ドルフィン・ハイパースペースはL.A.を拠点とするエレクトロ・ジャズ・デュオ。
サックス奏者のニコール・マッケイブとベーシスト/プロデューサーのローガン・ケインによるこのユニットは、2020年の1st EP、2021年作『Mini Giraffe』で頭角を現し、2024年の『What is my Porpoise?』ではルイス・コールやジャスティン・ブラウンを迎えて注目を集めた。
新作『ECHOLOCATION』にはジェラルド・クレイトンも参加。モダン・ジャズの素養に裏打ちされた確かな演奏力をベースに、L.A.ビート・シーンのエレクトロニックな感触と、イルカのキャラクターをモチーフにした遊び心がカラフルに交差する。
かつてテクノやドラム&ベースが「フューチャー」を標榜し、また「フューチャー・ジャズ」に 音楽の未来をかいま見た時代があった。
それから20年以上。当時思い描いていた「未来」は、いまやすっかり日常のなかに沈み込んでいる。テクノロジーは「夢」から「インフラ」へと姿を変え、音楽の進化もアルゴリズムによる最適化になかば飲み込まれてしまっている。
「未来」は憧れではなく、ディストピアと戦争への恐怖や不安を思わせるものになってしまった。
そんなことを考えながらこのアルバムを聴いていたら、思わずニヤリとしてしまった。このデュオの音楽には、もう信じられなくなりつつある、でも諦めきれない未来への期待感と、いたずらっ子のようなユーモアが同居している。
「ガジェット・ジャズ」と呼びたくなるような、夢とガラクタが詰まったオモチャ箱みたいなサウンドは、まぶしいぐらいキラキラしていてちょっとヘンテコで、まっすぐな希望に満ちている。
ジャズと、かわいい動物にインスパイアされた音の風景みたいなものを、ちょっと混ぜてる感じかな。(ローガン)
■あなたたちの音楽は、ハンパなく高度なテクニックで裏打ちされています。シリアスなジャズをやろうと思えばいくらでもできるだろうけど、そうはしません。スタンダードを崩したりしながら、ジャズの芯の部分はしっかり保っている。あなたたちは、伝統的なジャズの高度なヴォイシングと作曲方法、演奏テクニックを習得すると同時に、ポップで軽いオモチャみたいなサブカルチャーを同時に吸収してきたのだと思いますが、当たっていますか?
Logan Kane(以下、L):すごくいいね、ニコール、君から答える?
Nicole McCabe(以下、N):ううん。
L:その通りだよ。言ってくれてることはすごく的確だと思う。影響について話すと、ニコールと僕は、このプロジェクト以外でもプロのジャズ・ミュージシャンとして活動していて、いろんなアーティストと一緒にアコースティック編成でツアーもしてるし、大学でもジャズの歴史を学んできた。だから突き詰めると、これはジャズのプロジェクトだと思ってるし、そこをちゃんと汲み取ってもらえたのはすごく嬉しい。気づいてくれてありがとう。普段かなりアコースティック・ジャズをやってるからこそ、まだあまりやられていないことや、もっと新しく感じられるものをやりたいっていう気持ちがあって、それでこのプロジェクトではかなり違うサウンドの方向に振ってみたんだ。それと、ジャズって、本当に最高なんだけど、どうしてもすごくシリアスになりがちでさ。僕たち自身も真剣にやってはいるけど、質問者さんが言ってくれた「悪ふざけ」みたいな部分もすごく大事にしてる。あと、このインタヴューは(動画ではなく)テキストだから見えないけど、僕たちのロゴはイルカなんだ。かわいい動物がすごく好きだから。だから、ジャズと、かわいい動物にインスパイアされた音の風景みたいなものを、ちょっと混ぜてる感じかな。それもひとつのインスピレーションだね。
N:私とローガンって、それぞれかなり違う影響を持ってて、それを一緒にすると「Dolphin Hyperspaceの音」になるという感じ。それぞれいろんなものを持ち寄ってるんだけど、私はダンス・ミュージックからの影響が強くて、ドラムンベースとかジャングル、UKガラージとかがすごく好き。で、ローガンはゲームっぽい要素を加えてくれるし、プロダクションもめちゃくちゃ上手いの。聴こえてくるかっこいいエフェクトは、だいたいローガンだよ(笑)。制作は、私が曲のアイデアを作って送って、彼が仕上げることもあるし、その逆もあったりするかな。お互い影響の幅が広いのは大きいよね。ローガンはパンクとかブラストビートが好きで、私はファンクとかいろいろ好きだし、本当にいろんなものが混ざってる感じ。あと、結果をあまりジャッジしすぎないようにしてるのも大きいと思う。
■2020年にデビューしていますが、ドルフィン・ハイパースペースの音楽スタイルが確立したのはいつ? どんなきっかけ?
L:これは正直、かなり偶然に近い形で最初から形になっていった感じがあるんだ。というのも、プロジェクトをはじめた当時、ニコールと僕は別々の街に住んでいた。だからお互いに音源データを送り合いながら、とにかく実験していくしかなかったんだ。その実験的なやり方自体が、それまで自分たちでもやったことのない新しいものを自然と生み出していった感じで、そこから少しずつそのサウンドを掘り下げていった、という流れかな。最初のEP『Dolphin Hyperspace』を聴くと、そのはじまりと、いまのサウンドにつながっていく過程がわかると思う。
N:そうね、私たちとしては、サウンド自体というより、「どういうふうに聴いてほしいか」みたいな部分をずっと磨いてきてる感じ。「親しみやすい・とっつきやすい(=accessible)」っていうのは、私たちにとってすごく大事なキーワード。演奏中には実際にすごくいろんなことが起きていて、かなりクレイジーではあるんだけど、ちゃんと聴き手が入り込める余地は残しておきたいと思ってる。私としては、しっかりしたメロディがあることもすごく大事で、聴く人がついて来れるポイントがあるといいなって思ってる。そのうえで、展開がある程度わかっている部分もあれば、逆に自分たちでもどうなるかわからない瞬間もたくさんあって、特にライヴではかなりオープンな状態になっていると思う。でも最終的には、聴いている人が楽しめて、ちょっとの間でも悩みを忘れられるようなものを作りたいっていうのがいちばん大きいかな。
L:やっぱり「楽しい(=fun)」っていうのがいちばんだよね。
■あなたたちの音楽には、ズレや脱力が美しさに変わる瞬間があります。カッコよくキメるのではなく、ハズしの美学を感じます。まぬけで愛嬌があってかわいい感じ。制作やライヴで生じる音楽的な偶然や失敗をどう扱っていますか?
L:僕たちは、ジャズの現場で培ってきた感覚があるから、これはまさにぴったりの質問だね。ジャズって即興だから、その場でどんどん作っていくものなんだ。だからミスが起きたときも、それを別の新しいものに変えていくように訓練されてる。だからこそ、そういうものも全部そのまま音楽に残してる。実際、ただ録音しているだけという感覚に近くて、ニコールが言ったみたいに、ある程度どうなるかわかっている部分もあるけど、かなり広い範囲で何が起きるかわからない部分もある。そういう不確定な部分も含めて受け入れて、できるだけ編集はしすぎないようにしてる。
N:私たちってあんまり……特にソロに関しては、レコーディングでもライヴでも、ほとんど編集しないタイプだと思う。テイクも何回も重ねるっていうよりは、せいぜい数回くらいで。私たちにとっては完璧さよりも、その瞬間に生まれる感じのほうが大事なんだよね。それがあることで、ちょっとした愛嬌とか、自然な感じが出ると思うし。これまでにも、最初はミスだと思ってたものが、たとえばキーがずれてたりしても、あとから曲の大事な要素になったことが何度もあって。たとえば “Baby Parakeet” のローガンのソロとかもそうだったよね。最初に狙ってたものとは違うことが起きて、それがむしろそっちのほうがいいって気づくこともある。やっぱり「その場で生まれる感じ(=spontaneity)」っていうのは、私たちにとってすごく大きいと思う。
「伝統的なサンバを電子的に再現したらどうなるか?」っていう発想からはじまって。それでAセクションはそういうサンバになってて、Bセクションがダブステップになるっていう(笑)。(ローガン)
■曲を聴いていると「ふざけているようで緻密」「軽やかで攻撃的」という相反する要素が同居しています。このバランス感覚はどのように養われたのでしょうか?
L:いい質問だね。正直に言うと……ニコールはまた違う答えかもしれないけど、このプロジェクトに限らず、僕は曲を書いてるときは、あんまり考えないようにしてるんだよね(笑)。実際、起きてることの多くはちょっと無意識に近いし、そういうふうに言葉にしてもらえるのはすごく面白い。自分としては、とにかくエネルギーに任せて進めてる感覚が強いかな。僕たちはその場で何が楽しいかとか、演奏してて楽しいものは何かっていうのを探りながらやってることが多くて、あと、どんな楽しいテーマを広げていけるかも大事にしてる。だから曲名も「Minuscule Minnow(ちび魚)」とか「Baby Parakeet(ひなインコ)」みたいに、かわいい動物系のタイトルが多いんだと思う。結果的にああいうサウンドになるのも、わりと偶然の積み重ねっていう感じかな。ニコールはどう思う?
N:私たちは、速いテンポが好きなのよ。
L:そう、やっぱり「楽しい」っていう感覚は大事だし、速いテンポもすごく好き。で、速いテンポをちゃんと演奏するには、むしろ軽やかさが必要になることが多いんだよね。だから攻撃的に聴こえる部分も、テクニックの一部がそのまま作曲に反映されてる、みたいなところがあると思う。
N:うん、それか単純にふたりのアイデアが混ざってるだけのときもあるよね。“Minuscule Minnow” だと、私はボサノヴァをやりたくて、ローガンはドラムンベースをやりたかったんだよね?
L:そうそう、ドラムンベース。
N:だからその両方のセクションを入れてみたら、すごくかわいい部分と、すごくコントラストの強い部分が並ぶ形になって。そうやってお互いのアイデアを持ち寄って、どうなるか試してみる、っていう感じかな。
■ユーモアを表現する際、どの程度まで意識的におこなっていますか? 結果的に面白くなってしまう感じなのでしょうか?
N:自然に出てきてるものだと思う。私たち、普段からずっとふざけ合ってるし、よく冗談言ったり、変なシナリオで妄想したりしてるから。このプロジェクト自体も、「とにかくいちばんクレイジーなこと考えてみよう」とか、「いちばん面白い言葉って何だろう」みたいなところからはじまることが多くて。それを「いや、これはちょっとバカっぽいかな」ってボツにするんじゃなくて、そのまま追求するんだよね。すごく……なんて言えばいいんだろう、ほんとにそのまま突き進む感じっていうか。
L:ひとつのアイデアにちゃんと乗っかって、そこから広げていく感じだよね。新しいアルバムの中に “Dolphin Samba” って曲があるんだけど、それは「伝統的なサンバを電子的に再現したらどうなるか?」っていう発想からはじまって。それでAセクションはそういうサンバになってて、Bセクションがダブステップになるっていう(笑)。
通訳:いいですね(笑)
L:そんな感じで、そのアイデアをそのまま押し広げていったらできた曲で、アルバムのなかでもかなり気に入ってる一曲なんだ。
N:プロモーションとかヴィジュアルも同じで、イルカのイメージも含めて、「やってて楽しそうなアイデア」をそのまま形にしてる感じ。自分たちの想像の断片をそのまま現実にしていってる、みたいな感覚だと思う。
[[SplitPage]]私たち、いろんなドラマーと一緒にやってるでしょ。ルイス・コールとか、ジャスティン・ブラウンとか、ロニー・カスピとか。でも、じつは一度もリハーサルしたことないんだよね。(ニコール)
■サウンドのなかには、機械が誤作動するような滑稽さと人間の手触りが奇妙に混ざり合っています。デジタル機材と「笑い」との関係性についてはどう思いますか?
L:これもすごくいい質問だね。僕たちがかなり意識的にやっている手法のひとつが、「本物とフェイクの混ぜ方」なんだよね。ここではあえて電子楽器のことを「フェイク」と言わせてもらうけど。たとえば、電子ドラムと生ドラムを重ねたりとか。あとはニコールのサックスも、実際に吹いている音に、いわゆる「偽物のサックス」を重ねてることがよくある。そういう意味で、音楽のなかにすでに組み込まれてるんだと思う。このちょっと滑稽な二重性というか。たとえば今回のアルバムには、世界最高峰のドラマーのひとりであるルイス・コールが参加してるんだけど、その演奏と、僕がゴミ箱で見つけたカシオのキーボードに入ってたドラムマシンが一緒に鳴ってたりする(笑)。そういうことがアルバムのあちこちで起きていて、すごくハイファイなものとローファイなものが同時に存在している感じが好きなんだよね。すごく美しいし、確かにちょっとおかしみもあると思う。
通訳:なるほど。いつも聴きながら、どこまでがデジタルでどこからが生なのかを考えちゃうんですよね。それも楽しさのひとつだと思います。
L:まさにそうだね。
N:私も、いままさにそれを言おうとしてた。何が起きてるのかを探ること自体が、ユーモアの一部になってる気がする。これって本物なの? それともフェイク? っていうところで、結構いろんな人をいい意味でだませると思う(笑)。
通訳:そういう意味でも、実際のライヴがどんなふうになるのかすごく楽しみです。
■ドルフィン・ハイパースペースの音楽には即興による奔放さと秩序が同居しています。その背景にあるコンポジションのルールや、音楽で遊ぶための手法について教えてください。
N:私たちの曲って、基本的な骨組みはけっこうシンプルで、メロディがあって、ブリッジとかBセクションがあって、あとはソロのパートがある、みたいな感じ。で、実際に「起きること」としてわかっているのは、だいたいそこまで。そういうパーツを組み合わせて曲にして、そのフォルムをベースにライヴでも演奏するんだけど、その間に起きることはかなり自由で、解釈も変えられるし、毎回違ってくる。
L:そうだね。ステージに上がる前に、コンパクトな構成はちゃんと作ってあるんだけど、その限られた時間のなかで即興として「物語をどう作るか」っていうのが課題になる。だから構成自体には無駄な余白がほとんどなくて、その分、その瞬間ごとの判断がすごく重要になってくる。限られた時間のなかで、どうにかしていいところにたどり着く、みたいな感覚かな。
N:あと、トリビアなんだけど、私たち、いろんなドラマーと一緒にやってるでしょ。ルイス・コールとか、ジャスティン・ブラウンとか、ロニー・カスピとか。でも、じつは一度もリハーサルしたことないんだよね。
通訳:しないんですか?
N:うん。自分で準備してきてもらって、そのまま自由にやってもらうの。その人の個性をそのまま出してほしいから、こっちから細かく指示する必要はないと思ってる。
L:何も指示は出さないね。
N:何も出さない。
N:そのほうが毎回違って面白いし。ちょっと変わったやり方だよね(笑)。でも、うまくいってる。
■笑いとユーモアのセンスの源はなんでしょう? 音楽以外にも本や映画、オモチャ、コミックやアニメ、動物や魚、食べ物など。
L:いいね、この質問。ニコールと僕はけっこう趣味は違うんだけど、ひとつ面白いポイントとして言えるのは、同じ時代のテレビを観て育ったっていうのがあって、すごく好きだったのが『アドベンチャー・タイム』なんだよね。で、じつは最近、その監督のために音楽を書く機会があったんだ。監督はペンドルトン・ウォードっていう人で、その人の新作が最近Adult Swim で放送されていて、僕たちの音楽が番組で使われてるんだよ。もともとは、L.A.で僕たちのライヴを観に来てくれて、そのあと Bandcamp で僕たちを見つけてメールをくれて、それがきっかけで実現したんだ。だから、自分たちに影響を与えてくれたものに関われたっていう意味でも、ちょっと特別な出来事だった。あとは僕は『ポケモン』とか任天堂のゲームが大好きで、そういうものからの影響も大きいかな。ニコールとも『マリオカート』はよくやるよね。
N:『マリオカート』、楽しいよね。ユーモアについては……どうだろう。小さい頃にお母さんと一緒にすごくコメディ映画を観てたのが大きいかも。ウィル・フェレルが大好きで(笑)。ほんとに大好きなの。
通訳:いいですよね、彼。
N:動物に関しては、宮崎駿の映画がすごく好き。ああいう、かわいい動物の感覚は、そこから来てる気がする。あとはインターネットのユーモアもけっこう影響してると思う。
動物に関しては、宮崎駿の映画がすごく好き。ああいう、かわいい動物の感覚は、そこから来てる気がする。(ニコール)
■あなたたちの音楽にはチップチューンの要素を感じますが、日本のゲームからの影響はありますか? ローガンは『マリオカート』が好きだとおっしゃっていましたが、他にもあれば教えてください。
L:間違いなく影響はあると思う。ああいう音にはかなり影響を受けてるね。ただ、どっちかというといまというより、子どもの頃の体験のほうが大きいかな。最初に遊んだゲームボーイの音楽が、いまでも頭のどこかに残ってる感じがあるんだよね。ちょっと面白いんだけど、このバンドに限らず、他のプロジェクトでも「ゲーム音楽っぽい」ってよく言われるんだ。でもそれって意図してやってるわけじゃなくて。自分にとっては、ああいう形で表現するのがすごく自然なんだと思う。
■LAのシーンについて。どんなアーティストと交流がありますか? 刺激や影響を受けているLAのアーティストについても教えてください。
N:ほんとにありがたいことに、自分たちにとってのヒーローみたいな人たちと一緒に演奏する機会があって。ルイス・コールとか。ノウワーはすごく大きなインスピレーションだし、サンダーキャットもそう。あとドミ&JD・ベックもそうだし、そのあたりのシーンの人たちからはかなり影響を受けてると思う。ジェイコブ・マンも大好きだし。
L:そうだね。あと、サンダーキャットが僕たちのライヴに何度か来てくれたこともあって、それは本当に光栄だった。自分はベーシストだから、なおさら特別な経験だったね。それって、彼のツアー・ドラマーでもあるジャスティン・ブラウンと一緒にやってることとも関係してると思う。ジャスティンも僕たちにとってすごく大きな存在で、本当に素晴らしいドラマーだし、いろんな重要なプロジェクトに関わってきてる人なんだ。L.A.に住んでるしね。個人的には、デイヴィッド・ビニーっていう、自分にとってメンターみたいな存在のミュージシャンにもすごく影響を受けてる。彼もロサンゼルスにいて、本当に素晴らしいプレイヤーなんだ。シーン全体で言えば、若い世代でもすごいことをやってる人が本当にたくさんいて……たとえばダコタ とか。ダコタの音楽はすごく好きだね。あと……
N:バッド・スナックスとか?
L:そうそう、バッド・スナックス。プロデューサーでもあるアーティストで、今回のアルバムにも参加してくれてる。それと、フレシア・ベルマーっていうアーティストもすごく好きだね。演奏も音楽も素晴らしいし、プロダクションの面でも面白いことをやってるベーシストなんだ。
■新作アルバム『ECHOLOCATION』にまつわるエピソードがあれば教えてください。ツアーやライヴ、スタジオで起こった印象的な出来事は?
L:インストゥルメンタルの音楽って、すごく抽象的な物語を語れると思うんだよね。このアルバムもかなり抽象的なストーリーなんだけど、最初の “Vacation” からはじまって、まるで完璧な天気のビーチで目を覚ますようなイメージなんだ。今日はきっと最高の一日になる、みたいな。そこからだんだん、その日に起こるいろんな出来事に巻き込まれていく感じで、波がざわつき始めたり、天気が崩れたり戻ったり、ちょっとした混乱が起きたりしていく。でもアルバムの最後、“Memories of the Deep Blue Sea” にたどり着く頃には、また静けさを取り戻している。だから全体としては、何か問題に直面して、それを乗り越えていく「英雄の旅路」みたいな古典的な物語構造になっているんだけど、それをドルフィン的な世界観でやっている、という感じかな。
N:それに “Kyoto” っていうシングルもあって、これは去年の日本旅行からインスパイアされた曲。日本に行くのがすごく好きで、去年も今年もプライベートで行ってるくらい。私たちにとっては本当に大好きな場所で、日本のカルチャーとか音楽、アート、アニメーションからもすごく影響を受けてる。それもこのアルバムの大きな要素になってると思う。それに今回、〈P-Vine〉と一緒に日本盤をリリースできたのもすごく嬉しい。私たちにとって特別なことなの。
通訳:美意識的にもすごくキッチュでポップですよね。日本人にすごく響くと思います。かわいい文化というか。
N:そうだね、もしかしたらアメリカよりも日本のほうが、この感じを理解してくれるかもしれない(笑)。
■バンドの名称にある「DOLPHIN」や「HYPERSPACE」という言葉には、どんなイメージを託していますか?
N:私たちがやってることをすごくよく表してる言葉だと思う。まず「ドルフィン」は、かわいい動物っていう要素があって、「ハイパースペース」はもっとクレイジーで、別次元みたいなイメージ。で、そのふたつが合わさってる。かわいさと、ちょっとぶっ飛んだ感じ。その両方をくっつけたものが、私たちっていう感じかな(笑)。
L:イルカって本当にすごい生き物で、ものすごく知能が高いし、あまりちゃんと考えたことはなかったけど、もし楽器を持てたとしたら、ジャズを演奏できるんじゃないかって思うんだよね。それくらい知的で、スキルもあって、動きも速いから。だから、なんていうか……自分たちが目指してるものの、いい例えになってる気がする。
イルカって本当にすごい生き物で、ものすごく知能が高いし、あまりちゃんと考えたことはなかったけど、もし楽器を持てたとしたら、ジャズを演奏できるんじゃないかって思うんだよね。(ローガン)
■アルバム・タイトルの『ECHOLOCATION』は、イルカが超音波で周囲の状況を知る能力ですよね。そもそもなぜイルカ?
L:「エコーロケーション」っていう言葉自体が、僕たちにとってすごく面白いテーマだったんだよね。まず「エコー」っていうのは、それだけで昔から使われてきたオーディオ・エフェクトでもあるし、自然のなかでも普通に存在している音(こだま・やまびこなど)でもある。それで調べてみたら、エコーロケーションって「生体ソナー(=biological sonar)」の一種だって説明されていて、それがすごくしっくりきたんだ。自分にとって音楽も似たようなものに感じていて、身体を使って楽器を演奏して、何かを外に向けて発信すると、それに対する反応がオーディエンスから返ってくる。そのやり取りが、どこかエコーロケーションみたいだなって思えて。だからすごく意味のある言葉に感じたんだ。
N:完璧に答えたね。あと、アルバム・タイトルとしては、ここ最近ずっと水っぽいテーマを続けていこうとしていて。“What Is My Porpoise?(わたしの目的ってなに?)” っていう作品もあったし、そこからそういう流れができてきた感じ。それに「エコー」っていう言葉自体もぴったりで、去年ロサンゼルスの The Echo っていう会場でライヴをやっていて、今年の5月にもそこでリリース公演をやる予定だから、そういう意味でもすごくしっくりきたタイトルなんだ。
■楽曲のタイトルからはいろんな物語を想像します。インストゥルメンタルなので歌詞はないけど、あなたたちのなかではどんなストーリーがあるのでしょうか? また、ストーリーはどんなふうに思いつくのですか?
L:さっき話したみたいに、その場の思いつきから生まれてくることが多いかな。それをあまり疑わずに、そのままやりきるようにしてる。でもひとつ具体的に思い浮かぶのは、“Big Fishy” っていう曲。このタイトルには自分のなかでいくつか意味があるんだ。ひとつは、みんな知ってると思うけど、イルカってじつは魚じゃなくて哺乳類なんだよね。でも、もしそれを知らなかったら、ただの「大きな魚 (big fishy)」だと思うはず(笑)。ちょっとバカっぽいけど、それがひとつの意味。もうひとつは、僕たちにとってイルカってすごく大きな生き物に感じるけど、広い海のなかではきっとすごく小さな存在なんじゃないかっていう感覚。そういう意味も含まれてる。
N:え、そんなふうに思ってたんだ(笑)。初めて聞いた。どれもすごくいいね!
■あなたたちの音楽を聴いていたら、ある人のことを思い出しました。日本には「さかなクン」というユニークなタレントがいるんです。魚類学者で大学の客員教授でイラストレーター。 テレビ番組で子供たちに大人気です。さかなクンは “コイシテイルカ” というイルカの歌を発表しています(https://www.youtube.com/watch?v=_clLCiPhy5k)。彼はサックス奏者でもあって、アルトサックスとバスサックス、バスクラリネットを吹きます。
L:ちょっと待って、その人のことメモってる(笑)。
通訳:このYouTubeリンクを、チャットで送りますね。
N:ぜひ! その人のこと知りたい。
通訳:いまZoomのチャットに送りました。これがイルカの曲です。ぜひチェックしてみてください。こちらからは以上です。今日は本当にありがとうございました。お話できてすごく楽しかったです。
L:ひとつお願いしてもいいかな。質問者さんが最後にメッセージを残してくれていたから、こちらからも何か伝えることってできるかな?
通訳:もちろんです。きっと喜ぶと思います。
L:じゃあ……まずは、細部までしっかり読み込んでくれて、本当に素晴らしい質問をしてくれたことに感謝したいです。こういうテーマについて本を書いてきた方に答えるというのは、自分たちにとっても特別な意味があります。今回のインタヴューは本当に印象に残るものでした。ありがとうございます。
N:うん、本当に。どの質問もすごく丁寧で、ちゃんと私たちのやっていることやメッセージを受け取ってくれている感じがして、とても嬉しかった。
通訳:きっと喜ぶと思います。ありがとうございます。日本でのライヴも本当に楽しみにしていますね!
L&N:私たちもすごく楽しみ。ありがとう! またねー!



















