「AY」と一致するもの

1月のジャズ - ele-king

 スイスのギタリストのルイ・マトゥテ。1993年にジュネーヴで生まれたが、祖父は中米のホンジュラス出身というラテン・ルーツのミュージシャンである。10代にフラメンコ・ギターを学び、クラパレード大学進学後はジャズの道に進んで同大の音楽賞を受賞し、リオネール・ルエケやウォルフガング・ムースピールといったギタリストにも学んでいる。自身のルーツもあってスパニッシュ、ラテン、ブラジル音楽などにも通じており、自身のグループを率いて数枚のアルバムをリリースしているが、2022年の『Our Folklore』に見られようにジャズとブラジル音楽を繋ぐような作品が多い。また、リオネール・ルエケの影響からだろうが、アメリカのネオ・ソウル的なフィーリングを持つ新世代ジャズにも通じている。2024年にはハープ奏者のブランディ・ヤンガーをゲストに迎えた『Small Variations of the Previous Day』を発表。ブラジルのボサノヴァやサンバ、レユニオン島のマロヤ、カーボベルデのモルナなど、中南米や大西洋、インド洋の国々に伝わる伝統音楽を幅広く取り入れた作品となっていた。

Louis Matute
Dolce Vita

Naïve

 そんなルイ・マトゥテの新作『Dolce Vita』は、ゲストにブラジルを代表するシンガー・ソングライターでのジョイス・モレーノを迎え、ブラジルの新世代シンガー・ソングライターのドラ・モレンバウム、前作に続いてフランス新世代のシンガー・ソングライターのギャビ・アルトマンも参加。ギャビもブラジルに音楽留学するなどブラジル音楽の造詣が深いミュージシャンだ。演奏はエミール・ロンドニアンなどの作品にも参加するレオン・ファル(サックス)、ネイサン・ヴァンデンブルケ(ドラムス)、ヴァージル・ロスレット(ベース)、アンドリュー・オーディガー(ピアノ、キーボード)、ザカリー・クシク(トランペット)など、これまでのルイのバンド・メンバーが固められている。フェデリコ・フェリーニ監督の映画『甘い生活』を由来とする『Dolce Vita』は、その甘美な世界とは裏腹に、軍事独裁政権だったホンジュラスから亡命してスイスに渡ったマトゥテ家族の苦難の歴史と、アメリカやヨーロッパに支配され、搾取されてきた歴史を持つホンジュラスをはじめとした中南米諸国を表現したものとなっている。アルバム制作にあたってルイはスペイン、キューバ、コスタリカ、ホンジュラス、ブラジルと旅を続け、ブラジルではジョイスとドラ・モレンバウムと共演してアルバムを完成させた。

 アルバムはジャズ、ラテン音楽、ブラジル音楽などのほか、ロックやサイケ、ファンクなどの要素も融合したミクスチャーなものとなっている。その代表が表題曲の “Dolce Vita” で、アフロビートとラテン・ロックが融合したような1970年代風の楽曲。“Santa Marta” や “Le jour où je n'aurai d'autre désir que de partir” も、ラテン・ファンクとサイケがミックスしたクルアンビンを彷彿とさせる作品。ドラ・モレンバウムが歌う “Não me convém” は、どっしりとしたブラジリアン・ファンクのグルーヴとフェアリーなドラの歌声が好対照で、エイドリアン・ヤングとレティシア・サディエール(ステレオラブ)の共演を想起させる。“Tegucigalpa 72” はホンジュラスの首都テグシガルパで1972年に起った軍事クーデターを題材とした作品で、ホンジュラスの伝統的な舞踏音楽であるプンタにロックを混ぜたアグレッシヴなナンバーとなっている。


DJ Harrison
ELECTROSOUL

Stones Throw

 ジャズ・ファンク・バンドのブッチャー・ブラウンでの活動と並行し、ソロ活動やほかのグループ、プロジェクトなども精力的に行うDJハリソンことデヴォン・ハリソン。マルチ・プレイヤーでありプロデューサー/トラックメイカーの顔を持つ彼だが、ブッチャー・ブラウンとしては2025年にアルバム『Letters From The Atlantic』をリリースし、ソロ活動では2024年の『Tales From The Old Dominion』以来となるニュー・アルバムの『ELECTROSOUL』をリリースした。彼らしいジャズ、ヒップホップ、ファンク、ソウル、R&Bなどがミックスした作品で、ミゲル・アットウッド・ファーガソン、キーファー、ナイジェル・ホール、ヤスミン・レイシー、ヤヤ・ベイ、アンジェリカ・ガルシア、ピンク・シーフなど多彩なゲストと共演している。

 アルバム・タイトルにソウルが付いているだけあり、今回のアルバムはソウル寄りの内容と言えるだろう。ヤスミン・レイシーが歌う “It’s All Love” はエリカ・バドゥを想起させるネオ・ソウルで、ナイジェル・ホールが歌う “Can’t Go Back” はダニー・ハサウェイのようなソウルの伝統を今に引き継ぐ楽曲だ。グレベスが歌う “End of Time” はメロウなソウル・フィーリングにハリソンのピアノが絶妙にマッチし、“Y’all Good?” ではピンク・シーフのラップと幻想的なエレピが交錯する。一方 “OG Players” は、スライ~プリンス~ディアンジェロという系譜に繋がるような荒々しいロック・フィーリングを持つファンク・ナンバー。“Curtis Joint” も1960~1970年代のザラついた質感をわざと残し、DJならではのループ感覚で進行していく。そして、アルバム・タイトルの『ELECTROSOUL』を最も感じさせるのがキーファーと共演した “Beginning Again”。1970年代後半から1980年代にハービー・ハンコックなどがやっていたジャズとソウルの融合を現代に引き継ぐような作品で、複雑なビートによるジャズ・ファンク調の曲調とコズミックなキーボードの調和がハリソンとキーファー両者のコラボならではと言える。


Jimi Tenor Band
Selenites, Selenites!

Bureau B

 2000年代後半以降のジミ・テナーは、ジャズ、即興音楽、ソウル、ファンク、サイケ、プログレ、クラウト・ロック、エクスペリメンタル・ミュージックなど多方面に触手を伸ばす一方、活動初期のようなテクノやハウスなどエレクトリック・ミュージックを作ることもある。そうしたなか、アフロ・バンドのカブ・カブやトニー・アレンとの共演などに見られるようにアフリカ音楽への傾倒がずっと続いているようだ。彼の新たなグループとなるジミ・テナー・バンドはパンデミックの頃にフィンランドのヘルシンキで結成され、パンデミック明けにフェスやクラブでのライヴで研鑽を積んできた。バンド・メンバーは明らかではないが、作曲者にはUMOジャズ・オーケストラのトロンボーン奏者のヘイッキ・トゥフカネン、サン・ドッグ名義でも活動するドラマーのエティ・ニエミネン、カブ・カブのドラマーのエコウ・アラビ・サヴェージ、ジャズ、ポップス、ヒップホップなどを縦断するギタリスト/マルチ・ミュージシャンのローリー・カイロらがクレジットされるので、おそらく彼らがメンバーと目される。ローリー・カリオの2025年のアルバム『Turtles, Cats and Other Creatures』にはジミ・テナー、エコウ・アラビ・サヴェージ、ヘイッキ・トゥフカネンも参加していたので、ジミ・テナー・バンドもそれらアルバムと地続きで進行するプロジェクトなのだろう。

 アルバム『Selenites, Selenites!』はジャズ、ファンク、ソウルなどの折衷的な作品だが、随所にアフロの要素が散りばめられているところが特徴だ。“Universal Harmony” はカーティス・メイフィールドのようなソウルを軸とするが、アフロビートを咀嚼したドラミングやジミの土着的なフルート、ダイナミックなホーン・アンサンブルが加わることにより、非常にスケールの大きな作品となっている。“Some Kind of Good Thing” はビッグ・バンドの仕事もいろいろやってきたジミならではのジャズ・ファンクで、エキセントリックなアナログ・シンセと骨太のリズムに支えられる。“Shine All Night”にはガーナ北部のフラフラ族のゴスペル・クイーンとして注目を集めるフローレンス・アドーニが参加。彼女の昨年のデビュー・アルバム『A.O.E.I.U. (An Ordinary Exercise In Unity)』にはジミとエコウ・アラビ・サヴェージも参加していたので、そこから今回の共演へと繋がっている。アフロ・ファンクを軸とした楽曲ながら、パンキッシュで極めて実験色の濃い作品になっているのがジミらしい。“Furry Dice” はエコウ・アラビ・サヴェージの作曲で、ガーナのハイライフとアフロビートがミックスしたようなナンバー。


Criolo, Amaro Freitas, Dino D'Santiago
Criolo, Amaro e Dino

Criolo Produções

 ブラジルの新世代ピアニストとして注目されるアマーロ・フレイタスのことは、2024年のアルバム『Y'Y』で紹介したが、今回の新作はラッパーのクリオロ、カーボベルデ系のポルトガル人シンガーのディノ・デ・サンティアゴとの共作となる。『Y'Y』はシャバカ・ハッチングス、ブランディ・ヤンガー、ジェフ・パーカーらが参加し、アマゾンの自然やそこに住む先住民をモチーフとした土着色の強いアフロ・サンバ、アフロ・ジャズという作品だったが、この『Criolo, Amaro e Dino』はまったく趣が異なる。1980年代末から活動し、ラテン・グラミー賞にノミネートされるなど世界的なブラジル人ラッパーとして認知されるクリオロ、ヨーロッパ各地で活躍し、カーボベルデ・ミュージック・アワードやMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードなどを受賞するディノ・デ・サンティアゴが前面に出たコンテンポラリーな作品であるが、アマーロのピアノももちろん存在感を放っている。

 ヒップホップやR&Bに接近したジャズという点では、ロバート・グラスパー・エクスペリメント(RGE)のブラジル/カーボベルデ(またはポルトガル語)版という見方もできる。特に “E Se Livros Fossem Líquidos_ (Poeta Fora da Lei Pt II)” でのメロウなメロディを奏でるピアノとズレたビートを刻むドラミングのやりとりなどはRGEのそれを彷彿とさせるが、ブラジル人ならではの独特のフレーズがやはりアマーロといったところ。“Ela é Foda” はネオ・ソウルとジャズが結びついたような作品だが、メロディ・ラインがブルニエール&カルチエールやアルトゥール・ヴェロカイなどブラジルの先人たちをどこか彷彿とさせるところがある。

ele-king presents HIP HOP 2025-26 - ele-king

日本で唯一の紙のヒップホップ専門誌、待望の第2号 “THE CROWD” が登場
いまUSヒップホップに何が起こっているのか、これを読めばまるわかり!

ピンク・シーフ、本邦初インタヴュー

特集:アンダーグラウンドの過去と現在──独自の創造性にあふれたシーンを徹底解剖

そしてもちろん、今回もやります!
2025年ベスト・ヒップホップ・アルバム50発表

billy woods、Cardi B、The Alchemist、Rico Nasty、Che、Little Simz、WHATMORE、Skrilla、Clipse、Bad Bunny、Bktherula and more...

装幀=大田拓未
表紙写真=川島悠輝

菊判218×152/176ページ

[編集・監修者プロフィール]
二木信(ふたつぎ・しん)
1981年生。ライター。『素人の乱』(松本哉との共編著)、単著に『しくじるなよ、ルーディ』、企画・構成に漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』、編集協力に『ele-king vol.27 特集:日本ラップの現状レポート』、『文藝別冊 ケンドリック・ラマー』など。

contents

[特集]
アンダーグラウンドの過去と現在

[巻頭言]
アンダーグラウンドへようこそ(二木信)

[インタヴュー]
ピンク・シーフ、本邦初インタヴュー──ブラック・アメリカのいまを生きる(取材:二木信、通訳:長谷川友美)
ピンク・シーフ、セレクテッド・ディスクガイド

[コラム]
MFドゥームのラップはどうすごいのか──ShotGunDandyが解説
アンダーグラウンド・ヒップホップの歴史(アボかど)
ヒップホップの成熟とファッション・ブランド(大橋高歩)
誰にもコントロールされることのない創造性が発揮される場(吉田雅史)
クィア・ラップが投げかけた問い(木津毅)
シカゴ・アンダーグラウンドの感受性(三田格)

[ガイド]
必聴30作品ディスクガイド(二木信、アボかど、小林雅明、ネコ型、吉田雅史、ShotGunDandy)
重要レーベルガイド

[第2特集]
2025年ベスト・アルバム50
(二木信、高久大輝、つやちゃん、アボかど、吉田雅史、渡辺志保、池城美菜子、市川タツキ、小林雅明、島岡奈央、長谷川町蔵、竹田ダニエル、イワタルウヤ、奧田翔)

チャートからラップが消えたと騒がれた2025年、はたしてその実態は?(池城美菜子×渡辺志保)
USヒップホップの諸傾向(二宮慶介)
フィメール・ラップ・シーン(島岡奈央)
クロス・オーヴァーとポスト・ジャンルの彼方で(つやちゃん)

ヒップホップの「抵抗」ともうひとつのアメリカ──ケンドリック・ラマーやビヨンセ、ビリー・ウッズをめぐって(二木信)

レコード店が選ぶ2025年のベスト10
(ディスクユニオン、EBBTIDE RECORDS/HMV record shop 渋谷/JET SET KYOTO/Manhattan Records/VINYL DEALER)

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
Rakuten ブックス
7net(セブンネットショッピング)
ヨドバシ・ドット・コム
Yahoo!ショッピング
HMV
TOWER RECORDS
紀伊國屋書店
MARUZEN JUNKUDO
e-hon
Honya Club

全国実店舗の在庫状況
紀伊國屋書店
三省堂書店
丸善/ジュンク堂書店/戸田書店、ほか
有隣堂
くまざわ書店
TSUTAYA
大垣書店
未来屋書店/アシーネ

IO - ele-king

 東京のラッパー、IOのファースト・アルバム『Soul Long』から早10年。これを記念し、同作の「10th ANNIVERSARY EDITION」がリリースされることになった。本人ディレクションの180g重量盤で、発売は2月14日。なお、前日には代官山UNITにてリリース・パーティも開催されます。詳しくは下記より。

IO
2月14日に1st ALBUM 10周年を記念した
『Soul Long (10th ANNIVERSARY EDITION)』 (2LP) 発売決定
前日には代官山UNITでのリリースパーティー開催

東京のRapper: IOが1st ALBUM「Soul Long」の発売10周年を記念した『Soul Long (10th ANNIVERSARY EDITION)』 (2LP) を2月14日に発売決定。
本人ディレクションによる新装版となり、180g重量盤/2枚組見開きジャケット仕様での完全限定プレスとなる。
また前日2月13日(金) 23時より、代官山UNITにてリリースを記念したDJパーティー「SOUL LONG 10thAnniversary Party」を開催することが合わせて発表となった。

『Soul Long (10th ANNIVERSARY EDITION)』 (2LP)

予約URL:https://anywherestore.p-vine.jp/products/plp-8297-8
発売日:2026年2月14日(土)

収録内容:
◼️Side A
1. Check My Ledge feat. YUSHI Produced by MASS-HOLE
2. Play Like 80's Produced by Neetz
3. Tap Four Produced by KID FRESINO
◼️Side B
1. So Produced by DJ WATARAI
2. Here I Am Produced by OMSB
3. 119measures feat. KANDYTOWN Produced by Gradis Nice
◼️Side C
1. Plush Safe He Think Produced by Mr. Drunk
2. Soul Long (skit) Produced by YUSHI
3. Soul Long feat. BOO Produced by MURO
◼️Side D
1. City Never Sleep Produced by JASHWON
2. Tap Four (Remix) feat. KID FRESINO Produced by KID FRESINO
3. Dig 2 Me (Remix) feat. Big Santa Classic & MUD Produced by JASHWON
価格:5,940円(税抜価格:5,400円)
仕様:180グラム重量盤・2枚組見開きジャケット仕様

「Soul Long 10th Anniversary Party」
開催日時:2月13日(金) 23時OPEN
会場:代官山UNIT
出演DJ:
MURO
G.O.K
MASATO
Ryohu
Minnesotah
KORK
チケット代:¥2,500 (with 1drink)

【PROFILE】
東京都出身。2023 年 3 月日本武道館での単独公演を以て終演した HIPHOP クルー:KANDYTOWN に所属する Rapper。
Art /Film Director, Model 等としても活動。

2016年: 1st ALBUM 『Soul Long』
2017年: 2nd ALBUM 『Mood Blue』
2019年: 3rd ALBUM 『Playerʼs Ballad.』
2023年: 4th ALBUM 『four』
2025年: 5th ALBUM 『JUST ALBUM』 ・ EP 『JUST ALBUM RELOADED』

【SNS】
◼️IO Instagram
◼️VERETTA SOUNDS

Shabaka - ele-king

 2010年代以降のUKジャズにおける最重音楽家、シャバカの3枚目のソロ・アルバムが3月6日に発売される。『Of The Earth』と題されたそれは彼自身のレーベル〈Shabaka Records〉からのリリースで、ある時期から封印してきたサックスをふたたび演奏! のみならずラップにも挑戦しているようだ。新たな段階へと進んだシャバカ、期待が高まります。

SHABAKA

現代UKジャズ・シーンの最高峰、シャバカ
最新アルバム『Of The Earth』を発表!
両A面シングル「A Future Untold / Marwa The Mountain」同時解禁!

現代UKジャズの最高峰として、シーンの最前線を更新し続ける存在、シャバカ (・ハッチングス)が、ソロ名義として3作目となる最新アルバム『Of The Earth』を、3月6日(金)にリリースすることを発表した。本作は、自身が新たに立ち上げたレーベル〈Shabaka Records〉からリリースされる初のアルバムとなる。
発表にあわせて、2曲を収録した両A面シングル「A Future Untold / Marwa The Mountain」も同時に公開された。

『Of The Earth』は、全編にわたってシャバカ自身が作曲・プロデュース・演奏・ミックスまでを手がけた、極めてパーソナルな作品だ。本作では、サンズ・オブ・ケメットやザ・コメット・イズ・カミングで展開してきたダンス志向/リズム重視のアプローチと、近年のソロ作品(『Perceive its Beauty, Acknowledge Its Grace』『Afrikan Culture』)で追求してきた、緻密でテクスチュラルなサウンド世界とを有機的に結びつけながら、インストゥルメンタリスト/プロデューサーとしてのシャバカの新たな輪郭を明確に提示している。

SHABAKA - ‘A Future Untold / Marwa The Mountain’
https://shabaka.ffm.to/oftheearth

ツアー移動中にポータブル機材で制作されたビートやループが楽曲の基盤となり、その上を合唱的なフルートの旋律が大きく舞い上がる。電子的なリズム・シークエンスは、ディアスポラ的な歩みの物語を描き出す。またシャバカは、本作でラップにも挑戦しており、次のように語っている。

アンドレ・3000が恐れや気負いなく、誠実に新たな次元を探求していく姿勢に刺激を受けた。だからこのアルバムで、自分自身の声を見つけようと決めたんだ。
- Shabaka

2025年半ば、シャバカは南アフリカのドラムの巨匠ルイス・モホロの追悼コンサートでのパフォーマンスをもって、自らに課していたサックス演奏の休止期間に終止符を打った。『Of The Earth』は、約1年半にわたってサックスを演奏しなかった期間を経て制作された最初のレコーディング作品であり、フルートを中心に向き合ってきた時間が、今後の楽器との関係性にどのような未来をもたらすのかを見つめ直す、ひとつの総括でもある。

ディアンジェロの『Brown Sugar』は、私が初めて買ったCDで、セルフ・プロデュース/セルフ・パフォーマンスによるアルバムが持ちうる感情的な可能性について、長く続く好奇心を呼び起こしてくれた。この作品は、創造的な自己表現における自由を祝福するためのレコードなんだ。コロナ以前の私は、クラリネットとサックスしか演奏できず、音楽制作やフルートの演奏方法についても何も知らなかった。だからこれは学びの旅であり、その結果として生まれた音楽を振り返る作品でもある。
- Shabaka

シャバカ最新アルバム『Of The Earth』は、3月6日(金)にCD、LP、デジタル配信で発売。国内盤CDには、ボーナストラック「Those of the Sea」を追加収録し、日本語解説書を封入。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(ブルー・ヴァイナル)も発売され、限定盤LPは数量限定・日本語帯付き仕様(解説書付)でも展開される。

label : BEAT RECORDS / Shabaka Records
artist : Shabaka
title : Of The Earth
release:2026.3.6
TRACKLISTING:
01. A Future Untold
02. Those Of The Sky
03. Go Astray
04. Step Lightly
05. Call The Power
06. Dance In Praise
07. Ol' Time African Gods
08. Marwa The Mountain
09. Light The Way
10. Stand Firm
11. Space Time
12. Eyes Lowered
13. Those of the Sea *Bonus Track
商品ページ: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15591
配信: https://shabaka.ffm.to/oftheearth

CD

LP

限定LP

interview with Sleaford Mods - ele-king

 社会の底で生きる、いわゆる“見えない人びと”を描いたイギリス映画『バード ここから羽ばたく』には、登場人物たちが、どんちゃん騒ぎのなかスリーフォード・モッズの曲を大合唱するシーンがある。“Jolly Fucker”という、低賃金労働への不満を爆発させ、前向きに生きようぜと、ポジティヴな態度を強制する社会への嫌悪全開の人気曲だ。この曲が重要なのは、社会の下方からの抗議を表現しているからではない。“Jolly Fucker”は、イギリスのポップ・カルチャーが長いこと喧伝してきた労働者階級の「誇り」なんてものが嘘八百だと主張しているからだ。そんなものはいまや不安定雇用と失業、福利厚生の切り捨てによって空洞化している。階級闘争は人種憎悪にすり替わり、仕事はあるが希望はない。家庭は重荷でしかなく、楽しみは消費だけ、労働者階級の連帯感などとっくに崩壊している。振り返っても、何も残っちゃいない。すべてにうんざりしているんだ。スリーフォード・モッズ、そのヴォーカリストであるジェイソン・ウィリアムソンのインパクトは、ただわめき散らすのではなく、21世紀の惨状を、ごまかすことなく、口汚くもしかし知的に言語化したことにあった。そして、ああ、それが我々の第一歩だったのだ。

 2026年の1月は、大好きな二組のアーティストがアルバムを出す。坂本慎太郎とスリーフォード・モッズである。音楽的にも、母国語も言葉表現の方法論もファッションもまったく重ならない彼らにしかし共通しているのは、社会批評としての音楽の可能性を持続していること、秀逸なブラック・ユーモアとレトリック、そして「エモさ」の排除だ。エモいロック、エモいラップ、エモいダブ、エモいアンビエント、エモいテクノはトランスと呼ばれている。エモ、つまり理論よりも泣き(情緒)が優先することは文脈や背景といったものを超越する。それは入りやすい。が、しかし、ボブ・ディランの有名な歌詞のように「いまは泣くときではない」のだ。

 スリーフォード・モッズの装飾性を剥いだ、淡々としたビートは、ふわふわした情緒に対する解毒剤で、いまはこっちのほうが全然ノれる。ジェイソンは、相も変わらず飾りっ気のない声を響かせているが、豪華なゲスト陣が楽曲に色気を足して作品の入口を広くしていることをぼくは嬉しく思う。新作『ザ・ディマイズ・オブ・プラネット・X/The Demise of Planet X(惑星Xの崩壊)』は、アンドリュー・ファーンのトラックの核にある底冷えた感覚を棄てたわけじゃないだろうが、だが、これまでの作品のなかでもっとも多彩な曲調を揃えてもいるのだ。
 むき出しの絶望、怒りの濁流だったおよそ10年前の(いまとなっては2010年代の決定打)『Divide and Exit』と比べれば、ずいぶん取っつきやすくなったものだ、と思われる向きもいよう。あの寒々しい煉獄ループはどこいった? と言いたくなるファンがいても不思議ではない。でも待ってくれ。彼らにしても毎回同じことを繰り返すわけにはいかないし、ぼくのように10代からポスト・パンクや80年代ニューウェイヴのハイブリッドなスタイルに親しんでいたリスナーにしたら、これこそがUK音楽の魅力である、と声を大にして言いたくもあるのだ。レゲエ、パンク、テクノ、ソウル、ポップス、ヒップホップ、グライム、そんなものが混ざっている世界で、『モア・スペシャルズ』や『サンディニスタ!』、マッシヴ・アタック、セイバーズ・オブ・パラダイス、ザ・ストリーツ……大きくはそんなものたちの系譜にある。
 以下、推薦曲をいくつか挙げておく。“The Good Life” “Double Diamond” “Elitest G.O.A.T.” “Megaton” “No Touch” “Bad Santa” “The Demise of Planet X”……つまり、1曲目から7曲目まではほとんど完璧に思えるが、このなかで1曲選ぶなら迷うことなく(いつまでも消えない)精神的な不安定さを主題にした“The Good Life”。
 歌詞の観点で言えば、興味深いことに “Megaton”は、坂本慎太郎の新曲“麻痺”ではないが、情報過多の地獄に慣れ切った現代人の麻痺(思考停止)状態を表現しているようにも読める。(日本盤の訳詞担当は坂本麻里子)

 このインタヴューではすっかりなごんでいるが、作品には、観察者ジェイソンによる支離滅裂だが筋の通った激しい怒りと皮肉、苛立ちが、変わらず溢れいる。意識高い系、外見至上主義、SNS、スマホ、英国とアメリカ、筋トレにジム通いなどなどを、ファンであるぼくから見てもおまえらは何様だ! と思うくらいに片っ端からあざけっているのでご安心を。ただし、ひとことだけ言っておこう。ジェイソン、ムカついているのはあんただけじゃない(「空腹な群衆は怒れる群衆」by ボブ・マーリー)。
 もっとも連中は、ただただ延々と不平不満をぶちまけるだけでは、それはもはや演芸であり、降伏にひとしいということもわかっている。なにかを変えるには自らも変わる必要がある、それが今回のアルバムでは、(繰り返すようだが)音楽的な幅の広さとして結実し、それは柔らかい何かを伝えている。ぶっちゃけたところ、イギリスの階級社会や政治など、東アジアのこの暗い貧国の隅っこで暮らしているぼくにとっては知ったこっちゃねぇよ、と言いたくもなるのだが、曲の合間合間から見える彼らの「ヒューマニズム(人間愛)」をどうぞ感じ取ってほしい、とは思う。
 それではいきましょうか、長いです。なお、この記事では新作のゲスト陣(女優のグェンドリン・クリスティーをはじめ、オールダス・ハーディング、伝説のバンド、ライフ・ウィズアウト・ビルディングスの元フロントウーマン=スー・トンプキンス、ポスト・パンク・デュオのビッグ・スペシャル等々)のことは触れていません。新作についてより多くを知りたい方は、ビートインクのサイトを参照ください。

批判するのは何ら悪いことじゃない。というかある意味、批判は不可欠だと俺は思うくらいだよ。ところがそれと同時に、同じ標的ばかり狙っていると——あるいは同じ語り口ばかり使っていると、やがてその批判は対象について以上に、批判者について多くを語るようになってしまうと思う。(ジェイソン)

まずは2025年のよき思い出から話して下さい。〈War Child〉(*戦災被害を受けた子供や家族を支援する慈善組織。SMはシングル“Megaton”の収益と26年英ツアーのチケット1枚ごとにその売上から1ポンドを同団体に寄付する)支援や『Divide and Exit』アニヴァーサリー再発後の小規模ライヴハウス・ツアー、入場料にも考慮したライヴ(*SMは低所得者層向けに5ポンド=約1000円の割引チケット枠を設定している)など、過去1年ほどいろんなことをやられていましたよね?

ジェイソン:そうだな、よいことはいろいろあった。まずはこのアルバムの制作、こうして1枚仕上げられたこと——。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:——それが、俺たち双方に大きな達成感をもたらしてくれたと思う。そうだろ、アンドリュー? かなり努力したからさ。

アンドリュー:うんうん。2025年は静かな年だったよな、俺たちあんまりツアーしなかったから。

ジェイソン:ああ、たしかに。家で過ごせたのもよかったと思う。

アンドリュー:そうだね。

ジェイソン:快適な日常生活に浸ってたな、過去10年のハードワークの成果である、自分たちで作り出した家庭生活を満喫するっていう。

アンドリュー:ああ。

2025年夏、アンドレア・アーノルド監督の映画『バード』が日本で上映されました。作中にスリーフォード・モッズの曲がかかることと、Burialが音楽を担当したくらいしか予備知識がなく見たんですが、ジェイソンに似ている役者が出ていると思って、エンディングロールをよく見たらあなたの名前があったので驚きました。

ジェイソン:ジャンジャジャ〜ン!

アンドリュー:(笑)

映画自体がとても興味深い話で、シリアスな話ですが、登場人物たちが“Jolly Fucker”を合唱するシーンでは笑ってしまいました。あの映画の感想をまずは聞きたく思います。

ジェイソン:とてもいい映画だよ。

アンドリュー:『バード』?

ジェイソン:ああ、監督はアンドレア・アーノルド。

アンドリュー:ふーん。わかった、後で観てみるわ(笑)。

ジェイソン:すげえヘヴィな映画だから、覚悟して観ろよ! ハッハッハッ! マジにファッキン重たい映画だ。

アンドリュー:ふーん、そうなんだ。

ジェイソン:うん。だけど本当にいい映画だよ。アンドレア・アーノルド、彼女はああいう映画をもう6、7本撮ってきた人で、その多くはいわゆるキッチン・シンクもの(*イギリスで50〜60年代に広まった、庶民生活をリアルに描く演劇や映画)で、とても陰鬱な、労働者階級の生活を背景に据えてる。っていうか、彼女は俺たちの最新のヴィデオ、“No Touch”も撮ってくれたんだ。

アンドリュー:ああ、彼女か! うん、俺もBurialは好きだし——

ジェイソン:だよな! Burialがサントラを担当したなんて、それだけでもかなりすごいよ。で……うん、あの作品に出演できてとても誇りに思う。彼女は素晴らしい仕事をやってのけたし、妻と一緒に映画館に観に行ったよ。マジにヘヴィな映画なんだけど、実際に観て「ワオ! すげえ!」と思った。だから、あの映画に参加できてとても誇らしい。

アンドリュー:クール!

あの映画の主人公の女の子の家庭はとてもカオスですよね。家族はスクォッティングしていて、しかも父親はひじょうに若く、彼女には腹違いの兄弟もいる。その父は幻覚性のある液体を出すカエルを手に入れてそれで結婚資金をつくろうとしているわけですが、あの設定は、きわめて特殊な環境なのか、それともUKの労働者階級家庭の一部では、現実にありふれた光景と言えるのでしょうか?

ジェイソン:あれはアンドレア自身の子供時代を元にした設定なんだ。だから、労働者階級が生活するエリアの多くで——いや実際、それに限らずどんなエリアにだって、機能不全に陥ってる家庭は存在するだろうね。うん、もちろん存在するさ。だから俺としては答えはイエス、思うに、うまくいってない家庭環境ってのは普通に存在するんじゃないかと。

実際のところ、ああいう人たちがコールドプレイやブラーに混じってスリーフォード・モッズも聴いているんでしょうか? コールドプレイとSMって、いわば対極のように思えますが——

アンドリュー:フハハハッ!

坂本:(笑)それともむしろ、あの選曲は監督の趣味なのでしょうか?

ジェイソン:コールドプレイを聴いてる人たちが俺たちの曲も聴くってのは、そんなに現実離れしちゃいないと思うけどね。どちらも要は、「ポップ・バンド」なわけだし。だろ、アンドリュー?

アンドリュー:うん。だからほら、一般的な類いの人たち……主流に属する人たちは、みんなそういうことをやってるんだよ。なんだかんだ言って、彼らはテレビでBBCの定時ニュース番組を観るわけで。

ジェイソン:うん、そういうことだろうね。俺だって、俺たちが彼ら(コールドプレイ)と同じ類いのクラウドを引きつけるとまでは言わないけれども、比較的に言えば、俺たちだって彼らと共にコマーシャルな音楽の景観のなかに存在すると思うし。

アンドリュー:だよな。

ジェイソン:いまはますますそうなってきてる。アルバムを出すと毎回英チャートでかなり上位に入るし(*SMのアルバムは2019年の『Eton Alive』以来毎作トップ10入りしている)——幸運が続きますように!——、だからコールドプレイを好きな人びとが俺たちの存在に気づいてたって何の不思議もないだろう。

続いて、ジェフ・バロウの〈Invada Records〉が初プロデュースした映画『GAME』にも出演されたそうですね。

ジェイソン:うん。

ブリストルの1993年頃のレイヴ・シーンが舞台のホラー映画だそうで、とても観たいけれど、日本で上映される可能性は低そうです。『GAME』に出演することになった経緯、作品に対するご感想を聞かせてください。ジェフとは過去に仕事したことがありますよね?

ジェイソン:そう。以前、2014年頃に〈Invada Records〉からEP(『Tiswas EP』)をリリースしたことがあって。以来ふたりともジェフとは連絡を取り続けていたし、そしたら何年か前に彼から「映画を作ろうかと思ってるんだけど、役者として出てみるのに興味ある?」って打診を受けて、俺は「イエス!」と即答した。彼ら〈Invada Records〉側はクリエイティヴ面でひじょうに優れた連中だし、だからきっとかなり興味深いプロジェクトになるだろう、というのは俺にもわかったから。

坂本:あなたがたには90年代レイヴ文化もバックボーンにあるでしょうし、その意味でも興味深そうな映画です。ちなみにアンドリュー、あなたに映画出演のオファーはまだないんですか?

アンドリュー:全然。ちっとも(苦笑)。

ちなみにイギリスには、ケン・ローチの映画や『ブラス!』(1996)のような、労働者階級を舞台にした映画が多数ありますが、あなたが好きな作品はなんでしょうか?

ジェイソン:フーム(考え込む)。

アンドリュー:いい質問だね……『Abigail’s Party』は、かなりいいと思う(*『Abigail’s Party』はマイク・リーがBBC向けに製作した1977年のテレビ映画。労働者階級の実相を描くというより、当時の英中流階級の上昇志向を風刺した古典作)

ジェイソン:うん。

アンドリュー:あと、『Naked』もかなり好きだな(*同じくマイク・リー監督の1993年の長編映画)

坂本:なるほど、マイク・リーが好みなんですね。

アンドリュー:ありゃいい映画だ。

ジェイソン:そうだな、俺は『Kill List』(*2011/ベン・ウィートリー監督のサイコスリラー/フォーク・ホラー)がすごく気に入ってる。思うにあれは……。

アンドリュー:あれもいいね。

ジェイソン:うん。かなり殺伐とした映画だよな。主役の労働者階級出身の野郎ふたり、あいつらが暗殺者に転じるっていう。わびしい映画だよ。うん、だからあれは好き。たぶん俺のフェイヴァリットじゃないかな、あれが。

坂本:それにあの映画は、新作収録の“Kill List”もインスパイアしていますよね?

ジェイソン:うん、そうなんだろうね。と言ってもそれは、あの映画の主人公の憤怒ぶり、という意味でだけど。あのキャラはもう、「いったい何がどうなってんだ〜〜っ!?」って怒りまくりじゃん(苦笑)。

坂本:(笑)たしかに。

ジェイソン:元兵士のあいつはPTSDか何かに苦しんでて、そのせいで酒を飲んでばっかだし、そしてあの悲惨な殺し屋仕事を請け負うことになる、と。だからあの一節、“Screams fill clouds/Like the bloke from Kill List(空に届く悲鳴で雲すら埋まる/『キル・リスト』のキャラのあいつみたく)”ってのはそれなんだ。

アンドリュー:ハハハッ!

コールドプレイを聴いてる人たちが俺たちの曲も聴くってのは、そんなに現実離れしちゃいないと思うけどね。どちらも要は、「ポップ・バンド」なわけだし。だろ、アンドリュー?

2024年は、『Divide and Exit』が発売されてから10周年でした。あのアルバムがSMにとってのひとつのブレイクスルーになったとわけですが、いまあらためてあのアルバムをどんな作品だと思いますか?

アンドリュー:んー、そうだなぁ……どう思うか? あれはグレイトな作品だよ! 実は昨晩、俺もあのアルバムを聴いたところでね。とにかく、とても折衷的な内容だし——自分にはいまだにこう、いちリスナーとして耳を傾けるのがかなりむずかしい作品、っていうのかな? あれを制作したときの状態にまだ近過ぎるっていう。

ジェイソン:うん、うん。思うに……だからまあ、あれははっきりと突き立てたどでかい二本指(*人差し指と中指を立てて手の甲を相手に向ける「裏ピース」の仕草は、イギリスでは「F**k You」の意味)だったわけだし、でも俺たちはまだこうしてここにいて——。

アンドリュー:クフッフッフッ!

ジェイソン:活動を続けてるっていう。本当に最高だよ、いまだに面白くなる一方だからね。

あのアルバムはSMのなかでもっともパンクな作品だとあなたは言っていましたが、あのころは何に対して怒り、絶望していたのでしょうか?

ジェイソン:何もかもに対して、だったと思うけど? だからだよ、俺は夢中でリリックを書きまくったし、アンドリューも猛烈なペースでトラック部を仕上げていった。とにかくふたりとも、ああやって自己表現ができること、そのためのプラットフォームがあることを心から楽しんでたんだと思う。

アンドリュー:だね。

ジェイソン:もちろん怒りのこもった作品ではあるよ。ただし、それは——俺たちには、例えばアナーコ・パンク・バンド(*英ポストパンクの潮流から生じた、商業性や音楽的な洗練を無視したアナーキックで教条主義的なバンド。代表格にCRASSがいる)か何かみたいなご立派な権限・義務だのはなかったし、とにかく「おぇぇぇ〜〜っ!」(と、吐くジェスチャー)とブチまけたっていうか。

アンドリュー:(苦笑)

ジェイソン:だから、ギグに来る人びとの数がどんどん増えていって、「ヤバくね?」って思ったよ、「何これ、マジかよ?」みたいな。アッハッハッハッ!

アンドリュー:それに俺たちは確実に、音楽パートと歌の話術とのあいだに大きな隔たりがある、そういうものを作ろうとしてたよな。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:つまり……いやだから、90年代にだって素晴らしい音楽はたくさんあったさ。でもそのどれもがこう、自分たちの属する「ジャンル」に大きく傾いていた、みたいな? だから、「ヒップホップをやるんならとことんヒップホップ」とか、「自分はトリップホップ一直線」云々。そんな風にひとつのスタイルに特化しジャンルに貢献しようとする、強い意志みたいなものがあったっていうか。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:で、俺はその姿勢が本当に苦手で。例えばエレクトロニカなアルバムを作ろうと思い立って、トラックを3つくらい作った段階で、ふとそれとは違うことをやりたい、フォーキィな曲を作りたい、なんて思っちゃうんだ(苦笑)。

ジェイソン:なるほど。

アンドリュー:ある意味俺は、一ヶ所に留まり続けるのがまったく得意じゃない奴だっていう。そんなわけで、これ(SM)なら本当にうまくいくんだ、っていうのも、ジェイソンはそうやってあっちこっちに飛んでもまったく気にしなかったし——っていうか、彼はそれを狙ってる、みたいな。自分たちはさまざまな音楽が好きだって点を反映したものを作りたいと思っていたからね、ありとあらゆる類いの音楽を聴きながら育ってきたわけだし。

ジェイソン:その通り! 思うに——アンドリューがどんなことを「やらかして」きたとしても(笑)それでOK、という。いやまあ俺たちだって当初、ごく短い期間、そうだなあ、6、7ヶ月くらいの間かな? 自分たちのセットアップについてあれこれ話し合ったことはあったよ。だけどそれ以降はもう(笑)、「とにかくこのままやっていこう!」って感じで。マジに何でもありだったし、俺も「これなら自分も何かやれる」と思った。とにかく、彼のやることには独特な感触があったし——その感触はいまも健在だけど——、それって、歌い手としての俺にとってどこかしら、とても魅力的だったんだ。

また、その怒りや絶望は、いま現在のあなたのなかにもあると思いますが、しかし音楽制作に向かう考え方のうえで変わったところもあるでしょう。その変わったところとはなんでしょうか?

アンドリュー:あれ以降、俺たちもいろんな場所でレコーディングをやってきたわけで、おかげで音楽作りという経験に異なる見地をもたらされるのはたしかだ。

ジェイソン:だよね。

アンドリュー:昔に較べたら、ヴァリエーションは増えてるかもしれない。だけど、それにしたって一種の錯覚っていうのかな? 昔の作品はミニマルに響くかもしれないけど、実は質感もしっかり備わった作りだし。

ジェイソン:ああ。かなりテクスチャーを加えてある。だからじゃないかと思うよ、常に違う風に聞こえるのは。聴くたび様々に変化するんだけど、その変わり方は微妙。派手に「どうだ!」って風な変化じゃないんだよね。

アンドリュー:ああ。

ジェイソン:でも……わからないなぁ。そこらへんの変化を客観的に説明しようとするのって、むずかしいよ(笑)。アンドリュー:だね。

ジェイソン:俺としてはとにかく——これに対する自分の対応の仕方、つまり俺にとってのSMってのは、毎朝俺んちの玄関に配達される4パイントのミルク壜、みたいな。朝起きたら、ドアを開けて、ミルク壜を手に家に引っ込む。だから何であれ、そのときの自分の気分次第ってこと。

アンドリュー:なるほど。ミルク壜のフタを勢いよく開けちまいたくなるときもある、と。

ジェイソン:そう。ライヴでステージに上がるたびに思うよ、「ああ、これをやれるなんて本当にありがたい! 俺はこれから90分間、思いっきり不平を垂れ流すことができるんだ」って。

アンドリュー:(笑)

慈善団体〈War Child〉への支援やライヴ入場料の配慮といった新しい試みもしていますね。それは自分たちの音楽が少しでもこの社会の役に立てばということだと思いますが、こういう実践や経験は、SMの作品にも反映していると思いますか?

ジェイソン:……どういう意味で?

あなたたちがチャリティや寄付に協力するのは、人間としての自然な感覚だと思います。ですが、SMは音楽/言葉を通じて例えば「ホームレスの人びとにお金をあげよう」みたいに人々に指図しませんよね。むしろ、行動で実践しているというか。

アンドリュー:たぶん俺たち、具体的なメッセージを含む歌を作ることはないんじゃないかな。

ジェイソン:うん、ノー。それはない。実際に行動することと、それとは違うんじゃないかな。

坂本:なるほど。それについて語ったり唱道したりするよりも、むしろ実践の形でやっていきたい、と。

ジェイソン:んー……。

アンドリュー:いやだから、いまの俺たちにはチャリティに協力するだけの余裕がある。

ジェイソン:そうそう。

アンドリュー:だったら、自分に余裕があって可能なら、(ファンや人びとに対して)少しでもいいから「お返し」しはじめなくちゃいけないんじゃないかな。

ジェイソン:その通りだと思う。自分たちにやれる限りのことをね。チケット代5ポンドの枠にしても、実際にそれで助かった人たちがいるとわかったし、だから俺たちはあのシステムを継続してる。〈War Child〉にも協力してるし、あのチャリティは戦渦によって家を失った世界各地の子供たちを援助しようとしているわけで……そうだね、「これなら自分にもやれる」と思うことだったら、できるだけ助けよう、そういうことだよ。

坂本:はい。

アンドリュー:まあ、もしかしたら俺たちも、もっと大規模にやれるのかもしれないよ? だけどそれって、ちょっとした矛盾が生じる物事なわけで——。

ジェイソン:だね、その通り。

アンドリュー:俺たち、ボノみたいな野郎になる気はないしさ。

坂本:(笑)

アンドリュー:(笑)わかるだろ? だから、あんな風に派手にやる気はないにせよ、それと同時に、「自分たちも何かしなくちゃいけない」って感じるジレンマだよ。

ジェイソン:俺もそう思う。

坂本:そうですね。ミュージシャン/バンドのなかには、アンドリューが言った「お返し」を充分にやっていない、と思える人たちもいるわけで。

ジェイソン:だけど、多くの連中にとって、それをやるのは楽じゃないと思う。俺たちはなんとかやれてるよ——だけど、俺たちがプレイするのと同じ規模の会場を回っていて、メンバーが5、6人もいるバンドの多くは、なかなかチケットが売れない状況にある。全般的にそうなってるんだ、観客側もみんな金が無いから、ライヴのチケットの売上が落ちてるっていう。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:キツいよなぁ! だから、やりたくても寄付をやれないバンドがいるって事情は、俺たちにもよくわかるよ。

かつてジェイソンはソーシャルメディア上でノエル・ギャラガーや複数のバンド(*ブロッサムズ、アイドルズ他)を相手にけなしあいを繰り広げましたが、そうしたご自身の攻撃性は自分自身を傷つけることにもなった、それって果たしてどうなのかと自問自答した——“The Good Life”にはその気持ちが歌われているそうですが、この曲をアルバムの冒頭にもってきたのはなぜでしょう? 

ジェイソン:そうだな、あの歌が描いているのは、三つの事柄がいかに互いに連動・作用し合っているか、といったことで。ひとつに、他の人びとを批判するのは何ら悪いことじゃない、という考え方がある。というかある意味、批判は不可欠だと俺は思うくらいだよ。ところがそれと同時に、同じ標的ばかり狙っていると——あるいは同じ語り口ばかり使っていると、やがてその批判は対象について以上に、批判者について多くを語るようになってしまうと思う。そのふたつに伴い、「そうなってしまうことについて、自分はどう感じるか?」っていう、俺の内面の自問自答が生じる——歌のなかではグウェンドリン・クリスティーが、そのせいで俺はどれだけ内心悲惨な思いを味わっているかを語っているわけ。それら矛盾する発想に加えてコーラス部では、自分の周囲の何もかもが崩壊してるとしても、「いい人生を送ったって大丈夫だよ」と言ってるっていう(苦笑)。だから、世のなかの大半の人間が嫌な気分を味わっているときでも、自分は気持ちよく朝を迎えたっていいんだ、みたいな。たまにあるよな、自分の国であれ海外のどこかで起こった事件であれ、他のみんなと同じトラウマをくぐることを誰もが求められるときって? そんなわけで、その三つすべては同時進行してるってことを歌っている曲だし、そうであっても間違っちゃいない、という。

それは、長らく活動してきたSMを、その手法をリセットしたいということでもあるのかなと?

ジェイソン:んー、思うに……俺とアンドリューにとってはもちろん、「自分たちは進歩を重ねてる」と感じるのは大事なことだ。で、おそらくその一部には、俺たちが個人としてどう感じるか、ってところも含まれるんじゃないかと。アンドリュー:うん、うん……進歩し続けること、それはとても重要。コンテンツを発表するにしても、代わり映えのないものを常にリリースし続ける連中もいるしね。まあ、それは受け手側にとっても無難で安心できるものなんだろうけど。

坂本:実際のところ、SMにはマンネリズムの危機みたいなことはあったのでしょうか? クリエイティヴな袋小路に落ち込んでしまい、「変化しなくちゃいけない」と感じたことは?

アンドリュー:いやー、全然。音楽面においては、それはなかったと思う。ブレイクを取った今回のアルバム(『The Demise of Planet X』)を除くと、俺たちは1、2年に1枚は作ってきた。ずっと汽車ポッポみたいな勢いだったよな?

ジェイソン:シュッシュッポッポー!(と、汽笛を真似ておどける)」

アンドリュー:アッハッハッ!

ジェイソン:だけど、例えば『Spare Ribs』を作ったときですら、別に「やばい、俺たちも路線を切り替えなきゃ!」と考えたわけじゃないし、単に「別の層を追加するって案、いままでに考えたことある?」みたいな話で。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:俺たちは——っていうか俺は最初のうち、そのアイディアに全然乗り気じゃなかった。とにかく「俺以外の誰かに、自分たちのトラックで歌わせる? それってどうかなぁ?」と思ったし。

アンドリュー:わかる。

ジェイソン:それくらい、俺たちは作品と密に繫がってた。だけど実際にゲストを迎えたら本当にうまくいったわけで。だから、俺が学んだのもそこだった——アンドリュー、お前がこの意見に賛成するかどうかはわからないけど——この業界で勝負してたら、自分がどんなことをやっても絶対にどこかから、「前作アルバムからあまり変わっていない」云々の非難の声が上がるもんだ、っていう。

坂本:ファン心理はむずかしいです。人は思い出を大事にしがちですし、「昔のSMの方がよかった」なんて声も出てくる。あなたたちに同じ場所に留まって変わらず同じことをやっていて欲しい、と思う人々もいるでしょうね。

アンドリュー:そう、その通り。とはいえ——幸いなことに俺たちのファン層も、いわば「ラガー・ビールをかっ食らう野郎ども(lager lads)」からかなり成長してきたわけで(笑)。

ジェイソン:ハッハッハッハッ! あいつら、lager louts(*80年代末にイギリスで増え社会現象化した、ラガー好きな若い暴徒)っぽいよな?

アンドリュー:まあ、彼らを「ファン」と呼ぶ連中もいるよね……ついこのあいだも人とこの話をしたばかりなんだけど、人びとはこっちに期待してるわけだよ——以前、誰かから言われたっけな、「お前ら、もう何で“これ”(と、頭に貼り付いた何かを振り落とそうとするように、後頭部を右手で荒々しくさするジェスチャー。昔ジェイソンがよくやったステージ・アクション)をやらなくなっちまったんだ?!」って」(*このジェスチャーは以下の映像を参照ください。)

坂本:(爆笑)

ジェイソン:ブハハハッ! ったく……(苦笑)。

アンドリュー:で、俺は「だったら、お前は何で俺たちを観にきたわけ?」と思った。「お前にとっちゃそれだけ? それっきりのことかよ?」と。音楽に負けないくらい大声でくっちゃべり、ビールをがぶ飲みし、ああしろこうしろと言ってくる。冗談じゃない、こっちのやってることはもっと深いよ。とにかくまあ……もうちょっとオーディエンス層が絞り込まれて、かつ多様性が増してくれたのは、俺たちにとって素晴らしいことだよ。それはつまりこれからも、もっとギグをやれるってことだから……(笑)。

ジェイソン:ハッハッハッハッ!

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とはいえ——幸いなことに俺たちのファン層も、いわば「ラガー・ビールをかっ食らう野郎ども(lager lads)」からかなり成長してきたわけで(笑)。(アンドリュー)

新作の話に戻ります。「巨大な不安のもとで生きる人生──集団的トラウマによって形づくられた生」というテーマは、いかにして出てきたのでしょう? その契機となった出来事などありましたら教えてください。

ジェイソン:ああ、ファッキン山ほどある。2023年以来、世界はすっかり変わっちまったわけだろ? ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月24日)、あれがきっかけになったと思う。そして10月7日事件(2023年のハマスによるイスラエル攻撃事件)があり……そこで起こったこと、そして現在も続いている事柄のすべて。そしてもちろん、トランプの二度目の権力掌握があった。アメリカが内破を起こしたってことだし——アメリカってのは世界最強・最大級の勢力を誇る超大国であり、「自由世界の指導者」と目されてきたわけで。だからいまや何もかもがこう……マジに……剣呑な状況になってきてるっていう。ドイツとポーランドが戦争の危機を語る云々——。

アンドリュー:狂ってる。

ジェイソン:うん、クレイジーなゴミだらけ。だから俎上に載せる事柄はいくらでもあるわけ。で……俺にとっちゃ、いまや国際政治は国内政治と同じ、っていうか。とにかく自分自身には、ウェストミンスター(*英国会議事堂のあるエリア)で起こってる政党政治、イギリス国内の二党政治と同じくらい身にしみて感じられるっていう。

アンドリュー:たしかに。

『The Demise of Planet X(惑星Xの崩壊)』というタイトルにはSF風の表現が入っていますが、いま自分たちが生きているこの社会が悪い冗談のように思えることがあります。トランプの存在もそうですし、日本では山から大勢のクマが人間の生活圏に侵入し、多くの被害者を出して、いま社会問題になっています。

ジェイソン:……クマがもっと、都会にまで降りて来てるの?

坂本:そうなんです。

ジェイソン:それって何ごと? どうして?

坂本:妙ですよね。地球温暖化の影響等もあるのでしょうか、私にも原因はわかりませんが……。

ジェイソン:ひぇー、どえらい話だな!

坂本:はい、怪我人や死者が相次いでいます。現実は奇妙になる一方ですし、できれば政治のことなど気にしたくないのに、気にせざる得ない状況が続いています。SMが、そんな世界であっても順調に続き、楽しみを忘れずに、しかし現実を直視しているみたいな芸当を10年以上続けていることは尊敬に値します。自分たちがここまで長く音楽活動できているのは何故だと思いますか?

アンドリュー:フム……。

ジェイソン:そうだな——俺にもわからない! 思うに(軽くため息をつく)……ふたりとも、この仕事をやるのが好きだ、ってのはあるよね。でも、本当に全面的に関わってるから、ほとんどソロ・プロジェクトをやってるようにすら感じる。アンドリューがそこに関してどう思うかはわからないけど、俺からしたらもう、SMで自分の欲求をほぼすべて満たせてるし、存分にやれてるから、ソロとして活動範囲を広げる必要は感じない。自分にはこれがあるんだ、という。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:彼(アンドリュー)が俺にチューンを持ち込んでくるたび、違うバンドをやってる気分になるし(笑)。もちろんそんなことはなくて、どの曲もSM味でコーティングされてるんだけどさ。だから、音楽に備わった多彩さは俺たちのオープン・マインドなところから来てるし、ふたりでコラボし、お互いの意見にちゃんと耳を傾け合ってると思うし——ここまで続けて来られたのも、それだからだと思うけどな、俺は。

アンドリュー:たしかに。

坂本:アンドリューはたまに、「ジェイソンの限界を試してみよう」といういたずらっぽいノリで、妙なループやビートを敢えて彼に提示することもあるのでしょうか?

アンドリュー:うん、っていうか実際、それはかなりしょっちゅうやってる(笑)。ただし、それと同時にやっぱり、「SM向けのトラック」っていうスレッド——それが具体的に何を意味するかは、俺にもわからないけど——は存在するんだよね。まあ、概して言えばかなりポップ調、あるいはかなり鋭角的なトラック、ってことになるのかな。でもまあ、「何かが見つかった」って感じ? 要するに、これはSMにぴったりだ、とピンとくるっていう。

SMの始動において、ウータン・クランの手法論を大きな契機としてあげていましたが、しかしSMの楽曲はブラック・ミュージック的なファンクのノリがないとずっと思っていました。

アンドリュー:うん。

ところが、今回にはそれがありますよね? 具体的には“Bad Santa”、“Shoving the Images”で、ジェイソンのライムに関しては“No Touch”にもラップ的なフロウがあります。こうしたサウンド面での変化についてコメントしてください。

ジェイソン:んー……これまた、アンドリューのやることの多彩さ・幅広さの成果が出たってことだと思う。俺は、アルバムを出すごとに自分たちは前進してると考えてるし——「もっとよくなった(better)」っていう言葉を使うのが適正かどうかわからないけど、以前より枝葉も広がっているし、もっと凝ったものになってきてるよね?

アンドリュー:うん。だからまあ、それは過去3、4作くらいを通じて、俺たちががんばって少しずつ、毎回「もうちょっと、もうちょっと」って風にやってきたことであって」

ジェイソン:ああ。

アンドリュー:それも、この(SMという)コンセプトの進歩の一部だと思う。そのコンセプトにはもっといろいろ加わってきたし、でも、その本来の姿からかけ離れてはいない、という。

ジェイソン:うん、同感。

アンドリューのトラックも、かつてはマーク・フィッシャーから「煉獄ループ(purgatorial loop)」と呼ばれたほど、冷たく容赦ないサウンドでした。

アンドリュー:うん。

ですが、今作の“Don Draper”にはメロディがあり、“Gina Was”にはキャッチーさもあります。こうしたある種のフレンドリーさ/聴きやすさは、年齢を重ねて丸くなったところから来るものなのでしょうか?

アンドリュー:(苦笑)それって、ある意味避けようがないと思う。どんなアーティストにとっても、それは自然な成長の過程の一部だよ。

ジェイソン:そう。でも、それと同時に言えるのは、“Don Draper”にも“Gina Was”にも、どこかしら——んー、どう言ったらいいかな……これは、アンドリューのやることをケナす意味で言うんじゃないから誤解して欲しくないんだけど——どっちも、ひどい響きなんだけど、なのに素晴らしいよな?

アンドリュー:(苦笑)

ジェイソン:ほとんどもう、「全然クールじゃない本質」めいたものがあれらの曲に備わってて、でも、そのおかげでものすごくいい曲になってる、というか。

アンドリュー:(苦笑)ハハハッ……。

ジェイソン:でも、それって独創的だってことだし、俺はまだ、そこを信じてる。いや別に、何もかもがオリジナルである必要はないんだ。そんなことはない。ただ、自分たちのやってることはオリジナルな何かだと俺は信じてるし、独創性を受け入れることの一環として、それは「なじみのないもの」だ、というところがある。要するに、あっという間に解読できるような一般的な暗号じゃないし、つまり、他にやってる人があまりいないってことであって……自分たちのやってることを俺が大好きなのって、そこなんだ。だから、いま君のあげた2曲は、かなりメロディックかもしれない。だけど——言われたように、俺たちも歳をとって円熟しつつある、そのファクターも混じっているとはいえ―それだけじゃなく、才能ってことじゃないの? 純粋に、こういうことをやれる才能。だから批判する連中がいても、こっちはただ笑い飛ばして、「失せろ(F**k Off!)」と無視するだけだよ(笑)。

日本では、映画『さらば青春の光』もザ・ジャムも人気があるし、英国以外では、日本ほどモッズ文化を好きな国はないんじゃないかとさえ思います。「モッズ」を名乗るあなたたちから見て、モッズ・カルチャーのよいところはなんだと思いますか?

ジェイソン:そうだな……正直言って、いいところはそんなにないよ。

アンドリュー:クハハハッ!

ジェイソン:(笑)あんま多くない。あれは副産物であり、時代遅れになってるし……要するに、とっくの昔に終わってしまった時代の副産物だと思う。それでもたまに、あの古いイメージから強いインスピレーションを受けることもある。俺からすればモッズの第一波、とくに60年代初期のモッズは、とても特別な存在に思えるし。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:あれは、どこかしらスペシャルなところがある。それに、そのオリジナルから分派していったモッズ文化のなかでも、ときに「これは好きだ」と思うものはあるし。とにかくまあ、「MODS(moderns/modernists=現代主義者)」ってのは素晴らしい単語だと思う。あれはある意味……俺たちのやってることのなかにしっかり溶け込んでる、自信たっぷりな横柄さとでもいうのかな、それを簡約した言葉に近いっていうか。俺たち自身は、横柄な人間でもなんでもないよ。ただ、SMがうまくいってるのは俺たちも承知だし、たしかな手応えがある。もちろんそのために努力する必要があるし、がんばらなくちゃいけないけど、俺たちにとってこれは確実なものなんだ。だからもしかしたらそこに、モッズっていう概念と結びつくところがあるのかも?

アンドリュー:ああ、その通りだね。俺の頭のなかでは……モッズってのは、薄汚くだらしないロッカーたちだの、そういうあれこれに対する反動として出てきたもの、ってイメージで。

ジェイソン:(笑)うんうん、そうだよな!

アンドリュー:つまり、とにかく他とは違う存在になろうとした人びとってことだし、音楽にしたって、どのバンドもいろいろだった。例えばザ・キンクスは、ザ・ジャムとは違うし……という感じで。

ジェイソン:だよな。

アンドリュー:それでも、モッズの音楽はエネルギーたっぷりだったし、いい音楽もたくさんあるよね。

2023年以来、世界はすっかり変わっちまったわけだろ? ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月24日)、あれがきっかけになったと思う。そして10月7日事件(ハマスによるイスラエル攻撃事件)があり……そこで起こったこと、そして現在も続いている事柄のすべて。そしてもちろん、トランプの二度目の権力掌握があった。クレイジーなゴミだらけ。だから俎上に載せる事柄はいくらでもあるわけ。(ジェイソン)

モッズの話題になったので、前々から訊きたかったことを質問させてください。若きジェイソンが、ポール・ウェラー/ザ・ジャムから影響を受けたという話をどこかで読みましたが、1990年代はどんな音楽を好きでいましたか? あれはとてもヴァラエティに富んだ時代で——

アンドリュー:だね。

90年代前半の英国のトレンドはハウス・ミュージックやジャングルなどダンス・ミュージックで、後半はブリットポップあるいはレディオヘッドの台頭などがあり、かなり混ぜこぜですが。

アンドリュー:うん、だから、何でも隔てなく入れ込むのにいい時代だったってこと。NWAからLFO、マッシヴ・アタックまで、試しに聴いてみるものがいくらでもあって、よりどりみどりだった。

ジェイソン:イエス!

アンドリュー:そんなわけで個人的に、アメリカのハード・ロックのレーベル発の音楽だろうが、イギリスのチャートに入ったヒット曲だろうが、俺はいちいち線引きしなかった。ってのも、俺の周りの誰もが音楽作品を購入してたし、みんなあらゆる類いの音楽にハマってたからさ。

ジェイソン:うんうん。

アンドリュー:あの頃、俺はリンカンシャーにあった〈ヴィエナズ〉って名前のナイトクラブによく行ったんだけど、あそこじゃどんな音楽もかかってて。

ジェイソン:ヴィエナズか! (懐かしそうに)ワ〜オ、あったよなぁ!

アンドリュー:例えば……そうねえ、ゲイ・バイカーズ・オン・アシッドにポップ・ウィル・イート・イットセルフ、そしてソニック・ユースもかかるって具合で、ほんと折衷的な、いろんなタイプの音楽でごった返してた。

ジェイソン:うん。俺もアンドリューと同様だ。だからこう……手を伸ばしてみたいものはいくらでもある、というか。新しい音楽についていくのにも、正直苦労してるくらいだし……それは俺が老けたせいかもしれないよな、一定の年齢に達するといろんなものから断絶していくものだし。とにかく、昔ほど音楽をグッと強くは感じない。若い頃は、人は実にたくさんの物事と繫がってるわけで、いわばこう、異なるスクリーンをいくつも相手にするだけの時間もたっぷりある、っていうか? だから絶えず、こんな具合(と、携帯を次々スクロールするジェスチャー)でいられるけど、歳を取るにつれて、それをやるのにも疲れて飽き飽きしてきちゃうんだ。

アンドリュー:それにいまって、何もかもを一ヶ所に集中させるのもすごく大変だよな。

ジェイソン:たしかに!

アンドリュー:俺たちが若かった頃は「トップ・オブ・ザ・ポップス」(*BBCが毎週放映したチャート番組)に「SNUB TV」(*イギリスでは1989〜91年にBBCが放映したオルタナ/インディ系音楽番組)、「The Tube」(*1982〜87年にかけて英チャンネル4が放映した音楽番組)や「The Word」(*1990〜95年にかけて放映されたチャンネル4の音楽ヴァラエティ番組)等々の歌番組があったし、その番組を観ようと誰もがみんな引き寄せられる、そういうサムシングが存在してた。

ジェイソン:うん。

アンドリュー:だけどいまって相当に細分化してるし、ほとんどもう、俺たちは数が多過ぎる、って状態に近い。それはもう様々な方向に向かって進んじゃってて——もはや誰も、物事に関してお互い認識が一致してないっていう。

ジェイソン:うん、ほんと、そうだよね。

なるほど。「新しい音楽についていくのに四苦八苦」ということで、ちょっと訊きにくいのですが(笑)、2025年に聴いた音楽で、あなたのベストは? 新しい音楽でも、古い音楽であなたが発見したものでも構いません、2025年のあなたたちにとってのベストな音楽体験(アルバム、ライヴetc)は?

アンドリュー:そうだなぁ……。

ジェイソン:俺は断然、カイアス(Kyuss/現QOTSAのジョシュ・ホミーが在籍したバンド)だな、正直言って。

坂本:なんと!

アンドリュー:へえ、そうなんだ。

ジェイソン:ストーナー・ロックをたくさん聴いててさ——。

アンドリュー:フフフッ!

ジェイソン:とくに、カイアスの『Welcome to Sky Valley』(1994)はよく聴いた。

坂本:それは意外ですね。

ジェイソン:あれは——(笑)とにかくトチ狂ってる! ありゃヤバいって! だからもう、「うわー、やられた!」って感じで、だから2025年は「ロック音楽」をがんがん聴いた。ロック全般を、山ほど。デイヴィッド・グレイなんかのアコースティック〜フォーク系の音楽も取り混ぜつつね。

坂本:(笑)えっ、デイヴィッド・グレイ?! マジですか……。

アンドリュー:(笑)

ジェイソン:それから、ディジョン(Dijon)も聴き始めたな。ちょいプリンスっぽいんだけど、彼の音楽はビート等の面でヒップホップにすごく影響されてて、うん、あれはかなりいいアルバムだ。

アンドリュー:なるほど。

ジェイソン:あれこれ寄り道してたから、のめり込むまでにかなり長くかかったけど、でも繰り返し聴き続けたね。でまあ、いまの俺は、「もうこんなにロックばっか聴くのはやめなきゃいかんな」って心境なんだ(笑)、そうじゃなくてもっと他の人たちの音楽にもトライしなくちゃ、とは思いつつ、でも……。

坂本:いやいや、カイアスはいい選択ですよ!

ジェイソン:うん、抜群だ。

アンドリュー:いいチョイスだよな、うん。

ジェイソン:それに彼らって、いわゆる純粋な「ロック」っぽくないだろ? いやまあ、たしかにロックなんだけど、でもそれだけじゃないっていう。

坂本:サイケデリック・ミュージックですらありますからね。

アンドリュー:うん。

ジェイソン:とにかくこう、すごい衝撃があるよな。

アンドリュー、あなたの2025年のベストは?

アンドリュー:ここしばらく、レア気味な音楽をよく聴いたよ。最近ハマってるのが、プーループ(Puuluup)ってバンドで。

ジェイソン:ほう?

アンドリュー:エストニア人の男性ふたり組で、伝統的なエストニア音楽をモダンに解釈してる、ってとこかな。KEXP(*オルタナティヴ・ロックを中心にするシアトルの非商業的ラジオ局)を通じて知っただけなんだけどね。でも、かなり興味深いバンドだから、チェックしてみてよ。

ジェイソン:それって、この間、俺にリンクを送ってくれた連中じゃない?

アンドリュー:あ、送ったっけ、俺?

ジェイソン:うん、たぶん。

アンドリュー:そうかー、あのパフォーマンス(*プーループが10月のUS ツアー中にKEXPで収録し、12月初旬に公開されたライヴ映像のことと思われる。YouTubeで視聴可能はほんの先週の話だけど……まあ、ちょっとしたことだし、俺もすぐ忘れちゃうんだけどね。で、そのまま次の何かに進んでいくっていう。

(了)

★スリーフォード・モッズの『The Demise of Planet X』は1月16日発売。

Ken Ishii - ele-king

 これはかつてない切り口のイベントかもしれない。CDというフォーマットがもつ74分の制限が、DJミックスという新たな表現方法を創造した──という観点から実施されるライヴDJセット・シリーズを、LIQUIDROOMのKATAがスタートする。その映えある第一回に登場することになったのが、ケン・イシイだ。2月27日(金)、プレイ時間は20:30~21:44のきっかり74分。新たな試みに注目しよう。

liquidroom presents

I’m Not Just a DJ

featuring Ken Ishii

2026.2.27 Fri.
KATA(LIQUIDROOM 2F)
Open:19:00 Warm up 20:00 Set Time 20:30-21:44
Adv¥4000 + 1Drink Order
UNDER 25 ¥2500 + 1Drink order
100 Limited Tickets

2025年1月16日(金) 20:00 on sale!!!
zaiko:https://liquidroom.zaiko.io/e/notjustdj2026
※ご入場時ドリンク代¥700頂戴します。

info:kata-gallery.net

DJの表現を凝縮した74分の体験を──第一弾は世界を魅了するテクノ・ゴッド、KEN ISHII

クラブ・カルチャーにおいて、DJはひと晩にわたって音楽でその場をコントロールする。それは単なる選曲からそれはダンス・ミュージックを通じた、文字通りのアートフォームとして結実していった。いつしかそれはシンガーやバンドの演奏とならぶ表現として、クラブを飛び出し、フェスへの出演、さらにはミックスCDという「作品」にもなった。

現在、クラブを離れスマートフォンやPCでDJミックスを楽しむにはMixcloudやSoundCloudで世界中の名演が、簡単に、無料で楽しむことはできる。しかし90年代から2000年代前半までミックスCDの文化がDJカルチャー、さらに音楽シーンにおいてひとつの意味を持っていた。特にオフィシャル・リリースされたCDには、さまざまな制約──なによりも74分というCDの収録時間の制約があった。しかし、そのなかでいかに選曲で物語を作り、自己の表現とするのか、それはアーティストの表現となった。ある意味でシンガーやバンドの「ライヴ」アルバムと同様、音楽作品となったのだ。それは国や時間を飛び越えて、現場以外の体験としてDJカルチャーを支えた。

もちろんひと晩をコントロールするDJもすばらしいが、ミックスCDのようにライヴのように楽しむDJプレイもまたその表現の豊かさを証明するものではないだろうか。それは時間帯も一緒で、深夜に限らす学校や会社帰りに DJ を浴びるという楽しみがあってもいいはずだ。本企画はまさに、そうしたひと晩のクラブ体験から飛び出し、DJという表現を楽しむそんな企画である。

その記念すべき第一弾として登場するのは、テクノゴッドとして世界中から敬愛されるレジェンド、Ken Ishii。本企画のために特別に組み上げた スペシャル・ライブDJセット(74分) を披露する。世界のクラブやフェスを彩り続ける Ken Ishii の真髄に触れられる、またとないチャンス。見逃し厳禁。

A 74-minute experience distilling the art of DJ expression —
The inaugural edition features the techno god who captivates the world: KEN ISHII

In club culture, a DJ controls the space through music over the course of an entire night. What began as mere track selection gradually evolved into a literal art form expressed through dance music. In time, this form of expression came to stand alongside singers and bands, breaking free from the club environment to appear at festivals, and ultimately taking shape as a “work” in the form of mix CDs.

Today, even away from the club, DJ mixes can be easily and freely enjoyed on smartphones or PCs via platforms such as Mixcloud and SoundCloud, where outstanding performances from around the world are readily available. However, from the 1990s through the early 2000s, mix CD culture held a distinct and meaningful place within DJ culture and the wider music scene. Officially released CDs, in particular, were bound by various constraints—most notably the 74-minute time limit of the CD format. Within these limitations, the challenge of how to construct a narrative through track selection and turn it into a personal expression became an essential part of the artist’s craft. In this sense, mix CDs became musical works in their own right, much like “live” albums by singers or bands. They supported DJ culture beyond the con.

東京・高円寺のライブハウス「JIROKICHI」50年の歩みを膨大なアーカイブ資料とともに一冊にまとめた記念書籍『次郎吉 to JIROKICHI -高円寺のライブハウスが歩んだ50年-』2月6日発売

コロナ禍を乗り越え、2025年に創業50周年を迎えた東京・高円寺のライブハウス「JIROKICHI」。本書は、1975年の開店から現在までの歩みを、膨大なアーカイブ資料とともに一冊にまとめた記念書籍です。

出演ミュージシャンの貴重なインタビュー、50年分のライブスケジュール、未公開写真、当時のチラシ等、ライブハウスの“リアルな日常”を克明に記録。ジャズ、ブルース、ソウルなど多様なジャンルが交差する「音楽の交差点」としてのJIROKICHIの姿と、その背景にある高円寺という街の変遷も浮かび上がります。

さらに、全50年間のライブスケジュール表紙ギャラリー、壁や柱に刻まれた出演者たちのサイン、周年ポスター&フラッグ、秘蔵写真・エピソードも多数掲載。ビジュアル面でも圧巻の内容です。

各ページからあふれるミュージシャン、スタッフ、観客の情熱は、ライブハウスが単に演奏したり、聴いたりするだけの場所ではないことを伝えてくれます。これからの音楽シーンで活躍したい人たちにも大きなヒントを与えてくれるはずです。

《商品情報》
次郎吉 to JIROKICHI
-高円寺のライブハウスが歩んだ50年-

ISBN:978-4-911484-03-6
価格:本体¥4,500+税
B5判/214頁
Live Music JIROKICHI 編

【Special Interviews】
坂田明/仙波清彦/木村充揮/リクオ/本田珠也/上田正樹/町田康/和泉聡志/吾妻光良/金子隆博/KenKen/鶴谷智生/森崎ベラ/矢代貴充(BLUE GROOVE代表)/三柴理/KOTEZ/森本レオ/the Tiger/RowHoo/山下達郎(45周年パンフレット再掲)

【対談】
永井ホトケ隆×山岸潤史 対談

【その他】
イラストレーター・いしかわともひさ、GEORGE MOMOKO、伝陽一郎のインタビューや、久原大河による描き下ろしJIROKICHI内観図、高円寺カルチャーマップ(和田博巳[はちみつぱい]インタビュー付き)

★出版記念イベント★
『次郎吉 to JIROKICHI -高円寺のライブハウスが歩んだ50年-』出版記念ミニエキシビション&ライブ
2026年2月1日(日)JIROKICHI
出演:三好3吉功郎g バカボン鈴木b 鶴谷智生dr 仙波清彦perc 永井ホトケ隆vo,g吾妻光良vo,g 高瀬順key 大西真b 松本照夫dr
MC:イシカワヒロナリ 金井貴弥(JIROKICHI)
Open 18:30 Start 19:30
予約 ¥3500 当日 ¥4000 +1drink order

★JIROKICHI 50周年 特別展★
Live Music JIROKICHI 50th Anniversary
Special Exhibition
『次郎吉 to JIROKICHI ― 高円寺のライブハウスが歩んだ50年』
2025年12月2日(火)~2026年1月18日(日)
会場:座・高円寺 B2 Galleryアソビバ
10:00-22:00
入場無料

1975年に誕生した高円寺のライブハウス JIROKICHI の歩みを、秘蔵写真や映像、50年分のスケジュールなど貴重な資料とともにたどる特別展。音楽と街、人々の記憶が交差する、50年の物語。

http://jirokichi.net/

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◇未来屋書店/アシーネ *

* 発売日以降にリンク先を追加予定。

DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTS - ele-king

 DADDY G(MASSIVE ATTACK) & DON LETTSが揃って来日ツアー!
 UKサブカルチャーの最重要人物Don Lettsがメンバーとして名を連ね、「反骨と創造の精神」を軸に活動する英日コレクティヴ、REBEL DREAD  HARDWAREが各地豪華共演者と共に2年振りのジャパンツアー開催。

英国から、すばらしい2トップがやって来る

——野田努

 かしこまって言うことでもないが、いま、我々は救いようのない混乱のなかにいる。雷鳴轟く闇夜に放り出され、立っていることさえ困難な船に乗っている気分だ。何をよすがとすればいい? いまも音楽は灯台の役割を担うことができるのだろうか。危険な場所を指し示し、時代における道標(みちしるべ)たり得るだろうか。
 およそ半世紀前、「パンキー・レゲエ・パーティ」が英国で暮らす白人の若者たちの耳と精神を拡張したことは周知の通りだ。そのきっかけを作ったのがロンドンのドン・レッツというDJであったことも、歴史の教科書を引くまでもなく明らかだ。パンクとレゲエの合流によって促された精神的な連帯は、人種差別や人びとを抑圧するシステムに立ち向かった。そうして、かつてない文化の扉が開いた。ベースが響き、言葉が舞う。ブリストルではダディ・GというDJがその後に続いた。「ワイルド・バンチ」が誕生し、それはやがてダブの重低音を纏った漆黒のグループ、マッシヴ・アタックへと展開する。
 ドン・レッツとダディ・Gがやって来る。2026年は、ちょうどパンク誕生50周年にあたるわけだが、いまなおドン・レッツが第一線で活躍していることは驚異である。50年前、パンクにレゲエを教えたこのDJは、自ら開けた扉から広がるフロア上で、そのプレイリストを更新し続けている。ヒップホップからジャングル、ダブ、インディ・ロック、ダンスホール……腹の底に響く低周波の音……。しかし重要なのはジャンルではない。その音楽が人びとにとってどんな意味があるか、だ。必要とされている夢か、あるいは特効薬か。リズムという底流のなかに出口を見つけるかもしれない。ドン・レッツとダディ・Gは、いまも音楽が前向きなパワーを持っていることを熟知している、その筋の達人たちである。同士たちよ、フロアで会おう。

REBEL DREAD HARDWARE
DISCIPLES OF BASS TOUR '26

DJ
DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)

SOUND OPERATER
SOUND OPERATER
内田直之(※TOKYO ONLY)

チケット発売中 :
https://eplus.jp/rebeldreadhardware/

【東京公演】
日時:4月10日(金) 24:00~5:00
会場:LIQUIDROOM https://www.liquidroom.net/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
内田直之(SOUND OPERATE)

more

【京都公演】
日時:4月11日(土) 21:00~4:00
会場:CLUB METRO https://www.metro.ne.jp/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
Michiharu Shimoda (SILENT POETS)
HATCHUCK (REBEL DREAD HARDWARE)

【博多公演】
日時:4月15日(水) 20:00~2:00
会場:KIETH FLACK https://kiethflack.net/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
+MORE

【名古屋公演】
日時:4月17日(金) 20:00~
会場:Live & Lounge Vio https://liveloungevio.com/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
HAYASSEN / OBRIGARRD

【大阪公演】
日時:4月18日(土) 18:00~23:00
会場:SOCORE FACTORY https://socorefactory.com/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
[LIVE]:おとぼけビ~バ~(Otoboke Beaver)
+MORE

【広島公演】
日時:4月19日(日) 17:00~21:00
会場:広島クラブクアトロ https://www.club-quattro.com/hiroshima/
出演者:DADDY G (MASSIVE ATTACK)
DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
高木完 & K.U.D.O (MAJOR FORCE PRODUCTIONS)

【松山公演】(※DON LETTS ONLY)
日時:4月25日(土) 21:00~3:00
会場:CLUB BIBLOS https://x.gd/gg4BQ
出演者:DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
クボタタケシ / HATCHUCK (REBEL DREAD HARDWARE)

【前橋公演】(※DON LETTS ONLY)
日時:4月26日(日) 15:00~22:00
会場:SPORT BAR UNIT TWO https://unit-two.owst.jp/
出演者:DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)
KING OF OPUS

主催:REBEL DREAD HARDWARE
https://www.rebeldreadhardware.com/

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DADDY G (MASSIVE ATTACK)

 DADDY Gは、MASSIVE ATTACKの中心的メンバーであり、WILD BUNCH SOUND SYSTEMの創始者としても知られる。
 SMITH&MIGHTY、TRICKY、PORTISHEAD等に代表されるDUB、REGGAE、FUNK、DISCO、HIP HOPを取り込んだUK ブリストル・サウンドの先駆者としてその名を世に刻んでいます。流れの早いシーンにおいてグローバルに活躍するDADDY G。そのスピリットは、あらゆるジャンルのアーティスト達に多大な影響を与えてきた。MASSIVE ATTACKとして活躍する以前は、DJとしてその名を轟かせ、当時10歳という若さでミックステープを作成、頭角を現し出し、その卓越したセンスで1980年にはブリストルで一番の若手DJとしての地位を確立していた。彼がかける斬新なDISCO、PUNK FUNK、SOUL、DUB、REGGAEには多くのファンが虜になり、そのファンの熱狂ぶりからも、彼のDJセットがどれだけ他のアーティストと一線を期していたことかがうかがう事ができる。
 その選曲やミックスのスキルのみならず、マイクも自由に操るDADDY G。多くのDJが存在する中で、彼がクリエイトするミュージック・ワールドには、唯一無二のとても特別な暖かみと存在感を感じる事が出来る。
 MASSIVE ATTACKとして2026年に新作発表・大規模なツアーが控えており、新たなフェーズを迎える。

DON LETTS (REBEL DREAD HARDWARE)

 ロンドン・ブリクストン生まれ。 ヴィヴィアン・ウエストウッド「SEX」と並び、ロンドンカ ルチャーの中心的存在だったショップ 「アクメ・アトラクションズ」を運営したドン・レッツは、そのアティチュードから、ファッション、そしてショップの壁を重低音で振動させるダブレゲエで注目を集めた。彼が初めてDJを務めたクラブ「ROXY」は、100日間の限定営業であったが、パンクスにレゲエの魅力を伝えたことで伝説となった。その経験から真のDIY精神を学んだ彼は映像作家としても活動。リアルタイムで当時の映像を撮り、 '79年に初のパンク・ドキュメンタリー映画『PUNK ROCK MOVIE』を制作。また、THE CLASH全てのMVを監督したことでも知られている。 ‘80年代半ばにはTHE CLASH を脱退したMICK JONESと「BIG AUDIO DYNAMITE」を結成。‘03年 THE CLASHのドキュメンタリー『WESTWAY TO THE WORLD』でグラミー賞受賞。'05年にパンクの核心にせまった『PUNK:ATTITUDE』を制作。‘21年 世界中で愛されるコンピシリーズ『Late Night Tales』にセレクターとして参加。独自のダブアウトされたセレクションで賞賛を集めた。自身のソロプロジェクトである「REBEL DREAD」名義初のアルバム「Outta Sync」を‘23年リリース。アルバムでは故・TerryHallやHollie Cookなどゲストボーカルが参加。
 BBC RADIO 6 Musicにて毎週土曜日に自身の番組である「Culture Clash Radio」を持つ。STUSSYオリジナル・トライブとしての顔も持ち、カルチャー・アイコンとして現在も世界中のクリエイターから熱いオファーを受ける。

Kotoko Tanaka - ele-king

 そのブルージィな歌声はわたしたちの日常にいつもとはちょっと違うみずみずしい景色を運びこんでくる。東京を拠点に活動するシンガー、Kotoko Tanakaがバンド・セットでツアーに臨むことになった。ギターにRiki Hidaka(betcover!!)、ドラムスに白根賢一(GREAT3TESTSET)を迎えた編成で、3月1日から29日にかけ、福岡、広島、京都、東京を巡回。都市ごとにスペシャル・ゲストも予定されているとのこと(広島公演の主催はSTEREO RECORDS)。詳細は下記より。

Julianna Barwick & Mary Lattimore - ele-king

 アメリカを拠点に活動するプロデューサーのジュリアナ・バーウィックとハープ奏者、メアリー・ラティモアによる共作アルバム『Tragic Magic』が1月16日にリリース。あわせて日本盤の発売が2月20日に〈PLANCHA〉より。かねてより親交の深いふたりによる初のコラボレーション・アルバムとなった本作は、喪失、祈り、記憶、再生といったテーマを内包したアンビエント作品とのこと。

Artist: Julianna Barwick & Mary Lattimore
Title: Tragic Magic
Label: PLANCHA / InFiné
Format: CD / Digital
Release Date: 2026.02.20 (CD) / 2026.01.16 (Digital)
Pre-Order:

Tracklist:

1. Perpetual Adoration
2. The Four Sleeping Princesses
3. Temple Of The Winds
4. Haze With No Haze
5. Rachel’s Song
6. Stardust
7. Melted Moon


声とハープが天空で溶け合うような、静かで深い「魔法」の記録。

Julianna BarwickとMary Lattimore… 現代アンビエント/エクスペリメンタル・ミュージックを代表する二人のアーティストによる共作アルバム『Tragic Magic』は、それぞれが長年培ってきた表現を自然な形で重ね合わせた、極めて親密で完成度の高い作品である。

重ねられる声のレイヤーによって霊的とも言える空間を描いてきたJulianna Barwickと、ハープという伝統的な楽器を用いながら独自の感性で現代的な音世界を切り拓いてきたMary Lattimore。
本作では、どちらかが前面に出るのではなく、互いの音が静かに呼応しながら、一つの風景を形作っていく。

Juliannaのヴォーカルは言葉を超えた響きとして漂い、Maryのハープは旋律というよりも光や影のように空間に差し込まれる。
その音楽は、劇的な展開や強い主張を避けながらも、確かな感情の揺らぎと深い余韻を残す。
アルバムタイトルにある「Tragic(悲劇的)」と「Magic(魔法)」という相反する言葉は、本作の持つ二面性を象徴している。

楽曲は、静謐でありながら決して無機質ではない。
呼吸のようなリズム、音の残響、間(ま)の使い方が丁寧に設計されており、リスナーは音楽を「聴く」というよりも、その中に身を置く感覚を味わうことになる。
それは、瞑想的でありながら感傷に流れすぎない、非常にバランスの取れた表現だ。

それぞれがソロ作品で築いてきた評価やスタイルを持ちながら、『Tragic Magic』では「共に演奏すること」そのものが核となっている。
即興性と慎重さ、親密さと距離感。その絶妙な関係性が、本作に独特の緊張感と温度を与えている。
静かな音楽を愛するリスナーはもちろん、アンビエントやニューエイジ、現代音楽の文脈に親しんできた人々にとっても、長く寄り添う一枚となるだろう。

『Tragic Magic』は、過剰な説明を拒みながらも、聴く者それぞれの内側に異なる情景を呼び起こす、稀有なコラボレーション作品である。

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377