「Nothing」と一致するもの

OUTLOOK FESTIVAL 2015 JAPAN LAUNCH PARTY - ele-king

 夏に入る直前のなんとも言えないこの時期に、恐ろしいまでに最高な低音を浴びせてくれるOutlook Festival。あのサウンド・システムは健在のまま、今年は会場を新木場から渋谷の〈VISION〉に移しての今週末開催されます。過去に開催された日本独自のラインナップやサウンドクラッシュの組み合わせを見ていると、このOutlookが数少ない「日本でベースを鳴らす意味」を教えてくれるパーティだと実感します。そして何よりもベース・ミュージックの面白さに触れることができるまたとないチャンス。デイ・イベントなので普段はクラブへ行けない10代の君もこの機会を見逃さないでほしい。
 本場クロアチアでのOutlookにも出演しているPart2Style SOUNDやGoth-Trad。UKベースの生き字引Zed Bias、香港のDJ Saiyan、若手グライム・ユニットのDouble Clapperzなど、本文には書ききれないほどの重要プレイヤーが6月14日に渋谷を低音で揺らします。それでは当日、巨大なサブ・ウーファーの前でお会いしましょう!

OUTLOOK FESTIVAL 2015 JAPAN LAUNCH PARTY

開催日時:2015.6.14 (SUN)
開催時間 : 14:00 - 22:00
料金 : ADV 4,000 / DOOR 4,800
会場:SOUND MUSEUM VISION , Tokyo
www.vision-tokyo.com
03-5728-2824(SOUND MUSEUM VISION)
OUTLOOK FESTIVAL 2015 JAPAN LAUNCH PARTY WEB
https://outlookfestival.jp

出演:
ZED BIAS (from UK)
MC FOX (from UK)
IRATION STEPPAS (from UK)
Hi5ghost (from UK)
JONNY DUB (from UK)
CHAZBO (from UK)
PART2STYLE SOUND
KURANAKA a.k.a 1945 (Zettai-Mu)
GOTH-TRAD (Deep Medi Music/Back To Chill)
LEF!!! CREW!!! & BINGO (HABANERO POSSE)
$OYCEE(CE$+tofubeats)
BROKEN HAZE
BLOOD DUNZA (from HK)
CHANGSIE
CLOCK HAZARD
Cocktail Boyz (INSIDEMAN&KENKEN)
CRZKNY
DJ Doppelgenger
DJ DON
DJ Saiyan (from HK)
DJ Shimamura + MC STONE
DJ YAS
Double Clapperz
G.RINA
hyper juice
JA-GE
Jinmenusagi
KAN TAKAHIKO
KILLA
MAXTONE Hi-Fi
MIDNIGHT ROCK
MISOИКОВ QUITAВИЧ
NUMB'N'DUB
PARKGOLF
QUARTA330
RUMI
SHORT-ARROW & Ninety-U
SKY FISH + CHUCK MORIS
TAKASHI-MEN
環ROY
TREKKIE TRAX
Tribal Connection
VAR$VS
YOCO ORGAN
ZEN-LA-ROCK

:: SOUND CLASH ::
XXX$$$(XLII&DJ SARASA) vs
DJ BAKU vs
GRIME.JP

:: SOUND SYSTEM ::
eastaudio SOUNDSYSTEM
MAXTONE Hi-Fi

:: VJ ::
MYCOPLASMA ( TREKKIE TRAX )

:: 主催 ::
PART2STYLE with ZETTAI-MU

WHAT IS OUTLOOK???

OUTLOOK FESTIVALとは? 毎年9月にクロアチアで開催される世界最大の“ベース・ミュージックとサウンドシステム・カルチャー”のフェスティバルである。UKではフェスティバル・アワードなどを受賞する人気フェスで、オーディエンスが世界各地から集まり、400組以上のアクトが登場。このフェスのローンチ・パーティは、世界各国100都市近くのクラブ/パーティと連携して開催され、その中でも本場UKまで噂が轟いているのが、日本でのOUTLOOK FESTIVAL JAPAN LAUNCH PARTYである。 

OUTLOOK FESTIVAL JAPAN LAUNCH PARTYは 日本を代表するベース・ミュージックのプレイヤーが集結し、アジア最高峰のサウンドシステムでプレイする、いわばアジア最強のベース・ミュージックの祭典である。さらに世界中で話題沸騰中の「Red Bull Culture Clash」の日本版ともいえる「OUTLOOK.JP SOUNDCLASH」も見どころのひとつであり、他のクラブ・イベントでは見れない企画が満載。日曜の昼間から開催することで幅広い年齢層が集い、今回の開催地「SOUND MUSEUM VISION」はアクセスの良い渋谷にあり気軽に遊べる“アジア最強の都市型ベース・ミュージック・フェス”だ。

PART2STYLE SOUND

世界を暴れ回るベース・ミュージック・クルー = PART2STYLE SOUND。ダンスホール・レゲエのサウンドシステム・スタイルを軸に、ジャングル、グライム、ダブステップ、トラップ等ベース・ミュージック全般を幅広くプレイ。独自のセンスでチョイスし録られたスペシャル・ダブプレートや、エクスクルーシブな楽曲によるプレイも特徴のひとつである。2011年よりは、活動の拠点を海外にひろげ、ヨーロッパにおける数々の最重要ダンスはもちろん、ビッグ・フェスティバルでの活躍がきっかけとなり、ヨーロッパ・シーンで最も注目をあびる存在となっている。海外のレーベル(JAHTARI、MAFFI、DREADSQUAD等)からのリリースやセルフ・レーベ ル〈FUTURE RAGGA〉の楽曲は、ヨーロッパ各地で話題沸騰、数々のビッグ・サウンドやラジオでヘビープレイされ、世界中のダンスホール・セールス・チャートにてトップを飾った。2013年には、日本初のGRIMEプロデューサー・オンライン・サウンドクラッシュ<War Dub Japan Cup 2013>で見事優勝を勝ち取り、国内においてもその存在感を示した。

Goth-Trad

ミキシングを自在に操り、様々なアプローチでダンス・ミュージックを生み出すサウンド・オリジネイター。2001 年、秋本"Heavy"武士とともに REBEL FAMILIA を結成。ソロとしては、2003 年に 1st ア ルバム『GOTH-TRAD I』を発表。国内でソロ活動を本格的にスタートし積極的に海外ツアーを始め る。2005 年には 2nd アルバム『The Inverted Perspective』をリリース。同年 11 月には Mad Rave と 称した新たなダンス・ミュージックへのアプローチを打ち出し、3rd アルバム『Mad Raver's Dance Floor』を発表。ヨーロッパそして国内 8 都市でリリース・ツアーを行なう。このアルバムに収録され た「Back To Chill」が、ロンドンの DUBSTEP シーンで話題となり、2007 年に UK の SKUD BEAT か ら『Back To Chill EP』を、DEEP MEDi MUSIK から、12”『Cut End / Flags』をリリース。8 カ国に及ぶ ヨーロッパツアーの中では UK 最高峰のパーティーDMZ にライブセットで出演し、地元オーディエン スを沸かした。以降、国内外からリリースを続け、ヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニア等、世界中 でコンスタントにツアーを重ねる中、2012 年にはアルバム『New Epoch』をリリースし Fuji Rock Fes 2012 に出演。2011 年~2014 年にかけては、欧米のビッグ・ フェスにも出演してきた。2006 年より開始した自身のパーティーBack To Chill は今年で 8 年を迎え、ついにレーベルを始動する!

Zed Bias

数知れずの謎めいた変名を駆使する90年代後半を引率した、 Zed Bias aka DAVE JONESの活動履歴はそのままUKのダンスカルチャーそのものといえる。 2000年にUKチャートに送り込んだ2STEPの金字塔を打ち立てた彼の作品が 世代をこえてその重要性を再定義したROSKAにリミックスで去年再リリースまでされた。そんなアンダーグラウンドダンスミュージックの先駆者は常に動きを止めない、自宅スタジオで作られたあらゆる名義のサウンドは常にBBC1のスターDJによりプレイリストに加えられ、KODE9、ONEMAN、BENGA、Plastician、そしてSkreamによって瞬く間に広がっていった。 2002年に、より実験性をもったサウンドを目指すMaddslinky名義アルバムではWill White(Propellerheads)Kaidi Tathem,Luca Roccatagliati等をフューチャーしたDUBSTEPの礎を築くサウンドを展開、また2010年にはMr Scruff、Skream、Genna G、Omar等をゲストに”Make a Change”を発表。ジャイルスピーターソンが選ぶワールドワイド・アワードで”Further Away”が3位に入るなど、常に実験性を保ちながらも、UKチャートに食い込むようなビッグチューンを送り込むバランス感覚の優れたプロデューサーである。


Hop Along - ele-king

 誰に見せるわけでもない日記帳に書かれた日々の些細な出来事や考えや気持ち。ホップ・アロングの紅一点ヴォーカルのフランシス・クインランが書く詞にはそんな印象を受ける。他人から見ればたいしたことじゃないかもしれないけれど、一日一日を過ごしていくなかで身の回りで起きたことや考えたことや小さな幸せや小さな怒り、悲しみ。本人にとってはとても刺激的でリアルな毎日で、それを他人に押し付けるわけでも共感を求めるわけでもなく、ただ淡々と吐き出すように語り、書きとめているかのようだ。

フィラデルフィアを拠点とする4人組、ホップ・アロング。USインディ、それも最新型というよりはアメリカーナのエッセンスを感じさせ、90年代のなつかしさすら漂わせる、エモやメロディック・パンクを引き継ぐバンドだ。けれど彼らを「新しくない」という一言で切り捨てることはできない。そこにある美しさや生々しさは、歴史が磨いてきたフォームによって生かされているとも言えるからだ。

彼らの曲作りは、まずはフランシスが一人で歌詞を完成させ、それから彼女の実の兄であるドラマーのマーク・クインラン、ベースのタイラー・ロング、ギターのジョー・ラインハルトが加わり楽曲を完成させていくという、はじめに歌詞ありきのスタイルだそうだ。それを裏付けるように、今作『ペインテッド・シャット』のレコードのインサートにはフランシスの手書きの歌詞がぎっしりとプリントされている。クリアでポジティヴなメロディには、たくさんの言葉が詰め込まれている。語感のいい言葉選びで安易にポップにしようとしたりはせず、話したいことがたくさんあるんだとばかりに少し枯れた声で、喋るように歌うフランシスのスタイルは、キム・ディールやリズ・フェア、またコートニー・バーネットとも重なる。

 歌詞先行の曲作りとはいえ、楽曲も詞に合わせて気を使うばかりでもない。気持ちよい朝を描写しながら唐突として「みんな悩んでいるんだ」と悟る“ザ・ノック”や、子どもにゲンコツをくれているお父さんを見かけてそれをただ見ていた自分を描いた“パワフル・マン”など漠然とした不安感や内省的な感情をテーマにした歌詞が並ぶものの、楽曲はつねに澄みわたるようにまっすぐで疾走感があるのがおもしろい。〈ポリヴァイナル・レコーズ〉のエモの正統的アーティストたち、それにウィーザーやスーパーチャンク、ガイデッド・バイ・ヴォイシズなどを思わせる磨かれたメロディとバランス感覚を持っている。男性陣の演奏もフランシスの歌と詞に遠慮なく競い合い、女だからと優遇せず対等な関係性であることもかえってフランシスを縛らず、ホップ・アロングの魅力をひきだしていると思う。アルバム後半、“ウェル・ドレスト”のラストの自由で伸びやかなハミングにそれを強く感じた。

 音楽周辺で例を挙げるなら、たとえばバンドのお飾りや華になるとか、フェミニズムをもって男たちに立ち向かったり政治的な強い主張を行うとか、かわいいピアスやケーキをインスタグラムにアップしたりガーリーなジンを作るとか、奇抜な服を着てエレクトロニクスを操るとか、頭の中が恋愛のことばかりで彼氏と絶対に絶対によりを戻すとか戻さないとか。女性が全力で輝くことが求められる時代で女性たちはキラキラすることに忙しい。女性性を全面的に出しすぎていないホップ・アロングの音楽は、いつもキラキラしていなくても焦らなくていいのよー、と等身大の個性と感受性で日々を生きることをあらためて認めてくれるようで、とても安心させられる。

R.I.P. Ornette Coleman - ele-king

 私は朝起きるとコーヒーを淹れて、ベランダでタバコをふかしたのち、四十の声を聞き、だいぶガタがきた身体をほぐすために運動するときめているが、そのときかけるBGM選びは慎重を要するうえに困難をきわめる。なんとなれば、その日一日の気分を左右するからであるが、一日の気分なぞ起き抜けの頭にきめられてはたまったものではない。いきおいレコード棚とCD棚の前をうすのろのようにうろうろするハメになる。5分、10分はザラで半時間とはいかないまでもそれくらいかかることもあり、しぶしぶきめた音楽のせいで午前中がムダになることもしばしば、世の勤めびとにくらべるとおかなりお気楽な部類にはいるのである。

 今朝はたまたま、CD棚の南向きの面の右端上から3段目に目がいった。水谷さん、灰野さん、ボアダムス、ザッパとかクレイオラ、アイラーやベイリーやマイルスのジャズ関係にまじって、ケージやサティやフルクサス系がごっちゃになった私の音楽体験の原点にあたるひとたちのコーナーである。私はそこからなんの気なしに『ソングX』を抜いた。パット・メセニーとオーネット・コールマンとの双頭作で、リリースから20年経ったのを記念した2005年のこのデラックス・エディションには未発表曲を数曲おさめている、しかも冒頭に。これがカリプソを思わせる千鳥足の軽快なナンバーで、萎びた身体でする運動にはもってこいだったのである。オーネット、チャーリー・ヘイデンとメセニー、ディジョネットの相性もわるくない。デナードはいらない気がするが、それは本作にかぎったことではない。ところがオーネットとデナードの関係を、湯浅さんは『音楽談義』で、『The Empty Foxhole』から親子の会話として読み解かれ、目から鱗が落ちた。坂田明さんは『ジム・オルーク完全読本』で、ニューヨークでオーネットに会ったときの逸話とともに「どんなことも3年やれば世の中に認めてもらえる場合がある」下積み時代、オーネットのこのことばに賭けた、とことばあらたに語った。『ソングX』の未発表テイクはこのアルバムがメセニー主導であり、オーネットすぎたのではぶいたのだろう。そこにはフォルムはあるものの外郭は軟体化しているが、恣意性によるものではなく、内在するものが、自生するように増殖し、かたちを変える。私は運動を終えたてつづけに聴いた『Dancing In Your Head』『Body Meta』『Virgin Beauty』でもその印象は変わらなかった。おそらく『ジャズ、来るべきもの』からジャズの十月革命の季節をはさみ、ブルーノートのゴールデン・サークルのライヴ盤をいま聴き直しても変わらないだろう。フリー・ジャズといいながらデタラメでもきまりきった型でもない。おそらくオーネットしか出せない音列とニュアンスがあり、彼はそれをハーモロディックと呼び、作曲と即興の体系におとしこもうとしたが、むしろそれは両者の中間領域の階調のようなものであり、この複雑なグラデーションは理論化にそぐわない、オーネット・コールマンの身体そのものであり、彼と彼の身体の重力の圏域にとらわれた共演者たちのもたらすものであり、根源的にジャズだった。その身体は喪われた。

 ムシのしらせなどというものがあるなら、これがそうだったのだろう。深夜、仕事のためにキング・クリムゾンのライヴ音源を聴きかえしながら、即興ならオーネットのほうが、いやベイリーは――とむつむつ考えていたら、ケータイが光った。着信を告げる点滅で、開くと「24通の未読メール」とある。すわ迷惑メールか、いかがわしいサイトをみた憶えもないのに、と焦って確認したら、保坂さんと湯浅さんとのやりとりが同報されていた。そこでオーネット・コールマンが死んだのを知った。私信なので引用しないが、ひとつだけ。「死ぬことと遠すぎる」と湯浅さんは書いた。そのとおりです。

 6月11日、オーネット・コールマンはニューヨークでこの世を去った。「85歳。テキサス州出身のアルトサックス奏者。伝統的な音楽技法にとらわれず、より自由な表現形式を可能にした「フリー・ジャズ」をリードした」とAFP時事は報じている。くりかえす。その身体は喪われた。しかし自由は死せず、と私は板垣退助みたいことをいいたいのではない。というか、ほんとうに音楽の自由は死んでいないのか? 目がさめたらもう一度考えてみようか、音楽そのものとなり、ついに死ぬことと遠くなったオーネット・コールマンの音楽を聴きながら。

2015年6月12日払暁

Jamie XX - ele-king

 ハウス・ミュージックは、最高の娯楽、最高の快楽のひとつだ。
 たしかにレイヴ・カルチャーは公共性をめぐる大衆運動にリンクしたかもしれない。また、URやムーディーマン、ザ・KLFやハーバートのような人たちがこのフォーマットに政治的なメッセージを混ぜたのも事実だ。 
 だが、ダンス・ミュージックのほとんどのプロデューサーは、意味よりも機能性を、ムードとグルーヴを重んじている。そして、気持ちE追求の姿勢が切り開いた文化なのだから、それは悪いことではないのだ。
 どんなにご託を並べたところで、基本、ダンス・ミュージックは快楽を目的とする。たとえそれが商業のなかに取り込まれようと、あるいは頽廃と呼ばれようと(深夜遊ぶことが頽廃そのもの)、この音楽が途絶えることはない。トーフビーツのように心配するにはおよばない。ダンスは終わらないのだ。

 きっと、ジェイミーXXの『イン・カラー』を聴く多くの若い人にとって、これが最初のハウス・ミュージック体験になるのだろう。だとしたら、このアルバムは、今日におけるハウスの魅力があまりにも瑞々しく記録されている、入口としてはこのうえなく素晴らしい作品だと断言しておく。ぼくのように、ハウスを何年も聴いてきた人間さえもワクワクさせる。下手したら、ザ・XXの2枚のアルバムよりも良いんじゃないだろうか……と思えてくる。
 ついでながら、日本盤には、最高の曲“All Under One Roof Raving(ひとつのレイヴの屋根の下のすべて)”が収録されているし、その未発表ヴァージョンも入っている。この1曲を聴くために、円安のため高価商品になった12インチを買うかどうか迷っていた人にとって、なんとも嬉しい話だ。

 さて、この『イン・カラー』だが、あまりにも評判がいいためか、UKやUSのいちぶメディアは、早速「おぼっちゃまソウル」とか「新自由主義世代のクラブ・ミュージック」とか言いがかりを付けているのだが、こんなシニカルな言葉は放っておくのがいちばんだ。アンダーグラウンド・ミュージックがメインストリームにまで影響力を持ってしまったときは、だいたい賛否龍論が起きるものだから。誰もが褒めるのも気持ち悪いし、売れたらけなすというアングラ根性もぼくは嫌いじゃないが、この音楽を1992年へのノスタルジーとして批判する向きには反対したい。
 「1992年におまえはどこにいた?(Where Were U In '92?)」という標語に従えば、まさにぼくは「クボケンとその場」にいたのだけれど、はっきり言って1992年のレイヴ・ミュージックはこんなに洗練されていなかった。もっとダサかったし、チープだった。良くも悪くも。

 「美」というものを絶対視するとナチズムにさえも手を貸してしまうと指摘したのはスーザン・ソンタグだったっけ? うっかりナチズムを讃えてしまったブライアン・フェリーの過ちもそこにあったよね。同じように、ただ気持ちEだけでは疑問を忘れ、批評精神を放棄し、管理社会に手を貸してしまうのではないかと、これも昔から言われていることだ。
 が、しかし、実は、あるレヴェルにまで気持ちEが達っしてしまうと、あらゆる管理装置(同調圧力や政治や慣習)から解放されてしまうもので、ハウスではそれを「I've Lost Control」という言葉で表現してきたのだけれど(アシッド・ハウスというのがそれ)、これがどういうことかと言えば、あらためて我が身の不自由さに気がついてしまうのである。人間いちどはそのぐらい気持ちEを追求してもいいんじゃないかね。なるべく若いウチに。
 とはいえ、快楽が産業化したとき、考える余地や休む暇さえ与えないほど、情報がぱつんぱつんに詰め込められて、しかもやたらめったらアッパーになる。で、それはちょっと身体感覚として違うだろうと抗したのが20年前のディープ・ハウス・ムーヴメントだった。
 『イン・カラー』は音楽的にはディープ・ハウスに繫がっている。もちろん焼き直しではない。ベース・ミュージック以降の感性のうえで成り立っている若々しい作品だ。1曲目の“ゴッシュ”の後半からの見事な展開、雲のうえを歩いていくような2曲目“スリープ・サウンド”への繋がり、そしてブレイクビーツのうえをロニーの歌う3曲目“シーソー”と、ここまで聴いてわからなかったら……あなたはダンス・ミュージックに近寄らないほうがいいかもしれない。

Eccy - ele-king

The 10 Best Hudson Mohawke Productions

Akitsa - ele-king

 カナディアン・ブラックメタル・バンド、アキッツァ(Akitsa:正しい発音をご存知の方はご一報ください)による5枚めのアルバム。プリュリエントのドミニク・フェルノウによるブラックメタル・プロジェクト、アシュ・プール(Ash Pool)とのスプリット以来約2年ぶりの音源は、もちろんドミニクの〈ホスピタル・プロダクション(Hospital Productions)〉から。超パンキッシュなヴォーカルがフランス語なので当初はフランスのバンドかと思っていましたが、ケベックです。

 アキッツァは、ドミニクによるアシュ・プールのサウンドからうかがえる彼のブラックメタルへの嗜好、クッソ劣化音質、D-Beat、クラストパンク的ブラックメタルを見事に具現化するバンドであり、ゼロ年代以降USアンダーグランドを中心に再燃した第二波ブラックメタル・ブームを代表するバンドとも言える。
それはたとえばこんな超アンダーグラウンドな文化をスタイリッシュに見せることに成功したサン(SUNN O))))のスティーブン・オマリーや写真家のピーター・ベステ(Peter Beste)、現代美術家/彫刻家のバンクス・ヴァイオレット(Banks Violette)といったマルチ・タレントなアーティストらによりヒップなサブ・カルチャーとして認知され、アイコン化された。そしてそれは、先日H&Mから架空のメタル・バンドのパッチが施されたクソダサいコレクションが発表されたことで完全に終わったのかもしれない。

 相変わらずのアキッツァの『グランズ・ティランス(Grands Tyrans)』を聴きながらそんなことを考えていた。変わらないは言い過ぎか。クラストパンク色はより色濃くなり、USブラックメタル界のアイドルとなったボーン・アウル(Bone Awl)のマルコ・デル・リオが現在活動するラズベリー・バルブス(Rasberry Bulbs)の世界観と重複する。ローファイ・シンセ・ウェイヴのようなトラックも収録され、〈Not Not Fun〉以降のローファイ・インディ・ファンや、エッセティック・ハウス(Ascetic House)周辺をチェックするオシャレ・ゴス・キッズの耳にも届くかもしれん。ヒネくれて聞こえるかもしれんが、こりゃカッチョイイですよ。


 そういえば、先日、いつだったかココに書いたバーザムTシャツを着るのがテクノDJの間でヒップなんてのはファック、という一文を往年のサージョン・ファンから指摘されたのだが、そのとき僕がイメージしていたのはサージョンではなく、スウェーデンはストックホルムのジョナス・ローンバーグことヴァーグ(Varg)である。ノルウェジャン・ブラックメタルからの影響を声高にアピールする彼の最新作『URSVIKEN』が先日発売された。寒々しい光景が広がるエクスペリメンタル・アンビエント・テクノにそのプロジェクト名、本人のノリからわかりやすすぎるほど直球に想起されるバーザムの獄中アルバム・ミーツ・テクノ。ディープ・ミニマルな心地よいビートを洗練された手つきで紡ぎながらも、グルーヴよりもサウンドスケープが際立つ雪山遭難テクノ。いや、わかります。僕もバーザム好きですし。だけどもヴァーグ・ヴァイカーネス本人はマジでいわゆるネトウヨかつ問題の多い人間だと思うから信仰するのはどうかと思うよ。


CMT - ele-king

20150606

interview with Bill Kouligas - ele-king


Lee Gamble
Koch

PAN / melting bot

ExperimentalTechnoMinimal

Amazon


M.E.S.H.
Scythians

PAN / melting bot

ExperimentalGrime

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Object
Flatland

PAN / melting bot

ExperimentalGrime

Amazon



 〈PAN〉がこの先〈WARP〉や〈MEGO〉のような、なかばカリスマ的な、エポックメイキングなレーベルになるのかどうはわからないが、そのもっとも近い場所にいることは間違いない。妥協を許さない冒険的な電子音楽、アートワークへのこだわり、そしてうるさ型リスナーへの信頼度もすでにある。うちで言えば、倉本諒、高橋勇人、三田格、デンシノオト、そしてワタクシ野田がレヴューを書いていることからも(この5人は、それぞれ趣味が違っている)、〈PAN〉がいかにポテンシャルを秘めたレーベルなのか察していただけるだろう。
 さて、6月13日の初来日を控えた、レーベルの主宰者ビル・コーリガスを話をお届けしよう。こういうのもアレだが、ハウスの次には必ずテクノが来る。ホリー・ハードン(Holly Herndon)は4ADに、パウウェルは〈XL〉に引っこ抜かれた。数ヶ月前までテクノを小馬鹿にしていた倉本も(本人に自覚があるかどうかはわからないけれど、ま、ライヴがんばれよー)いまではテクノである。ことさら煽るつもりはないのだけれど、時代は動いているってことです。

〈PAN〉にとってロンドンの滞在記はいちばん重要かもしれない。音楽とアートがとても強くて、その背景には何10年もの歴史がある。アンダーグランドはそのシーンに大きな役割を果たしていたし、そこから影響もどんどん受けて、素晴らしい人びとや音楽に出会えた。

ギリシアで生まれたあなたは、最初はデザインを学び、ヴィジュアル・アートの方面に進んだと聞きます。どのように実験音楽、アヴァンギャルド、エレクトロニック・ミュージックと出会ったのでしょうか?

ビル:はじめはバンドでドラムをやっていて、リスナーでもありプレイヤーでもあったね。その後電子楽器に切り替えて、実験音楽や電子音楽と呼ばれるようなタイプの音楽にハマっていった。キャバレ・ヴォルテール、23 スキドゥー、クローム、その他のパンク〜ニューウェイヴ /ポストパンク期に出て来た80年代の有名なバンドが好きになって、それが電子音楽、アヴァンギャルドやインプロヴィゼーションといった実験音楽の入り口になった。

ギリシャには何歳まで住んでいたのですか?

ビル:アテネに20歳まで住んでいてそれからロンドンに引っ越した。もう12年前の話になるね。

財政危機の緊張感は、あなたがギリシアに住んでいた頃からあったものだと思いますが、アテネにはどのようなカタチでアンダーグラウンド・シーンは存在しているのですか?

ビル:財政問題はずっとギリシャの中心にあって、この状況は何10年も前からある。いまとなってそのシステムが完全に崩れて、メディアが全面的に取り上げるようになった。その影響で不安、緊張、自暴自棄な雰囲気が人びとのあいだに充満していて、波紋のように広がり、文化や創造性の全てに反映している。多くの若者はそこから逃げ出そうとしているけどその問題と戦っている人もいる。たくさんのアートを生み出されているし、ユニークで結束力の強いアンダーグランドなシーンが形成されているけど、そういった活動やアーティストはギリシャ以外では全く知られていなくて、単純にシーンをサポートやプロモーションをしてくれるインフラが全くないんだよ。

あなたにとって、最初のもっとも大きな影響は何でしたか?

ビル:何がっていうのをひとつに絞るのは難しいけど、若い頃からバンドで演奏したり、友だちとアイデアや好きなものを交換していって、結果いま自分が信じてやっていることに影響を与えてきたと思う。

あなたが15歳ぐらいの頃からの付き合いだというジャー・モフ(Jar Moff)やムハンマド(Mohammad)のメンバーとは、どのように知り合ったのですか? アテネでは、アヴァンギャルドなシーンは活発だったのですか? 

ビル:そうだね。ジャー・モスとの付き合いはかなり長い。僕らは90年代の10代の頃にパンク・バンドをやっていて、ずっと友だちでもある。15年経ってまた音楽を一緒にやることになったわけだから、とても特別な関係だよね。
 ムハンマドはもうちょっと後で、彼らは10年くらい前から知っている。僕は彼らとライヴをいっぱいやってきたんだけど、ムハンマドのメンバーであるイオリス(ILIOS)のアルバムをレーベルの初期に出した。ギリシャのアヴァンギャルド・ミュージックはとても活気的だけど、小さなコミュニティで、けど大きさに関わらずその背景にある歴史はとても深くて、作曲家で名前をあげるならクリストウ(Christou)、ヤニス・クセナキス、 アネスティス・ロゴセティス(Anestis Logothetis)、ミカエル・アダミス,(Michael Adamis)とか、たくさんいる。

2000年代初頭、あなたはアートを学ぶためにロンドンに移住しましたよね。その頃、あなたが経験したロンドンのアンダーグラウンドなシーンについて話してもらえますか? 

ビル:〈PAN〉にとってロンドンの滞在記はいちばん重要かもしれない。音楽とアートがとても強くて、その背景には何10年もの歴史がある。アンダーグランドはそのシーンに大きな役割を果たしていたし、そこから影響もどんどん受けて、素晴らしい人びとや音楽に出会えた。電子音楽、ダンス・ミュージックはもちろんノイズ・シーンも当時は人気があったから、かなり初期の段階で深くシーンと関わっていたんだ。イヴェントをたくさん企画して、海外のアーティストのツアーを組んだり、ヨーロッパでは自分も一緒になってツアーをしたり、エキシビジョンのキュレーションもやっていたから、上昇していくシーンの一員となってアクティヴに活動していた。ヘルム(Helm)リー・ギャンブル(Lee Gamble)、ヒートシック(Heatsick)もそのシーンを通してロンドンで出会った最初のアーティストなんだ。それから一緒になって活動を続けている。

あなたがロンドンに住んでいた頃は、ダブステップやベース・ミュージックの人気がすごかったと思うのですが、当時あなたはロンドンのクラブ・カルチャーには関心がなかったんじゃないですか? あなたから見て、それは商業的に見えたからですか?

ビル:ダブステップ全体はとても面白かったし、活気に満ちていた。とくに初期はね。それから業界がコマーシャルなものにして、シーンをメインストリームにさせていったわけだど、僕がそこに参加することも夢中になることも難しかったね。本当に良いダブステップを完全に理解するにはすごく時間がかかった。最近だと初期のUKベース期からすごく良いものをどんどん発見してるよ。

日本でも決して有名とは言えないマージナル・コンソート(Marginal Consort)のような前衛的なコレクティヴと、あなたはどうして知り合ったのでしょう?

ビル:僕は日本のインプロや実験音楽の大ファンだからね。彼らは知っていた。小杉武久さんの作品はしっかりフォローしていたし、イースト・バイオニック・シンフォニア(East Bionic Symhonia/※70年代に小杉武久が主宰したグループ)というマージナル・コンソートの前身となったグループもよく聞いていた。2008年にグラスゴーのインスタル・フェスティバルに行ったとき、マージナル・コンソートが初めてヨーロッパで演奏した。自分が見て来たライヴのなかでも格段に印象的で頭に残るユニークな体験だったね。
 その後オーガナイザーのBarry Essonとコンタクトを取って、ゆっくりと時間をかけて最後にはリリースすることができたし、その2年後に彼らをまたヨーロッパに連れて来れる機会が出来て、南ロンドンのギャラリーでライヴをやって貰った。あのリリースは自分にとってたくさんの意味があって、形にするのに時間がかかったから尚更だね。

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とくにノイズやテクノをリリースするためにレーベルをはじめたわけでなく、新しく出て来る“重要”なシーンをドキュメントにするためにレーベルをはじめたんだ。

2009年にベルリンに住む決意をした理由を教えて下さい。

ビル:ベルリンに移ったのは単純に生活しやすいからね。よりクリエイティヴなプロジェクトに集中できるし、家賃も生活のコストもかからないからベルリンは楽だよ。大きな部屋でも借りれるし、そこにスタジオを作れる、そういった環境が揃っているから多くのアーティストが引っ越すんじゃないかな。余裕ができたおかげで個人的にも自分のペースやちゃんとした生活をここで見つけられたし、とにかくベルリンは住みやすいということに限るね。
 あとベルリンを拠点にしたということで、〈PAN〉はその音楽シーンにある多国籍で実験的な部分を反映し、上手く入り込めたと思う。このユニークな環境はよく知られているけれど、この都市はクリエイティヴなリスクを取れるし、実験したいことを育てることができるんだ。〈PAN〉の役割はその育んできた実験を幅広いインターナショナルなシーンに繋げることでもある。

レーベルの拠点をロンドンやアテネやニューヨークにしなかったのは何故ですか?

ビル:レーベルは、実際は2008年にロンドンでスタートして、自分が引っ越したからいまのベルリンになった。

〈PAN〉に関してですが、最初は、ファミリー・バトル・スネーク(Family Battle Snake)の作品を出すためにレーベルをはじめたのでしょうか? それともレーベルとしてのヴィジョンが最初からあったのですか?

ビル:レーベルはファミリー・バトル・スネーク(Family Battle Snake)とAstro (Hiroshi Hasewaga)のスプリットLPを出すところから元々ははじまっていて、とくに何かそれ以上のヴィジョンや大きなアイデアがあったわけじゃない。はじめてみたらとても面白くて、他のアーティストと一緒に作るのが好きだったから、自然にレーベルが軌道に乗って、いまのようにどんどんリリースできるようになっていった。

CDではなくヴァイナルでリリースするというレーベルのポリシーはどうして生まれたのですか?

ビル:全くポリシーはない。はじめた当時はCDが全く売れなくなってアナログが戻って来た時期だったから。去年からヴァイナルとCD、デジタルも出してるよ。

ラシャド・ベッカー(Rashad Becker)やNHK'Koyxeиらとはベルリンで出会ったと思います。ラシャド・ベッカーはハードワックス(※ベルリンの有名なレコ屋)を通じてなんでしょうが、NHKコーヘイとはどんな風に知り合ったのでしょう?

ビル:ラシャドはベルリンで10年前に会った。僕が演奏しているアルバムをプロデュースしているときときだね。そのときはまだロンドンに住んでいたんだけど、2週間くらいラシャドのスタジオでレコーディングのためにベルリンに滞在していた。それから近い友だちになってレーベルの立ち上げ時からアドヴァイスを貰ったり、いろいろ助けて貰った。コーヘイはラシャドの友だちで、自分のベルリンにいる友だちの友だちでもあったんだ。同じグループにみんないたから、近しい関係になってアルバムを出すことになった。

NHKコーヘイがそうですが、最初、彼はより実験的な音響を持っていましたが、2012年の「Dance Classics Vol.I」を契機にダンス・ミュージックへとシフトしていきました。何故彼に「ダンス」というコンセプトを与えたのでしょう?

ビル:それはちょっと事情が違っている。彼はすでにその作品にとりかかっていて、僕はそれがすごく気に入った。そのとき彼はベルリンにいたからよく会っていたし、新しい作品も全てチェックしていた。彼は僕の知っているアーティストのなかでも抜群に才能のある多作家だね。

〈PAN〉は2012年以降、リー・ギャンブル(Lee Gamble)やメッシュ(M.E.S.H.)のように、実験的ではあるもののダンス・サウンドを持っている作品を出すようになります。あなたのなかにどんな変化があったのでしょうか?

ビル:僕はカルチャーが生み出す独自の空間に影響受けることに興味がある。どういったことが自分のまわりで起きていて、それがどう自分に作用するのか。ベルリンではそれがすべてエレクトロニック・ダンス・ミュージックなんだ。とてもシーンが大きい。ロンドンはロンドンで独自のシーンがあって、ニューヨークもまた別のシーンがある。自分が惹かれているものを探し出して、それを混ぜ合わせることが重要だと思っている。

ちなみにレーベルで最初にヒットしたのは、リー・ギャンブルの「Dutch Tvashar Plumes」ですか? 

ビル:リー・ギャンブルの『Diversions 1994-1996』とキース・フラートン(Keith Fullerton)の『Whitman's Disingenuity』は初期のリリースで、シーンをクロスして評価された作品だね。オーディエンスやプレスからそういった反応があったことはありがたい。けどそれはそれで、僕は自分がリリースしてきたものすべてが公平に大好きだよ。

あなたは、ジェフ・ミルズやサージョンは好きですか? もしそうなら、彼らのどんなところに惹かれるのですか?

ビル:もちろんふたりとも尊敬している。ジェフ・ミルズはどの時代であっても大きな影響を受けていて、一番最近だと彼の「Sleeper Wakes」シリーズは相当ハマったね。

デトロイト・テクノからの影響について話してもらえますか?

ビル:テレンス・ディクソン(Terrence Dixon)とアンソニー・シェイク・シェイカー(Anthony Shake Shakir)は最高だね。

メッシュの作品にリミキサーとしてロゴス(Logos)も参加しているように、あなたはUKのグライムを好きだと思いますが、とくにあなたが評価している人は誰でしょう?

ビル:初期のころからグライムの大ファンだよ。新しいアーティストでいったらヴィジョ二スト(Visionist)がずば抜けている。彼は新しいグライムのシーンから出てきて作品はもちろんその影響が大きいんだけど、それと切り離して自分自身のサウンドを作っているね。とても面白いアルバムがもうすぐ出せると思う。

ここ最近もアフリカ・サイエンシーズ(Afrikan Sciences)やオブジェクト(Objekt)などユニークなアーティストの作品を出していますが、リリースするにいたる基準について教えて下さい。

ビル:僕は発端という点で音楽と深く関わっているわけで、それは直感ではなく、どうやって個々のアイデアが形になるかを見ていく場所にいるような感じかな。〈PAN〉のすべてのリリースはフィジカルな場所で起きているものが形になってでき上った結果のようなもので、もしそのレヴェルで音楽を見ていれば、コンセプトやコンテキストという点でも、〈PAN〉が形成されていく過程は首尾一貫していてロジカルであるとわかると思う。とくにノイズやテクノをリリースするためにレーベルをはじめたわけでなく、新しく出て来る“重要”なシーンをドキュメントにするためにレーベルをはじめたんだ。

イルなラッパーとして知られるスペクター(Spectre)のリリースにも驚いたのですが、これはコーヘイ(※Sensational名義のプロジェクト)繋がりなのでしょうか? それともあなたにとって彼は影響のひとつだったのでしょうか?

ビル:いや、もともと〈WordSound〉の古くからのファンで、長いあいだレーベルをフォローしてた。あのテープはずっと持っていて、去年久しぶりに聴いたときに、ふとオーナーのスキッズにコンタクトをとってライナーを付けてマスタリングをして、ちゃんとレコードで再発しないかと話を持ちかけたら、彼は気に入ってくれて直ぐに出すことになった。

こんどリリースされるTCFについてのコメントをお願いします。

ビル:TCFはアカデミックなアーティストで、レーベルのこれからの発展にとって大きな鍵となる存在だね。彼のライヴとリリースはサウンドだけでなく、テキスト、ヴィジュアル/イメージ、映画といったさまざまなとKろに関わるだろうし、またそれらがすべて繋がった面白いことになると思う。

NHKやマージナル・コンソートのような日本人アーティストの作品を出していますが、今後、リリースしてみたいと考えている日本人アーティストはいますか?

ビル:もちろん! 日本のツアーで新しい人たちと出会えることが楽しみだね。

今週の初来日への抱負をお聞かせ下さい。

ビル:このツアーを実現してくれた全ての関係者と〈melting bot〉に感謝します。初めて行くところだから本当に楽しみでしょうがない。いろんな人に来て貰いたいし、僕らが発表するものにどんな形でも関わってくれたらうれしい。



PAN Japanツアー日程

experimental rooms #19 Lee Gamble
6.10 WED at Golden Pigs Yellow Stage 新潟
ADV 3,000 yen / Door 3,500 yen
OPEN / START 19:30
出演 : Lee Gamble, I Wonder When It Will End, Jacob

goat presents PAN SHOWCASE IN OSAKA
6.12 FRI at Conpass 大阪
ADV 3,500 yen / Door 4,000 yen
OPEN / START 17:30
出演 : Bill Kouligas, Lee Gamble, M.E.S.H., TCF, goat, Ryo Murakami, Yosuke Yukimatsu

PAN Japan Showcase
6.13 SAT at LIQUIDROOM 東京
ADV 4,000 yen / Door 4,500 yen
OPEN / START 23:30
出演 : Bill Kouligas, Lee Gamble, M.E.S.H., TCF, Soichi Terada, DJ Sufflemaster, Compuma, Chis SSG, ENA, D.J. Fulltono, goat, DREAMPV$HER, Madegg + Shun Ishizuka, セーラーかんな子, MARI SAKURAI

total Info:
https://meltingbot.net/event/pan-japan-showcase-bill-kouligas-lee-gamble-m-e-s-h/

M.E.S.H. - ele-king

 漂白のポスト・インダストリアル・テクノ。2014年に、ベルリンのメッシュが同国の実験電子音楽レーベル〈パン〉からリリースしたEP『セスィアンズ』を聴いて、私はそのような印象を持った。光の炸裂/漂白された光/記憶/フラッシュバックする光/光の中心/空虚。

 メッシュは、ベルリンを拠点としつつ活動を繰り広げているDJ/プロデューサーである。彼はベルリン・アンダーグラウド・シーンで知られるジャニスのメンバーであり、これまでもさまざまなミックス(音源)や、〈ディッセンブラー(Dyssembler)〉などからソロEPをリリースしている。昨年、〈パン〉からリリースされた『セスィアンズ』は、レーベルの人気・魅力とあいまって彼の名声を一気に高める作品になった。
 じじつ、『セスィアンズ』のトラックにうごめいているノイズや具体音の接続、非反復的なビート、やわらかい電子音は、まるで白い光のような独自の質感を獲得していた。これはいったい何か? このようなエクスペリメンタル・テクノは稀だ。いわばポスト・インダストリアル・テクノ?
 音から生まれる驚愕の波動はいまなお続き、この2015年、日本の〈メルティング・ボット〉からリミックスと未発表曲を加えた『セスィアンズ』日本限定CD特別盤がリリースされた。〈パン〉関連のアーティストとしては昨年のリー・ギャンブル『コッチ』国内盤も記憶に新しい。

 さて、この『セスィアンズ』を、ひとことでたとえるなら「歴史の終局地点で鳴るポストモダンの光景のサウンド・トラック」といったところか。その音は、先に書いたようにダークというより漂白。いわば白昼夢の光。陽光などではなく「爆心地の白い光」のような印象だ。2010年代、アンダーグラウンドな空間で鳴らされたダークな音たちは、いつのまにか歴史の極限地点で、グランド・ゼロのように白く、巨大に発光している。
 このアルバムは2014年にリリースされたルーシーのセカンド・アルバム『チャーチズ・スクールズ・アンド・ガンズ』(リリースは〈ストロボスコピック・アーティファクツ〉から)に近い感触がある。音楽的にまったく似てはいないが、聴いたとき印象が近いのだ。いまにして思えば、『チャーチズ・スクールズ・アンド・ガンズ』は、ポストモダンの荒野に広がる光景を白昼夢のように描き出したポスト・インダストリアル・テクノの先駆的なアルバムであった。まるでガス・ヴァン・サントの『ジェリー』(2002)のように歴史の停滞地点を私たちの聴覚に提示したのだ。そもそもアルバム名からして同監督の『エレファント』(2003)を想起してしまう。

 あらゆるものが出そろい、あらゆる歴史が終局し、あらゆるものが飽和し、あらゆるものが停滞し、あらゆるものが無意味になったインターネット環境以降の世界において、ポスト・インダストリアル・テクノは、歴史の停滞、世界の暗さを電子音楽の中に炸裂させ、光のように飽和させる。その音響とビートのむこうに輝く爆心地のような明るさは、どこか世界の終わり(のムード)を反映している。ポスト・インダストリアル・テクノは歴史の最終地点であり、終局であり、空白地点のムードを醸し出す。
 そして、だからこそ、ポスト・インダストリアル/テクノはサウンドの実験空間=アート・スペースとして機能しているともいえる。たとえば〈パン〉や〈ストロボスコピック・アーティファクツ〉〈アントラクト〉などは、それぞれ電子音楽をベースにしつつも、テクノと現代音楽とアートのマリアージュをめざす(側面がある)。その結果、彼らの生み出すトラックは、アンダーグラウンドなスペースを最先端のアート空間に生成変化させてしまう力がある。〈パン〉からリリースされたジェイムス・ホフの『ブラスター』や、〈ストロボスコピック・アーティファクツ〉のエクスペ/アート系サウンド・サブ・レーベル〈モナド〉の作品たちを聴いてみれば即座にわかるはずだ。また、〈アントラクト〉の諸作品、たとえばニコラ・ベルニエの『フリークエンシーズ(シンセティック・バージョン)」』なども重要な作品といえる。彼ら(の音)の特徴は、「アート」であることにまったく躊躇がない点だ。「アート」とは、世界の境界線と輪郭の明確にする重要な行為なのだ。

 むろん現代音楽とテクノの交錯は、今日にはじまったことではないが(90年代におけるピエール・アンリ『現代のためのミサ』=“サイケロック”の再発見)、それをサンプリング・ネタ(シュトック、ハウゼン&ウォークマン 的。「モンド・ミュージック」の時代としての90年代)としてではなく、世相を捉えたアート=音楽/音響的構造として再生成する試みが非常に現代的なのだ。
 また、ビートを安易に反復させず、鳴っていないビートも含めた律動をリズムとしてトラック内に圧縮させていく手法は、情報過多の時代を生きる今の若い世代の耳(と体)も満足させるはず。
 つまり、メッシュのトラックは、そんな2015年の現在を象徴しているのだ。アルカやOPN以降ともいえるポスト・インターネットなミュージック・コンクレーティズム・トラックは、インダストリアル/テクノ勢の中でも群を抜いているといっていいし、同時に非常に実験的でありながらテクノ機能性(というより機能性の拡張)を実現している点も注目に値する。たぶん、DJとしての彼のスキルが生かされているのだろうとも想像できる。

 ともあれ1曲め“セスィアンズ”を聴いてほしい。この非連続的・非反復的なサウンドと接続とリズムの素晴らしさ。続いて、より不穏・性急なキックが鼓動を煽る2曲め“インターディクター”、ミニマルなビート/フレーズとアンビエントな持続音とミュージックコンクレート的なサウンドがイマジネティヴな3曲め“キャプティヴェイテッド”、ダウンビートでミニマルなフレーズが幻想的な4曲“グラッセル・フィニッシャー”、ガサゴソとした具体音や淡い持続の交錯から静かに幕を開けるノンビート・トラック5曲め“インペリアル・スーアーズ”など、「新しい」電子音楽ならではの刺激がここにはある。個人的には不穏なアンビエンスが生成するこの“インペリアル・スーアーズ”に、“セスィアンズ”とともにとても惹かれた。
 6曲め以降は、日本盤のスペシャル・トラックだ。リミックスには、グルーヴストリート、盟友ロティック(ジャニス)、ロゴス、DJヒートらが参加し、“セスィアンズ”を独自の色に料理している。どのトラックもインダストリアルとクライムなどのベース・ミュージック、いわばアートとストリートとの関連性を示唆する見事なものだ。そしてラストはメッシュによる未発表トラック“トレンド・ピース”。
 この日本盤をまとめて聴くと、オリジナル・トラックとリミックス・トラックの交錯によって、電子音楽の現代的境界線が浮き彫りになってくるように思えた。ポスト・インダストリアルとストリート、さらにインターネットとアート。それぞれの境界線は、メッシュとその周辺のアーティストたちにおいては初めから融解しているのだろう(メッシュはアーティスト、アレクサンドラ・ドマノヴィックとのコラボレーションを行っている)

 メッシュの音は、そのようなポスト・インターネット的な交通を経由し、閃光のような漂白的空間、まるで「爆心地」の光のような白い空間を聴かせてくれるのだ。まるで大友克洋『アキラ』の東京崩壊シーンのように。それはベルリンから東京にもたらされるグランド・ゼロの閃光。そんないささか物騒なものいいも、〈パン〉というレーベルが持っている超現実的な世界観ならば許容してくれるのではないかと思う。そもそも『アキラ』の世界では東京崩壊以降も、健康優良不良少年たちはたくましくも駆け抜けたではないか。「廃墟」以降の世界に広がる(アート)ストリート。重要な点はそこだ。
 「世界」が壊滅しても、そう簡単に世界は終わらない(終われない)。昨年から今年にかけて〈パン〉などの電子音楽レーベルからリリースされる作品からは、そんな「以降」の世界を強く意識させてくれるものが多かった。そう、現代の「新しさ」とは、壊滅的状況の向こうにあるものなのかもしれない。

 「ブラインド・ジョー・デス」とは2001年に他界したギタリスト、ジョン・フェイヒー(と映画ではこの表記を使っているので、ここではこう記す)の異名であり、彼はこの名を彼の好きなブラインド・ウィリー・ジョンスン、ブラインド・ボーイ・フォー、ブラインド・ジョージ・ハガートといった戦前の盲目のブルースマンたちに借り受けた、と作中、そのコメントを引用している。

 とはいえ、フェイヒーがブルースに関心をもったのは後年で、日本が敗戦を迎えたいまから70年前に、メリーランド州タコマパークに移り住んだ彼が音楽にめざめたきかっけはカントリーやブルーグラスだった。カントリーウェスタンを演奏する子がたくさんいたからね。それがやがて南部に傾倒したのは、ギターという楽器の欲望にしたがったのか、指が求めたのか、いずれにせよ、フェイヒーの遍歴に筋道はなく、彼が設立し、インディペンデント・レーベルの嚆矢とみなされることも多い〈タコマ・レーベル〉にせよ、すくなくともビジネス的な展望によるものではないことは、別エレ『ジム・オルーク完全読本』に再録したジムとフェイヒーの対談でもあきらかである。というより、なまなかな理路に沿わないことがジョン・フェイヒーの存在をナゾめいたものにした一因であり、『ブラインド・ジョー・デスを探して』では、ピート・タウンゼント、ステファン・グロスマン、キャレキシコのジョーイ・バーンズ、ノー・ネック・ブルース・バンドのキース・コノリーら、世代も音楽性も異にするミュージシャンやジャーナリスト、レーベル関係者がフェイヒーとの逸話や魅力を語るのだが、語るほどに実体をベールがつつむように感じさせるのは、カントリー、ブルース、バルトーク・ベラやチャールズ・アイヴズやハリー・パーチなどの現代音楽からノイズにいたる音楽史を横たえた、生き馬の目を抜く都会と生き馬くらいしかいない田舎からなるアメリカのフォークロアを、フェイヒーは体現するからなのかもしれない。

 望むと望まざるとにかかわらず、ナゾは奥深く、いまだ解けない。私はジョン・フェイヒーは彼が自身をなぞらえた旧約聖書中の亀よりもそれはゼノンのいうアキレスと亀にちかいと思う。ひとつのパラドックスであり、聴く者にパララックスを求める。このたびの『ブラインド・ジョー・デスを探して』上映+ライヴはその掟の門の前に私たちを運んでくれることでしょう。(松村正人)

■ブラインド・ジョー・デスを探して ジョン・フェイヒーの物語

会場:渋谷UPLINK

6月13日(土) 15:30開場 / 15:45開演(17:45頃終演予定)
トーク+上映(出演:ジェイムス・カリンガム監督+湯浅学+樋口泰人)
予約¥1,800 / 当日¥2,300(共に1ドリンク¥500別)

6月14日(日) 16:00開場 / 16:30開演(18:30頃終演予定)
LIVE+上映(出演:ダスティン・ウォング)
予約¥2,500 / 当日¥3,000(共に1ドリンク¥500別)

6月14日(日) 19:30開場/20:00開演(22:15頃終演予定)
LIVE+上映(出演:武末亮、牧野琢磨)
予約¥2,500 / 当日¥3,000(共に1ドリンク¥500別)

6月15日(月) 19:00開場/19:30開演(22:00頃終演予定)
LIVE(出演:ジム・オルーク)+上映+トーク(出演:ジェイムス・カリンガム監督)
予約¥2,500 / 当日¥3,000(共に1ドリンク¥500別)

※ご予約はUPLINKのHP(https://www.uplink.co.jp/)よりお願いします

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