「Low」と一致するもの

Gina Birch - ele-king

 ポスト・パンクの草分け、ザ・レインコーツのジーナ・バーチが来年の2月、ソロ・デビュー・アルバムをリリースすることを発表した。アルバムのタイトルは『I Play My Bass Loud』、レーベルはジャック・ホワイトの〈Third Man Records〉。「長年にわたる自分の音楽的、政治的、芸術的人生を抽出したもので、音と言葉の、楽しさと怒りのストーリーテリングによる個人的な日記になる」と彼女は声明を出している。
 なお、サーストン・ムーアをフィーチャーしたリードトラックが公開されている。

interview with Gilles Peterson & Bluey (STR4TA) - ele-king

 〈ブラウンズウッド・レコーディング〉を主宰するDJのジャイルス・ピーターソン、インコグニートのリーダーとして活躍するブルーイことジャン・ポール・マウニックのふたりが手を組み、周囲のミージシャンを巻き込んで結成したプロジェクトのSTR4TA(ストラータ)。1970年代後半から1980年代初頭に勃興した英国のファンク・バンドやジャズ・ファンク・バンド、通称ブリット・ファンクと呼ばれるムーヴメントにインスパイアされたのがストラータで、実際にブリット・ファンクの時代から活躍するブルーイや彼と交流のあるミュージシャンたち、さらにアシッド・ジャズのころから一時代を築いてきたミュージシャンも参加し、2021年にファースト・アルバムの『アスペクツ』を発表した。アルバム・リリースに際してジャイルスへインタヴューをおこない、ストラータ誕生の話などを聞いたのだが、タイラー・ザ・クリエイターのブリット・アワードにおける「ブリット・ファンクから影響を受けた」というスピーチがひとつのきっかけになり、改めてブリット・ファンクを世に知らしめ、いまの時代にリアルタイムで表現しようというのが結成に理由だったそうだ。

 『アスペクツ』ではブリット・ファンクを下敷きに、そこにディスコ/ブギー、アシッド・ジャズ、クラブ・ジャズといったジャイルスが通過してきたエッセンスも加えつつ、あえて現代的な補正や加工を加えたりすることなく、サウンドが生まれたままの粗削りさをそのまま提示し、そうしたところがカッティング・エッジな音楽性も作り出していた。インコグニートのような洗練された音楽とは真逆をいくスタイルで、そこがストラータの魅力のひとつでもあったわけだが、そんな彼らが一年半ぶりとなるニュー・アルバム『ストラータスフィア』を完成させた。セッション・ミュージシャンが主となり、いわゆるゲスト・ミュージシャンの参加がなかった『アスペクツ』だが、今回はオマー、ロブ・ギャラガー、ヴァレリー・エティエンヌなど、かつてのアシッド・ジャズの時代からジャイルス主宰の〈トーキン・ラウド〉で活躍してきたヴェテラン・ミュージシャン、そしてエマ・ジーン・サックレイ、シオ・クローカー、アヌーシュカといった、ジャイルスやブルーイよりずっと下の若い世代のミュージシャンなどが幅広く参加する。そんな若い世代のアーティストとのコラボにより、『アスペクツ』からさらに進化した世界を見せてくれるのが『ストラータスフィア』である。今回のインタヴューにはジャイルスとブルーイの両名が揃い、そんな『ストラータスフィア』の世界についてじっくり話をしてもらった。

日本は70年代に誕生したジャズやフュージョン、ジャズ・ファンクなど、特別なシーンがあるから、それを記念するようなプロジェクトを僕たちでやろうと考えていた。今後やるかもしれないし、いまでもやりたいと思っているよ。(ジャイルス)

ミュージシャンというのは不思議なもので、特別な何かができあがったとしても、その特別さを忘れてしまって、次なる特別なものを求めてしまいがちだ。(ブルーイ)

通訳:こんにちは! 今日はお時間を取っていただき、ありがとうございます。通訳のエミです。ジャイルスさんとは以前、日本でお会いしたことがありますが、ブルーイさんは初めてです。今日はエレキングという雑誌のインタヴューで質問原稿をジャーナリストの方からお預かりしているので、それを読んで進めていく流れです。よろしくお願いします!

ブルーイ(以下B):こちらこそどうぞよろしく、エミちゃん¬♡

昨年ファースト・アルバム『アスペクツ』を発表したストラータですが、このたびセカンド・アルバムの『ストラータスフィア』がリリースされます。ファースト・アルバムの後にリミックスEPもリリースされ、それからさほどインターバルを置かずにセカンド・アルバムのリリースとなるわけですが、ファースト・アルバムに対する世間やリスナーからの反響はいかがでしたか? いい手応えや反響があったからこそ、こうしてセカンド・アルバムへ繋がっていったのかと思いますが。

ジャイルス・ピーターソン(以下GP):このような流れでブルーイと一緒に制作ができたことに正直驚いているんだ。僕とブルーイは以前から一緒に作品を作りたいと思っていたんだけど、これだと思うプロジェクトになかなか出会わなかった。プレス・リリースを読んでもらったらわかると思うけれど、僕たちは何年も前からずっと一緒に仕事をしてきた仲なんだ。そしていつだったか、日本でアルバムを作ろうという話をしていた時期があった。その話は実現に至らなかったんだけど、日本は70年代に誕生したジャズやフュージョン、ジャズ・ファンクなど、特別なシーンがあるから、それを記念するようなプロジェクトを僕たちでやろうと考えていた。今後やるかもしれないし、いまでもやりたいと思っているよ。とにかく、(プロジェクトの成り立ちとして)僕たちはロンドンにいて、お互いに近いところに住んでいるという状況だった。そしてふたりとも、イギリスのグラミー賞に値するブリット・アワードを見ていたんだけど、タイラー・ザ・クリエイターが特別功労賞(ライフタイム・アーカイヴメント・アワード)を受賞したときに、彼はスピーチでブリット・ファンクが大好きだということを述べたんだ。そこで僕はブルーイに電話して、「ブリット・ファンクのレコードを作ろう! タイラーのようなアーティストも好きだと言っているし、音楽界という広い領域でブリット・ファンクが評価されているんだよ」と彼に伝えた。これが僕たちの機動力となり、プロジェクトをスタートするきっかけになった。ロックダウン中という奇妙な時期に誕生したプロジェクトだったけど、素晴らしいプロジェクトになった。
 ファースト・アルバムの反応にはものすごく驚いたよ! だからすぐに次のアルバムを作りたくなった(笑)。でも今回のアルバムでは、後で詳しく話すけれど、ブリット・ファンクの域を超えて、それがどのように進化していったのかというのを表現したかった。だからアシッド・ジャズやストリート・ソウル(*1980年後半から1990年代前半のUKのクラブ・シーンや海賊ラジオなどで用いられた用語。ヒップホップやエレクトロの影響下にある80年代前半頃のソウルを指し、ドラムマシーンによるエレクトリックなビートやダブを取り入れたベースライン、ロー・ビットなアナログ・シンセの音色が特徴)を経て、シオ・クローカーやエマ・ジーン・サックレイといった最近のアメリカやイギリスの新たなジャズ・ムーヴメントを代表するアーティストたちまで包括されたものになっているんだ。

B:ファースト・アルバムは驚きだったね。私にとっては旧友を訪ねるような感覚だったから。同じような会話がなされると思っていたから。しかもレトロな感じで。つまり過去のことについて話すのかと思っていたんだ。でもこのプロジェクトでは、その古い言語を使って新しい音楽を作ったんだ。ミュージシャンというのは不思議なもので、特別な何か(この場合はブリット・ファンク)ができあがったとしても、その特別さを忘れてしまって、次なる特別なものを求めてしまいがちだ。それが成長の一部なんだがね。そして成熟とともに洗練さも増してくる。あの音楽(ブリット・ファンク)は当時の無垢な感じがあって、洗練さは欠けていた。ジャイルスはそれを見抜いていて、それを再現するのが上手だった。ジャイルスは私に「いったん俯瞰して、このテイクを使おうじゃないか」と言った。私はサウンドを洗練させようとしていたけれど、ジャイルスはあえてそれをしたがらなかった。彼は洗練度を取り除こうとしたんだよ。そのおかげで私は物事を考えすぎないで楽しむことができた。昔は時間がなかったり、資金がなかったりしたけれど、若さというエネルギーがあった。それらの要素が融合して音楽ができていた。今回は私と一緒に作品を共同プロデュースしてくれる人がいたということが重要だったと思う。そうでなければインゴグニートのアルバムがもう1枚できてしまっていたかもしれないからね(笑)。ジャイルスはインコグニートとこのプロジェクトの見分けがはっきりついていたから、その点が素晴らしかった。

ファーストのリリース後、ジャイルスが主催する「ウィ・アウト・ヒア」ほか、スペインの「プリマヴェーラ・サウンド」といったフェスティヴァルに参加し、「ジャズ・カフェ」などでライヴ・ステージも披露していますね。ライヴ・アクトとしてのストラータはどんな方向性を持つのですか? 以前のインタヴューではブルーイたちの生演奏を軸に、そこへジャイルスがDJミックスやエフェクトを加えていくということを伺ってましたが。

B:アルバムの音を荒削りにしたのと同じように、生演奏も荒削りな感じにしようとした。即興演奏をしたり、サウンド・エフェクトを入れたり……もっとジャズっぽい感じにしたんだ。私たちのバンドはライヴではより一層ジャズ色が強まる。

GP:フェスやライヴに出演するのは最高だったよ。あれ以来たくさんの出演依頼が来た。「プリマヴェーラ」は観客が僕たちのことをあまり知らないという、新しい層の人たちだったから面白かった。テストとして良かったと思うし、エキサイティングだった。「プリマヴェーラ」はナイトライフという文脈で行われているイベントだから、僕たちのバンドもクラブに近い状況でライヴをやったし、DJの存在も重要だった。そういう新しい領域でライヴをやり、熱狂的な反響を得られたことは、僕たちやバンドのみんなにとっても新鮮な体験だったと思う。「ジャズ・カフェ」でのライヴは、「プリマヴェーラ」よりもずっと安心感があった。「ジャズ・カフェ」は昔からある会場だから。日本(の東京)で言うと…「ブルーノート」みたいなところかな。あと、もうひとつのところ……なんだっけ?

B:「ブルーノート」はむしろ「ロニー・スコッツ」(訳注:ロンドンにある老舗のジャズ/ブルースのライヴ・スポット)に近いと思うな。ジャズ・カフェは……あれとあれの間だよ。えーと……

GP:「ビルボード」?

B:いや、「ブルーノート」と昔の(東京・新宿にあった)「リキッド・ルーム」だ。

GP:ああ、そうかもしれないね。ロンドンでは会場のチケットが即時で完売する。そしてチケットを買う人たちは昔からファンだった人たち、つまり年齢層が少し高めなんだよ。だからライヴも少し違ったものになる。最近は自分の音楽をさまざまな文脈に置き換えて、さまざまな空間に当てはめていくということをしていかないといけない。今回のストラータというプロジェクトに関しては、ストラータを従来の文脈、すなわち人びとが聞いたことのある会場や想定できる観客から取り出して、真逆の文脈(「プリマヴェーラ」など)に当てはめたりすることに楽しみを感じている。ストラータはそういう表現方法にとても適しているんだ。

B:ストラータの来日という目的だけのために(かつて東京・西麻布にあったクラブの)「イエロー」を再開させないとだな。

通訳:それは最高ですね!

GP:本当に最高だね。「イエロー」だったら完璧だ!

素晴らしいレコード・コレクションがあることはひとつの資質だが、レコードを2、3枚選んで、「これを参考にしてほしい。でもこれと同じ音楽は作りたくない。新しい音楽を作りたいんだ」と私に伝えられるということは、また別の資質なんだよ。(ブルーイ)

僕が15か16歳のころ、いろいろなレコード会社に手紙を書いていたんだ。「自分はDJで、大勢の前で音楽をかけている」って嘘をついてね(笑)。そしたらアンディー・ソイカはプロモ用の12インチを僕に送ってくれたんだ。(ジャイルス)

『ストラータスフィア』の制作に入るにあたり、次はこうしようとか何か話し合いましたか? 基本的にはファースト・アルバムの延長線上にあるもので、1970年代後半から1980年代前半のブリット・ファンクを下敷きにしたプロジェクトということに変化はないと思いますが。

B:ジャイルスのブリット・ファンクに関する知識と、私がそういう音楽を作ってきたという経歴は、この音楽を再び作るにあたり最高のコンビネーションだった。ファースト・アルバムで作ったのは1970年代後期の音楽だったんだが、『ストラータスフィア』は1980年代に踏み込んでいる。最初のトラックをいくつか作る前に、私はジャイルスに「80年代前半から中旬までの音楽を聴いてくれ」と言われた。ドラムマシーンやプログラミングを使い、そこにライヴの要素を加えるような音楽だよ。私は当時(80年代前半~半ば)その道を行かなかったから、今回はその旅路をすることができて興味深かった。当時は多くのバンドがその道に進んでいたけれど、私はそっちには行かないと決めていた。80年代の話だよ。私はインコグニートの活動でファンクをやっていて、その炎をまだ掲げていた。プログラミングとライヴの音をミックスする方向には行きたくなかった。ジャイルスは私にレコードを持ってきてくれた。自分の活動で忙しかった当時の私が体験しなかった時代の音楽を聴かせようとしてくれたんだ。私はジャズ・ファンクをやっていて、その流れから離れたくないと思い、80年代はレゲエの方向性に進み、マキシー・プリーストとアルバムを5枚作った。その後はアメリカに渡り、マーカス・ミラーと仕事をした。マーカスと一緒に音楽をやっていた時期は、クラブで80年代の音楽を聴いて踊ったりしていたよ。TR-808などの機材を使った80年代初期の音楽だ。ジャイルスはそういうレコードを私のために選んでくれた。私の家にレコードを持ってきてくれたんだが、ジャイルスが自宅に戻る前に、私はすでに新しいトラックをひとつ作っていたよ。ジャイルスも絶対気に入ってくれると思った。私たちのように音楽に対する認識が通じ合っていると、細かいことを話し合わなくても、完璧な曲が作れるんだ。ジャイルスにアイデアがあって、俺にアイデアがあったら、完璧にこなすことができるのさ。

GP:とても自然な流れでできたよ。ブルーイはご存じの通り、素晴らしいエンジニアで、素晴らしいミュージシャンだ。だから、非常にいい基盤があるし、スタジオでもリラックスして作業できる。僕がアイデアや考えを持ち込んでも、バンドがすぐに対応してくれるんだ。時間のプレッシャーもなく、数週間くらい時間をかけて、ブルーイは僕からの情報をゆっくりと消化して、音楽へと変換する。それを後で聴かせてくれて、僕が「イエス」とか「ノー」とか「素晴らしい!」とかコメントする。

B:私がジャイルスにミュージシャンを紹介するときもある。

GP:参加してもらいたいミュージシャンがロンドンに滞在中だと聞けば、その人たちをスタジオに呼ぼうという話になる。「エマ・ジーンにはこのトラックに参加してもらおう」とか「オマーも入れたらいいんじゃないか」とか「ピアノ演奏者のピート・ハインズにも再び参加してもらおう」など。ファースト・アルバムの要素を引き継ぐ形で今回のプロジェクトも進めた。とてもイージーで素敵なプロセスだったよ。僕とブルーイは昔からの仲だから、お互いのことも理解し合っている。僕の役割はA&R(訳注:レコード会社における職務のひとつ。アーティスト・アンド・レパートリーの略。アーティストの発掘・契約・育成とそのアーティストに合った楽曲の発掘・契約・制作を担当する)に近い感じだったね。でもA&R以外のこともやった。A&Rとプロダクションの間を担当する役割の名前があるとしたら、そういう役職だったね。

B:プロダクションA&Rだよな。

GP:まあ、そうだよね。でもA&Rは何でも屋みたいなところもあるから……紅茶を入れるのが仕事のA&Rだっている(笑)。

B:A&Rのきめ細かさというのを私は昔から評価してきた。インコグニートの時代の当初、私はジャイルスにインタヴューされたことがある。そのときからジャイルスの音楽に対する理解というか認識は素晴らしいものだと思ったよ。ジャイルスは素敵なレコード・コレクションの持ち主だけど、同時に音楽を介して私たちとコミュニケーションが取れるんだ。素晴らしいレコード・コレクションがあることはひとつの資質だが、レコードを2、3枚選んで、「これを参考にしてほしい。でもこれと同じ音楽は作りたくない。新しい音楽を作りたいんだ」と私に伝えられるということは、また別の資質なんだよ。ジャイルスは音楽に対する理解や見解が明確なんだ。わかりやすく伝えることができる。普通だったら、「このレコードのベースラインを使えばいいのか?」とか、「このドラムを使いたいのか?」とか、「これと同じキーボードのサウンドを入れたいのか?」などと考えてしまいがちだ。でも私にはわかる。ジャイルスが言いたいのは、「このレコードの素晴らしい要素を取り入れたい。その素晴らしい要素が何かというのは自身で聴きとってほしい」ということなんだ。曲の全体的な要素やフィーリングを感じてほしいということなんだよ。

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80年代初期のレコードが再び人気を博している。ストリート・ソウルと言われる音楽をいまかけている若い世代の人たちがいるということなんだ。だからいま、リイシュー盤が出ているんだよ。(ジャイルス)

計画なんて全くなかった。ファーストでもなかったし、今回もなかった。これが私たちのコミュニティであり、私たちの世界なんだ。周りの環境なんだ。近所に住んでいる仲間もいるし、仕事仲間もいる。みんな私たちの知り合いであり、私たちの世界の人間なんだ。(ブルーイ)

『ストラータスフィア』というタイトルは、ブリット・ファンクの代表的アーティストであるアトモスフィアからインスパイアされているのでしょうか? ストラータに参加するピーター・ハインズもアトモスフィアのメンバーでしたし、ブルーイも近い位置にいてライト・オブ・ザ・ワールドなどで活動していました。もちろんジャイルスにとっても、かつてアトモスフィアは大好きなバンドでしたし、ストラータとアトモスフィアはいろいろ関係が深いのかなと。

GP:そのとおりだよ。『ストラータスフィア』の綴り(STR4TASFEAR)はアトモスフィア(ATMOSFEAR)と同じで最後が「FEAR」となっているだろう? それがひとつのヒントだよ(笑)。

B:当時はライバル関係にあったバンドもいて、セントラル・ラインやハイ・テンションなどはインコグニートのライバルだった。だがアトモスフィアは違って、私たちにインスピレーションを与えてくれる存在だった。そのおかげで、アトモスフィアに対してはいまでも親愛なる感情を抱き続けている。

GP:ブリット・ファンクについて語るとき、忘れてはならないのは最近亡くなってしまったアンディー・ソイカだ。彼がDJとしての僕に初めてタダでレコードを送ってくれたんだ。僕が15か16歳のころ、いろいろなレコード会社に手紙を書いていたんだ。「自分はDJで、大勢の前で音楽をかけている」って嘘をついてね(笑)。そしたら(レーベルもやっていた)アンディーはプロモ用の12インチを僕に送ってくれたんだ。レヴェル42の “サンドストーム” とパワー・ラインの “ダブル・ジャーニー” という曲が入った両A面のシングルで、とても良いレコードだった。レーベルは〈エリート・レコーズ〉。僕にとっては嬉しくも、懐かしい思い出がある。それに、彼とはサッカーをやる機会もあったんだ。アンディーはミュージシャンたちが作るアマチュア・サッカー・リーグの審判を務めていたから、そのときに彼と初めて会った。僕は当時、自分のレーベル〈トーキン・ラウド〉のチームでサッカーをしていたんだ。とにかくアンディー・ソイカのレガシーは素晴らしいもので、彼はアトモスフィアのバンド・リーダーだっただけでなく、〈エリート・レコーズ〉を運営していたから、レヴェル42とレコード契約をして、彼らのファースト・アルバムのプロデューサーも担当していたと思う。それから、エキサイティングなストリート・ソウル系のレコードも数多く出していた。実はちょうど昨日、ストリート・ソウルのリイシュー盤が届いたところなんだ。ビヴァリー・スキートの7インチだよ。

B:彼女はインコグニートでもヴォーカルを務めてくれた。

GP:このような80年代初期のレコードが再び人気を博している。ストリート・ソウルと言われる音楽をいまかけている若い世代の人たちがいるということなんだ。だからいま、リイシュー盤が出ているんだよ。そういう形でアンディー・ソイカの輝かしいレガシーが受け継がれている。アトモスフィアは、フリーズと同様に普通という枠からはみ出ていたという印象があったね。アトモスフィアは比較的エレクトロニックで、実験的で、ダークで、それはそれで面白かった。その一方でフリーズはニュー・ウェイヴ色が強かった。アトモスフィアとフリーズは、従来のブリット・ファンクとは少し違う感じがあって、そういうところが僕には魅力だった。もちろん従来のブリット・ファンクも大好きだけどね。

B:アトモスフィアはピーター・ハインズがメンバーだったし、フリーズは私も結成に関わったバンドだよ。初期のメンバーだったんだ。そして今は、ピーターも私もストラータにいる。

GP:ハインズが一緒にステージで演奏してくれたら最高なんだけどな。彼はやってくれそうかい?

B:いや……

GP:スタジオでの演奏を好むほうか。

B:そうだな。ステージだと疲れるかもな。

ブルーイを軸に、ピーター・ハインズ、マット・クーパー、スキ・オークンフル、フランセスコ・メンドリア、リチャード・ブル、フランシス・ハイルトンなど、ファースト・アルバムの面々がそのまま参加していますが、今回はゲスト・ミュージシャンが多くフィーチャーされている点が特徴です。まず、オマー、ロブ・ギャラガー、ヴァレリー・エティエンヌと、アシッド・ジャズ時代から長い付き合いの友人たちが参加していますが、彼らにはどのように声をかけたのですか?

GP:最初から計画されたものではなかったよ。

B:計画なんて全くなかった。ファーストでもなかったし、今回もなかった。これが私たちのコミュニティであり、私たちの世界なんだ。周りの環境なんだ。近所に住んでいる仲間もいるし、仕事仲間もいる。みんな私たちの知り合いであり、私たちの世界の人間なんだ。だからさまざまなミュージシャンが自然に思いつく。このプロジェクトの話をしているときだけでなく、日常生活でも彼らの名前が出てくるからね。たとえばクラブに遊びに行ったときや、フェンダー・ローズのプレゼンテーションを「ロニー・スコッツ」でやったときでも、私が例として名前を挙げたミュージシャンが実際に5、6人くらいクラウドのなかにいるとか……そんなことがしょっちゅうあって、彼らと現場で話したりする。それがロンドンの素晴らしいところなんだ。このレコードは、さまざまなミュージシャンたちのハブであるロンドンで作られたものなんだ。ロンドンはいまでも才能ある人たちが世界各地から集まる坩堝なんだよ。シオ・クローカーが今回のアルバムに参加することになったのは、シオがロンドンでギグをやったときに観に行ったことがきっかけだった。ジャイルスにそのライヴに誘われるまで、そんな会場がロンドンにあることさえ知らなかったよ。あのころはコロナの真っ最中だったけど、私たちはライヴに行ってパーティーを楽しんだのさ。

GP:今回はアヌーシュカも参加していて、彼らは当時のフリーズを彷彿とさせるから面白い。僕は彼らのアルバムを〈ブラウンズウッド〉からリリースしたことがあるし、彼らの最近のアルバムは〈トゥルー・ソウツ〉から出ている。そのアルバムにお気に入りの曲があって、僕はその曲をラジオでかけていたから、曲のリミックスをしてくれないかとアヌーシュカに頼まれたんだ。そこでブルーイと僕でリミックスを作った。良いリミックスができたから、ストラータのアルバム用のヴァージョンをもうひとつ作ろうということになった。そこでアヌーシュカの曲のストラータによるリミックスではなく、ストラータがアヌーシュカをフィーチャリングする曲を作ったんだ。違うヴァージョンなんだけど、アヌーシュカの曲を使っている。それも自然な流れで思いついたことだけど、今回のアルバムに入れたらいいと思った。アヌーシュカはブライトンを拠点にしているミュージシャンなんだけど、とてもクールで、感じのいい人たちなんだ。
 ヴァレリー・エティエンヌが参加してくれたのも素敵だった。彼女はブルーイのシトラス・サンというユニットでヴォーカルを務めていたし、いまではジャミロクワイのシンガーのひとりとして活躍しているなど、素晴らしいキャリアの持ち主だ。彼女も……

B:すぐそこに住んでるんだよ。

GP:そうなんだ、ご近所さんなんだよ。そして、ロブ・ギャラガーと結婚している。ロブはストラータのアルバムのアートワークもやっているんだ。“ファインド・ユア・ヘヴンズ” という曲では、彼は歌詞も担当している。非常に素晴らしい詩人であり作詞家だからね。ロブは作詞家としても幅広く活躍していて、エヂ・モッタなどにも歌詞を提供している。

B:スキ・オークンフルにも歌詞を提供していたよ。

GP:そうだったね。それからエマ・ジーンが参加してくれたことも良かった。彼女はアーティストとしても特異な存在だからね。彼女がどのように貢献してくれるのかわからなかったけど、僕たちが用意した音源にヴォーカルだけでなく、トランペットなどを加えたりして素晴らしい曲を作り上げてくれた。

B:私たちの音楽に花とキャンドルと紅茶を加えてくれたのさ(笑)。

GP:とても素敵だったよね。オマーの参加も良かった。周りの人は「オマーには何を歌ってもらうんだい?」と聞いてきたけど、オマーにはヴォーカルじゃなくて、シンセを弾いてもらいたかった。

通訳:ちょうど次の質問がオマーについてです。

“ホワイ・マスト・ユー・フライ” でのオマーはてっきりリード・ヴォーカルをとると思ったのですが、そうではなくシンセサイザーを演奏していて驚きました。どうしてこの起用になったのですか?

B:この曲を作っているときに、何か要素を加えたいと思っていて、私たちで「ファン・ファン・ファーン♪」みたいな変な音を口から出していたんだ(笑)。それでお互いを見て、「なんでこんなことやってるんだ!? オマーにやってもらおう!」と言って、変な音を出すことが得意な彼に連絡を取ったんだ。

GP:オマーの全体的な音楽性は賞賛に値するし、〈トーキン・ラウド〉からリリースした作品も最高だ。その後はアメリカのシーンでも活躍して、エリカ・バドゥやコモンなどと共演したりして、素晴らしいキャリアを築いている。アメリカでも大人気だ。スティーヴィー・ワンダーとも共演したよね。しかもオマーはものすごく優れたプロデューサーでもあるんだ。

B:ミュージシャンとしても卓越している。腕の良いミュージシャンという枠を超えている。私が知っているなかで最も才能のあるミュージシャンのひとりだと思っているくらいだ。作曲も譜面に起こしてできるし、ストリングス向けの作曲もできるし、ブラスのアレンジもできる。彼のアレンジ能力はまるでチャールス・ステップニーのようなんだ。彼は真の逸材だよ。

GP:いまはイギリスのテレビ番組にも出演しているよ。「イースト・エンダーズ」という有名なテレビ番組に出ているんだ。

通訳:それは知りませんでした!

GP:イギリスでいちばん有名なソープ・オペラだよ。僕はまだ観ていないんだけど、出ているらしい。ブルーイは見たかい?

B:ああ、知ってるよ。オマーが殺されたかどうかまでは知らないが。ソープ・オペラは酷い結末じゃないと意味がないからな(笑)。

一方で “トゥ・ビー・アズ・ワン” ではあなたがヴォーカルを披露していますね。これも意外でしたが、どんなアイデアから歌おうと思ったのですか?

GP:僕は強制的に歌わされたんだ(笑)。

B:バック・ヴォーカルに、「作業中の男」の荒っぽい声を入れたくてね(笑)。

GP:とても楽しい経験だったよ。歌が下手な人でも、まあまあ上手いように聴こえさせることのできるとても良いツールがエンジニアのためにあるなんて、いままで知らなかったよ! だから僕の声も悪くなかった。でもライヴではできない。絶対に失敗する(笑)! でもレコードを聴くと、自分の声だと認識できるよ。

通訳:私もあなたの声だとわかりましたよ!

GP:そうかい、なら良かった。エンジニアの人たちはいい仕事をしてくれたよ。あれが最初で最後の機会だね。いや、じつは以前にも一度ある。これはジャーナリストの人がディグったら面白がるかもしれない。僕の別名のひとつにアンジェロ・へクティックというのがあるんだが、その名義で “フォー・オール・ザ・ガールズ・アイヴ・ラヴド” という名の曲を7インチで出している。(ロブ・ギャラガーが運営する)〈レッド・エジプシャン・レコーズ〉からのリリースとして入手可能だよ。最近ではかなり値が上がってるみたいだけどね(笑)。

通訳:それは貴重な情報ですね。ありがとうございます!

オマーらヴェテランの一方で、エマ・ジーン・サックレイ、シオ・クローカー、アヌーシュカといった若いアーティストも参加しています。特にエマとシオはジャズの新しい世代を牽引するアーティストとして注目を集めているのですが、彼らをゲストに迎えた意図はどんなものですか?

GP:僕はシオのことをけっこう前から知っていて、僕が日本に行くときは上海にも寄って、上海でDJをやっていたことがあったんだけど、そのときに彼と会ったんだ。シオは上海に何年か住んでいたんだよ。不思議な出会いだった。彼は僕がDJしているクラブに来て、一緒にジャムしていたんだ。毎回とても楽しいセッションだったよ。その後、 彼はディー・ディー・ブリッジウォーターと仕事をすることになって、彼女は彼のメンターになった。しかも彼の曾祖父はめちゃくちゃ有名なジャズ・トランペット演奏者なんだよ。名前が……なんだっけなあ。ルイ・アームストロングとかそれクラスの人だよ。そうだ、ドック・チーサムだ! だからシオはすごい血統から来ている。スタジオでの彼を見ても一目瞭然だよ。ワンテイクで済ませたからね。

B:しかも頭も相当キレる。ロサンゼルスのライヴでは、その場でラップもしはじめて……シオというアーティストにはものすごい尊敬の念を抱いているんだ。

GP:シオはJ・コールなどの大御所ラッパーたちとも一緒に仕事をしているよね。エマ・ジーン・サックレイも興味深い人物だ。彼女はこないだ日本でライヴをしていたよね。彼女のアルバムを買おうと、日本人のお客さんが長い列を成している画像を見た。あんな光景は初めてだよ! 彼女は唯一無二の存在で、彼女のようなアーティストはほかにいない。ジャズ・シーンに属してもいない。属してはいるんだけど、属してもいない。独自の道を歩んで、自分でなんでもやってしまう。仕事としてクラシックの室内管弦楽団のストリングスの演奏も引き受けられるし、クラシックの作曲もできる。ポップ・ソングを作ることもできるし、本当にさまざまな領域で才能を発揮できる人だ。それが彼女をとても刺激的なアーティストにしていると思う。

B:自由奔放という印象があるね。それに彼女のキャラクターも大好きなんだ。ずっと一緒にいたいと思うような人なんだよ。ジャズ・アワードに出席したときも、彼女の隣に座ってずっとおしゃべりしたいと思った。

偉大なジャズ・ミュージシャンはルールに従わなかった奴らばかりだ。ファラオ・サンダースが登場したときも、彼はルールに従わなかった。他のミュージシャンが出しているサウンドと同じようなサウンドを出したくなかったんだよ。(ブルーイ)

“ファインド・ユア・ヘヴンズ” はディスコ・ブギー調の曲で、ストラータとしては、多少は新しい領域だと思われるかもしれない。でもそのシーンも当時は人気で、ディスコ・ブギーとブリット・ファンクは密接に関連していたんだ。(ジャイルス)


アヌーシュカをフィーチャーした “(ブリング・オン・ザ)バッド・ウェザー” やエマ・ジーン・サックレイをフィーチャーした “レイジー・デイズ” など、今回のアルバムはヴォーカル面にも重点を置いたメロディアスな楽曲が目立ちます。ある意味でインコグニートにも通じる楽曲だと思いますが、ファーストからセカンドに向かう中で歌について何か意識した点はありますか?

B:俺はまさにそういう理由(インコグニート風になってしまう懸念)から、ヴォーカル面に関してはプロデューサーとして一切関与していないんだよ。ヴォーカルに関しては、ヴォーカルを担当した人自身にプロデュースを任せたんだ。そのほうが、私がプロデューサーやアレンジャーとして、自分のアイデアやヴォーカルやメロディや歌詞の方向性を持ち込んで作り上げるヴォーカルよりも、彼ら自身のヴォーカルが作れると思ったから。彼ら自身にメロディを作曲して歌を歌ってもらい、彼らの考えやサウンドを表現してもらうようにした。だから今回のレコードは特別なものに仕上がっていると思う。

GP:たとえば “ファインド・ユア・ヘヴンズ” はディスコ・ブギー調の曲で、ストラータとしては、多少は新しい領域だと思われるかもしれない。でもそのシーンも当時は人気で、ディスコ・ブギーとブリット・ファンクは密接に関連していたんだ。シェリル・リンなどのレコードは当時のDJがよくかけていたからね。

B:この曲を初めて聴いたときには少し戸惑ったよ。ロブとヴァレリーがまとめていたものだった。ロブが作曲してヴァレリーが歌っていたからね。ジャイルスとスタジオに入るとき、じつは私にはすでに自分でイメージしていたヴォーカルの方向性やメロディの方向性があった。だが、そういう案は彼らに送ったり聴かせたりしないで、彼らのやりたいようにやらせることにした。だから彼らのヴァージョンを聴いたときには、想定外のものができていて、少し驚いた。でも曲を聴いていたら、曲の終盤には「これは特別な作品ができたな」と確信に変わっていたよ。

GP:エマ・ジーンの “レイジー・デイズ” に関しては、デモがすごくエキサイティングで僕は大好きだった。あれはマット・クーパーが主に作曲したものなんだよ。

B:ああ、彼がバック・ヴォーカルの大部分を作曲した。

GP:とても良いデモができたから、これをエマ・ジーンに渡そうということになった。そして彼女がさらに曲を展開して全く違う、素晴らしい曲に仕上げてくれた。あの曲は面白いフェイズを経て完成したよね。

B:そうだったな。

“ヴァージル” はヴォーカル・ヴァージョンとありますが、これはもともとインストのヴァージョンがあったのですか? なお、この曲に見られるようにホーン・セクションの人数が増えて、ファーストよりさらに分厚く、ゴージャスなサウンドになった印象があります。

GP:そうかもしれない、インストのヴァージョンがあるなあ! それは近日リリース予定。まだはっきりとは言えないけど、ボーナス・トラックとしてあるんだよ(笑)。

今後もサード・アルバムなど継続的にストラータは活動していくのでしょうか? 今後の展望や計画などを教えてください。

B:じつを言うと、私はジャイルスとスタジオに行くのが恐ろしいんだ。スタジオに行ったらサード・アルバムの制作がはじまってしまうからな(笑)。

GP:僕はジャパニーズ・ヴァージョンのアルバムを作りたいな!

B:もし私にロサンゼルスで2、3曲作らせてくれるならやってもいいぜ。ロサンゼルスで一緒に仕事をしたいミュージシャンを何人か見つけたんだ。

GP:それはまた別のプロジェクトだよ。

B:本当にすごいミュージシャンたちなんだ。君も絶対に惚れ込む。シオと一緒に演奏しているミュージシャンたちだよ。

GP:それもやろうじゃないか。でも、ジャパニーズ・アルバムも作るべきだよ。

B:ジャパニーズ・アルバムか、よし。

GP:僕は絶対にジャパニーズ・アルバムを作りたい。

通訳:それは素晴らしい企画ですね。日本のファンは大喜びしますよ!

GP:日本にはレジェンドがまだ何人か健在だからね。若手もいるし。

B:でもジャイルスは焼酎を飲みすぎるから、そこだけ気をつけてもらわないと(笑)。

GP:お行儀良くしますよ(笑)。

通訳:その企画が実現したら最高ですね! 今日はおふたりともお時間をありがとうございました。

B:年末にインコグニートで来日するから、そのときに会えるのを楽しみにしているよ。

通訳:そうなんですね。では日本でお待ちしています。ありがとうございました!

Photay with Carlos Niño - ele-king

 これまで〈Mexican Summer〉などからリリースを重ねてきたニューヨークのプロデューサー、フォテー。9歳の若さでエイフェックス・ツインの音楽と出会いながら、その後ギニアへの旅を経てアフリカン・パーカッションとフィールド・レコーディングに目覚めたという、興味深い経歴を持つプロデューサーだが、その彼がLAのキーパーソン、カルロス・ニーニョをフィーチャーした2作、『An Offering』と『More Offering』が特別仕様のCDとしてリリースされることになった。環境音に電子音、サックスやハープなどが交錯する美しいサウンドスケープに注目したい。

Photay with Carlos Niño
『An Offering & More Offering Special Edition』

2022.12.14(水) 2CD Release

天才ビートメイカーとも評されるフォテーと、現代スピリチュアル伝道師カルロス・ニーニョによる共演作『An Offering』と『More Offering』が、2枚組のスペシャル・エディションとしてCDリリース!! 水に反射する様々な色彩や風景から、レイヤーや奥行きを感じさせる視覚的な体験をサウンドスケープとして聴かせる。豪華ミュージシャンも多数参加した、強力なコラボレーション作品の完成!!

西アフリカのギニアへの旅を経て、サンプリングとフィールド・レコーディングの可能性を拡げる実験へと乗り出した早熟のプロデューサー、フォテーが、カルロス・ニーニョやミカエラ・デイヴィスらを招いて作ったサウンドスケープを、どう表現してよいかまだ言葉が見つからないでいる。だが、そのことがとても心地よく思えるほど、何度でも繰り返して流しておきたい音楽がここにある。(原 雅明 ringsプロデューサー)

参加ミュージシャン:Photay - Synth、Mikaela Davis - Harp、Randal Fisher - Tenor Saxophone、Mia Doi Todd - Voice、Carlos Niño - Percussion、Natt Ranson - Trombone、Aaron Shaw - Tenor Saxophone、Diego Gaeta - Keyboards、Nate Mercereau - Guitar Synth、Iasos - Voice

【リリース情報】
アーティスト名:Photay with Carlos Nino(フォテー・ウィズ・カルロス・ニーニョ)
アルバム名:An Offering & More Offering Special Edition(アン・オフアーリング・アンド・モア・オフアーリング・スペシャル・エディション)
リリース日:2022年12月14日(水)
フォーマット:2CD(一部店舗にて、Tシャツ付き限定バンドルあり)
レーベル:rings / International Anthem
解説:原 雅明
品番:RINC97
価格:3,000円+税

【トラックリスト】
《 An Offering 》

1. PRELUDE
2. CURRENT
3. CHANGE
4. EXIST
5. PUPIL
6. MOSAIC
7. HONOR
8. ORBIT
9. EXISTENCE (feat.Iasos)

《 More Offering 》

1. ECHOLOCATION (featuring Randal Fisher)
2. PUPIL (Photay's Tributary Mix)
3. EXISTENCE (Photay's Infinite Mix)
4. EXISTENCE (Photay's Infinite Mix)(Club Diego Version)
5. FLOATING TRIO PART 3 (Photay Carlos Niño and Randal Fisher)
6. QUARTET IMPROVISATION 053021 (Carlos Niño & Friends)
7. FEELING NOW
8. NOW FEELING
9. PHASES (Solstice Mix)

販売リンク:https://photay.lnk.to/Ob68Z6Kx
オフィシャルURL:https://bit.ly/3WD9KSx

Mimi Parker - ele-king

 Low(ロウ)のドラマー兼ヴォーカリストであるミミ・パーカーが55歳で亡くなったことを昨日の6日、海外のメディアが報じている。2020年より患った子宮癌が悪化しという。
 1994年にデビューしたLowは、最初はスローコアと括られ、数少ない熱心なファンに支えられながら、しかし90年代を通じて、アメリカにおけるもっとも重要なオルタナティヴなロック・バンドへと発展した(最初の3枚はじつに素晴らしい)。途中から〈Kranky〉を拠点として、素晴らしい作品を何枚も発表している。とくに近年の『Double Negative』と最新作『Hey What』は傑出していた。 
 ミネソタ州ベミジー郊外の小学校で出会い、高校時代から交際していたという、パートナーでありバンドメイトのアラン・スパーホークは次のようにコメントしている。「友よ、宇宙を言語化し、短いメッセージにするのは難しいけれど、彼女は昨夜、あなたを含む家族と愛に囲まれて亡くなりました。彼女の名前を身近に、そして神聖に感じてください。この瞬間をあなたを必要とする誰かと分かち合ってください。愛はたしかに、もっとも大切なものです」

 サウス・ロンドンを拠点とするギタリストであり、現在はビート・メイカー/プロデューサーとしても世界中で高い人気を誇る edbl。デビュー・シングルを発表した2019~2021年の作品をまとめた日本独自の編集盤『サウス・ロンドン・サウンズ』と、続く『ブロックウェル・ミックステープ』でここ日本でもブレイク。今年9月には、SANABAGUN. への加入も大きな話題を呼んだ注目のギタリスト、Kazuki Isogai との共作『The edbl × Kazuki Sessions』を。そして10月には、イギリスの新進シティ・ソウル・バンド、Yakul のヴォーカリストであるジェームズ・バークリーをフィーチャーした『edbl & Friend James Berkeley』をリリースと絶好調、勢いが止まらない。そこで今回、アルバム1枚を通しての初の共作者となった Kazuki Isogai と、彼とは同い歳で、お互いに注目する間柄だという Suchmos のギタリスト、TAIKING のふたりに、edbl の魅力について、そして現在の音楽シーンについて、ギタリストの視点から語ってもらった。

1曲目の “Worldwide” と、最後の “Left To Say”。ギターうめぇと思いながら聴いてました。
(TAIKING)

edbl がつくるビートの良さ、おもしろさはどういったところですか?

Kazuki Isogai:サウンドがすごくカラッとしているというか。昔のヒップホップはもう少し重みがあった。edbl のサウンドは、まさにサウス・ロンドンっぽい、カラッとしていて、いい意味でボトム(低音域)が少ない感じ。でも、もの足りなさはなくて、その乾いた軽さがが心地いい。

TAIKING:同じ感想ですね。Kazuki くんとやってる『The edbl × Kazuki Sessions』、すごくいいね。特に1曲目の “Worldwide” と、最後の “Left To Say”。ギターうめぇと思いながら聴いてました。このカラッとした感じは、どうやって出してるんだろう? 自分の作品でも狙ってやってみるんだけど、全然カラッとならないんだよね。

Kazuki Isogai:edbl と話してると、ヒップホップとかR&Bがすごく好きで、やっぱりヒップホップがベースになっているビートではあるんだけど。サンプルパック(注:ドラムスやベースなどの音素材集)を使っても、イコライザーのかけ方がウマいんだと思う。僕がつくったトラックを渡して、戻ってくるときには、全部 edbl のサウンドになってるから。

TAIKING:特にカラッとした音、「デッドなサウンド」はアメリカ発の作品にも感じるけど、同じようにつくれない。難しい。

Kazuki Isogai:でもリヴァーブ(残響音を加え空間的な広がり感を出すエフェクト)はかかってるんだよ。けっこうウェットなんだよね。だからやっぱりサンプルの使い方がウマいんだと思う。まあ生音のレコーディングの話をすると、海外は全然違う。スタジオの天井の高さとか。

edbl がもともとはギタリストであることは、ビート・メイクにどういう影響を与えていると思いますか?

Kazuki Isogai:僕も最近ビートつくるんですけど、「ギタリストが感じるビートの気持ちよさ」っていうものが、共通してあると思っていて。edbl も、頭の中で描いてるビートのイメージがあって、それをそのまま表現してるだけだと思うんです。やっぱり、彼がいるサウス・ロンドンのシーンからの影響が大きいんじゃないかな。

TAIKING:シーンからの影響、それがやっぱり大きいだろうね。

Kazuki Isogai:僕と TAIKING くんも、違うタイプのギタリストだけど、同じようなシーンにいるから、似たような感性になるし。edbl はサウス・ロンドンに住んでて、周りにはトム・ミッシュとかいるわけだから、自然とそのシーンのスタイルが身についてくる。だから僕らがマネしようと思っても、そこにいないから、その場の空気感を知らないから、なかなか難しい。ギタリストって、ロサンゼルスに行ったら、やっぱり少しLAっぽいスタイルになるもんね。

共演するきっかけになった “Nostalgia” って曲があるんですけど。edbl が弾くギターが、ちょっと思いつかないフレーズというか。どうやって弾いてるんだろうって。(Kazuki Isogai)

いま、名前が出たトム・ミッシュが、いまの時代のギター・ヒーローと思えるのですが。

TAIKING:彼はなんか絶妙ですよね。ビート・メイカーでもあるけど、曲がちゃんと「立って」いる。そこが日本人にも聞きやすいのかなと。普通にメロディが素晴らしくて、やっぱり edbl と少し似てる。メロウなんだけどカラッとしてる。ふたりに共通して思うのは、ドラムの、ビートのサウンドの良さなんだよね。

Kazuki Isogai:そうだよね。ビートが良かったり、ドラムの音がいいと、それだけで曲が成り立つ気がしてて。ドラムの音が良くないと、あちこち音を重ねたくなったりとか、ドラムではじまる曲にできないとかあるから。

先ほど出た、ギタリストならではのビート感の話ですけど、他の楽器奏者と話が合わないという場面もありますか?

TAIKING:好き嫌いの話だから、しょうがないという感じではあるけど。僕が気持ちいいのは、カッティングだったり、ペンタトニック(・スケール。ギターの基本となる音階)を弾いているときが多いんですけど、カッティングのときに、スネア・ドラムで締めて欲しいというのはある。

Kazuki Isogai:ポケット(気持ちいいリズムのタイミング)にハマるドラムはいいよね。僕は、めちゃくちゃリズムにストイックだった時期があって、PCで音の波形を見ながら、合わせてギターを弾くというのををやってた。1弦なのか、6弦まで当たった瞬間をジャストとするのか、そんなところまで考えながら。ソウライヴのギタリスト、エリック・クラズノーがライヴでユル~く弾いている曲がかっこよくて、それを波形で分析したりもしてね。そうやって研究してきていまは、リズムが「円」であるとしたら、自分も一緒になって回るんじゃなくて、引いたところからその円を見る感じでリズムを捉えてる。そうすると前ノリでも、後ノリでもいけるっていう。

TAIKING:その感じわかる。リズムに入り込んじゃったらダメで。客感的に捉えてないと、ウマく弾けないところがあるよね。

edbl のビート、リズムの捉え方もおふたりに近いから、彼の音楽を気持ちよく感じるんでしょうね。

Kazuki Isogai:それこそ SANABAGUN. のドラマー、一平に近いかな。彼もヒップホップ・ベースのドラマーなんで、edbl に似ている。やっぱりヒップホップをルーツに持っている人のビートが好きなのかなって。

TAIKING:最近はでも、(ロックの基本となる)8ビートを求められることも増えてきてね。

近年は16ビートの流行りが続いていますが、8ビートを弾く方がいま、難しくなっているということはありますか?

TAIKING:それは、いちギタリストとしての視点なのか、音楽シーンの一員としての視点なのかによって、話し方が変わるなと思ってるんです。ちなみに僕は最近、8ビート派になってきてて。16ビートからはちょっと離れようかなと。

Kazuki Isogai:8ビートってめちゃくちゃ難しいよね。ロックの人がやる8ビートと、僕のような違う畑の人がやる8ビートは全然違う。

TAIKING:それが最近、畑の違うギタリストが交わるようになってきてて、そこがまたおもしろいなって思ってる。

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メロウなんだけどカラッとしてる。(edblとトム・ミッシュの)ふたりに共通して思うのは、ドラムの、ビートのサウンドの良さなんだよね。(TAIKING)

edbl は、ギタリストとしてはどういったタイプですか? リヴァプールの音楽学校でギターを習ったそうですが。

Kazuki Isogai:edbl と共演するきっかけになった “Nostalgia” って曲があるんですけど。edbl が弾くギターが、ちょっと思いつかないフレーズというか。どうやって弾いてるんだろうって。

TAIKING:うんうん、このギター、どうなってんのって感じ。

Kazuki Isogai:日本の音楽学校で「これ、いいよ」と教えられるものと、海外で教えられるものは全然違う。ビートルズなんかをずっと、子どもの頃から聴くわけだから、それは違うよなって。edbl のビートには、UKロックのカラッとした感じもあって。サウンドの方向性といったところで、何かUKロックとも通ずるものはあるかな。

TAIKING:共通点を感じるところ、あるね。

ロックに代わってヒップホップが世界的には音楽シーンの中心となって久しいですが、ヒップホップ以前と以降でギターという楽器はどう変わったと思いますか?

Kazuki Isogai:僕は、15歳まで音楽は聴くけど、楽器はやっていなくて。RIP SLYME とか SOUL'd OUT といったラップが流行っていて聴いていた。でもギターが好きだな、レッド・ツェッペリン好きだなっていう思いもあって。自分のなかでヒップポップと、好きな音楽が結びつかなかったんですよね。

TAIKING:それ、すごくわかる!

Kazuki Isogai:でもその後、音楽の専門学校に行って、ジャズ・ブルースを学んだんですけど、ビッグ・バンドについて学ぶ際の教材として講師の人が聴かせてくれたのがソウライヴだった。ギターのエリック・クラズノーってロックっぽくて、入っていきやすくて。それで彼の、ずっとループに乗っているような感じのギターの存在、かっこよさを味わった。自分がやってたギターと、ヒップホップがちょっとそこで結びついた。

TAIKING:自分も、ギターという楽器と、どんどん新しく出てくるダンス・ミュージック、ヒップホップが結びつかなかったって話、めちゃくちゃわかる。僕はもうバンドやってたけど、高校の友だちとかはみんなDJをやりはじめて。ライヴ・ハウスじゃなくて、「クラブ行こうぜ」だった。同じ音楽なんだけど、ヒップホップには入り込めないなって、境目みたいなものがありましたね。それで僕の場合は、Kazuki くんみたいにリンクするところがないまま来ちゃってるんで。もちろんヒップホップも好きだから聴いてはいたけど。まあ自分のバンドが大きかったかな。

Kazuki Isogai:本当、Suchmos が出てきた瞬間に、日本の音楽シーンはすごく変わったからね。それまでもシーンはあって、僕もアンダーグラウンドでそういうシーンにいたからわかるけど、ただメジャーでやる人たちがいなかった。

Suchmos の曲を聴いていて、TAIKING さんはワンループの上で弾くのが得意だと思っていたので、お話聞いて意外でした。

TAIKING:得意ということはないですね。どっちかというと、コード進行変われ、早く変われ(笑)と思って弾いてますから。いまソロでやってるのはバッキバキにコード変えるし、めちゃくちゃ転調するし。

Kazuki Isogai:TAIKING くんは、つねに TAIKING くんだからいいんだと思う。Suchmos で弾くときも変わらないから、そこがいいんだと思うし、ギタリストはそうあるべきとも思いますね。

ヒップホップ以降は、音色とテンポ、BPMがより重要になっていると思うんです。edbl の音楽はテンポ感も絶妙なのかなと思うのですが。

Kazuki Isogai:速い曲でもBPM100とかですね。僕もロー・ファイ系のビートをつくったりするんですけど、最近はちょっと流行りのテンポが速くなった。ラッパーとやるときは、彼らが得意なBPMを求められることが多くて、93とか。ただビートの気持ちよさって、遅くてもドラムがタイトだったらノレるし、速くてもドラムがルーズだと速く感じなかったり。曲全体のテンションといったものも大きく関わってるんじゃないかな。だからそのときの体調とか雰囲気とかで、つくるものが変わるというか。つくる側からすると、そう思うんですけど。

TAIKING:個人的には、ユルいテンポはちょっと飽きたところがある。それで速くしようと、自分の曲ではまずはBPMからいじってみるんだけど、いい感じのノリを出すのは難しい。8ビートで 、BPM130とか125でいい感じの曲をつくりたいと思ったりするんだけどね。ウーター・ヘメルやベニー・シングスとか、フワフワ系の8ビートを得意にしてるオランダの人たちがいるんだけど、彼らの音楽とかいいなと思ったり。あと、ああいう曲つくりたいなと思うんだけど全然できないのが、ドゥービー・ブラザーズの “What A Fool Believes”。歌メロがすごいなって。それで言うと、日本ではやっぱり藤井風くんがすごい。いまライヴで一緒にやってるんだけど。

Kazuki Isogai:彼はバーでピアノ弾いたりもしていたんでしょ?

TAIKING:家族がね、ジャズ喫茶を経営していて。ピアノと、サックスもバキバキで。それでステージでは、お客さんからのリクエストを、「いま、YouTube で調べてやります」とか言って、すぐに弾いて歌ったりとかね。風くんを見ていると、ギターと鍵盤の違いを感じますね。僕はギターを弾くとき、フレットや弦を目で見て、形で見るタイプで。でも鍵盤は「見て弾く」というのがないから、自由度も高いし、ギターのように「小指が届かないからあの音は出せない」みたいなことがない。だからハーモニーのセンスみたいなものは違うはずだなって。

“What A Fool Believes” も、マイケル・マクドナルドが鍵盤でつくるから生まれるメロディだと、よく言われますね。

TAIKING:そうだと思います。転調の仕方も含めて。そういった、転調のセンスとか、風くんもすごく似てる。

Kazuki Isogai:ギタリストって、音楽が好きでギターはじめたんじゃなくて、ギターがかっこいいから手にしたっていう人も多くて。音感もなければコードもわからない状態ではじめて。鍵盤の人は子どものころからやっている方もいて、音楽の捉え方がそもそも違うんだよね。

僕が意識しているのは、楽曲の顔にギターを持ってきたいっていうこと。僕の弾くリフが楽曲の顔になって欲しいなって、そこは意識してプレイしてる。(Kazuki Isogai)

先日、サブスクなどで「ギター・ソロがはじまると曲を代えられる」という話題が盛り上がっていました。ただ僕は、エリック・クラプトンやエディ・ヴァン・ヘイレンといった往年のギター・ヒーローの時代とは違う形で、近年はむしろギターのサウンドが求められていると感じていて。edbl の音楽が人気なのも、ギターの用い方がウマいことが要因のひとつだと思うのですが、そのあたり、どのように捉えていますか。

TAIKING:ギター・ソロ云々の話はあまり気にしてないですね。ギター・ソロだけじゃなくて、間奏が敬遠されているのかなって。

Kazuki Isogai:そうそう。単純に曲の聴き方が変わってきてるだけで。そのアーティストが好きというリスナーじゃないと、間奏に来たら次の曲にとばされるよねって。

TAIKING:ギターという言葉がトレンドに乗ったのはいいことだと思います。ありがたいですけどね。

Kazuki Isogai:まあ本当に、昔と比べて、ギターは楽曲の顔になるものではなくなっているよね。だから僕が意識しているのは、楽曲の顔にギターを持ってきたいっていうこと。僕の弾くリフが楽曲の顔になって欲しいなって、そこは意識してプレイしてる。

わかりやすいギター・ソロが主流じゃないだけで、ギターのトーン(音色など)の違いを楽しめるような人は昔より増えていそうですよね。ジョン・メイヤーがあれだけ人気があるっていうのは、リスナーのギターの聴き方も進化しているんじゃないかと思うんですけど。

TAIKING:ジョン・メイヤーについて言うと、独自の、自分のトーンをしっかり持っているっていうのと、結局ほとんどがペンタトニックで。世界3大ギタリストとかいろいろいうけど、みんなペンタトニックだなって。だから、ペンタトニック・スケールでしっかり「自分の歌」が歌えるかっていうこと。それで、しっかり自分のトーンと、自分のキャラクターをわかりやすく出せていることが大事なのかなと思います。

カッティング派は不利ですね。

TAIKING:だからコリー・ウォン(ヴルフペックのメンバーでもある、新時代のカッティング・ギター・ヒーロー)が3大ギタリストに入ってきたら嬉しいよね。その枠、あるんだって。

Kazuki Isogai:コリー・ウォンはやっぱり衝撃だったと思うよ。ナイル・ロジャーズに代表される、シャキッとしたカッティングの究極版みたいで。

TAIKING:キャラクターもいいよね。ちゃんとセルフ・プロデュースできていて、見せ方もウマい。

Kazuki Isogai:ジョン・メイヤーの話に戻ると、彼は自分で歌うから、ギターの配置とかも絶妙なんですよ。TAIKING くんにも感じるところなんだけど。曲をトータルで、歌の隙間とか考えてギターを鳴らしているから。

TAIKING:クラプトンとか、Char さんもそうかな。

Kazuki Isogai:そうだと思う。だから僕、最近は歌詞をちゃんと理解して、ギター弾くようにしてる。それによって自分の弾くものが、けっこう変わってくるからね。

edbl も実は歌うんですよね。なるほど、自ら歌うギタリストの特徴についても、よくわかりました。今日はおふたり、ありがとうございました。

Björk - ele-king

 ビョークの傑作と誉れ高い『ホモジェニック』のなかのもっとも重要な曲、“Joga”については、これまで何度か書いてきた。当時の彼女はプライヴェートで想像を絶する苦難(ストーカーによる殺害未遂と自殺映像)があったため、ロンドンを離れスペインで録音し、故郷アイスランドを思い作ったその曲において、ぼくがとくに心奪われたのは同曲のMVである。海沿いの丘陵地帯や草原、地殻がずれてマグマが見える(*アイスランドは火山の国)広漠とした風景のなかにひとり立ちつくしているビョークは、映像の最後で、クローネンバーグよろしく胸の中央に開いた黒い穴をがっと広げ、しかしその穴のなかに人工物ではなくあらたにまた自然(島)を映し出す。言うなれば、自然と一体化したその様は、その後のビョークのコンセプトにおける重要な道筋となった。
 “Joga”は、ビョークの音楽性においてもひとつの出発点にもなっている。子どものころにクラシックを学んだ経験があるという彼女は、この時点でエレクトロニカとクラシックとの融合を試みているし、のちの名曲“All is Full of Love”にも繋がっている。近年で言えば、フルートと鳥のさえずりの前作『ユートピア』が、テーマ的にも音楽的にもまさにその傾向を強調した作品だった。アイスランドで制作された本作『フォソーラ』もまたしかり。

 先行で公開された“Atopos”の、グロテスク(*)なMVを見れば話が早い。きのこに触発されたビョークの10枚目のスタジオ録音盤は、クラリネットの重奏とバリ島のカバー・モードゥス・オペランディによるレゲトン風のビートではじまる。立体的で、位相に凝ったミキシングで、音響的にもユニークだ。“Ovule”では、トロンボーンのそよ風がベース・ミュージックと一体化する。それからビョークが自らの声をサンプリングし、変調させ、プログラミングした“Mycelia”があって、アイスランドの合唱団による“Sorrowful Soil(哀しみの土)”が続く。菌類から名付けられたという前者は、手法的にはジュリアナ・バーウィックを思い出すかもしれないが、曲の構成は変則的で、反復はせず菌糸のように絡み合い、しかも音数は少ない。後者は、ほんのわずかにベースが入るものの、ほとんど合唱のみで構成されている。つまり、手法も趣も異なった“声”による2曲が連なっていると。そして、その後に続くのは、本作の目玉のひとつ、贅沢な弦楽器の重奏を配置した“Ancestress(祖先)。クラシックとエレクトロニカの融合という観点でも見事だし、ビョークのヴォーカルはメロディアスで力強い。
 これら序盤の見せ場において、“Sorrowful Soil”と“Ancestress”の2曲には、環境活動家でもあった母の死に寄せた哀しみが関わっているという。と同時に、前作同様、ビョークの女性への思いが本作にも通底していることが仄めかされている。しかしながら、ビョークはリベラル主流派の代弁者ではない。ぼくがポップ・カルチャーに期待するのは、リベラル主流派さえもあきれかえるほどの異なる声だったりする。ぼくのような凡人には思いも寄らないような声を出すことは、監視し合い、萎縮した社会では難しかろうが、ビョークはいまもそれをやっているのだ。きのこになりきった彼女は、まさにウィアード(**)な存在で、彼女の音楽のなかにはオルフェウス的なるものがあることを確信させる。
 ギリシャ神話におけるオルフェウスはいわば古代の音楽家だが、動物や木々さえも魅了する特異な音楽家だった。そればかりか、死者を蘇らせることだって彼には可能だったのだ。ここから導き出せるひとつの見解は、音楽には人が思っている以上に何かものすごい力があるということで、オルフェウスはだから八つ裂きにされるのだった。のちに歴史上、多くの芸術家のモチーフとなったオルフェウスを、合理主義のなれの果てである今日の社会に対峙させることは、詩人の直感としては間違っていないだろう。
 異なる声は、我々のちっぽけな正義の臨界を超えたところから聞こえるものだ。『フォソーラ』は、これまでのビョークのカタログのなかでもっとも奇妙なアルバムで、ぼくの理解を超えている作品だ。気むずかしさはないが実験作だし、よくわからないが、もっていかれる。
 フルートと声の“Allow”は前作録音時の曲という話だが、本作のある種異様な流れのなかにしっかりハマっている。森のなかを彷徨う“Fungal City(きのこ都市)”に次いではじまる“Trölla-Gabba”では、前情報にあったガバのリズムが曲の終盤に少しだけ出てくる。ロッテルダム・ハードコアのようなサウンドをやるのかと早合点したのはぼくだけではないと思うけれど、そのリズムをマッチョの欠片もない菌類の世界で鳴らす試みは、まあ、面白いといえば面白い。タイトル曲ではやはり曲の終盤に、今度はより大胆にガバのリズムを鳴らしている。アルバムを締めくくる子守歌のような“Her Mother's House”では、本作のテーマである「母系制」を確認するかのように、19歳の娘といっしょに母について歌っている。とどのつまり彼女は、家父長制にはなんの未来がないことを念を押すように言いたいのだ。

 無神論者であるビョークはこの20年家族の礼拝にも出席せず、母親がニューエイジやスピリチュアルに心酔したときも逆らったと、ピッチフォークの最新インタヴュー記事(***)に書かれている。本作の詩的なるものも、決して論理性と相反するものではないとぼくは思っている。きのこ/菌糸類は本作におけるメタファーだというのが、すでに定説になっているが、それがなんのメタファーかといえば、答えはひとつではないし、リスナー各々が想像すればいいだろう。女性的な何かとリンクしているかもしれないし、より広義にしぶとい生命力であるとか、サイケデリックな扉かもしれないがただしこれは幻覚でも夢でもない。妖精物語でもファンタジーでもないし、クラブでもポップ・ソング集でもない。そんなように、いまひとつとらえどころがなく謎めいたこの作品には、だからこそ人間を人間たらしめているものが潜んでいるように思えてならないのだった。

(*)宣伝をかねていうと、現在絶賛作業中のマーク・フィッシャーの遺作となった『奇妙なものとぞっとするもの』の翻訳(訳者は五井健太郎)、同書においてフィッシャーは、ザ・フォール(マーク・E・スミス)を引き合いに出し、グロテスクなる言葉の意味について「古代ローマ期の人間や動物や植物が混ざりあった装飾的な模様」に由来すると説明している。

(**)さらにもう一発宣伝。『奇妙なものとぞっとするもの』とは「奇妙なもの」=「ウィアード(weird)なもの」とはいったい何なのかを彼の博覧強記をもって分析している本。12月2日刊行予定です。どうぞ、よろしくお願いします!!

(***)余談だが、このインタヴューで、ビョークが(『ストレンジャー・シングス』でリヴァイヴァルしている)ケイト・ブッシュへのシンパシーについて言及しているが、たしかにいま『Hounds of Love』を聴くと、同作が20年先を走っていたことを思い知らせれるし、最近のビョークにもっとも近しいアーティストのようにも思える。「ストレンジャー・シングス」で知った人も、聴いてみてください。

interview with Bibio - ele-king

 はじめにビビオの10枚目のアルバムが『BIB10』であることを知ったときはその飾り気のなさに少し笑ってしまったが、しかしこれは、堂々としたセルフ・タイトルということでもある。10枚目にしてたどり着いた、ビビオ以外のなにものでもないもの。20年足らずの間にコツコツと10枚もアルバムを作りながら音楽性を拡張してきたこと、ビビオの揺るがない個性を確立したこと、その両方に対する誇りが伝わるタイトルだ。
 一聴して『BIB10』は、ヴァイオリンの演奏を学んだことによってトラッドでフォーキーな路線だった前作『Ribbons』~EP「Sleeping on the Wing」から踵を返すように、70~80年代のブラック・ミュージック──ヴィンテージ的なファンク、ソウル、ディスコからの影響が色濃いアルバムに思える。以下のインタヴューのスティーヴン・ウィルキンソン自身の言葉に頼ると、夜のアルバムだ。ジャケットの妖艶なサテンのギターが示しているように、シンセやエレキによるエレクトロニックでセクシーなサウンドとともに、ファルセット・ヴォイスで歌いまくっている。歌うこと自体を遠慮していたようだった初期を思うとずいぶんな変化だし、家でのリラックスした時間に寄り添うことに長けたビビオの音楽のこれまでの傾向を考えると、ファンキーでグリッターなディスコ・チューン “S.O.L.” でのダンスフロアへの祝福、その思い切りのよさには驚き気持ちよくなってしまう。それに、これまででもっともプリンスへの敬愛がストレートに炸裂したアルバムでもある。煌びやかで、官能的なのだ。
 ただ、『Ribbons』にソウルの要素が入っていたように、『BIB10』にもヴァイオリンの演奏を生かしたトラッドなムードもあれば(“Rain and Shine”)、アルバム後半、ビビオが得意とするアコギの弾き語りを骨格としたメロウなフォーク・ソングもある(“Phonograph”)。このアルバムで言えば、(歌詞というよりサウンドが)夜になってダンスフロアに向かうところからはじまって次第に朝が訪れるようなストーリーになっているが、様々な音楽が無理なく有機的に混ざり合っているのはこれまでのアルバムと同様だ。

 ビビオは10枚目のアルバムを自ら祝いたいと話しているが、長くビビオの音楽を聴き、その変遷を追ってきたリスナーからしても祝福ムードのある作品だ。わたしたちは彼が地道にプロデューサー、プレイヤー、ソングライター、そしてシンガーとしての幅を広げてきたのを知っているし、何よりも、どんなスタイルでもどこかノスタルジックな温かさを醸すその音楽に親しみを覚えてきた。初期に強く影響を受けていたボーズ・オブ・カナダのノスタルジーがそこはかとなく不気味さを滲ませているのに対し、ビビオのそれは素朴で優しい。
 せっかくの機会なので、『BIB10』の話だけでなく、本人にこれまでのキャリアを少し振り返ってもらった。ここでは新しいビビオと懐かしいビビオが溶け合っているから。

『Fi』と『Hand Cranked』に関しては、機材があまりないという「制限」がもとになって生まれたテクニックがたくさんあったし、それがあのローファイの美学を生んだんだよね。

音楽メディア〈ele-king〉です。あなたの音楽を長く聴いてきた読者が多いので、今回は10作目となる新作『BIB10』を起点としつつ、はじめにこれまでのディスコグラフィについても聞かせてください。あなたは2015年に『Fi』(オリジナル・リリース2005年)を、2021年に『Hand Cranked』(オリジナル・リリース2006年)をリイシューしていますが、こうした初期の作品を振り返ることは、近年の活動に影響を与えることはありましたか。

スティーヴン・ウィルキンソン(以下SW):どのようにかを言葉で説明するのは難しいけど、影響を受けることはときどきある。そのアルバムを作ったときの考え方や姿勢に影響を受けるんだ。今回のアルバムはそこまで影響は受けていないけど、『Ribbons』(2019年)は『Fi』のアイディアやテクニックみたいなものを受け継いでいると思う。『Fi』で使ったギアを、実際に使ったりもしたからね。

では、『BIB10』のインスピレーションは逆に何だと思いますか? 何から影響を受けているのでしょうか?

SW:それは、僕にとってはすごく面白い質問なんだ。なぜなら、何を「インスピレーション」と呼ぶのか、そしてそれが作っている作品にどう機能するのかというのを、僕自身、まだ学んでいる途中だから。アイディアっていうのは降りてくるし、それが何かははっきりしているんだけど、そのアイディアがなぜ出てきたのか、それを実らせた種が何だったのかは、本当に小さくてわからなかったりする。でもたとえば、『Fi』と『Hand Cranked』に関しては、機材があまりないという「制限」がもとになって生まれたテクニックがたくさんあったし、それがあのローファイの美学を生んだんだよね。そして、そこで学んだことは、いまでも生かされている。ギターのレイヤーを作ることはそのひとつ。いま、そのローファイの美学は前よりも洗練されているけど、いまだにあのときに戻ろうとするときもあるんだ。

〈Warp〉からの初リリースとなった『Ambivalence Avenue』(2009年)はあなたのキャリアにおいても重要な作品であり、『BIB10』においても『Ambivalence Avenue』でのエレクトロニックとアコースティックが両立していたのを意識していたとのことですが、いまから振り返って、あのアルバムのどんな点が秀でていると感じますか?

SW:あのアルバムを振り返ると、自分が思い切ったことをやったときを思い出す。とくにプロダクション。ローファイでフォークっぽいサウンドから、あのサウンドになったのは、僕にとっては大きな一歩だったんだ。そして、あのジャンルの幅広さも褒めていい部分だと思う。あのときはたくさんのことを一度にやっていて、結果、僕はそれをすべてあのアルバム一枚に落としこんだんだ。そして、それをみんなが気に入ってくれたから、自分のスタイルを変えてもいいんだという自信がついたものあのアルバムだったね。ローファイやフォークだけじゃなく、いろんなサウンドにチャレンジしていいんだという自信をもらえた。あと、20代のときに作ったアルバムだから、若い精神みたいなものも感じられるんだ。

2019年の〈Warp〉の企画『WXAXRXP Session』のときにもとは『Ambivalence Avenue』に収録していた “Lovers’ Carvings” のセルフ・カヴァーをシングル・カットしていますが、あの曲をピックアップしたのはどうしてでしょうか?

SW:あのカヴァーは、〈Warp〉の30周年記念のためのものだったんだけど、僕が〈Warp〉と契約したのは〈Warp〉の20周年のときで、“Lovers’ Carvings” はそのボックスセットに収録されている曲なんだ。僕にとってあの曲は、僕と〈Warp〉のキャリアの印みたいな作品なんだよ。

ヴァイナルって大事だと思うんだ。レコードだと、ストリーミングやCDみたいに簡単にトラックを早送りしたり、スキップしたりすることができないから。

『BIB10』はあなたの様々な音楽的要素が混ざった作品かと思いますが、単純にオリヴィエ・セント・ルイスが参加しているというのもありますし、ソウル・ミュージックの要素でわたしは第一印象では『A Mineral Love』(2016年)との共通点を強く感じました。あなた自身は、『A Mineral Love』のときに得た経験で大きなものは何でしたか?

SW:パッと思いつかないけど、あの作品も、それまでに自分がトライしたことがなかったものに挑戦したアルバムだった。僕にとっては、それが上手くいけば成功を意味するし、そして自信をもらえるんだ。『A Mineral Love』は、確実に新しいスタイルにチャレンジしたアルバムだった。オリヴィエとコラボしたのも、得た経験で大きなもののひとつ。あれがすごく上手くいったから、彼とはコラボをし続けたし、今回のアルバムに至っているからね。僕は、同じひとたちと共演するのが好きなんだ。そうすると数はあまり増やせないけど、そのアーティストと信頼関係を築いていくのはすごく良いことだと思う。その関係か築けているからこそ、オリヴィエとは本当に心地よくいっしょに曲を書くことができるんだ。

『BIB10』はフォーキーな要素が強かった『Ribbons』、あるいはEP「Sleeping on the Wing」からの反動もあったとのことですが、“Rain and Shine” のあなた自身のヴァイオリンなど、その時期の経験が生きている部分もあるように思います。『Ribbons』~『Sleeping on the Wing』のフォーキーな作品で得た経験で大きかったのは、やはりヴァイオリンやマンドリンをご自身で演奏されたことだったのでしょうか?

SW:そうだね。ヴァイオリンは独学で勉強したんだけど、すごく難しかった。でも、どうしてもアルバムで使いたくて頑張ったんだ。それが僕の新しいチャレンジになり、没頭することができた。新しい楽器を自分のサウンドに持ちこむというのは、プロデューサーとしての僕も興奮させられることなんだ。ヴァイオリンをはじめたきっかけは、『Ribbons』のふたつのトラックで友人がヴァイオリンを弾いてくれて、それを見て、僕も学びたいと思ったから。それで、2曲目以降は僕がヴァイオリンのパートを引き継ぐことにした。そして、そこから派生したのがマンドリンだったんだ。

独学でいくつもの楽器を弾けるようになるのはすごいですね。

SW:僕は、アルバムを出すたびに新しいチャレンジに挑むのが好きなんだよ。簡単なことをやるだけじゃつまらないからね。まったく新しいものにしたいのではなく、僕の場合、すでにあるものをさらに築きながら、新しいものを取り入れるというミックスだと思う。新しいことを学ぶことが好きだし、ビビオの意味を広げていきたいとも思うし、何かを発見し続けることがモチベーションになるんだ。

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80年代はデジタルが普及しはじめたときで、みんながよりエレクトロニックなサウンドを作ろうとしていた。未来的というか、機械的というか。でもそれなのに、そこには人間味と、素晴らしいミュージシャンシップがこめられている。

あなたのこれまでの作品は、様々な音楽的要素がミックスされていつつ、それぞれ個性を持っていると思います。ストリーミング・サーヴィスが一般化した現在、シャッフルやプレイリストでのリスニングが増えていると言われますが、そんななかでも「アルバム」という単位が表現しうるものは何だと思いますか?

SW:いまは違う聴き方をしていても、僕らはやっぱりアルバム世代で、いまになってもアルバムというフォーマットを好むひとはいると思うんだよ。それがストリーミングであれ、レコードであれ、CDであれ、アルバムという単位で作品を楽しみたいひともいるはず。僕自身も、スポティファイは使ってないし、プレイリストも作らないしね。アルバムがいまだに重要だという人たちは、必ずいるんじゃないかな。ある意味、アルバムを楽しむには、リスナーはすべてを捧げなければならない。そしてアルバムだからこそ、のめりこみたいと思う旅をみんなに提供できると思う。そして、だからこそ、ヴァイナルって大事だと思うんだ。レコードだと、ストリーミングやCDみたいに簡単にトラックを早送りしたり、スキップしたりすることができないから。針を乗せて、そのままにしておくのがヴァイナルの聴き方だからね。僕がアルバムをヴァイナルで聴くのが好きな理由のひとつはそれなんだ。

では、『BIB10』についても詳しく聞かせてください。先ほども言ったように様々な音楽的要素が有機的に入った作品ですが、前作『Ribbons』との対比で言うなら、エレキ・ギターの活躍が大きいアルバムではあるとは思います。ここ2、3年でエレキ・ギターをよく演奏していたとのことですが、何かきっかけがあったのでしょうか?

SW:エレキ・ギターは、11歳のときから弾いてる。子どもの頃は、メタル・ロックにハマってたからさ(笑)。最近よりエレキ・ギターを弾くようになった理由は、『Ribbons』がもっとアコースティックが多かったから、その反動なんじゃないかな。何か違うことがやりたくなったんだと思う。エレキって、サウンドのバラエティがすごく豊富だよね。ひとつの楽器で、いろいろなサウンドを奏でることができる。そこが好きなんだ。

あなたのようにマルチ・プレイヤーだと、楽器の選択が多く表現の幅が広がると同時に、選ぶのが難しい場面もあると想像します。実際のところ、楽曲のイメージが先にあって使う楽器を吟味していくのか、作曲するときに楽器が先に選ばれていて曲ができていくのと、どちらが近いですか?

SW:ほとんどの場合、まずはギターを使って曲ができあがる。家やスタジオでギターを手にとって、曲を作るんだ。で、そこで面白いと思うものが出てきたら、それを弾いているビデオをスマホで録る。だから、僕の携帯には短い動画の音楽のアイディアがたくさん溜まってるんだ。なぜ録音ではなくビデオを録るのかというのは、自分が何をどうやってプレイしたかが観られるから。で、そうやって曲ができあがったあと、ピアノとかシンセとか、ギターのほかにどんな楽器を使ったら面白いかなと考えはじめる。どの楽器を選ぶかの基準は、その曲の世界観によるね。ソウルなのか、エレクトロなのか、フォークなのか、その曲が持つムードによって、どの楽器を求めるかが変わってくるんだ。

また、本作ではアナログ・シンセや808などクラシックなドラムマシンを使っているとのことですが、そうした古くからある機材を意図的に使った理由は何でしょう?

SW:僕のスタジオには、新しいシンセと古いシンセの両方がある。アナログって、ソフトウェアには真似できない、すごく豊かなクオリティを生み出すことができると思うんだ。そして、古くからある機材はどれも、その機材にしか出せないアイコニックなサウンドを持っていると思う。あと、それを使いながらも何かモダンなことをするっていうのが好きなのも理由のひとつだね。

あなたはこれまで、ご自身の音楽にあるノスタルジックな要素について話されてきたと思います。『BIB10』には70年代ファンクや80年代の音楽のムードがありますが、そこにも何かあなたにとってノスタルジックな感覚があるのでしょうか?

SW:そうだと思う。僕は、その時代の音楽のプロダクションにすごく魅力を感じるんだ。とくに80年代はデジタルが普及しはじめたときで、みんながよりエレクトロニックなサウンドを作ろうとしていた。未来的というか、機械的というか。でもそれなのに、そこには人間味と、素晴らしいミュージシャンシップがこめられている。エレクトロニックでありながも、グルーヴやハーモニーといった要素がきちんと入っているところが素晴らしいと思うんだよね。僕は、そのコンビネーションが好きなんだ。

今回は曲によってドラムマシンだったり、イアン・ヘンドリーの生ドラムだったりしますが、「この曲に生楽器が必要だ」との判断は直感的なものなのでしょうか?

SW:そうだね。曲ができあがってから、その曲が求めているムードによって決めるんだ。たとえば “S.O.L.” だったら、あの曲ではほかのすべてが生楽器で演奏されているから、そのライヴのエナジーを保たなければと思ったんだよね。やっぱり機械より、サウンドに人間味をもたせてくれるから。あと、“Off Goes The Light” や “Potion” みたいな曲は、生楽器とシーケンスのミックスだからどちらも入れたかった。そんな感じで、曲のサウンドによって決めるんだ。

レッスンやトレーニングを受けたことはない。演奏もだし、プロダクションもそう。興味があったから、自らそれを追求してみた結果なんだ。

『BIB10』はシンガーとしてのあなたの魅力を堪能できる作品でもあります。初期には「自分が歌うことに確信がなかった」と話していたと思いますが、歌うことに自信が持てるようになったのはどの時期だったのでしょうか?

SW:自信が持てるようになるまでには時間がかかったし、いまでもまだ十分には自信は持てていない。僕はシャイな性格だから、歌うことに関しては、自信が少しもてるようになるまでかなり時間がかったんだ。でもやっぱり、いちばん大きな自信を与えてくれたのは、『Ambivalence Avenue』かな。あのアルバムへの反応が、ヴォーカリストとしてこれまでよりも大きな自信をもたせてくれたと思う。でもステージで、人前で歌う自信はいまだにないけどね(笑)。

たとえば “S.O.L.” などはダンスフロアを想起させるディスコ・ナンバーですが、あなたの音楽はどちらかと言うとホーム・リスニングに適したもののほうが多かったように思います。ダンサブルな曲と座ってじっくり聴ける曲が共存しているのも『BIB10』の魅力ですが、あなた自身は、リスナーが曲を聴くシチュエーションを想定することはありますか?

SW:たまにある。たいていは、トラックが仕上がりに近い時点でそれを考えることが多い。ひとがどんな場所でそのトラックを聴くのか、その可能性がある場所をできるだけ多く思い浮かべるんだ。車とか、地下鉄とか、今回のアルバムだったらクラブとか。それを考えると、この曲がもうすぐ外の世界にリリースされるんだ、と興奮するんだよね。作っている真っ最中は、外の世界のことを全く考えない。その作業にのめりこんでしまう。でもリスナーがどこで聴くかを考えているということは、心に余裕ができて、ゴールが見えてきた証拠なんだよ。

「明りが消える」という “Off Goes the Light” からはじまり、アルバム前半のダンス・チューンが続く展開はストーリーとしても惹きつけられます。あなたにとって、「夜」はどんな魅力を持っていますか?

SW:なぜか僕は、すべてのアルバムを夜か昼かで分けられるんだよね。たとえば『Ribbons』は昼のアルバムだと思うし、今回のアルバムは夜だと思う。でも、それがなぜかはわからない。もしかしたら、ダンスっぽい要素がクラブを連想させるのかも。どちらかというと、エレクトロニック・ミュージックが夜で、フォークが昼って印象かな。

フォーキーで穏やかな “Phonograph” も余韻の残る美しい曲ですが、クロージングの “Fools” はプリンス風のセクシーなソウル・チューンです。この曲をエンディングに置いたのはなぜですか?

SW:理由はないよ(笑)。ただ、それがしっくりきたんだ。あのトラックは、アルバムのために作った最後の曲で、できあがった瞬間、フィナーレみたいな感情がわきあがってきた。これでアルバムが完成したんだ! って気持ちになったんだ。スローなトラックだったし、エンディングにピッタリだと思ったんだよね。曲順は、あまり考えすぎず、直感で決めることが多いんだ。

『BIB10』では10枚目の作品を祝福する気持ちもあったとのことですね。実際、10枚もアルバムをリリースするのは並大抵のことではないと思います。あなた自身が、これまでのミュージシャンとしての活動でとくに誇りに感じているのはどのようなところですか?

SW:これまでのことを独学で学んだことかな。それがメインだと思う。もちろん、ほかのひとに教えてもらったこともあるけど、そのためのレッスンやトレーニングを受けたことはない。演奏もだし、プロダクションもそう。興味があったから、自らそれを追求してみた結果なんだ。機材を買って、どうやって使えばいいのかを探る。僕はそれが好きなことなんだよね。

ありがとうございました!

SW:ありがとう。またね。

John Cale - ele-king

 ジョン・ケイルのニュー・アルバム『MERCY』が、来年1月23日に〈Double Six / Domino〉からリリースされる。
 まずは客演に注目しておきたい。アニマル・コレクティヴに加え、まさかのアクトレスローレル・ヘイローといった10年代エレクトロニック・ミュージックの重要人物、近年のUKインディ・シーンで大きな影響力を持つファット・ホワイト・ファミリーなどが参加。歌手のワイズ・ブラッドをフィーチャーした先行公開曲 “STORY OF BLOOD” では驚くべきことにトラップ風のビートが鳴っている。
 現在80歳、新しい音楽に関心を持ちつづけるレジェンドによる、これは期待大のアルバムだ。

JOHN CALE
1月20日に最新アルバム『MERCY』をリリース!
新曲 “STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood” を公開!

ジョン・ケイルが、2023年1月20日にオリジナル曲を収録したものとしては実に10年ぶりとなる最新アルバム『MERCY』を〈Double Six / Domino〉からリリースすることを発表し、新曲 “STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood” をミュージックビデオと共に公開した。

John Cale - STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood (Official Video)
https://youtu.be/qgwOid8vdwE

60年近くにわたって、いや、少なくとも彼がニューヨークに移り住み、ルー・リードと共にヴェルヴェット・アンダーグラウンドを結成した若きウェールズ人であった頃から、ケイルは感動すら覚えるほど革新的かつ異端な作品群をコンスタントに発表してきている。そこには例えば『Paris 1919』の妖艶なチェンバー・フォーク、『Fear』のアート性の高いロック、挑発的かつ実験的で深みのある歌曲集『Music for a New Society』(30年後に自身による変奏曲集『M:FANS』を発表)といった音楽史における重要作が含まれている。待望の新作となる『MERCY』で、またもやケイルは、自分の音楽がどのように作られ、どのように聞こえ、そしてどのように機能するかさえも再構築している。12曲からなるこの『MERCY』は、闇夜に生まれた電子音を通して、傷つきやすいラブソングと未来への希望に満ちた考察へと向かっている。

本作『MERCY』において、ケイルは、アニマル・コレクティヴ、シルヴァン・エッソ、ローレル・ヘイロー、テイ・シ、アクトレスという音楽界で最も好奇心旺盛な若手アーティストたちを起用している。いずれも、ケイルの完成された世界観の中に入り込み、そこで彼が自らの世界をデコレーションし直すのを手伝う、才能溢れるミュージシャンたちだ。ケイルは今年3月に80歳を迎え、特にこの10年間は、多くの同業者がこの世を去るのを見守ってきた。それでも『MERCY』は、彼らこれまで積み重ねてきた長いキャリアの延長上で誕生した作品と言える。ケイルは常に、疎外感、傷、喜びといった古い考えを探求する新しい方法を探してきた。『MERCY』は、その満たされない心が見つけた新たな作品だ。

『MERCY』を構成する楽曲は、ケイルがディストピアの瀬戸際でよろめく社会を見ながら、何年もかけて書きためてきたものだ。トランプとブレグジット、コロナと気候変動、公民権、右翼の過激派、もしくは南極、北極付近で溶けている海氷の主権と法的地位についての考察であれ、アメリカ人の無謀な武装化であれ、ケイルはその日の悪いニュースを自分の言葉にする。今回のアルバム発表に先立ってリリースされた “NIGHT CRAWLING” で、(今もなお) 豊かに生きている人生からの教訓も前面に押し出されている。もし、私たちが常に過去を悔やんでいるとしたら、永久に失望を味わうことになるのではなかろうか? そして “STORY OF BLOOD” でワイズ・ブラッドと共に歌ったように、結局のところ、我々は、我々が知ることのない神に頼るのではなく、お互いを救うことができるのではないだろうか?

“STORY OF BLOOD” では、ピアノの前奏が重厚なビートと眩い太陽のようなシンセサイザーに変わった後、ケイルとワイズ・ブラッドの歌声が、現代の喧騒の中でパートナーを探そうとする2つのファントムのように滑らかに交差する。「スウィング・ユア・ソウル」と二人は願いを込めて歌う。最後のパートで、ケイルはこの存在が自分だけのものでないことを思い出す。「私は朝には私の友人たちを、彼らを迎えに戻る。彼らを光の中に連れて行くんだ」。エミー賞受賞監督ジェスロ・ウォーターズによるミュージックビデオには、ケイルとワイズ・ブラッドが登場し、不穏と静寂が混在する。その深い色調と宗教的な雰囲気は、この曲のダークでスピリチュアルなムードを強調している。

ワイズ・ブラッドの新作を聴いていて、ナタリーの清純なボーカルを思い出したんだ。「Swing your soul」というパートと、他のいくつかの部分で彼女と一緒にハーモニーで歌うことができれば、きっと美しいものになるだろうと思った。しかし、彼女から得たものは、それ以上のものだったよ。彼女の声の多様性を理解してからは、まるで最初から彼女を想定して曲を書いていたかのように感じた。彼女の音域の広さと、音律に対する大胆なアプローチは、予想外の驚きだった。彼女がニコとそっくりに思う瞬間すらあるんだ。 ──ジョン・ケイル

待望の最新作『MERCY』は、2023年1月20日にCD、LP、デジタルでリリース! 国内流通仕様盤CDには解説が封入される。

label: Double Six
artist: John Cale
title: MERCY
release: 2023.01.20

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13095

CD Tracklist
01. MERCY feat. Laurel Halo
02. MARILYN MONROE'S LEGS (beauty elsewhere) feat. Actress
03. NOISE OF YOU
04. STORY OF BLOOD feat. Weyes Blood
05. TIME STANDS STILL feat. Sylvan Esso
06. MOONSTRUCK (Nico's Song)
07. EVERLASTING DAYS feat. Animal Collective
08. NIGHT CRAWLING
09. NOT THE END OF THE WORLD
10. THE LEGAL STATUS OF ICE feat. Fat White Family
11. I KNOW YOU'RE HAPPY feat. Tei Shi
12. OUT YOUR WINDOW

CD

ブラック・ヴァイナル

ホワイト・ヴァイナル

クリア・ヴァイナル

Surya Botofasina - ele-king

 アリス・コルトレーンのアシュラム(僧院)で彼女の演奏を聴きながら育ったというスーリヤ・ボトファシーナ。つまりアリス・コルトレーンの愛弟子ともいえるこのキーボード奏者/作曲家が、めでたくデビューを果たすことになった。ファースト・アルバム『Everyone's Children』は11/23に発売(デジタルは11/4)。プロデューサーはカルロス・ニーニョとのこと。スピリチュアル・ジャズ期待の新星に注目しておきましょう。

Surya Botofasina『Everyone's Children』
2022.11.4(土) DIGITAL Release
2022.11.23(水) CD Release

カルロス・ニーニョがプロデュースする、アリス・コルトレーンの愛弟子である注目のキーボード奏者/作曲家のスーリヤ・ボトファシーナのデビューアルバム。ジャズシンガーのドワイト・トリブルやミア・ドイ・トッドも参加したスピリチュアル・ジャズの傑作!!

キーボード奏者/作曲家のスーリヤ・ボトファシーナは、アリス・コルトレーンのアシュラムで彼女が弾くピアノとシンセサイザーを聴いて育った。だから、ディープリスニングへと誘う、この瞑想的で催眠的な音楽はとてもリアルなものだ。カルロス・ニーニョがプロデュースを担当し、彼がかつて率いたビルド・アン・アークのジャズ・コミュニティが支えていることも、その証である。(原雅明 ringsプロデューサー)

[リリース情報]
アーティスト名:Surya Botofasina(スーリヤ・ボトファシーナ)
アルバム名:Everyone's Children(エヴリワンズ・チルドレン)
リリース日:2022年11月23日(水)
フォーマット:CD
レーベル:rings / plant bass / spiritmuse records
解説:Hashim Bharoocha
品番:RINC96
価格:2,600円+税

[トラックリスト]
01. SuryaMeditation
02. I Love Dew, Sophie
03. Beloved California Temple
04. Everyone's Children (with Mia Doi Todd)
05. Sun Of Keshava
06. Waves For Margie (with RadhaBotofasina)
07. SuryaMeditation (Reprise) Radio Edit
08. SuryaMeditation (with Swamini Satsang) Excerpt

販売リンク:https://diwproducts.net/items/6322eaca7588610001b7ab98
オフィシャルサイト:https://www.ringstokyo.com/items/Surya-Botofasina

interview with Louis Cole - ele-king

 少なくない数のある種の音楽ファンにとって、今年いちばん待ち望んでいたアルバム。前作から4年ぶりとなったルイス・コールの新作『Quality Over Opinion』は、20曲入り(国内盤CDはボーナストラックありの21曲)、70分超の大ヴォリュームで、ファンの期待を上回るこれまた快作だ。
 2010年に、1stソロ・アルバム『Louis Cole』と、LAの名門音楽大学在籍中に出会った女性シンガー、ジェネヴィエーブ・アルターディと組むノウワー(Knower)の1stアルバム『Louis Cole and Genevieve Artadi』でレコード・デビュー。シンガー・ソングライターとして、そして、独創的な超絶技巧ドラマーとして地元ロスアンジェルスで名を上げ続けた彼は、〈ブレインフィーダー〉発となったワールドワイド・デビュー作『Time』一発で、世界中にその名を轟かせた。盟友サンダーキャットと並んで、いま最も聴き手の心を踊らせてくれる音楽家と言っていいだろう。
 「最も影響を受けたのがジェイムズ・ブラウンで、曲づくりの転機となったのがスクリレックス」という発言に、彼がつくる音楽の秘密が凝縮されている。新作について、ルイス・コールについてより深く知るためのヒントが詰まったインタヴューをお届けしたい。

マシンと、人間が正確に叩くものは違う。人間には何らかのエラーがあって、でもそこにはある種のパワーがあるし、すごく感動的なんだ。

前作『Time』と、新作で変わった点、変わらない点は何ですか?

ルイス・コール(Louis Cole、以下LC):変わった点は、新しいサウンドを探求していること。それから、ひらめきやアイデアを追求して、最終的な形にまで持っていくのがうまくなったと思う。これまでに培ったスキルで、最初に浮かんだアイデアを形にする力が増したんだ。ただ2枚のアルバムにおけるミッションは同じだった。それぞれの曲に対して、できるかぎり深く掘り下げて、そうして曲が持つエモーションを最大限引き出すというね。

ドラムスをジャストで聴かせるのが、あなたの音楽の最大のトレードマークで、新作ではそれがより強調されているように思います。どういった考えで「ジャストなリズム」にしているのですか?

LC:もう何年も、正確にリズムを刻むこと、一拍一拍をどう置くかをしっかりコントロールすることに取り組んできたんだ。『Time』以降だから4年くらい、ドラムをより正確に操れるように努力してきたんだ。正確なリズムに興奮するんだよね。

「ジャストなリズム」のおもしろさは、どういったところですか?

LC:何だろうな……そこから生み出される力というか。人間が完全に正確になることはできないよね。音符ひとつずつが違ってくる。打ち込みのビートやドラム・マシンはちょっと無菌というか……必ずしもそうとは限らないけど。とにかくマシンと、人間が正確に叩くものは違う。人間には何らかのエラーがあって、でもそこにはある種のパワーがあるし、すごく感動的なんだ。

レコーディングの際はクリック、メトロノームの類は用いていますか?

LC:使っているよ。ニュー・アルバムでは全曲で使った。バンドと一緒に、ライヴで録る時などは使わないけどね。

「ジャストなリズム」は、J・ディラ以降の大きな流行となった「揺れるビート」へのアンチテーゼとも受け取れます。揺れるビートに対するあなたの考えを聞かせてください。

LC:そういった、ユルい感じのヒップホップも好きだよ。それはそれで美しいと思う。僕がつくるビートとは別の形だけど、ある意味同じことのような気もする。J・ディラのことはよく知らないけど、きっとあの揺れも彼が求めた結果としてそうなっているわけで。つまり彼はしっかりとコントロールしていた。間違いなく、自分がどうしたいのかを把握していたんだ。僕も時々、揺れる感じで演奏することがあるけど、ニュー・アルバムの曲はジャストな演奏の方がいい感じだったんだ。でも、力強く、かっこよくて、魂を込めたものであれば、どんなビートでも全部有効だと思うよ。

9歳、10歳くらい。その頃はもうジェイムズ・ブラウンで頭がいっぱいだったね。

ジャズ以外の音楽的なバックグラウンドを教えてください。どういった音楽を聴いてきましたか?

LC:小さい頃はスティーヴィ・ワンダーが本当に大好きだった。確か4歳とか5歳とか、そのくらい。カセットテープで聴いていたんだ。その後はニルヴァーナとかグリーン・デイにハマって。その後はジェイムズ・ブラウンにどっぷりさ。それが9歳、10歳くらい。その頃はもうジェイムズ・ブラウンで頭がいっぱいだったね。それから、ずっといろんなジャズを聴いてきた。僕の父がピアノを弾くということもあって、いつもジャズかクラシックのレコードをかけていたからね。

ロスアンジェルスで生まれ育ったことは、あなたの音楽にどういった影響を及ぼしていますか?

LC:ひとつ良かったのは、大きな都市だからライヴがたくさんおこなわれていたこと。若い頃からすごく良いライヴを観ることができた。例えばジョシュア・レッドマンとかラリー・ゴールディングスとか。これはすごいぞって、子どもの頃に思ったのを覚えているよ。最近感じるLAの主な利点はふたつあって、ひとつは、様々な種類の自然から近いこと。雪も砂漠も、それからセコイアの森もビーチもある。インスピレーションを得たり、充電できるという意味でも、いい点だね。もうひとつは、LAには素晴らしいミュージシャンがたくさんいること。ライヴやレコーディングをするときに、本当に素晴らしいミュージシャンに声をかけることができるんだ。

「ジャズの本質は混じりっけなしの自由。制限なんてない。無限の純粋な爆発なんだ」と発言されていました。あなたの音楽はジャズと、ポップスのミクスチャーと言えるでしょうか? 自分ではどういう音楽をつくりたいと考えていますか?

LC:確かにそうだと思う。間違いなく両方に影響を受けているし、ポップスという枠内で曲を書くのが好きだしね。ひとつのセクションがどのくらいの長さになるかに細心の注意が払われるところとか、おもしろいんだ。自分が音楽を聴くときも、集中力が長くは持たない。だからひとつのセクションが短いのが好きなんだよね。基本的にはあらゆる種類の音楽が好きだけど、自分がつくる場合はポップスの枠組みの中でつくるのが気持ちいい。創造する上で制限があるのもいいんだ。焦点が定まるというか。ポップ・ソングにヴァース、サビ前、サビといった型があるのは、自分の労力を流し込むのにすごくいい。でも同時にジャズの自由さも好きなんだ。恐れ知らずで、高エネルギーなところ。そしてヴァリエーションがあるところ。僕も、自分ではポップ・ソングをつくっているつもりでも、実際はもう少し自由で、もう少し野生的かもしれない。

音楽を演じるにあたり、特に影響を受けたアーティスト、作品を教えてください。

LC:いろんな人の影響を受けてきたけど、間違いなく、ジェイムズ・ブラウンが大きかったと思う。彼の『Love Power Peace Live At The Olympia, Paris, 1971』というライヴ・アルバムを子どもの頃に聴いて、そのエネルギーに圧倒された。すべてが美しいんだ。あとはマイルス・デイヴィスのライヴ・アルバムも。70年代初期の『Black Beauty』はすごく好きだったな。狂気的で驚異的な演奏なんだ。それから1969年のトニー・ウィリアムズ・ライフタイムの海賊盤を聴いて、もっといいドラマーになりたいと強く思った。とりあえずいま思いつくのはそんなところだけど、まだまだあるはず。

ソングライトは、その時々の自分の思いを表したもので、基本的には即興ですか? 

LC:良い質問だね。曲の最初のアイデア自体は、そのときに自分が感じているエネルギーが現れたものなんだ。それを曲として使えるように凝縮するというか。だから、その時々に感じていることっていうのは、間違いなくそうだね。曲を完成させるまでには、ときには当然ながら、アイデアをひらめいたときと同じモードではなくなっていることもあるけど、それでも制作を続ける。そして自分自身を当初の気持ちに持っていこうとする。いつも歌詞は後から書くけど、最初の感覚を呼び覚まそうとする場合もあれば、そうではなくて、自分がつくったインストを聴いて感じたことを歌詞にする場合もあるよ。

理論を活用して何十年先にも残るような名曲を書く、といったことには興味がないのでしょうか?

LC:もちろん、これまでに培った知識を道具として活用して、曲を強化することはある。ただ僕はそれほど音楽理論には詳しくないんだ。コードの名前とか、コードの作用とかは僕の得意分野ではないんだよ。だから僕の音楽知識というのはあくまで、長い間音楽をやってきたことによって培われたもので。何度も試行錯誤しながらね。そういう知識を用いてタイムレスな曲を書きたいという思いはあるよ。

あとはマイルス・デイヴィスのライヴ・アルバムも。70年代初期の『Black Beauty』はすごく好きだったな。狂気的で驚異的な演奏なんだ。

「2011年にスクリレックスを聴いて、音楽に対する考え方が変わった。僕の曲づくりは彼の影響を受けてガラッと変わった」とのことですが、スクリレックスの音楽のどこに衝撃を受けたのですか、具体的に教えてください。

LC:そう、2011年に初めてスクリレックスを聴いたんだ。『Scary Monsters And Nice Sprites』を聴いたんだけど、シンセサイザーでつくったモンスター級サウンドだったわけ。とにかくグルーヴがすごくて。ある意味笑えて、ふざけてるのにめちゃくちゃヘヴィでグルーヴィなんだよ。それが、最高の組み合わせだなと思った。そして彼の音楽をライヴで聴いた。その体験が僕の人生を大きく変えたんだ。単にそのエネルギーが好きなだけじゃなくて、彼がサウンド・エフェクトで作曲すること、すごくメロディックにすること、しかもすごく理にかなっていることに、僕はものすごく感銘を受けた。

具体的にはどう変わったのですか?

LC:まず、以前よりずっとプロダクションに注意を払うようになった。純粋なエレクトロニック・ミュージックをつくってみたいと思うようになったりね。というのも僕は基本的に楽器、アコースティック主体でやっていたからね。プロダクション、ミキシング、周波数といった音楽知識を学びたいと思ったよ。

歌詞は、定番の男女の関係を歌ったものはなく、あなた自身の心の揺れ動きを表したものが多いですね。歌詞についてのあなたの哲学を教えてください。

LC:できる限りデタラメをなくして、正直に語るということかな。それから、自分らしいと感じられる言い方を心がけること。他の誰かから借りてきたような言葉使いをしない。たとえ音楽に乗せる言葉としては強すぎたり不快に感じるとしても、自分はこういう言い方をするなっていう言葉を変えないようにしている。そしてとにかく最大限深く掘り下げる。後は、曲なんだから韻を踏めるといいなと。僕が普段の会話で言いそうなことって、メロディに乗せるとイマイチな言葉もあるから、その場合はいい感じに曲に収まるようにする必要があるんだよね。とにかく、できるかぎり正直に書くというのが信条だよ。もちろんときには皮肉交じりの歌詞を書くこともあるけど、その場合はさすがに伝わってるだろうしね。

LOUIS COLE BIG BAND
JAPAN TOUR 2022

12.05 MON - NAGOYA CLUB QUATTRO
12.06 TUE - UMEDA CLUB QUATTRO
12.07 WED - SHIBUYA O-EAST

OPEN 18:00 / START 19:00
ADV. ¥7,150(税込/ドリンク代別途)

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