「IO」と一致するもの

François J. Bonnet & Stephen O’Malley - ele-king

 静謐な不穏。静かな殺気。何か押し殺したような迫力が、この持続音にはある。「何か」がそこに「いる」ような感覚とでもいうべきか。しかし何も「ない」。だが気配は「ある」。いや存在の気配は「ある」。確かに音は鳴っているのだから。
 いや、これは「音楽」のはずだ。確かに霧のような、風のような音は聴こえてくる。それは霞んだエレクトリック・ギターの音。静謐な電子音が鳴っている。ノイズも聴こえる。
 だが、「ここ」にあるのは、「音」だろうか。「ノイズ」だろうか。そもそも「音楽」だろうか。いや、それともそのすべてが「ここ」ではあてはまるとでもいうのだろうか。もちろん、これは音楽だ。『Cylene II』と名付けられたアルバムであり、音楽作品だ。
 しかし、私には、このアルバム『Cylene II』の音は、存在すると同時に存在しないように聴こえてならないのだ。いわば「幽霊の音」がここにある。

 GRM (Le Groupe de Recherches Musicales/フランス音楽研究グループ)の芸術監督であるフランソワ・J・ボネ(カッセル・イェーガー)と、サンO)))のスティーヴン・オマリーのデュオ作品、その二作目である。前作『Cylene』は2019年に〈Editions Mego〉からリリースされたが、本作『Cylene II』は、オルタナティヴ・ミュージック・レーベルの老舗〈Drag City〉からとなった。
  前作『Cylene』は楽吉左衛門=樂 直入による現代焼き物をアートワークに起用していたが、本作『Cylene II』では、前作で撮影を行なっていた Eléonore Huisseの霧に満ちた荒涼とした光景を捉えたような写真を用いている。
 そう、モノから霧ようなアトモスフィアへ。このアートワークの変化は、彼らの音の変化も表しているように感じられた。ちなみにマスタリングは前作『Cylene』ではDubplates & MasteringのRashad Beckerが手掛けていたが、本作『Cylene II』ではGiuseppe Ielasiによるマスタリングだ。録音は前作同様、 INA-GRMで行われた。

 このアルバム『Cylene II』を聴き終わったとき、私は「音の幽霊」というものをどこかに感じとってしまった。単なる妄想。単なる思い込みだろう。音はそこに「ある」のに、「存在しない」。そんな音を聴取したような聴き心地が残った。
 簡単に言えば、アルバム『Cylene II』を一聴したとき、とても不思議な音響だと思ったのだ。オマリーのギターも、ボネのシンセサイザーも、確かに鳴っているにも関わらず、そこにないように聴こえたのである。まるで時間が停滞する世界、もしくは冥界から聴こえてくるようなサウンドのようだ。
 彼らのソロやバンド作品とは違う音だ。さらにいえば彼らデュオの前作『Cylene』のサウンドスケープとも異なっていた。もちろん同じことを繰り返さないのもアーティストのサガとはいえ、『Cylene II』はそのようなこととは異なる何かがあった。何だろうか?

 アルバム『Cylene II』には全6曲が収められている。ギターとシンセサイザーによるドローン/アンビエントといえるが、心を沈静化してくれるような心地よさは希薄である。音はやや硬く、静謐だが微かな痛みを感じるような、現実と非現実が持続するような音響が続く。
 本作ではオマリーのギターの音がまず耳に残る。彼のギターは持続していても、どこか非持続的というか、持続が切断されるような緊張感がつねに横溢していた。
 そこにボネの幽玄なシンセサイザーによるドローンが絡みつく。二人の音の交錯は前作以上に生々しく、現実感を欠いた音響との対比が見事である。じっさいこのアルバムを聴き卯づけていると、音は存在するのにしかし存在しないという奇妙な感覚を持ってしまう。幽霊のようなノイズ/ドローン作品とでもいうべきか。私は、この『Cylene II』のオマリーのギターを聴いていると、不意にミカ・ヴァイニオのノイズのことを思い出した。持続されているにに途切れているような不可思議な切断の感覚を持ったドローンに、どこか近いものを感じたのだ。持続しているにも関わらず、持続が切れていくような音響。

 とくに4曲め“Ghosts of Precognition”に注目したい。この曲は11分44秒というアルバム中、もっとも長尺のトラックだ。オマリーのギターとボネのシンセ(電子音)の絡み合い、変化、浸透していくさまを聴き取ることができる。この曲は、本作中でももっとも音の変化がダイナミックに行われており、抽象的な音による交響曲のような趣さえある。この曲以降、この『Cylene II』にはある種の硬質なダイナミズムを獲得する。空間と空気を切り裂くような、まるで音の裂け目のようなサウンドを生成していくのだ。とくにオマリーとボネの音の交錯が実になまなましい。素晴らしいドローン楽曲だ。
 だが、あえていえば、アルバム前半の静謐なムードの方が、『Cylene II』ならではの幽霊のような音響に満ちていたともいえなくもない。特に2曲め“Rainbows”だ。曲名がもたらす色彩的なイメージが音響にはなく、どこか灰色の世界がここにはある。静謐で霧のような音響。「ある」のに「ない」という不思議な質感。そのようなノイズ、サウンドで構成されていたのだ。聴いても聴いても掴み切れない感覚とでもいうべきか。だからこそより強く耳を澄ますし、その音を感じ取ろうと感覚を全開にもする。それは「聴く」という行為に自覚的になる時間ともいえよう。

 前作『Cylene』から4年(ジム・オルークと池田亮司による再構築アルバム『Cylene Suisse Redux』から2年)、ついにリリースされたこのデュオの新作『Cylene II』は、音の不在と存在、持続と非持続、静謐さとダイナミズムという音響の両極を往復しながら、しかしどこか存在しないような夢のような、幽霊のような音響空間が実現されている。極めて独特の音響空間がここにある。

Tujiko Noriko - ele-king

 おもに〈Mego〉~〈Editions Mego〉からのリリースを中心に、00年代から活躍をつづける電子音楽家、ツジコ・ノリコ。その5年ぶりの日本ツアーが決定している。最新作『Crépuscule I & II』をもとにしたライヴになるそうで、京都、東京、福岡の3都市をめぐる。東京公演ではベルリンの映像作家 Joji Koyama がAVを手がけるとのこと。詳しくは下記より。

Tujiko Noriko Japan Tour 2024

1/09 Tue at Soto Kyoto
https://soto-kyoto.jp

1/11 Thu 18:30 at WWW Tokyo w/ Joji Koyama LIVE A/V
https://www-shibuya.jp/schedule/017371.php
TICKET https://t.livepocket.jp/e/20240111www *限定早割販売中

1/13 Sat at Artist Cafe Fuokuoka
https://artistcafe.jp

tour promoter: WWW / PERSONAL CLUβ

薄明かりのサウンドスケープ。エレクトロニカの伝説、フランス拠点のTujiko Norikoが5年ぶりの日本ツアーを開催。東京公演ではベルリンの映像作家Joji KoyamaとのライブA/Vを披露。

2001年のデビュー以来00年代のDIYなサウンドスケープのムーヴメントから生まれたエレクトロニカを始め、アートを軸とした電子音楽シーンで映像含む数多くの作品をリリースし、映画、パフォーマンス、アニメーション、インスタレーションの音楽制作含む数々のコラボレーションを果たして来たTujiko Norikoが、本年明けに老舗Editions Megoからリリースした映像作家Joji Koyamaとの大作『Crépuscule』(薄明かり)を基にしたライブを携え、京都、東京、福岡を巡る5年ぶりの日本ツアーを開催。

https://www.instagram.com/koyama_tujiko/


Tujiko Noriko

フランスを拠点に活動するミュージシャン、シンガーソングライター、映像作家。2000年、Peter RehbergとChristian Fenneszが彼女の最初のデモテープを発見し、アルバム『少女都市』でMegoからデビュー。アヴァンギャルドなエレクトロニカ周辺で高い評価を受け、Sonar、Benicassim、Mutekなどのフェスティバルに招かれ、世界中で演奏活動を行う。これまでにEditions Mego、FatCat、Room 40、PANから20枚のアルバムをリリースし、高い評価を得ている。2002年のアルバム「Hard Ni Sasete」はPrix Ars ElectronicaでHonorary Mentionを受賞。

映画、ダンス・パフォーマンス、アニメーション、アート・インスタレーションなどの音楽を手がけ、著名なミュージシャン、Peter Rehberg,、竹村延和、 Lawrence Englishらとコラボレーションしている。2005年には初の映像作品「Sand and Mini Hawaii」と「Sun」を制作し、パリのカルティエ財団や東京のアップリンクなどで国際的に上映された。2017年、Joji Koyamaと共同脚本・共同監督した長編映画「Kuro」はSlamdance 2017でプレミア上映され、Mubiでも上映された。2020年から21年にかけて、彼女の音楽作品はレイナ・ソフィア美術館で開催された展覧会「Audiosphere」(主要な現代美術館で初めて、映像もオブジェも一切ない展覧会)に出品された。

2020年にはサンダンスとベルリン国際映画祭で上映された長編映画「Surge」の音楽を担当し、2022年にはla Botaniqueでプレミア上映されたミラ・サンダースとセドリック・ノエルの映画「Mission Report」の音楽を担当した。

Joji Koyamaとの最新アルバム『Crepuscule I&II』をEditions Megoからリリースしている。

https://twitter.com/tujiko_noriko

ディスコグラフィー

'Shojo Toshi' 2001 (Mego)
'Make Me Hard' 2002 (Mego)
'I Forgot The Title' 2002 (Mego)
'From Tokyo To Naiagara' 2003 (Tomlab)
'DACM - Stereotypie' with Peter Rehberg 2004 (Asphodel)
'28' with Aoki Takamasa 2005 (Fat Cat)
'J' with Riow Arai 2005 (Disques Corde)
'Blurred In My Mirror' with Lawrence English 2005 (ROOM 40)
'Melancholic Beat' 2005 (Bottrop-boy)
'Solo' 2006 (Editions Mego)
'Shojo Toshi' 2007 (Editions Mego)
'Trust' 2007 (Nature Bliss)
'U' with Lawrence English and John Chantler 2008 (ROOM 40)
‘GYU’ with tyme. 2011/12 (Nature Bliss/ Editions Mego)
‘East Facing Balcony’ with Nobukazu Takemura 2012 (Happenings)
‘My Ghost Comes Back‘ 2014 (Editions Mego/ p*dis)
'27.10.2017' with Takemura Nobukazu 2018 (Happenings)
‘Kuro’ 2018 (pan)
‘Surge Original Sound Track Album’ 2022 (SN variations/Constructive)
‘Crepuscule I&II’ 2023 (Editions Mego)
‘Utopia and Oblivion’ 2023 (Concept compilation album from Constructive)


Joji Koyama

ベルリンを拠点に活動する映像作家、アニメーター、グラフィック・アーティスト。短編映画、アニメーション、ミュージックビデオ(Four Tet、Mogwai、Jlinなど)は国際的に上映され、ロンドン短編映画祭や英国アニメーションアワードで受賞。2015年には初の短編ビジュアルストーリー集「Plassein」を出版。Tujiko Norikoと脚本・監督を務めた長編映画「Kuro」はスラムダンス映画祭でプレミア上映され、MUBIで世界中に配信された。様々なメディアやコンテクストで活動し、最近のコラボレーションには、絶賛されたアルバム「Crépuscule I&II」に基づくTujiko NorikoとのツアーライブA/Vプロジェクトがある。

jojikoyama.com
instagram.com/jojikoyama
twitter.com/jojikoyama



Tujiko Noriko - Crépuscule I & II [Editions Mego / pdis]

まだEditions Megoになる前のMegoの初期、過激な作品群の中に思いがけない作品が登場しました。PITA、General Magic、Farmers Manualなどの歪んだハードディスクの中から、全く異なる種類のリリースが現れたのです。コンピュータで作られたものでしたが、よりソフトな雰囲気、雲のような音、そしてメロディーさえもありました。それは日本人アーティスト、ツジコノリコの記念すべきデビュー作『少女都市』(2001年)であり、彼女のキャリアをより多くの人々に紹介しただけでなく、Editions Megoの門戸をより幅広い実験的音楽形態に開くことになりました。

電子的な抽象性、メロディー、声、そして雰囲気というツジコノリコ特有の合成は、彼女の神秘的な言葉の周りを音が優しく回り、歌として構成された感情的な聴覚実験の連続へと変化していくため、他の追随を許さないものです。彼女はMegoからのデビュー作以来、ソロ作品やコラボレーションを重ね、また女優や監督として映画界にも進出するなど、進化を続けています。

PANから2019年にリリースされたサウンドトラック『Kuro』以来の新作となる本作では、映画というメディアが彼女の音楽に与えた影響を聴くことができ、視覚的な記号が手元にある刺激的なオーディオに呼び起こされます。インストゥルメンタルのインタールードは、タイトルと一緒に映画の風景を思い起こさせ、映画の形式を再確認させます。これは、深い人間的な存在感を持つ合成音楽です。内宇宙の幻想的な領域を彷徨う人間の心が、通常はそのような人間的な傾向を崩すよう促す機械を通して、絶妙に表現されています。その温もりと静寂、そして夢のような空間が、ツジコノリコという作家の個性であり、この『Crépuscule』は、その力を見事に証明しています。

「Crépuscule(薄明かり)」というタイトルこの音楽の夢遊病的な性質を見事に表現しており、夜行性の変化が広い意味での静寂を呼び起こします。「Crépuscule I」は短い曲のセレクションで構成され、「Crépuscule II」は3曲の長めの曲で構成され、これらの曲とムードが呼吸するためのスペースを提供しています。本作は、リスナーが彼女の目を通して世界を見ることを可能にし、機械に人間味を与える彼女の巧妙な手腕により、穏やかな不思議な世界がフレーム内にフォーカスされています。

Track listing:

Disc 1
1 Prayer 2′ 22”
2 The Promenade Vanishes 6′ 18”
3 Opening Night 4′ 30”
4 Fossil Words 8′ 10”
5 Cosmic Ray 3′ 26”
6 Flutter 4′ 18”
7 A Meeting At The Space Station 11′ 38”
8 Bronze Shore 6′ 46”
9 Rear View 3′ 22”

Disc 2
1 Golden Dusk 12′ 50”
2 Roaming Over Land, Sea And Air 23′ 58”
3 Don’t Worry, I’ll Be Here 18′ 45”

INFO https://www.inpartmaint.com/site/36264/

Oneohtrix Point Never with Jim O'Rourke and Eiko Ishibashi - ele-king

 2024年2月に東京および大阪での公演を控えるワンオートリックス・ポイント・ネヴァー。そのスペシャル・ゲストとして、なんとなんと、ジム・オルーク石橋英子の出演が決定! オルークは最新作『Again』にも参加していたわけだけれど、ここ日本でついに彼らがおなじステージに立つ、と。
 またこのアナウンスに合わせ、『Again』収録曲 “Nightmare Paint” のMVが公開されている。監督はアンドリュー・ノーマン・ウィルソン。目から出る光線でCDを焼く? なんとも印象的な映像なので、こちらもチェックしておこう。

L’Rain - ele-king

 ブルックリン育ちのミュージシャン兼キュレーターのロレインことタジャ・チークは、3作のアルバムを通じて、彼女が「approaching songness(歌らしさへの接近)」と呼ぶ領域間で稼働してきた。その音楽は、記憶と連想のパリンプセスト[昔が偲ばれる重ね書きされた羊皮紙の写本]で、人生のさまざまな局面で作曲された歌詞とメロディーの断片が、胸を打つものから滑稽なものまで、幅広いフィールド・レコーディングと交互に織り込まれている。それはつねに変化し、さまざまな角度からその姿を現す。ニュー・アルバム『I Killed Your Dog』の “Our Funeral” の冒頭の数行で、チークはオートチューンで声を歪ませて屈折させ、息継ぎの度に変容させていく。焦らそうとしているわけではなく、一節の中に複数のヴァージョンの彼女自身を投影させるスペースを作り出そうとしているのだ。高い評価を得た2021年のアルバム『Fatigue』のオープニング・トラックは、「変わるために、あなたは何をした?」との問いかけではじまっている。ロレインは確かな進化を遂げながら、その一方でチークは、これまでの作品において、一貫性のある声を保っているのだ。ループするギター、狂った拍子記号、糖蜜のようににじみ出る、心を乱すようなドラムスなど、2017年の自身の名を冠したデビュー盤でみられた音響的な特徴は、『I Killed Your Dog』でも健在だ。同時にロレインは、これまでよりも人とのコラボレーションを前面に打ち出している。今回は、彼女とキャリアの初期から組んできたプロデューサーのアンドリュー・ラピンと、マルチ・インストゥルメンタリストのベン・チャポトー=カッツの両者が、彼女自身と共にプロデューサーとしてクレジットされているのだ。チークが過去の形式を打ち破ることを示すもっとも明白なシグナルは、気味が悪くて注意を引く今作のアルバム・タイトルに表れている。『I Killed Your Dog』の発売が発表された際のピッチフォークのインタヴューでは、これは彼女の「基本的にビッチな」アルバムであり、リスナーの期待を裏切り、意図的に不意打ちを食らわせるものだと語っている。また他のインタヴューでは、最近、厳しい真実を仕舞っておくための器としてユーモアを利用するピエロに嵌っていることに言及している。これは、感傷的なギターとピッチを変えたヴォーカルによる “I Hate My Best Friends(私は自分の親友たちが大嫌い)” という1分の長さの曲にも表れている。(念のため、実際には彼女は犬好きである。)
 メディアは、ロレインの音楽がいかにカテゴライズされにくいかということを頻繁に取り上げている。だが、チークが黒人女性であり、予期せぬ場で存在感を発揮していることから、これがどの程度当たっているのかはわからない。その点では、彼女には他のジャンル・フルイド(流動性の高い)なスローソン・マローン1(『Fatigue』にも貢献した)、イヴ・トゥモア、ガイカやディーン・ブラントなどの黒人アーティストたちとの共通点がある。「You didn’t think this would come out of me(私からこれが出てくるとは思わなかったでしょ)」と、彼女は “5to 8 Hours a Day (WWwaG)” で、パンダ・ベアを思わせるような、幾重にも重ねられたハーモニーで歌っている(「この歌詞の一行は間違いなく、業界へ向けた直接的な声明だ」と彼女はClash Musicでのインタヴューで認めている)。
 『I Hate Your Dog』 では、チークがこれまででもっともあからさまにロックに影響された音楽がフィーチャーされているが、彼女のこのジャンルとの関係性は複雑なものだ。最初に聴いたときに、私がテーム・インパラを思い浮かべた “Pet Rock” について、アルバムのプレス・リリースにはこう書かれている──2000年代初期のザ・ストロークスのサウンドと、若い頃のロレインが聴いたことのなかったLCDサウンドシステム──これには、一本とられた。
 彼女の初期のアルバムと同じくシーケンス(反復進行)は完璧で、各トラックを個別に聴くことで、その技巧を堪能することができる。これは、トラックリストに散りばめられたスキットやミニチュアに顕著で、アルバムのシームレスな流れに押し流されてしまいがちだ。33秒間という長さの “Monsoon of Regret” は、微かな焦らしが入ったような、混沌とした曲であり、“Sometimes” は、アラン・ローマックスがミシシッピ州立刑務所にループ・ペダルをこっそり忍び込ませたかのような曲だ。
 “Knead Be” がアルバム『Fatigue』の言葉のないヴォーカルとローファイなキーボードによる1分間のインタールードで、ヴィンテージなボーズ・オブ・カナダのようにワープし、不規則に揺れる “Need Be” をベースにしている曲だと気付くには、注意深く聴き込む必要がある。この曲でチークは、そのトラックに沈んでいたメロディーの一節を、小さい頃の自分に、物事がうまくいくことを悟らせる肯定的な賛歌へと拡大した。ただ、その言葉(「小さなタジャ、前に進め。あなたは大丈夫だから」)はミックスの奥深くに潜んでいるため、歌詞カードを見ないと、何と歌っているのか判別するのが難しい。
 初期の “Blame Me” のような曲では、チークはひとつのフレーズのまわりを、まるでメロディーの断片が頭の中に引っかかってリピートされているかのようにグルグルと旋回する。『I Killed Your Dog』では、何度かデイヴィッド・ボウイの “Be My Wife” のようなやり方で、一度歌詞を最後まで通したかと思うと、またそれを繰り返して歌う。あらためて聴き返すと、彼女が足を骨折した後に書いたバラード調の “Clumsy(ぎこちない・不器用)” ほどではないが、歌詞は、その歌詞に出てくる問いかけ自体に回答しているかのように聴こえる。“Clumsy” では曲の最後に、冒頭で投げかけた問いへと戻る。「想像もつかないような形で裏切られたとき、(自分が足をついている)地面をどのように信頼しろというの?」
 彼女はまだ、答を探り続けているのかもしれない。
 終曲の “New Years’ UnResolution” は、チークがアルバムを「アンチ・ブレークアップ(別れに反対する)」レコードと表現したことを端的に表している。この曲でも、歌詞がループとなって繰り返されるが、今回はその繰り返しの中で、歌詞が大きく変えられているのだ。彼女はその言葉には、別れた直後と、かなりたってから、後知恵を働かせて書いたものがあると説明している。バレアリックなDJセットで、宇多田ヒカルの “Somewhere Near Marseilles -マルセイユ辺り-” と並べても違和感のない、ダブ風のキラキラと揺れる光のようなグルーヴに乗せて、チークは、陰と陽のような、互いを補いあう2つのヴァースを生み出している。

ひとりでいるのがどんな感じか忘れてしまった
雨を吐いて 雪を吐き出す。
日々は、ただ古くなっていく
何も持たないということがどんなものか知っている?
どんなものかは知らないけれど
あなたは今夜ここに来る?
私から電話するべきか あるいは無視するべき? 私は……する
恋をするということがどんな感じか忘れてしまった
太陽を飲み込んで 雪を吐き出す
日々は、古くはならない。
何かを持っているということがどんなことか知っている?
ふたりともそれを知っている。
ただ真っ直ぐに私の目を見て
あなたから私に電話するべきか あるいは私を無視するべき? あなたは……する

 彼女はいまや、人生を両側から眺めることができたのだ。


L’Rain - I Killed Your Dog

written by James Hadfield

Across three albums, L’Rain – the alias of Brooklyn-raised musician and curator Taja Cheek – has operated in an interzone that she calls “approaching songness.” Her music is a palimpsest of memories and associations, interleaving fragments of lyrics and melodies composed at different points in her life, with field recordings that range from poignant to hilarious. It’s constantly shifting, revealing itself from different angles. During the opening lines of “Our Funeral,” from new album “I Killed Your Dog,” Cheek contorts and refracts her voice with AutoTune, morphing with each breath she takes. It isn’t that she’s playing hard to get, more that she’s making space for multiple versions of herself within a single stanza.

“What have you done to change?” asked the opening track of her widely acclaimed 2021 album “Fatigue.” L’Rain has certainly evolved, but Cheek has maintained a consistent voice throughout her work to date. Many of the sonic signatures from her self-titled 2017 debut – looping guitar figures, off-kilter time signatures, phased drums that ooze like treacle – are still very much present on “I Killed Your Dog.” At the same time, L’Rain has become a more collaborative undertaking: She’s quick to credit the contributions of producer Andrew Lappin – who’s been with her since the start – and multi-instrumentalist Ben Chapoteau-Katz, both of whom share producer credits with her this time around.

The most obvious signal that Cheek is breaking with past form on her latest release is in the album’s lurid, attention-grabbing title. As she told Pitchfork in an interview when “I Killed Your Dog” was first announced, this is her “basic bitch” album, pushing back against expectations and deliberately wrong-footing her listeners. She’s spoken in interviews about a recent fascination with clowns, who use humour as a vessel for hard truths. In this case, that includes a minute-long song of gooey guitar and pitch-shifted vocals entitled “I Hate My Best Friends.” (For the record, she loves dogs.)

Media coverage frequently notes how resistant L’Rain’s music is to categorising, though it’s hard to say how much this is because Cheek is a Black woman operating in spaces where her presence wasn’t expected. In that respect, she has something in common with other genre-fluid Black artists such as Slauson Malone 1 (who contributed to “Fatigue”), Yves Tumor, GAIKA and Dean Blunt. “You didn’t think this would come out of me,” she sings on “5 to 8 Hours a Day (WWwaG),” in stacked harmonies reminiscent of Panda Bear. (“That line is definitely a direct address to the industry,” she confirmed, in an interview with Clash Music.)

“I Hate Your Dog” features some of Cheek’s most overtly rock-influenced music to date, although her relationship with the genre is complicated. According to the press notes for the album, “Pet Rock” – which made me think of Tame Impala the first time I heard it – references “that early 00’s sound of The Strokes and LCD Soundsystem that L’Rain never listened to in her youth.” Touché.

Like her earlier albums, the sequencing is immaculate, and it’s worth listening to each track in isolation to appreciate the craft. That’s especially true of the skits and miniatures scattered throughout the track list, which can get swept away in the album’s seamless flow. The 33-second “Monsoon of Regret” is a tantalising wisp of inchoate song, reminiscent of Satomimagae; “Sometimes” is like if Alan Lomax had snuck a loop pedal into Mississippi State Penitentiary.

It takes close listening to realise that “Knead Be” is based on “Need Be” from “Fatigue,” a one-minute interlude of wordless vocals and lo-fi keyboards that warped and fluttered like vintage Boards of Canada. Here, Cheek takes the wisp of melody submerged within that track and expands it into a hymn of affirmation, in which she lets her younger self know that things are going to work out – though her words of encouragement (“Go ’head lil Taja you’re okay”) lurk so deep in the mix, you’d need to look at the lyric sheet to know exactly what she’s singing.

On earlier songs such as “Blame Me,” Cheek would circle around a single phrase, like having a fragment of a melody stuck in your head on repeat. Several times during “I Killed Your Dog,” she runs through all of a song’s lyrics once and then repeats them, in the manner of David Bowie’s “Be My Wife.” Heard again, the words sound like a comment on themselves – no more so than on the ballad-like “Clumsy” (written after she broke her foot), when she returns at the end of the song to the question posed at its start: “How do you trust the ground when it betrays you in ways you didn’t think imaginable?” It’s like she’s still grasping for an answer.

Closing track “New Year’s UnResolution” – which best encapsulates Cheek’s description of the album as an “anti-break-up” record – also loops back on itself, except this time the lyrics are significantly altered in the repetition. She’s explained that the words were written at different points in time, both in the immediate aftermath of a break-up and much later, with the earned wisdom of hindsight. Over a shimmering, dub-inflected groove that wouldn’t sound out of place alongside Hikaru Utada’s “Somewhere Near Marseilles” in a Balearic DJ set, Cheek delivers two verses that complement each other like yin and yang:

I’ve forgotten what it’s like to be alone
Vomit rain spit out snow.
Days, they just get old.
Do you know what it’s like to have nothing?
I don’t know what it’s like.
Will you be here tonight?
Should I call you or should I ignore you? I will...
I’ve forgotten what it’s like to be in love
Swallow sun spit out snow
Days, they don’t get old.
Do you know what it’s like to have something?
We both know what it’s like.
Just look me in the eye.
Should you call me or should you ignore me? You will...

She’s looked at life from both sides now.

ele-king cine series 2023年間ベスト&2024注目映画 - ele-king

様々な話題作・注目作が公開された2023年を振り返り、さらには公開が待たれる2024年の注目作の数々を情報通たちが厳選して紹介。

見逃してしまった2023年の重要作に改めて出会い、見逃せない2024年の注目作に備えよう!

目次

対談 ハリウッドの現在、そして映画の未来 町山智浩×宇野維正
Pick Up Review
 ただ走る映画――『レッド・ロケット』 上條葉月
 #MeToo ムーヴメントに連なる重要作――『私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?』 児玉美月
 スクリーンの向こう側にも楽園などなかった――『Pearl パール』讃 高橋ヨシキ
 ハラスメント加害者の視点――『TAR ター』 戸田真琴
 配信で絶大な人気を保つアダム・サンドラー――『バト・ミツバにはゼッタイ呼ばないから』 長谷川町蔵
 令和のグラインドハウス映画―― 『プー あくまのくまさん』 ヒロシニコフ
 昼メロ世界が描き出す映画とドラマの複雑な隔たり――『別れる決心』 三田格

アンケート 2023年間ベスト&2024年の注目作
 伊東美和/宇野維正/大久保潤/大槻ケンヂ/片刃/上條葉月/カミヤマノリヒロ/川瀬陽太/北村紗衣/木津毅/児玉美月/堺三保/佐々木敦/佐々木勝己/侍功夫/品川亮/柴崎祐二/城定秀夫/高橋ターヤン/高橋ヨシキ/田野辺尚人/月永理絵/てらさわホーク/戸田真琴/Knights of Odessa/中沢俊介/夏目深雪/ナマニク(氏家譲寿)/西森路代/長谷川町蔵/はるひさ/樋口泰人/ヒロシニコフ/藤田直哉/古澤健/堀潤之/町山智浩/真魚八重子/三田格/三留まゆみ/森直人/森本在臣/柳下毅一郎/山崎圭司/吉川浩満/涌井次郎/渡邉大輔

鼎談 「観たい映画を観るだけだから」――2023年総括&2024年の展望 柳下毅一郎×高橋ヨシキ×てらさわホーク

2024年の注目作
 2024年注目アクション映画 高橋ターヤン
 2024年の注目ホラー映画 伊東美和
 2024年注目のSF映画 堺三保
 2024年注目のアメコミ映画 てらさわホーク
 2024年公開予定 ヨーロッパ映画注目作 渡邉大輔
 アジア映画2024年注目作 夏目深雪

対談 反=恋愛映画の2023年 佐々木敦×児玉美月

*レコード店およびアマゾンでは12月15日(金)に、書店では12月25日(月)に発売となります。

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
12月15日発売
amazon
TOWER RECORDS
12月25日発売
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
ヨドバシ・ドット・コム
HMV
honto
Yahoo!ショッピング
7net(セブンネットショッピング)
紀伊國屋書店
e-hon
Honya Club

【P-VINE OFFICIAL SHOP】
SPECIAL DELIVERY

全国実店舗の在庫状況
 ※書店での発売は12月25日です。
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
紀伊國屋書店
三省堂書店
旭屋書店
有隣堂
くまざわ書店
TSUTAYA
大垣書店
未来屋書店/アシーネ

Alvvays - ele-king

「聞いたよ、帰ってきたんだって」フィードバックのノイズの上でモリー・ランキンがそうやって歌いはじめるとそこにあった時間の隔たりが消えたような感じがした。まるで子ども時代の友だちと久しぶりに会ったときみたいに思い出といまとがあっという間に繋がる。

 カナダのインディ・ポップ・バンド、オールウェイズの久しぶりの来日公演、エンヤの “The River Sings” を出囃子にちょっとかしこまって、だけどもリラックスしてステージに現れたオールウェイズはそんな風にライヴをはじめる。昨年、5年ぶりにリリースされた素晴らしい3rdアルバム『Blue Rev』のオープニング・トラック “Pharmacist”、この曲以上に今回のライヴをはじめるのにふさわしい曲はきっとないだろう。2018年以来のジャパン・ツアーだ。東京からはじまって名古屋、大阪、そしてまた東京、今日の追加公演の会場となった神田スクエアホールの空気もあっという間に暖かなものに変わっていく。その名の通りスクエアホールは四角く天井が高くて、それが体育館や地元の小さなホールを思わせなんだか余計にノスタルジックな気分になる。
 2分と少しで曲が終わってMCなんてなくバンドはちょっとぶっきらぼうに次の曲に入る。続くのは同じく3rdから “After The Earthquake”、最初のギターのフレーズできらめくように空気が揺れる。そうして “In Undertow”、“Many Mirrors” と2分台、3分台名曲たちが次々に繰り出されていく。ハンドマイクに持ち替えしゃがみこみエフェクトをかけながらモリーが歌う “Very Online Guy”、1stアルバムに戻って “Adult Diversion”(この曲を聞くといつも口元に手をやったあのジャケットが浮かんでくる)、全ての曲に心の奥底をなでるような力強くも美しいメロディがあって、ギターとシンセサイザーのフレーズと相まり目の前の光景がノスタルジックなものに変わって行く。そう、待ち望んでいたものがここにはあるのだ。

 それにしてもオールウェイズはイメージする以上に不思議なバンドだ。 およそインディ・ポップと呼ばれるバンドとは思えないくらいに、シェリダン・ライリーのドラムが力強く主張し、アレック・オハンリーのギターがかき鳴らされ、強度はあるのに1曲1曲が短くて、4分に到達することはほとんどない。曲が終わった後も軽いやりとりだけで余韻を残さずすぐに次の曲にいってそれもなんだかちょっとパンク・バンドみたいだなと思った。いままでまったく結びついていなかったけれど開演前にSEでバズコックスの “You Say You Don't Love Me” が流れていて、あぁ『Blue Rev』のオールウェイズにはこの要素が確かにあるなって思ったりもした。素晴らしいメロディを持っているというのは両者に共通していることだけど、オールウェイズは、さらにそこにシンセとコーラスがあってそれがインディ・ポップの部分を大きく担っているのかもしれない。確かに存在するパンク・スピリットを胸にシューゲイザーに寄せてキラキラと水面の光が反射するインディ・ポップを奏でたみたいなバンド、この日のオールウェイズはそんな印象で、まったく一筋縄ではいっていなかったけど、でも全体として出てくる音はとても優しく幸福感がまっすぐに入ってきた。それがなんとも不思議で淡々と幸せな時間がずっと流れていっているようなそんな感じがした。

 だが、やはり全ては曲の良さに集約されるのかもしれない。中盤の “Tom Verlaine”、“Belinda Says” の素晴らしい流れ、アーミング奏法でギターが鳴らされ、浮遊感が体を駆け巡る。モリー・ランキンのヴォーカルは地に足を着けその中心に存在し、ケリー、シェリダン、アビー、3人のコーラスが陶酔感をプラスする。楽曲の真ん中に歌があるからこそ、こんなにも輝きが拡散されていくのだろう。それは決して神秘的なものではなくて、とりとめなのない日常に接続しそれ自身を輝かせるようなもので、そこにきっと淡さと幸福感が宿っている。

 アンコール、リクエストに応えるみたいな形で “Next of Kin” が演奏される。そうして間を置き、ツアーの感謝の言葉が述べられた後に演奏された “Lottery Noises” は曲自体が美しい余韻のように思えて、心が満たされていくのを感じた。そうやってまた日常に帰っていく。明かりがついてパッツィー・クラインの “Always” に送り出されて会場を後にする。外はもちろん夜空だったけどそれもなんだか違って見えた。


Alvvays Japan Tour 2023 at Zepp Shinjuku Setlist 11/28/23

Alvvays Japan Tour 2023 at Kanda Square Hall Setlist 12/01/23

Alvvays Japan Tour 2023 at Zepp Shinjuku Setlist 11/28/23

Alvvays Japan Tour 2023 at Kanda Square Hall Setlist 12/01/23

Element - ele-king

 日本のダブ・レーベル〈Riddim Chango〉が、サブレーベルとして新たに〈Parallel Line(パラレル・ライン)〉を始動させる。より実験的な方向に寄ったダブをリリースしていくそうで、まずは第一弾、エレメントの12インチが発売される。すでにイギリスのNoodsラジオでプレイされたり、ドン・レッツから高い評価を得たりしているとのことだ。チェックしておきましょう。

Cat No: LINE001
Element “Nine Mall EP”
発売日: 2023 年12月13日
Format: 12 インチレコード & デジタルリリース
Tracks:
A-1 Element feat. I Jahbar “Chicken Gravy Shorts”
A-2 Element “Chicken Gravy Dub”
B-1 Element “Nine Mall”
B-2 Element “Martian Gravity”

過去13 作品に渡り、オルタナティブなダブ、ダンスホールをリリースし、世界中のDJ、サウンドシステムからサポートを受けてきたRiddim Chango Records がよりエクスペリメンタルなダブにフォーカスしたサブ・レーベルとしてParallel Line をスタート!

第1 作のNine Mall EP はレーベルを手がけるElement によるテクノ/エクスペリメンタルなダンスホール/ダブの4 曲を収録。2022 年にブリストルの前衛レーベルBokeh Versions と共同でリリースしたAndromeda EP に続きDuppy Gun MCs のI Jahbar を客演に迎え、アブストラクト/SF ダンスホールチューンのChicken Gravy Shorts とモジュレーション・ディレイを多用した強烈なダブワイズChicken Gravy Dub をA 面に収録。

B 面ではPulsar のインダストリアルなドラムサウンドを使用したテクノ・ダンスホールNine Mall とレゲトン/デムボウのリズムを取り入れたオブスキュアでメランコリーなダンスホールMarian Gravity を収録。

マスタリングには国内レゲエアーティストの多数を手がけるE-mura、レーベルのロゴは1-Drink(石黒景太)、アートワークはAki Yamamoto が担当。

忌野清志郎 - ele-king

 今年行ったトークショーで、ぼくよりも一回りも年上の人が、日本人が無理にブルースだのロックだのやることはない、日本には日本の素晴らしい音楽(音頭や民謡など)があるんだから、みたいなことを言った。話を面白くするための極論ではあったが、日本の音楽を語る上でこの勘違いはいまだにあるのかもしれない。というか、土着性への反動的な(過剰な)美化というのは、第二次大戦後にアメリカ文化の影響を受けた国なら多かれ少なかれあるのだろう。

 イギリスはアメリカと違って、ロックンロールとの有機的な文化的つながりがなかった。ジューク・ジョイントもダンスホールもなかった、ゆえに、ミュージックホールがその代わりとなった、という話がイギリスの文化研究にはあるとサイモン・レイノルズが書いていた。なるほど。たしかにイギリスにはアメリカと違ってソウル・ミュージックの背景のひとつである黒人教会もない。だが、しかし逆に言えば、アメリカのロックンロールからは “レディ・ジェーン” も “エリナー・リグビー” も生まれてはこない。ついでに言えば、“マザー・スカイ” も “アウトバーン” も生まれてはこない。アメリカのように、ロックとの有機的な文化的つながりがないからこそ、その接続部に彼の地の文化(トラッドやミュージックホール、あるいは戦後ドイツの反伝統主義など)が入り込んでいるわけだ。
 これと同じことが日本にも言えるのではないか。日本には、アメリカのような形でロックンロールが生まれる文化土壌などない。が、だからこそ、“ぼくの好きな先生” や “トランジスタ・ラジオ”が生まれたと。たとえこの論が、“トランジスタ・ラジオ” がではどれほど国際的に有名かという話に繋がったとしても、日本独自のロックのほうが、英米のパスティーシュを一生懸命目指してしまった和製ロックよりも結果国内では人気があり、いまも広く聴かれているのはひとつの事実である。(逆にこういうこともある。たとえばデイヴィッド・ボウイのヴォーカリゼーションにもっとも影響を与えたアンソニー・ニューリーは日本ではほとんど知られていない、とか。ただし、日本的になれば良いというものでもない。歌謡ロックのように毒にも薬にもならないスタイルもある。また、この議論の先には、K-POPとはその発想の逆転で、韓国的なものを徹底的に抜き取った上での西欧のR&B/ラップ/ユーロ・サウンドなどの組み替え……とか、どんどん話が逸れるので、以下、RCに戻りましょう)

 RCサクセションとは、分裂的なバンドだった。70年代末から80年代初頭のほんの数年間のことではあったが、彼らがローリング・ストーンズもどきを志向したとき、バンドのメンバーの年齢はもう30に差し掛かっていた。当時の感覚で言えばロックンロールをやるにはもうオーヴァーである。80年代初頭の人気絶頂期におけるファンの多くは10代だったが、演奏者たちは年が離れていたばかりか、村八分のようなバンドとは違って、若い頃から様式的なロックンロールを表現してきていたわけでもなかった。
 ところが、RC はそれを逆手に取った。主観的(本気)であり、大人であるがゆえに客観的(ユーモラス)にもなれたのだろう。メンバーは「ロックンロール・ショー」のためのキャラクターを演じ、じっさいライヴは演劇めいた要素も入ったエンターテイメントだった。しかもRCは、“現在”とノスタルジアをなかば強引に混同させもした。“トランジスタ・ラジオ”は1980年の曲だが、この時代、ラジオで60年代の西海岸ロックやリヴァプール・サウンドに耽っている高校生などまずいやしない。なのにこのバンドときたら、あたかも現在のものとして歌い、演奏した。高校生のぼくにとってそれはファンタジーだったわけだが、そのいっぽうでRCには現実との回路が間違いなくあった。
 いま思えばおかしなもので、時代のトレンドは「真実」の「ありのままの」自分たちを見せるパンク/ニューウェイヴだった。パンクのなかにはロックを演じるグラム的な要素がじつは多分にあったのだが、とにかくそんな時代のモードに混じって、ストーンズもどきのRCが超強力な磁石となって、ぼくのようなパンク信者の10代を惹きつけていったのも、このバンドは自ら作ったフィクションに内部反発するかのようなリアリズム、シニカルな社会批評をも同時に表現していたからだった( “ブン・ブン・ブン” がパンク・ソングでないわけがない)。これが「分裂的」と表現した根拠だ。もしRCが、ただのパロディだったらこんなにも熱狂しなかっただろう。リアリズム表現一辺倒だったら、高校生たちが笑ったり、踊ったりはしなかっただろう。
 話はそれだけじゃない。もうひとつの重要項目は、RCは、その時代、歌謡曲やニューミュージックなどで歌われていた作り物のラヴソングを嫌悪したパンク/ニューウェイヴ世代を前に、あろうことか「愛しあってるかい」などと(もっとも言われたくない言葉で)語りかけ、容赦なくラヴソングを演奏し、そして感情を鷲づかみにしたことだ。信じがたい話だが、彼らの音楽は不毛な人生を生きる無気力な10代を愛なしでは生きられない人間に変えてしまったのだ。そのマジックの中心にいたのが、忌野清志郎だった。

 分裂的なRCサクセションは『BEAT POPS』で頂点を迎えると、それ以降は、それまでの惰性と試行錯誤との絶え間なき衝突と融合の連続だった。それであれだけの枚数の、最低でも聴くべき曲をいくつかは収録したアルバムを作り続けたことは、本当にすごいことだと思うし、たいへんだったとも思う。1990年、『Baby a Go Go』が出たとき、CDを六本木WAVEで見つけると、もちろん迷うことなく買った。ジャケットに写っている、残った3人のメンバーの表情は明るくはない。もう、なんとなくムードは伝わっていた。ぼくは部屋のなかで、RCは終わるんだろうなと思いながら、“あふれる熱い涙” や“ 忠実な犬” を何回も繰り返し聴いたものだ。

 『Memphis』を買ったのは、レコード棚がクラブ・ミュージックの12インチ・シングルでいっぱいになりはじめた1992年のことだった。これはもう、リリースの詳細を知ってから聴くのが楽しみで仕方がなかった。アメリカのロック史においても黒人音楽史においても重要な、南部ソウルを創造した歴史的な一部=メンフィスのブッカー・T&ザ・MG'sのスティーヴ・クロッパー、ブッカー・T・ジョーンズ、ドナルド“ダック”ダンほか、メンフィス・ホーンも参加のメンフィス録音、夢のような布陣を配したアルバムだ。分裂的なことなどない、原理主義者も納得するであろう“本格的な”サウンドになっているはず、そう期待を寄せながらCDの再生ボタンを押し、そして数分後にぼくは笑った。歯切れの良いリズムの、思い切りスタックス・ソウルのパスティーシュである1曲目の “Boys” には、しかし曲の最後に、「坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いたんだったな、ボーイズ」というむちゃくちゃ面白い言葉遊びが待っている。たったそれだけで、これはメンフィスでは生まれようがない、日本のソウル・ミュージックになってしまっているのだ。

 清志郎は、『Memphis』の前年には、細野晴臣、坂本冬美との『日本の人』という唯一無二の傑出したアルバムをリリースしている。この共作は、それこそ演歌や民謡などの「日本」に「ワールド・ミュージック」から得たアイデアを組み合わせたもので、じつを言えばもっとも過小評価されている1枚でもある。ただ『日本の人』はロッキストが首を傾げるような、ロックの文法から外れたいろんな表情をもった作品で、“パープル・ヘイズ音頭” や“渡り鳥”のようなコミカルな一面もありつつも、清志郎が手がけた名カヴァー曲のひとつ“500マイル” や “アンド・アイ・ラヴ・ハー”、“恋人はいない” や “セラピー” のような、人生の儚さや切なさを歌った曲も印象的だったりする。対して『Memphis』はシンプルなアルバムで、清志郎のなかのロックのエネルギーが、しばらくの休息を経て回復したかのように脈打っている。“高齢化社会”のようにそれが多少空回りしている曲もあるけれど最終的には気迫で押し切っているし、“カモナ・ベイビー” は “Boys” と同様に、言葉遊び(カモナ・ベイビー→カモナベ=鴨鍋)を相乗効果とする痛快なブルース・ロックだ。  

 さて、あらためて確認しておきたい。ソウル・ミュージックとは、そもそもアメリカの黒人がその真正性と深い感情をコミュニティに伝達するために、主にゴスペルとリズム・アンド・ブルースを融和させ、即興的で、じつに抑揚のあるヴォーカルをもって発展させたスタイルである。それはある特定の時代と場所の産物で、公民権運動にリンクした文化現象だったが、音楽的には何よりも感情を高めることに特徴を持っている。『Memphis』を特別なアルバムにしているのは、ここにはウルトラ級の名曲、“雪どけ” と “彼女の笑顔” があることだ。この2曲、まず前者は、南部ソウルの深く美しい感情表現が奇跡的といっていいほど鮮やかに日本の風景のなかに落とし込まれている。“スローバラード” の系譜にある曲で、ここではソウル・ミュージックにおけるもっとも重要な主題である「愛」が、最初は控えめに歌われつつも最終的には銀河系よりも大きく膨張する。後者の “彼女の笑顔” にいたっては、清志郎にしか書けない、ブルース調の曲のなかに一瞬の破壊力が巧妙に込められている。なにせこの曲は、「何でもかんでも 金で買えると思ってる馬鹿な奴らに/見せてあげたい 彼女の笑顔」という、たったこれだけの言葉で、反権力、反資本主義、そして愛という、すべてを語っているのだ。
 歌が、大衆の内面と共振しうる物語の形式として機能できるのなら、これら2曲には、我らが物語がある。70年代末に歌っていたギターケースひとつの小さな部屋からはじまる物語(それは経済復興を遂げた敗戦国が表面的には欧米化するなか、取り残された、貧しくも奔放な人生のいち場面でありメタファー)、清志郎のなかでその物語がぶれたことなどいちどもなかった。 “彼女の笑顔” には、清志郎がRCサクセションで作り上げたこうした物語のなかに、メンフィスで暗殺されたマーティン・ルーサー・キング的な理想も歌われている。その的確な歌詞と力強さは、1992年という、いまだロックも更新され続け、いまだ新しかったテクノやヒップホップは毎月のように話題作を出していた年の音楽作品においては完全なアナクロニズムでレトロなアルバムだった『Memphis』が、いや、レトロであったからこそかもしれないのだが、それから30年以上経ったいまも、いや、これはムカつく話だが、愛よりもカネが猛威を振るっているこんないまだからこそ輝きを失っていないことが証明している。

 この12月、『Memphis』がジャケットを新たにアナログ盤としてリイシューされる。さらに同時に、アルバム・リリース後の「忌野清志郎 with Booker T. & The M.G.'s Tour」における武道館でのライヴを収録した『HAVE MERCY!』もジャケットを新たに追加曲ありで再発される。このときのライヴも、ぼくは武道館の二階席で見た。その光景をいまでもなんとなく覚えているけれど、なにせ30年以上前のことなので、だいぶ忘れてもきている。が、すでにクラブ・ミュージックの定番となっていた “Green Onions ” にはじまるこのライヴ盤を久しぶりに聴いていると、いろいろ思い出してくる。ああ、そうだった、ライヴでは、それこそ日本の童謡 “からすの赤ちゃん” をメンフィス・サウンドに接続させてもいるし、最高の悪ふざけ “つ・き・あ・い・た・い” をザ・MG'sといっしょにやってもいるんだった。それから、なんということだろう、あの “トランジスタ・ラジオ” も。日本でしか生まれようがなかったロックの名曲が、ロックンロール/ソウルの母国、ことに南部ソウルのレジェンドたちに演奏されたというのは、それはそれでまたロマンティックな話ではないだろうか。

ele-king vol.32 - ele-king

2010年代──音楽は何を感じ、どのように生まれ変わり、時代を予見したのか
いま聴くべき名盤たちを紹介しつつ、その爆発的な10年を俯瞰する

『ele-king vol.32』刊行のお知らせ

目次

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
インタヴュー再び「2010年代を振り返る」(小林拓音+野田努/坂本麻里子)

特集:2010年代という終わりとはじまり

2010年代の記憶──幽霊、そして新しきものたちの誕生(野田努)
 ・入眠状態、そしてアナログ盤やカセットのフェチ化
 ・OPNからヴェイパーウェイヴへ
 ・「未来は幽霊のものでしかありえない」とはジャック・デリダの言葉だが
 ・フットワークの衝撃
 ・ナルシズムの復権とアルカ革命
 ・シティポップは世界で大流行していない
 ・そしてみんなインターネットが嫌いになった
 ・アナログ盤がなぜ重要か
 ・音楽市場の変化
 ・巨匠たち、もしくは大衆運動と音楽
オバマ政権以降の、2010年代のブラック・カルチャー(緊那羅:Desi La/野田努訳)
カニエ・ウエストの預言──恩寵からの急降下(ジリアン・マーシャル/五井健太郎訳)
絶対に聴いておきたい2010年代のジャズ(小川充)
活気づくアフリカからのダンス・ミュージック(三田格)
坂本慎太郎──脱力したプロテスト・ミュージック(野田努)
ジェネレーションXの勝利と死──アイドルとともに霧散した日本のオルタナティヴ(イアン・F・マーティン/江口理恵訳)
あの頃、武蔵野が東京の中心だった──cero、森は生きている、音楽を友とした私たち(柴崎祐二)
ネットからストリートへ──ボカロ、〈Maltine〉、tofubeats、そしてMars89(小林拓音)
ポップスターという現代の神々──ファンダムにおける聖像のあり方とメディア(ジリアン・マーシャル/五井健太郎訳)
マンブルコア運動(三田格)
BLMはUKをどう変えたのか(坂本麻里子×野田努)

ライターが選ぶ いまこそ聴きたい2010年代の名盤/偏愛盤
(天野龍太郎、河村祐介、木津毅、小林拓音、野田努、橋本徹、三田格、渡辺志保)
2010年代、メディアはどんな音楽を評価してきたのか

2023年ベスト・アルバム30選
2023年ベスト・リイシュー23選
ジャンル別2023年ベスト10
テクノ(猪股恭哉)/インディ・ロック(天野龍太郎)/ジャズ(小川充)/ハウス(猪股恭哉)/USヒップホップ(高橋芳朗)/日本ラップ(つやちゃん)/アンビエント(三田格)

2023年わたしのお気に入りベスト10
──ライター/ミュージシャン/DJなど計17組による個人チャート
(天野龍太郎、荏開津広、小川充、小山田米呂、Casanova. S、河村祐介、木津毅、柴崎祐二、つやちゃん、デンシノオト、ジェイムズ・ハッドフィールド、二木信、Mars89、イアン・F・マーティン、松島広人、三田格、yukinoise)

VINYL GOES AROUND PRESENTS そこにレコードがあるから
第3回 新しいシーンは若い世代が作るもの(水谷聡男×山崎真央)

菊判218×152/160ページ
*レコード店およびアマゾンでは12月15日(金)に、書店では12月25日(月)に発売となります。

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
12月15日発売
amazon
TOWER RECORDS
disk union
12月25日発売
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
ヨドバシ・ドット・コム
HMV
honto
Yahoo!ショッピング
7net(セブンネットショッピング)
紀伊國屋書店
e-hon
Honya Club

【P-VINE OFFICIAL SHOP】
SPECIAL DELIVERY

全国実店舗の在庫状況
 ※書店での発売は12月25日です。
丸善/ジュンク堂書店/文教堂/戸田書店/啓林堂書店/ブックスモア
紀伊國屋書店
三省堂書店
旭屋書店
有隣堂
くまざわ書店
大垣書店
未来屋書店/アシーネ

TOKYO DUB ATTACK 2023 - ele-king

 戦争の年の年越しに、これほどジャストなパーティはない。サウンドシステムにこだわりつづけるBim One Production が、久しぶりに低音を鳴らします。ATTACKしていいのは、ここだけだ!

TOKYO DUB ATTACK 2023
TWO SOUNDS - ONE ARENA

2023/12/30 (土)
Open 24:00-5:00

-Line ups-
SCORCHER Hi Fi with Sound System
(STICKO & COJIE)

Bim One Production
feat. MC JA-GE
and Horns session with Hayami & Add (ORESKABAND)
East Audio Sound System

-VENUE-
duo MUSIC EXCHANGE

-CHARGE-
前売 4,000yen / 当日 4,500yen ※ 全てD代別

チケット一般発売 >>
Tokyo Dub Attack Ticket (ZAIKO) ーーー https://tokyodubattack.zaiko.io/e/TDA2023
e + ーーー https://eplus.jp/tokyo-dub-attack2023

-NOTES-
※ 再入場可能
※ 未成年者の入場不可・要顔写真付きID
※ 営利目的の転売禁止
※ 撮影機器、録音・録画機器のお持込みは御遠慮下さい。
INFO : info@dubattack.tokyo


THIS IS DUB!

 すべてのミュージック・ラヴァーズに注ぐ年末恒例の国内サウンドシステム・ダンス大一番、「TOKYO DUB ATTACK」がついに帰還!同じフロアのなかに2つのサウンドシステムを入れて交互に鳴らしあうゴマカシ効かないガチンコ・セッションが、東京渋谷のduo MUSIC EXCHANGEにて開催を迎える。
 レゲエ(Reggae)において、もっともタフでハードコアな要素にサウンドシステムがある。DIYに設計された独自のスピーカーの山、規格外の低音、1ターンテーブルに置かれる破壊力抜群のダブプレート、シャワーのように降り注ぐダブワイズ……あくまでもオリジナルな音を追求し、その場でしか生まれ得ない究極のサウンド体験。それがサウンドシステムにおける“Dub”である。
 今年10周年を迎えたダンスSteppars’ delightでおなじみScorcher Hi Fi (SHAKA D a.k.a. STICKO & COJIE of Mighty Crown)と、同じく東京ダブアタック・レジデントであるBim One Production + eastaudio SOUNDSYSTEMに加え、MCにJA-GE、そしてホーンセクションにORESKABANDからHAYAMIとADDが駆けつけ一同に介する。
 ピュアでタフ、そしてハートフルなスピーカーの鳴らし合い、日本におけるサウンドシステム・カルチャーの祭典。一度味わうと忘れられない超低音波動による強烈な“体感“と”体験“を約束しよう。

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