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Kojo Funds

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Kojo Funds

Golden Boy

Atlantic

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米澤慎太朗   Nov 06,2018 UP

 UKガラージ、グライムからアフロビーツまで、現在のUKの音楽のいくつかは「垂直のゲットー」とも呼ばれるロンドン郊外の団地から生まれてきた。グライムが生まれた2000年代初頭、MCはそれぞれの郵便番号でエリアをレペゼンした。郵便番号が表す1区画が彼らが守っていたエリアであり、またそれぞれクルーの境界でもあったという。一方で、同時期の投資と民間主導の都市再開発はオリンピックを契機にさらに加速していった。“公共”住宅が“高級”住宅へと建て替えられ、もともと住んでいた家族はより不便なエリアに追い立てられたり、予算が切り詰められたことでユースセンターが閉鎖されたりしているという。例えば、Dizzee Rascal や Wiley がしのぎを削った Deja Vu FM がもともとあった団地も、いまや警備員の配備された高級住宅地であるという。

 こうした背景から楽しみを失い、行き場を失ったロンドンの若者のギャング化が問題となっている。ナイフによる殺傷事件の増加はギャング・カルチャーと結びつけられ、ひいてはギャングスタ・ラップやグライムが槍玉に上げられることもある(*)。

 音楽の中で彼らがレペゼンしているのは、郵便番号ではなく、仲間やグループ、そして彼らが住む団地一棟である(**)。彼らは団地やアパートメント周辺で撮ったMVをYouTubeで公開し、自らのエリアを誇示する。「ハイパーローカル」と形容されるような極度の地元傾向、そしてその「ギャング」傾向は、ギャングスタ・ラップの競争的で暴力的な一面ではある。一方で、ストリートのハスラーとして名を馳せてきたロンドンのラッパーのスタイルは、若者から羨望の眼差しを受けている。ギャング・カルチャーの槍玉に音楽が上がることの是非もあるが、彼らの音楽が絶大な影響力を持っているということでもある。

*

 そんなUKラップのニューカマーとして注目を集めているうちのひとりが、Kojo Funds である。2016年に Kojo Funds がロンドンのMC、Abra Cadabra とのコラボ曲“Dun Talkin”をヒットさせ、「ラップする」のではなくパトワ交じりのスタイルで「歌い上げる」スタイルのパイオニアとなった。そして翌年には Mabel のラヴ・ソング “Finders Keepers”での客演で、YouTube再生回数3000万回の大ヒットを記録した。そして、遂に彼のデビュー・アルバム『Golden Boy』がリリースされた。

 アルバムはハードなギャングスタ・ラップをベースに、時折ソフトな曲やラヴ・ソングがくるような展開になっている。出だしは“Golden Boy”。自分を大きく見せようとする「ギャングスタ」の嘘について歌った“0%”、そして彼のヒット曲“Warning”へ流れる。彼の歌い方からは、肩に力が入ったような「怒り」ではなく、むしろ勝者としての余裕が感じられる。

フィールドに出ても、何も言わない
充電器みたいにプラグする
まるで Kolo と Yoyo
警察が俺の仲間を追ってる
やつらは言う、Kojo は悪魔だ
続編は見たくないって
俺の Nigga はディーゼルみたく Furious
“Warning”

 続いての“Million”から2曲は、昨年の“Finders Keeper”で見せたソフトで粋な一面が表れる。Raye を迎え、アコースティック・ギターが印象的な“Check”では、ラヴ・ソング・デュエットを披露している。落ち着きながらも、Kojo Funds のメロディックな暗喩の才能が開花する“Stallin'”。そして、Bugzy Malone を迎えたガラージ・チューン“Who am I?”はこのアルバムのハイライトだ。

俺のビジネスは失速しない
ひとつは足元のなかには
駅では会話するな
ひとつはドレッドの中に

~

失速しない、大金を手に入れた Nigga
太陽が昇るまでストリートで金をゲットする
Yeh Kojo Funds、俺が支配者
俺の兄弟が重りを測る
それでやつらがカットするんだ
“Stallin'”

 後半はポップスへトライした“High Grade”や、Giggs を迎えた“PNG”、エモーショナルな歌を披露する“Thug Ambition”など、幅広い音楽性へと拓けていく。そして、最大のヒット曲“Dun Talkin”でアルバムは締めくくられる。

 アルバムを通して彼自身のアフロ・カリブ、そしてギャングスタ・ラップのルーツを存分に発揮している。そして、ダンスホール、レゲエ、ガラージやトランス、ポップスまでミックスし「アフロビーツ」を開拓し続けている。

(*) Resident Advisor ニュース「「ドリルやグライムよりナイフ犯罪が問題」ロンドンの音楽コミュニティが議会に訴える」 https://jp.residentadvisor.net/news/41626
(**) Dan Hancox による著『Inner City Pressure』から。

米澤慎太朗