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Scared To Get Happy [A Story Of Indie - Pop 1980ー1989]

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久保憲司 Jul 16,2013 UP

 ポストパンクが何を歌っていたか、当時の音楽新聞から解説した名著『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』を読んで、アーティストがちゃんとイタリアのアウトノミアや「千のプラトー」のドゥルーズやガタリ、後に『帝国』を執筆するネグリなんかと同じように物事を考えていてびっくりしました。
 パンクが状況主義的に考え、行動していたというのを裏付けるような、その後の事実に感動しました。
 日本でも、浅田彰先生の『逃走論─スキゾ・キッズの冒険』をハウスマヌカンまで読んでいたから「千のプラトー」なんて言葉はなんとなく聞いていたのですが、『逃走』というイメージが強過ぎて、逃げればいいんじゃないのと若者は安直に考えていたというか、学生運動後のしらけ世代以降を肯定していった感じで、ヨーロッパの新しい運動は日本では何となく空気のように漂っていただけのような気がします。
 でも、ほとんどの人がよくわかっていなかった。パティ・スミスでさえわかっていなかった。彼女の引退の理由のひとつとして、79年だったか正確な日付は忘れたのですが、彼女のイタリアのコンサートが、イタリアのアウトノミアから派生した過激な労働闘争の場になってしまい、暴動寸前となり、死ぬほどの恐怖を感じたからというのがあるんですが、煙幕が立ち込める『地獄の黙示録』のワン・シーンのような光景を見て彼女は「スゲェ」とは思わず、もうこんなのこりごりだと思ったのです。
 でも、海外の若者たちはちゃんとそのメッセージを受け止めていて、それがオキュパイ運動とかにつながるわけで、日本も何もわかっていないかというとそういうわけではなく、首相官邸前には20万人もの人が集まったし、レイシストたちへのアンティファはたった半年で、レイシストのデモを中止に追い込むことまで出来た。
 世界同時革命はありうるということなんです。成功するか、どうかは知らないですけど。

 で、『スケアート・トゥ・ゲット・ハッピー』です。『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』の"その後"を音で編集したアルバムです。いろんなレーベルをこ超えてこんなことがよくできたなと思います。
 そして、『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』以降のしらけ世代、暗黒時代、アルバム・タイトルにあるように、この世代は笑うことを拒否し、雨が降れば傘もささずに、フード付きの服(アノラック)のフードで雨をしのぎながら下を向いて歩いた世代なのです。そんな音楽が面白いのか......、面白かったのです。『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』世代よりもちゃんと音楽をしようくらいの違いで、ほかは何ひとつ違いはなかったのです。
 聴いていて楽しかったです。『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』と同じくらいいまの音楽に利用できるアイデアが一杯ありました。いや『ポストパンク・ジェネレーション1978-1984』よりメランコリックなメロディ、音はいまの音楽に共鳴しているように感じました。
 若者はいつの時代も変わらないということでしょうか、とにかく、当時を知っている人も当時を知らない人にも聴いて欲しい、ガレージ・パンクの『ナゲッツ』がパンクに多大な影響を与えたように、『スケアート・トゥ・ゲット・ハッピー』もそういうオムニバスです。
 次は暗いことに疲れたマッドチェスター世代からブリットポップ、グランジという世代のオムニバスが作られるんでしょうけど、楽しみ。僕が作りたいかな。

久保憲司