Home > News > ele-king vol.32 - ——紙エレキングの32号、刊行のお知らせです
弊社サイト、エレキングをお楽しみのみなさん、こんにちは。早いものでもう12月、紙エレキング32号、刊行のお知らせです。今回はレコード店とアマゾンのみ、明日(15日)に先行発売されます。なお、書店は25日発売です。詳しくは公式ページをご参照ください。そして、これはもう、単刀直入に申し上げますが、ドネーションだと思って購入していただければ幸いです。たとえば、最近で言えばガゼル・ツインやルーシー・レイルトン、ワジードなどのインタヴューを楽しんでいるリスナーは日本では少数かもしれません。しかし、日本ではとくに後ろ盾のないこうした海外アーティストや作品の紹介、ほかでは読めないコラム(たとえば小川充のジャズ・コラムから三田格の映画評、NY在住のジル・マーシャルのポップ・エッセイなど)を継続するには、やはりどうしてもみなさんのご理解とサポートが必要です。ひとりでも多くの読者が購買者になっていただければ、エレキングもより記事を充実させることができます。以上、編集部からのお願いでした。
さて、それでは紙エレキング32号を簡単に紹介します。特集は「2010年代という終わりとはじまり」、それと「2023年年間ベスト・アルバム」です。まずは前者について、これはいつかやりたいと思っていた企画で、ちょうどそのディケイドを代表するひとり、OPNが新作を出したことがあって今回やることにしました。きっちり10年代というよりは、リーマンショック(2008年)からコロナ前(2019年)まで、このおよそ10年で、まずは音楽を取り巻く状況がドラスティックに変化したからです。これは、かつてレコードやCDで音楽を聴いていたことがある世代にはわかってもらえる話だと思います。また、これは90年代にリアルタイムで音楽を聴いてきた世代にしかわからない話になってしまいますが、ゼロ年代になって更新の速度がいっきに落ちたと言われている音楽シーンが、それではテン年代になってどうなったのかという問題もあります。と同時に、web2.0以降の環境が、あるいは世界規模の大衆運動が音楽にどのように影響を与えたのかなど、その10年はあらためて整理したいトピックでいっぱいです。何が名作と言われているのかは、もう、それこそインターネットを見ればすぐにわかることなので反復する必要はないでしょう。おもに、そうした最大公約数からこぼれ落ちている大切な事柄に焦点を当てつつ、構成してあります。複数のライター諸氏が選んでくれた「10年代の名盤/偏愛盤」はいろんな人が見ても楽しいと思います。
「2023年年間ベスト・アルバム」に関しては、ひとつだけエクスキューズをここに書いておきます。ぼく(野田)の印象になってしまいますが、2023年は、とくに大きな波はなく、いくつものさざ波があった、そんな1年だったと思います。いつもこの順位を決める際に指標としているのは、良い悪い/好き嫌い/上手い下手といった相対的な価値観ではなく、その斬新さが社会にとってどんな意味があるのかという(これも相対的と言えるかもしれませんが)、その一点です。2023年の多くの音楽にも、もちろんその強度はあるのですが、なにかが突出していたというよりは、みんな均等に良かったという印象です。なので、今回の年間ベストの1位から3位の3枚に関しては、エレキングというメディアの個性がいつもよりよく出ていると思います。
ある意味こうした事態は、スウィフティーズやリトル・モンスターズが読者ではないであろうエレキングにとっては、歓迎すべきことかもしれません。とはいえ、いまのこのさざ波のような奇妙な感じは、2024年も続くのかどうか、それとも大きな波の前触れなのか、これからも期待と不安を抱えながら、見守りたいと思います。そのためにも、(しつこくてすいません)紙エレキング32号をどうぞよろしくお願いいたします。
エレキング編集長 野田努