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edbl

R&BSoul

edbl

South London Sounds

Pヴァイン

小川充   Nov 10,2021 UP

 いろいろとサウス・ロンドンが話題に上る昨今だが、ひとくちにサウス・ロンドンと言ってもいろいろなタイプのアーティストがいる。いちばん注目を集めるのがペッカムあたりを中心としたサウス・ロンドンのジャズ・シーンだが、その中でも同じジャズの括りながらやっていることはかなり異なっていたりする。
 近年勢いのあるのがサウス・ロンドンのロック・シーンで、ブリクストンのゴート・ガールはじめファット・ホワイト・ファミリー、ドライ・クリーニングなど新しいアーティストが次々と登場している。そしてもうひとつがシンガー・ソングライターたちで、トム・ミッシュ、ロイル・カーナー、ジェイミー・アイザック、オスカー・ジェローム、キング・クルール、プーマ・ブルー、ジョルジャ・スミス、エゴ・エラ・メイなどが出てきた。オーストラリアから移住してきたジョーダン・ラカイもこうした中に含まれる。
 シンガー・ソングライターと言ってもこれまたいろいろなタイプがいて、ロック寄りのキング・クルール、ジャズ寄りのプーマ・ブルー、ヒップホップ寄りのロイル・カーナー、ソウル寄りのジェイミー・アイザックと音楽性はそれぞれ異なる。ラップを得意とする者、純粋な歌を得意とする者さまざまで、ソングライティング方法もミュージシャン・タイプの人からビートメイカー・タイプの人といろいろだ。また、オスカー・ジェロームはジャズ方面でも活動するミュージシャンでもあり、トム・ミッシュもジャズ・ミュージシャンとのコラボをいろいろおこなっている。

 edbl(エド・ブラック)もこうしたサウス・ロンドンを拠点とするアーティストで、トム・ミッシュなどシンガー・ソングライターの括りに入れられる。と言っても彼自身は歌わないので、純粋に言えばソングライター/トラックメイカーとなる。
 もともとリヴァプール近郊のチェスター出身で、リヴァプール芸術学校に進学して音楽を専攻している。最初はロックを聴いていたエドだが、リヴァプール芸術学校時代にシンガー&ギタリストのエディ・スレイマンと出会って一緒に音楽を作るようになり、彼の影響でヒップホップやR&Bへと興味が変わる。エディ・スレイマンとバンド活動をする中で、ソングライティングやギターをはじめとした楽器演奏のスキルを磨き、その後ブリクストンに移り住んでソロで活動している。2019年に初リーダー作品をリリースし、その後ビート集やミックステープをリリースし、そうして作られた50曲ほどの作品の中から選りすぐられた日本独自の編集アルバムが『サウス・ロンドン・サウンズ』である。

 ギター、キーボード、ドラム・マシンを操るエドは、まずギターのコードから楽曲作りをはじめ、それに合わせてビート・メイキングをしていくスタイルだ。センチメンタルなギター・リフにはじまる “ノスタルジア” あたりが、そうしたギターを中心とした作曲を身上とするエド・ブラックらしさが出たナンバーである。この曲ではタウラ・ラムという女性シンガーが歌っているが、そのほかにもコフィ・ストーン、ザック・セッド、ティリー・ヴァレンタイン、キャリー・バクスター、ジャーキ・モンノ、ヘミ・ムーア、ブラン・マズ、アイザック・ワディントン、ジェイ・アレクザンダー、ジョー・ベイ、JAE と多くのシンガーやラッパーたちがフィーチャーされている。エドと同じくロンドンを中心とした新進の若手アーティストたちで、次のトム・ミッシュ、次のジョルジャ・スミスを担う人材である。本作を聴くと、エド・ブラック以外にもまだ名の知られていないアーティストたちがこんなに控えているのかと、サウス・ロンドン及びロンドンの人材の豊富さに驚かせられる。

 JAE が歌うネオ・ソウル調の “レス・トーク” はじめ、全体的にR&Bマナーの楽曲が多い。アイザック・ワディントンが歌う “ザ・ウェイ・シングス・ワー” はトム・ミッシュの作品に繋がるような楽曲で、エドのエモーショナルなギター・ソロもフィーチャーされる。“ワット・ネクスト” や “マグピーズ” などインスト曲も充実していて、ブラジリアン風味のギター・リフとホーン・アンサンブルが印象的な “ワット・ネクスト” では、J・ディラ譲りとも言えるビート・メイキングが冴えている。“マグピーズ” におけるエレピとギターのコンビネーションも心地よく、基本的にエド・ブラックはこうしたメロウネスを生み出すツボを心得たアーティストだというのがよくわかる。“edblギター”もギターを中心にエレピ、ホーンの演奏によって美しいメロディを紡いでいくナンバー。フランスのFKJ、アメリカのキーファーなど、ここのところ生楽器演奏をふんだんに用いた美メロのトラックメイカーが人気を博しているが、エド・ブラックも今後そうしたひとりに数えられることになるだろう。

小川充