「IR」と一致するもの

interview with Dolphin Hyperspace - ele-king

 ドルフィン・ハイパースペースはL.A.を拠点とするエレクトロ・ジャズ・デュオ。
サックス奏者のニコール・マッケイブとベーシスト/プロデューサーのローガン・ケインによるこのユニットは、2020年の1st EP、2021年作『Mini Giraffe』で頭角を現し、2024年の『What is my Porpoise?』ではルイス・コールやジャスティン・ブラウンを迎えて注目を集めた。
 新作『ECHOLOCATION』にはジェラルド・クレイトンも参加。モダン・ジャズの素養に裏打ちされた確かな演奏力をベースに、L.A.ビート・シーンのエレクトロニックな感触と、イルカのキャラクターをモチーフにした遊び心がカラフルに交差する。

 かつてテクノやドラム&ベースが「フューチャー」を標榜し、また「フューチャー・ジャズ」に 音楽の未来をかいま見た時代があった。
 それから20年以上。当時思い描いていた「未来」は、いまやすっかり日常のなかに沈み込んでいる。テクノロジーは「夢」から「インフラ」へと姿を変え、音楽の進化もアルゴリズムによる最適化になかば飲み込まれてしまっている。
「未来」は憧れではなく、ディストピアと戦争への恐怖や不安を思わせるものになってしまった。

 そんなことを考えながらこのアルバムを聴いていたら、思わずニヤリとしてしまった。このデュオの音楽には、もう信じられなくなりつつある、でも諦めきれない未来への期待感と、いたずらっ子のようなユーモアが同居している。
 「ガジェット・ジャズ」と呼びたくなるような、夢とガラクタが詰まったオモチャ箱みたいなサウンドは、まぶしいぐらいキラキラしていてちょっとヘンテコで、まっすぐな希望に満ちている。

ジャズと、かわいい動物にインスパイアされた音の風景みたいなものを、ちょっと混ぜてる感じかな。(ローガン)

あなたたちの音楽は、ハンパなく高度なテクニックで裏打ちされています。シリアスなジャズをやろうと思えばいくらでもできるだろうけど、そうはしません。スタンダードを崩したりしながら、ジャズの芯の部分はしっかり保っている。あなたたちは、伝統的なジャズの高度なヴォイシングと作曲方法、演奏テクニックを習得すると同時に、ポップで軽いオモチャみたいなサブカルチャーを同時に吸収してきたのだと思いますが、当たっていますか?

Logan Kane(以下、L):すごくいいね、ニコール、君から答える?

Nicole McCabe(以下、N):ううん。

L:その通りだよ。言ってくれてることはすごく的確だと思う。影響について話すと、ニコールと僕は、このプロジェクト以外でもプロのジャズ・ミュージシャンとして活動していて、いろんなアーティストと一緒にアコースティック編成でツアーもしてるし、大学でもジャズの歴史を学んできた。だから突き詰めると、これはジャズのプロジェクトだと思ってるし、そこをちゃんと汲み取ってもらえたのはすごく嬉しい。気づいてくれてありがとう。普段かなりアコースティック・ジャズをやってるからこそ、まだあまりやられていないことや、もっと新しく感じられるものをやりたいっていう気持ちがあって、それでこのプロジェクトではかなり違うサウンドの方向に振ってみたんだ。それと、ジャズって、本当に最高なんだけど、どうしてもすごくシリアスになりがちでさ。僕たち自身も真剣にやってはいるけど、質問者さんが言ってくれた「悪ふざけ」みたいな部分もすごく大事にしてる。あと、このインタヴューは(動画ではなく)テキストだから見えないけど、僕たちのロゴはイルカなんだ。かわいい動物がすごく好きだから。だから、ジャズと、かわいい動物にインスパイアされた音の風景みたいなものを、ちょっと混ぜてる感じかな。それもひとつのインスピレーションだね。

N:私とローガンって、それぞれかなり違う影響を持ってて、それを一緒にすると「Dolphin Hyperspaceの音」になるという感じ。それぞれいろんなものを持ち寄ってるんだけど、私はダンス・ミュージックからの影響が強くて、ドラムンベースとかジャングル、UKガラージとかがすごく好き。で、ローガンはゲームっぽい要素を加えてくれるし、プロダクションもめちゃくちゃ上手いの。聴こえてくるかっこいいエフェクトは、だいたいローガンだよ(笑)。制作は、私が曲のアイデアを作って送って、彼が仕上げることもあるし、その逆もあったりするかな。お互い影響の幅が広いのは大きいよね。ローガンはパンクとかブラストビートが好きで、私はファンクとかいろいろ好きだし、本当にいろんなものが混ざってる感じ。あと、結果をあまりジャッジしすぎないようにしてるのも大きいと思う。

2020年にデビューしていますが、ドルフィン・ハイパースペースの音楽スタイルが確立したのはいつ? どんなきっかけ?

L:これは正直、かなり偶然に近い形で最初から形になっていった感じがあるんだ。というのも、プロジェクトをはじめた当時、ニコールと僕は別々の街に住んでいた。だからお互いに音源データを送り合いながら、とにかく実験していくしかなかったんだ。その実験的なやり方自体が、それまで自分たちでもやったことのない新しいものを自然と生み出していった感じで、そこから少しずつそのサウンドを掘り下げていった、という流れかな。最初のEP『Dolphin Hyperspace』を聴くと、そのはじまりと、いまのサウンドにつながっていく過程がわかると思う。

N:そうね、私たちとしては、サウンド自体というより、「どういうふうに聴いてほしいか」みたいな部分をずっと磨いてきてる感じ。「親しみやすい・とっつきやすい(=accessible)」っていうのは、私たちにとってすごく大事なキーワード。演奏中には実際にすごくいろんなことが起きていて、かなりクレイジーではあるんだけど、ちゃんと聴き手が入り込める余地は残しておきたいと思ってる。私としては、しっかりしたメロディがあることもすごく大事で、聴く人がついて来れるポイントがあるといいなって思ってる。そのうえで、展開がある程度わかっている部分もあれば、逆に自分たちでもどうなるかわからない瞬間もたくさんあって、特にライヴではかなりオープンな状態になっていると思う。でも最終的には、聴いている人が楽しめて、ちょっとの間でも悩みを忘れられるようなものを作りたいっていうのがいちばん大きいかな。

L:やっぱり「楽しい(=fun)」っていうのがいちばんだよね。

あなたたちの音楽には、ズレや脱力が美しさに変わる瞬間があります。カッコよくキメるのではなく、ハズしの美学を感じます。まぬけで愛嬌があってかわいい感じ。制作やライヴで生じる音楽的な偶然や失敗をどう扱っていますか?

L:僕たちは、ジャズの現場で培ってきた感覚があるから、これはまさにぴったりの質問だね。ジャズって即興だから、その場でどんどん作っていくものなんだ。だからミスが起きたときも、それを別の新しいものに変えていくように訓練されてる。だからこそ、そういうものも全部そのまま音楽に残してる。実際、ただ録音しているだけという感覚に近くて、ニコールが言ったみたいに、ある程度どうなるかわかっている部分もあるけど、かなり広い範囲で何が起きるかわからない部分もある。そういう不確定な部分も含めて受け入れて、できるだけ編集はしすぎないようにしてる。

N:私たちってあんまり……特にソロに関しては、レコーディングでもライヴでも、ほとんど編集しないタイプだと思う。テイクも何回も重ねるっていうよりは、せいぜい数回くらいで。私たちにとっては完璧さよりも、その瞬間に生まれる感じのほうが大事なんだよね。それがあることで、ちょっとした愛嬌とか、自然な感じが出ると思うし。これまでにも、最初はミスだと思ってたものが、たとえばキーがずれてたりしても、あとから曲の大事な要素になったことが何度もあって。たとえば “Baby Parakeet” のローガンのソロとかもそうだったよね。最初に狙ってたものとは違うことが起きて、それがむしろそっちのほうがいいって気づくこともある。やっぱり「その場で生まれる感じ(=spontaneity)」っていうのは、私たちにとってすごく大きいと思う。

「伝統的なサンバを電子的に再現したらどうなるか?」っていう発想からはじまって。それでAセクションはそういうサンバになってて、Bセクションがダブステップになるっていう(笑)。(ローガン)

曲を聴いていると「ふざけているようで緻密」「軽やかで攻撃的」という相反する要素が同居しています。このバランス感覚はどのように養われたのでしょうか?

L:いい質問だね。正直に言うと……ニコールはまた違う答えかもしれないけど、このプロジェクトに限らず、僕は曲を書いてるときは、あんまり考えないようにしてるんだよね(笑)。実際、起きてることの多くはちょっと無意識に近いし、そういうふうに言葉にしてもらえるのはすごく面白い。自分としては、とにかくエネルギーに任せて進めてる感覚が強いかな。僕たちはその場で何が楽しいかとか、演奏してて楽しいものは何かっていうのを探りながらやってることが多くて、あと、どんな楽しいテーマを広げていけるかも大事にしてる。だから曲名も「Minuscule Minnow(ちび魚)」とか「Baby Parakeet(ひなインコ)」みたいに、かわいい動物系のタイトルが多いんだと思う。結果的にああいうサウンドになるのも、わりと偶然の積み重ねっていう感じかな。ニコールはどう思う?

N:私たちは、速いテンポが好きなのよ。

L:そう、やっぱり「楽しい」っていう感覚は大事だし、速いテンポもすごく好き。で、速いテンポをちゃんと演奏するには、むしろ軽やかさが必要になることが多いんだよね。だから攻撃的に聴こえる部分も、テクニックの一部がそのまま作曲に反映されてる、みたいなところがあると思う。

N:うん、それか単純にふたりのアイデアが混ざってるだけのときもあるよね。“Minuscule Minnow” だと、私はボサノヴァをやりたくて、ローガンはドラムンベースをやりたかったんだよね?

L:そうそう、ドラムンベース。

N:だからその両方のセクションを入れてみたら、すごくかわいい部分と、すごくコントラストの強い部分が並ぶ形になって。そうやってお互いのアイデアを持ち寄って、どうなるか試してみる、っていう感じかな。

ユーモアを表現する際、どの程度まで意識的におこなっていますか? 結果的に面白くなってしまう感じなのでしょうか?

N:自然に出てきてるものだと思う。私たち、普段からずっとふざけ合ってるし、よく冗談言ったり、変なシナリオで妄想したりしてるから。このプロジェクト自体も、「とにかくいちばんクレイジーなこと考えてみよう」とか、「いちばん面白い言葉って何だろう」みたいなところからはじまることが多くて。それを「いや、これはちょっとバカっぽいかな」ってボツにするんじゃなくて、そのまま追求するんだよね。すごく……なんて言えばいいんだろう、ほんとにそのまま突き進む感じっていうか。

L:ひとつのアイデアにちゃんと乗っかって、そこから広げていく感じだよね。新しいアルバムの中に “Dolphin Samba” って曲があるんだけど、それは「伝統的なサンバを電子的に再現したらどうなるか?」っていう発想からはじまって。それでAセクションはそういうサンバになってて、Bセクションがダブステップになるっていう(笑)。

通訳:いいですね(笑)

L:そんな感じで、そのアイデアをそのまま押し広げていったらできた曲で、アルバムのなかでもかなり気に入ってる一曲なんだ。

N:プロモーションとかヴィジュアルも同じで、イルカのイメージも含めて、「やってて楽しそうなアイデア」をそのまま形にしてる感じ。自分たちの想像の断片をそのまま現実にしていってる、みたいな感覚だと思う。

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私たち、いろんなドラマーと一緒にやってるでしょ。ルイス・コールとか、ジャスティン・ブラウンとか、ロニー・カスピとか。でも、じつは一度もリハーサルしたことないんだよね。(ニコール)

サウンドのなかには、機械が誤作動するような滑稽さと人間の手触りが奇妙に混ざり合っています。デジタル機材と「笑い」との関係性についてはどう思いますか?

L:これもすごくいい質問だね。僕たちがかなり意識的にやっている手法のひとつが、「本物とフェイクの混ぜ方」なんだよね。ここではあえて電子楽器のことを「フェイク」と言わせてもらうけど。たとえば、電子ドラムと生ドラムを重ねたりとか。あとはニコールのサックスも、実際に吹いている音に、いわゆる「偽物のサックス」を重ねてることがよくある。そういう意味で、音楽のなかにすでに組み込まれてるんだと思う。このちょっと滑稽な二重性というか。たとえば今回のアルバムには、世界最高峰のドラマーのひとりであるルイス・コールが参加してるんだけど、その演奏と、僕がゴミ箱で見つけたカシオのキーボードに入ってたドラムマシンが一緒に鳴ってたりする(笑)。そういうことがアルバムのあちこちで起きていて、すごくハイファイなものとローファイなものが同時に存在している感じが好きなんだよね。すごく美しいし、確かにちょっとおかしみもあると思う。

通訳:なるほど。いつも聴きながら、どこまでがデジタルでどこからが生なのかを考えちゃうんですよね。それも楽しさのひとつだと思います。

L:まさにそうだね。

N:私も、いままさにそれを言おうとしてた。何が起きてるのかを探ること自体が、ユーモアの一部になってる気がする。これって本物なの? それともフェイク? っていうところで、結構いろんな人をいい意味でだませると思う(笑)。

通訳:そういう意味でも、実際のライヴがどんなふうになるのかすごく楽しみです。

ドルフィン・ハイパースペースの音楽には即興による奔放さと秩序が同居しています。その背景にあるコンポジションのルールや、音楽で遊ぶための手法について教えてください。

N:私たちの曲って、基本的な骨組みはけっこうシンプルで、メロディがあって、ブリッジとかBセクションがあって、あとはソロのパートがある、みたいな感じ。で、実際に「起きること」としてわかっているのは、だいたいそこまで。そういうパーツを組み合わせて曲にして、そのフォルムをベースにライヴでも演奏するんだけど、その間に起きることはかなり自由で、解釈も変えられるし、毎回違ってくる。

L:そうだね。ステージに上がる前に、コンパクトな構成はちゃんと作ってあるんだけど、その限られた時間のなかで即興として「物語をどう作るか」っていうのが課題になる。だから構成自体には無駄な余白がほとんどなくて、その分、その瞬間ごとの判断がすごく重要になってくる。限られた時間のなかで、どうにかしていいところにたどり着く、みたいな感覚かな。

N:あと、トリビアなんだけど、私たち、いろんなドラマーと一緒にやってるでしょ。ルイス・コールとか、ジャスティン・ブラウンとか、ロニー・カスピとか。でも、じつは一度もリハーサルしたことないんだよね。

通訳:しないんですか?

N:うん。自分で準備してきてもらって、そのまま自由にやってもらうの。その人の個性をそのまま出してほしいから、こっちから細かく指示する必要はないと思ってる。

L:何も指示は出さないね。

N:何も出さない。

N:そのほうが毎回違って面白いし。ちょっと変わったやり方だよね(笑)。でも、うまくいってる。

笑いとユーモアのセンスの源はなんでしょう? 音楽以外にも本や映画、オモチャ、コミックやアニメ、動物や魚、食べ物など。

L:いいね、この質問。ニコールと僕はけっこう趣味は違うんだけど、ひとつ面白いポイントとして言えるのは、同じ時代のテレビを観て育ったっていうのがあって、すごく好きだったのが『アドベンチャー・タイム』なんだよね。で、じつは最近、その監督のために音楽を書く機会があったんだ。監督はペンドルトン・ウォードっていう人で、その人の新作が最近Adult Swim で放送されていて、僕たちの音楽が番組で使われてるんだよ。もともとは、L.A.で僕たちのライヴを観に来てくれて、そのあと Bandcamp で僕たちを見つけてメールをくれて、それがきっかけで実現したんだ。だから、自分たちに影響を与えてくれたものに関われたっていう意味でも、ちょっと特別な出来事だった。あとは僕は『ポケモン』とか任天堂のゲームが大好きで、そういうものからの影響も大きいかな。ニコールとも『マリオカート』はよくやるよね。

N:『マリオカート』、楽しいよね。ユーモアについては……どうだろう。小さい頃にお母さんと一緒にすごくコメディ映画を観てたのが大きいかも。ウィル・フェレルが大好きで(笑)。ほんとに大好きなの。

通訳:いいですよね、彼。

N:動物に関しては、宮崎駿の映画がすごく好き。ああいう、かわいい動物の感覚は、そこから来てる気がする。あとはインターネットのユーモアもけっこう影響してると思う。

動物に関しては、宮崎駿の映画がすごく好き。ああいう、かわいい動物の感覚は、そこから来てる気がする。(ニコール)

あなたたちの音楽にはチップチューンの要素を感じますが、日本のゲームからの影響はありますか? ローガンは『マリオカート』が好きだとおっしゃっていましたが、他にもあれば教えてください。

L:間違いなく影響はあると思う。ああいう音にはかなり影響を受けてるね。ただ、どっちかというといまというより、子どもの頃の体験のほうが大きいかな。最初に遊んだゲームボーイの音楽が、いまでも頭のどこかに残ってる感じがあるんだよね。ちょっと面白いんだけど、このバンドに限らず、他のプロジェクトでも「ゲーム音楽っぽい」ってよく言われるんだ。でもそれって意図してやってるわけじゃなくて。自分にとっては、ああいう形で表現するのがすごく自然なんだと思う。

LAのシーンについて。どんなアーティストと交流がありますか? 刺激や影響を受けているLAのアーティストについても教えてください。

N:ほんとにありがたいことに、自分たちにとってのヒーローみたいな人たちと一緒に演奏する機会があって。ルイス・コールとか。ノウワーはすごく大きなインスピレーションだし、サンダーキャットもそう。あとドミ&JD・ベックもそうだし、そのあたりのシーンの人たちからはかなり影響を受けてると思う。ジェイコブ・マンも大好きだし。 

L:そうだね。あと、サンダーキャットが僕たちのライヴに何度か来てくれたこともあって、それは本当に光栄だった。自分はベーシストだから、なおさら特別な経験だったね。それって、彼のツアー・ドラマーでもあるジャスティン・ブラウンと一緒にやってることとも関係してると思う。ジャスティンも僕たちにとってすごく大きな存在で、本当に素晴らしいドラマーだし、いろんな重要なプロジェクトに関わってきてる人なんだ。L.A.に住んでるしね。個人的には、デイヴィッド・ビニーっていう、自分にとってメンターみたいな存在のミュージシャンにもすごく影響を受けてる。彼もロサンゼルスにいて、本当に素晴らしいプレイヤーなんだ。シーン全体で言えば、若い世代でもすごいことをやってる人が本当にたくさんいて……たとえばダコタ とか。ダコタの音楽はすごく好きだね。あと……

N:バッド・スナックスとか?

L:そうそう、バッド・スナックス。プロデューサーでもあるアーティストで、今回のアルバムにも参加してくれてる。それと、フレシア・ベルマーっていうアーティストもすごく好きだね。演奏も音楽も素晴らしいし、プロダクションの面でも面白いことをやってるベーシストなんだ。

新作アルバム『ECHOLOCATION』にまつわるエピソードがあれば教えてください。ツアーやライヴ、スタジオで起こった印象的な出来事は?

L:インストゥルメンタルの音楽って、すごく抽象的な物語を語れると思うんだよね。このアルバムもかなり抽象的なストーリーなんだけど、最初の “Vacation” からはじまって、まるで完璧な天気のビーチで目を覚ますようなイメージなんだ。今日はきっと最高の一日になる、みたいな。そこからだんだん、その日に起こるいろんな出来事に巻き込まれていく感じで、波がざわつき始めたり、天気が崩れたり戻ったり、ちょっとした混乱が起きたりしていく。でもアルバムの最後、“Memories of the Deep Blue Sea” にたどり着く頃には、また静けさを取り戻している。だから全体としては、何か問題に直面して、それを乗り越えていく「英雄の旅路」みたいな古典的な物語構造になっているんだけど、それをドルフィン的な世界観でやっている、という感じかな。

N:それに “Kyoto” っていうシングルもあって、これは去年の日本旅行からインスパイアされた曲。日本に行くのがすごく好きで、去年も今年もプライベートで行ってるくらい。私たちにとっては本当に大好きな場所で、日本のカルチャーとか音楽、アート、アニメーションからもすごく影響を受けてる。それもこのアルバムの大きな要素になってると思う。それに今回、〈P-Vine〉と一緒に日本盤をリリースできたのもすごく嬉しい。私たちにとって特別なことなの。

通訳:美意識的にもすごくキッチュでポップですよね。日本人にすごく響くと思います。かわいい文化というか。

N:そうだね、もしかしたらアメリカよりも日本のほうが、この感じを理解してくれるかもしれない(笑)。

バンドの名称にある「DOLPHIN」や「HYPERSPACE」という言葉には、どんなイメージを託していますか? 

N:私たちがやってることをすごくよく表してる言葉だと思う。まず「ドルフィン」は、かわいい動物っていう要素があって、「ハイパースペース」はもっとクレイジーで、別次元みたいなイメージ。で、そのふたつが合わさってる。かわいさと、ちょっとぶっ飛んだ感じ。その両方をくっつけたものが、私たちっていう感じかな(笑)。

L:イルカって本当にすごい生き物で、ものすごく知能が高いし、あまりちゃんと考えたことはなかったけど、もし楽器を持てたとしたら、ジャズを演奏できるんじゃないかって思うんだよね。それくらい知的で、スキルもあって、動きも速いから。だから、なんていうか……自分たちが目指してるものの、いい例えになってる気がする。

イルカって本当にすごい生き物で、ものすごく知能が高いし、あまりちゃんと考えたことはなかったけど、もし楽器を持てたとしたら、ジャズを演奏できるんじゃないかって思うんだよね。(ローガン)

アルバム・タイトルの『ECHOLOCATION』は、イルカが超音波で周囲の状況を知る能力ですよね。そもそもなぜイルカ?

L:「エコーロケーション」っていう言葉自体が、僕たちにとってすごく面白いテーマだったんだよね。まず「エコー」っていうのは、それだけで昔から使われてきたオーディオ・エフェクトでもあるし、自然のなかでも普通に存在している音(こだま・やまびこなど)でもある。それで調べてみたら、エコーロケーションって「生体ソナー(=biological sonar)」の一種だって説明されていて、それがすごくしっくりきたんだ。自分にとって音楽も似たようなものに感じていて、身体を使って楽器を演奏して、何かを外に向けて発信すると、それに対する反応がオーディエンスから返ってくる。そのやり取りが、どこかエコーロケーションみたいだなって思えて。だからすごく意味のある言葉に感じたんだ。

N:完璧に答えたね。あと、アルバム・タイトルとしては、ここ最近ずっと水っぽいテーマを続けていこうとしていて。“What Is My Porpoise?(わたしの目的ってなに?)” っていう作品もあったし、そこからそういう流れができてきた感じ。それに「エコー」っていう言葉自体もぴったりで、去年ロサンゼルスの The Echo っていう会場でライヴをやっていて、今年の5月にもそこでリリース公演をやる予定だから、そういう意味でもすごくしっくりきたタイトルなんだ。

楽曲のタイトルからはいろんな物語を想像します。インストゥルメンタルなので歌詞はないけど、あなたたちのなかではどんなストーリーがあるのでしょうか? また、ストーリーはどんなふうに思いつくのですか?

L:さっき話したみたいに、その場の思いつきから生まれてくることが多いかな。それをあまり疑わずに、そのままやりきるようにしてる。でもひとつ具体的に思い浮かぶのは、“Big Fishy” っていう曲。このタイトルには自分のなかでいくつか意味があるんだ。ひとつは、みんな知ってると思うけど、イルカってじつは魚じゃなくて哺乳類なんだよね。でも、もしそれを知らなかったら、ただの「大きな魚 (big fishy)」だと思うはず(笑)。ちょっとバカっぽいけど、それがひとつの意味。もうひとつは、僕たちにとってイルカってすごく大きな生き物に感じるけど、広い海のなかではきっとすごく小さな存在なんじゃないかっていう感覚。そういう意味も含まれてる。

N:え、そんなふうに思ってたんだ(笑)。初めて聞いた。どれもすごくいいね!

あなたたちの音楽を聴いていたら、ある人のことを思い出しました。日本には「さかなクン」というユニークなタレントがいるんです。魚類学者で大学の客員教授でイラストレーター。 テレビ番組で子供たちに大人気です。さかなクンは “コイシテイルカ” というイルカの歌を発表しています(https://www.youtube.com/watch?v=_clLCiPhy5k)。彼はサックス奏者でもあって、アルトサックスとバスサックス、バスクラリネットを吹きます。

L:ちょっと待って、その人のことメモってる(笑)。

通訳:このYouTubeリンクを、チャットで送りますね。

N:ぜひ! その人のこと知りたい。

通訳:いまZoomのチャットに送りました。これがイルカの曲です。ぜひチェックしてみてください。こちらからは以上です。今日は本当にありがとうございました。お話できてすごく楽しかったです。

L:ひとつお願いしてもいいかな。質問者さんが最後にメッセージを残してくれていたから、こちらからも何か伝えることってできるかな?

通訳:もちろんです。きっと喜ぶと思います。

L:じゃあ……まずは、細部までしっかり読み込んでくれて、本当に素晴らしい質問をしてくれたことに感謝したいです。こういうテーマについて本を書いてきた方に答えるというのは、自分たちにとっても特別な意味があります。今回のインタヴューは本当に印象に残るものでした。ありがとうございます。

N:うん、本当に。どの質問もすごく丁寧で、ちゃんと私たちのやっていることやメッセージを受け取ってくれている感じがして、とても嬉しかった。

通訳:きっと喜ぶと思います。ありがとうございます。日本でのライヴも本当に楽しみにしていますね!

L&N:私たちもすごく楽しみ。ありがとう! またねー!


Raja Kirik - ele-king

 インドネシアは、1万7000もの島々から成る、信じがたい構成を持つ国家である。国民性によって統合されてはいるが、静謐なヒンドゥーのバリから、イスラム教徒が多数派を占める過密な大都市ジャカルタ、そしてそのあいだに点在する数多くの驚くべき都市や島々、地域に至るまで、風習や宗教などは極めて多様で独特だ。そこでは、世界中の現在進行形、あるいはかつてのアンダーグラウンド・ムーヴメント(レイヴ、デスメタル、パンクなど)が熱狂的なファンを見出してきた。その結果、ジャンルに対する偏見がほとんどない状態で、多くのユニークなバンドが芽吹き、独自のユニットへと進化を遂げてきた。とくにここ10年ほどの動きは顕著だ。
 レジェンドである「Senyawa(セニャワ)」の名は頻繁に口にされるが、その輝きは「Kuntari(クンタリ)」や「Raja Kirik(ラジャ・キリック)」といった他のバンドとも等しく共有されるべきものだ。ラジャ・キリックは、インドネシアのアンダーグラウンド・シーンを支える中心的なレーベルのひとつ〈YES NO WAVE〉から最新作『Sengkala』をリリースしたばかり。彼らのリリースの大半は同レーベルから出されているが、2021年にウガンダのプログレッシヴなレーベル〈Nyege Nyege Tapes〉から発表した『Rampokan』は、彼らにより大きなプラットフォームと人気をもたらした。その後、2023年にはふたたび〈YES NO WAVE〉からより実験的な録音物『Phantasmagoria of Jathilan』をリリースしているが、2021年に多くの人びとを魅了したあの魔法をさらに発展させたのは、まさに今作。
 『Sengkala』でこのデュオは、レイヴ・ビートに、インドネシアの伝統的なガムランを想起させる金属音や自作楽器の響きをミックスした、いまや彼らのトレードマークとなったサウンドという馴染み深い領域に踏み込んでいる。そこで聴こえる音は、実際にはインドネシア現地のフルートを使用しているにもかかわらず、オーストラリアのディジュリドゥのような響きを想起させる。彼らが作る音のなかには、たしかに伝統的なメロディやビートのパターンを模しているものもあるかもしれない。しかし、それらの音を生み出すために彼らが選んだ手法は、彼らの唯一無二の道筋を物語っている。
 実質的にわずかふたりのミュージシャンによって作られるそのサウンドは、フォーカスと強度の面で、熱狂的なジャム・バンドと大差ないものだ。その響きは、以前にも増して、アルバムのジャケットを飾る森のように濃密である。ラジャ・キリックが驚くべきは、非常にシンプルなビートを、まるで巨大で唸り声を上げる木を抱きしめているかのような感覚を与えるほどのディテールで埋め尽くしている点だ。 “Kala Sengkala ” というトラックは、このキャラクターの氾濫を確認するのに最適だ。DJたちも、自分たちのセットをこれほどまでに面白くできればいいのにと思わされる。
 ダンスと実験音楽のあいだに位置するインドネシアのアンダーグラウンドの一部は、ガムランの影響にガバやバウンス・ミュージックのタッチを加えた、その中間を漂うようなビートを採用することが多い。それはしばしば強烈な疾走感を伴い、全員を汗だくにするような高揚感に満ちている。ラジャ・キリックの魔法のような側面のひとつは、決して曲を投げ出さない(急いで終わらせない)という意志だ。たとえば “Tangis Bumi” のような曲のダンス・パートを3分以上持続させることにまったく抵抗がなく、レコード上であってもそのビートを徹底的に楽しむことができる。
 日常生活において、都市のビルやアパートは、私たちが無視することを覚えた細部の平凡さゆえに、退屈なものになりがちだ。それとは正反対の体験が、東アジアや東南アジアの寺院、神社、あるいはモスクにある。そこでは神聖さが、細部を極限まで突き詰めることによって表現されている。ラジャ・キリックも同じ哲学を共有しており、どんなに中毒性のあるダンス・ビートであっても、最後のダウンビートに至るまで、タペストリーのように華麗で魅惑的なディテールを添えることなしに、ビートを単体で放置することはない。
 彼らの催眠的な手法は、儀式に近い。枝が茂り、閉所恐怖症的で、警鐘を鳴らすような霧に包まれたメロディの実験やノイズのなかにさえ、天へと届こうとする連打、ベース、金属音が存在する。その強烈さについては “Gunung. Into the Fold of Southern Mountain ” をチェックしてほしい。ラジャ・キリックは普通のダンス・バンドになどなりたくないのだ。それは明白であるべきだし、それゆえに一部の人びとを遠ざけるかもしれない。非常に残念なことだが。しかし、ホルン、金属の擦れる音、フルートのさえずりや唸り、カット&ペーストされたノイズの火花を徹底的にコラージュし、USBに依存するCDJからではなく、実際の人間から発せられるダンス・リズムの上に広げた先に現れるのは、至福の境地(エリジウム)である。
 
 少なくとも東京では、ジャム・バンドは化石産業のようになってしまい、DJとバンドが等しく求められ人気を博していた20年前のようには求められなくなっている。しかしインドネシアには、発明的な音楽創造の火花がいまもなお散っている。このアルバムが音楽に果たした記念碑的な貢献について詩的に語る一方で、その音楽の源流にある哲学を看過したくはない。あの森のように濃密なジャケットを思い出してほしい。もしこの音楽に土着的、あるいは大地のような響きを感じるとすれば、それはラジャ・キリックが植民地主義と土地所有の負の遺産に強く取り憑かれているからだ。
 インドネシア人がそれを直接語るか否かにかかわらず、オランダによる植民地支配の遺産とその余波は彼らの意識に深く刻み込まれており、通奏低音として留意されるべきである。各トラックのビートを包み込むあの濃密さは、奪われ、転用された土地の根源から来ている。かつて誰がその土地を所有し、耕したのかを大地は覚えている。その栄養分からどんな食べ物が生まれたのか、そしてそれらすべての音が何であり得たのか。『Sengkala』はそれらの記憶やトラウマを描き出し、それらに声を与えると同時に、生存と再生を称えているのだ。
 記憶としての音、そして「ウィットネシング(証人となること)」としての音。
(※この「witnessing」という言葉は、他者の痛みや喜びを認め、分かち合うという、アフリカ系アメリカ人のキリスト教的信仰に基づいている)

world's end girlfriend - ele-king

 この6月、EXシアター六本木にて『抵抗と祝福の夜 2026』を控えるworld's end girlfriendがニュー・シングル「Angelus Novus(新しい天使)」を発表するする。バンドキャンプでは無料or投げ銭形式で、5月8日リリース。Ngatariのヴォーカル、Jessicaとトラックメイカー Fellsiusがゲストとして参加、アートワークは山田 優 アントニが担当している。なおこの曲は「戦地に降りた天使の歌」というのがテーマだそうで、クレーでもベンヤミンでもないとのこと。サブスクはこちらからバンドキャンプはこちらから

天使とは、
誕生を告げる。
破局を告げる。
運命を宣言する。
世界を書き換える時の声。
では新しい天使とは?

MUSIC & LYRICS : world's end girlfriend
Vocal : Jessica
Beat Programming : Fellsius & world's end girlfriend

SIMI LAB - ele-king

 その独創的な音楽性で2010年代日本のヒップホップ史に小さくはない足跡を残したSIMI LAB。その記念すべきファースト・アルバム『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』(2011)と、飛躍を遂げたセカンド・アルバム『Page 2 : Mind Over Matter』(2014)が初めてアナログ化されることになった。どちらも歌詞カード・オビ付きの2枚組。完全限定プレスなので、お早めに。

SIMI LAB(シミラボ)が2011年にリリースした名盤1st『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』と2014年にリリースした傑作2nd『Page 2 : Mind Over Matter』が帯付き2枚組仕様/完全限定プレスで待望の初アナログ化!

2009年に神奈川県相模原で結成し、初レコーディング曲“Walk Man”のMV公開によってその存在が広まったHIP HOPグループ、その後QN、Earth No Mad(QN)、DyyPRIDEらメンバーの各ソロ作品のリリースを経て、SIMI LABがグループとして2011年に満を持してリリースした記念すべき1stアルバム『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』。その1stアルバム以降、メンバーの脱退や新規加入などを経て2014年にリリースした傑作2ndアルバム『Page 2 : Mind Over Matter』。日本のヒップホップ・シーンのみならず広く音楽シーンの歴史にも大きな爪跡を残したこの2作品が帯付き2枚組仕様/完全限定プレスで待望の初アナログ化!
客演、外部プロデューサーなし。彼等にしか出来ない音楽を、彼等にしかできないやり方で構築した純度100%のデビューアルバム『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』はリリース直後から話題となり、今では名盤としてシーン内外で広く認知されている作品。グループの代表曲である“Uncommon”や“Show Off”を収録!その『Page 1 : ANATOMY OF INSANE』リリース以降、ヒップホップだけでなくロックやジャズ・シーンといった多方面での客演、活発なソロ作品のリリース、フェスへの出演など精力的な活動を続けていたSIMI LABがメンバーの脱退、DJ ZAIとRIKKIの新規加入などを経て、約2年強の時を経て再び結集した傑作2ndアルバム『Page 2 : Mind Over Matter』。OMSB/WAH NAH MICHEALやHi’Spec、MUJO情が先鋭的なトラックを手掛け、個性的なMC達に加え、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔がサックスで参加。グループの代表曲である“Avengers”を収録!
両作品ともカバーアートワークは同じくSIMI LABのメンバーとしても活動するMA1LLが担当している。

<「Page 1 : ANATOMY OF INSANE」概要>
アーティスト:SIMI LAB
タイトル:Page 1 : ANATOMY OF INSANE
レーベル:SUMMIT / P-VINE, Inc.
仕様:LP (歌詞カード・帯付き2枚組仕様/完全限定プレス)
発売日:2026年7月15日(水)
品番:SMMT-264
定価:6,930円(税抜6,300円)
*Stream/Download/Purchase
*P-VINE SHOPにて予約受付中!

<トラックリスト>
SIDE A
1. Intro Anatomy Of Insane
2. Show Off
3. Natural Born
4. Uncommon
SIDE B
1. Twisted
2. The Blues
3. That’s What You Think
SIDE C
1. Red Bull / How Are You
2. Get Drowned
3. Moonbeam
SIDE D
1. Brave New World
2. Light / Spot Light

<「Page 2 : Mind Over Matter」概要>
アーティスト:SIMI LAB
タイトル:Page 2 : Mind Over Matter
レーベル:SUMMIT / P-VINE, Inc.
仕様:LP (歌詞カード・帯付き2枚組仕様/完全限定プレス)
発売日:2026年7月15日(水)
品番:SMMT-265
定価:6,930円(税抜6,300円)
*Stream/Download/Purchase
*P-VINE SHOPにて予約受付中!

<トラックリスト>
SIDE A
1. Intro Mind Over Matter
2. Avengers
3. Dawn
4. Oasis
5. Karma
SIDE B
1. $$$$$
2. Kommunicator
3. Circle
4. Mind Over Matter
SIDE C
1. Worth Life
2. Player
3. Street
4. Yawn
SIDE D
1. Roots
2. Come To The Throne
3. We Just (Album Ver.)

4月のジャズ - ele-king

Nat Birchall
Path of Enlightenment

Ancient Archive of Sound

 昨年はジャマイカ音楽のスカにフォーカスした『Liberated Sounds』というアルバムをリリースしたサックス奏者のナット・バーチャルだが、ここ数年はレゲエやダブに傾倒した作品リリースが目立っていた。一方で、ナット・バーチャル・ユニティ・アンサンブルとして『Spiritual Progressions』(2022年)や『New World』(2024年)をリリースし、これらはモード・ジャズ、スピリチュアル・ジャズのアルバムとなっていた。2020年代を振り返っても、古代アフリカへの回帰をテーマとした『Ancient Africa』(2021年)、アフリカ色を強めていた頃のジョン・コルトレーンを彷彿とさせる『Afro Trane』(2022年)、その続編でファラオ・サンダースにも捧げた『Songs Of The Ancestors - Afro Trane Chapter 2 -』(2023年)、モーダルで美しい『The Infinite』(2023年)などをリリースしていて、これが従来の彼のスタイルと言える。このたびの新作『Path of Enlightenment』も、そうしたモード~スピリチュアル・ジャズ路線の作品。ナット・バーチャル・ユニティ・アンサンブルはじめ、これまで数々の作品で演奏してきたアダム・フェアホール(ピアノ)、マイケル・バードン(ベース)、ポール・ヘッション(ドラムス)という久しぶりのカルテット編成で、彼がもっとも信頼する面々との録音である。

 ナット・バーチャルが敬愛するジョン・コルトレーンやファラオ・サンダースは、アラビアやインドなどの音階を用いたモード奏法のパイオニアだが、『Path of Enlightenment』はそうしたエキゾティックなモードに則った作品集となっている。“Red, Gold & Green” はエチオピアの国旗に用いられる3つの色を示していて、それはラスタファリのシンボル・カラーでもある。ナットにとって重要な意味を持つ3色でもあるのだが、この楽曲においてはエチオピアの音階を基に作曲がおこなわれている。“Amenhotep” は古代エジプトのファラオ(王)の名を由来とする。過去にもファラオのアクエンアテン4世の名を示す “Akhenaten” という曲を書いたナットだが、“Amenhotep” はそのアクエンアテン4世の本名でもあり、同じ5/4拍子の作品となっている。ズールー語で美しい贈り物を意味する “Sphesihle” などアフリカ色の濃い作品の一方、“Menat” はビザンチン音階のアラビックなモードに基づき、タイトル曲の “Path of Enlightenment” はエキゾティック・モードの定番的なフリギア旋法を用いている。こうしたモード演奏はこれまでもいろいろおこなってきたナットであるが、改めて深く踏み込んで探求したアルバムが『Path of Enlightenment』と言える。


Work Money Death
A Portal To Here

ATA

 ワーク・マネー・デスはUKのリーズを拠点とするグループで、ザ・ソーサラーズ、ザ・ルイス・エキスプレスなど同じリーズのグループや、アダム・フェアホールなどナット・バーチャルのバンド・メンバーなどが集まって流動的に構成される。サックス奏者のトニー・バーキルが中心人物で、バンド名も彼のソロ・アルバムのタイトルから命名された。ファラオ・サンダースやアリス・コルトレーンなどにインスパイアされた音楽性を持ち、2021年のデビューから2024年まで3枚のアルバムをリリースしている。バンド・メンバーであり、ナイトメアズ・オン・ワックス、コリーヌ・ベイリー・レイ、ジミ・テナーなどの作品でも演奏してきたギタリストのクリス・ドーキンズが2025年に逝去し、その追悼の意を込めて最新作『A Portal To Here』は作られた。

 今回の録音にはマシュー・ハルソールの作品でお馴染みのハープ奏者のアリス・ロバーツが参加。そのアリス・ロバーツを通してアリス・コルトレーンの精神世界へフォーカスしていくと同時に、ヨークシャーを拠点とする木管・金管楽器隊のアンサンブルがサン・ラー・アーケストラのような空間を作り出す。ハンド・クラップを交えたパーカッシヴなリズムに導かれる “A Dance For The Spirits” は、ファラオ・サンダースの流れを汲むトニー・バーキルの荒々しいテナー・サックスの咆哮とともに、カルテット・トレ・ビアンのようなダンス・ジャズとしての要素も兼ね備えた作品。“Brother Earl” もハンド・クラップがシンクロしたリズムを持ち、こちらはファラオ・サンダースの祝祭的な影響が見られる。


Irreversible Entanglements
Future Present Past

Impulse!

 詩人のムーア・マザーことカマエ・アイワ、サックス奏者のキーア・ノイリンガー、ベーシストのルーク・スチュワート、ドラマーのチェスター・ホームズ、トランペット奏者のアキレス・ナヴァーロによるイレヴァーシブル・エンタングルメンツ。ニューヨーク・アート・カルテット、アート・アンサンブル・オブ・シカゴ、サン・ラー・アーケストラなどとも比較される現代のフリー・ジャズ集団で、ムーア・マザーのポエトリー・リーディングを配したパフォーマンスや思想はラスト・ポエッツに重なるところもある。シカゴの〈インターナショナル・アンセム〉を拠点に、『Who Sent You? 』(2020年)や『Open The Gates』(2021年)などでは混沌としてノイジーな演奏、スポンテニアスでフリーフォームな楽曲、怒りや恐怖といった感情や闘争のアジテーションを滲ませたムーア・マザーのポエトリー・リーディングが印象的だった。2023年には〈インパルス〉へ移籍して『Protect Your Light』をリリースしたが、収録曲の “Free Love” はある意味で聴きやすいスピリチュアル・ジャズと整理され、これまでとは異なる部分も感じさせるものだった。もちろん、アルバム全体ではそれまでの前衛的で実験的な姿勢は保ちつつ、“Free Love”やゴスペルの影響が見られる “Protect Your Light” はイレヴァーシブル・エンタングルメンツの新たな方向性を見せる楽曲だった。

 〈インパルス〉からの2作目となる『Future Present Past』は、中南米のラテン・リズムに彩られた “Panamanian Fight Song”、アフロ・キューバン・リズムに乗せた “Don’t Lose Your Head” や “We Know” など、これまでになくアフロ・ラテンの色彩が強い。 スポークンワードとフリー・ジャズやスピリチュアル・ジャズの融合では、デトロイトのジャズ・ドラマーのロイ・ブルックス率いるアーティスティック・トゥルースによる『Ethnic Expressions』(1973年)という伝説的な作品があるのだが、“Don’t Lose Your Head” からはそれに似た熱気を感じる。ヴードゥーの儀式のような “Juntos Vencemos” や、ムビラのような音色が瞑想的な “The Spirit Moves” も原初的なアフリカ音楽への回帰が見られ、音楽的には『Protect Your Light』以上に聴きやすく、シンプルに整理されたものとなっている。思い出すのはサン・ラー・アーケストラのドラマーで、カール・クレイグのインナーゾーン・オーケストラやデトロイト・エクスペリメントにも参加したフランシスコ・モラ・キャトレット。彼はメキシコ系だが、ソロ・アルバムではアフロ・ラテンの色合いが存分に出ており、それに近いテイストを 『Future Present Past』から感じる。


Dave Stapleton
Quiet Fire

Edition

 デイヴ・ステープルトンはもともとクラシックを学び、カーディフの音楽大学でキース・ティペットからジャズを学んだピアニスト/作曲家。ドラマーのエリオット・ベネットとクインテットを編成する一方、女性シンガーを交えたスロウリー・ローリング・カメラを結成するなどいろいろな活動をおこなっている。ミュージシャンと同時に〈エディション・レコーズ〉も運営し、キース・ティペット、ノーマ・ウィンストンなど英国ジャズ界の大御所から最新の現代英国ジャズ、そして北欧のアーティストの紹介まで幅広い活動をおこなっている。2000年代半ばよりソロ・アルバムもいくつかリリースしているが、2012年の『Flight』ではストリングスを交え、クラシックの素養のある彼ならではの重厚な現代ジャズを披露していた。それからしばらくソロ・アルバムはなかったが、このたび久しぶりの新作『Quiet Fire』がリリースされた。

 今回は『Flight』やほかのアルバムなどのスコア重視のプロセスではなく、ビートを中心とした作曲、ループをベースとした構成となっている。演奏家というよりも、プロデューサーとしての立ち位置に重きを置くものだ。自身はアコースティックなピアノではなくローズとシンセを演奏し、メンバーは盟友のエリオット・ベネット(ドラムス)ほか、スロウリー・ローリング・カメラのヴィクトリア・ステープルトン(ヴァイオリン)、〈エディション〉でも作品をリリースするスチュアート・マッカラム(ギター)、ノルウェーの巨匠ニルス・ペッター・モルヴェル(トランペット)などが参加。オルガ・アメルチェンコのアルト・サックスをフィーチャーした “Music For Evolution” は、ブロークンビーツ的なビートの未来派ジャズ。かつて2000年代にニルス・ペッター・モルヴェルやブッゲ・ウェッセルトフトなどの北欧勢、そしてウェスト・ロンドン勢の一部はフューチャー・ジャズと紹介されていたことがあるが、それに近い雰囲気を感じさせる作品だ。“Recall” はヒップホップ調のビートから倍速のジャズ・ファンクへと推移するビート・ミュージック的な作品で、ニルス・ペッター・モルヴェルをフィーチャーした “What Next” もヒップホップとジャズが融合したような作品。カマール・ウィリアムズユセフ・デイズなどサウス・ロンドン勢にシンクロする部分を感じさせる作品だ。

Iration Steppas - ele-king

 ダブの流れは止まらない。もともとアイタル・ロッカーズとしてブリープ・ハウスをやっていたマーク・ミリントンが、90年代前半、デニス・ルーティカルとともにはじめたリーズのサウンドシステムがアイレーション・ステッパーズだ。現行UKサウンドシステム文化を代表する彼らが8年ぶりの来日を果たす。5月31日(日)は新宿Bridgeへ。

2026.5.31 (SUN) TOKYO
wOrld connection x
IRATION STEPPAS in Japan 2026

THE VANGUARD OF DUB “世界最高峰のサウンド”
サウンドシステム・カルチャーの大ボス 『IRATION STEPPAS』が 約8年ぶり待望の来日 !!

Line-up :
IRATION STEPPAS from UK
KURANAKA 1945 (Zettai-Mu)
PRIMAL DUB
1TA (Bim One Production, riddim Chango)
OG Militant B
CHIKI CHIKI RAMBO (Bungo / Ceriseboy / zenzenheiki)
DUB-HONJIN

at Shinjuku Bridge
TEL: 03-6384-1053
ADDRESS: 〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目19-9 角ビル B1
Kado bldg.B1F, 2-19-9,Shinjuku , Shinjuku-ku , Tokyo 160-0022 Japan
WEB SITE : https://djbar-bridge.com/shinjuku/schedule/world-connection-72/
ZETTAI-MU WEB SITE : https://www.zettai-mu.net/news/2605/irationsteppas

OPEN : 17:00 - 24:00
ADV. ¥2,000 / DOOR. ¥3,000 / U23. ¥1,000

▼前売りチケット購入はこちらから (Advance Tickets)
https://livepocket.jp/e/wc_iration-steppas


2026.5.29 (FRI) Hong Kong
Heavy Hongkong

Coming soon

@ The Fringe Club 藝穗會
ADDRESS: 2 Lower Albert Rd, Central, Hong Kong
WEB SITE : https://www.hkfringeclub.com
Heavy Hongkong INSTA : https://www.instagram.com/heavyhongkong


IRATION STEPPAS from UK
SUBDUB/Exodus/Outlook Festival

THE VANGUARD OF DUB “世界最高峰のサウンド”
サウンドシステム・カルチャーの大ボス 『IRATION STEPPAS』が 約8年ぶりの来日 !!

IRATION STEPPASは、イギリスで最も有名なダンスの一つ『SUBDUB』や MALA率いるDMZとの連携でも知られる『Exodus』のメイン・サウンドであり、世界最大級のベース・ミュージック&サウンドシステム・カルチャーの祭典『OUTLOOK FESTIVAL』のメイン・アクト。また『ROTOTOM SUNSPLASH - Dub Academy』をはじめ、世界中のレゲエ、ダブ、フェスティバルのヘッドライナーを務める世界をリードするサウンドシステムである。

Mark IrationとDennis Rooticalの運命的な出会い以来「Scud Missile」「Killamanjaro」のキラー・チューンをはじめ様々なレーベルから数多くのビッグ・チューンをリリース。
’24年には Iration Steppas x OBF のジョイントアルバム「REVELATION TIME」 をリリース。コロナ以降の世界的アンセムとしてヘヴィ-プレイされている。2022年にはその活動を追ったドキュメンタリー映画『INA VANGUARD STYLE』を公開

サウンドシステムの技術的な限界を押し広げ続け常に進化しながらトップの地位を維持する彼らの音楽は
O.B.F、Dubkasm、Sinai Sound、King Alphaなど、多くの新世代サウンドシステムやダブ・プロデューサーに影響を与え続けている
現在注目を集めているダブ・レゲエ・ベースミュージック界の中心的存在。
膨大なダブプレートやスペシャル音源を駆使した世界最強のステッパーズ・レエ・サウンド!!!

Iration Steppas Sound System is the foundation of the West Yorkshire underground bass music scene. Mark Iration and Dennis Rootikal met in the early 1990’s when sound system culture was changing and the music was evolving. This partnership led to the development of the most progressive style of reggae and dub, which has inspired a generation of new sound systems and dub producers such as O.B.F, King Alpha, Dubkasm and many more. It also left a mark on other genres, with many other big names taking influence from the front man Mark Iration. For the past 30 years Iration Steppas have pushed boundaries on sound system technology, continually improving to stay at the top of their game, and have collected possibly the widest plethora of dubplates and specials of any sound system. Mark (Iration Steppas) is an entertainer and provides an experience you will not find anywhere else and you will not want to miss.
Iration Steppas have built a proud discography with albums such as Original Dub D.A.T., Dubs from the High Regionz and Dub Arena - as well as many singles, and all are still bought in heavy numbers around the world.

dublab.jp - ele-king

 1999年にLAではじまった非営利のインターネット・ラジオ「dublab」は、地域に根ざしながらもいまでは世界じゅうにリスナーを抱え、音楽文化の伝道に邁進している。その日本支局にあたるのが「dublab.jp」だ。2013年の開局以来、定期的な配信以外にもさまざまな活動を繰り広げてきた同局が、このたびオフィシャル・サイトの全面リニューアルを発表した。オープンは4月24日(金)17時。より使いやすくなるだけでなく、新しいプログラムも続々と投入される模様。「dublab.jp」のネクスト・ステージに期待しよう。

LA発・世界屈指のネットラジオ「dublab」の日本ブランチ「dublab.jp」がサイトをフルリニューアル!
膨大なアーカイブとライブ配信がシームレスに。

〜新番組も続々スタート。ジャンルを超越する独自のプログラムを強化〜

LAを本拠地とするグローバル・インターネットラジオ・ネットワーク「dublab」の日本ブランチ、dublab.jpは、2026年4月24日(金)17:00 公式サイト(https://dublab.jp/)をフルリニューアルオープンいたします。

■ リニューアルの背景とコンセプト

2013年の開局以来、dublab.jpは定期的なラジオ配信に加え、ホテルラウンジ等へのBGM選曲、ユニークベニューでのイベント、アートプロジェクトのプロデュースなど、多岐にわたる活動を展開してきました。 今回のリニューアルでは、これまでの膨大な放送アーカイブの「検索性」向上と、「リスニング」のシームレスな体験をコンセプトに、ウェブサイトを全面的に再設計。時空を超えた世界中の良質な音楽を、より直感的に、いつでも楽しめるプラットフォームへとアップデートしました。

■ 近年の活動と社会的取り組み dublab.jpはインターネットラジオにとどまらず、社会的なアクションやアート領域の表現も追求しています。

・チャリティコンピレーション: 2025年にロサンゼルスを襲った大規模山火事の被害に対し、日本のクリエイターたちの協力を得て制作したチャリティアルバム『A Charity Compilation in Aid of the 2025 LA Wildfires -resilience-』をリリース。
・サウンドインスタレーション: 環境音楽の第一人者・尾島由郎氏らと共に、環境音楽の新たな可能性を提示する「KANKYO DOT」を開発。各地で展示を行い、新しい音響体験を提供しています。

■ 多彩な新プログラムが続々と始動 リニューアルを機に、既存の人気番組に加え、独自の視点を持つ新プログラムを順次ラインナップいたします。

・『Vivo Sonhando』: ブラジルで研鑽を積んだギタリストTatsuro Murakamiが、ブラジル音楽を新しい視点で切り取り紹介していきます。
・『Radio&Products』: 気鋭のリサイクルショップ「Hand To Mouth」が送る、カルチャーとプロダクトの交差点。
・『春の雨 Radio』:アンビエントを中心にセレクトの評価の高いレコードショップ「春の雨」店主が最新の注目作を紹介。
・『Listening Between The Lines』: dublab.jpディレクター玉井裕規と編集者・三木邦洋が、「音」にまつわる書籍を紹介。

ロサンゼルスを始め、ケルン、バルセロナ、サンパウロなど世界各地にブランチを持つdublabのネットワークにおいて、dublab.jpは日本独自のコンテンツを創造し続けています。変化の激しい現代において、音楽・文化を通じてより豊かな体験を世界へ届けてまいります。どうぞご期待ください。

Shuta Hasunuma Double Philharmonic Orchestra - ele-king

 ファースト・アルバムのリリースから早20年。ソロからオーケストラまで多角的に活動をつづける音楽家、最近ではアニメ『花緑青が明ける日に』の劇伴も記憶に新しい蓮沼執太だが、来たる8月6日(木)、赤坂のサントリーホールにて活動20周年記念コンサートが開催されることになった。彼が率いる「蓮沼執太フィル」に、今回新たに編成された弦楽オーケストラを加えた、総勢41名から成る「蓮沼執太Wフィル」によるパフォーマンス。詳しくは下記より。

蓮沼執太活動20周年記念コンサート「蓮沼執太Wフィル」総勢41名となる蓮沼執太フィル+弦楽オーケストラの出演者発表!

2006年に米国のインディーズレーベルから1stアルバムをリリースし、今年で20年を迎える蓮沼執太。これまでの活動20周年を記念したコンサート「蓮沼執太Wフィル | Shuta Hasunuma Double Philharmonic Orchestra」を、2026年8月6日(木)、東京・赤坂のサントリーホールにて開催する。自身のオーケストラ・蓮沼執太フィルと、新たに編成した弦楽オーケストラによる、総勢41名の「蓮沼執太Wフィル」のメンバーが本日発表された。また、公演に向けてリハーサルを重ねている様子も公開となった。

今回は従来の蓮沼執太フィルに、打楽器奏者の宮坂遼太郎がゲスト参加。さらに、弦楽オーケストラのディレクター・徳澤青弦のもと、コンサートマスター・金子昌憲をはじめとする弦楽器奏者24名が集う大編成となる。

会場は、今年開館40周年を迎え「世界一美しい響き」をもつと言われるサントリーホール。蓮沼は、弦楽オーケストラ編成による新たな挑戦の場として、この会場を選んだ。20年の活動の集大成となる、一夜限りの本公演。この空間、メンバーだからこそ生まれる新たな響き、「最高の音楽体験」をお見逃しなく。

■公演概要

活動20周年記念コンサート
蓮沼執太Wフィル | Shuta Hasunuma Double Philharmonic Orchestra

日時:2026年8月6日(木)開場 18:00 / 開演 19:00
会場:サントリーホール 大ホール(東京都港区赤坂1-13-1)
詳細:https://www.shutahasunuma.com/products/suntoryhall-w-phil

出演:蓮沼執太Wフィル

蓮沼執太フィル

蓮沼執太
石塚周太 (Guitar)
itoken (Drums)
大谷能生 (Saxophone)
音無史哉 (Sho)
尾嶋優 (Drums)
葛西敏彦(FOH)
K-Ta (Marimba)
小林うてな (Steelpan)
ゴンドウトモヒコ (Euphonium)
斉藤亮輔 (Guitar)
千葉広樹 (Bass, Violin)
手島絵里子 (Viola)
宮地夏海 (Flute)
三浦千明 (Flugelhorn)

宮坂遼太郎 (Percussions)

String Ensemble Director
徳澤青弦

Concertmaster
金子昌憲

1st Violins
村田晃歌
浅倉美羽佳
新井桃子
大久保良明
門倉茜
佐藤瞳子
奈須田弦

2nd Violins
町田匡
藤岡瑞季
伊藤梢
廣田碧
盧佳那
若杉知怜

Violas
世川すみれ
宮川清一郎
武市華奈
難波洸

Cellos
日下部杏奈
築地杏里
秋津瑞貴
岡本梨紗子

Contrabasses
谷口拓史
廣永瞬

舞台監督:高野洋
音響:葛西敏彦
照明:佐藤円
舞台美術:HYOTA
宣伝美術:前田晃伸
映像:井前隆一郎
制作:高木鉄平 (TETO)、芳田詠心 (windandwindows)、平松隼人
物販:sakumotto
コーディネーター:河村美帆香、佐々木奈美、永江大

主催:J-WAVE / windandwindows / ホットスタッフ・プロモーション
企画/制作:windandwindows /TETO
問い合わせ:ホットスタッフ・プロモーション 050-5211-6077 (平日12:00〜18:00)
http://www.red-hot.ne.jp/

■チケット情報

PG会員先行(e+)
4月15日(水)10:00〜4月26日(日)23:59
イープラス(国内)
e+(Overseas Sales)

PG会員先行(ぴあ)
4月29日(水)10:00〜5月10日(日)23:59

PG会員先行(ローソン)
5月13日(水)10:00〜5月19日(火)23:59

オフィシャル最終先行(e+)
2026年5月22日(金)18:00〜5月28日(木)23:59 ※抽選イープラス
e+(国内)
e+(Overseas Sales)

一般発売
2026年6月6日(土)10:00 ※先着
イープラス(国内)
e+(Overseas Sales)
チケットぴあ
ローソンチケット

■チケット料金 (税込)

SS席 ¥15,000 / S席 ¥12,000 / A席 ¥9,500 / B席 ¥6,600 / C席 ¥4,400
/ U-20席 ¥3,300 / 親子席おとな ¥6,600 親子席こども ¥2,500

小学生以上有料。未就学児童は無料 (大人1名につき、こども1名まで膝上可) 。但し、座席が必要な場合はチケット必要。小学生以下のお子さま連れの方は親子席エリア以外での鑑賞はできません。必ず親子席チケットをお買い求めください。

◆PROFILE

蓮沼執太Wフィル|Shuta Hasunuma Double Philharmonic Orchestra

音楽家・蓮沼執太、活動20周年を記念したコンサートにて結成。自身のオーケストラ・蓮沼執太フィル15名に加え、パーカッションに宮坂遼太郎、弦楽オーケストラのディレクター・徳澤青弦のもと、コンサートマスター・金子昌憲を迎えた弦楽オーケストラ24名の総勢41名から成る。2026年8月6日のサントリーホール「蓮沼執太Wフィル」に出演。

蓮沼執太フィル|Shuta Hasunuma Philharmonic Orchestra

蓮沼執太がコンダクトする、現代版フィルハーモニック・ポップ・オーケストラ。2010年に結成。2014年にアルバム『時が奏でる』、2018年に『アントロポセン』をリリース。2019年にフジロックフェスティバルへ出演、日比谷野外音楽堂での単独公演を成功におさめる。2023年にアルバム『シンフィル』をリリースし、オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル公演『ミュージック・トゥデイ』を開催した。

蓮沼執太|Shuta Hasunuma
音楽家、アーティスト

1983年、東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して、国内外での音楽公演をはじめ、映画、テレビ、演劇、ダンス、ファッション、広告など様々なメディアでの音楽制作を行う。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、彫刻、映像、インスタレーション、パフォーマンス、プロジェクトを制作する。

近年のアルバムに蓮沼執太チーム『TEAM』(2025)、灰野敬二 + 蓮沼執太『う       た』(2025)、『unpeople』(2023)。東京2020パラリンピック開会式にてパラ楽団を率いてパラリンピック讃歌編曲、楽曲「いきる」を作詞、作曲、指揮を担当。近年のコンサート・パフォーマンスに「unpeople 初演」(草月プラザ石庭『天国』/ 2024)、「ミュージック・トゥデイ」(オペラシティ・コンサートホール・タケミツメモリアル / 2023)など。

主な個展に「Compositions」(Pioneer Works 、ニューヨーク/ 2018)、「 ~ ing」(資生堂ギャラリー、東京 / 2018)などがある。また、近年のプロジェクトやグループ展に「Someone’s public and private / Something’s public and private」(Tompkins Square Park 、ニューヨーク/ 2019)、「FACES」(SCAI PIRAMIDE、東京 / 2021)、など。第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。

2026年8月6日に活動20周年記念コンサートを東京サントリーホールで開催。

蓮沼執太:http://www.shutahasunuma.com
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Stones Throw - ele-king

 マッドリブ作品やJ・ディラのリリースで知られ、近年はジャズやアンビエントなども含むさまざまな音楽のリリースをつづけているLAのレーベル〈Stones Throw〉が設立30周年を迎える。これを記念し、日本ツアーが開催されることとなった。6月5日(金)大阪はJOULE、6月6日(土)東京はSpotify O-EAST。レーベル創設者のピーナッツ・バター・ウルフをはじめ、ノレッジ、マインドデザイン、さらに今回が初来日となるソウル・シンガー、ミチが出演。特別な一夜に期待しよう。

LA発・世界最高峰インディーレーベル〈Stones Throw〉設立30周年
Peanut Butter Wolf、Knxwledge、Mndsgn、Michiによる
スペシャル・ジャパンツアーが開催決定

6月6日(土)東京・Spotify O-EAST
6月5日(金)大阪・JOULE


Tour Flyer Designed by Mndsgn

ロサンゼルス発、世界最高峰のインディーレーベル〈Stones Throw〉が、設立30周年を記念したスペシャル・ジャパンツアーを開催する。

出演は、レーベル創設者であり世界屈指のレコードコレクター/DJとして知られるPeanut Butter Wolf、グラミー賞受賞ユニットNxWorries(アンダーソン・パーク × ノレッジ)の一員としても活躍するビートメイカーKnxwledge、LAビートシーンを牽引するマルチアーティストMndsgn、そして今回が初来日となる注目のソウル/R&BシンガーMichiの4組。

6月6日(土)東京・Spotify O-EAST「MIDNIGHT EAST」、6月5日(金)大阪・JOULEにて開催され、レーベルの過去・現在・未来を体現するラインナップが一堂に会する。

1996年の設立以来、〈Stones Throw〉はMadlib、J Dilla、MF DOOM、NxWorries(Anderson .Paak × Knxwledge)、Mayer Hawthorne、Aloe Blaccなど数々の革新的アーティストを輩出し、ヒップホップを軸にジャンルを横断する独自の音楽カルチャーを築いてきた。

今回、Peanut Butter Wolfは2018年以来の来日出演が決定し、レーベル30周年をテーマにした特別な“Video DJ set”を披露予定。貴重な映像と音楽を融合させた唯一無二のパフォーマンスは見逃せない。

本公演では、各アーティストによる最新音源やエクスクルーシブなパフォーマンスが披露される。東京公演は3フロア構成のクラブイベントとして、DJ/ビートメイカー中心の濃密な一夜を展開。さらに、国内アーティストの追加ラインナップも後日発表予定となっている。

さらに本ツアーでは、アメリカ西海岸発のブランド〈HUF〉とのコラボレーションも実現。来日ツアーを記念した限定コラボTシャツの販売も予定されている。

2026年、設立30周年を迎える〈Stones Throw〉の歴史と進化を体感できる本ツアー。LAのリアルな音楽カルチャーを日本で体感できる、貴重な一夜をお見逃しなく。


Peanut Butter Wolf


Knxwledge


Mndsgn


Michi

<出演アーティスト>
Peanut Butter Wolf (Stones Throw 30 Years Video DJ set)
Knxwledge
Mndsgn
Michi (Singer Live)
*その他、国内アーティストのラインナップは後日アナウンス

<公演情報>

◆東京 TOKYO:
MIDNIGHT EAST presents
STONES THROW 30 YEARS TOKYO
supported by HUF

2026年6月6日(土)at Spotify O-EAST & Azumaya(MIDNIGHT EAST)
OPEN 24:00 / CLOSE: 05:00
ADV: 4,000 Yen +1D (Zaiko | Resident Advisor (RA) | e+)
Under23: 3,500 Yen + 1D
DOOR: 4,500 Yen + 1D
INFO: https://shibuya-o.com/east/schedule/stonesthrow30/

15日 正午から発売開始
ZAIKO https://midnighteast.zaiko.io/e/stones-throw-30yrs-tokyo
RA https://ra.co/events/2416233

※ドリンク代別途必要。
※U23チケットは当日券のみの販売になります。(要顔写真付き身分証明書。)
※20歳未満入場不可。(要顔写真付き身分証明書。)
※出演者は予告なく変更になる場合がございますので、予めご了承ください。
※客席を含む会場内の映像・写真が公開されることがあります。
※ 1 Drink fee will be charged upon arrival.
※Under23 tickets are only available on the day of the event. (Photo ID required.)
※ Must be 20 or over with Photo ID to enter.
※Please note that the performers are subject to change without notice.
※Please be aware that videos and photos during the event, including the audience , may be released.

◆大阪 OSAKA:
STONES THROW 30 YEARS OSAKA
supported by HUF

2026年6月5日(金)at club JOULE
OPEN: 22:00 / CLOSE: 5:00
後日、チケット情報などアナウンス。More Info Coming Soon.
INFO: https://club-joule.com/events/stones-throw-30-years-osaka/

interview with Adrian Sherwood - ele-king

 風向きが変わっているのを、またしても感じた夜だった。去る4月10日、大入りのリキッドルーム、午前2時をまわったところだろうか、ダディ・Gがあの素晴らしい “Teardrop”、楽園とダークサイドを往復するマッシヴ・アタックらしいあの名曲をよりレゲエに近づけたヴァージョンをドロップした。エリザベス・フレイザーの声は、やがてホレス・アンディと交わり、“Man Next Door” へと。で、ここにあの洞窟からの深いエコ−、“Karmacoma” がミックスされる。だが、それでもまだまだ足りない、ウィリー・ウィリアムズの “Armagideon Time” だ。「今夜、人びとは夕食にありつけない/今夜、人びとは正義を得られない/戦いはますます激しくなる」
 パンキー・レゲエ・パーティにダブは欠かせないのは当然だ。ダブは瞑想であり、ダブは実験であり、そしてパーティ・ミュージックだ。昨年の〈ダブ・セッション〉も大入りだった。で、ここに来て、またもや魅力的なダブが発売されるのだ。今年20周年を迎えたナイトメアズ・オン・ワックスの2006年の傑作、『In a Space Outta Sound』のエイドリアン・シャーウッドによるダブ・アルバムである。これはひとことで言うなら、ソウルのこもったヴァージョン。このミキシングには、オリジナルに対する無垢な愛情と尊敬がある。実験性はそれほどないが、しかし好きだからやっている感が、いまは嬉しい。
 『In a Space Outta Sound』(2006 年)は、ジョージ・エヴリンによるナイトメアズ・オン・ワックスにとっては決して派手なリリースではなかった。画期的な作品『Smokers Delight』(1995)やソウルフルな『Carboot Soul』(1999)のころに比べたら、実のところ、地味なモノだった。時代はすでにダブステップ、新世代のエレクトロニカ勢(グリッチとかいろいろ)の目新しさを歓迎していたのだから無理はない。
 逆に言えば、このアルバムは時代のトレンドにいっさい迎合しなかったという意味で反時代的だった。そんなものが10年後、20年後に輝くということは、音楽の世界ではけっこうある。 『In a Space Outta Sound』のなかにあるのは、レゲエ、ダンスホール、ソウル、ファンク、古きヒップホップ(リキッドでのSHINCOのDJも最高だった)といった、当時の前線からはこぼれたモノたちで、だからこれは、いわばヴィンテージをエヴリン流に解釈、再構築したアルバムだった。メロウな感覚が全面に出ているのは、時代に対するある種の感傷があったのかもしれない。それは彼が、流行もシーンの動向もガン無視して、自分がほんとうに好きなものを作ってみたという意味で無垢なアルバムだったと言える。ゆえに少し時間がかかったが、 『In a Space Outta Sound』は歳月のなかでゆっくりと支持者を増やし、いつの間にかこれは彼の代表作という地位を獲得したのである。そんな音楽(もともとが音響加工された作品)をさらに再構築するには、まずはこの音楽に対する愛情がもっとも必要となる。
 以下、どうぞエイドリアン師匠の話を楽しんでください。(文:小林拓音+野田努)

ジャマイカには「Each one teach one(互いが教えあう)」って言葉があるだろ。だから、〈On-U Sound〉のことも、コールドカットのことも皆から認知されていた。遠く離れていても、互いのことを把握していたから。そこにジョージがNoW として想像力をかき立てるような曲を作った。NoWが音楽シーンにあらわれたとき、まさに新鮮な風が吹いた感じだったね。

お時間、ありがとうございます。ナイトメアズ・オン・ワックスのリミックス、3年前のパンダ・ベア&ソニック・ブームの『Reset In Dub』(2023年)も興味深いプロジェクトでしたが、今回もまたじつにユニークな企画だと思いました。

エイドリアン・シャーウッド(以下AS):ありがとう!

まずはあなたが、ナイトメアズ・オン・ワックスについてどのように思っていたのか、そこから教えてください。

AS:ナイトメアズ・オン・ワックス(NoW)の作品がリリースされた当時、彼らの溢れる興奮や魅力を感じたよ。エキサイティングで凄くいい作品だし、じつに素晴らしいアーティストだと思っていた。イギリスでは家で友人たちと「自分たちも音楽作れんじゃない?」って感じで大の音楽ファンが自分たちの作品を手掛けたりすることがあるけど、ジョージは才能あるミュージシャンやシンガーを集めたと思う。たとえば、LSKはNoWのアートワークを手がけただけでなく、音楽面でも貢献した。純粋に熱狂的かつ才能ある音楽ファンが集まり、彼ら独自の音楽を作った結果がNoWだと思う。

彼のスモーキーなダウンテンポは、ヒップホップとソウル、レゲエからの影響があり、ダブとは親和性が高い音楽かもしれませんが、彼の出自は、80年代末のイングランド北部のダンス・カルチャーでした。あなたはどうやってNoWのことを知りましたか?

AS:まあ、イギリスってそんなに広い国じゃないから「リーズやシェフィールド、エジンバラから凄くいいのが来てる」という感じで情報が入ってきたし、(リーズの)ジョージ(・エヴリン)の他に、ブリストルには影響力のあったマッシヴ・アタックがいたりして、皆が互いの影響を受けていた。ほら、ジャマイカには「Each one teach one(互いが教えあう)」って言葉があるだろ。だから、〈On-U Sound〉のことも、コールドカットのことも皆から認知されていた。遠く離れていても、互いのことを把握していたから。そこにジョージがNoW として想像力をかき立てるような曲を作った。NoWが音楽シーンにあらわれたとき、まさに新鮮な風が吹いた感じだったね。ジョージは優れたプロデューサーかつDJだから、目立っていたよ。

実際、ジョージ・エヴリン本人と会話したのはいつのことになりますか?

AS:今回のアルバムがきっかけで初めて話したんだ。互いの存在はもう30年以上前から知っていたけど、昨年初めて話した。ギタリストのクリス・ドーキンスをはじめとして、共通の友人もたくさんいて……クリスは素晴らしいミュージシャンだよね。ジョージはルーツ・マヌーヴァなど大勢のアーティストたちと親しく、皆ジョージのことをとても高く評価していたよ。

今回のプロジェクトはどのようにはじまったのでしょうか?

AS:俺のレーベルは〈Warp〉傘下で、NoWは〈Warp〉第一号のアーティストということもあり、以前から両者で何か共同プロジェクトはできないかという話は挙がっていた。そして、今回彼ら(〈Warp〉側)からコラボの話が来たんだ。

『In A Space Outta Dub』を聴くと、あなたがオリジナル盤を愛していることがわかります。あなたにとって、このオリジナル盤のなかで、もっとも魅力を感じるのはどの点でしょうか?

AS:このオリジナル盤はじつに素晴らしい作品で、個人的に大好きだよ。いま聴いても最高のアルバム。そんなこともあり、今回取り組むにあたり、新たな方向性へと導きつつも、このアルバムの特徴をしっかりと残すことを心がけたね。

『Reset In Dub』のときと同様、ナマの演奏(ダグ・ウィンビッシュとサイラス・リチャード)を追加していますが、今回、あなたがもっとも注力したのはどんな点でしたか?

AS:オリジナル曲もとても良かったけど、サンプリング・ソースがこのアーティスト、あのアーティストといった具合だったから、偉大なるダグ・ウィンビッシュ、アレックス・ホワイト、マーク・バンドラ、サイラス・リチャードといった〈On-U Sound〉クルーを起用することに注力した。同じミュージシャンが演奏することで、まるでひとつのハウス・バンドのような(一貫した)サウンド作りを目指した。そこに、エンジニアのマット・スミスと俺が加えた独自のエフェクトやミックスを組み合わせることで、アルバム全体を通してまったく新しい、新鮮なサウンドを作り出すことができた。

『Reset In Dub』、あの多幸的なサイケデリアに「On-U的哲学」を注入するような感覚があったと思うのですが、今回は、どうでしょうか? ある意味、〈On-U Sound〉的な感性とも共通点があるサウンドだし、ダグ・ウィンビッシュのベースが入って、さらにあなたが空間をねじ曲げるようなミキシングをすると、ほとんど〈On-U Sound〉の作品になっているというか、『Reset In Dub』のときとの違いを話してもらえますか?

AS:これは、素材によるね。パンダ・ベア&ソニック・ブームの『Reset In Dub』はもともと凄くサイケデリックだけど、NoWにはそういう(=サイケデリックな)要素は一部あるだけだよね。目指したのは、彼ら独自のアイディアやサウンドを際立たせ、強化して、それを拡大していくことだった。今回のNoWの場合も、オリジナル楽曲のメロディや雰囲気を強調させていった。


ナイトメアズ・オン・ワックス

間違いなくアナログでのミキシングが好きだね。作業の一部はコンピュータを使用しているけど、そのデータをコンピュータから取り出して卓に入れて、そこからライヴで加工していくんだ。

あなたは、ジャマイカのダブに敬意を払いながら、新しいことをやろうとやってきた先駆者なわけですが、NoWのようなサンプリング・ミュージック──規則正しいループ、素材がクリアなデジタル音源──を解体し、再構築する際は、まずはどこから着手するのでしょうか?

AS:ベースラインとグルーヴから着手するね。

だいたい1曲につき、どのくらいの時間を費やすものなのでしょうか?

AS:楽曲によりけりだし、その曲をどうしたいかにもよるよね。自分の作品の場合、同時進行でアルバム3枚分を進めることもあるし……(笑)。ミュージシャンをスタジオに呼び、自分の頭のなかで描いている各曲のパーツごとに演奏してもらうんだ。ずっとひとつのことに集中しつづけるわけじゃないから、3~4時間何かを制作した後に、別の作業に移ったりする。数時間やって、休憩を挟んで別の曲に移り、その後また前やっていた曲に戻ったりして、そんな調子で制作するのが好き。そうすれば、飽きずにいられるから。
 他のアーティストに依頼されて仕事するときは、その作品に参加してもらえるミュージシャン押さえがポイントになる。ちなみに、ダグ・ウィンビッシュには全曲で演奏してもらっている。それでたとえば、あるギタリストに4曲演奏してもらうのと並行して、同時に他の作業を進めたりするんだ。じっくり1曲ずつ制作するのではなく、3、4曲を並行して進める傾向がある。
 ダグ・ウィンビッシュは数時間でアルバム1枚分の演奏が録れるくらい凄い人だけど、1日でアルバムの半分……たとえば5曲分レコーディングして、残りを翌日という感じだね。じっくり時間をかけて作業することもある。とはいえ、俺たちの作業は非常に効率的で、かなり速い。1曲に何時間もぶっ通しで取り組むというよりは、次の曲を制作した後に「あの曲のベースラインはちょっとせわしいから、少し違うアプローチで試してみよう」だとか、「オフビートでスウィング感を出してみよう」というふうに、納得のいく結果が出るまで様々なアイディアを試していくんだ。

ちなみに、ミキシングの際は、基本、いまでもアナログ・ミキシング・コンソールを(ほとんど楽器のように)使っているんですか?(もちろん、Pro Toolsなど現代のデジタル環境を取り入れつつ)

AS:うん。Soundcraft社のSapphireを愛用していて、間違いなくアナログでのミキシングが好きだね。作業の一部はコンピュータを使用しているけど、そのデータをコンピュータから取り出して卓に入れて、そこからライヴで加工していくんだ。

今回の音の響きにかんして、あなたがどう加工するのか興味があります。とくに今回は、アナログ的な響き、繊細で、温かみのあるサウンドに加工していますよね? 作業のどの時点で、サウンドの加工がほどこされるのですか?

AS:最初の時点から、ベースもコードも温かみのあるサウンドに仕上げている。制作初期段階からミキシングの最後の段階に至るまで、つねにサウンドに息吹と輝きを与えるよう心がけているからね。

ダブ・ミキシングに臨む前に、ダブの教科書――キング・タビーであったり、キース・ハドソンであったり――を聴き直すことはありますか?

AS:ノー、アハハハハ(笑)! そういったアーティストのレコードはもう何千回も聴いてきたから、自分の魂に染み付いてる(笑)。

『A Space Outta Dub』の制作中に、面白いアクシデントがあったら、教えてください。

AS:このアルバムには、至るところに「嬉しいアクシデント」が散りばめられている。突然魔法のようなことが起きて、「これだ!」と叫びたくなるような瞬間がいくつもあったけど、具体的に挙げるのは難しいなぁ。クリエイティヴなミュージシャンたちがいると、そういう嬉しいハプニングはつねに起きる。たとえば、彼らがチューニングをしている最中に演奏したものが面白くて、それをある箇所に入れてみたりね。そうやって、いつも嬉しい偶然が生まれていった。

今回DUB SESSIONS 2026にてナイトメアズ・オン・ワックスとの共演になりますが、見どころはどんなところでしょうか?

AS:DUB SESSIONS 2026にかんしてはまだ具体的な内容は決まっていないけど、「Dub Sessions」はいつもゲスト・ミュージシャンを招待して開催している自分たちのイベントだ。昨年は特別な1年だったな。デニス・ボーヴェルやマッド・プロフェッサーを招待した「Dub Sessions」を昨年日本でも開催した。DUB SESSIONS 2026では、ジョージを前面に押し出して、自分は裏方に回るかもしれない。具体的にどんな企画になるかはまだ100%決まっていないけど、もちろんいつものように、素晴らしいショウにするよ!
日本は特別な場所で、つねに非常に強い親近感を抱いている。日本では素晴らしいバンドが次々と登場し、音楽シーンはつねに活気に満ちているね。それから、日本のオーディエンスは非常に熱心で、新作が発売されるたびにチェックしてくれるのが本当に嬉しい。そして、〈DUB SESSIONS〉をおこなうたびにオーディエンスの輪が広がっていき、とてもいいヴァイブスを感じているよ。

今年もエイドリアン・シャーウッド 〈On-U Sound〉 のDUB SESSIONSが開催決定!
〈Warp Records〉の象徴、ナイトメアズ・オン・ワックスが降臨!
極上のサウンドが交錯する、唯一無二のセッションが実現!

ADRIAN SHERWOOD presents
DUB SESSIONS 2026
featuring
ADRIAN SHERWOOD
VS
NIGHTMARES ON WAX
AND MORE

TOKYO 2026/09/09 (WED) O-EAST
OSAKA 2026/09/10 (THU) META VALLEY

OPEN / START 18:00
INFO:BEATINK [WWW.BEATINK.COM] / E-mail: info@beatink.com

DUBという魔法でジャンルの壁を溶かし、革新的なサウンドを世に送り出して来たエイドリアン・シャーウッド。コアなミュージックラヴァーから絶大な支持を集めるDUB SESSIONSは、年々そのスケールと熱量を拡張し続けている。そして2026年、再び新たな化学反応が起こる。

今回迎えるのは、英〈Warp Records〉の重鎮にして象徴的存在の一人、ナイトメアズ・オン・ワックスことジョージ・エヴリン。名盤『In A Space Outta Sound』の20周年を記念した再発にあわせ、エイドリアン・シャーウッドによるダブミックス盤『In A Space Outta Dub』がリリース。そしてその両者が、ついに同じステージで交差する。これは絶対見逃せない!!!!!

30年以上にわたり、エレクトロニック/ソウル・ミュージックの最前線を走り続けながら、唯一無二の温度感を持つ音楽を生み出してきたナイトメアズ・オン・ワックス。その彼が、子供のころからなれ親しんだレゲエ・カルチャーへのオマージュとして産み出した名盤が『In A Space Outta Sound』であり、その原体験たるジャマイカ由来のサウンドを軸に、ソウル、ジャズ、ヒップホップを自在に融合させ、耳に残るフックへと昇華させるジョージ・エヴリンの比類なきセンスと手腕、そしてソウルフルなヴァイブレーションを宿したそのサウンドは、多くの人々の日常に寄り添うサウンドトラックとして、長く愛され続けている。

その楽曲群を素材に、〈On-U Sound〉主宰エイドリアン・シャーウッドが解体/再構築を施した『In A Space Outta Dub』は、原曲の魅力を保ちながらも大胆に変容させた、極めてスリリングなダブ作品へと昇華。

時代と世代を超えて影響を与え続ける2人が、遂にいま同じ空間で音を交わす。
刺激ありチルありそして爆音あり・・・究極のサウンド対決!DUB最前線の極楽へようこそ。

【チケット詳細】
前売:8,000円 (税込 / 別途ドリンク代 / オールスタンディング) ※未就学児童入場不可

先行発売:
BEATINK主催者先行:4/1(WED)18:00 (※限定枚数・先着、Eチケットのみ)
イープラス・プレイガイド最速先行受付(抽選):4/3(FRI)10:00~4/8(WED)23:59

[東京]
LAWSONプレリクエスト:4/9(THU)10:00~4/13(MON)23:59
イープラス・プレオーダー:4/9(THU)10:00~4/13(MON)23:59

[大阪]
イープラス・プレオーダー:4/9(THU)10:00~4/13(MON)23:59
チケットぴあプレリザーブ:4/9(THU)10:00~4/13(MON)23:59
LAWSONプレリクエスト:4/9(THU)10:00~4/13(MON)23:59

一般発売:4月18日(SAT)10:00~

[東京]
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INFO: BEATINK 03-5768-1277  www.beatink.com

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INFO: SMASH WEST 06-6535-5569  https://smash-jpn.com/

公演詳細: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15671
チケットリンク: https://linktr.ee/dubsessions2026

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