake
Overgrown

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 どうしてひとは、愛を歌わずにはいられないのだろう。
 ジェイムス・ブレイクが"CMYK"から『ジェイムス・ブレイク』、そして『オーヴァーグロウン』へと至った道のりには、ひとりの表現者が愛を歌いはじめる、そのドキュメントを見る思いがする。『オーヴァーグロウン』はもちろん、ファースト以上に彼のトラックに対する感性が研ぎ澄まされたアルバムであり、ハウス、ダブステップ、ヒップホップの多彩なビートを使い分けながらより複雑な音の配合を施した作品である。しかし同時に、前作では多用されていた声にかけられたエフェクトが減り、より生に近い彼自身の声を......その歌を、エモーショナルに響かせることに腐心したレコードだ。それはなぜかと問われれば、僕にはどうしても、彼のなかに愛......それも、はじめて経験する愛が芽生えたことと深く関係しているように感じられる。複雑なトラックをよくコントロールしながら作ることに長けた彼が、愛を歌うことに対しては非常にプリミティヴな動機を抱いたのではないか。
 先の来日公演では、相変わらず地を這うような重々しい迫力を持った低音と、さらに肉感的になった歌唱とのそのどちらもが、けっして彼から切り離せないものとしてそこに立ち現れていた。ジェイムス・ブレイクはいま、デジタル・ミスティックズやブリアルのダブステップにかつて抱いた憧れとジョニ・ミッチェルのような古典的なシンガーソングライターへの思慕とを、自らを媒介にすることによって結びつけようとしている。それは新しい時代の、様式に囚われない新しい形の愛の歌の可能性だ......それも、たしかに彼の感情を解放するものとしての、とてもピュアなラヴ・ソング。

 思っていた以上に長身だったジェイムス・ブレイクは、幼なじみの名前を出した瞬間に顔が綻ぶような、素朴な青年であった。そんな彼がいま、真摯に自らの愛に向き合っている姿は、どうにも胸を打つものだ。
 取材の時間が限られていたため、用意していた最後の質問を訊くことができなかった......「あなたにとっての理想のラヴ・ソングとは?」
 だが、ジェイムス・ブレイクはきっと未来に、美しくそれを歌うことでその問いに答えてくれるだろう。

女性っていうのはユニークな視点を持って音楽に取り組んでいくってところがあると思うんだけど、ただ、いまの音楽業界では残念なことに女性アーティストは注目を浴びるためにどうしてもやらなきゃいけないことがあって......もちろん、そういうことを訊いてるんじゃないってわかってるんだけど(笑)。

野田:ちょうど1ヶ月ほど前にマーラの取材をしたんですけど、じつはあなたとすごく若いときから知り合いで、今度あなたがリミックスしてくれたシングルを出すって言ってましたよ。

ジェイムス:うん、そうなんだ。リミックスをやったんだけど、今後もっとちゃんとした形で何かいっしょに仕事をしたいなと思ってるんだ。じつはスタジオまで行ってちょっといろいろやってみたんだけど、まだ何も形にはなっていなくて。昔のダブ・レコードとかアウトキャストとかを聴いてたりしたんだけど。
 そもそも、こういう音楽をやろうと思うきっかけを作ってくれたのがマーラなんだ。彼はナイスな上に謙虚で、人間としてもとても温かみのあるひとなんだ。またいっしょに仕事したいな、また会いたいなと思いながらも、僕が友だちとも会えないような忙しい状況だから、いつ実現するかわからないんだけど。

野田:そうなんだ。ちなみに、さっきまでエアヘッドにインタヴューしてたんですよ。

ジェイムス:ほんとに? 今日?

野田:ええ、すごくいい話をしてくれましたよ。

ジェイムス:ちゃんとたくさん話してた? 普段はシャイで、インタヴューなんかだとあんまり喋らないタイプなんだよ。

野田:ちゃんと話してましたよー! 中学校時代あなたと同じ学校で、彼がギターであなたがピアノだって聞かせてくれましたよ(笑)。

ジェイムス:あいつはアホなんだよ。

野田&木津:だはははは!

野田:17歳のときいっしょにクラブに行って、IDカード偽装して追い返された話とか(笑)。

ジェイムス:そういう話ならいくらでもあるよ(笑)。

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オートチューンやピッチ・シフトに関しては、メロディ的な要素として使う以外に求められるものはもはやないね。想像力をかき立てるものがそれ以上は何もないから、何か新しい要素が加わらない限りは自分としてはやり尽くしたかな、と。

(笑)じゃあ、アルバムについて話を聞きたいんですけど。『オーヴァーグロウン』は前作よりもさらに、あなたのシンガーソングライターとしての側面が前に出た作品だと感じました。ただそれ以前に、いま思えばその布石のようにしてファイストやジョニ・ミッチェルのカヴァーを作品として発表されてますよね。そこでフィメール・シンガーのラヴ・ソングを選んでいたのはなぜなのでしょうか?

ジェイムス:女性っていうのはユニークな視点を持って音楽に取り組んでいくってところがあると思うんだけど、ただ、いまの音楽業界では残念なことに女性アーティストは注目を浴びるためにどうしてもやらなきゃいけないことがあって......もちろん、そういうことを訊いてるんじゃないってわかってるんだけど(笑)、いまちょっとふとそう思って。でも実際は、シンプルにポイントをついて曲を作るのが上手な女性ミュージシャンが多いと思うんだ。男性にはできないような──もしくは男性がそれをやるためには、意識的にある面を押さえつけないといけないようなところがあると思うんだけど、そうじゃない、女性のそういうユニークな視点が大好きなんだ。
 たとえばジョニ・ミッチェルの曲なんかは本当に的確だし、ファイストのコード使いだってすごく的確だ。ポップなんだけど、他の曲ではできないような的確な音使いで、そこに「タ、タ、タ、ターン」と僕には思いつかないようなメロディが入ってきたりして、すごく上手くまとめてるんだよね。僕もジョニの"ア・ケース・オブ・ユー"なんかはライヴでやってるんだけど、ジョニのほうがもっと端的にピアノを弾いていて、僕はもうちょっとあれこれ装飾をつけつつ弾いてるんだ。とにかく、そういう視点が好きなのかな。女性のラヴ・ソングが好きっていうよりは、彼女たちのあの2曲が好きで、それがなぜかと言うと、こういうことなんだろうな、と。

なるほど。こういう質問をしたのは、僕も多くのひとと同じように、シングルの"CMYK"をはじめて聴いたときにすごく衝撃を受けたんですよ。それで当時は、あなたがシンガーとしての側面にこれほどフォーカスすると思っていなくて。もともと「歌う」っていう行為自体、あなたにとって自然なことだったんでしょうか?

ジェイムス:うん、自然なことだったね。というのは、"CMYK"とかサンプリングを多用した曲は別として、僕は基本的に曲を作るときは歌からはじめることが多くて。そもそも、このアルバムは他のひとのサンプリングをしたくなかったところから始まってるんだよ。それだったら自分のものを作ろう、ということで。クリエイティヴな側面で言っても、他のひとのサンプリングよりも自分の歌のほうが自由を得られるというか。
 あと、いまはサンプリングも多用されすぎていて、新しいことが逆になかなかできなくなってるんだ。僕にとってサンプリングの行為っていうのは、その瞬間を捉えるってことだから、自分が作りたいその瞬間のためのものとして使いたいんだよ。一般的なサンプリングのプロセスっていうのは、もう飽き飽きしちゃってて、何も楽しいと思えるところがないんだよね。アカイのサンプラーでもiPhoneでも、はっきり言ってサンプリングの技術っていうのは10年前とあんまり変わらなくて......速度がちょっと速くなったぐらいだね。だから、サンプリングを使って革新的なことはなかなかできなくなっている。自分が音楽をやっていて、他とは違う新しいことをやるってなると、自分のもので作っていく......それしかないんじゃないかな、と思っているよ。

その、サンプリングに飽き飽きしているなかで、歌??演奏だけじゃなくて、自ら声を出して歌う、って方向に進んだのはどうしてなんでしょう?

ジェイムス:ファーストを作ったときはサンプリングにうんざりしていたわけじゃなくて、そのことにはっと気づいたのはここ最近のことなんだ。同じ作業を3年間もやってるじゃないかって。録音したものを断片的にカットしたりくっつけたりする作業がバカバカしくなっちゃって。ファースト・アルバムのころはまだその作業にワクワクしていたから、その興奮ぶりが伝わる内容にはなってると思うんだけど。わりとそのときの自分のブームっていうのがあるんだけど、すごく熱しやすく冷めやすいタイプで。

ああ、そうなんですか。

ジェイムス:すぐ気が変わるところがあるんだよ。でもいまの自分としては、ヴォーカルをサンプリングして切り貼りした作業を考えただけで、窓から飛び降りたくなるよ。いまだったら、楽器がいろいろあるなかでロブとベンとのバンドで演奏して、その3人のシナジーみたいなものをレコーディングするほうが楽しいかな。

あるいは、あなた自身の声にかけられたピッチ・エフェクトが減ったっていうのも??。

ジェイムス:うん、サンプリングと同じように、自分の声にエフェクトをかけるのも飽きてしまったんだ。世のなかっていうのはテクノロジーが好きで、たとえばiPhoneだってみんなが4Sにだんだん飽きはじめたころに5が出て、するとみんな、わっとそれに飛びつくよね。少ししか違いはないのに、それでも何百万人ってひとが興奮してそれを買ってる。新しいテクノロジーっていうのは新しい可能性を生み出すものだから、僕も「これからどういう音楽ができるんだろう」っていう想いから興奮して、やる気が出てくるところはたしかにある。新しい何かを使うってことは、暗闇のなか手探りで何かを作っていく興奮といっしょなんだ。
 エフェクトに関しては、たとえばリヴァーブだったらまた別の効果があって、特定の空間的なサウンドを生み出すことができる。使い方によっては宇宙からのサウンドみたいにもできる。ただ、オートチューンやピッチ・シフトに関しては、メロディ的な要素として使う以外に求められるものはもはやないね。想像力をかき立てるものがそれ以上は何もないから、何か新しい要素が加わらない限りは自分としてはやり尽くしたかな、と。

では、そうやってバンド・スタイルで、よりストレートにヴォーカルを取るっていう方向に移っていったことと、作品のテーマが「愛」に向かって行ったこととは何か関係はあるんでしょうか。アルバムのテーマは「愛」だとお聞きしていますが。

ジェイムス:まず、愛がテーマになっているという最大の理由は恋に落ちたからなんだ。誰かを愛していなければ、愛についてはなかなか語れないからね。それまでは愛というものは経験したことがなかった。ファースト・アルバムはその、愛のない自分の人生について嘆いていたアルバムだった。だからファーストはすごく悲しげだし、作ったときの自分もぜんぜんハッピーな状態ではなかったし。
 今回のアルバムは......僕たちは遠距離恋愛なんだけど、彼女といっしょにいるときもふたりきりになれるような空間があんまりなかったんだ。だから、いろんなひとといっしょの空間に押し込められているっていう気持ちと、離れているときの心が引き裂かれるほどの寂しさ、その両極端の想いがこのアルバムには入っているんだよ。

なるほど、すごくよくわかります。少ない言葉で歌うエモーショナルなラヴ・ソングが多かったので、ご自身の経験がダイレクトに反映されたのではないかと想像していました。ただ同時に、たとえばあなたが好きなジョニ・ミッチェルであるとか、クラシックなシンガーソングライターたちがやってきたように、「ジェイムス・ブレイクとしてのラヴ・ソング」というものに挑戦したかったところはありましたか?

ジェイムス:うん、それは絶対にそう。歌詞とか曲作りの面ではすごく簡単で、ぱっと思い浮かぶんだけど、そこから構成して曲として完成させていくプロセスのほうが難しい。というのは、やっぱりありきたりなラヴ・ソングにはしたくなかった。地雷がたくさん埋まってる原っぱみたいなものだよ(笑)。安易なトラップにはまらないようにして、オリジナルなものを作っていくのはすごく難しい。自分にとっては新しい試みだったから、いくつか地雷を踏んじゃったと思うんだけど。

そんなことないですよ(笑)。すごくエモーショナルな美しいラヴ・ソング集だと思いました。

ジェイムス:ありがとう(笑)。

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