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interview with Soggy Cheerios

interview with Soggy Cheerios

生まれ直すロック

――ソギー・チェリオス、インタヴュー

松村正人    Jul 19,2013 UP

ソギー・チェリオス
1959

Pヴァイン

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 「Soggy Cheerios(ソギー・チェリオス)」チェリオスとはアメリカ産のシリアルで、形容詞「ソギー(ふやけた)」が頭に乗っかるとまさにいま食べられようとしているかのようだが、彼らがなぜ新バンドにそんな名前をつけたのかを、頭のふやけた私は残念ながら訊きそびれてしまった。もちろんわからなくはない。どころかいくつかの暗喩さえよみとれる。いや、これはむしろ、音楽を何度も聴き、何倍も愉しみ、深く考えるとともに彼らに併走するための入り口のひとつであるにすぎない。彼らとは鈴木惣一朗と直枝政広である。ワールド・スタンダードとしてインストゥルメンタル主体の汎音楽を長年追求し、文筆家として『モンド・ミュージック』で音楽の間口を広げ、プロデューサーとしても後進に影響を与えつづけけた才人、鈴木惣一朗。かくいう私も彼の音楽と文章から多くを学び、前職の『スタジオ・ボイス』時代は私にとって彼の仕事はサブカルチャーの文脈で音楽を語るためのひとつの指標でもあったが、会うのは今回がはじめてだった。と書いて自分でもびっくりしたが出会いにおそすぎることはない。それは鈴木惣一朗ともうひとりのソギー・チェリオス、カーネーションの直枝政広、ともに1959年、亥年生まれの彼らが2013年のいま、はじめていっしょに音楽をつくりはじめたのと似ている。たがいに30年のキャリアすべてを背負ってつくりあげた『1959』の言葉と音のみならず、そこかしこから聞こえる唸り、軋み、擦れ、それをひっくるめた馥郁たる(という形容こそがふさわしい)空気には時間の厚みを感じないわけにいかない。音はアコースティックに比重を置いたシンプルなものだが、マチズモな音楽の常套句である「骨太」が骨粗鬆症にみえるほど、中身がしっかり詰まっている。つまりはロックだが通り一遍のそれではない。だって「お餅」や「お麩」、「イノシシ」を歌った歌なんかあるんだから。

「いまいえよ、いまいったほうがいいよ」という声がどこからか聞こえてきて(笑)、「今度音楽やろうよ」と声をかけたの。(直枝)

片づけして帰ろうとしたら、何気なくポンといわれて。非常にさわやかに僕には聞こえたんですよ。(鈴木)

直枝:京都に行ったらいつも行く護王神社ってのがあるんだけど、そこはイノシシの神社なんですよ。そこには水晶でできた亥の牙の形のキーホルダーがあってそれを買うんだけど、その牙すぐに取れちゃうんだよね(笑)。

鈴木:それミサンガと同じなんじゃない。取れたときに願いごとが叶う。

直枝:たしかに、ソギーのレコーディングが終わったときに取れたんだよ。

鈴木:成就したんだ。

そのレコーディングはいつはじまったんですか?

鈴木:録音は3~4月で、5月頭には終わったかな。

直枝:実質2週間ちょっとでできたんじゃなかったかな。

そういえば、ちょうど3月くらい、紙の『ele-king』の前号で湯浅さんと直枝さんに対談していただいたとき、惣一朗さんといっしょにレコード屋にいったら、「もう買わなくていいんじゃない」といわれたとおっしゃっていましたよね。

直枝:『サージェント・ペパー』ね(笑)。欲しいなと思って見ていたら、押し戻されたって話ね。

鈴木:だって直枝くん、オデオン盤の『サージェント・ペパー』をまだ買おうとするんだよ。直枝くんがそんなもん買ったら、僕はどうすればいいのよって話ですよ。

なるほど。僕らはこれ以上音楽聴かなくていいじゃない、ってことではなかったんですね。

直枝:そうじゃない。そうじゃないよね?

鈴木:『サージェント・ペパー』はもういいじゃないかって。

直枝:俺は何度でも繰り返し聴きたい。『サージェント・ペパー』から何度でもはじめたいんだよ。くすんで見えるかもしれないけど、いまにはいまの響きがあるんだ。そのためにいま、ステレオをアップグレードして接続を変えたり針を掃除したりしているわけでしょ。それで輝きが出てきたりするんだよ。

よいものも悪いものも含め、いまの耳で聴かないといけないってことですね。

直枝:買わないとダメですね。

おふたりとも音楽を聴くことでは人後に落ちないと思うんですが。

鈴木:人後に落ちないどころか聴きすぎです(笑)。前にレコードを売るならそれ以上買えって教えられたことがあって。

直枝:誰にそんなこと教えられるのよ(笑)?

鈴木:Hがつくひと(笑)、細野さん。それはそうだなって思ったんですね。とにかくいっぱい聴いて、それを自分のなかで濾過するというかね。

惣一朗さんのそのスタンスが『モンド・ミュージック』などを通じて、私たちの世代を影響して、ひとつの価値観をつくったと思いますよ。

鈴木:聴き方は匠みたいなものだから、直枝くんは直枝くんで『サージェント・ペパー』をいまの耳で聴くんだろうし、それはもういいんじゃないかとも思いもするけど(笑)、何度も聴けるほどロック・カルチャーはタフなものだとあらためて思うようになってきたというのはありますね。去年、一昨年くらいからかな。リマスタ盤とか出尽くして買うものもなくなってきちゃって、アナログを聴き直すようになったんです。とくに震災以降。最初はシンガー・ソングライターやジャズのアルバムを買っていくなかで、もう一回ふれあっていくわけですよ。ビーチ・ボーイズでもなんでも。さすがに『スマイル』は僕にはもういい。でも『フレンズ』はやっぱりもう一回聴きたいアルバムかな。直枝くんだったら『オランダ』かもしれない。それをもう一度アナログ盤で聴くようになってきて、そのなかに(僕は)今までロック・カルチャーをやってこなかったなという伏線があった。そんなとき、直枝くんと会って刺激されたところはありますね。

取材:松村正人(2013年7月19日)

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