「NotNotFun」と一致するもの

 クリスチャン・フェネス、久々に〈Editions Mego〉からのリリースとなる新譜『ベーチュ』がいよいよ来週登場する。ele-kingでももちろんインタヴューを敢行! 後日の公開を待たれたし! だがそのまえに、音響とポップスの境界で取り組みをつづける日本の重要アーティストたち、小山田圭吾、坂本龍一、デイヴィッド・シルヴィアン、高橋幸宏、各氏のコメントが発表されているのでご紹介しよう。

クリスチャン、アルバム完成おめでとう。
美しいノイズのシャワーがいい気持ち! 小山田圭吾

ロマンティックやなあ! 坂本龍一

クリスチャン・フェネスの新しいアルバムには圧倒的な美しさがある。『エンドレス・サマー』の残響がこだまする、陽光が降り注ぐようなオープニング曲「Static King」、容赦なく無慈悲な「The Liar」、すばらしく壮大な「Liminality」、この3曲だけを取っても、『ベーチュ』はクリスチャンのこれまででもっとも力強い作品だといえる。

クリスチャンの作品は、うらやましいほど幅広い層に届いているようだ。そのラディカルな音の実験ゆえに、もしくは、それとは裏腹に、彼が手がけるほぼすべての作品における、パワフルに感情をかき立てる高潔さに魅了されるオーディエンスは増えるばかりだ。彼が用いるしばしば対立的な音の間の表面上の二分は寛容な心と結びつき、彼がソロやその他の作品の制作過程で取り除く感情の激しさについて何の弁解もせずに、彼をその先駆的な美的感覚に多様なコンテクストを見出すことのできる無二のアーティストたらしめている。まさに、彼の信奉者の多くが映画やダンス、演劇、ソフトウェア・デザイン、そしてもちろん、オーディオといった、横断的な芸術分野に存在しているように。

個人としては、クリスチャンは謙虚で物静かだがユーモアがあり、心の広い人間である。 表現者としての彼は、刺激的にダイナミックで、リスクをいとわない。彼の作品に通底する誠実さはもちろん、彼自身の中に存在するものなのだ。 デイヴィッド・シルヴィアン

フェネスを知ったのは、教授と彼との一連の仕事からだったと思う。しかしその音自体はYMOのライヴでの共演時に初めて、「あ、これがフェネスの音なんだ」と実感するまでよくわかっていなかったかもしれない。ただ実験的な音をだすギタリストと言ってしまうとかなりイメージが違うだろう。その複雑で静かな激しさと繊細さ等々…は、本当に彼独自のものだと思う。
このフェネスの新譜は、そんな音達がひっそりとしかし力強く溢れる、まさにアーティスト、フェネスの世界。
あのプレイ中の長身のたたずまい、愁い顔とよくマッチするなぁ……。(これは余談ですけどね……) 高橋幸宏

*コメントの無断転用を禁止します。


ついにクリスチャン・フェネス、2008年の『ブラック・シー』以来となるニュー・アルバム! フェネスの名を決定的なものにしたあのエポックメイキング作『エンドレス・サマー』(2001年)の流れを汲む、かつ同作をもしのぐあまりにも感動的な大傑作!!

HMV Tower
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FENNESZ 『Bécs』
フェネス/ベーチュ

¥2,500 + tax
14.04.28 in stores
解説付
日本盤のみのボーナス・トラック1曲収録

Tracklist:
1. Static Kings
2. The Liar
3. Liminality
4. Pallas Athene
5. Bécs
6. Sav
7. Paroles
8. Around The World*
*Bonus Track


Akkord - ele-king

 前回のレヴューで、ジャングルには、「音楽的にもまだ開拓する余地があり、横断的に、そしていろんなアプローチを取り入れることができるのだ」と書いた続き。
 遅ればせながら、僕は新世代ジャングルにハマっている。細かく断片化されて再構成されたパーカッシヴなブレイクビートの、言葉が舌に引っかかって出てこないようなまどろっこしさと、それとは相反して加速していくような滑らかさが同居しているという、ある種分裂的な感覚が実に気持ち良い。
 マンチェスターのアコードは、それをミニマル・テクノとうまい具合に調合する。

 さて、いま僕の隣にいる男が、アコードのふたりはシャックルトンからの影響が大きいとわめいている(彼は昨晩彼らと一杯やってきているのだ)。なるほど、たしかに、たしかにそうだ。それにしても、シャックルトンの影響がこういうかたちで表出するのか……。
 
 〈Houndstooth〉は昨年からファブリックがはじめたレーベルで、本作のリリースも2013年の冬、アルバムより半年ほど前に同レーベルから出している「Navigate EP」をいま聴くと──これまたごく個人的な興味の流れでリアルタムで追っている人には「何をいまさら」な話なのだが──リズムの組み方が新鮮に感じられる。
 シャックルトンのような、お化け屋敷で迷子になったような怖さはないが、フィリップ・K・ディックの描くまやかしの世界に迷い込んだかのようだ。風景が揺れているように感じるほど眩惑的で、ホアン・アトキンスともどこかで繋がっているのではと勘ぐらせる、マシナリーな、ロボティックなポスト・ダブステップ・ファンクといった風でもある。
 アコードのふたりは、いまちょうど来日中なので、興味のある方はぜひパーティに行ってみよう。東京公演は、日本人DJのラインナップも面白い。

 もう1枚、昨年のリリースで「何をいまさら」だが、とくに良いと思ったのはフレデリック・ロビンソンのデビュー・アルバムの『Mixed Signals 』。

 90年代にもジャングルはフュージョン/ブラジル音楽との接続を果たしたものだが、それはレイヴ・カルチャーが共同体に疲れて、なかばうんざりした時期におきた、離反と成熟から生まれたものだった。要は、それ相応の手続きと時間を要したのだが、この21歳のドイツ人青年は、そうした、いかにもシーンで揉まれてきたかのような汗や手垢の一切を感じさせないクリーンさで、しかし似たようなことをやっている。ロマンティックな美しいメロディと、こと細かく編集されたブレイクビートのドリルンベースで魅了したエイフェックス・ツインをフュージョンの側に寄せた感じだとでも言えばいいのか。しかもこの青年はひとりで、さまざまな楽器──鍵盤のみならずバイオリンまで──の演奏をこなしている。なんてクールなヤツだろう。

 ダンス・カルチャーには、フィリップ・K・ディックが『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』で描いたように、そこが楽園だと信じてあれこれ貪ったあげくに世にもおそろい目に遭うという側面がある。ゆえに……と言っていいのだろうか、ダンス・ミュージックには、おそらく直感的に、そこを楽園だとは思わせないような、ダークネスを敢えて描くところがある。
 アントールドやミリー&アンドレアの、暗い衝動を秘めたアルバムを聴き入ったあとでは、憎たらしいほどキラキラしていて、屈託のなさが気になるというか、気持ち良すぎて気持ち悪いのだが、耳に優しいのはフレデリック・ロビンソンだ。叙情に耽ることなく、清々しいまでに前進している。ああ、若いって良いナー。家聴きには最高のアルバムだし、僕は、初期のDJサッセや一時期のスヴェックのような、北欧系の、透明度の高いクラブ・サウンドを思い出す。
 本作は、下北沢のZEROに行けばまだ在庫があるかもしれないので、この音にピンと来た人は早めに駆けつけたほうが良いです。

 イギリスの批評家ベン・ワトソンによって2004年に著されたデレク・ベイリーの評伝の、待望の邦訳である。訳者はベイリーの名著『インプロヴィゼーション』の翻訳に携わったことでも知られる木幡和枝。奇しくも原書が刊行された翌年にベイリーはこの世を去っており、本書には彼の生涯のほぼすべてと言ってもいいだろう活動の記録が、500頁を超えるヴォリュームをもって収められている。いま「記録」とは述べたものの、スタティックで淡々と事実が列挙されるような伝記からはほど遠く、かといって通俗小説じみた物語の展開が為されるわけでもなく、ベイリーの著作における擬似対話形式を模したのだろうか、まるでこの希代の音楽家や彼と関係を有したさまざまな人物が傍らにいて語りかけてくるような構成を、本書はとっている。そのことを著者は「矛盾に満ち、論争的で、未完成の書物」への意図であり、つまりは「即興的で弁証法的な本」であると言うのだが、このことはベイリーの音楽に対して、たんなる読解を試みたのではなく、むしろ真っ向から立ちむかうような批評的視座をもって対峙しているのだということの、忌憚のない宣言だと受け取ることができるだろう。ともあれ、極東の小国で暮らすわたしたちにとって、即興音楽のパラダイムを突き崩したともいえる異端ギタリストの人生に肉迫できるような書物が刊行されたということは、それだけでもじゅうぶんに意義のあることだと言えるように思う。

 デレク・ベイリーは1930年にイギリスで生まれ、裕福でも貧乏でもないような労働者階級の家庭で育った。少年時代はクラリネットをはじめとして数々の楽器に親しんでいたという彼は、15歳のころミュージシャンである叔父の影響もあってギターを弾きはじめると、アメリカ合衆国の地下でジャズに革新をもたらし夭折していったギター奏者、チャーリー・クリスチャンの音楽に感応し、この楽器を奏することに没入していく。兵役を終え成年を迎えてからは商業的な音楽の世界に身を埋めていたものの、そこで出会った仲間とともに結成したジョゼフ・ホルブルック・トリオというグループでの活動が、ベイリーの音楽を唯一無二のものへと錬成し、さらにはコマーシャルな環境から脱する契機にもなったのだった。やがて各国の即興演奏家と盛んに交流するようになったベイリーは、集団をグループというかたちで拘束せず、なおかつ自発的な共演が潜在的に可能であるような創造の母体として、カンパニーという組織を率いるようになり、その演奏の場を毎年定期的に設けていくようになる。ベン・ワトソンの言葉を借りれば、それは「フリー・インプロヴィゼーションが一個のスタイルに固まってしまうのを阻止する試みであり、そのための丁々発止の場だった」のであるが、こうしたいわば音楽の未在を知ろうとする態度は晩年に至っても失われることはなく、肉体を蝕む病との「共演」も試みるなど、絶えず探究の途上に身を置きつづけたのであった。
 
 ベイリー・フリークならずとも、音楽に興味を抱くどんな人間の関心をも引いてやまないだろう小噺が満載の本書にあって、しかしその枢軸をなしているのはやはりこのギター奏者が切り拓いた「フリー・インプロヴィゼーション」という即興演奏の新たな領野を巡って織り成される思索の数々である。それは音楽を、音が生起する現場において具体的に聴取していくための方策であり、言語にたとえるならば「ノン・イディオマティック」な演奏つまりあらゆる語法から離れることによって可能になるのだとベイリーは言う。わたしたちは音楽を、そこで鳴り響く音そのものというよりも、それが歴史的社会的に醸成されてきた文脈において聴くということが、しばしばある。たとえばシャッフル・ビートとウォーキング・ベースを耳にするならば、すぐさまその音楽に「ジャズ」というラベルを貼り付け、そこで創出された音の総体を慣れ親しんだものへと暴力的に還元し、次にどのような演奏がなされるのか、あるいはその音楽にどのような価値を見出せるのかということを、聴取の過程をほとんど経ずに判断してしまうことだろう。喫茶店で断片的に接したBGMに「バード直系のバップ・スタイルね」と衒ってみせるように。このとき捨象されるのは、音を生み出すということ、すなわちその源泉としての演奏者の存在に他ならない。ベイリーはそれを音楽の体験に取り戻そうとしたのであった。

 このように考えると、わたしたちは同じように音が生成されるプロセスを音楽に組み入れようとしたもうひとりの人物を想起せずにはいられないだろう。ベイリーよりひとつ上の世代にいるアメリカ実験音楽の巨人ジョン・ケージである。だがケージが音をありのままにするために音楽に偶然性が発生するような環境を整備していったのだとすれば、ベイリーはむしろ真反対に「ノン・イディオマティック」な必然性を求めそして体現していったのであり、ついに音を手放すことはなかったのである。だからケージのレコードが彼の音楽の無数にある現象形態のひとつにすぎずそれを聴く体験がほとんど意味をなさないのとは異なって、ベイリーのレコードからは固有の響きを、あらゆる音楽様式を拒絶することで裸体となったギター奏者デレク・ベイリーそのものの痕跡を聴き取ることができる。もちろん、そうであるがゆえに、いまや誰もが知るようにベイリー風のアプローチというものがひとつのイディオムと化していることも事実ではある。しかし彼がまったくの自由を目指したのではなく、死の間際まで特定の弦楽器とそれを扱う自身の肉体に徹底的にこだわりつづけ、その上で「ノン・イディオム」を唱えたという意味を汲み取るならば、それは音楽の立脚点を、既成の文脈ではなくて、その時その場にしかあり得ないような実践する人間におくことによって、「楽譜や記録や体系に還元不可能な具体的な発語の結合組織」をそのつど生み出していったということではなかろうか。ならば情報に溺れ物語に翻弄される現代においてこそ、生きた音楽からけっして目を逸らすことのなかったデレク・ベイリーの足跡を、もういちどたどり直してみる必要があるとは言えないだろうか。

The Correspondents - ele-king

 エレクトロ・スウィングというUKでちょっとした盛り上がりを見せているシーンがある。スウィング・ジャズとハウス、ヒップホップ、エレクトロ・ダンスの交合によって生まれたこのジャンルは、90年代に出現してなんとなく消えたスウィング・ハウスの流れを汲むと言われているが、数年前から復活の兆しを見せており、わが街ブライトンはロンドンと並ぶその聖地に数えられている。
 2009年にこのジャンル専門の初めてのパーティ、ESC(エレクトロ・スウィング・クラブ)がロンドンに登場すると、それに呼応してブライトンにもホワイト・ミンク・クラブが現れ、ロンドンのESCとブライトンのホワイト・ミンクはUKエレクトロ・スウィング界の2トップになった。ブライトンに同性愛者やアナキストが多いということはこれまでも書いてきたが、ブライトンについて言われているもうひとつの要素としてクラブが多いということがあり、骨董の街ということもある。なのでエレクトロ・スウィングのメッカとなる地盤はあった。UKのイビサとも呼ばれるブライトンのクラブ文化と、骨董品屋や古着屋が立ち並ぶザ・レインをうろつくレトロな若者の文化が交合すれば、それはそのままエレクトロ・スウィングというジャンルそのものになる。
 んなわけで、ブライトンのホワイト・ミンクとロンドンのESCは、このジャンルのアーティストやDJをキュレートして様々なダンス・イヴェントを主催しており、The Correspondentsもその周辺から出てきたアーティストである。ロンドン在住のDJ Chucksとフロントマンのイアン・ブルース(この人は将来を期待される画家でもあり、Courvoisier社の「英国の未来を担う全業界混合500人」のひとりにも選ばれた)のデュオであるThe Correspondentsは、イヴニング・スタンダード紙に「キング・オブ・ヒップホップ・スウィング」と称された。その形容がぴったりだったEP「What's Happened to Soho?」を聴いたときには、わたしは少なからず動揺したのであり、“Washington Square”のPVを見たときには、「オスカー・ワイルドがラップしてる」と思ったものだった。

 同曲や“Jive Man”など6曲が収録された2011年リリースのEP「What's Happened to Soho?」は「これがエレクトロ・スウィングだ!」とジャンルを丸ごとぶち投げて来た点で、本当はあれこそが彼らのデビュー・アルバムになるべきだったと思う。というのも、待ちに待っていた彼らのファースト『Puppet Loosely Strung』は、彼らを以前から知っている(とくにステージ)人間からすると、「へっ?」な違和感があるからだ。
 これはおそらく、彼らがエレクトロ・スウィングという狭いサークルから卒業し、ポップ界への進出を宣言したアルバムなのだろう。だからこそスウィングのエレメントは希薄になり、代わりに80年代エレクトロ・ポップのフレイヴァーが色濃く加味されている。リスナー層を広げたいという野心が本来の持ち味を薄めたと思うと悲しいが、それでも『Puppet Loosely Strung』はここ数カ月間わたしが一番聴いているアルバムである。全くそこにある必要性を感じない冒頭曲をすっ飛ばして2曲目の“Fear & Delight”から聴けば、これはこれでやはり新しいムーヴメントの息吹を感じさせるし、昨年のMelt Yourself Down同様、理屈や薀蓄抜きでまず踊れるのがいい。『華麗なるギャツビー』のリメイク映画のサントラでブライアン・フェリー・オーケストラやウィル・アイ・アムもそれっぽいことをやっていたが、アンダーグラウンドなエレクトロ・スウィング・シーンの熱さを伝えるのはやはり彼らのような人々のサウンドだ。

 それと呼応するのかどうかはわからないが、日本では、菊地成孔がホットハウスというダンスパーティを主催していると聞いた。紙版エレキングで、ペペの新アルバムが『戦前と戦後』というタイトルであることを知り、そう言えば、スウィング・ジャズが流行したのも第二次世界大戦の直前だったのだよなあ。なんてことを考えていた。

          *******

 話は唐突に変わるが、4月前半は日本にいた。
 今回の帰省でこれまでにない衝撃を受けたのは、「(戦争は)100%ないとは言い切れない」と言った人がいたことである。
 スウィング・ジャズが流行したのは……。とまた眉間に皺を寄せて考えそうになったが、ふと、ケン・ローチの『The Spirit Of 45』のBGMにもスウィングが使われていたことを思い出した。終戦直後の英国人たちが、戦争に勝った名相チャーチルではなく、地べたの庶民のための政治を選んだピープルズ・パワーの時代にも、あの音が鳴り響いていたのである。
 そして今。
 21世紀のブロークン・ブリテンのアンダーグラウンドでエレクトロ・スウィングが鳴っている。
 と書くと過剰に浪漫的かも知れないが、そのサウンドをヒットチャートに入れる可能性を持ったアーティストがいるとすればThe Correspondentsだ。というのはしごく現実的なファクトである。

interview with Teebs - ele-king


Teebs
Estara

Brainfeeder/ビート

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 いったい何故にどうして、いつからなのか……。自分がどうしてこの地上に存在しているのかを考えたときに、倉本諒なら迷わず、ぶっ飛ぶためだと言うだろう。ティーブスにしろマシューデイヴィッドにしろ、そしてフライング・ロータスにしろ、LAビート・シーンの音は、どうにもこうにも、フリークアウトしている。それらは、「ビート」という言葉で語られてはいるが、サイケデリック・ミュージックとしての表情を隠さない。日本で言えば、ブラックスモーカー、オリーヴ・オイル、ブン、ダイスケ・タナベ、ブッシュマインドなどなど……。彼らはストリートと「あちら側」を往復する。
 ティーブスは、そのなかでもとくに内省的で、ひたすら夢幻的だ。僕は恵比寿のリキッドルームにあるKATAで開催中のTeebs展に行った。12インチのレコード・ジャケをキャンパスにした彼の色とりどりの作品がきちんと飾られている。幸いなことに平日の昼下がりでは、客は僕ひとりしかいなかったので、ゆっくり見ることができた。鮮やかな色彩で塗られらコラージュは、どう考えても、ピーター・ブレイクがデザインした『サージェント・ペパーズ〜』のアップデート版で、また、彼の音楽世界をそのままペインティングに変換しているかのようだ。ヒップホップのビートに液状の幻覚剤が注がれているのだ。
 ティーブスの新作『Estara』には、プレフューズ73、ラーシュ・ホーントヴェット(Jaga Jazzist)、ジョンティ(Stones Throw)、そして、シゲトも参加している。僕がKATAに展示された彼のアートでトリップしていると、Teebsはふらっと姿をあらわした。感じの良い、物静かな青年だ。

マッドリブの初期のものとか、カジモトとか。僕は当時12歳で、そんな変な音楽を聴いている12歳は僕だけだったと思う。かなり主流からは離れている音楽だけど、僕はそういうのが大好きだった。

生まれはブロンクスだそうですが、いつまでそこに住んでいたのですか?

Teebs:良く覚えていないんだけど、2歳くらいだったかな。

通訳:かなり小さいときだったんですね。

Teebs:そう、でも10歳くらいの時まで毎年NYには帰ってたんだ。親戚がいるからね。

どんなご両親でしたか? 

Teebs:母親は、クールで寛容な人だった。彼女は物書きで、ブラジルやバルバドスで起こっていたことなどを小さな出版社の雑誌に書いて世界を救おうとしていた。母親は、ジミヘンやカリブ音楽なんかを聴いてた、クールな女性だった。父親は数学者で、とても厳しい人だった。僕はあまり彼のことを知らなかった。でも、仕事熱心で家庭をしっかり支えていたからクールな人だったよ。

あなたにどんな影響を与えましたか?

Teebs:父親には勤勉さを教わったよ。僕が内向的なのも父親譲りだと思う。でもそのおかげで、自分の面倒がちゃんと見れるようになった。母親は「あなたのやりたいことをやりなさい」みたいな感じだったから、父親と母親両方からの影響で一生懸命に好きなことをやる、というバランスが上手く取れるようになったんだと思う。

日本盤の解説を読むと、ご両親が音楽好きで、レゲエやアフロ・ミュージック、ジミヘンなどを聴いていたそうですが、子供の頃のあなたもそうした音楽を好みましたか?

Teebs:母親がかけていた音楽で、アメリカの音楽は馴染みもあったし好きだったね。カリブ音楽は、まあまあ好きだった(笑)。当時、僕は幼すぎたからね。家では、夜中の3時までそういう音楽をかけてダンス・パーティをしていた。

通訳:それは子供にとっては刺激が強すぎますよね。

Teebs:その通り。「もう寝たいんだよ……」って思ってた。だから当時はまったく理解できなかった。大人になるまではね。いまではそういうリズムがどこからか聴こえてくると笑みがこぼれるよ。誰がかけてるんだろう? って気になっちゃう。

当時ラジオでかかっているヒット曲や最新のヒップホップ/R&Bのほうが好きでしたか?

Teebs:僕は87年生まれだから90年代だよね。ヒップホップが僕のすべてだった。変わったものが好きだった。僕には兄がいて、彼から色々教わったんだ。僕の年齢じゃ本当はまだ知るべきじゃなかったことなんかもね(笑)。兄の影響で、とても変わったヒップホップが好きになった。

通訳:例えばどんなのですか?

Teebs:変わっているというか、ポップ・ミュージックにはないような感じのもの。MADLIBの初期のものとか、QUASIMOTOとか。僕は当時12歳で、そんな変な音楽を聴いている12歳は僕だけだったと思う。マッシュルームを食って音楽を作っているやつの作品を聴いてる12歳なんて僕だけだったと思うよ(笑)。

通訳:12歳でQUASIMOTOとは、たしかに変わってますよね。

Teebs:うん、かなり主流からは離れている音楽だけど、僕はそういうのが大好きだった。当時そういった変わったヒップホップや、アンダーグラウンドなヒップホップは、あまり良い出来ではなかったのかもしれなけど、誰にも知られてなかったていうことが、僕にとってはクールだった。その世界にどっぷりのめり込んだね。

通訳:それはやはりお兄さんの影響?

Teebs:そう。だから、当時起こっていたクールなものは全て見逃した。Q-Tipが全盛期のときも、僕は「いや、でもSwollen Membersってのもいてさ……」なんて言ってた。

通訳:カナダのグループですよね。

Teebs:そうそう(爆笑)。そういう奴らにすごくはまってて……。

通訳:アンダーグラウンドな。

Teebs:うん。本当にそれがクールだと思ってた。だから、主流な音楽は全然聴いてなかった。Living Legendsがはじまった時期は、Circusなどの複雑なラッパーが好きで、それからラップをやっていたころのAnticonも好きだった。そしてDef Jux。Def Juxには僕の人生をしばらくのあいだ、占領されたね。あと、バスタ・ライムス。彼は一番好きだったかもしれない。初めて買ったアルバムはバスタ・ライムスのだったなぁ。

通訳:彼はポピュラーな人ですよね。

Teebs:そうだね。僕が聴いていたときも既に人気があった。でもファンキーですごく奇抜だった。

ずいぶんと引っ越しをされたという話ですが、どんな子供時代を過ごしたのか話してください。

Teebs:引っ越しが多かったから、兄と遊ぶことが多かった。僕の親戚はみんな東海岸なんだけど、東海岸に住んでいるとき、アトランタにいたときは従兄たちと遊んでいた。従兄たちがやんちゃだったから、一緒にバカなこともやってた。デカいTシャツを着てね(笑)。

通訳:まさに90年代ですね。

Teebs:うん。90年代、ヒップホップ、アトランタ。で、Wu-Tangをずっと聴いてた(笑)。そんな感じで適当に遊んでたよ。それからカリフォルニアに引っ越してチノに来た。そしたら、いままでの(東海岸の)感じとまったく違った。スケボーがすべてで、僕もスケボーにはまっていった。そのきっかけが、変な話で、ビギーの曲をラップしている奴がいて、僕もそのリリックを知ってたからそいつの隣に行っていきなり一緒にラップしたんだ。そいつは「え、お前だれ?」みたいな感じだったけど、一緒にラップしたんだ(笑)。ラップが終わって握手したら、そいつが「俺はこの町でスケボーやってて友だちもたくさんいる。お前も俺らのところに遊びに来いよ」って言ってくれた。

通訳:それでスケボーをやり始めたんですね。

Teebs:うん、スケボーをはじめて、スケボーのおかげで聴く音楽もさらに幅広くなった。単なる変わったラップ、アングラなものだけじゃなくて、変わったプロダクションの音楽なんかも聴くようになった。Mr. Oizoを初めてきいたのもそのとき。
 それからエレクトロニックなヒップホップを聴くようになり、その流れでエレクトロニック音楽を聴くようになった。友だちはロックにはまってるやつらもいて、AC/DCのカヴァー・バンドをやっていて、僕も一緒になってやってみたんだけど、上手くいかなかったな。見てのとおり、その方面では芽が出なかったよ(笑)。僕はあまり上手じゃなかったからバンドにも入れてもらえなかったくらいだ。

通訳:バンドでは何をやっていたの?

Teebs:ギターを弾こうとしてた。友だちはスケボーのロック/パンクな感じが好きだったみたい。だからその方面で音楽をやってみたけど、まあ、そんなにうまくいかなかった。とにかく、スケボーが全てを変えた。たくさんの音楽を知るきっかけになったよ。音楽がどんなにクールなものか、ってね。

通訳:私もスケーターカルチャーは大好きです。スケーターはみんなカッコイイですよね。

Teebs:スケボーをやる人はいろんなことがわかってる。普通の人が持つ人間関係の悩みなんかを、早々に乗り越えて、経験や開放性を第一にして生きている。

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90年代、ヒップホップ、アトランタ。で、僕はウータンをずっと聴いてた(笑)。そんな感じで適当に遊んでたよ。それからカリフォルニアに引っ越してチノに来た。そしたら、そこはがすべてで、僕もスケボーにはまった。


Teebs
Estara

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子供時代のいちばんの思い出は何でしょう?

Teebs:たくさんあるよ。バカなこともたくさんやった。僕が通っていた高校は新しくて、まだ建設中だったときがあった。僕たちが第一期生だった。最初は全校で30人しかいなかった。新設校だったんだ。まだ工事中だったとき、夜中に学校に行って鍵を盗んで建設用のゴーカートを乗ったりしてた。ゴーカートは家まで乗って帰るんじゃなくて、ただ乗りまわして遊んでた。それから、建設用の大型機械とかも乗ってたな。

通訳:ええ!?

Teebs:ああ、死にそうになったときもあったよ。そういうバカ騒ぎをやってた。

通訳:悪ガキだったんですね(笑)。

Teebs:いや、バカなだけだよ。小さな町で退屈して、何か面白いことをしたかっただけさ。そこに、機械の鍵があったから……
 そういう、バカなことをした思い出はたくさんあるよ。アキレス腱を切ったときもよく覚えている。血がものすごく出たんだ。スケボーをしていてガラスの上に転んだんだ。急いで病院に運ばれたよ。あれはクレイジーだった。

旅はよくしましたか?

Teebs:家族とは時々した。他の州に行く程度だけど。あと、ロンドンにも一度、家族で行った。それから母国のバルバドスとマラウイにも一回ずつ行った。とても美しい所だった。それはとても貴重な体験だったから、家計をやりくりして実現させてくれた両親は心から尊敬している。

画家を志そうと思ったきっかけについて教えて下さい。

Teebs:とにかく絵を描くことが好きだった。それから正直、兄の影響が大きい。兄はマンガが大好きで、アニメの絵を描くのが大好きだった。最初はグラフィティだったんだけど、次第にアニメにすごくはまっていっていた。僕たちはLAのMonterey Parkというエリアに住んでいたんだけど、そこに住んでいる黒人は僕たちだけだった。他はみんなアジア人。アジアって言ってもいろいろなアジア人がいて、中華系が一番多かったけど、日本のアニメやゲーム・カルチャーの影響はその町にも強く表れていた。僕と兄は、そういったアニメやゲームの世界に囲まれていた。ゲーセンに行ってバーチャルな乗り物に乗ったりして遊んでた。
 兄は当時からクールなキャラクターの絵を描いていた。兄を見て、アートを通してアイデアを絵にして置き換えることができるのは、クールだと思った。素晴らしいことだな、と思った。自分でもやってみようと思った。僕たちは引っ越しが多かったから、友だちを作るのが結構大変だった。だから兄にいつもくっついていたんだけど、彼には「あっちいけ!」なんて言われてたから、ひとりで遊ぶようになった。アイデアを考えてストーリーを生み出し、それを絵にすることができるんだ、と思ってペンを使って自分のヴィジョンを見つけることにしたのさ。

ちなみに何歳から画家としての活動が本格化したのでしょう?

Teebs:2005年。高校の終わりの頃。スケボーショップでバイトしていて、僕は店でもいつも落書きしてた。そしたらショップのオーナーが、店で展示会をやらないかと言ってくれた。それがきっかけで、画家としての活動をすることになった。小さな町で展示会をやった。そしたら人からの反応があった。「すごいよ、これ!」なんて言ってくれた。びっくりしたけど、そこからもっと絵を描きたくなって、それをコミュニティのみんなと共有したかった。

あなたのペインティングは、抽象的で、ときには具象的なコラージュを使います。色彩にも特徴があります。あなたのペインティング表現に関しての影響について話してもらえますか?

Teebs:中世の作品、宗教画などがすごく好き。ヨーロッパの大昔の絵。昔のキリスト教のアート。そういったものの影響はとても大きい。色彩が鮮やかなところがすごいと思う。
 宗教画を見ると、「教会に毎日来ないと神から罰せられるぞ!」というメッセージが強烈に伝わってくる。その信仰心というのはすさまじくて、狂信的なほどの信仰心から生み出される作品というのは、本当にクレイジーだ。その作品に注がれる感情も強烈だ。その真剣な姿勢がとても好きだった。構成も好きだった。初期の大きな影響は宗教画。それからスケボーがアートに影響を与えた。いまは、なんだろう、人生という大きなかたまりかな。

あなたにとって重要な主題はなんでしょう?

Teebs:人とコミュニケーションが取れるポイントを、なるべくストレートな物体を使わずに、見つけて行くこと。なるべく意味のわからないものを使って。線や記号だけを使って、人に語りかけたい。そのアプローチが気に入っている。「より少ないことは、より豊かなこと」みたいな。自分自身を作品に登場させるのも好きだし、観察者を作品の中に描写するのも好き。その概念でいろいろ遊んでみる。例えば、今回のレコード・ジャケットの展示で、4本線は人を表している。作品の中に4本線があるときがある。それは僕にとって大切で、自分や家族を表している。「U」の記号は、他の人を表す。それも頻繁に使われている。作品を見てまわると、結構見えてくるよ。そういうシンプルな形やマークを使うのが好きなんだ。

ファースト・アルバムのアートワークにも、今回のジャケにも使われていますが、青、赤、緑のリボンのようなペイントは何を意味しているのでしょう?

Teebs:円の中にそれがたくさんあったら、自由形式というか体を自由に動かしている、ということ。あれは僕のしるしのようなもの。僕が頭のなかをスッキリさせているとき、リラックスしているとき、パレットを白紙に戻すというとき、その絵が出来る。それを描くことによって、自分の中にあった緊張やストレスが緩和されていく。心身のバランスが取れて、安心した気分になる。

あなたが花のモチーフを好むこととあなたの音楽には何か関連性があるように思いますが、いかがですか?

Teebs:関連性はあるかもしれない。花をアートのモチーフに使う理由と、自分が音楽をつくる理由とでは結構違いがあるけど、花が生れて形を変化させながら成長して枯れる、というのは音楽と共通するところがあるかもしれない。音楽も一時的に開花して、その後は徐々に消えて行くものだから。そのパターンは似ているかもしれない。

LAにはいつから住んでいるのですか?

Teebs:LA中心部に移ったのは2009年。チノには2001年からいたけど、LAの中心部に引っ越したのは2009年。

では、音楽活動をするきっかけについて教えてください。

Teebs:最初は兄のためにヒップホップのビートを作ろうとしたのがきっかけ。クールだと思ったんだ。兄はラップができたんだけど、僕はできなかった。だから僕はビートを作ろうと思った。

通訳:ではお二人でデュオをやっていたとか?

Teebs:いいや。兄は、兄の友だち同士で音楽活動をしていた。彼の友だちと一緒に制作をしていた。兄は多方面に活動している人だった。僕は、音楽を制作するということに興味を持ち始めていた。でもひとりでビートを作っていただけ。ビートを兄と兄の友だちに提供していた。それが音楽活動のきっかけだね。

通訳:いまではエレクトロニックな音楽を作っていますが、ヒップホップからエレクトロニックへと進化していったのは、やはりクラブへ行きはじめたからでしょうか?

Teebs:そうだよ。最初は、音楽の表現方法を深めるために、いろいろな音楽を聴いた。それから、クラブにも行きはじめた。その両方をしているうちに、サウンドでも自分のアイデンティティを確立していきたいと思うようになったんだ。ヴィジュアルな要素で、自分のアイデンティティを確立していくのと同じようにね。

どのようにしてLAのシーンと関わりを持つようになったのでしょうか?

Teebs:最初はDublabを通じてだね。〈Brainfeeder〉にも所属しているMatthewdavidがMySpaceで「君はクールだね、俺たちと一緒に音楽をやろうぜ」と言ってくれた。当時、LAシーンは既に盛り上がっていたけど、僕はまだチノにいたから、シーンのみんなとはMySpaceを通じて知り合った。

通訳:MySpaceに音楽をアップしていたんですね。

Teebs:うん。で、「君はクールだね」と言われた。僕もDublabはクールだと思ってたから嬉しかった。そこから、お互い、音楽をメールで送るようになった。それからDJ Kutma。彼のおかげでLAシーンと繋がり、LAの皆に僕のことを知ってもらうことができた。

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高校の終わりの頃。スケボーショップでバイトしていて、僕は店でもいつも落書きしてた。そしたらショップのオーナーが、店で展示会をやらないかと言ってくれた。それがきっかけで、画家としての活動をすることになった。小さな町で展示会をやった。


Teebs
Estara

Brainfeeder/ビート

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Teebsという名前の由来は?

Teebs:たくさんのニックネームを経てTeebsになった。僕の本名はMtendere(ムテンデレ)というんだけど、その名前を見るとMがtの前にあるから、発音がむずかしいと思われてしまう。マラウイの言葉で「Peace(平和)」と言う意味なんだ。チェチェワ語というんだけど、チェチェワ語の名前にしてくれてよかったよ。だって英語で「Peace」なんて名前だったら恥ずかしいだろ? 「Peace、お前、世界を救ってくれるのか?」なんて言われそうだ。とにかく僕の本名はそういう語源なんだけど、Mがtの前にあるから、みんな覚えにくいし言いにくい。だからニックネームになった。で、いつかTeebsになって、それがいまでもニックネームになってる。

通訳:Teebsは気に入っていますか?

Teebs:もちろんだよ。でも本名も好きだ。発音するのが難しくなければいいのにと思う。でもTeebsは楽しいし、人が発音しても楽しいし、僕の名前で遊んでもらっても楽しい。いまでも使っているのは気に入っているからだよ。本当はTeebsになった裏にはストーリーがあって、グロいから、いつか、オフレコで話すよ(笑)。

初期の頃にデイデラスとスプリット盤を出したのは、やはり彼の音楽にシンパシーを感じたからでしょうか?

Teebs:デイデラスは本当に大好きで、エレクトロニック音楽のプロダクションに興味を持ちはじめたのは、彼の音楽を聴いたからなんだ。普通のヒップホップのビートとは全く違うものだった。デイデラスのライヴを見て、すごく興奮した。そして、ダンスっぽいビートを作って彼に送ったんだ。友だちも、彼ならとくに気に入ってくれるかもしれないと思ったほどだから。何ヵ月も彼からの反応はなかった。だから、もしかしたらすごく嫌だったのかも、と心配した。ようやく彼から連絡があって、「最高だよ、毎日かけてる。一緒に音楽を作ってみようぜ」と言ってくれた。それから〈All City〉が声をかけてくれて「デイダラスと一緒に音楽制作をしないか」と言われた。すでに、デイダラスと音楽を作っていたところだったから、本当に良いタイミングだったよ。

通訳:デイデラスとは既に友だちだったんですね。

Teebs:ああ、かなりよく知っている方だった。でも、彼は西に住んでいて、僕は東というかチノに住んでいたから実際に会う機会は少なかったけどね。

Teebsの音楽にはビートがありますが、非常にドリーミーで、日本でもボーズ・オブ・カナダを聴いているようなリスナーから支持されています。ヒップホップ以外からの影響について話してもらえますか? とくに今回のアルバムには、ジャガ・ジャジストのラース、イタリアのポピュラス、シゲトなど、さまざまなスタイルのアーティストが参加していますよね。

Teebs:エレクトロニック音楽の影響は大きかった。ボーズ・オブ・カナダは、僕が音楽をはじめてからずいぶん後に知ったんだ。ボーズ・オブ・カナダを聴いたときは、「クールな音楽をやっている人がいるんだな!」ってびっくりしたよ。Dabryeの初期の作品はクールだった。ヒップホップ色が最近のものより少なかった。あとは、Vincent Galloの古い作品とかも良いね。他は、ギターだけで作られた、Bibioの初期の作品。きれいな音楽をたくさん聴いていた。ヒップホップとバランスをとるためだったのかもしれない。

通訳:ではヒップホップとエレクトロニカは同時期に聴いていたのですね。ヒップホップからエレクトロニカへと移行したのではなく。

Teebs:ヒップホップが先だったけど、それにエレクトロニカを追加した。ヒップホップは大好きだった。それから西海岸ではインディ・ロックも人気だった。IncubusとかNirvanaとか、そういのにもはまってたね。

エレクトロニカ/IDMスタイルの音楽でとくに好きなモノは何でしょう?

Teebs:いまはとくにいない。誰かを聴いて、ものすごく興奮するというのは最近ないな。

通訳:では過去においてはどうでしょう?

Teebs:ドイツの二人組がいて、Herrmann & Kleineというんだけど、かなり変態。Guilty pleasure(やましい快楽)って言うの?

通訳:ドイツのエレクトロニカですか?

Teebs:そう。ストレートなエレクトロニカで、しかもかなりハッピーなサウンド。自分の彼女にも、それが好きなんて言わない(笑)。Herrmann & Kleineは密かに好き。それからコーネリアスもすごく好き。彼の音楽を聴いたときはぶったまげた。すごくクリエイティヴで遊び心に溢れてる。でも音楽的にも、とてもスマート。彼は天才だよ、大好き。

プレフューズ73との出会いについて話してもらえますか?

Teebs:インターネットなんだ。それから、プレフューズ73がLAに来たときに、友人に紹介してもらった。Gaslamp Killerとプレフューズ73が一緒にショーをやって、その時に友人が僕たちお互いを紹介してくれた。それ以来、彼とは連絡を取り合って、彼のアルバムのアートを僕が描いたんだけど、そのアルバムは結局リリースされなかった。すごく楽しみにしていたのに残念だったなぁ。プレフューズ73も「あのアルバムについては悪かった。最後で意向が変わったんだ。その代わりと言ってはなんだが、次のアルバムは音楽の面で一緒に作業できたらと思う」と言ってくれた。なのでギアをアートから音楽に切り替えて、一緒に音楽を作った。

テクノのDJ/プロデューサーでお気に入りはいますか?

Teebs:テクノの人の名前は全然知らない。でも最近はテクノやハウスについてたくさん学んでいるところ。僕にとってテクノは、家で聴く音楽でもないし、誰が好きと言ってその人の音楽をフォローする感じでもないし、自分でコレクションを持ちたいというわけでもない。だけど、クラブで誰かが、かっこいいテクノをかけていると、メロメロになっちゃって、クラブで酔っぱらいながらそのDJに「あんた、すげえカッコイイなあ〜!!」なんて言っちゃう。ブースのそばでめちゃくちゃ興奮してるやつ、よくいるだろ? 僕はそうなっちゃうタイプでね(笑)。

通訳:好きではあるんですね。

Teebs:大好きだよ。自分がその音のなかにいるのが好き。次の展開が読めずに音をそのまま楽しむのがすごく楽しい。

ドリーミーと形容されるとのとサイケデリックと形容されるのでは、どちらが嬉しいですか?

Teebs:言葉としては、サイケデリックという言葉はとにかく最高だよね。でも僕の作る音楽はどちらかというと、サイケデリックというより、ドリーミーだと思う。でも、僕も、もともとはサイケデリックな音楽を聴いていたから、サイケデリックのほうが嬉しいかな。でもどっちでもいいや(笑)。

新作の『エスターラ』というアルバム・タイトルの意味を教えて下さい。

Teebs:Estaraは、僕がアルバムを作っていたときに住んでいた通りの名前。言葉として、とても美しと思った。言葉の意味を調べていくうちに、スペイン語の「〜である(Esta=To be)」だとわかった。「〜である」というのは、物理的にそこにいる、という意味と、その時の精神状態という意味がある。僕のファーストアルバムを振り返って、今回のアルバムを合わせると、円を一周して、元の位置・状態に戻る、ということになる。以前の状態を経て今回の状態へとなる、という意味なんだ。

曲が、“Piano Days”〜“Piano Months”と続きますが、今作におけるピアノの意味について教えて下さい。

Teebs:ピアノの美しさや簡潔さを表現したかった。本当に素敵な楽器だ。

通訳:ピアノは弾けるんですか?

Teebs:ああ、遊び感覚ではよく弾くよ。君をうっとりさせるほど、ちゃんと弾けるわけではないんだけど(笑)、僕とピアノとしばらくの時間があれば、何らかのものは生れてくる。“Piano Days”〜“Piano Months”と一緒にしたのは、理由があって、このアルバムはリスナーにとって、口直しのようなものであってほしいと思っている。このアルバムを聴いて、頭がスッキリして、心身ともに白紙な状態に戻ってもらえたらいいと思う。“Piano Days”を聴いたあとに、リスナーにもう少し、そのアイデアの余韻に浸ってもらっていたかったから“Piano Months”を次に持ってきた。

“Hi Hat”、“NY Pt. 1”、“NY Pt. 2”など、シンプルな曲名が良いのは何故でしょう? 

Teebs:直接的だから。なるべく直接的であるようにしている。物事もなるべくシンプルであるのが良いと思うから。

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デイデラスは本当に大好きで、エレクトロニック音楽のプロダクションに興味を持ちはじめたのは、彼の音楽を聴いたからなんだ。普通のヒップホップのビートとは全く違うものだった。デイデラスのライヴを見て、すごく興奮した。


Teebs
Estara

Brainfeeder/ビート

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同じアメリカですが、カニエ・ウェストやファレル・ウィリアムスのような文化と、あなたがたの文化との大きな違いはどこにあるのでしょう?

Teebs:カニエの文化は、オーディエンスが大勢いるからそれに対応してアイデアやサウンドを表現していかなければいけない。そして、もっとポップの要素がたくさん入っている。それに比べて、僕たちの文化はもっと実験的で、ゆるくて、独特だ。僕たちの文化から生み出される良いアイデアが、フィルターを通して彼らの文化に表れている。そういう仕組みだと思う。みんな、僕たちの世界をのぞいて良いアイデアがないかと探す。それを彼らのプロダクションに活かすというわけさ。

通訳:それに対して否定的な感情はありますか?

Teebs:いや、ないよ。僕の作品から何かを取ったと聞いたら、それは一種の称賛として受け止める。僕がやっていることが評価されて取られているわけだから称賛だと思うね。本当にそっくりそのまま盗まれていたら否定的になるけど、それ以外だったら自分が正しいことをしているという意味だから、いいや。金のことはあんまり気にしない(笑)。

今後の予定を教えて下さい。

Teebs:Obeyの服のラインから洋服をリリースする。それは夏には出ると思う。とても楽しみにしている。プレフューズ73とは今後も、さらに一緒に制作をする予定。アメリカでアートの展示会をやる予定で、海外でも、もう何カ所かでやろうかと考えてる。去年、あまり活動的じゃなかったから、今年はいろいろな分野で活動していきたいと思っているよ。

※朗報! 5月23日、フライング・ロータス率いる《ブレインフィーダー》のレーベル・パーティーが史上最大スケールで日本上陸!

FLYING LOTUS
THUNDERCAT
TEEBS,
CAPTAIN MURPHY
TAYLOR MCFERRIN
MONO/POLY
AND MORE …

2014.05.23(FRI) 新木場ageHa
OPEN/START 22:00 前売TICKET¥5,500
※20歳未満入場不可。必ず写真付き身分証をご持参ください。
YOU MUST BE 20 AND OVER WITH PHOTO ID.
企画制作:BEATINK 主催:SHIBUYA TELEVISION 協賛:BACK CHANNEL

www.beatink.com

Flying Lotus (フライング・ロータス)
エレグラ2012、昨年のフジロックと急速に進化を続ける衝撃的オーディオ・ヴィジュアルLIVE『レイヤー3』、次はどこまで進化しているのか?その眼で確かめよ!

Thundercat (サンダーキャット)
昨年の来日公演でも大絶賛された天才ベーシストのバンドによる超絶LIVE!強力なグルーブとメロディアスな唄を併せ持つ極上のコズミック・ワールドへ!

Teebs (ティーブス)
1台のサンプラーから創り出される、超絶妙なグルーブ感と限りなく美しいアンサンブル。真のアーティストの神業に酔いしれろ!

Taylor McFerrin (テイラー・マクファーリン)
ロバート・グラスパーやホセ・ジェイムズと共演するなど、その実力でデビュー前から大注目を集めるブレイク必至の逸材が、遂にアルバムと共に来日!

Mono/Poly (モノ/ポリー)
超ヘビーなベースに、コズミックなサウンドスケープとグリッチなHIP-HOPビーツで注目を集める彼が遂に来日!

and more...

WATER(POOL):BRAINFEEDER DJs ステージ
● ブレインフィーダー所属のアーティスト達などによるDJ!

BOX(TENT):JAPANESE DJs ステージ curated by BRAINFEEDER
● ブレインフィーダーがキュレーションし選んだ日本人DJ達によるステージ!

ISLAND [メイン・バー&ラウンジ]:
BRAINFEEDER ON FILM& BRAINFEEDER POP-UP SHOP

● Brainfeeder On Film:映像作品上映エリア:ブレインフィーダーにゆかりの深い映像作品を一挙上映
● Pop-Up Shop:CDやアナログはもちろん、レーベルや関連アーティストのレアグッズを販売!
  この日しか買えないプレミアム・グッズも!
● Back Channel:人気ブランドBack ChannelとBrainfeederの限定コラボTシャツを販売!

ART:[LIVE PAINTING]&[EXHIBITION]
● ブレインフィーダー関連アート作品などの展示やライブ・ペインティングを展開!

※各ステージの更なる詳細は後日発表予定!

TICKET INFORMATION
前売チケット:¥5,500
●イープラス [https://eplus.jp]
●チケットぴあ 0570-02-9999 [https://t.pia.jp] (Pコード: 225-408)
●ローソンチケット 0570-084-003 [https://l-tike.com] (Lコード:72290)
●tixee(スマートフォン用eチケット) [https://tixee.tv/event/detail/eventId/4450]
●disk union (渋谷クラブミュージックショップ 03-3476-2627 /
新宿クラブミュージックショップ 03-5919-2422 /
下北沢クラブミュージックショップ 03-5738-2971 / 吉祥寺店 0422-20-8062)
●BACKWOODS BOROUGH (03-3479-0420)
●TIME 2 SHOCK (047-167-3010)
●FAN (046-822-7237) ●RAUGH of life by Real jam (048-649-6866)
●LOW BROW (042-644-5272) ●BUMBRICH (03-5834-8077)
●NEW PORT (054-273-5322) ●O.2.6 (026-264-5947)

【ビートインクWEB販売】>>> beatkart (shop.beatink.com)
[BEATKART限定!BRAINFEEDER4特製アート・チケットをお届け!!]

※20歳未満入場不可。必ず写真付き身分証をご持参ください。You must be 20 and over with photo ID.

[ INFORMATION ]
BEATINK : 03-5768-1277 / info@beatink.com
https://www.brainfeedersite.com/
企画/制作:BEATINK 主催:SHIBUYA TELEVISION 協賛:BACK CHANNEL
www.beatink.com

interview with Bing Ji Ling - ele-king


Bing Ji Ling
Sunshine For Your Mind

Rush Productions / AWDR/LR2

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 ビン・ジ・リンの『サンシャイン・フォー・ユア・マインド』の売れ行きが好調のようだ。アコギの透明な音と彼の美しい歌声は、敵を作らないというか、多くの人に親しみやすいもの。トミー・ゲレロのバックを務めながら、地味~に自身の手によって自身の作品を発表してきた彼だが、いまではすっかりソロ・アーティストとしての人気をほこっている。

 そこで彼が歌っているのは、ドナ・サマーやリル・ルイスといった人たちのダンス・ミュージックの古典、そしてプリンスやシャーデーなどの80年代ポップスのカヴァーだが、カヴァーであることさえ気がつかないほど、『サンシャイン・フォー・ユア・マインド』はビン・ジ・リンの綺麗な歌声を聴かせるように作られている。

 もっとも、ギターの弾き語りが魅力のこの男がクラブでDJもすることはあまり広くは知られていない。スキルもしっかりある。日本のクラブでも過去プレイしているが、そのときもオーディエンスを驚かせている。彼がドナ・サマーやリル・ルイスの曲を弾き語りでカヴァーするのも、彼の音楽人生を振り返れば意外なことではなかったと言えるのだろう。
 現在NY在住だが、若い頃に西海岸のレイヴ・カルチャーの洗礼を浴びた彼に、ダンス・ミュージックの思い出を語ってもらった。なかなか興味深い話になったので、ダンス・カルチャー全般に関心がある人にも読んでいただきたい。『サンシャイン・フォー・ユア・マインド』がMORのバレアリック版かどうか……判断は読者に委ねよう。

初めてレイヴに行った1993年は僕にとって大きな年だった。会場はサンフランシスコからハイウェイ1に乗って、1時間くらい離れた、まわりに何もない場所にあるビーチだった。つまり、すべてから自由な場所だった。

『サンシャイン・フォー・ユア・マインド』で、あなたはクラブ・ミュージックの有名な曲をカヴァーしていますが、どんなふうにあなたがダンス・カルチャーと出会い、そしてどのように関わっていったのかを今日は教えて下さい。

ビン・ジ・リン(以下、BJL):とっても面白い話だよ。そして、本当の話でもある。僕が若かった頃、たぶん高校生だったと思うけど、ラジオでソウルllソウルなど80年代のものを聴いていたけど、ダンス・ミュージックの歴史なんて知らなかった。ダンスとの出会いはそれよりもっと前の1980年で、僕は1972年生まれだから、当時8歳くらいだったと思う。その年にYMCAのディスコ・ダンス教室に連れていかれたんだけど、それが僕のディスコを理解するようになったキッカケだね!

8歳ってすごいですね(笑)。

BJL:高校生のときはアンダーグラウンドのダンス・ミュージックはあまり知らなかった。最初に衝撃を受けた80年代のグループはソウルllソウルで、初めて聴いたときに「なんだこれ!?」ってなったよ。あのサウンドが大好きだった。そうやって学んでいったんだ。
 それで1993年のサンフランシスコで、ウィキット・クルーのレイヴ・パーティに行った。クルーのメンバーはトマス・ブルック、DJガレス、イエノそしてマーキー。彼らはイングランドのケンブリッジ出身で、 80年代後半イギリスのアンダーグランドのレイヴ畑からやってきた。彼らはDJハーヴィーのイベントによく行っていた。DJハーヴィーはイングランドでは早くから活動していて、彼らがそのイベントに出入りしてたのは80年代後半だったと思う。そして1991年に彼らはイングランドからサンフランシスコにやってきて、イングランドと同じスタイルの、つまり良い感じのレイヴ・パーティをはじめたんだよね。

当時のヨーロッパにおけるレイヴ・カルチャーはよく語られていましたけど、アメリカのレイヴについてはあまり聞いたことがなかったので、興味深い話ですね。

BJL:だろうね。ウィキット・クルーのパーティはすごくアンダーグラウンドだったんだ。彼らはいま、その頃のシーンについてのドキュメンタリーを作ってるよ。そのレイヴ・パーティーはサンフランシスコでとても影響力があった。なにしろ、DJハーヴィーを崇拝してたような輩がはじめたんだからね。

今回の新作でリル・ルイスやドナ・サマーのような、ディスコやハウスのクラシックのカヴァーを歌ってますけれども、あなたのようなシンガーがダンス・ミュージックからどんなインスピレーションを得たのかと。

BJL:初めてレイヴに行った1993年は僕にとって大きな年だった。会場はサンフランシスコからハイウェイ1に乗って、1時間くらい離れた、まわりに何もない場所にあるビーチだった。つまり、すべてから自由な場所だった。そこで別の惑星からやってきたみたいなサウンドシステムがアシッド・ハウスを流していて、みんなエクスタシーをやってた。「おいおい、なんだよこれは!?」って感じだったよ(笑)。

はははは、そのときのフィーリングをいまでも保ち続けていると思いますか?

BJL:もちろんだよ! いまはそのフィーリングを当時とは違ったふうに捉えているけどね。当時はみんなレイヴに感動していたし、エキサイトして幸福になりたいと思っていた。いまでもそのことを大切にしているよ。

レイヴを体験して、DJをはじめたりとか、打ち込みでダンストラックを作ろうとは思わなかったんですか?

BJL:1993年から最初の5年くらいは、レイヴやクラブにただ踊りに行っていた。ただ音楽を聴きたかったし、パーティにも行きたい年頃だったんだ(笑)。単純に楽しんでいたかったし、実際、最高に楽しかったよ。
 1998年から1999年のどこかで初めてターンテーブルを手に入れた。DJは趣味としてやっていたね。DJをやっている友だちはたくさんいた。そして、彼らはみんなプロとして活動していたよ。
 いまは誰でもDJになれるよね? 当時はDJになるためには、レコードをたくさん持っていること、良いレコードを持っていること、そしてそれらを上手くプレイすることが必要条件だった。もちろん、僕もレコードを持っていたけど、彼らの前では恐れ多かったね。DJをやっている彼らに比べたら、僕のレコードの数は不十分だったから、自分にはDJはできないと思った。

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最近流行っているEDMみたいなのをやっている人たちはデヴィッド・マンキューソやパラダイス・ガレージさえも知らないよ。彼らは自分自身についてしか興味がないし、そこにはルーツや歴史が欠如しているんだよ。


Bing Ji Ling
Sunshine For Your Mind

Rush Productions / AWDR/LR2

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DJハーヴィとマンキューソのどこが好きなんでしょうか?

BJL:ふたりともどんなスタイルの音楽でもプレイするから好きだね。彼らを好きな理由は共通している。マンキューソは年上だし重要な人物だ。そして、ハーヴィはマンキューソから多くを学んでいる。彼らがプレイすると、すべての音楽を聴いている気分になる。例えばさ、ふたりのプレイって、(低い声で)ドゥー、って鳴っているとするといきなり、(高い声で)キュイーンってなったりするだろ? そういうダイナミックさも良いよね。ふたりともプレイの幅は広く、ダイナミックでセンスも最高。彼らのプレイを聴いているときは、ジェットコースターに乗っている気分になる。途中で帰りたくても帰れないんだ(笑)。

子供たちを正しい道に導くためにあなたに是非話して欲しいことなんですけど(笑)、EDMとDJハーヴィやマンキューソとはどこが違うと思いますか?

BJL:残念だけど、違いはたくさんあるね(笑)。

(一同笑)

BJL:思うに一番大きい違いはこうだね。例えばさ、どんな時代でも偉大な芸術家になるためには、自分が使う媒体の歴史を理解しなきゃいけない。もし画家だったら、描くことについてたくさん知っていれば、よりよい画家になれる。歴史の全てを知っている必要はないけれど、それを認識してなきゃダメだよね。最近流行っているEDMみたいなのをやっている人たちはデヴィッド・マンキューソやパラダイス・ガレージさえも知らないよ。彼らは自分自身についてしか興味がないし、そこにはルーツや歴史が欠如しているんだよ。
 EDM以降の新しいDJたちは本当にクリエイティヴなことをやっているし、彼らは自分たちが使う媒体の歴史を深く理解している。僕はそういうふうにプレイしなきゃだめだとは言わないけど、少なくとも認識はしておく必要はあると思うんだよね。マンキューソと同じようにやれっていうわけじゃない。ダブステップをやるんだったら、少なくとも彼がどういう人でどういうパーティをしていたか認識をしていたほうが良いっていうことだよ。

僕もその意見に賛成します。

BJL:ありがとう。

……ですが、他方で、歴史を知ることがそんなに重要なのかという考えもあります。なぜあなたは、歴史を知ることが重要だと思いますか?

BJL:たくさんのことが歴史から学べると思うんだ。自分の能力について、自分が何をしているのか、自分のアートフォームについてとかさ。過去を振り返れば、新しいもののどこが問題かにも気付くことができる。ただ、一番重要なのは、歴史との繋がりがなくなってしまうということだよ。これは音楽に限ったことじゃなくて、いまの世のなかのすべてに言えることだと思う。音楽において言えば、歴史の欠如が、ミュージシャンと音質やダイナミクスについての繋がりを断ち切っているんじゃないかな。歴史を知っていれば、そういうところに自ずと繋がっていくもんだよ。建築にしても、料理の作り方にしてもさ、いまは機械で大量生産しているよね? 歴史を学ばず、簡単に作れてしまう。そのせいで、最悪な料理を口にするようになったんだよ(笑)。

そうすることでボロ儲けている人がいるからなんでしょう。話は変わりますが、美しい歌声を持っていながら、もっと早い段階で、90年代にシンガーとして作品を発表しなかったのは何故なんですか?

BJL:アリガトウ。高校時代にバンドで演奏し、大学でもバンドをやっていた。それらのバンドでレコーディングもしたんだけど、2003年になるまで作品を発表する機会がなかったんだ。90年代はいまと音楽業界も違っていたからね。当時はレコード会社と契約しなければ作品をリリースできなかったから、iTunesにどんどん曲をアップするわけにもいかなかった。だから歌ってはいたけど、リリースに至らなかったんだ。90年代には3つのバンドに在籍してデモテープも作っていたけど、発売することはなかったね。

なるほど。あなたは自分で、自身のキャリアについてどう思っているんですか?

BJL:まあ、そうだよね(笑)。そりゃ、90年代のときから音楽を作りたかったし、挑戦はしていたよ! 自分のバンドもあったし、ギグもこなしていた。デモを作って、曲を書いてさ。だって、それがやりたいことだったからね。実はいくつかのレコード会社と契約する機会はあったんだ。でも、レコード会社が僕たちのことをコントロールしようとしていたから断った。会社はなんでもやろうとするし、取り分とかもおかしかったからさ、「結構です。全部自分でやりますよ。」って具合にね。
 だから、僕は、結局、自分のレコードを自分で録音して、自分でリリースもしたし、自分でアートワークもやったよ。僕はすべてを自分の力でやった。ショーのプロモーションとかもね。そうやりはじめて7年になるけど、そうしたら自分のバンドが人気になって世界に出れるようになった。だから質問の答えは、僕のキャリアは長くて険しい道だった、ということだね(笑)。やっと自分の音楽をリリースできるようになって、ツアーもできるようになったから、とても楽しいよ。

ビン・ジ・リンはアイスクリームという意味ですが。あなたの音楽はまさにアイスクリームのように甘い音楽だと思います。

BJL:ワオ。ありがとう!

なんでアイスクリームという意味の名前をつけたんですか?

BJL:実は自分で名付けたわけじゃなくて、上海にいたときにみんながビン・ジ・リンって呼ぶようになったんだ。上海で最初にライヴをしたときに、「なんていう名前なの?」って聞かれたんだ。だから本名の「クィン」って答えたんだ。そしたらさ、「え? クリム? クリームっていう名前なの? アイスクリーム?」って彼女は言ったんだ(笑)。「違うよクィンだよ!」「えっ、クリーム? アイスクリーム? ビン・ジ・リン?」こうして、僕はビン・ジ・リンと呼ばれるようになったんだ。それから上海を歩いていると「ビン・ジ・リン元気~?」って言われるようになったよ。

(一同笑)

BJL:それでサンフランシスコに戻ってこのアルバムを作りはじめたんだけど、そのときにビン・ジ・リンっていう名前を使おうと思った。

今回のアルバムでドナ・サマーの“ラヴ・トゥ・ラヴ・ユー・ベイビー”をカヴァーが意外だったのですが、そのカヴァーについてのコメントをお願いします。

BJL:そうだよね(笑)。子供の頃からずっと聴いていて、素晴らしい曲で大好きだったんだ。それと、ループペダルで曲を作ることが好きで、あの曲のフレーズ(口ずさむ)を使おうと思ってたんだ。それをライヴでやろうと思ったのが、ドナ・サマーが亡くなった日だったんだけど、その日はダンス・ミュージックが好きなオーディエンスもたくさん来ていて、その日はエモーショナルになって、みんなで合唱したよ。それからその曲をよくプレイするようになった。クロアチアに行ったときも、イギリスに行ったときも、ダンス系のイベントだったらその曲をやると、みんなが楽しんでくれたね。

なるほど! 聞いてよかったです。ありがとうございました!

BJL:ありがとう!

深夜+早朝イヴェント 〈Space Ritual〉#2&#3

 ライブハウス〈四谷アウトブレイク〉では、今年に入ってから隔月で朝5時からの早朝イヴェントを開催しているらしい。朝5時、だと……!? エネルギーとテンションが高まりすぎているひとのためなのか、超健康志向なのか、あるいは修行なのか。いやいや、ちゃんとからくりはある。早朝イヴェントの客層は大きく分けて2つ。「オールナイト明けで帰る前に立ち寄った人」と「早起きして駆けつけた人」。で、その前者に目をつけたのが本イヴェントだ。深夜+早朝の2部構成で開催されるとのこと!

 今回の深夜+早朝イヴェントを企画したのは、東京で活動している3人組スペースロックバンドGalaxy Express 666。「Psychedelic Underground」篇と「Young Fresh Fellows」篇という構成で、夜はディープなアンダーグラウンドを、朝は個性的な若手たちをフォローする。その他、出演者はサイケ、ガレージ、ハードコア、インディロック、ジューク等々さまざまな分野にわたる。鎮まりきらない夜を過ごした方はもちろん、早起きした方にも必ずや三文の得があるだろう。


GOODWEATHER presents AKKORD JAPAN TOUR - ele-king

 モイーズ監督が解任されても、シティが優勝戦線から脱落しても、いまマンチェスターは熱いのだ。いつまでもマッドチェスターとか言ってるんじゃないぜ。
 今週は、たいへんだ。なにせ、日曜日にはリヴァプールとチェルシーの決戦もあるし、週末にはアコードのDJもある。え? アコードが誰かって? やれやれ、それでは教えてあげよう。

 アコードは、マンチェスターを拠点に活動をするプロデューサーのインディゴとシンクロによるユニットだ。これまでに、4枚のシングルとEP、1枚のアルバムをリリースしている。それらの作品のなかでは複雑なビートが絡み合い、怪しげなヴォイス・サンプリングや強烈なベースが飛び交う。黄金比や数学をコンセプトに取り込んだり、サイマティクスという音の周波数が示す形状パターンをミュージック・ヴィデオに取り込んだりと、プロダクションの方法も独創的である(インディゴの身体には黄金比を取り入れたタトゥーが刻まれている)。先日のボイラー・ルームで披露したDJセットにもその独創性が表れている。



 ふたりはアコード名義以外でも多くの作品をリリースしている。最近では、インディゴはニュージーランドの実験的なドラムンベースのレーベルである〈SAMURAI MUSIC〉のサブ・レーベル〈SAMURAI RED SEAL〉から「Storm EP」を、シンクロはベルギーの〈R&S〉傘下の〈APPOLLO〉から「Lost Here EP」を発表したばかりだ。
 アンビエントからテクノやダブステップまで、常にひとつのスタイルに縛られることなく作品を発表してきたふたりだが、この2枚のEP では、動的なインディゴと静的なシンクロというふたつの個性が表現されている。

 マンチェスターが彼らのホームであることも忘れてはいけない。元インディ・キッズにはお馴染みの街だが、近年でも素晴らしい作品がたくさん生まれている。5月に来日するアンディ・ストットとデムダイク・ステア。ダブステップ界隈で活躍するコンパやエイカー。ロック・バンドではエジプシャン・ヒップホップもいる。彼らは故郷を離れることなく、現在もマンチェスターに住んでいる。

 著者は一度だけマンチェスターを訪れたことがあるが、全てがコンパクトにまとまっているという印象を受けた。シティ・センターをワンブロック歩けばレコード屋さんがあり、サウンド・システムが入ったクラブがあり、ミュージシャンにも出会える。音楽を楽しむ人にも、音楽を作る人にも最高の環境がマンチェスターにはある。だが、環境だけがアコードの幾何学的なサウンドや、アンディ・ストットの暗黒なビートを作り上げたのではない。何がシーンや彼らのサウンドを作り上げたのか。それは誰にもわらない謎だ。

 アコードを惹きつけた黄金比は自然のあらゆる場所に存在している。貝の渦巻きにも、葉っぱの並び方にも、もちろん音の波形の中にもそれはある。優れた音楽に何らかの規則性があるとするならば、それは黄金比によるものなのだろうか。彼らの音を聴けば、そのヒントくらいは掴めるかもしれない。そして、その絶好のチャンスが今回のアコードのジャパン・ツアーだ。シーンの最先端には何があるのか、そしてそれがどのように生まれたのか。そこに耳をすましてみたい。

 主催は名古屋を拠点に活動する GOODWEATHERであり、ローガン・サマやスウィンドルをゲストに迎えたパーティも記憶に新しい。東京公演では、GOODWEATHERにレギュラーで出演している日本を代表するベース・クルーのPatry2Style Sound。インディゴも所属する〈SAMURAI MUSIC〉からEPを出したばかりのBack To ChillのレジデントDJのENA。同じくBack To Chillのレジデントである100mado。独自のスタイルでテクノを追求する GONNO。 GOODWEATHERクルーからはNOUSLESSとSAVが登場する。25日は是非LOUNGE NEOへ。
(Y.T)

GOODWEATHER#35 AKKORD JAPAN TOUR “Golden Rule and Causality”
April 25, 26 and 28, 2014


interview with TADZIO - ele-king


TADZIO
TADZIO II

Pヴァイン

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 どこでもアウェー……。ホームがない。タッジオは、いつでも浮いている感じがする。居場所をなかなか見つけられないのだ。あいつやあの娘のように。
 タッジオは、容姿の整ったふたりの女性がやっているロック・バンドだが、色気を売りにしているわけではない。媚びている風には見えないし、わかりにくいこともない。ギターが鳴って、8ビートが打たれる。人はダンスするわけでもないし、リーダーと部長と互いを呼び合うふたりをじーっと見ている。演奏からは、「クソ」だの「ファック」だのと、汚い言葉がはっきり聴こる。
 インディ・ロックを深読みするアメリカ人にとって、きゃりーぱみゅぱみゅはミシマの内臓に重なり、下山からはアメリカ文化の支配への日本人のアンビヴァレンスを想起させるのなら、タッジオは……タッジオは……、いったい何なのか。いまのところ日本では機能しない何かだろう。そして、その機能のしなさこそが、このバンドの魅力だ。
 いくつかの曲は、日本のラジオではオンエアーするわけにはいかないだろうし、女性が口にして欲しくない言葉を言っているのかもしれない。サウンド的にもスタイル的にも、たとえアメリカ文化に支配されたとしても、たいていの場合は日本社会の歯車として機能できるものなのだが、彼女たちときたらそうはいかない。音と言葉はノイズとして存在している。

 2011年にデビュー・アルバム『TADZIO』をリリース、およそ3年ぶりのセカンド・アルバム『TADZIO II』が去る3月にリリースされた。前作よりも、格段にアップグレードされている。以下の取材から、彼女たちの“佇まい”を少しでも感じ取っていただけたら幸いである。

深刻なやつなんか絶対に好きじゃない(笑)!

じゃあ、よろしくお願いします。

部長&リーダー:お願いしまーす。

セカンド・アルバムまでずいぶん長くかかりましたね。

リーダー:3年かかりました。

部長:私がちょっと骨折してたというのもあるんですけど、それで1年以上は延びまして。

リーダー:そうだね。骨折して、その後喧嘩したからすごい延びました(笑)。

そうそう。巷では不仲説も聞きましたけど。

(一同笑)

リーダー:まあ、話し合いをしまして。とことん思いのたけを全部言い尽くして、じゃあスタジオやりますか、みたいな感じで。

ライヴはコンスタントにやってたんでしょ?

リーダー:喧嘩してからライヴもあんまりやってなかった(笑)。骨折治ってから、ライヴは結構やってたよね。

部長:うん。タイに行ったのも骨折の後ですし、ちょこちょこライヴは入っていたんですけど、去年の7月か6月にふたりでぶつかって、そこからはしばらく休んでいましたね。

リーダー:喧嘩をする前はスタジオにはずっとコンスタントに入って曲を作っていたんですけど、単純に曲が思うようにできなかったので長くかかったというのもあります。

部長:そうだね。(難航したのが)最後の1、2曲くらい?

リーダー:なんか、記憶が全然……昔を思い出せない(笑)。

喧嘩がそれだけ激しかったんだね(笑)。

(一同笑)

部長:記憶を消された(笑)。

ちなみに骨折はどこの骨を折ったんですか?

部長:左足のすねを2本折ったんですけど、骨折の直前までふたりですっごく詰めてて。めちゃくちゃ忙しくて、ふたりでスタジオにもがーっと入って。

リーダー:そうそう。これまでには出そうってね。

部長:わーわーって詰め込んでいたときに、ポキッといってしまって。

なるほど、調子が出てるときにね。TADZIOって曲を作るときにどこから作るんですか?

リーダー&部長:どこから?

言葉から作るのか、音から作るのかっていったら、絶対に音だよね。

部長:うん。

リーダー:音。

音から作るときはどこからつくるんですか?

部長:ふたりでとりあえず音を出してるんですよ。ギターもじゃーっと弾いてて、ドラムはばーってやってて、それでリーダーが良いと思ったフレーズとかがあったらそれを拾って、いまのもう1回やってみようってそこからドラムを合わせてみたりとかって感じですね。

なるほどね。イヴェントで部長とは何回か偶然会ったことがあるんだよね。そのたびに、僕は部長に酔っぱらいながら、「打ち込みやった方が良いよー! 打ち込み!」って言ってたんですけど、ものの見事に裏切られました(笑)。

(一同笑)

リーダー:打ち込みの道具とか持ってないし(笑)。

(一同笑)

リーダー:(ギターとドラムだけで)できちゃったから。ふたつだけで10曲分ね。

部長:打ち込みとかはTADZIOではないかなーって思いましたね。

やっぱりロック・サウンドがしっくりくる?

リーダー:へ? ロックですかね……?

僕からしたら、むちゃくちゃロックだと思います。

(一同笑)

少なくともジャズやテクノじゃないです(笑)!

部長:できたらそういう(ロックという)解釈をしてもらっているのかな、という感じで。ふたりでは「ロックを作ろう!」とか、そういう気負いもなく、ただ面白いものをギターとドラムだけで作りたいという感じで……

すさまじいロックンロールですよ。

部長:どうしてそういう風になったのかわかんないですね。ただ、リーダーが弾くギターの感じがそういう方へ向かっていて、前に作っているときとは違うなとは思っていたんですけど、そのまま流れる感じに作っていって結局ロックみたいになったのかも。

ライヴの場数をこなしていったことが今回のアルバムにフィードバックされていると感じましたがどうでしょう?

リーダー:そうですね、そう思います。あと、ギターもファーストのときと違うんですよ。

自分で1年前より上手いとは思いますか?

部長:そうは思わないです!

僕が最初に見たときは、ギターのチューニングも合っていない感じだったのが、わりとしっかりとしたサウンドになっているというか。

リーダー:それは多分、回数をやったからただ単に(笑)。

(一同笑)

リーダー:ちゃんとギターのコードを押さえているんだと思う。最初はコードを押さえていなかった。

ファーストのときはコードの概念もなかった?

リーダー:なかったと思います。聴こえてくる音を使ったみたいな感じかな。

なんというか、デレク・ベイリー的な境地に(笑)。上手くなっちゃいけないというのは自分たちのなかにありましたか?

リーダー:いや、上手くなりたい! まわりは「上手くならない方がいい」とか言うけど、普通は上手くなりたいでしょ。

部長:野田さんが聴いた感想は、ロックってことですか?

僕は、そんなロックンロールな人間じゃないから、あくまでも、サウンド的なことで。ロックだなーと。最近、ハウスばかり聴いてて、ギターとドラムを聴いたのが、すごく久しぶりだったんで。

リーダー:ああ、じゃあ良いね。

部長:言ってることはすごくわる。でも、別にそういう(ロックな)ことを目指して作ってなかったから。

一発録音じゃないんだよね?

リーダー:今回は違う。

部長:違うんです。

リーダー:別々。

部長:ギターも被していますよ、1曲だけ(笑)。

リーダー:だからすごくキレイで上手いというか。

部長:ミックスも前と変わってます。今回はこれがすごく大きいと思います。エンジニアの瀬川氏からアイディアを沢山もらって、ファーストとは違う感じにしようって。

たしかに、音に、リスナーを拒む感じはないですよね。ある意味聴きやすいとも言えるし。

リーダー:それを目指しましたから。よかった。

TADZIOをライヴハウスで見ると、いっつも、その場に溶け込めてない感じがあるんですよね。

部長:浮いている感じですか?

リーダー:浮いていると思う。

あと、お客さんもどういう反応をしていいかわからない感じじゃない?

リーダー:うんうん。

部長:それはどうなんですかね?

やってる側はどんな感じなんですか?

部長:ひかれるのはすごく嫌なんですよ。でも自分たちではどうすることもできないから、(お客さんが反応に困るのは)どうなのかなと思いますけど。

お客さんがノってきたことはありますか?

リーダー:場所によって。

部長:うん。場所によってはありますね。

踊ったりとか?

部長:うん。そういうことも場によってはあります。

TADZIOを聴いている人たち、自分たちのオーディエンス像ってありますか?

リーダー:やっぱり、おじさんたちが多いかな。

部長:うん、結局(笑)。

でも、僕が何度か見たときのおじさんは僕しかいなかったですけどね。

リーダー:でも、(聴いてくれている人に)10代はいない。

20代は?

リーダー:20代もあんまりいない気がする。

部長:うん。わかんないですね。いま誰が聴いているかわからないですね。

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でも、ホントできない。友だちとか。ホント悲しい。


TADZIO
TADZIO II

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TADZIOって、つねに自分たちのホームがなくて、つねにアウェイでやっている感じじゃないですか?

部長:それはありますね。ホームがない(笑)。

凄いことですよね(笑)。

部長:なんでですかね(笑)。このバンドが出るときはこのバンドも出るみたいなことがあるじゃないですか? TADZIOと同じ時期に出てきたバンドにも何個かそういうグループみたいなものがあって、そのなかのどこにもTADZIOは入っていなくて……(笑)

恐れられてるんじゃないの(笑)?

部長:まあ別にいいけど。

リーダー:入りたくもないけど。なんか、ホームがいらない。

かっこいいね!

リーダー:ってことにしとく(笑)。

あまりにも毒づきすぎて、浮いているんじゃ?

部長:全然、毒づいてないですよ?

ずいぶん毒づいてるじゃない(笑)。

部長:まあ、歌詞はアレですけど、楽屋では大人しいもんですよ(笑)。

楽屋で暴れてたらね、部屋とか破壊して(笑)。

部長:やっぱ歌ですかね。みんな歌詞を「こわー」って思ってるんですかね。

リーダー:でも、ホントできない。友だちとか。

部長:(笑)

なんか悲しいですね(笑)。

リーダー:ホント悲しい。

部長:バンド仲間とかもね……

女性とかでもいない?

部長:そのくらいの人たちがいないんですよね。逆に、ちょっと上のバンドの人たちはTADZIOのことを気に入ってくれたり、こっちもすごく好きですね。

仲が良いバンドって誰がいます?

部長:仲が良いバンド(笑)。

リーダー:仲の良いバンドはいないよね。個人的に友だちとかはいるけど、バンド同士ってなると……

部長:でも、The Popsとかさ。

リーダー:あー。

部長:まあ、ちょろっと(笑)。

リーダー:久土'n'茶谷とか……

部長:The Popsていうバンドの茶谷さんがドラマーのバンドですけど。

リーダー:でもおじさんですね。40オーヴァー。

それはおじさんですね(笑)。

(一同笑)

部長:2マッチ(・クルー)もすごく好きですし。

それもおじさんだね(笑)。

部長:そう考えるとみんなおじさんだな(笑)。若い人、いるかな。同年代とかでいないよね?

リーダー:仲が良いのはいないよね。

部長:みんなおじさんですね(笑)。

いいじゃないですか、孤高の存在で。さすがですね。

リーダー:あんまよくない(笑)。

レコ発のときに誰と一緒にやるかってなったときには苦労するよね(笑)。

リーダー:苦労する。いっつも苦労する(笑)。

やっぱ、毒づいてばかりいるから。

リーダー:そんなに毒づいてはいないと思うんですが(笑)。

「おまえのねぇちゃんビッチ」とか。

リーダー:ちゃんと意味があってのことだから、毒づいているわけではないんですよ。

「みんなえげつない」とか。

部長:でも、そんなに……

「あとは死ぬだけ」とも言ってるよ(笑)。

リーダー:でも、本当にあった話とかもだし。

どういうの?

リーダー:頭の悪い男とか。頭の悪い人がいて……

嫌な思いをしたとか?

リーダー:そうです。

“Old Bitch”という曲はがあるじゃないですか。これは気の毒だと思いました。

部長:気の毒? 主人公が?

そうそう。だって、高齢化社会だし。

部長:えー! どこでそう思ったんですか?

「ジジババ、ファックユー」とかさ、最近、自分も歳をとってきたので、だんだんとおじいさんとおばあさんの方に感情移入することが多くなってしまって。

部長:でもディスっておいて、自分も歳をとってっちゃうっていう。

リーダー:これは自分たちに対する曲だから。

あー、そうなんですね。

リーダー:でも、ジジイとババアにも聴かせたい。

歌詞はリーダーが全部書いてるんでしょ?

リーダー:ふたりです。全部スタジオで。

歌詞書くの楽しいでしょ?

リーダー&部長:楽しい!

好きな女性アーティストっていますか?

リーダー:スリッツは好きです。

どんなところが好きなんですか?

リーダー:全部。女子バンドだったら一番好きかな。ビキニキルも好き。

部長は?

部長:スリッツは好きですけど、スパッと出てこないな……、最近は友人がやっているのを聴きに行ったりとか、そういうのは多いんですけど。

リーダー:SOKO。最近ではその人が好き。全然TADZIOと違う。ひとりでやってる。

歌ってる人?

リーダー:歌ってる、レズ。見た目もかわいい。

TADZIOは、自分たちの内面を出している感じ?

リーダー:なんか、思い出とかをね。

部長:うん、思い出とか! タイの思い出とか。あと何だろう……。別にそんなにキツいメッセージ性はないと思っているんですけど。

言葉がたくさんあっても言葉が入ってこない音楽があるんだけど、TADZIOの場合は、嫌なくらい言葉が入ってくるんだよね。憎たらしいほど言葉が入ってくるんで。

リーダー&部長:(笑)

だからみんな自分のこと言われているみたいになって、しょぼーんとしちゃうんじゃないのかな(笑)。

部長:それはやだー。最悪ですね。ネガティヴ・ライフやだ……。

ポジティブな曲もやればよかったね(笑)。

リーダー:「えげつない」とか結構明るいと思うんだけど。

えー(笑)! だって、「えげつない」って何度も言ってるんだよ?

リーダー:「えげつない」が悪い言葉だと思ってなかった。

これは、前向きさを表していたんだ?(笑)

部長:(笑)

リーダー:だから曲調が明るい。

でも、やっぱTADZIOは、もっとダーティーな言葉、「Bull Shit」とか「Bitch」とかさ、そういう、いわゆる強い言葉が耳に残るという、妙な才能があるよね。絶対にラジオでかからないでしょ。

リーダー&部長:しょぼーん(笑)。

でもそれだけ、何か力があるんですよ。

リーダー:でも、ポップだから良いかなって。ポップに悪口。

大げさに言えば、日本社会が求めていない女性を地でいっている感じがあるじゃないですか。たとえば日本のアイドルや女性シンガーに「おまえ」とか「ファッキンクソムシ」とか、そんな言葉を言える自由なんてないでしょう。

部長:なるほど。

だから、立派なもんですよ、TADZIOは。

(一同笑)

ここまで日本社会に逆らっているんだから。

リーダー:そうかな。

部長:全然そんなことは……。思い出とか多いですけどね。ふざけた歌詞だし。

リーダー:ちゃんと意味があって。

過去の嫌な思い出とかをさ、ここまでなんか……。

リーダー:面白いからね。

部長:語感の響きで作っている部分もあるんです。だからビッチってネガティヴなワードかもしれないんだけど、普通に言えば、リズム感が良いというか。

リーダー:ビッチってだけ聴くと(語感が)かわいいしね。

部長:そうだね。えげつないとかもそうだし。でも、「えげつない」も、意味は多少後から付けましたけど、言葉がキッカケとしてあって、そこからリズム的な感じで作っているし、そんなにネガティヴじゃないと思う。

(一同笑)

リーダー:基本的にネガティヴじゃない。

部長:そうそう。でも、そう取られちゃうのかな。

いやいや、ネガティヴとは言ってないですけど、反抗的だっていうね。

リーダー:でも、真実だから。

部長:(笑)

「ファッキンクソムシ」とかさ、歌っていると気持ちいい?

リーダー:うん、まあ、ライヴは気持ちいいよ。

絶対にNHKではかからないもんね。

リーダー:ピーだまた。

部長:ははは。

リーダー:でも、なんか言いやすいしね。

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「えげつない」も、意味は多少後から付けましたけど、言葉がキッカケとしてあって、そこからリズム的な感じで作っているし、そんなにネガティヴじゃないと思う。


TADZIO
TADZIO II

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話ちょっと逸れますけど、タイはライヴで行ったんですか?

部長:ライヴで行きました。

タイのどこに?

部長:バンコクで三カ所でライヴをしてきました。

ウケたでしょ? タイで。

部長:うん、良かった。ウケましたね。

リーダー:盛り上がっているって言うよりは、みんな写真を撮ってった。

(笑)

リーダー:公園とかでも撮ってきて、やたら近くで(笑)。女の子でバンドをやっている人たちがタイにいないらしくて。

部長:なんか珍しがられて。

あー。

リーダー:お金とか、こう出されたり……。

それ、そうとう勘違いされてるんじゃない(笑)?

(一同笑)

リーダー:でも楽しかった。

部長:環境が最悪だったのもすごく面白くて。音もひどかったし。

リーダー:ねっ、ヒドかったね。

部長:でも、タイの他のバンドの人たちはそれが当たり前でやってるからね。すごいなー、と思って、面白かったです。

僕はさっきからジェンダーの話というか、日本では、TADZIOみたいな女性バンドがいないって言ったんですけど、女性としてのやりづらさみたいなものって感じたことはありますか?

部長:ないです。

リーダー:パンツが見えるくらい(笑)。

それってチラリズムで挑発してるんじゃないんですか?

リーダー:いや、短パンをはいていたら、そっちのほうが見えるということを教えてもらって(笑)。

短パンの方が見えるって何が?

リーダー:パンツが。スカートより短パンの方が足を上げたときにパンツが見えるってことです。

あははは(笑)

リーダー:それくらいかな。

部長:とくにないですね。

なにかこう、このサウンドには、おふたりのフラストレーションが注がれているんじゃないんですか?

部長:うーん、そんなつもりもないです。それって、はけ口的な感じってことですか?

リーダー:ライヴをやればすっきりするけどね。作りながらそういうのはないかな。

パンクってことは意識していない?

部長:意識して……

リーダー:ないですよ(笑)。

部長:「なにやってるの?」って言われて、「何やってるんだろ」っていつも思う。

リーダー:バンドを(やってる)。そういうのを考えた方がいいのかしら。

日常生活で何を聴いているんですか?

部長:普通にCDを買ったり……

リーダー:さっき言ったSOKOとか、最近……バースデー・パーティのギターの人のソロかな。

ローランド・ハワード......

リーダー:そう! ローランド! 1曲がよかった。見た目も素敵だし。中性的というか。

部長:私は、うーん、何だろう。直ぐにパッと出てこない。ミックス CD ばっかり聴いていた気がする。

リーダー:私はあとハードコア・バンド。

部長:私は全然わらないです(笑)。

リーダー:ハードコアのライヴも行くし。カッコいい。みんな、もう熱過ぎる。

じゃあ、自分も一緒になって?

リーダー:いや、身の安全を確保して。

(一同笑)

リーダー:本当に危ない。それこそ、骨折とかしちゃうよね。

リーダーはハードな音楽が好きなんですね。

リーダー:好きかな。スリップ・ノットとか。でも良いイヤホンが無いんですよ。

普通に聴けばいいじゃないですか。

リーダー:移動中に聴くことが多いから。コンビニで買ったイヤホンは低音が一切抜けてて。

部長:スカスカ……ラジオみたいな音がするもんね。

部長が聴いているの?

部長:最近買ってよく聴いてるのはKING OF OPUS。他にはメルト・バナナや灰野(敬二)さんのミックスCDを聴いてました。あとDAFがもうすぐ来日するからまた聴いてる。

ポップ・ミュージックは聴かない?

リーダー:ジーザス・アンド・メリーチェインは好き、大好き。

音楽以外で好きなことって何があります?

部長:うーん、なんだろう。

リーダー:映画!

部長:『白いリボン』を一昨日見ましたね。ミヒャエル・ハネケ。面白いというか、いつも後味が悪い感じですよね(笑)。まあ、普通でしたね。

リーダー:最近、何を見たかな。

部長:『マスター』も見たかな。まあ、普通。『ブギー・ナイツ』の方が面白かった。

リーダー:私は、ラース・フォン・トリアーを見返してました。

深刻な作品が好きなんじゃないですか?

リーダー:深刻なやつなんか絶対に好きじゃない(笑)!

部長:(笑)

■みんなで行こう、TADZIOのレコ発ライヴ!
──『TADZIO II』RELEASE PARTY

5.2 (fri) 渋谷 TSUTAYA O-nest
OPEN 19:00 / START 20:00
ADV ¥2,500 / DOOR ¥2,800 (+ DRINK)
LIVE: TADZIO / HAIR STYLISTICS / KIRIHITO / オシリペンペンズ
DJ: COMPUMA / 37A (PANTY)
VJ: IROHA

チケット:O-nest / ローソン[L: 78450](4/24~) / e+

https://shibuya-o.com

Olafur Arnalds - ele-king

 これはとても美しいアルバムである。もしもポスト・クラシカルという音楽ジャンルの中から、一枚だけアルバムを挙げよ、と問われたら、わたしはニルス・フラームの作品と悩んだ挙句、結局はこの作品を手に取るかもしれない。
しかし急いで付け加えておくが、本作はオリジナル・アルバムではない。オーラヴル・アルナルズが折々の機会にリリースされたシングル盤をまとめた来日記念の国内編集盤である。だが多くの音楽ファンは知っているはずだ。ささやかな編集盤にこそ、アーティストの本当の息遣いが聴こえるときがあるということを。そして、わたしたちの知らない意外な側面を聴き取ることができるということを。

 本作はアルバム名からわかるように、「ツー・ソングス・フォー・ダンス」「ステア」「スローン EP」という3枚のシングル盤(7インチ/10インチ/12インチ)の楽曲をまとめた作品集である。
 「ツー・ソングス・フォー・ダンス」はコンテンポラリー・ダンス・プロジェクトのために作曲された曲を収録した7インチ盤(“Endalaus II”は東日本大震災チャリティ・コンピレーション盤『フォー・ニホン』に収録された)。続く「ステア」は“レコード・ストア・デイ”リリースのためにニルス・フラームと競作された、ドローン/アンビエントな楽曲を収めた10インチ盤。そして最後の「スローン EP」は、ジェイナス・ラスムッセンとのユニットでKiasmos名義としてリリースされた12インチ盤。ミニマル・テクノの雰囲気が濃厚に漂うトラックが収録されている。
これらはそれぞれ別の機会に制作された曲である。だが、アルバムを一枚通して聴くと、楽曲と楽曲が互いに呼応しあっているのがわかってくるだろう。ミニマル、ドローン、アンビエント、テクノというエレメントが互い呼応し合うように鳴り響いているのだ。
 とくにリズム/ビートは、「ツー・ソングス・フォー・ダンス」において楽曲を支え、ニルス・フラームとの「ステア」においてはピアノの反復的旋律と共に楽曲構造の中心となりスティーヴ・ライヒとポスト・クラシカルが出会ったような楽曲へと昇華され、そして「スローン EP」においては、透明感に満ちたミニマル・テクノ的なトラックへと見事に結実している。
 また、「ツー・ソングス・フォー・ダンス」の“Endalaus II”のクリアな弦の響きは、「ステア」収録“a2”のシルキーなドローンへと通じ合っているし、「ツー・ソングス・フォー・ダンス」収録“For Teada”のセンチメンタルで浮遊感のあるエレピのメロディは「ステア」“a1”における点描的なピアノ&エレピを反転させたかのようでもある。さらに「ステア」“b1”の快活なミニマル・ミュージック・テイストは、「スローン EP」のテクノ・トラック“Wrecked”のポップな雰囲気を変奏しているようだ。

 この音楽スタイル活用の巧みさ、旋律や和声に対する色彩感覚の一貫性、音響へのこだわりなどからもわかるように、オーラヴル・アルナルズは、ニルス・フラームと並び、ポスト・クラシカルの作曲家の中では頭ひとつ抜きん出た個性を持っているように思える。とくにオーラヴル・アルナルズの場合、(元)ドラマーということもあり、リズム/ビートに対するこだわりも感じられる。優しげな旋律と力強いビートのコンビネーションは彼の音楽の大きな特徴ともいえよう。そして本盤のリズムは、これまでの作品と比べて、リズム/ビートが、アンビエンスに溶け込むような質感もあった。わたしにはそれが嬉しかった。旋律とリズムが、ある一定のトーンの中で、やさしく、快活に鳴っていたのだ。
 そしてこれこそがアンビエント/ドローン世代特有の感性ではないかとも思う。さまざまな音楽フォームを上品かつジョイフルに横断しながら、そのサウンドにはミニマル/アンビエントなヴェールがうっすらとかかっている。あらゆる音が溶けあっている感覚とでもいうべきか。

 ポスト・クラシカルは新時代のアンビエント・ミュージックなのだ。たしかに旋律はある。リズムもある。だが、わたしたちリスナーはその旋律を、リズムを、美しい響きの結晶として聴く。オーラヴル・アルナルズのアルペジオは文節化されたドローンなのだ。わたしたちリスナーは、そんな彼の音の連なり、音の響きを愛してきた。だが、昨年リリースされたアルバム『フォー・ナウ・アイ・アム・ウィンター』において、オーラヴル・アルナルズは、これまでの音楽性をさらに深め、独自のヴォーカル・アルバムへと変化させていた。それは溶け合う響きの中から、ヴォーカルという具体的な音が表出してきたという意味でも、決定的な変化であった。いま、オーラヴル・アルナルズという若き音楽家は変化と成長のただなかにいるのだろう。そして、このミニアルバムには、そんな進化の上に咲いた美しい花のような楽曲が収められている。
 そう、この作品には、若き音楽家の本質が、ささやかに、そして大胆に込められている。ミニマル、メロディ、響き、ドローン、アンビエント、リズム、テクノ、そしてクラシカル。それはポスト・クラシカルという音楽の魅力そのものでもある。

 もう一度、この言葉を繰り返そう。この音楽は美しい。なぜか。この音楽は濁っていないからだ。旋律も、響きも、音楽を生み出した耳も、意志も、すべてがピュアである。そしてこの瞬間、この時期にしか生まれ得なかった儚さもある。美しさ、とはこのようなことを言うのではないか。わたしは、これからまるで親しい友人からの手紙のようなこのミニ・アルバムを、何度も何度も繰り返し聴きつづけるだろう。

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