ミディアムテンポの8ビートとエレクトロニック・ノイズの"デッド・ギターズ"は、音の粒子の荒れたカンだ。see(見る)+feel(感じる)という、あの時代らしいネーミングを持ったバンドは、15年振りの4枚目のアルバムで貫禄を見せつけている。1993年、このバンドが登場したときは、「マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとエイフェックス・ツインの溝を埋めるバンド」と謳われたものだったが、最新作の『シーフィール』は「ダブステップとクラウトロックの溝を埋めている」ようだ。2010年にシングルとして先行リリースされた"ファウルツ"は、ある意味では歌モノだが、『クラスターII』をバックにスペースメン3が歌っているような、倒錯したポップである。"リップ・ラン"は1994年ぐらいのシーフィールにもっとも近い。ドリーミーで、スペイシーで、ダビーだ。1990年代末にボアダムスに在籍していたイイダ・カズヒによる8ビートとシゲル・イシハの重たいベースが霊妙なメロディをともなって、霧のように広がるこの音楽に骨格を与えている......。
シーフィールのカムバック作は過去のどのアルバムとも違うが、ファンにはドリーミーな『クイック』と無愛想な『サッカー』の中間だと説明することができるかもしれない。数年前に再発された彼らのデビュー・アルバム『クイック』は、〈トゥ・ピュア〉がもっとも勢いのあった時期にリリースされた、当時のロンドンのシューゲイザーからのアンビエントへの見事なアプローチだった。それはあの時代の幸せな空気が詰まったドリーム・ポップで、そしてアルバムのなかの1曲は翌年にエイフェックス・ツインによるリミックスが2ヴァージョン発表されている。1994年に〈ワープ〉と契約した彼らは、素晴らしい12インチ・シングル「ステアスルーEP」を発表している。収録された"スパングル"は〈ワープ〉のクラシックとして知られている曲で、その根強い人気たるやおよそ10年後にオウテカがリミックスをしているほどだ。
とはいえ、1995年のセカンド・アルバム『サッカー』にはファースト・アルバムのような親しみやすさはなかった。そればかりか、初期のドリーミーな質感を積極的に排除しているようだった。セカンド・サマー・オブ・ラヴを丸めて捨てるように、ギタリストのマーク・クリフォードを中心とした第二期シーフィールは、1996年には〈リフレックス〉から『(Ch-Vox)』を発表するが、バンドはそれを最後に休止状態となり、そしてクリフォードはディスジェクタ名義のソロ作品『クリーン・ピト・アンド・リド』を〈ワープ〉から出すと、音楽の表舞台から姿を消す。
フィードバック・ノイズをキング・タビーをミキシングしたような"メイキング"も最高だが、ジェームス・ブレイクやマウント・キンビーのようなポスト・ダブステップと共振する"エアレス"、エメラルズやOPNと共振する"Aug30"はなお素晴らしい。そして、アルバムの最後を飾る"スウェイ"の、ノイジーでありながらエレガントな展開は......このバンドの15年の沈黙が無駄ではなかったことを確信させる。第三期に突入したシーフィールは後ろを振り向かずに前に進んでいる。2011年の1月において間違いなく頂点に立つ1枚の登場である。
......というわけで、明けましておめでとうございます!
「Sã€ã¨ä¸€è‡´ã™ã‚‹ã‚‚ã®
東洋の音楽においては譜面よりもどの楽器で演奏されるのかが重要だ。尺八の演奏は尺八で演奏されるから良いのであって、同じ音程を他の楽器で代用することには意味がない。楽器は音楽を演奏するための道具ではなく、楽器そのものがひとつの宇宙となる。演奏の技術を堪能するのではなく、その楽器のみが発信する音そのものに陶酔する。楽器を道具として徹底的にいじりまくるブラック・ミュージックとはそこが決定的に違う。われわれは、ジミ・ヘンドリックスの演奏に狂喜するいっぽうで、無造作に鳴ったガットギターの短音の響きなかに宇宙を感じてしまう......。そしてこの「聴き方次第」というコンセプトはアンビエントへと繋がる。
今日のアンビエント・ミュージックに大きな影響を与えている1960年代のミニマル・ミュージックやジョン・ケージの発想の背後には、禅の思想が絡んでいる。部屋を綺麗にしたいから掃除をするのではない。掃除をしたいからするのだ。心を落ち着かせたいから瞑想したいのではない。瞑想したいから瞑想するのだ。健康を考えて走るのではない。走りたいから走るのだ。行為における意味は破壊的に剥奪される。ステージと客席の境界線は溶解し、再生装置から出される音と聴覚とのあいだの隔たりも消える。
というわけで、2010年最後のレヴューは『ブッダマシーン3.0』。中国におけるアヴァンギャルド/エレクトロニック・ミュージックのふたり組(Christiaan Virant & Zhang Jian)によるプロジェクト、Fm3による人気シリーズの最新作で、数年前に1分弱のループが9本収録された小型の可愛らしいボックスとして発売され、手頃な価格ということもあってか、マニアックなリスナーのみならず、普段はミニマル・ミュージックなどには縁のないサラリーマンやOLのあいだでも話題となった。2009年にはスロッビング・グリッスルの代表曲のループを収録した『グリッスリズム(Gristleism )』("ハンバーガー・レディ"をはじめ13曲のループが収録)が発売されているが、このときは中原昌也がこれを使って店頭ライヴをやったほどだった。
今回リリースされる『ブッダマシーン3.0』は、中国の古い楽器、古琴を使ったもので、ずいぶんと長い4つのループが収録されている(試聴はこちら→https://www.inpartmaint.com/)。曲名は"春""夏""秋""冬"となっているそうだが、はっきり言ってどれが"春"でどれが"冬"なのかはわからない......が、そんなことはどうでも良いと思えるほど素晴らしいのだ。何よりも作風がいままでとは違っていいて、『ブッダマシーン2.0』よりも大胆な音のすき間がある。しじまとともに古琴の音そのものの宇宙は広がり、そして本当に何時間も流していても飽きることがない。音質も12kまで向上しているので、僕は家のアンプに差し込んで聴いている。ボディーがスケルトン仕様で5色もあるし、正直言うと、もう一台手に入れようかと考えている。同じループをずらしてミックスすれば、これが極上のミニマル・ダブになるんです。
それではみなさん良いお年をー。
カラード・マッシュルーム・アンド・ザ・メディシン・ロックスのキノコ・ジャケに続いてエメラルズからジョン・エリオットとレイディオ・ピープルことサム・ゴールドバーグによるセカンド・コラボレイション。EPと銘打たれ、45回転というフォーマットにもかかわらず、かつてなく濃厚な構成と全体を大きく突き動かすダイナミズムが一気に聴き手を引き込んで離さない。ムーグやコルグをメインとしたアナログ・シンセサイザーが序盤から大きく波打ち、ベースのうねりは70年代の記憶をくすぐりかねないほどレトロ色を帯びつつも、メディテイションとは違う事態へと発展している。まったく新しいとまではいわないけれど、チルアウトやクラウトロックとはまた違ったテクスチャーに向かって一歩を踏み出そうというものになりつつあるというか。タイトル曲ではジュリアン・コープによるアンビエント・プロジェクト、クイーン・エリザベスを思わせるアブストラクなドローイングを先達と同じく心のままに楽しんでいる感じがよく伝わってくる(叙情性に関して屈託のない曲ほど古さを帯びて感じられるというのは、はて、なぜなのか)。
また、オリジナルのカセット・リリースを09年に〈ディジタリス〉が6種類のジャケットでアナログ化していたイマジナリー・ソフトウッズ名義のドローン作も、新たにジェイムズ・プロトキンのリマスターを得て同時期にリイッシュー。アナログ2枚組のヴォリウムで展開されるアンビエント・ドローンはイーノを思わせるスタティックな世界観に貫かれ、最近になってアウター・スペースや上記のコラボレイションなどで躍動感を強く押し出している面とは違う側面を強く印象づける(たまたま、年末の行事が立て込んでいるときに、疲れ果ててぼんやりと聴いていたら、これが効いてしまいましたね)。音数を抑え、ドローン本来の単音だけで展開される「延び」にすべての神経を集中させた感じは単純なドローンから様々に変容を遂げつつある現在において、シンプルな表現の強さを奪い返すような出来と言えるだろう......って、2年前に制作されたものだから、ある意味、当たり前か。あるいは、そこにスティーヴ・ライヒを思わせる弦楽の響きが漣のようにループされ、その残響音だけで聴かせるシークエンスや『ミュージック・フォー・エアポート』をドローン化したような"アンタイトルド(B3)"など、静謐をつくり出すヴァリエイションにもどこか考え抜かれた風情がある。リマスター以前のヴァージョンを聴いていないので、プロトキンの力量がどれほどのものかはわからないけれど、それなりのものがあるのだろうと思いつつ......(プロトキンに関してはOPNからサン・アローまで、このところの大事な作品では彼の名前を見ないものはないというほど気になる存在となっているので、復活版『ele-king』でインタヴューをオファー。この10年のUSアンダーグラウンドについて広く話を訊いているので、お楽しみに)。
それにしても2010年はエメラルズにはじまり、エメラルズで終わっていくなー。2011年は誰がこれに匹敵する大量リリースで振り回してくれることだろうか。
それではよいお年を。
先日『NME』が20もの音楽メディアによるアルバム・オブ・ザ・イヤーの集計を発表した。対象となったのは『NME』をはじめ『ピッチフォーク』、『ガーディアン』、『ローリング・ストーン』、『スピン』、『Q』、『モジョ』、『アンカット』ほか、ブルックリンで圧倒的に支持されている『ステレオガム』やUKのウェブマガジン『ドローンド・イン・サウンズ』、あるいは超メジャーの『MTV』などなど、主にロック系のメディア。
1. Arcade Fire - The Suburbs
2. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
3. LCD Soundsytem - This Is Happening
4. The National - High Violet
5. Beach House - Teen Dream
6. Vampire Weekend - Contra
7. These New Puritans - Hidden
8. Deerhunter - Halcyon Digest
9. Big Boi - Sir Lucious Left Foot: The Son Of Chico Dusty
10. The Black Keys - Brothers
11. Robyn - Body Talk
12. Yeasayer - Odd Blood
13. Caribou - Swim
14. John Grant - Queen of Denmark
15. Joanna Newsom - Have One On Me
16. Sufjan Stevens - The Age Of Adz
17. Janelle Monae - The ArchAndroid
18. Drake - Thank Me Later
19. Sleigh Bells - Treats
20. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today
自分の好みはさておき、まあ納得のいく20枚だ。ちなみに僕の個人的なトップ10は以下の通り。
1. Beach House -Teen Dream
2. Darkstar - North
3. 神聖かまってちゃん-みんな死ね
4. Gold Panda - Lucky Shiner
5. Emeralds - Does It Look Like I'm Here?
6. Oneohtrix Point Never - Returnal
7. Factory Floor - Lying / A Wooden Box
8. M.I.A. - /\/\/\Y/\
9. Gayngs - Related
10. Mount Kimbie - Crooks & Lovers
ビーチ・ハウス以外は『NME』が集計した20枚に入っていないけれど、好みで言えば、ビッグ・ボーイ、ドレイク、ジャネール・モネイ、カリブー......ジョアンナ・ニューサムとディアハンターとアリエル・ピンクに関しては今作がとくにずば抜けているとも思えなかったけれど、もちろん嫌いなわけではない。アーケイド・ファイアーの3枚目は実は最近になってようやく聴けたが、過去の2枚に顕著だった重さはなく、いままででもっとも親しみやすい音楽性だと感じられた。このバンドに関して言えば、対イラク戦争の真っ直なかに発表した反ネオコンの決定版とも言える『ネオン・バイブル』によって、音楽と社会との関わりを重視する欧米での評価を確固たるものにしている。こういうバンドがいまでも一目置かれるのは、欧米の音楽ジャーナリズムが音楽に何を期待しているかの表れである。
そう、アルバム・オブ・ザ・イヤーとは、その作品の価値や誰かのセンスを主張するものではなく、ジャーナリズムがいまどこに期待しているのか、という観点で読むと面白い。そのセンで言えば、僕にとって2010年に興味深いのはカニエ・ウェストとジーズ・ニュー・ピューリタンズだ。どちらも個人的には好みではないけれど、僕がふだん読んでいるメディアではどこも評価している。おかしなもので、LCDサウンドシステムがいくら評価されても気にもとめないというのに、気にくわないと感じているカニエ・ウェストとジーズ・ニュー・ピューリタンズが高評価だと気になるのだ。
以下、『ピッチフォーク』、『NME』、『ガーディアン』のトップ10を並べてみよう。
Pitchfork
1. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
2. LCD Soundsystem - This is Happening
3. Deerhunter - Halcyon Digest
4. Big Boi - Sir Lucious Left Foot: The Son of Chico Dusty
5. Beach House - Teen Dream
6. Vampire Weekend - Contra
7. Joanna Newsom - Have One on Me
8. James Blake - The Bells Sketch EP/ CMYK EP/ Klavierwerke EP
9. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today
10. Titus Andronicus - The Monitor
NME
1. These New Puritans - Hidden
2. Arcade Fire - The Suburbs
3. Beach House - Teen Dream
4. LCD Soundsytem - This Is Happening
5. Laura Marling -I Speak Because I Can
6. Foals - Total Life Forever
7. Zola Jesus -Stridulum II
8. Salem - King Night
9. Liars - Sisterworld
10.The Drums - The Drums
The Guardian
1. Janelle Monae- The ArchAndroid
2. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
3. Hot Chip - One Life Stand
4. Arcade Fire - The Suburbs
5. These New Puritans - Hidden
6. Robyn - Body Talk
7. Caribou - Swim
8. Laura Marling - I Speak Because I can
9. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today
10.John Grant - Queen of Denmark
カニエ・ウェストのアルバムでまずはっきりしているのは、それがヒップホップのフォーマットから離れていること。「イントローヴァースーフックーヴァースーフックーアウトロ」といった公式をチャラにして、膨大なサンプル(60年代のサイケデリックからゴスペルまで)によって新しい何かを生み出そうとしている......ある種のプログレッシヴな音楽と言えよう(実際プログレだろ、あれは......と僕は思ってしまったのだが)。僕や二木信のような保守的なブラック・ミュージック・リスナーの裏をかいているアルバムとも言えるし、そしてこれはジーズ・ニュー・ピューリタンズへの評価とも重なることなのだが、欧米の音楽ジャーナリズムが知的興奮を知らないチンピラにはもう期待していないということでもある。そしてそれでも(カニエ・ウェストの対極とも言える)ビッグ・ボーイが愛されているのは、暴力性というものに何のロマンスも見てはいないということでもある。まあ、要するにそれだけマッチョイズムと暴力性を日常的に身近に感じているからだろう。

日本の音楽シーンに関しては、2010年は面白かったと思っている。それはポップ・フィールドにおける相対性理論と神聖かまってちゃんのふたつに象徴されるだろう。どちらもインテレクチュアルなポップで、2010年の日本に対する両極端の、際だった態度表明と言える。つまり、かたやナンセンスでかたやパンク、かたや"あえて抵抗しない"でかたや"とりあえず抵抗してみる"というか......そして好むと好まざるとに関わらず、時代は更新される。僕にとって興味深かったのは、神聖かまってちゃんへの表には出ない嫌悪感だった。それは僕が中学生のときに見てきたセックス・ピストルズやパンクに寄せられた嫌悪感、RCサクセションに寄せられた嫌悪感と見事にオーヴァーラップする。何か、自分の理解や価値観の範疇からはみ出したものが世のなかの文化的な勢力として強くなろうとするとき、それを受け入れる人と拒絶する人にはっきり分かれるものだが、同じことがいま起きているようだ。そして、気にくわないというのは、それだけ気にしているということでもある。(笑)
エメラルズに関しては、面白いことに『ドローンド・イン・サウンズ』が1位にしている。こうしたチャートの見方というのは、「ではエメラルズを1位にするようなメディアは2位以下を何にするのだろうか」という点にもあるのだが、2位がザ・ナショナルで3位がデフトーンズというのはがっかりした。シューゲイザー好きな編集部のなかの偏執的な編集長があるときエメラルズで壮大なトリップをしてしまったのかもしれない。もちろん、多くの場合は個人的な経験が大切であって、『ガーディアン』の読者が言うように「メディアが選ぶトップ20をわれわれが聴かなければならないという義務はない」わけだが、話のネタとしては大いにアリなのだ。その年何が良かったのかについて話すことは、音楽ファンにとっては楽しみのひとつである。
〈しぶや花魁〉にて2010年に数多くPLAYされた極上のワーム・アップ・サウンド10曲
1 |
Language -Justified and Ancient - Madoromi |
|---|---|
![]() 2 |
Chieko Kinbara feat Byron Stingily - Mystery Girl - Grand Gallery |
![]() 3 |
Dorian - Free - Felicity |
![]() 4 |
Luvraw & BTB - Dori Summa - Pan Pacific Playa |
![]() 5 |
Genki Rockets - Star Surfer(Passionate YO-C+K.S.N mix) - Q Entertainment |
![]() 6 |
CoroRosie - Lemonade - Contrarede |
![]() 7 |
Jose Padilla - Dragonflies - Ibiza chillout Longe's Selections |
![]() 8 |
Lenny Ibizarre -When The Ocean Smiles - ibiza chillout Lounge |
![]() 9 |
Salmon cooks U-zhaan - Aquatic Holiday - U-zhaan HP: https://u-zhaan.com |
![]() 10 |
Oroti -Mountain View - Oroti |
2010/11/20
Soundcrash Presents
"プラッド vs レッド・スナッパー"@KOKO, London
〈ワープ〉の重鎮、プラッドとレッド・スナッパーをヘッドラ イナーに据えたパーティにて、サポート・アクトのひとりとして出演しました。
この日トップバッターとして出演したのは、〈ニンジャ・チューン〉から 1stフルアルバム を発表したばかりのエスクモ。レーベルメイトであるアモン・トビンを彷彿とさせるグリッチサウンドを基軸としながらも、ダブステップやウォンキーといった、現在のUKアンダーグラウンドシーンにも共鳴するビートを鳴らす彼の音楽は、ここロンドンでも多くのリスナーの耳を惹きつけはじめています。彼のパフォーマンスはその音楽性に負けず劣らず個性的なもので、 ラップトップをメインにしながらも、マイクを通してその歌声を惜しげもなく披露したり、缶ジュースの開栓音やペットボトルを握りつぶす音をその場でサンプリングしてループさせるなど、ライブならではの演出がたくさん用意されていて、彼を観るために早い時間から来場していた大勢のオーディエンスを 湧かせていました。

来日も果たしたエスクモ
続いて登場したのは、来年2月に同じく〈ニンジャ・チューン〉から 2ndアルバムの発表が予定されているリーズ出身のバンド、ステイトレス。かつてのトリップホップを彷彿とさせるビートに、美麗なメロディ が絡むそのスタイルはDJシャドウをして「過去数年に耳にしたもののなかで、もっとも完璧に近い音のひとつ」と言わしめ、ヴォーカリストであるChris Jamesは実際にDJシャドウの3rd アルバム『The Outsider』の数曲で、その歌声を披露しています。当日はギター/ヴォーカル、ベース、ドラム、そしてラップトップの4ピースバンドとして出演し、先行シングル「Ariel」を含む、来るフル・アルバムに収録され る楽曲の数々を披露していました。グリッチーでダークでありながらも、ロック・バンドとしてのダイナ ミックなサウンドも同時に期待できる彼らのサウンドは、今年20周年を迎えた〈ニンジャ・チューン〉が提示する、新たな方向性を象徴していると言えるかも知れません。

盛りあがるオーディエンス
午後11時30分、僕は3番手として出演しました。今回はとくにゲストを迎えず、基本のスタイルであるソロとして演奏しました。よくも悪くも、僕はどのイヴェントに出演しても、音楽的にアウトサイダーになることが多く、前後の出演者との流れを考えてセットリストを組むことが多いのですが、この日は文字通りの異種混合ラインナップで、とくにそういった必要がなかったため、個人的にいま現在モチベーションの高い曲のみをチョイスして演奏しました。必然的にミニマルをテーマにした新曲群が大半を占めたのですが、フロアからの好意的なリアクションに、大きな手応えを感じました。

いつものように熱演するアンカーソング
ヘッドライナーとして先陣を切ったのはレッド・スナッパー。かつてはいかにも〈ワープ〉のアーティストらしい、ミニ マルでエレクトロニックな音楽性を標榜していた彼らですが、現在はウッドベース、サックス、ギター、ドラム、エレクトロニクスという5人編成のバンドとして活動しており、音楽的にはテクノというよりは、プログレッシブなジャズに近いと言えます。メンバーの平均年齢は40代前半~後半といったところです が、彼らの若干渋めの演奏に対しても、フロアを埋め尽くした若いオーディエンスはとても素直に反応していました。

ダブルベースが目印のレッド・スナッパー
深夜1時半、もう一組のヘッドライナー、プラッドの登場。アンディ・ターナー、エド・ハンドレイのふたりによるユニットは、10年以上に渡って〈ワープ〉から作品を発表し続けているほか、メンバーがそれぞれ他名義で方向性の異なる作品を発表したり、日本でも2006年に『鉄コン筋クリート』にサウンドトラックを提供したりと、その活動は多岐に渡ります。当日は巨大なデジタル・コンソールをステージに持ち込み、それを2台のラップトップでコントロールするという大がかりなものでしたが、セット内容はフロアを意識したミニマルなテクノに終始し、最 高潮を迎えたフロアのオーディエンスは一心不乱に踊り続けていました。

つねに最高のエレクトロニック・ミュージックを演奏するプラッド
そしてこの日のトリを飾ったのはルーク・ヴァイバート。別名儀のワゴン・クライストとしての作品を含め、非常に多作なこ とで知られる彼は、〈ワープ〉と〈ニンジャ・チューン〉の両方から作品を発表している数少ないアーティストのひとりです。かのエイフェックス・ツインをして、「尊敬できる数少ないアーティストのひとり」と言わしめたりと、少しインテリジェント気味のテクノやブレイクビーツをトレードマークとしている彼ですが、当日はすっ かり酔いが回ったオーディエンスの気分を察してか、自身の曲はいっさい披露せず、ミニマルなテクノにベタベタのサンプリングネタを絡ませるという、いかにも明け方のクラバーたちが喜びそうなセットで、大いに盛り 上げていました。

貫禄充分のルーク・ヴァイバート
音楽性という面では、一見あまり一貫性のないラインナップでは あったものの、蓋を開けてみれば興行的には大盛況で、耳の肥えた週末のロンドンっこの間では、音楽性うんぬんよりも、「アゲてくれる音ならなんでもいい」という、とても健康的でオー プンマインドな姿勢が共有されているのだということを、改めて気付かせてくれた夜でした。
最近自宅や人前などでかけることが多い曲たちをご紹介します
1 |
Kenton Slash Demon - Sun - Tartelet |
|---|---|
![]() 2 |
Sound Stream - Tease Me - Sound Stream |
![]() 3 |
Gay Marvine - Lost In Music - It's Bath House Etiquette |
![]() 4 |
A Forest Mighty Black - Back Up Days - Drumpoet Community |
![]() 5 |
Cherryboy Function - Tornado - ExT |
![]() 6 |
Don Froth - 10,000cc - Phonica |
![]() 7 |
Steller - Terrence(Johnny D Remix) - Soweso |
![]() 8 |
Timmy Regisford - At The Club - Tribe |
![]() 9 |
Ikeda X - P-212.515 - - |
![]() 10 |
Orange Muse feat. Ania - Psychedelic Behaviour - Colorful |
SKA & SHUFFLE 十選
1 |
Mungo's Hi Fi and Marina P - Divorce A L'italienne - Scotch Bonnet |
|---|---|
![]() 2 |
Soothsayers Horns - Ganja Free - Universal Roots |
![]() 3 |
Longsy D - This Is Ska (Rydem Wiv Acid Mix) - Warlock |
![]() 4 |
Mule Train - Devil's Shack - Lamb Star Records |
![]() 5 |
The Tchiky's - Oide - Rudiments |
![]() 6 |
Natacha Atlas - Hayati Inta (Mickey Moonlight Remix) - Mo'Zik Records |
![]() 7 |
Stevie Wonder - Higher Ground - Motown |
![]() 8 |
Cirillo Pres. Trio Dubbales - Shalla Balla - White |
![]() 9 |
Thomas Fehlmann - The Road - Kompakt |
![]() 10 |
Dub Insurgent - Caballo Bounce - Near & Far Records |
喧嘩したり骨折ったりパソコン壊したり途中で終わったりやる曲を決めてなかったり、ざっくばらんかつスキャンダラスな無法地帯であるやに漏れ聞いていた神聖かまってちゃんのライヴもリキッドルームでのワンマンということで、アルバム発売日の12月22日に早くも仕事納めを終えたつもりで出かけたが、知り合いには会わなかった。やっぱまだ仕事納める日じゃなかったんだな......。
2曲続けて演奏されるということがない。1曲終わると何かしゃべり、次の曲をの子が決めてmonoに伝え、それをmonoはなんとか秘密裏にメンバーだけに伝えようとするのだが、monoのジタバタをあっさり無視しての子はマイクでこれからなにを演奏するかを呟いたり宣言したりする。2番目にやった"あるてぃめっとレイザー"を何度も初めてのように提案するの子にそれはもうやったからと説得しつつ、その繰り返しで進むライヴは、けれども別にほのぼのアットホームというわけではない。ギクシャクもしていないが、花壇や曲がり角や風鈴や洗濯物に気を取られながら、気になるたびに座って覗き込んでまた歩き出す散歩のようにいつの間にか進んでいる。
男性客の多さが意外だった。パンクというジャンルではたいてい、怒りは他者に向かうことが多いだろう。反戦や政治のことでなくても、情けない自分がいれば必ずその対照に何らかの他者がいて、自分の内面への言及もその他者を意識したものになる。けれどもの子の詞に他者の存在はほとんどない。ひたすら内心の描写が続き、しかもそれを変えたい、変えようという願望も明確には表されてはいない。
神聖かまってちゃんのライヴの雰囲気は、このの子の詩の世界を具現化したもののように思える。多くの若い男性客がバンドのなにに惹かれているのかは分からないが、ここでだけは他者のいる世界を抜け出し、自分を変えたいなどと神経をすり減らすこともなく、かといって非現実的な希望や"あるべき自分像"を押し付けられるようなストレスにさらされることもない。
![]() |
それから私は初めて観た神聖かまってちゃんのそのライヴで、なによりもの子という〈ヴォーカリスト〉を発見した、と思った。CDでは絶妙なバランスで整理され、美しく、爽快なまでに「完璧」と思えるほどのバランス感覚で施されているミックスが、当然だがライヴではある程度は混沌とする。そんな行儀がいいとは言えない空間で、意図的な混沌が塊と広がりのせめぎあいでフロアを包み込もうとしている。
細い体でバイセクシャルの雰囲気をもつロックンロール・ヴォーカリストというのは珍しい存在ではない。ミック・ジャガーにイギー・ポップ、マーク・ボランとかジョニー・ロットンとか忌野清志郎とかね。の子はその系譜にいるとてもステージ映えのするヴォーカリストだ。曲間のMCというのはきっとけっこう難しいんだろう。でも煽るMC(例えば清志郎)であれ畏まるMC(例えばどんと)であれ、長話であれ小咄であれ愚痴であれ、気取っていても素顔を見せても、「板(ステージ)」についているMCとついていないMCがあるだけで、それは最初からかなり運命づけられているように思う。22日のの子はAラインのシャツがさらに華奢なシルエットを際立たせ、さながら、えー、森のこびとのようだった。そして1000人を前にしてそのファンタジックなパンク・ヴォーカリストはまるごと板についていた。
そもそもが穿ち過ぎだったと言われるかもしれないが、音程を変えて女性のような声を使うのは、CDを聴いているときには、そのまま性別不明感、あるいはバイセックスを表すものとして聴こえていた。けれどもステージから発せられるの子の声は少し違って聴こえたのだった。熱いがなり声が突然平坦、あるいは冷淡なつぶやきに転換することもそうだが、そうした独特なヴォーカルの変化は、CDで聴こえていたような、例えばことにジェンダーを含んだ多重人格的なキャラクターの使い分けのようなものとしてではなく、の子というひとりの人格としてのヴォーカリストのつながりのある心象表現として届いてきた。両者の違いはけっきょくのところ些細なことでもあるが、歌の届き方の点で私はずいぶんと違った印象を受けた。
数個の人格がさまざまな感情や気分を持っている、いわば小さな社会があるのではなく、あくまでもひとりの人間のなかにそれだけ複雑な感情や気分が去来するのだということを生々しく突きつける。激しく、まっすぐに。なぜだろう。ひとつには、ライヴならではのミックスで制御からはみ出してくる地声の存在感があったかもしれない。そしてなにより「板」に着くヴォーカリストの説得力があったと思う。
![]() |
後半、の子の声はますますよく出てくるようになっていった。"いかれたニート""怒鳴るゆめ""ねこラジ"、そしてただでさえヴォーカルが多くを語る"いくつになっても"と、"しょっちゅう座り込みながらの散歩"というペースは少しも変わっていないのに、気持ちは耳は目はまっすぐにステージに、の子に貼り付いたままになっていく。"東京では初めて"だし、ちゃんとできるか自信がないと言ってはじめた"いくつになっても"はたしかに歌詞は間違っていたけれど、神聖かまってちゃんの、の子の、具体的な形としてではないにしても、過去から未来までのその心象風景にちらちら揺れる光や影を見晴らすように強く迫るものがあった。
その後の"天使じゃ地上じゃちっそく死"から本編ラストの"学校に行きたくない"までは、気ままに曲を選んでいるようでいて実は明晰に考えてるんじゃん! と確信したくなる圧倒的な構成となった。の子が、会場の終焉予定時刻を牽制するようにアンコールの延長をほのめかす気持ちも分かる気がするほど、彼の"声"はまだまだこれから、って言っていた。
![]() |
Shop Chart
![]() 1 |
![]() 2 |
||
|---|---|---|---|
![]() 3 |
![]() 4 |
||
![]() 5 |
![]() 6 |
||
![]() 7 |
![]() 8 |
||
![]() 9 |
![]() 10 |
















