ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Masaaki Kobayashi ──小林雅明による書籍『ヒップホップ名盤100』が発売中
  2. 『ユーザーズ・ヴォイス』〜VINYLVERSE愛用者と本音で語るレコード・トーク〜 第三回 ユーザーネーム:Kang / 中尾莞爾さん
  3. K-LONE - sorry i thought you were someone else | K-ローン
  4. VMO a.k.a Violent Magic Orchestra ──ブラック・メタル、ガバ、ノイズが融合する8年ぶりのアルバム、リリース・ライヴも決定
  5. Geinoh Yamashirogumi ──芸能山城組『輪廻交響楽』がリイシュー、14日には再現ライヴも
  6. ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー『Tranquilizer』試聴会レポート - @原宿・BEATINK Listening Space
  7. Oklou - choke enough | オーケールー
  8. Geese - Getting Killed | ギース
  9. Kazumi Nikaido ──二階堂和美、14年ぶりのオリジナル・アルバムがリリース
  10. claire rousay - a little death | クレア・ラウジー
  11. Oneohtrix Point Never - Tranquilizer | ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
  12. interview with Kensho Omori 大森健生監督、『Ryuichi Sakamoto: Diaries』を語る
  13. NEW MANUKE & Kukangendai ──京都のレーベル〈Leftbrain〉から刺激的な2作品がリリース、ニューマヌケ初のアルバムと空間現代のリミックス盤
  14. Columns なぜレディオヘッドはこんなにも音楽偏執狂を惹きつけるのか Radiohead, Hail to the Thief Live Recordings 2003-2009
  15. TESTSET - ALL HAZE
  16. Columns 11月のジャズ Jazz in November 2025
  17. アンビエント/ジャズ マイルス・デイヴィスとブライアン・イーノから始まる音の系譜
  18. Autechre ──オウテカの来日公演が決定、2026年2月に東京と大阪にて
  19. DREAMING IN THE NIGHTMARE 第2回 ずっと夜でいたいのに――Boiler Roomをめぐるあれこれ
  20. 別冊ele-king Pファンクの大宇宙──ディスクガイドとその歴史

Home >  Reviews >  Album Reviews > Oscar Jerome- Breathe Deep

Oscar Jerome

AfroJazzSoul

Oscar Jerome

Breathe Deep

Caroline International

Amazon

小川充   Sep 09,2020 UP

 サウス・ロンドンのジャズ・シーンでは、ジャズだけでなく他の分野のミュージシャンとの交流もいろいろあり、たとえばシンガー・ソングライターやラッパーとのコラボも頻繁におこなわれる。今年リリースされたトム・ミッシュとユセフ・デイズのアルバム『ワット・カインダ・ミュージック』などが代表例だが、オスカー・ジェロームもそうしたジャズと他分野の境界線にいるアーティストだ。オスカー・ジェロームはギタリストであり、アフロ・バンドのココロコのメンバーとして知られる。ジョー・アーモン・ジョーンズとは学生時代からの友人で、『イディオム』(2017年)や『スターティング・トゥデイ』(2018年)などの作品でも演奏している。サウス・ロンドンのギタリストではマンスール・ブラウンやシャーリー・テテなどもいるが、テクニカルなプレイでギターの可能性を追求するマンスール・ブラウンに対し、オスカー・ジェロームはシンガー・ソングライターとしての立ち位置に重きを置くギタリストであり、どちらかと言えばトム・ミッシュに近いスタンスかもしれない。

 最初にオスカーがソロEPをリリースしたのは2016年のことで、ジョー・アーモン・ジョーンズ、ヌバイア(ヌビア)・ガルシアモーゼス・ボイドらと共演するものの、“ギヴ・バック・ワット・ユー・ストール・フロム・ミー” のようなヒップホップ・ソウルも披露していた。ギル・スコット・ヘロンとモス・デフを足して2で割ったような印象で、トム・ミッシュやロイル・カーナーなど同世代のアーティストに通じる作品だった。2018年の “ホエア・アー・ユー・ブランチズ?” はさらにアコースティックな要素が強く、アフリカ音楽の要素を感じさせる点は彼の参加するココロコにも通じるところだった。この曲が収録されたEPではウー・ルー(最近ではザラ・マクファーレンのアルバム『ソングス・オブ・アンノウン・タン』をプロデュースしていた)をプロデューサーに迎え、ポッピー・アジュダーなどさらに多彩な面々と共演している。そのほかではヒドゥン・スフィアーズのディープ・ハウス系トラックにも参加するなど、いろいろ幅広い活躍を見せていた。

 アルバムとしては2019年に『ライヴ・イン・アムステルダム』を発表し、これは文字通りオランダでのライヴ録音で、“ギヴ・バック・ワット・ユー・ストール・フロム・ミー” や “ドゥ・ユー・リアリー”など、これまでシングルやEPで発表してきた曲を演奏していた。そしてこの度リリースした『ブレス・ディープ』は、初めてのスタジオ・アルバムとなる。ミュージシャンにはジョー・アーモン・ジョーンズなどこれまでのEPやライヴ盤でも演奏してきた面々に加え、ココロコのメンバーからディラン・ジョーンズ、トム・スキナー、トム・ドライスラー、ファーガス・アイルランド、サム・ジョーンズ、ベン・ハウク、ブラザー・ポートレイトらサウス・ロンドン勢、さらに先日ニュー・アルバムをリリースしたばかりのシンガー・ソングライターのリアン・ラ・ハヴァスまで参加する。リアンのアルバムにはブルーノ・メジャーも参加していたが、プロデューサーのベニ・ジャイルズとエンジニアのロバート・ウィルクスがオスカーのアルバムとも共通していて、いろいろな繋がりが見えてくる。

 収録曲は “ギヴ・バック・ワット・ユー・ストール・フロム・ミー” をテンポ・アップして再演し、“グラヴィテイト” は『ライヴ・イン・アムステルダム』でもやっていたナンバーだが、ほかは全て新曲となっている。“サン・フォー・サムワン” はファンク調のトラックだが、レゲエやダブから来たレイド・バックしたフィーリングと風変わりなリズムがアクセントとなっている。オスカーの歌もちょっとスティングを感じさせるところがある。“ユア・セイント” はアコースティック・ギターの弾き語りではじまり、やや調子外れの歌はキング・クルールやプーマ・ブルーを彷彿とさせる。途中からリズム・セクションが入ってくるが、演奏はココロコのメンバーが中心となっていて、アフリカ音楽からの影響も感じさせる曲だ。“コイ・ムーン” にもムビラやカリンバ(親指ピアノ)のような音色が流れ、アフリカ的なムードを感じさせる。こうしたムードは、ほかのR&Bアーティストやシンガー・ソングライターにはないオスカー独自のテイストと言える。

 ジャズ・ファンクとブロークンビーツが混ざったような “グラヴィテイト” はベン・ハウクとの共作で、いまのサウス・ロンドンらしいクロスオーヴァーな魅力に溢れたクラブ・トラック。インストの “ファッキン・ハッピー・デイズン・ザット” はギタリストとしてのオスカーを映し、ジャズとファンクとブルースとカリプソが一緒になったような曲になっている。そしてリアン・ラ・ハヴァスとのデュエットで聴かせるオーガニック・ソウルの “タイムレス”、バックはファーガス・アイルランドのベースのみというシンプルなギターの弾き語り曲 “ジョイ・イズ・ユー” と、アルバムの最後はフォーク・シンガーとしてのオスカーの魅力が詰まった曲で締めくくられる。ジャズ、ソウル、フォーク、アフロなどの中間点に位置するシンガー・ソングライター、それがオスカー・ジェロームである。

小川充

RELATED

Kokoroko- Kokoroko Brownwood Recordings

Reviews Amazon

KokorokoVarious - UntitledThe Vinyl factory

Reviews