「AY」と一致するもの

ele-king vol.21 - ele-king

DYGL(デイグロー)と水曜日のカンパネラ
2大ロング・インタヴュー掲載!

2017年の音楽にはどんな傾向があったのか? 何がおもしろくて、何がつまらなかったのか? 渋谷系は復活したのか? NYのポストパンクは日本に飛び火したのか? アンビエントニューエイジブルゾンちえみは女の味方なのか? バブルは本当にリヴァイヴァルしているのか? 座間の殺害事件が意味するものとは? インディ・ロックはインスタになりはてたのか? DYGLがいまいちばんエネルギッシュなインディ・バンドである理由と水曜日のカンパネラに期待する理由。ブレードランナートレインスポッティングツイン・ピークス。お嬢さんとダニエル・ブレイク坂本龍一コーネリアス。2017年、クリエイティヴィティとコンテキストにおいてもっとも優れたアルバムは何だったのか?

contents

●インタヴュー:DYGL 大久保祐子+野田努/写真:当山礼子

●2017年間ベスト・アルバム30枚
(大久保祐子、木津毅、小林拓音、坂本麻里子、沢井陽子、髙橋勇人、野田努、松村正人、三田格)
・ post-punk / jazz rock 野田努
・ ambient 小林拓音
・ untrue 髙橋勇人
・ electronic / experimental デンシノオト
・ techno 行松陽介
・ grime 米澤慎太朗
・ us hip hop 吉田雅史
・ house 貝原祐介
・ jazz 小川充
・ indie rock 大久保祐子
・ neo classical 八木皓平
・ avant-garde 細田成嗣
・ japanese rap music 磯部涼
・ ny 沢井陽子
・ london 髙橋勇人
・ japanese indie イアン・F・マーティン
・ fashion 田口悟史
・ gadget / technology 渡辺健吾
・ politics 水越真紀

●特別対談:もしかして、またバブル? さやわか × 三田格

●インタヴュー:水曜日のカンパネラ 野田努+三田格/写真:押尾健太郎

●特別対談:セックスしてとりみだせ! 白石嘉治 × 栗原康

●映画ベスト10
(坂本麻里子、木津毅、水越真紀、三田格)
・ 『ブレードランナー2049』 木津毅
・ 『T2 トレインスポッティング』 野田努
・ 『哭声/コクソン』『クローズド・バル』 三田格
・ 『ツインピークス The Return』 坂本麻里子
・ 『Fate/Apocrypha』『Fate/stay night [Heaven's Feel]』 坂上秋成

●REGULARS
・ サマー・オブ・ラヴから50年 三田格
・ アナキズム・イン・ザ・UK 外伝 第12回 ブレイディみかこ
・ 乱暴詩集 第6回 水越真紀
・ 音楽と政治 第10回 磯部涼
・ ピーポー&メー 最終回 戸川純

Tomoko Sauvage - ele-king

 都市空間のなかで生活をするわれわれは、日々、変化する環境の只中に身を置いている。人が作り出した環境は豊かにもなるし、朽ちもする。人工的な空間が自然を破壊するかと思えば、自然は人工の領域へと浸食もする。人の意志によっては適度に共存することもできる。環境は時と共に変化をするし、場所を少し変えれば別の環境へと移行もする。
 とうぜん環境が変われば音環境も変わる。暴力的な音が鳴り響くときもあるし、人と環境に配慮する音が快適に鳴りもする。作為の介在しない自然の音が聴こえてくるときもあるだろう。そのような環境の変化は人の心身になんらかの影響を及ぼす。心と環境の関係はあまりに大きい。不穏。不安。恐れ。とすればアンビエント・ミュージックは環境と心=身体の関係を微調整し修復するものではないか。
 人は音を鳴らす。世界も音を発する。触れれば何らかの音がする。叩けば音が鳴る。音は「世界」と「私」の「あいだ」に存在する。その「あいだ」がアンビエントといえないか。それゆえ人が環境のただなかで音を鳴らすとき、自然なるものへの、畏怖と尊敬が生まれなければならない。音が「先にあること」を実感すること。音に/が、触れることの官能性を感じること。そして官能と尊厳はイコールだ。尊厳なき環境は荒む。

 トモコ・ソヴァージュは、横浜出身・現パリ在住のサウンド・アーティストである。彼女は水を満たした磁器のボウル、ハイドロフォン(水中マイク)、シンセサイザーなど組み合わせた独自エレクトロ・アコースティック楽器を用いて、水と磁器が触れ合う透明で美しい音響を生み出している。

 彼女は、2008年に、スイス出身・ベルリンを拠点に活動をするサウンド・アーティスト、ジル・オーブリー(Gilles Aubry)との共作『Apam Napat』を〈Musica Excentrica〉というロシアのレーベルからデジタル・リリースした(ジル・オーブリーは、フィールド・レコーディング・レーベル〈グルーエンレコーダー(Gruenrekorder)〉からのリリース作品もある)。
 翌2009年、実験音楽レーベルの老舗〈and/OAR〉からソロ・アルバム『Ombrophilia』を発表した。この『Ombrophilia』は、世界中の開かれた耳を持つ聴き手に静かに浸透し、リリースから3年後の2012年に、ベルギーの実験音楽レーベル〈Aposiopèse〉からヴァイナル・リイシューもされた。まさにトモコ・ソヴァージュの代表的アルバムといえよう。2009年には、〈カール・シュミット・フェアラーク(Karl Schmidt Verlag)〉からCD-R作品『Wohlklang: 14. Nov』もリリースする。
 本作『Musique Hydromantique』は、それらに続くトモコ・ソヴァージュのソロ・アルバムだ。リリースはガボール・ラザールフェリシア・アトキンソン、ガブリエル・サロマンなどのラインナップで知られる〈シャルター・プレス〉から。マスタリングはラシャド・ベッカーである。
 アルバムには“Clepsydra”、“Fortune Biscuit”、“Calligraphy”の全3トラックが収録されている。中でも約20分に及ぶ3曲め“Calligraphy”における水滴とドローンに満たされていく静謐な音響空間に耳を澄ましていると、時間の推移ともに聴覚の遠近法が変わってくる感覚を覚えた。その「音」が鳴っていた空間と、この「耳」が繋がり、「音」が身体に水滴のように浸透する……。デヴィッド・トゥープの言う「音が辺りに満ちてくる」とでもいうべきか。

 じっさい、 トモコ・ソヴァージュは音環境をそのまま録音しているようだ(本作の録音は編集なしのライヴ録音されたものだという)。拡張・録音された水や磁器の触れ合う音は、その時空間がそのままパックされ、多様な広がり・質感・肌理を有している。聴く者の環境や状況によってさまざまに表情を変えていく。
 水の音、モノの音、機械の音。自然の音。拡張された音。電気的なドローン、磁器ボウルの響き。それらの音は、ときに自然界に横溢する生物たちの鳴き声のようにも聴こえるし、機械から発せられる人工的な音のようにも聴こえもする。耳の遠近法は次第に刷新され、気がつけば、その響きの場所に連れていかれる。音と環境と人。時間と空間。その変化、差異によって、本作は聴き手が持っている音の遠近法を、ごく自然に書き換えてしまうのだ。そして聴き手である私たちに問いかける。「聴く」とは何か、「音と空間」とは何か、「音と時間」とは何か、と。

 本作には、まずもって「音」への尊厳がある。それは微かな畏怖ともいえるし、音=美への抑制の効いた精神性の発露ともいえる。音というオブジェクトが、「この私」より「先にあること」。その音たちを触れるように官能を感じること。鳴り響く音たちは、人間中心の音楽観・歴史に向けて発せられた音たちの微かな、しかしはっきりとした「声」に思えた。その「声」の肌理の変化に耳を傾けているとき、われわれは環境の繊細な変化に耳を傾けてもいるのだ。

BS0xtra - ele-king

XtraDub

Giggs - ele-king

 自分がMSCとか、SATELLITEとか、日本の「ギャングスタ・ラップ」を初めて聞いたとき、言葉は完璧に聞き取れるが、歌詞の意味は全く分からなかった。一聴平易な言葉遣いだが、ギャングスタの話法で語られるために、ストリートの外側には言葉が意味をなさない。それは「普通の言葉」に別の意味を重ねることによって、エリアの抗争・ドラッグディールといった内容を隠すことができる。彼らのダブルミーニング・比喩は、揉め事を回避するテクニックであり、ユーモアであり、エンターテインメントである。ここに紹介するUKのラッパー「ギグス」による最新ミックステープ『ワンプ・トゥ・デム(Wamp 2 Dem)』は、UK流の「ギャングスタ」の巧みな言葉遊びとストーリーを感じることができる。

 ギグスを〈XL Recordings〉に紹介したマイク・スキナー(ザ・ストリーツ)は彼のことをこう表現した。

ギグスは突如として現れ、一切妥協なしのリアルなストリートの話をスピットした、最初のUKギャングスタ・ラッパーだ。――マイク・スキナー

Don't Call It Road Rap

https://www.youtube.com/watch?v=xn-70oSrLgA

 ギグスは真のギャング上がりだ。10代の頃は、南ロンドンのペックハム・ボーイズ傘下のSN1に加入しギャングのメンバーとして活動しながら、ストリートでの高い人気から2009年に〈XL Recordings〉と契約し2枚目のアルバムをリリースした。しかし、彼は警察の圧力で出演を中止させられ、メディアに取り上げられることも少なかった。
 こうした状況を変えたのは、2013年頃から出てきたGRMデイリー(GRM Daily)、リンク・アップ・ティーヴィー(Link Up TV)といった動画メディアであった。彼らはギグスをはじめとするギャングスタ・ラッパーのミュージック・ビデオを制作し、世界に公開した。
 昨年リリースされた待望の5枚目のアルバム『ランドロード』のヒット、そしてドレイクのアルバム『モア・ライフ』への参加は、UKラップの盛り上がりに火を付けた。しかし、一部のアメリカのラップ・ファンからはギグスのラップを「退屈だ」と批判したり、「ヒップホップの物真似だ」と揶揄したりする声が彼自身にも届いた。このビデオでは、彼自身に向けられたディスに対する怒りを隠さない。

 前置きが長くなったが、本作『ワンプ・トゥ・デム』(ジャマイカの英語「パトワ」で「What happened to them? (彼らになにがあった?)」)は、「ギグスら」を攻撃する「彼ら」をポップカーン、ヤング・サグら第一線のラッパー・歌い手とともに皮肉っぽくたしなめる。

くだらないトークショーはクソだ、奴らは吸いまくってる
あいつらは今や文無しだ、奴らのただ男同士のオナニーだ
奴らはマカーレーを見ながら、コカイン吸ってるだけだ * ――“Ultimate Gangsta feat. 2 Chainz”

* マカーレーとは、アメリカの俳優、マカーレー・カルキン(Macaulay Culkin)のこと。「コカインを吸う(Niggaz is coking)」とマカーレー・“カルキン”の言葉遊びでもある。

 目下クラブヒット中の6曲目“リングオ”のフックは、彼らの「言葉」に焦点を当てている。

ウィングにいる仲間に感謝
別の仲間は道を歩く、合法的に
2人のビッチがキス、まるでバイリンガル
奴らは俺の言葉(“Linguo”)がわからない
ブラッ、ブラッ!
そう、それが俺の着信音
俺はピンクの札束を持ち歩く
ベイビー、プッシーをこっちに寄越しな
「あのこと」については気にしなくていいぜ
――“Linguo feat. Donae'O”

 ウィング=刑務所、ピンクのお金=50ポンド紙幣と言った言い換えは、彼ら独特の「言葉」である。そして文字通り、スラングがわからない「奴ら」とは、他のエリアのギャングであり、アメリカでギグスを批判するラップ・ファンのことを言っているのかもしれない。10曲目“アウトサイダース”では、ギグスが南ロンドン、客演のグライムMC、ディー・ダブル・イー(D Double E)&フッチー(Footsie)が東ロンドンをそれぞれ代表し、知ったかぶる「部外者」を口撃している。
 歌詞が聞き取れなくても、ギグスの低くホラーな声、ゆっくりと間を取ったフロウ、冷たいメロディとハイハットは十分魅力的だ。ロンドンのギャングスタのスカしてない「マジな」ラップが聴きたければ、この1枚がぴったりだ。

Teen Daze - ele-king

 カナダのアンビエント・ポップ詩人ティーン・デイズ(ジェイミソン・アイザックのソロ・プロジェクト)。彼ほど2010年代初頭の空気をまとっている音楽家もいない。チルウェイヴ、そしてドリーム・ポップ。今は消え去ってしまった気高いベッドルーム・ポップの10年代的な結晶。
 そんな彼の音楽を繊細すぎる、と思う人もいるだろう。しかし時が経っても、ジャンルのブームが過ぎ去っても、もしくは彼の音楽が変化を遂げても(バンド編成になったり、ソロになったり)、その音楽の本質は変わらない。
 2010年に発表された初期のデジタル・リリース『My Bedroom Floor』、『Four More Years』(カセット版もあり)、2012年にリリースされたファースト・フル・アルバム『All Of Us, Together』、セカンド・フル『The Inner Mansions』、2013年にリリースされサード・フル『Glacier』まですべて一貫しているのだ。世界の片隅で夢のような音楽を紡ぐこと。めぐる季節のような音楽を生みだすこと。
 そして2017年初頭にリリースされた5作目『Themes For Dying Earth』は、そんなティーン・デイズの現時点での最高傑作といっても過言ではないアルバムだった。ショーン・キャリー(Sean Carey)、ダスティン・ウォング(Dustin Wong)、サウンド・オブ・セレス (Sound Of Ceres)、ナディア・ヒュレット(Nadia Hulett)などの多彩なゲストを招きながら制作された『Themes For Dying Earth』は、やわらかな空気のようなアンビエンスがトラックに横溢しつつも、なによりメロディが際立っていた。バンドからソロに回帰しつつも、よりパーソナルな曲や録音方法で制作されていても、どこか「外」に向かって開かれているような開放感があったのだ。
 そう、ティーン・デイズはトラックメイクが優れているだけではなく、まずもって曲が良い。彼は優れたソングライターなのだ。それが彼の音楽の普遍性の要因に思える。つい口ずさんでしまうような親しみやすさと、しかし通俗に流されない品の良さがある。

 対して、今年2作目(!)となる新作『Themes For A New Earth』は,「『Themes For Dying Earth』と対をなす作品」とアナウンスされているアルバムで、全編インストゥルメンタルだ。『Themes For Dying Earth』制作時のトラックというが、いわゆる「アウトテイク集」といった雰囲気はなく、1曲めから最終曲までの流れもスムーズで、アルバムとして見事に構成されている。彼のアンビエント・アーティストの資質が全面化している作品といえよう。
 とはいえ、冒頭の“Shibuya Again”(なんという曲名!)を経て始まる2曲め“On The Edge Of A New Age”は、アンビエントなサウンドのなか、明確なビートもコード進行もあり、歌声が入ればヴォーカル・トラックになってしまいそうなほど。細やかに色彩豊かに展開するポップ・アンビエント・サウンドは丁寧に仕上げられた工芸品のようだ。

 つづく3曲め“Kilika”も同様にポップなインスト曲で、ギターのミニマルなアルペジオとシンセ・メロディが心地よい。4曲め“River Walk”はビートレスなアンビエント曲。サイケデリックに揺らめくギターの音色が耳にやさしい。同じくアンビエントな5曲め“An Alpine Forest”をはさみ、6曲め“Wandering Through Kunsthal”ではミニマルなビートが鳴る。曲調にはソングライティングの痕跡を感じさせるものの、アンビエントなサウンドからは冬の予感のようなものを感じてしまう。どこかザ・ドゥルッティ・コラムを思わせもした。
 7曲め“Station”、8曲め“Echoes”、9曲め“Prophets”のラスト3曲では、ブライアン・イーノを尊敬しているというティーン・デイズならではのアンビエント・サウンドが展開される。アルバムのアートワークのように冬の海をイメージさせるような清冽な音世界。『Themes For Dying Earth』が春から夏の記憶なら、『Themes For A New Earth』は秋から冬の記憶だろうか。

 それにしても「滅びゆく地球」をテーマにした『Themes For Dying Earth』がポップ・ミュージックのフォームを展開していたのに対して、夢の結晶のように美しいアンビエント音響へと至る『Themes For A New Earth』が「新たな地球」をテーマにしている点が面白い。季節が変わり世界が静寂に満ちるとき惑星が新生する、とでもいうように。
 地球と季節。春から夏。秋から冬へ。季節とは小さな死の連鎖である。惑星は死に、そして再生する。ティーン・デイズの音楽もまた(表現方法が電子音楽であっても、バンド編成であっても)、めぐる季節のようなライフ・ミュージックなのだと思う。

 また、『Themes For Dying Earth』や、本作『Themes For A New Earth』を聴いていると、不意に80年代の〈クレプスキュール(Crépuscule)〉や、ルイ・フィリップ(Louis Philippe)がアルカディアンズ(The Arcadians)でリリースした『Mad Mad World』を思い出した(先に書いたドゥルッティ・コラムも)。やはり小さな絶望と儚い美を感じるからか。そういえばJefre Cantu-LedesmaがAlexis Georgopoulosとコンビを組んだ『Fragments Of A Season』も同じようなムードのアルバムだった。
 ノイズからアコースティックへ? 今はこういったアコースティックとエレクトロニックのあいだにあるようなやわらかい音が求められつつあるのかもしれない。

 ちなみにオリジナル盤のリリースは『Themes For Dying Earth』につづいてティーン・デイズ=Jamison Isaakの自主レーベル〈フローラ(FLORA)〉からだが、CD盤(枚数限定盤)は日本優良のレーベル〈プランチャ(Plancha)〉から、愛情に満ちたデザイン/プロダクトでリリースされたことも付け加えておきたい。

BS0xtra with V.I.V.E.K - ele-king

 急な話ですが、今週の12月13日(水曜日)、ロンドンからダブステップのプロデューサー、V.I.V.E.Kが来日。これは、ブリストルを中心としたサウンド&カルチャーをここ東京に浸透させるべく始動した〈BS0〉の番外編〈BS0xtra〉(CHART参照)のゲストとしての来日になる。
  V.I.V.E.Kは、レーベル〈SYSTEM〉を主宰、サウンドシステム・カルチャーの視点からUKダブ/ダブステップをプレイする、現シーンの重要人物のひとり。いまアツい注目を集めている彼が、CONTACTのシステムをどう震わせるか、迎え撃つレギュラー陣が作り上げる空気とともにお楽しみください。

BS0xtra with V.I.V.E.K
at Contact Tokyo (Shibuya)
Wednesday 13th December 2017
9pm - 4am
¥1,500(w/1drink)

Facebook event page:
https://www.facebook.com/events/1991206010905951/

Guest:
V.I.V.E.K (SYSTEM, UK)
DJs:
DADDY VEDA (Antidote Concilium)
KILLA
Mars89 (Noods Radio Bristol / Radar Radio London)
NullDaSensei (TwinFox / NightVision)
OSAM GREEN GIANT (Soi Productions)


■V.I.V.E.Kプロフィール

 ダブステップ・サウンドにおいて、140bpmで制作された豊かな音楽の遺産に敬意を表しながらジャンルを推進していると賞されるアーティストは数えるほどしかいない。V.I.V.E.Kという別名で知られるヴィヴェク・シャルダは、そんなアーティストの中のひとりである。彼は、ダブステップのテイストメイカーや影響力のある人々の小さなグループの中で揺るぎない存在と言える。
 その音からも分かるように、V.I.V.E.Kは自身のインド人としてのルーツと、ドラム&ベースやダブをプロデュースしていた00年前後の初期の経験を基にした、豊かで多様なバックグラウンドを持つ。07年に〈On The Edge〉からダブステップの作品でデビューして以降、ダブステップのジャンルの中で最も尊敬されるレーベル〈DEEP MEDi〉〈Tectonic〉そして最も最近では〈SYSTEM MUSIC〉を通じ、アンセムを連発してきた。それらのリリースは、自身が受けてきた音楽的影響を組み合わせて、鋭い中域、軽快なスネア、重いローエンドの轟きを特徴とするサウンドを形成する能力を、レーベルがどこであれ示している。本当に美しい、メロディックな存在感は言うまでもなく。
 彼の音楽に加え、ロンドンに拠点を置くこのプロデューサーは、尊敬されるイヴェント・プロモーターとして、ダブとダブステップへの愛をカスタム・ビルドのサウンドシステムで融合させる。ピュアなサウンドと、とてつもない重低音を両立させる明確な努力を積み重ねてきた。英国内外で100%ダブステップのラインナップが消え、“ダブステップ”という用語が商業的な雑音と結びついている昨今において、〈SYSTEM〉はオリジナルのダブステップ・サウンドのファンのためのイヴェントへとステップアップした。 現在、〈SYSTEM〉と〈SYSTEM MUSIC〉はベースミュージック界で最も即座に認識されるブランドとなった。デビュー・リリース以来、V.I.V.E.Kが140bpmの音楽にどれだけの影響を与えたのか、これはその例のほんの2つにすぎない。彼は正にインスピレーショナルな看板役であり、他のプロデューサーがキャリア全体でするようなことを、たった7年で成し遂げている。

https://www.wearesystem.co.uk
https://www.facebook.com/viveksystem

Phuture - ele-king

 12/15(金曜日)、場所は渋谷VISION、シカゴ・ハウスの伝説、フューチャーがライヴをやります。もちろんあのフューチャー。「アシッド・トラックス」のフューチャーです。まあ、控え目に言っても必見ですな。

『EMMA HOUSE』
今回のゲストはDJ EMMAのアイデンティティに深く刻まれる“ACID”のオリジネーター“Phuture”が満を持して登場する。
1985年にDJ PierreとHerb J、Earl “DJ Spank Spank” Smithによってスタートしたシカゴ・ハウス・グループPhuture。アシッド・ハウスのイノベーターとして広く知られ世界でムーヴメントを起こした彼らのサウンドは必聴である。
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30年に渡り、東京のクラブシーンの第一線で輝き続けるDJ EMMA。
日本全国で数々のパーティを成功させ、永きに渡り日本のダンスミュージックシーンに多大な影響を与えてきた。DJ EMMAの代表するパーティ”EMMA HOUSE”は常にDJ EMMAが音楽と真摯に向き合う、まさに真のDJが作り出す唯一無二の世界。今回も国内外から豪華アーティストが集結する。今回のゲストはDJ EMMAのアイデンティティに深く刻まれる“ACID”のオリジネーター“Phuture”が満を持して登場する。1985年にDJ PierreとHerb J、Earl “DJ Spank Spank” SmithによってスタートしたシカゴハウスグループPhuture。アシッドハウスのイノベーターとして広く知られ世界でムーブメントを起こした彼らのサウンドは必聴である。

~LINE UP~

◉GAIA

RESIDENT:
DJ EMMA
LIVE:
Phuture
DJ:
PUNKADELIX (MAYUDEPTH)

◉DEEP

DJ:
DJ TASAKA
DJ Shufflemaster
Mustache X
LIL’ MOF

◉WHITE

KEN HAMAZAKI

◉D-Lounge

DJ:
MAGARA
YOPPI
LONO3 (NIGHTTRAIN)
yumi-cco
Daisuke G.

OPEN 22:00
¥3,500 DOOR
¥3,000 With Flyer
¥2,800 ADV


○e+
https://iflyer.tv/ja/event/295939/

○clubberia
https://clubberia.com/ja/events/274344-EMMA-HOUSE/

○RA
https://jp.residentadvisor.net/events/1035954

◉公式website
https://www.vision-tokyo.com/event/emma-house-5

interview with Cassie Ojay (Golden Teacher) - ele-king


Golden Teacher
No Luscious Life

Golden Teacher / ビート

DiscoFunkDubAfroPost-Punk

Amazon Tower HMV iTunes

 昨年出たパウウェルのアルバムは、やはりひとつの画期だったのだろう。今年に入ってからというもの、チック・チック・チックマウント・キンビーキング・クルールやLCDサウンドシステムなど、80年代のポストパンク・サウンドを導入した作品のリリースがあとを絶たない。アラン・ヴェガの遺作もこの流れに位置づけることができるし、エンジニアにスティーヴ・アルビニを迎えたベン・フロストもまたこの趨向に従っていると言える。そんなポストパンク・イヤーを締めくくるかのように、オプティモに見出されたグラスゴーの6人組バンド、ゴールデン・ティーチャーがファースト・フル・アルバムを完成させた。
 シングルで展開していた実験的な側面はやや控えめに、よりダンサブルな方位を志向した『No Luscious Life』は、ESGやダイナソー・L、コンクやマキシマム・ジョイといった先輩たちのイメージを振り撒きつつも、クラブ・カルチャーを経由した今日的なプロダクションとアフリカ音楽の独自の解釈をもって、単なる回顧主義に留まらないポテンシャルの片鱗を覗かせている。
 今年はアンビエント~ニューエイジの領野でも80年代を参照する動きが目立ったが、それはおそらくいまの情況が、かつてのレーガン=サッチャー=中曽根の時代と似通っている、ということなのだろう。ゴールデン・ティーチャーのこのアルバムもそのような時代のムードに敏感だ。「甘い生活なんかない」と謳うアルバム・タイトルは昨今の世相を反映しているかのようだし、じっさい“Sauchiehall Withdrawal”では最低賃金で働かざるをえない人びとのことが歌われている。

   

いつだって一生懸命働いてる でもなんで?
いつだって一生懸命働いてる でもなんで?

 メンバーそれぞれで出自が異なるという彼らは、そもそもどのようにして出会い、ともに音楽を作り始めることになったのか。そして彼らはいまどのようなことを考えているのか。ヴォーカルのキャシー・オジェイが答えてくれた。

テーマは最低賃金で働くことについて。以前はストリートの組合があったから良かったんだけど、いまは存在していないから、労働条件が悪化しているの。ときに罠にはめられているような気がするのよね。

ゴールデン・ティーチャーはどのように結成されたのですか? アルティメット・スラッシュとシルク・カットというふたつのグループが母体になっていると聞いたのですが。

キャシー・オジェイ(Cassie Ojay、以下CO):私たちのほとんどがグリーン・ドア・スタジオ(若いミュージシャンたちのための育成コースを運営している拠点)で出会ったの。当時、オリヴァーとローリーはアルティメット・スラッシュ(Ultimet Thrush)にいて、サムとリッチはラヴァーズ・ライツ(Lovers Rights)っていうバンドにいた。チャーリーはブルー・サバス・ブラック・フィジー(Blue Sabbath Black Fiji)っていう素晴らしいバンドにいたんだけど、彼はその時点でツアーの経験も豊富で、曲もたくさん書きためていたの。一方私は、そのときまだ高校を卒業したばかりだった。まだ17歳で、歌うことが大好きだったから、そんな重要な時期に彼らと出会えたのはすごく良かったわ。いろんなことを学んで、たくさんのことを吸収している時期だった。みんな出会ってから、互いに成長し合ってきた。そして、自然にバンドを組むことになったの。それまではただ自由に一緒に音作りをしているだけだったんだけどね。チャーリーに初めて会ったときは、ほとんど話さなかった。暗い部屋に入って、自分たちが聴いたことのない、他のメンバーが作ったトラックの上から、ふたりでヴォーカルを乗せたの。それが結果的に3枚めのシングル「Party People」としてリリースされることになったのよ。

「ゴールデン・ティーチャー」というバンド名の由来を教えてください。

CO:由来はマジックマッシュルーム(笑)。でも、グリーン・ドア・スタジオを運営している人たちがみんなオズの魔法使いみたいだったから、ゴールデン・ティーチャーたちという意味も込めているのよ。私たちは先生たちからすごく影響を受けているし、レコーディングする機材を使わせてもらったりもした。そのふたつから来ているの。

バンド・メンバー全員に共通しているものは何でしょう?

CO:私たちって、みんな本当にキャラが違うのよね。それがこのバンドの利点になっていると思う。みんなが異なる音楽のテイストと世界観を持っていて、それがうまく機能している。自分たちで互いを刺戟し合っているのよ。たとえばチャーリーはファンクが大好きなんだけど、彼がファンクのトラックを作ろうとしても、他のメンバーの影響が入るから、ふつうのファンク・トラックには仕上がらない(笑)。共通点があるとすれば、それは音楽への情熱ね。その音楽が違っても、注ぎ込む愛情は同じなの。それが混ざり合っておもしろいものが生まれているんだと思う。

あなたたちの音楽からはESGやアーサー・ラッセルの影響が感じられます。バンド・メンバーはじっさいにはどのような音楽から影響を受けてきたのですか?

CO:さっきの答えとも繋がるけど、みんな影響を受けてきたものが違うの。私個人は、子どもの頃はゴスペルに影響を受けていた。あとはポール・ロブソンがお気に入りだった。そういった音楽がきっかけになって、自分も歌いたいと思うようになったの。あと、母親が〈Studio One〉のレコードをたくさん持っていたから、それも聴いていた。一方で、チャーリーはマイケル・ジャクソンとかプリンスとか、そういう音楽が好きなの。だから、ニューヨークからデトロイトまで、影響は本当に幅広いのよね。

通訳:ESGやアーサー・ラッセルの影響に関してはどう思いますか?

CO:ESGはよく言われる。でも、彼らのパンクの精神は私たちと共通していると思うけど、音楽的にあまり影響を受けているとは自分では思わない。一緒にツアーをしたからライヴも何度か見たけど、やっぱり共通しているのはパンク・スピリットだと思う。

じっさいに彼らとツアーをして接してみた感想は?

CO:すごく良い経験だった! ヒーローにはじっさいには会わない方がいいとか言われてるけど、会えて本当に良かったわ。一緒にツアーができて、すごく光栄だった。

通訳:彼らから何か学びましたか?

CO:学んだとは思うけれど、彼らってすごくプライヴェートを大切にする人たちで、私たちは逆にやかましいのよね(笑)。でも、バックステージの雰囲気はすごく良かった。互いのパフォーマンスも見られたし、私たちも彼らもそれを楽しむことができて本当にナイスだった。

かつてESGやダイナソー・Lといったバンドが成し遂げた最大の功績は何だと思いますか?

CO:いい質問ね。ESGは女性だけのバンドだったし、かつメッセージ性の強い音楽を作っていた。それは革新的だったと思う。あと、それなのに複雑すぎずシンプルだったのがすごく良かったと思う。そのふたつのバンドが、当時はふつうではなかったことをその時代にやっていたと思うの。彼らはその時代の柵を乗り越えた。そこが最大の功績だと思う。

あなたたちの最初の3枚の12インチは〈Optimo Music〉からリリースされています。オプティモのふたりとはどのように出会ったのでしょう?

CO:オプティモはかなり長い間グラスゴーで活躍しているんだけど、彼らが毎週日曜日にクラブ・ナイトをやっていたとき、メンバーの何人かがそれに通っていたの。私は若すぎて行けなかったんだけどね(笑)。10歳くらいだったから(笑)。それでエミリーが彼らを知っていて、私たちのEPを彼らに送ったの。それを彼らが気に入って、リリースが決まったのよ。私もそのクラブ・ナイト行きたかったな~(笑)。最初のEPを出したときも、高校を卒業したばかりでまだ17歳だった(笑)。だから、最初は若すぎることがコンプレックスだったのよね。でも、いまはもう24歳だから大丈夫(笑)!

2015年にはデニス・ボーヴェルとの共作12インチも出していますね。そのときのコラボはどういう経緯で実現したのですか?

CO:彼が誰か他のミュージシャンとグリーン・ドアでレコーディングしていて、それを知ったオプティモのキースが、私たちと彼を繋げてくれたの。それで、ゴールデン・ティーチャーの曲のヴァージョンをレコーディングすることになった。実際に彼とは会わなかったんだけど、彼がスタジオに入って、すでにでき上がったヴァージョンをアレンジしてくれたの。会ったことはないけど、すごくいい人って聞いてるわ。

スリッツやマキシマム・ジョイといったバンドからも影響を受けたのでしょうか?

CO:マキシマム・ジョイは受けていると思う。でもスリッツは……受けているとすれば、彼女たちのエナジーかな。うまく説明できないけど、彼女たちの型破りなところ。彼女たちがカヴァーしたマーヴィン・ゲイの“I Heard It Through The Grapevine”を聴いたとき、あのパッションとヴォーカルから感じられる怒りに驚かされたわ。あの本物な感じがすごく良かった。心を動かされた。マーヴィン・ゲイのソウルフルなヴォーカルにまったく引けを取らなかった。私たちのサウンドはもっと落ち着いているかもしれないけど、感情やパッションをそのまま出しているところはゴールデン・ティーチャーも同じね。

あなたたちにとって「ダブ」とは何ですか? 技法や技術でしょうか、それとも音楽のスタイルやジャンルのことでしょうか、あるいはもっと他の何かでしょうか?

CO:個人的には、ノスタルジックな気分にさせてくれるもの。自分が聴いて育ってきた音楽だから、本当に素晴らしいダブを聴いたときは、最高の気分になれる。レコーディングのテクニックとして、ダブ、ディレイなんかを使いはするけど、自分たちの音楽がダブっぽいとは自分では思わないの。だからバンドにとってダブはテクニック。私たちのスタイルではないわね。

その後〈Optimo Music〉からは離れ、2015年には12インチ「Sauchiehall Enthrall」と、最初の3枚をまとめたコンピレーション『First Three EPs』をご自身たちでリリースしています。そして今回のアルバムもセルフ・リリースです。そうすることにしたのはなぜですか?

CO:それが可能だからよ。最近はみんなDIYだし、自分たちがやりたいことに対してアクティヴ。だから、自分たちでできることは自分たちでやりたい。その方が自分たちでコントロールもできるし、自分たちにとってはそれが自然なことなのよね。

何かにインスパイアされることは誰もが許されていることだけど、何が盗みになるかはきわどいところ。それをクリアにするためには、アフリカに対するじゅうぶんな理解が必要だと思う。

新作1曲目の“Sauchiehall Withdrawal”は賃労働についての曲だそうですが、賃労働についてはどうお考えですか? 音楽制作と似ている点はありますか?

CO:そのタイトルは、グラスゴーのメイン・ストリートの名前なのよ。そのストリートへのオマージュなの。どちらかといえば、テーマは最低賃金で働くことについて。以前はストリートの組合があったから良かったんだけど、いまは存在していないから、労働条件が悪化しているの。ときに罠にはめられているような気がするのよね。音楽制作と繋がる部分はあると思う。だって、ここ数年の音楽業界ってボロボロでしょ(笑)? もう音楽でお金を稼ぐことって、できなくなってると思う。ニューヨーク、パリ、いろいろなところで演奏できているけど、それが終わればグラスゴーに帰ってレストラン・バーでバイトしてる。バンドにいるだけじゃもうお金は作れない。クリエイティヴになる空間と状況を得るにはお金も必要なのに、すごく残念なことよね。でも、それが現実なの。自分たちもそれを経験しているから、歌詞にそれが出てくるのよ(笑)。

2曲目“Diop”はセネガルの歌手アビー・ンガナ・ディオップ(Aby Ngana Diop)へのオマージュとのことですが、セネガルの音楽もゴールデン・ティーチャーに影響を与えているのでしょうか?

CO:セネガルだけじゃなく、西アフリカ全体の音楽に影響を受けているわ。

通訳:どのようにしてそういった音楽に触れるきっかけができたのでしょう?

CO:それはバンドのメンバーによって違うと思う。私の場合は、先祖が西アフリカ人だから、周りにあってつねに聴いて楽しんできた音楽なの。私は特にナイジェリアの音楽に影響を受けているわね。ハイライフ。たとえばフェラ・クティとか。オリヴァーとローリーはガーナによく行くから、ガーナの伝統的なドラムのリズムなんかに影響を受けている。みんなそれぞれ、アフリカの音楽とはパーソナルな繋がり方をしているの。

かつてトーキング・ヘッズが『Remain In Light』を出したとき、「欧米や先進国による第三世界の搾取だ」というような批判がありました。そういう見解についてはどうお考えですか?

CO:アフリカ音楽の要素の質問が出たとき、ちょうどこのことを話そうと思っていたところよ。じっさい、多くの白人ミュージシャンたちがアフリカ全体の音楽を取り入れていると思う。でも、彼らはそれでお金を稼いでいるけど、アフリカ現地のミュージシャンたちはじゅうぶんな稼ぎを得られていない。だから、文化の横領だといえば、それは否定できない。すごく難しい問題よね。何かにインスパイアされることは誰もが許されていることだけど、何が盗みになるかはきわどいところ。それをクリアにするためには、アフリカに対するじゅうぶんな理解が必要だと思う。トーキング・ヘッズの問題もすごく難しい問題だけど、多くの欧米のミュージシャンたちが第三世界のものを使って利益を得るという現象が続いているのは事実だと思う。この問題って、すごく複雑よね。エルヴィスもそうだと思う。ブラック・ミュージックを盗んで、お金を儲けたミュージシャンのひとりだと思うわ。でも、それによって黒人は何の利益も得られなかった。それは、いまも起こり続けているんじゃないかな。グラスゴーって、すごく白人が多いの。でもその中でも私たちって、メンバーそれぞれがいろいろな場所のミックスで、多種多様なバンドなのよね。そんな私たちの音楽がグラスゴーから世界に届いて、受け入れてもらえているのは嬉しいわ。

3曲目“Spiritron”では「We go interstellar, we never look back」と歌われていて、またシンセの一部はコズミックで、ギャラクシー・2・ギャラクシーのフュージョンを連想しました。これはどういうテーマで作られた曲なのでしょう?

CO:それはチャーリーに聞かないとわからない(笑)。私たちは互いのクリエイティヴさを尊敬して、その領域は邪魔しないようにしているから、私にはわからないの(笑)。みんなが自由に受け取ってくれたら、それがいちばんよ。

日本からはなかなか見えづらいのですが、いまグラスゴーのクラブ・カルチャーやアンダーグラウンドな音楽シーンはどのようになっているのでしょう? 注目しているアクトや動向があれば教えてください。

CO:グラスゴーの音楽シーンはすごくいいわよ。毎日ギグがあるし、チケットも高くない。街自体がクリエイティヴな街だし、音楽をやりやすい環境だと思う。周りの友だちにもアーティストやミュージシャンが多いから、互いを刺戟し合えるし、活動がやりやすいのよね。トータル・レザレット(Total Leatherette)っていうバンドがすごくいい。グラスゴーから出たこれまでのバンドの中で、いちばんエキサイティングなバンドだと思う。聴いたら衝撃を受けると思うわ。

ゴールデン・ティーチャーは2013年にフランツ・フェルディナンドのリミックスを手掛けていますが、今後リミックスしてみたいアーティストはいますか? あるいは逆に、自分たちの曲のリミックスを依頼したいアーティストがいれば教えてください。

CO:してもされても、ルーツ・マヌーヴァとコラボしたら、すっごいクールな作品が生まれると思う(笑)。

昨年のパウウェルのアルバム『Sport』から最近出たマウント・キンビーの『Love What Survives』まで、いま「ポストパンク」がひとつのトレンドになっているように思うのですが、2010年代後半にこういった80年代の音楽からインスパイアされた音楽をやる意義は何だと思いますか?

CO:わからないけれど、当時の音楽を新しいレコーディングの仕方や技術でやることでおもしろいものが生まれるんじゃないかしら。あと、2017年の音楽ってシンセばかりでオートチューンだらけでしょ? でも、アナログさや本物の音を求めると、いまでも80年代や昔の音楽にインスパイアされたものができ上がるんじゃないかしら。

他のバンドやDJにはない、ゴールデン・ティーチャーの最大の強みは何だと思いますか?

CO:やっぱり、私たちひとりひとりのパーソナリティがぜんぜん違うところね。もちろんみんな仲良しだけど、互いに妥協することがない。みんなが強い性格だから、全員の意見がすべて反映される。だからこそさまざまなジャンルが混ざった曲ができ上がるの。方向性もころころ変わる。ひとつのことにとらわれず、たくさんのものが詰まった大きな塊を作れるのが私たちの強みだと思うわ。

通訳:ありがとうございました!

CO:ありがとう! いつか、東京に行けるのを楽しみにしているわ!

interview with TOKiMONSTA - ele-king


TOKiMONSTA
Lune Rouge

Young Art / PLANCHA

Hip HopElectronic

Amazon Tower HMV iTunes

 トキモンスタが帰ってきた。2年前に重大な脳の障害を患った彼女は、二度にわたる手術の影響により音楽はもちろんのこと、動くことも話すこともできない状況にあったのだという。リハビリを終えた彼女はすぐにこのアルバムの制作に取り掛かったそうで、そのような闘病体験が霊感を与えたのか、新作『Lune Rouge』はこれまでの彼女のサウンドとは異なる優美さを湛えている。LAのビート・シーンから登場し、〈Brainfeeder〉からのリリースで一気に重要なプロデューサーの地位へとのぼり詰めた彼女だが、このニュー・アルバムは、フライング・ロータスの影響下にあったかつてのビートとも、EDMに寄ったセカンド・アルバムとも異なるポップネスを獲得している。ビートはより躍動的に、メロディはより叙情的に、ヴォーカルはよりソウルフルになった。そしてそこに、あるときはひっそりと、またあるときは大胆に、韓国や中国のトラディショナルな要素が落とし込まれている。この『Lune Rouge』における新たな試みは、めでたく復帰を遂げたトキモンスタの今後の道程を照らす、輝かしい燈火となることだろう。そんな彼女のこれまでの歩みを振り返りながら、4年ぶりとなる新作についてメールで伺った。

私の目標は、これらの伝統的なサウンドを、フェティシズムやアジア文化のエキゾチックな感覚ではない方法でシェアすること。この問題にどうやってアプローチするかはとても気をつけているわ。

あなたは幼少よりピアノなどを習い、クラシック音楽を学んでいたそうですが、そこからヒップホップに興味を抱くようになったのはなぜなのでしょう?

トキモンスタ(以下、T):じつはもともとピアノは弾いていなくて、両親の影響でクラシック音楽を学んでいたの。つまりクラシックが私の音楽の最初の入り口。それから私が他の音楽に触れることができる年齢になったとき、次に好きになったのがヒップホップだったわ。

ヒップホップやエレクトロニック・ミュージックを制作する際に、クラシックの素養はどのような助けになっていますか? あるいは逆に、その素養が足枷になることもあるのでしょうか? たとえば、プレイヤーとしてのスキルが作曲の可能性を狭めてしまうことはあると思いますか?

T:私は自分の音楽にクラシックのポジティヴと感じる側面のみを取り入れ、好きではないところは取り入れない。たとえば、私はクラシック作品の物語性は好きだけど、ルールや制約は好きではないの。

あなたは2010年にファースト・アルバム『Midnight Menu』を発表し、翌2011年に〈Brainfeeder〉からEP「Creature Dreams」をリリースして脚光を浴びました。あなたの出自はLAのビート・シーンにあると思うのですが、いまでもLAのシーンに属しているという意識はお持ちでしょうか?

T:私はいつもビート・シーンの一部であると思ってる。私たちはみんなLAでスタートして、いつもルーツはそのサウンドにあると感じているけど、私たちはそこから旅立ち、皆それぞれ異なる個性を持つミュージシャンへと進化しているわ。

カマシ・ワシントンやルイス・コール、ミゲル・アトウッド・ファーガソンらに代表されるようなLAのジャズ・シーンとは交流がありますか? また、彼らのようなプレイヤーと楽曲制作をしてみたいと思いますか?

T:私は現代のLAのジャズ・シーンが大好きで、すべてのアーティストを深く尊敬しいるわ。

同じ年にあなたはディプロやスクリレックスとツアーを回っていますね。そして翌2013年にはEDMのレーベルからセカンド・アルバムとなる『Half Shadow』をリリースしています。ファースト・アルバムとは異なる作風へシフトしましたが、そのときはどのような心境の変化があったのでしょう? EDMに関心があったのですか?

T:ディプロやスクリレックスとツアーを回ったけど、私の音楽は何も変わってないわ。「EDM」は作っていないし、いまだにアグレッシヴなダンス・ミュージックを作ったことはない。でも一方で、私はそれをひとつの芸術形態として尊重し、とても楽しいものだと思っているわ。私は〈Ultra〉から作品を出したけど、〈Ultra〉は私が作る音楽を制作してほしがっていたわけではないし、レーベルのアーティストがすでに作ってきた多くのものと同じものを作りたくはないと思っていたの。『Half Shadow』はもしかしたら〈Brainfeeder〉や他のレーベルでリリースされていたかもしれないけど、私はただ、より大きなレーベルでビート・シーンのサウンドが受け入れられるかどうかを見たいと思ったのよ。

昨年デュラン・デュランをリミックスしていましたよね。それはどういう経緯で?

T:デュラン・デュランのリミックスは、彼らから依頼が来たの。まさか彼らが私の音楽に興味があるとは思ってなかったので、依頼が来たときはとても驚いたわ。私は彼らとツアーもしたの。ツアーはシック・フィーチャリング・ナイル・ロジャースも一緒だった。私のようなエレクトロニック・アーティストにとって非常にユニークで、信じられない体験だったわ。

今回のニュー・アルバムはファーストともセカンドとも異なる作品に仕上がっています。本作の制作を始めた直後、難病を患ったとお聞きしていますが、病中の体験は本作に影響を与えましたか?

T:私はもやもや病という脳の病を患い、それを手術しなければならなかった。手術の副作用により、話すことも、言語を理解することも、身体をうまく動かすこともできず、さらには音楽を理解することもできなくなってしまった。もう一度音楽を理解できるようになるかどうかわからなかったときはとても恐ろしかったけど、最終的にはすべてが回復し、正常に戻った。精神的な能力を取り戻すとすぐに、私はこのアルバムの制作に取りかかったわ。

『Lune Rouge』ではヴォーカルがフィーチャーされたトラックがアルバムの半数以上を占めていますが、自身の楽曲に歌やラップといった言葉を乗せることにはどのような意味がありますか? ご自身で作詞されている曲はあるのでしょうか?

T:このアルバムでヴォーカルが配された曲は、それが適切だと思ったの。私はヴォーカルを別のひとつの楽器としてとらえることが好きだから。私はアルバムの2曲めの“Rouge”を自分で作詞して歌っているわ。

本作は1曲め“Lune”から2曲め“Rouge”までの流れや、ピアノが耳に残る4曲め“I Wish I Could”など、メロディアスな印象を抱きました。そういったメロディの部分と、ヒップホップのビートとを共存させるうえでもっとも注意を払っていることはなんですか?

T:私はつねに自分の音楽に感情だけでなく躍動感が欲しいと思っている。メロディは感情を作り、打楽器とドラムは躍動感を作る。両者の間には良いバランスがあるから、私はいつもそれを見つけようと努力しているわ。

先行公開された8曲めの“Don't Call Me”では、マレーシアのYuna Zaraiをフィーチャーしています。彼女とはどういう経緯で一緒にやることになったのでしょう?

T:Yunaとはマネージャーを通じて会ったのだけど、私たちはもともと互いの作品の大ファンだったのね。彼女は素晴らしいアーティストであると同時に素晴らしい人物でもある。この曲は本当に理解のある人によって生み出されたから特別なの。

あなたは過去に何度かアンダーソン・パクと共作していますが、近年の彼の活躍についてどう思っていますか?

T:私はアンダーソンがスターになっていくのを見るたびにハッピーな気持ちになってエキサイトしてる。彼は弟のような存在だし、私はただ彼がもっともっと輝く様子を見ていたい。

ご自身のルーツのひとつである韓国では、近年ヒップホップやR&Bを中心に、インディ・ロックやダンス・ミュージックなど幅広いジャンルで質の高い音楽が生まれていますが、現在の韓国の音楽で注目しているものはありますか?

T:私はいつも、変化している韓国の音楽にいつも興味を持っているわ。いまのところは、ビートや電子音楽を作る現地のプロデューサーについて学んでいるところね。

6曲め“Bibimbap(ビビンバ)”で使われているのは伽倻琴(カヤグム、Gayageum、가야금)でしょうか?

T:うん、そうよ!

最終曲“Estrange”でも伝統的な弦楽器が用いられていますが、これはなんという楽器でしょう? また、このアルバムには他にも韓国の音楽の要素が含まれていますか?

T:“Estrange”で使っている楽器は中国の弦楽器なの。アルバム全体にほのかに韓国の要素を通底させているわ。特に目立つのは“Bibimbap”だけどね。

積極的にそういった音を取り入れるのは、ご自身のルーツを打ち出したいという思いが強いからなのでしょうか?

T:私は多くの文化の中から伝統音楽に触れるのが好きなの。自分が韓国人である以上、当然韓国のカルチャーから生まれた音楽にもっとも親しみがあるわ。多くの人びとはモダンな音楽や、もしくはたぶん「オールディーズ」のような音楽に焦点を当てがちだけど、何世紀にもわたって存在してきた伝統音楽にはとても豊富な音楽があるの。

そういった要素を打ち出すことで、アジアの文化を世界に広めることができるという側面もありますが、逆に偏見やオリエンタリズムを増大させてしまう可能性もありますよね。そのバランスについてはどうお考えでしょう?

T:私の目標は、これらの伝統的なサウンドを、フェティシズムやアジア文化のエキゾチックな感覚ではない方法でシェアすること。この問題にどうやってアプローチするかはとても気をつけているわ。

いま〈88rising〉が、インドネシアのリッチ・チガや中国のハイヤー・ブラザーズなど、アジアのヒップホップを精力的にプッシュしていますが、そういった動きについてどう見ていますか?

T:彼らがやっていることは大好きよ。私たちがステレオタイプなアジア人のギミックや誇張として見なされない限り、あらゆる音楽分野で世界的に評価されることは素晴らしいわ。

あなたはTwitterでときおりトランプやホワイトハウスについて発言しています。いまの合衆国の状況についてはどのようにお考えですか?

T:私は現政権に不満を持ち、彼らの選択、コメント、決定に失望している。でも、つねに希望を持っているし、未来を楽しみにしているわ。

あなたの音楽について、いまでも「女性」という枠で括って捉えようとする人もいるのではないかと察します。そのことにストレスを感じることはありますか?

T:たしかにそれは少し過剰な表現のように感じるわ。でもそれは二面性を持った問題ね。女性プロデューサーの稀少さを強調するために、人びとは、私のような「女性プロデューサー」によってこのトピック全体が転換されていることを理解する必要があると思うわ。それはいつか、これ以上議論する価値がないほど一般的になるでしょう。

文化的なものには、すでに根付いてしまった社会的な因襲や慣習を変える力が具わっていると思うのですが、あなたが曲を作るときに、そういったことを意識することはありますか? 音楽や言葉や映像、アートやファッションなど、文化が持つ力についてどのようにお考えですか?

T:アーティストとしての私にとって、創造する理由とは、私が創造する必要性を満たすことなの。動機を持ったり、(ポジティヴでもネガティヴでも)政治的な課題のために音楽を作ったことはないわ。 私の目には、芸術ははっきりしていて、とても純粋なマナーの中で存在することができるように見える。でも芸術はその周りに文化を創造し、文化は人類の他の側面(政治や社会的活動など)と相互作用する。そこで私たちは、アート(音楽、ヴィジュアル、書かれたもの、ファッション、すべてのもの)がどのように文化になり、社会に変化をもたらすのかを見ている。私は自分の創造性を伝えるために音楽を作っているけど、その音楽は独自の生命を持って、インパクトを生み出し、変化を促す能力を持っているわ。それはとてもパワフルだと思う。

Various Artists - ele-king

 だいぶ前の話になるが、映画『アトミック・ブロンド』を観た。来年公開予定の『デッドプール2』の監督も務めるデヴィッド・リーチが作りあげたこのスパイ映画は、壁が崩壊する前夜のベルリン、年代で言えば1980年代末を舞台にしている。物語は、世界情勢に深く関わる極秘リストを奪還するため、MI6によってベルリンに送り込まれたロレーン(シャーリーズ・セロン)を中心に進んでいく。厳しいトレーニングを積んだうえで臨んだというシャーリーズ・セロンのアクションなど、見どころが多い内容だ。なかでも圧巻だったのは、スパイグラス(エディ・マーサン)を逃がすときにロレーンが披露する体技。ビルの階段を移動しながらおこなわれるそれは7分以上の長回しで撮られており、華麗に立ちまわるロレーンの姿がとても美しかった。
 アクションでよくある、ご都合主義的な綺麗さが見られないことも特筆したい。華麗に敵をなぎ倒していく様は映画的でも、戦うごとに体のアザは増え、それを手当てするシーンも随所で挟まれたりと、生々しい描写が際立つ。そうして傷だらけになるロレーンだが、被虐的な様子はまったく見られない。むしろ、スパイとしての凛々しい姿とプロ意識を観客に見せつける。その姿を観て筆者は、“カッコいい……”という平凡極まりない感想を呟いてしまった。

 『アトミック・ブロンド』は、劇中で流れる音楽も魅力的だ。ニュー・オーダー“Blue Monday 1988”、デペッシュ・モード“Behind The Wheel”、パブリック・エネミー“Fight The Power”といった、80年代を彩ったポップ・ソングが取りあげられている。しかも、ただ流すだけじゃない。MI6のガスコイン(サム・ハーグレイブ)が殺されるシーンでは、イアン・カーティスの死について歌われた“Blue Monday 1988”を流すなど、曲の背景と劇中のシーンを重ねるような使い方なのだ。ここに筆者は、デヴィッド・リーチのこだわりを見た。

 そのこだわりをより深く理解するため、映画のサントラである『Atomic Blonde (Original Motion Picture Soundtrack)』を手にいれた。本作は先に挙げた曲群を収録しておらず、そこは非常に残念だが、それでもデヴィッド・ボウイ“Cat People (Putting out Fire)”、スージー・アンド・ザ・バンシーズ“Cities In Dust”、ネーナ“99 Luftballons”など、劇中で使われた曲はだいたい収められている。
 とりわり目を引くのは、ボウイとの繋がりが強い曲を数多く起用していることだ。ボウイは1976年から1978年まで西ベルリンに住み、そこで得たインスピレーションを元に『Low』『Heroes』『Lodger』というベルリン三部作が作られたのは有名な話だが、このことをふまえて映画ではボウイが象徴的な存在になっている。
 面白いのは、それを少々ひねりが効いた方法で示すところだ。その代表例が、ニュー・ロマンティック期のエレ・ポップど真ん中なサウンドを特徴とする、アフター・ザ・ファイアー“Der Kommissar”。もともとこの曲は、オーストリアのファルコというシンガーソングライターが1981年に発表したシングル。重要なのは、このシングルのB面に収められた曲だ。“Helden Von Heute”というそれは、ボウイの代表曲“Heroes”へ賛辞を送るために作られた曲で、メロディーは“Heroes”をまんま引用している。こういう婉曲的な仕掛けを通して、ボウイの偉大なる影を匂わせるのだ。

 その影は、ピーター・シリング“Major Tom (völlig losgelöst)”でもちらつく。タイトルからもわかるようにこの曲は、ボウイが1969年に発表したアルバム『Space Oddity』へのアンサー・ソングだ。もともとの歌詞はロケット発射の様子を描いたもので、深い意味はない。だが、『アトミック・ブロンド』の中では冷戦時代の一側面を表す曲になっている。1980年代末のベルリンは冷戦まっただ中であり、そんな時代に米ソ間でおこなわれた熾烈な宇宙開発競争を連想させるからだ。こうした既存の曲に新たな意味をあたえるセンスは、退屈な懐古主義に陥らない同時代性を漂わせる。
 この同時代性は、映画のために作られたいくつかのカヴァー曲にも繋がっている。特に秀逸なのは、映画のスコアを担ったタイラー・ベイツがマリリン・マンソンと共作したミニストリー“Stigmata”のカヴァー。殺伐としたドライな音質が耳に残る激しいインダストリアル・ロックで、マリリン・マンソンの金切り声を味わえる。もちろん、このカヴァーも映画と深い繋がりがある。オリジナル版“Stigmata”のMVにはスキンヘッドのネオナチが登場するが、そこに映画の核であるベルリンという要素との共振を見いだすのは容易い。

 そうした綿密な選曲において、ひとつだけ気になる点がある。ザ・クラッシュ“London Calling”を選んでいることだ。この曲は1979年にリリースされたもので、80年代でもなければ現在の曲でもない。しかしそこには、他の曲以上に重要な意味を見いだせる。
 “London Calling”は、ザ・クラッシュから見た当時の社会について歌った曲だ。1981年のブリクストン暴動、セラフィールド、フォークランド紛争といった、80年代のイギリスで起こることを予見するような言葉が歌詞に並んでいる。
 そんな予見的な曲が、映画ではベルリンの壁崩壊後の終盤で流れる。決着を迎えてめでたしのはずが、〈すぐさま戦争が布告され 戦いがやってくる(Now war is declared and battle come down)〉と歌われるのだから、なんとも興味深い。ここまで書いてきた映画と曲の深い繋がりから考えても、かなり意味深だ。ロレーンの次なる戦いが始まるから……とも解釈できるが、過去の要素に同時代性を見いだし表現する『アトミック・ブロンド』の特性をふまえると、この映画はあなたたちの現状であるという暗喩を込めた選曲ではないか。そう考えると、冷戦時代のベルリンが舞台であるにもかかわらず、それにまつわる物語じゃないと否定するグラフィティーが映画の冒頭で挟まれるのも納得だ。“London Calling”が流れた途端、西ドイツと東ドイツの間にあった経済格差や、壁によってもたらされた抑圧といった映画の時代背景には、新冷戦(New Cold War)なる言葉も飛び交うようになった現在を表象する機能が付与される。

 ここまで大胆な音楽の使い方を前にすれば、客寄せパンダ的にヒット・ソングを使ったという揶揄も跪くしかない。

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