「Not Waving」と一致するもの

JPEGMAFIA - ele-king

 「お前は俺を知らない(You think you know me)」。プロデューサーというのはタグ好きだ。主役は誰かをリスナーに分からせるための、自らの楽曲群にグラフィティのように走り書きするタグが。WWEレスラー、エッジのテーマ曲をサンプリングしたJPEGMAFIAのプロダクション・タグは、彼のやることの多くと同様にいくつもの意味を兼ねてみせる。音響的な目印であり、ポップ・カルチャーの引用であり、挑発でもある、という具合に。お前は俺を知ってるつもりかい?(You think you know me?)

 バーリントン・デヴォーン・ヘンドリックスには、前作『Veteran』(2018)の思いがけないヒットでその混乱した、自由連想に満ちた音楽がより広い層の聴き手に達する以前に自らを理解する時間がたっぷりあった。その前の段階のとある名義で、彼はミドル・ネームと姓から派生したデヴォン・ヘンドリックス(Devon Hendryx)を名乗っていた。彼がJPEGMAFIAに転生したのは米空軍を名誉除隊した後に日本で生活していた間のことだった。彼はよくペギー(Peggy)の名も使いたがるが、その愛称は彼にどこかのおばあちゃんめいた印象を与える。

 しかしまた、JPEGMAFIAは自らを色んな風に呼ぶのが好きだったりする。『All My Heroes Are Cornballs』(2019)の“BBW”で、彼は「若き、黒人のブライアン・ウィルソン」を自称する──自らのプロダクション・スキルの自慢というわけだが、ウィルソンは録音音楽の歴史上おそらくもっとも白人的なサウンドを出すミュージシャンのひとりであるゆえに余計に笑いを誘う。“Post Verified Lifestyle”での彼は「ビートルズとドゥームを少々に98ディグリーズが混ざった、ビーニー・シーゲル」だ。ひとつのラインの中でジェイ–Zの元子分、王道ロック・バンド、顔を見せないアンダーグラウンドなラッパー、90年代のティーン・ポップ・グループの四つの名が引き合いに出される。この曲の後の方に出て来る「俺は若き、黒いアリG」は、さりげなくも見事なギャグになっていると共に考えれば考えるほどおかしな気分になるフレーズだ(註1)。

 JPEGMAFIAはつかみどころがなく、シュールなユーモアと政治的な罵倒、エモーショナルな弱さとの間を推移していく。『All My Heroes Are Cornballs』のリリース前、彼はアルバムが出るのはいつなのかという質問をはぐらかし続け、きっとがっかりさせられる作品になると言い張るに留まっていた。彼のYouTubeチャンネルにはジェイムズ・ブレイク、ケニー・ビーツをはじめとするセレブな友人たちが登場し、アルバムをヌルく推薦するヴィデオがアップされた。DJ Dahiの1本がそのいい例で、彼は冒頭に「たぶん俺はこのクソを二度と聴かないと思うよ、個人的に」のコメントを寄せている(※JPEGMAFIAがアルバム発表前にYouTubeに公開した、「友人たちに新作のトラックをいくつか試聴してもらい率直な感想を聞く」という主旨のジョーク混じりのヴィデオ・シリーズ「Disappointed」のこと)。

 これらの証言の数々は、ヘンドリックスがソーシャル・メディアのしきたりを享受すると共にバカするやり口の典型例だ。“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”に「ニガー、やりたきゃやれよ、俺は認証済みだぜ」の宣戦布告が出て来るが、ここでの彼は自らのツイッター・ステイタスを見せびらかしつつオンライン上のヘイターたちをからかっている。“Beta Male Strategies”で彼はこう預言する──「俺が死んだら、墓碑はツイッター、ツイッター」

 Veteran』が盛り上がり始めた頃、ヘンドリックスは左頬の上に、目にポイントを向けたコンピュータのカーソルのタトゥーを小さく入れた。英音楽誌『CRACK』に対して彼は「何かの形でインターネットにトリビュートを捧げたかったんだ」と語っている。

 多くのラッパーがインターネットからキャリアをスタートさせてきたとはいえ、これほどオンライン文化の産物という感覚を抱かせるラッパーはあまりいない。ツィッター・フィードをスクロールしていくように、JPEGMAFIAの歌詞はおふざけから怒りっぽいもの、真情から軽薄なものまで次々に切り替わる。歌詞にはバスケットボール選手からファストフード・チェーン、ヴィデオ・ゲーム、90年代のテレビ番組、政治コメンテーター、インターネットのミームまで内輪受けのジョークとカルチャーの引用がみっしり詰まっていて、それらをすっかり解読するのには何時間も要する。

 その不条理なユーモアと割れた万華鏡を思わせるプロダクションに対し、手加減なしのずけずけとした政治的な毒舌がバランスを取っている。「政治的なネタ」についてラップしてもいいんだとアイス–Tから教わったとする彼は、人々の神経を逆撫でする機会を避けることはまずない。“All My Heroes Are Cornballs”で彼は「インセルどもは俺がクロスオーヴァーしたんで怒ってやがる」とラップする──「じゃあ連中はどうやってアン・ハザウェイからアン・クルターに鞍替えしたんだ?」(註2)。“PRONE!”は「一発でスティーヴ・バノンはスティーヴ(ン)・ホーキンスに早変わり」とオルタナ右翼勢にとことん悪趣味な嫌がらせを仕掛ける。(註3)。こうしたすべてを彼がどれだけ楽しんでいるかが万一伝わらなかった場合のために、“Papi I Missed U”で彼は「レッドネックどもの涙、ワヘーイ、なんて美味いドリンクだ」とほくそえむ。

 その挑発には、敵対する側からさんざん人種差別の虐待を浴びせられてもレヴェルを高く維持しようというオバマ時代の考え方あれこれに対する反動、というロジックが備わっている。ヘンドリックスは2018年に『The Wire』誌との取材で「一体全体どうして俺たちは、俺たちを蔑む連中にこれだけおとなしく丁寧に接してるんだ?」と疑問を発した。「『向こうが下劣になろうとするのなら、我々は高潔になろう』。むしろ俺は右派に対し、奴らが出しているのと同じ攻撃性をお返ししてやりたいね。効果てきめんだよ!」

 彼はまた従軍時代に体験したマッチョなカルチャーを引っくり返すのを大いに楽しんでもいて、タフ・ガイ的な記号の数々と典型的にフェミニンなお約束とを混ぜ合わせる。かつてのプリンスがそうだったようにJPEGMAFIAもジェンダーが流動的で、曲の中で女性の声にすんなりスウィッチするのだ。“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”のコーラスで彼は「どうやったらあたしの股を閉じたままにしておけるか教えて」と歌うが、この曲のタイトルは性的に放縦な女性に対するヒップホップの中傷語(Thot)を女性の側に奪還している。彼は“BasicBitchTearGas”で再び女性の視点を取り入れるが、この曲は予定調和な筋書きを反転させた女性のためのアンセム=TLCの“No Scrubs”の、意外ではあるものの皮肉は一切なしのカヴァーだ。

 ペギーは「お前のおばあちゃんにもらったお下がりに身を包んで」(“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”)けばけばしいファッションでキメることもあるが、それでも激しく噛み付いてくる。オンラインの他愛ない舌戦とリアルな暴力の威嚇との間にはピンと張り詰めた対比が存在する。“Beta Male Strategies”で彼はツィッター上で彼を批判する面々に「くそったれなドレス姿のニガーに撃たれるんじゃないぜ」と警告する。“Thot Tactics”では「ブラザー、キーボードから離れろ、MACを引っ張り出せよ」とあざける。アップル製コンピュータのことかもしれないが、おそらくここで言っているのはMACサブマシンガンのことだろう。

 ギャングスタ・ラップの原型からはほど遠いラッパーとはいえ、JPEGMAFIAは小火器に目がない。“DOTS FREESTYLE REMIX”の「お前が『Toonami』を観てた頃から俺は銃をおもちゃに遊んでたぜ」のラップは、昔ながらの「お前が洟垂らしだった頃から俺はこれをやってきた」に匹敵する愚弄だ(註4)。西側の白人オタクたちは自分のお気に入りのアニメ界のフェティッシュの対象を「ワイフ(wiafu)」と呼ぶが、“Grimy Waifu”でペギーが官能的なR&Bヴォーカルを向ける相手は実は彼の銃だったりする。

 突然注目を浴びたラッパーの多くがそうであるのと同じように、『All My Heroes Are Cornballs』も音楽業界およびその中における自身の急上昇ぶりに対する辛辣な観察ぶりを示してみせる。“Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind”で彼は「俺はコーチェラから出演依頼を受けたけど、敵さんたちはそうはいかないよな」と自慢する。このトラックの他の箇所では、彼に取り入り利用しようとするレコード業界の重役たちにゲンナリしている様が聞こえる──「この白いA&Rの連中、俺を気軽に注文できる単品料理だと思ってるらしい/俺をお前らのケヴィン・ジェイムズにしたいのかよ、ビッチ、だったら俺にケヴィン・ハート並みに金を払うこった」(註5)。自分のショウを観に来る怒れる白人男連中は彼のお気に召さないのかもしれないが(「ニガーに人気が出ると、黒人ぶるのが好きな白人どもが毎回顔を出すのはどうしてなんだ?」──“All My Heroes Are Cornballs”)、その見返りを彼は喜んで受け取る。「年寄りのホワイト・ニガーは大嫌いだ、俺には偏見があるからな/ただしお前らニガーの金を教会の牧師が寄付金を集めるように俺の懐に入れてやるよ」(“Papi I Missed U”)

 と同時にペギーは彼自身、あるいは他の誰かを台座に就かせようという試みに抵抗してもいる。アルバム・タイトルがいみじくも表している──「俺のヒーローはダサい変人ばかり」と。アルバムの中でもっともエモーション面でガードを下ろした“Free the Frail”で、彼は「俺のイメージの力強さに頼っちゃだめだ」と忠告する。「良い作品なら、めでたいこった/細かく分析すればいいさ、もう俺の手を離れちまったんだし」。それは受け入れられたいとの訴えであり、完璧な人間などいないという事実の容認だ。あなたは彼を知っているつもりかもしれない。彼はそんなあなたを失望させるだけだ。

〈筆者註〉
註1:「アリG」は、ケンブリッジ大卒のユダヤ系イギリス人であるサシャ・バロン・コーエンの演じた「自分は黒人ギャングスタだ」と思い込んでいる白人キャラクター。コーエンはこのキャラを通じて「恵まれた若い白人層が彼らの思うところの『黒人の振る舞い』を猿真似する姿」を風刺しようとしたのだ、と主調している。しかし一部には、そのユーモアそのものが実はステレオタイプな黒人像を元にしたものだとしてアリGキャラを批判する声も上がっている。
(※アリGはマドンナの“Music”のPVでリムジン運転手役としても登場)

註2:インセルども=女嫌いのオンライン・コミュニティ「involuntary celibate(不本意ながらヤれずにいる禁欲者)」の面々は、JPEGMAFIAが少し前に成功しアンダーグラウンドからメインストリームに越境したことに怒りを発した。アン・クルターはヘイトをまき散らすアメリカ右派コメンテーターで、『プラダを着た悪魔』他で知られるお嬢さん系女優アン・ハザウェイ好きから、インセルたちはどうやってアン・クルターのファンに転じたのか? の意。

註3:ドナルド・トランプの元チーフ戦略家スティーヴ・バノンを車椅子生活に送り込むには一発の銃弾さえあれば足りる、の意。

註4:『Toonami』は1997年から2008年までカートゥーン・ネットワークで放映されたアクション/アニメ番組専門のテレビ枠。

註5:レーベル側のA&R担当者たちは彼らの求めた通りの何かを自分からいただけると思っているが、だったらもっと金を払ってくれないと、の意。ケヴィン・ジェイムズもケヴィン・ハートも俳優だが、人気黒人コメディアンであるハートはジェイムズよりもはるかに多額のギャラを要求できる立場にいる。


“You think you know me.” Producers love a tag: a graffiti-like signature to scrawl across their tracks, letting listeners know who’s in control. Sampled from the theme song for WWE wrestler Edge, JPEGMAFIA’s production tag—like a lot of what he does—manages to be many things at once: a sonic marker, a pop culture reference, a provocation. You think you know me?
Barrington DeVaughn Hendricks had plenty of time to get to know himself before the unexpected success of 2018’s Veteran brought his messy, free-associating music to a wider audience. In a previous incarnation, he was Devon Hendryx, a moniker derived from his middle and last names. It was while living in Japan, after an honourable discharge from the US Air Force, that he became JPEGMAFIA. He often prefers to use the diminutive Peggy, which makes him sound more like someone's grandmother.
Then again, JPEGMAFIA likes to call himself a lot of things. On “BBW,” from 2019’s All My Heroes Are Cornballs, he’s “the young, black Brian Wilson”—a boast about his production skills, made all the funnier by the fact Wilson must be one of the whitest-sounding musicians in the history of recorded music. On “Post Verified Lifestyle,” he’s “Beanie Sigel, mixed with Beatles with a dash of DOOM at 98 degrees”—in the space of a single line, name-checking a former Jay-Z protégé, a canonical rock band, a reclusive underground rapper and a 1990s teen-pop group. Later in the same track, he’s “the young, black Ali G,” which is a great throwaway gag that gets stranger the more you think about it.
JPEGMAFIA is elusive, shifting between surreal humour, political invective and moments of emotional vulnerability. In the run-up to the release of All My Heroes Are Cornballs, he constantly dodged questions about when the album was due, merely insisting that it would be a disappointment. His YouTube channel released videos of celebrity pals, including James Blake and Kenny Beats, offering lukewarm endorsements. DJ Dahi’s was characteristic: “I'll probably never listen to this shit again, personally.”
These testimonials are typical of the way Hendricks both embraces and mocks the conventions of social media. “Nigga, come kill me, I’m verified,” he declares on “Jesus Forgive Me, I’m a Thot,” taunting the online haters while flaunting his Twitter status. On “Beta Male Strategies,” he prophesies: “When I die, my tombstone’s Twitter, Twitter.”
When Veteran started blowing up, Hendricks got a small image of a computer cursor tattooed on his left cheekbone, pointing towards his eye. As he told Crack Magazine: “I wanted to pay tribute to the internet in some way.”
Many rappers have launched their careers on the internet, but few feel quite so much like a product of online culture. Like scrolling through a Twitter feed, JPEGMAFIA’s lyrics whiplash constantly between playful and bilious, heartfelt and irreverent. They’re dense with in-jokes and cultural references—to basketball players, fast-food chains, video games, ’90s TV shows, political pundits, internet memes—that would take hours to fully decode.
The absurdist humour and fractured-kaleidoscope production is counterbalanced by some unapologetically direct political invective. He credits Ice Cube with teaching him it was OK to rap “about political shit,” and seldom shies away from an opportunity to rile people. “Incels gettin’ crossed ’cause I crossed over,” he raps on “All My Heroes Are Cornballs.” “How they go from Anne Hathaway to Ann Coulter?” On "PRONE!," he trolls the alt-right as tastelessly as possible: “One shot turn Steve Bannon into Steve Hawking.” And just in case it wasn’t clear how much he’s enjoying all of this, “Papi I Missed U” gloats: “Redneck tears, woo, what a beverage.”
There’s logic to the provocation, a reaction to all that Obama-era stuff about taking the high ground while your opponents douse you in racist abuse. “Why the fuck are we so civil with people who despise us?" Hendricks asked The Wire in 2018. “‘They go low, we go high.’ I’d rather give the right the same aggression back. It works!”
He also delights in subverting the macho culture he experienced serving in the military, mixing tough-guy signifiers with stereotypically feminine tropes. JPEGMAFIA is gender-fluid in the way that Prince was, slipping naturally into a female voice during songs. “Show me how to keep my pussy closed,” he sings in the chorus of of “Jesus Forgive Me, I’m a Thot,” the title of which reclaims a hip-hop slur (“thot”) used against slutty women. He adopts a female perspective again on “BasicBitchTearGas,” an unexpected—and wholly unironic—cover of TLC’s script-flipping anthem, “No Scrubs.”
Peggy may sport flamboyant fashions—he’s “Dressed in your grandmama’s hand-me-downs” (“Jesus Forgive Me, I’m a Thot”)—but he still bites. There’s a bracing contrast between the online shit-talking and the threat of real violence. On “Beta Male Strategies,” he cautions his critics on Twitter: “Don't get capped by a nigga in a muhfuckin’ gown”. On “Thot Tactics,” he taunts: “Bruh, put the keyboard down, get the MAC out”—which could be talking about Apple computers, but is probably referring to the MAC submachine gun.
He’s a far cry from the gangsta-rap archetype, but JPEGMAFIA can’t get enough of his firearms. “I’ve been playing with pistols since you watching Toonami,” he raps on “DOTS FREESTYLE REMIX,” the equivalent of the old “I’ve been doing this since you were in diapers” jibe. While Western otaku use “waifu” to refer to their favourite anime fetish object, on “Grimy Waifu,” Peggy’s seductive R&B vocal is actually addressed to his gun.
Like many rappers who’ve been thrust suddenly into the spotlight, All My Heroes Are Cornballs offers caustic observations on the music industry and his rapid ascent within it. “I got booked for Coachella, enemies can’t say the same,” he brags on “Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind.” Elsewhere on the same track, he’s unimpressed by record industry execs hoping to take advantage of him: “I feel these cracker A&Rs think I’m al a carte / They want me Kevin James, bitch, pay me like Kevin Hart.” He may not like the angry white dudes in the audience at his shows (“Why these wiggas always showin’ up when niggas be poppin’?” on “All My Heroes Are Cornballs”), but he’s happy to reap the rewards: “I hate old white niggas, I’m prejudiced / But I’ma take you niggas money like a reverend” (“Papi I Missed U”).
At the same time, Peggy resists attempts to put him, or anyone else, on a pedestal. It’s right there in the title: all my heroes are cornballs. “Don't rely on the strength of my image,” he cautions on “Free the Frail,” the album’s most emotionally unguarded track. “If it’s good, then it’s good / Break it down, this shit is outta my hands.” It’s a plea for acceptance, an acknowledgment that nobody’s perfect. You think you know him. He can only disappoint you.

Courtney Barnett - ele-king

 これは嬉しいお知らせだー。春の来日公演やフジでのパフォーマンスも話題を呼んだオーストラリアの宝、コートニー・バーネットが初めてのライヴ盤をリリースする。しかも、『MTV アンプラグド』である。本人コメントも到着しているが、どうやら「アンプラグド」には深い思い入れがあるようで……彼女の珠玉の楽曲たちがアコースティックではどのような表情を見せるのか。レナード・コーエンのカヴァー曲や新曲もあります。これは楽しみだー。

tiny pop - ele-king

 ネット世代によるDIY歌謡──それが「tiny pop」である。詳しくはこちらの山田光の記事や、先日上野公園でおこなわれたフェスのレポートを参照されたいが、いまじわじわとその名を広めつつあるこの「小さなポップ」の、初となるコンピレイションがリリースされる。5曲入りのデジタル版は本日12月20日に、11曲入りのCD盤は1月8日に発売。小さな、けれども大いに魅力あふれる音楽たちの、ささやかなる息吹に耳を傾けよう。

ネット世代のDIY歌謡曲! 20年代の幕開けに相応しい新たなる音楽シーン(?!) “tiny pop” 初のコンピレーション!

「tiny popとは、インターネット世代によるDIY歌謡曲システム(作詞・作曲・編曲)である」(hikaru yamada)。

巷で「“tiny pop”とはなんぞや?」と騒がれつつある20年代の幕開けに相応しい音楽的キーワード“tiny pop”。ジャンルやカテゴリ、それともシーンやムーブメントとも言うべきか、まだ固まり切らない“空気”や“匂い”のようなものを自らその片隅に身を置き東京インディシーンにて異彩を放つ hikaru yamada が“tiny pop”なアーティスト達を紹介するコンピレーションを監修! アレンジや音色の再現のみにとどまっていたシティポップリバイバルから、その次の一歩を踏み出したリアルタイムなサウンドはまさに“ネット世代のDIY歌謡曲”!

【収録アーティスト】

-mukuchi-
マリによる一人ユニット。西日本の漁村にて無気力生活中。インターネット上に公開されている宅録家の音源に影響を受け、2015年頃から曲作りをはじめる。以来、主にネット上で活動を続けている。mukuchi のほか、hikaru yamada (hikaru yamada and the librarians)と共に feather shuttles forever としても活動している。

-SNJO-
広島出身、京都在住のプロデューサー。 クラブミュージックから影響を受けたサウンドと普遍的なノスタルジーを併せ持ったメロディを軸に楽曲を制作しており、多 数の楽曲提供や客演も積極的に行う。2018年10月にネットレー ベル〈Local Visions〉よりアルバム『未開の惑星』2019年11月に2ndアルバム『Diamond』をリリース。

-wai wai music resort-
大阪出身・在住のエブリデと Lisa で関西を中心に活動する兄妹ポップユニット。ジャズやワールドミュージック、ゲームミュージックに影響を受けたインターネット時代のリゾート音楽を展開する。2019年4月にはインターネットレーベル〈Local Visions〉より1st EP「WWMR 1」をリリース。同月に開催され大きな話題となった〈Local Visions〉と lightmellow部との共同イベント Yu-Koh α版にも出演。

-ゆめであいましょう-
2009年から活動し、1973年ごろから1985年ごろまでの間に作られた想像上のロックや歌謡曲を作り続けている音楽ユニット。2019年4月に“んミィバンド”とのスプリット7インチ・シングル「ひかりのうた/おだやかにひそやかに」をリリースした。

-feather shuttles forever-
hikaru yamada and the librarians としても活動し、サックス/マルチ奏者であり前野健太の『サクラ』に参加するなどさまざまな場で活躍している“hikaru yamada”と、漁村在住のシンガー・ソングライター/宅録音楽家でありソロ・ユニット“mukuchi”として多数の作品を発表しているマリこと西海マリによるユニット。2017年にファースト・アルバム『feather shuttles forever』をリリース、2018年5月に発表したシングル「提案」には Tenma Tenma、kyooo、入江陽、SNJO という4人が客演、2019年1月には〈Local Visions〉から2ndアルバム『図上のシーサイドタウン』を発表している。

【監修:hikaru yamada】
1988年生まれ。アルトサックス・トラックメイクなど。循環呼吸や各種プリペアドを駆使したサックス演奏の他、サンプリングによるトラックメイクを行う。自身のユニット hikaru yamada and the librarians と feather shuttles forever の他、入江陽・毛玉・前野健太・SNJO・VOLOJZA・South Penguin・んミィバンドなどのアルバム、映画『ディアー・ディアー』(2015)『馬の骨』(2018)サウンドトラック(いずれも岡田拓郎が音楽を担当)に参加。2019年からは雑誌『ele-king』『ミュージックマガジン』に記事を寄稿。普段はゲームの制作会社で音響効果と作曲の仕事をしている。

【リリース情報】

CD版/デジタル版 2形態でリリース!

【DIGITAL】

タイトル: tiny pop – the tiny side of life / タイニー・ポップ - ザ・タイニー・サイド・オブ・ライフ
アーティスト:V.A. / V.A.
レーベル:P-VINE
発売日:2019年12月20日(金)

《収録曲》
01. feather shuttles forever 「ウェルウィッチア」
02. ゆめであいましょう 「見えるわ」
03. wai wai music resort 「Blue Fish」
04. SNJO 「Ghost」
05. mukuchi 「午前十時の映画祭」

【CD】

タイトル:tiny pop - here’s that tiny days / タイニー・ポップ – ヒアズ・ザット・タイニー・デイズ
アーティスト:V.A. / V.A.
レーベル:P-VINE
品番:PCD-4644
定価:¥1,000+税
発売日:2020年1月8日(水)
*CD版には封入ブックレットに監修 hikaru yamada によるシーンの詳細な解説と参加アーティスト各々による曲解説コメントを掲載!

《収録曲》
01. mukuchi 「午前十時の映画祭」
02. mukuchi 「食卓」
03. mukuchi 「オアシスの一部分」
04. SNJO 「Ghost」
05. SNJOとゆnovation 「Days」
06. wai wai music resort 「Blue Fish」
07. エブリデ 「牛の記憶」
08. ゆめであいましょう 「見えるわ」
09. ゆめであいましょう 「シャンマオムーン」
10. ゆめであいましょう 「誰もが誰かに」
11. feather shuttles forever 「ウェルウィッチア」

https://smarturl.it/tinypop_heres

WaqWaq Kingdom - ele-king

 先日、新たに強力な12インチがリリースされたばかりの Mars89 だけれど(紙エレ年末号にインタヴュー掲載)、彼が suimin とともに主催する《南蛮渡来》(名前の由来はじゃがたら!)が5周年を迎える。というわけで、年明け1月18日にアニヴァーサリー・パーティが開催されることとなった(WWW / WWWβ)。目玉は、キング・ミダス・サウンドへの参加でも知られるキキ・ヒトミと、新生シーフィールのメンバーでありDJスコッチ・エッグ名義でも活躍しているシゲル・イシハラからなるユニット、ワクワク・キングダムの出演だろう。2017年のファースト『Shinsekai』も良かったし、最近セカンド『Essaka Hoisa』も出たばかりということで、すばらしいパフォーマンスを披露してくれることだろう。詳しくは下記をば。

[2020年1月9日追記]
 昨日、フルラインナップが発表されました。新たにローカルから欧州帰りの MEW、「ストレンジ・ダブ・セット」を披露する TOREI、そして Double Clapperz から UKD の計3組の出演が決定。楽しみです。

南蛮渡来 5th Anniversary

Mars89 と suimin 主宰のミューテーション・パーティ《南蛮渡来》5周年記念! “演歌ダブ”でも話題となった Kiki Hitomi とブレイクコアのレジェンド DJ Scotch Egg によるヘビー・バイブスな重低音デュオ WaqWaq Kingdom を初来日で迎えた、ベース&トライバルな阿弗利加、亜細亜、神、祭、未来、タイムワープな新世界へ。ワクワクなフルラインナップは後日発表!

南蛮渡来 5th Anniversary
2020/01/18 sat at WWW / WWWβ
OPEN / START 23:30
ADV ¥1,800@RA | DOOR ¥2,500 | U23 ¥1,500

WaqWaq Kingdom (Kiki Hitomi & Shigeru Ishihara) [Phantom Limb / Jahtari / JP/DE]
MEW [*1/9追記]
TOREI - Strange Dub set - [*1/9追記]
UKD (Double Clapperz) [*1/9追記]
Mars89 [南蛮渡来]
suimin [南蛮渡来]

Tarot: AWAI [*1/9追記]

※ You must be 20 or over with Photo ID to enter.

詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/012125.php
前売:https://www.residentadvisor.net/events/1363782

■WaqWaq Kingdom (Kiki Hitomi & Shigeru Ishihara) [Phantom Limb / Jahtari / JP/DE]

Seefeel のメンバーでもある Shigeru Ishihara (別名 DJ Scotch Egg) と、The Bug との King Midas Sound でも活動するシンガー/プロデューサー Kiki Hitomi による“トライバル”にインスパイアされたキラーな重低音デュオ WaqWaq Kingdom。“ヘビー・バイブス”なデュオとして知られ、ヨーロッパ、中国での評判を皮切りに、〈Phantom Limb Records〉からのセカンド・アルバム『Essaka Hoisa』のリリース以来、USからの関心も高めている。

WaqWaq Kingdom は古代神道の神話や、地元の神々を称える日本の“祭り”をテーマとし、催眠的でシャーマニックなライブ・パフォーマンスは、「アニミスティックなルーツとフーチャリスティックな都市のネオン・カラーを再接続する強烈なタイムワープの体験」と言われている。

デュオの最初の2枚のレコード、および〈Jahtari〉からのEPとLPで着実な評価を得ながらワールドワイドへ進出。Quietus や Resident Advisor からの熱烈な記事や、The Wire でもフィーチャーされる。また Shigeru Ishihara はウガンダの新興フェスティバル〈Nyege Nyege〉に出演し、ナントとロッテルダムでもギグを行っている。

https://open.spotify.com/album/4HbqiCPMjB8WP1vIegQ6Br


■Mars89 [南蛮渡来]

Mars89 は現在東京を拠点に活動している DJ / Composer である。 2016年にEP「East End Chaos」をリリース。 そして、それを足がかりに2017年に「Lucid Dream EP」を Bristol を拠点とするレーベル〈Bokeh Versions〉からダブプレートとカセットテープというフォーマットでリリース。2018年にはアジアツアーや大型フェスへの出演を経て、〈Bokeh Versions〉から12インチ「End Of The Death」をリリース。主要メディアで高く評価され、あらゆるラジオで繰り返しプレイされた。UNDERCOVER 2019A/W の Show や田名網敬一のドキュメンタリーフィルム、Louis Vuitton 2019A/W Mens の広告映像の楽曲などを担当。Bristol の Noods Radio ではレジデントをつとめている。

https://www.mars89.com/
https://www.youtube.com/watch?v=gjw1UGL14yE


■suimin [南蛮渡来]

『覚醒、瞑想、殺人。』

https://soundcloud.com/min-ing

MOODYMANN JAPAN TOUR 2020 - ele-king

 正月明け早々にムーディーマンが来日する。最高のデトロイト・ハウス、ソウル・ミュージックおよびファンクの魔術師。ちなみに、1ヶ月前にアップされたばかりの、モータウン60周年を祝した最新のミックス音源はこちらです。https://m.soundcloud.com/carharttwip/carhartt-wip-radio-november-2019

MOODYMANN JAPAN TOUR 2020

2020.1.11(土) 東京 @Contact

Studio:
Moodymann
DJ KOCO a.k.a. SHIMOKITA
YOSA
U-T

Contact:
sauce81 - Live
Kaji (WITT | xXx) - Prince set
Pocho in the house
and more

Open: 22:00

Under 23 1000yen | Before 23:00 2500yen | Early Bird 2500yen | Advance 3000yen
With Flyer 3300yen | Door 3800yen

Info: Contact https://www.contacttokyo.com
東京都渋谷区道玄坂2-10-12 新大宗ビル4号館B2F TEL 03-6427-8107
You must be 20 and over with ID.


2020.1.12(日) 大阪 @Club Joule

2F:
Moodymann
DJ Fulltono (EXIT Records / Tekk DJz)
AKIHIRO (NIAGARA)
QUESTA (HOOFIT / BMS)

4F:
DJ AGEISHI (AHB Pro.)
SHINDO (hypnotic inc.)
Akemi Hino
Izumi Kimura (FLOW)
TeLL (C£apHaиds)

Open 22:00

Advance 3000yen + 1Drink fee (700yen)
RA, e+, iFLYER, Newtone, Root Down, Disk Union Osaka

Door 3500yen + 1Drink fee (700yen)

Info: Club Joule www.club-joule.com
大阪市中央区西心斎橋2-11-7 南炭屋町ビル2F TEL 06-6214-1223
AHB Production www.ahbproduction.com


Moodymann (KDJ, Mahogani Music / From Detroit)

ミシガン州デトロイトを拠点に活動するアーティスト、MoodymannことKenny Dixon Jrは、レーベル〈KDJ〉と〈Mahogani Music〉を主宰し、現代そして今後のインディペンデント・シーンやブラック・ミュージックを語る上で決して無視出来ない存在である。デトロイト・テクノ名門、Planet Eよりファースト・アルバム『Silent Introduction』をリリースし、その後〈Peace Frog〉よりアルバム『Mahogany Brown』、『Forevernevermore』、『Silence In The Secret Garden』、『Black Mahogani』をリリース。
『Black Mahogani』の続編『Black Mahogani Ⅱ ~ the Pitch Black City Collection ~』では、もはや〈Strata〉や〈Tribe〉、〈Strata East〉といったブラック・ジャズ~スピリチュアル・ジャズをも想わす作品を発表し、その限りない才能を発揮している。2014年、アルバム『MOODYMANN』をリリース。2015年、DJミックスシリーズ 『DJ Kicks』よりオフィシャルMIXをリリース。2019年には最新アルバム『Sinner』をリリース、New Eraとのコラボレーションなど常に話題が尽きない。2020年5月21〜25日デトロイトにてSoul Skate Detroitを開催する。

www.mahoganimusic.com
www.facebook.com/moodymann313
www.facebook.com/blackmahogani313

Der Plan - ele-king

 デア・プランといえば、初期電気グルーヴにも多大な影響を与えたニューウェイヴ時代のドイツを代表するバンド。いわゆる宅録シンセ・ポップのはしりで、ロックではなく学芸会風のセンスを取り入れて、また、メンバーであるモーリッツ・ルルルの素晴らしくヘンなアートワークも相まって、80年代の日本でもかなり人気だった。それが元DAFのピロレーターもふくむあの3人で、36年ぶりに来日する。公演は1回のみ。これ見逃したら次はないですぞ。

【The Return of JaPlan】
デア・プラン ライヴ・イン・ジャパン2020
2020年2月21日(金)ゲーテ・インスティトゥート東京
料金:Adv. ¥5,500 / Door ¥6,000
チケット:近日発売

モーリッツ、フランク、ピロレーターの3人での来日はなんと36年ぶり。公演は1回のみ、お見逃しなく!

主催:ゲーテ・インスティトゥート東京
企画:映像ワークショップ
マネジメント:Suezan Studio

Jagatara - ele-king

 日本のロック/ポップ史においてもっとも重要なバンドのひとつ、じゃがたらの代表作ほぼすべてがようやくサブスクで聴けるようになった。1982年の大傑作『南蛮渡来』をはじめ、1987年の人気作3枚『裸の王様』『ロビンソンの庭』『ニセ予言者ども』、1989年の問題作『それから』に『ごくつぶし』、江戸アケミ最後の作品となった1990年の『そらそれ』。また、フランク・ザッパの影響が滲み出た異色作1983年の『家族百景』、OTOの音楽的野心がクラブ世代との溝を埋める1990年の『おあそび』、それからデビュー・シングル「LAST TANGO IN JUKU/HEY SAY!」を収録したベスト盤『BEST OF JAGATARA~西暦2000年分の反省~』。

https://www.110107.com/s/oto/news/detail/TP01649?ima=2803

 じゃがたらは、80年代のシティポップからは見えない日本を描写し、RCサクセションでさえも歌わなかった痛みを歌い、バブル経済時代の居心地の悪さをスケールの大きな痛快かつ雑食的なファンクをもって表現した稀なバンド。耳から体内に注入し、生きる力を蓄え、さてと今日もまたガッツで乗り切ろう。
 なお、今回リイシューされるアナログ盤2枚(『南蛮渡来』および『裸の王様』)、Sony Music Shop限定で買うと先着でメッセージの籠もった特典ステッカーも付いている。

 すでにご存じの方も多いだろう。石原洋のソロ・アルバムが来年の2月12日に坂本慎太郎の〈zelone〉レーベルからリリースされる。タイトルは『formula』、アナログ盤ではA面1曲/B面1曲という構成だ。(CDでは普通に全2曲)
 石原洋といえばゆらゆら帝国のプロデューサーであり、一時期はOgre You Assholeのプロデュースも手掛けていたことで広く知られるが、元々はWhite Heavenという東京のアンダーグラウンドにおいて玄人受けしていたサイケデリック・ロック・バンドで活動していた前歴を持つ。バンド解散後もソロないしはThe Starsとしての活動をしていた石原だが、作品を発表するのはじつに23年ぶり。
 その新作には、予想だにしなかった音響が展開されているに違いない。ジョン・ケージ的なメタ・ミュージックであり、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド的なロックの解体かもしれない、おそらくは。アートワークも凝っている。まだ2ヶ月も先の話だが楽しみでならない。

formula / you ishihara

M-1 / Side A: formula
M-2 / Side B: formula reverse

All songs written, concrete conducted and produced by You Ishihara
Recorded, mixed & mastered by Soichiro Nakamura at Peace Music, Tokyo 2019

石原洋 / you ishihara: vocal, guitar, synthesizer, keyboard, effects

栗原ミチオ / michio kurihara: guitar
北田智裕 / tomohiro kitada: bass
山本達久 / tatsuhisa yamamoto: drums
中村宗一郎 / soichiro nakamura: keyborad


https://reststayrelationship.com

一人盆踊り - ele-king

 友川カズキにはいくつかの肩書きがある。「歌手、画家、詩人、競輪愛好家、俳優、コメンテイターと八面六臂の活動を続ける友川カズキさんは、根っからの自由人だ」と『一人盆踊り』の解説を加藤正人さんは書き出している。それらいくつかの遊動する肩書きにふさわしく、友川カズキは傾向のことなる著作をあらわしている。詩集、エセー、絵本から競輪生活をおくるなかの雑感や心得まで、その数は両の手にあまるが版元はかならずしも大規模出版ではないので、店頭にみあたらず手にとろうにもとれなくてざんねんだった。ことにここ数年で友川を発見した新しい聴き手のなかには、音盤のなかや舞台のうえのあの表現の何割をかたちづくることばにふれたい方もすくなくなかった。ことばとは詩であり、語りであり、作品の静寂や行間に息づく理路というよりは生きる態度としての考えであり、それらは意味をなさぬほど飛躍ぶくみであってもあくまでことばでなければならなかった。

 2015年初頭刊行の『友川カズキ独白録』(白水社)は静かに広がりつつあったそのような要望に応えるべく、少年期から現在まで、書名のとおりひとり語りで語り尽くした好著である。十代のころ熱中したバスケットボールから上京のころ、都市と故郷、歌手としての来し方、多彩な交流とそれがもたらした逸話の数々を惜しげもなく披露する文章は友川さんの口吻を彷彿させるもので、心持ち耳を澄ませながら読みすすめた記憶がある。私はとりわけ、友川さんが好きな本や絵や映画の話をするのを聞くのが好きで、友川さんがいいというものはなんでもふれてみたくなるのだが、そのような性分のものにも『独白録』はうってつけだった。つまるところファンにすぎないのかもしれないが、友川カズキの表現には浮き身をやつす価値がある、と死んだオヤジの遺言で賭けごとをやらない私でさえ身を乗り出してしまうのは、こちらの想像の歩幅を超える友川の行為の跳躍力ゆえである。ことばはそのとき触媒となる、このことについては『独白録』に以下のような一節がある。

「やはり言葉ってね、もちろん「単なる言葉」である場合も少なからずあるんですけど、いい意味でも悪い意味でも、危険なものではあるんですよ。そういう一触即発の言葉を足掛かりにしてね、非日常──まぼろしの世界に飛び込んでいくんですから」

 そう述べる本書からしてまぼろしへの手引きみたいなものだが、あらかじめ肉声の転写としてかたちをなした『独白録』の一方で、友川がみずから綴ったことばを読みたくなったのは、おそらくそこには声とはちがう身体の運動が宿っていて、それはどこか絵を描くのに似ている。散文であればなおのこと。韻文とはちがう絵柄なのは詩人、俳人、歌人の散文の独特の味わいでわかる。だれというのでなく、私は詩人の散文は蕪雑なのがいい。抒情とはその裏面であり、そのようなことばにふれたくなったとき、彼らの書物を繙く、私の書棚の一画に今年からそこに友川カズキの『一人盆踊り』が加わった。

 『一人盆踊り』は友川カズキの過去の文業を編んだ選集で、古くは1977年刊行の『死にぞこないの唄』(無明舎出版)から代表曲と同名で展転社から85年に出た『生きてるって言ってみろ』などのエセー集、詩集では『朝の骨』(無明舎出版、1982年)や『地の独奏』(矢立出版、1985年)など、90年代に入ってからの競輪関係の著書からの再録もあれば、雑誌や他の著者の本に寄せた単行本未収録分の原稿もある。全8章とふたつの詩篇。友川カズキの来歴をふりかえる構成(ただし最後の1章は近況に的を絞った語りおろし)の起点になるのは、祖父母、父母、バスケ部の恩師加藤先生、故郷秋田にまつわる記憶と情景で、その原風景に中原中也をはじめとする著者に向かうひとびとがまぎれこむ。赤塚不二夫の映画出演時に面識を得た畏友たこ八郎とののんびりひとを食った交流の日々は出会いの達人=友川カズキの真骨頂だろうし、それは中上健次に洲之内徹、深沢七郎など、やがて著者の表現の血肉となるひとたちとの、ときに緊張感をはらむ向き合い方とともにその世界の深まりを物語ってもいる。『月山』を書いた森敦宅を、中上健次とともに訪れたくだりはたしか『独白録』でもふれていたが、三竦み状態の気まずさやおかしさはこっちのがよりなまなましい。気まずくなったら飲み直すしかない。私はさきほど書き漏らしたが、出会いの達人とは酒宴の名人と同義である。

 とはいえ本書は酒の席の怪しい来客簿や昭和、平成の畸人伝にかまけるものではない。
 たとえば若くしてみずから命を絶った実弟覚氏のありし日を綴った「「覚」オメデトウ」にみえる凄絶さ。このときの体験はその後「無残の美」として歌に昇華したが、文中で覚氏について述べた「自分の裡にある魔物のように蠢くやりきれない闇」をまなざす人物像は兄とも大いにかさなりあう。すくなくとも、そのようなひとのうえにしか「私に私が殺される」のような出来事はおこりえない。この一文は自作の絵(のモチーフ)にとり殺されそうになった顛末を描いた、物語風の味わいさえ感じさせる長文だが、その不気味な読後感が抜け去らないままに、『一人盆踊り』は文頭に詩を掲げた名もなきひとたちとの交流の記からさらに詩篇へとつづいていく。この雑多な、それでいてズ太い芯が貫くようなあり方はまったくもって文は人なりというほかない。

 その人となりをさして加藤氏は「何ものにもまつろわぬ、自由人」と呼ぶのだが、ここでいう自由は会社とか部とか課とか、学校とかクラスとかチームとかバイト先とかバンドとかグループとかに属さない自由である以上に、特定のジャンルの形式という名の制約からの自由も含意する。すなわち歌も絵も文も車券の買い方も、どこを切っても友川カズキという全身性の謂だが、この時代にそうあることは、いうまでもなく、ときによるべなく、つねに厳しい。ここ数年友川カズキの存在が静かな注目を集めているのだとしたら、苛烈さを増す世界にあってそうありつづけることの尊さとも無縁ではない。私は先日、某誌の取材で友川さんに久方ぶりにお会いし、そのひと月後、映画の試写で再会したとき、その思いをあらたにした。本書所収の「病気ジマンもいいかげんにします」でも言及するとおり、このごろは身体の方々がたいへんだとぼやいておられたが、それがゆえに魂の踊りの止む気配とてない。『一人盆踊り』はいままさに暮れようとしている2019年の時点における表現者=友川カズキの見取り図であり、それを文庫版という簡便なかたちで手にできることがうれしい。

 いくつもの気になることばがある。絵を描くさい白い紙に向かうときのエロティックな緊張、きつい現場仕事を終えたときの解放感とはほど遠い汚れた布っ切れのような気持ち──言い回しでも形容でもなく、これらことばの事物性が思考のながれにアクセントをつけ、文体はリズムとなり踊り出す。むろんそれはたった一人による踊りであり、祝祭である。

 待つことも行くこともまたなく
 ただ在れ…
 ジングルベル 新年あけましておめでとう
 なあに 日々とこしえよ
 日々一人盆踊りです
(「一人盆踊り」)

 本書と同名の楽曲で友川カズキは上のように歌っている。日々とこしえであれば、エヴリデイ盆暮れ正月。『一人盆踊り』で、みなさま毎日よいお歳を。

Kano - ele-king

 UKのラッパー、ケイノ(Kano)のキャリア6枚目となるアルバム『Hoodies All Summer』がリリースされた。ケイノは2000年代のグライム・シーンの立役者のひとりとして知られるラッパーだ。海賊ラジオ「Deja Vu FM」でワイリースケプタとともに評判をあげ、“Ps & Qs”で大ヒットを飛ばした。また、前作『Made In the Monor』(2014)はUKの批評家賞にあたるマーキュリー賞にノミネートされるなど、時代の声となる作品をリリースしてきた。Netflix で公開中の大人気ドラマ・シリーズ『Top Boy』でのめざましい演技に常に注目が集まってる。そんな幅広い活動の中でリリースされた本作は、コミュニティの宣教師かのように、若者の言葉を用いて彼らを導く。そんな彼が背負っている責任を感じさせるアルバムとなった。

 前半はいまのロンドンの厳しいストリートで稼ぐキッズの現実に寄り添う意識が背景となっているように感じられ、曲調も厳かだ。ヴァイオリンで幕を開ける 1. “Free Years Later”で時折自身の過去のいざこざに言及しつつ、いまの不良を諫める言葉を紡ぎながら「D・ダブル・Eがしてきたことをいま俺が若者にやるんだ」という最後のラインには多くのラッパーの見本となってきたD・ダブル・E(D Double E)の功績を称えながら、ケイノも別の「ストリートの理想像」を体現するという決意が聞こえる。2. “Good Youtes Walk Around Evils”ではタイトなグライム・トラックに、ラフなストリートでラッパーとして「まっとうにやること」、つまりラッパー・リリシストとして「稼ぐ」という姿勢を誇っている。つづく 3. “Trouble”はブラックパンサーの活動家であり、70年代〜80年代にノッティングヒルのデモを率いたことで知られるダーカス・ハウ(Darcus Howe)のインタヴューのサンプリングで始まる。現在の警察の黒人に対する暴力を歴史と結びつけながら、ストリートにい続けることの難しさをストリートにいる若者にも届くような言葉で語っている。例えば、UKのラッパー、アブラ・カダブラ(Abra Cadabra)の大ヒット曲“Dun Talkin'”のラインを引用するところにはウィットを感じさせる。

 中盤はレゲエのエッセンスをミックスした曲が並ぶ。ジャマイカのアクセントを感じさせるシンガーのコージョ・ファンズを客演に迎えた 4. “Pan-Fried”はこれまで彼自身が成し遂げてきたことを祝うような1曲で、東ロンドンのローカルな仲間の話や、ジャマイカ由来のファッション文化が散りばめられていて興味深い。続く 5. “Can't Hold We Down”でもジャマイカの人気ラッパー、ポップカーン(Popcaan)を迎え、ケイノのラップにイギリスとジャマイカの距離が生み出す憧れと、それに対する「俺たちのやり方」への誇りが入り混じったアンビヴァレントな感覚が聴こえて面白い。

 6. “Teardrops”では一転して、栄光の裏側に依然としてあるハードな現実に引き戻される。イギリスにおける黒人の置かれた立ち位置についてハードなビートに乗せて糾弾するようにラップするヴァースと弱気に呟くようなサビは、鮮やかなコントラストを引き出す。また 8. “Got My Brandy, Got My Beats”はある女性との別れの辛さを乗り越えようとする彼自身が描かれ、ガラージのビートとリル・シルヴァ(Lil Silva)のコーラスはその哀しさに寄り添う。

「愛と戦争は、すべて公正か」それが俺の生まれたところ
弱きは続かない、俺らみたいなシューズを履いて1週間
降ればいつも土砂降り、フードでひと夏を過ごす
君と僕にだけに、空から涙がこぼれる

In love and war All is fair where I'm from
The weak won't last a week in shoes like our ones
When it rains it pours Hoodies all summer
'Cause teardrops from the sky only seem to fall on you and I

“Teardrops”

 “Class of Deja”では、Deja Vu FM で凌ぎを削った盟友のD・ダブル・Eとジェッツ(Ghetts)を迎えた正統グライム・チューンで、ケイノとジェッツが交互にヴァースを蹴るスタイルで彼らの絆の強さも感じられる1曲だ。ラストの10. “SYM”では「Suck Your Mum」(意訳:くそくらえ)をコーラスするファニーなイントロが耳を引く。しかし、第二次世界大戦後にイギリスに移り住んだカリブ海移民の「ウィンドラッシュ世代」に触れるなど歴史を振り返りながら、現在のイギリスの黒人が置かれた状況までを見渡すように展開していく。そこから2000年代のダンスや海賊ラジオの存在にもスポットライトを当てるというドラマチックな展開には、イギリスの若者に歴史を伝えようとするケイノの姿が浮かんだ。

 ケイノが現実につながる歴史をラップするのは、それがストリートを生き抜くキッズに必要であると感じたからに違いない。それはマイノリティである「イギリスの黒人」というアイデンティティにとって、事実に基づいたストーリーを伝え、彼らを勇気づけ、良い方向に導きたいからであろう。ドリル・ミュージックがいまのストリート・キッズの現実を象徴しているならば、ケイノはこのアルバムを通して彼らの未来を描き出そうとしているのだ。

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