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Gábor Lázár

Experimental

Gábor Lázár

Crisis Of Representation

Shelter Press

Tower HMV Amazon iTunes

デンシノオト   Mar 16,2017 UP

 マーク・フェルやラッセル・ハズウェルなどとコラボレーション・アルバムをリリースし、そのうえロレンツォ・セニの〈プレスト!?〉からアルバムを発表しているなど、現在のエクスペリメンタル・ミュージック・シーンにおける(隠れた?)キーパーソン、ガボール・ラザールが〈シェルター・プレス〉からソロ・アルバムをリリースした。〈シェルター・プレス〉は、フランスはブルターニュを拠点として、個性的な電子音楽/エクスペリメンタル・ミュージック作品をコンスタントに送り出しているレーベルである。

 それにしても「危機の表象」とは、なんとも意味深なアルバム・タイトルではないか。じっさい、その名が示すように、本アルバムにおいては、どの曲もグリッチされたテクノの残骸が高速に展開していくわけである。となれば、この「危機の表象」とは、グリッチ・サウンド/ノイズのことだろうか。それを示すかのように、アルバム全曲に“クライシス・オブ・リプレゼンテーション”と共通の名前が付けられており、それぞれ「#」記号のあとに、1から8までがナンバリングされている(“クライシス・オブ・リプレゼンテーション #8”はCD盤ボーナス・トラック)。
 じじつ、このアルバムの各トラックは、ノイズ・モチーフが反復され、そしてそれが少しずつ壊れていく構成になっている。まるでグリッチ・ノイズ・サウンドの実験報告のような構成である。エラーの生成がリズムとなり、刺激的な電子ノイズ・サウンドを生成・展開していくのだ(ちなみにマスタリングはラシャド・ベッカー)。

 一聴して分かるように、本作は、SND/マーク・フェル直系のサウンドである。しかしグリッチが、新奇性やフェティシズムの対象ではなく、手法として「当たり前のもの」として存在している点に注目したい。オートマティックでありながら、じつに流麗にコンポジションなされているのである。「無意識」をコントロールするかのように。
 むろん、これはガボール・ラザールだけの特質ではない。たとえばリー・ギャンブル、イヴ・ド・メイ、ロレンツォ・セニなど、新世代エクスペリメンタル・テクノ・アーティスト全般の特徴といえる。彼らはテクノ・アーティストでありながら、同時に(90年代末期から)00年代初頭のグリッチ・サウンドに多大な影響を受けている世代なのである。じじつリー・ギャンブルは〈エディションズ・メゴ〉のマニアだという。
 そう、この10年代初頭においてエクスペリメンタルな電子音響/テクノを創りだしているアーティストたちは、テクノという形式を愛しながらも、しかしそれがグリッチというエラー・ノイズで破壊されていくさまから始まっている。いわば、あらかじめ引き裂かれた「表象の危機」の世代。その「危機」への感覚は、グリッチ以降を生きる者を貫通する意識/無意識ではないかと思う。
 前提となるべき条件がすでに壊れていること。この『クライシス・オブ・リプレゼンテーション』において生成するグリッチ・ノイズは、壊れた時代・世代における(無)意識の発露とはいえないか。私には、この精密で整ったグリッチ・サウンドに、今の時代特有の引き裂かれた無意識と、しかし、その意識を「引き裂かれたまま」統御しようとする強い欲望=意志が感じられてならないのである。

 また、アートワークを手掛けるのは ソフィア・ボダ(Zsófia Boda)。彼女の作品もまた「壊れていることが前提」という時代のアトモスフィアを感じさせる(http://zsofiaboda.tumblr.com/)。こちらも必見だ。


Rebound Tenderness No.2

デンシノオト