スケシンさんがデザインを手掛けるC.Eといえば、日本のクラバー御用達のブランドですが、ロンドンのWill Bankheadが主催するレーベル〈The Trilogy Tapes〉とも親交が厚く、これまでに何回もパーティを企画しています。その流れでC.Eのショップにはミックステープなども置いてあるわけですが、つい昨日から、「TTT MOUSE T」という名前のロングスリーブTシャツも売られているようです。C.Eのショップだけ((ウェブでの販売はなし)での販売だそうで、好きな人は早めに行かないとすぐに売り切れちゃいますよ~。
問い合わせ:C.E 03-6712-6688 www.cavempt.com
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![]() SHINGO★西成 ここから・・・いまから 昭和レコード |
般若率いる昭和レコードの3本の矢(般若、ZORN)の1矢、SHINGO★西成が『おかげさまです。』以来3年半振りとなる5thアルバム『ここから…いまから』がリリースされた。名の通り大阪・西成、釜ヶ崎は三角公園界隈がフッドの、日本のヒップホップ・シーンでも突出した存在感を放つ屈指のラップスターである。
もう10年以上前の話だが、SHINGO★西成の取材で初めて西成を訪ねた際に目にした、茶色く錆びた新今宮の鉄路やそのとき食べた100円のモツ煮込みの屋台の光景は、強烈だった。
「なんや、なんかの取材か」
「お兄ちゃん、なにやってるん?」
カメラマンと共にSHINGO★西成にフッドを案内される道中、屋台の前でコテコテの“釜”のおっちゃんたち(もちろんワンカップ片手)が口々にそんなことを言う中、SHINGO★西成を知っていると思しきおっちゃんの一人が、「あれやろ。黒人の河内音頭やな」とヒップホップを説明したのは、奇妙なヤラレタ感として今も自分に残っている。
このおっちゃんの一言のように、SHINGO★西成をインタヴューするのは楽しい時間だし、同時に真理を喝破される怖さを感じさせられる時間でもある。それこそが筆者の感じるゲットーの味というものなのだが……。3年半振りのインタヴューだが、もちろんそこには変わらぬSHINGOさんがいた。
アルバムについて、変わりゆくフッド西成について、ゆっくりと話を聞いた。
毎日怒ってるんちゃう? 毎日怒ってるし、毎日落ち込んでるし……やなぁ。毎日爪噛んでるよ。だから、その取り方も全然間違いじゃない。前より怒ってるかもしれない、前より愛してるかもしれない。
■3年以上ぶりのリリースということですが、この間は、どういった3年半でしたか?
SHINGO★西成:現場にはずっとおったし、もちろんアンテナも張ってた。自分が見たり感じたり信頼ある仲間からの情報で、この3年くらい生活してるかな。兄弟分である同じレーベルメイトの般若でありZORNであり、いつも俺のことを気にしてくれるNORIKIYOであり。近くにこういうイケてるやつがおるから、そういう刺激をもらいながら、兄弟や直の仲間がしないことで逆に俺がやりたいと思ったらやったり。“絶句☆ニッポン”……New Jack SwingはZORN作らないでしょ。
■そうですね(笑)。“絶句☆ニッポン”は新鮮でした。
SHINGO★西成:誰もやれへん……やろ? ああいうの。
■はい。このノリは……と言って良いですかね。僕も今度のアルバムで1、2番目に好きな曲でした。10年前だったらそう思ったかはわからないですが、まさに今こういう気分だぜという感じがしましたね。この前の曲の“鬼ボス”からの流れが、もうイケイケで。
SHINGO★西成:ほんまその通り。俺も、New Jack Swingの時代のラップが逆に今気分的にもバッチリやなと思って、で、客演にTAK-Z&KIRA。近くにおって、いつも刺激くれてるあいつらにやろうや言うて、もうほんまに即答でやってくれた。“鬼ボス”の客演のJ-REXXXもそうやし、あんなにイケてる伸び代が半端ないアーティストがやってくれて、ありがたいよな。
■ただ、ここで重要なのはイケイケでノリノリの曲だから、単純に=気分はノリノリでイケイケということではないと思うんですよね。上手く説明するのが難しいのですが、例えば“絶句☆ニッポン”に関して言えばNew Jack Swingのビートの奥にある感情から起ち上がった言葉というんですかね。ただノリをサンプリングしてノリノリになっているわけではないというか、表面をなぞるだけでは本当のパワーは生めないと言えばいいのか。
SHINGO★西成:まぁ知らないままにスッとできた曲なんかはないなぁ。例えばNew Jack Swingのあの格好良さを表現したいなとか、そういう作りたいテーマはあってんけど、1ヴァースできても次のヴァースができないということはあった。逆にこういうのが作りたいというテーマがはっきり決まってるほど、上澄みだけをとったらあかんから。聴きちぎったからな、もうほんまに。その分、言葉のチョイスや構成もしっかりしたって感じかな。
■これは最近、割とどのインタビューでも聞いてることなのですが、フリースタイル・バトルのブーム然り、現行のHIP HOPのメインストリームがTRAPを経由したものだったり、表現の即興性が増している気がするのですが。そういったことは、SHINGOさんは……どういう言い方をすればいいんですかね。その、どんな感じですか?
SHINGO★西成:どんな感じ? ……いやなんとなく気を遣ってアバウトにしてくれたのはわかるで(笑)。それはエキサイティングって答えたらあかんの? 俺はエキサイティングなもの、自分の予想を超えている人が好きやから。結局、自分のできないことをできてる人は相変わらず好きになってしまうな。それはより素直に、いいもんはいいって言えるようになった。自分とスタイル違うちゃうからノーじゃない。それはなんかわかるでしょ?
■はい、もちろんわかります。
SHINGO★西成:そのなかでちゃっちぃけどキャッチぃ、耳触りのいい、思わず言ってしまうフレーズは、そういうTRAPというかのテイストも入れつつ、こう、古き良きもちゃんと入れたくて、“絶句☆ニッポン”や“あんた”を作った感じかな。
■“あんた”は、まさに“古き良き”テイストの曲ですね。このテイストを日本でHIP HOPのアルバムで表現できるのはSHINGOさん以外いないと思います。
SHINGO★西成:こんだけ歌謡曲っていうか演歌っていうか溢れてる街のなかで育って、なんか、まぁまぁ、“にしなりあほじん”……やしきたかじんさんじゃなくて……みたいなんを作りたいというか、ストリーテリングみたいな曲を作りたいと思って作った。夢を追っかけてる男を好きになってしまった、幸の薄い女を演じて自分が書くというか。たかじんさんが死んで、あの人の歌がパッと聞こえてきた時に、すごい……女の人の気持ちを歌ってんねんな。でも、歌っているのはやっぱり男やし、男にとって都合のええこと多いなと思ったり。けど、男ってそういうこと考えがちやなって思って、それを突き詰めたら曲になった。
■ここまで少し伺っただけでも色々なヴァリエーションの曲があるのがわかりますが、どうやってできていった曲たちなんですか?
SHINGO★西成:うーん、もうほんま生活から出た言葉、やで。
■はい。それはもちろんそうだと思うのですが、すいません、僕の聞き方が悪いですね。3年半の中でコンセプトやテーマがあってそこに向かっていったのか、あるいは自然とできていった曲をアルバムとしてパッケージしたのかというか。
SHINGO★西成:いままでずっとライヴしたり、出会った人から刺激を受けて、こういう曲になったり、言葉のチョイスになったり、行動になったり。とにかく自分の足らないことを出したっていうことやけどな。だから、自然なことなんじゃないの?
■いま仰っていた自分の足りないところを出すということについてもう少し具体的に伺いたいです。
SHINGO★西成:ライヴで失敗したら、こういう失敗したな。だから、こういう曲が欲しいなとか。普段でも、こういう経験して、なんか、こういう時はこうしたいなとか。ライヴ前に聞きたいなとか……“GGGG”とかはそうやな。ちゃんとそのピースが揃ったからアルバムにしたって感じかな。そのピースが足らなかったら出してないかもしらんし。レコーディングすべてを自由にさせてもらってるから。そういうフリーな、その時のヴァイブスを大胆にそのまま使うっていうことは相変わらずしてるけど。刺身で出せる魚は刺身で出すし、片面は焼いときますね、ほぐしてお茶漬けにできるようにしときますねとか。一匹のSHINGO★西成がいろんな味になってる。それが和洋折衷いっぱいあるって感じ? “Fuck you, Thank you ほなさいなら”は黒七味みたいな。そういう風に思ってもらえたら。
まずはイメージする自分はどうなりたいか?
すべきことは何か? 未来どうありたいか?
痛いダルい嫌い言うな気合や気合や
やるかやられるか要は自分次第や
“GGGG”
身内だけの馬鹿騒ぎ 他人の粗探しはもうやめた
楽しく飲んでたのに もう輩とカスが来て酔い冷めた
なにイキってんねん、なに気取ってんねん、
なにスカしてんねん おい
見透かしてんねん バレてんねん
おまえ年末までには消えてんねん ポイ
“Fuck you, Thank you ほなさいなら”
SHINGO★西成:だから前のアルバムを出してから作りたいと思っていた、前回のアルバムを出す前から作りたいと思っていたもの、次のアルバムはこういうなんを作りたいっていうものまで含んで、それをこの3年の間に全部考えた曲という感じかな。例えば「KILL西成BLUES」は、もともと「「ILL西成BLUES」(『SPROUT』収録。2007年リリース作品)を作っている時には、もう考えていた曲だから。
■それは、リミックスみたいな楽曲を作るということをですか?
SHINGO★西成:いや、ちゃうちゃう。感情として。結局、変わらんやん。いつも文句だけ言うて逃げるやつ。いまだったらTwitterとかの書き込みでも、一方通行でひどいこと言って、嫌な思いしてる人、世のなかいっぱいおるやんか。芸能人は思わず、それをテレビで言ってしまうとか。普通につぶやいて炎上してまうとか。炎上するのがわかってて、なんでそんなとこに行くのとか思ったり、でも感情が止められへんかってんなとか。俺やったら作品にしたらええんやなっていうか。
■怒っていますか? アルバム全体で「逆襲」を感じたんですよね。正確ではない表現かもしれませんが。
SHINGO★西成:毎日怒ってるんちゃう? 毎日怒ってるし、毎日落ち込んでるし……やなぁ。毎日爪噛んでるよ。だから、その取り方も全然間違いじゃない。前より怒ってるかもしれない、前より愛してるかもしれない。
■愛してるから怒るんですもんね。
SHINGO★西成:それは前提かな。それを踏まえた上で聴いて欲しいって感じ。そうやなかったら言えへんよ。言う価値無いものに対してはもう言えへんよ、うん。だから怒りが多いと言われても、たしかに怒り多いかもなと思ったりするし、すげえ愛に溢れてるなぁって曲は、もっと愛に溢れた、愛100%の曲にもできたし。なんか、ほんまに寄せ集めたっていうんじゃなくて、喜怒哀楽をテーマにしてたら、喜怒哀楽は全部揃ってたらいいなぁとか。それが喜怒哀だったら楽を作らなあかんなとか。“ここから…今から”、“一等賞”があるから、“Fuck you, Thank you ほなさいなら”“KILL西成BLUES”があるという感じかな。
めぐり合い励まし合い
ぶつかり合い見つめ合い笑い合いそれが愛
守りたいなあの娘のスマイル
繋いでいきたいな色んなスタイル
“ここから…今から”
まぁまぁまぁ、固定せんと相変わらず、一生懸命アホしますから。ドがつくアホで。大がつくバカで、大バカでいきますんで。俺の失敗してるとこも成功してるとこも見てくれたら。で、「ほんまアホやなぁシンゴ!」言うてくれたら最高の褒め言葉やね。
■前作のインタヴューをさせてもらったときに聞いたお話で、浮き足立っていたらちょっと待てと一旦足を止めさせて考えさせるもの、また前に行きたいのに行けない時に背中を押すようなもの、その時、SHINGO★西成さんは自分が表現したい音楽についてそういうことを仰っていて、それがとても印象に残っています。今回は、聞いていてそれは変わらず、さらに感情の深掘りをされているのを感じました。
SHINGO★西成:おおきに、やで。その上でよりシンプルに伝えた方がいいなというので、言葉のチョイスをわかりやすくしたり、日々そういう心がけはしてるけど。でも、ここは言うといた方がいいっていう時には、いきなり“ナイフ”みたいな言葉を出すけど。でもその前後を聞いてもらったら、そういう言葉も出るのやろなっていう。
■あった方がいい言葉はあった方がいいですよね。現実に“ナイフ”はあるわけで。
SHINGO★西成:あるやんか、やっぱり。信頼ももらった代わりに裏切りももらったし、経験もしたし。なんか色々あったからこそ……じゃあ“おおきに”って言ったり“いらっしゃいませ”って言うにしても、なんかこの人“いらっしゃいませ”というのもちゃんと言ってはるなとか、感情入ってるなとか、そんなんと一緒で。「ありがとう」一言、「おおきに」一言、「すんまへん」一言……言葉一言でもその人が乗り移るじゃないけど。その人の人生観が見えるときがあってもいいなと。そう思うからこそ、表現者としてそういう時はちゃんと出せるようにやろうと。そのまま「おーきに」「やっといてー」とか、そのシチュエーションに応じたやり方というんかな。ほんま感謝してる人には感謝してる思いで、ちゃんと言葉を言おうかなと今回は更に思った。前のアルバムよりそこは増したかな。例えば路上でライヴをしている人が10秒間、20秒間、目の前を通る人になんかをメッセージを残したいからやってるわけやんか。止まってる人前提に歌ってるわけじゃないやん? 俺もそのスタンスは変わってないから。パッと聴いたやつとか、有線でたまたまかかった曲、たまたまお店でかかってた俺の曲のパンチラインとかで、なんやこれ? って。そう言ってもらえるように、色々作ったつもりやけどね。だからアルバム単位で聞いてくれたら嬉しいなと思ってる。
■ぜひ、音楽好きな人、悩んでいる人も、楽しいことが好きな人にも、いろんな人に聴いて欲しいです。それでは最後に、これからのSHINGO★西成さんについて伺いたいです。
SHINGO★西成:うーん、どうなるか決めてないからこそのワクワクドキドキ感はあるけど。なんかこうしたいとか、逆に変に固まるの嫌やから。やることやったらなるようになると思ってるし。今はやることやったからなるようになれっていうか。ただ、このアルバムを聴いてくれて、ええなと思ってくれる人が多い土地には行きたいな。まぁまぁまぁ、固定せんと相変わらず、一生懸命アホしますから。ドがつくアホで。大がつくバカで、大バカでいきますんで。俺の失敗してるとこも成功してるとこも見てくれたら。で、「ほんまアホやなぁシンゴ!」言うてくれたら最高の褒め言葉やね。
■ありがとうございます。アルバムのインタヴューは以上ですが、最近西成の坂の上の方(天王寺駅周辺)はアベノハルカスもできて風景が激変しました。SHINGOさんの音楽は名前と同様、西成と不可分な表現なので伺いたいのですが、最近の西成の日々は、何か変わりましたか?
SHINGO★西成:暖かくなってきたからようわからんおっちゃんおばちゃんが仰山表に出てきてるわ。虫みたいなおっちゃんおばちゃんもおるし、お花畑みたいなおっちゃんおばちゃんもおるから食物連鎖でいいんちゃう? なんか生きてる。共生してる街やからね。なんていうかな。なんかこう、都会はお互いをわかってるからこそ、あんな人がいる交差点でもぶつからないやん。西成も独特の、なんかあんねんな、会話が。なんかこう、人の心を掴むっていうか、きっかけをちゃんと持つとか。変わってないよ。変われへんと思うよ。根本は。最近はしゃあないと思うようになったのか変化を受け入れざるを得ない感じやね。俺らが西成WAN(西成ウォールアートニッポン。SHINGO★西成を総合プロデューサーとして、アーティストと地域が協力して街へアートを描くことで、西成のイメージアップと、来訪者の増加を目的としたアートプロジェクト)をやったときも、年齢をとればとるほど新しいことって嫌だったりするやん。いまのこの形でいいやんみたいな。相変わらず変わって欲しくないと望んでいる人も多いけど、その町が変わっていかざるを得ない現実をちょっと納得してきてくれるというか。少しずつ受け入れてきてくれているのは感じてるかな。やっとやで。黒人のことクロンボ言うてるからね。クロンボ歩いたって。アカンよソレは言うたら絶対。この間は白人のこと、トム・クルーズ3人歩いてたって言っとったからね。なんや、その会話って。トム・クルーズは1人やって。俺にはミッション・インポッシブルっす。
■最高ですね(笑)。ありがとうございました。

2000年代から2010年代に切り替わるころ、音楽シーンにトレンド・ワードとして登場したチルウェイヴ。ネオ・サイケやバレアリック感覚に包まれたドリーム・ポップ~シューゲイズ・サウンドというのがその実態で、トロ・イ・モアやネオン・インディアンなどと共に、筆頭アーティストにウォッシュト・アウトことアーネスト・グリーンがいた。〈メキシカン・サマー〉から発表したデビューEP「ライフ・オブ・レジャー」(2009年)、〈サブ・ポップ〉からのファースト・アルバム『ウィジン&ウィズアウト』(2010年)など、「サマー・オブ・ラヴ」や「セカンド・サマー・オブ・ラヴ」の2010年代版とでも言うようなピースフルでメランコリックなムードのそのサウンドは、当時のチルウェイヴ・ムーヴメントを体感するのにピッタリな、まさに入門書的なアルバムと言えるだろう。〈ワイアード・ワールド〉から発表したセカンド・アルバム『パラコズム』(2013年)は、『ライフ・オブ・レジャー』や『ウィジン&ウィズアウト』の世界をより享楽的で開放的なものへ向かわせ、それまでのベッドルーム・サウンドがフェス向けのダイナミックなものへと進化していた。ところで、この頃になるとチルウェイヴという言葉にかつての勢いはなくなり、ブームは過ぎたという見方をするメディアも少なくなかった(もっとも、勝手に名付けて盛り上げていたのはそのメディアなのだが)。だが、アーネスト・グリーンはそうした周りの反応はどこ吹く風といった具合で、いたってマイペースに自分の音楽を貪欲に広げていった。彼自身は周囲の評判には惑わされないタイプで、当時のインタヴューを読むと、「フランク・オーシャンやプールサイドなどの新しいサウンドも面白いけど、ヴァン・モリソンの『アストラル・ウィークス』など昔のレコードから影響されるところも大きいし、メロトロンなど古い時代の楽器や機材を使って『パラコズム』を作った」と述べている。
チルウェイヴのアーティストたちは季節で言えば夏のイメージで、ウォッシュト・アウトも『ウィジン&ウィズアウト』や『パラコズム』を夏シーズンに合わせてリリースしていた。そして、『パラコズム』から4年ぶりとなるこの夏に、新作の『ミスター・メロウ』を発表した。アルバム・タイトルはウォッシュト・アウトらしいけれど、驚いたのは今回のリリース元が〈ストーンズ・スロウ〉に変わったこと。両者にはこれまで接点らしい接点もなく、〈ストーンズ・スロウ〉もこの手のサウンドに強いイメージがなかったのだが(あえて挙げれば、ステップキッズあたりに共通するムードがあるか)、この新たな結びつきによってウォッシュト・アウトのサウンドはまたひとつ前進したようだ。たとえば、それは制作方法の変化にも表われている。『ライフ・オブ・レジャー』や『ウィジン&ウィズアウト』の頃はサンプリング中心の、まさしくベッドルーム・スタジオで作った宅録サウンドだったが、『パラコズム』では生演奏を中心として、前述のようにメロトロンなど凝った楽器・機材も用いていた。『ミスター・メロウ』はその両者のプロセスの良いところを混ぜたもので、サンプリングした素材を発展させてメロディを構築し、そこに新たな楽器演奏や歌を加えてより高度な作品へと編曲しているところが見受けられる。その好例が“ハード・トゥ・セイ・グッドバイ”で、この曲の下敷きとなっているのはイタリアのジャズ・ミュージシャンで作曲家のアメデオ・トマッシによる1970年のサントラ『トーマス』。最近リイシューされたようだが、よほどのサントラ・マニアでないと知らないような超レア盤で、そんなところからサンプリングしてくるあたり、グリーンが実にたくさんの幅広い昔の音楽を聴いているかがわかる。そして、それをハウス・ビートと結び付けて発展させているわけだが、『ミスター・メロウ』はいつも以上にダンス性や享楽性が前面に出てきている。ラウンジ・ジャズをスペイシーで多幸感に満ちたハウス・サウンドへと変換した“ゲット・ロスト”がその典型で、こうした方向性はジェイミー・エックス・エックスの『イン・カラー』やザ・エックス・エックスの『アイ・シー・ユー』と同じベクトルを持つ。レイドバックしたメロウ・ファンクの“バーン・アウト・ブルース”、セルジオ・メンデス&ブラジル66のようなボサ・ロックを取り入れた“フローティング・バイ”では、レトロな音楽や楽器演奏を意図的に素材にしているわけだが、そうした点で一旦は生演奏に傾倒した後、改めてサンプリング・ミュージックの面白さや可能性に気がついたアルバムではないだろうか。
ポスト・ダブステップの臨界点を突破した『Crooks & Lovers』から7年、〈Warp〉へと移籍してポスト・ポスト・ダブステップを探究した『Cold Spring Fault Less Youth』から4年……ようやくである。ドミニク・メイカーとカイ・カンポスからなるデュオ、マウント・キンビーが3枚めのアルバムをリリースする。その新作には、かつてマウント・キンビーのライヴ・メンバーであったジェイムス・ブレイクも参加している。00年代末期、マウント・キンビーもジェイムス・ブレイクもそれぞれに固有の方法で、それまでのダブステップを過去のものにしてしまったわけだが、ときの流れは恐ろしいもので、それからもう8年の月日が過ぎ去っている。それはつまり、かつて彼らの音楽に衝撃を受けたティーンネイジャーたちが、新しい音楽の作り手へと成長を遂げているということだ。そんな“いま”マウント・キンビーは、いったいどんなサウンドを届けてくれるのか。リリースは9月8日。
MOUNT KIMBIE
満を持して新作アルバム『Love What Survives』のリリースを発表!
ジェイムス・ブレイク、ミカチューに続き
キング・クルエル参加の新曲“Blue Train Lines”を解禁!
僕たちのニュー・アルバム『Love What Survives』が、9月8日(金)にリリースされることが決まって、とても興奮してるよ。アルバム制作は、バンドとしての僕らを変えてしまったくらい面白いプロセスで、完成した作品に対しても最高に満足してる。早くみんなにこのサード・アルバムを聴いてもらいたいね。
- Mount Kimbie
4月に盟友ジェイムス・ブレイクをフィーチャーした“We Go Home Together”、5月にはアカデミー賞ノミネート・アーティストとしても高く評価されているミカチューをフィーチャーした“Marilyn”と新曲を立て続けに発表し、先月にはyahyel(ヤイエル)をサポートアクトに迎えたジャパン・ツアーも決定。現在話題沸騰中のマウント・キンビーが、今回満を持して最新アルバム『Love What Survives』のリリースを発表! あわせて長年のコラボレーターであるキング・クルエル参加の新曲“Blue Train Lines”を公開した。
Blue Train Lines (feat. King Krule)
https://youtu.be/OMMlPs0O2rw
今作は『Love What Survives』、常に限界を押し広げていく彼らが贈る、自信に満ち溢れた新たなステートメントであると同時に、これまで積み重ねてきたキャリア全ての集大成とも言える作品となっている。今回公開された“Blue Train Lines”は、2013年にリリースされた前作『Cold Spring Fault Less Youth』以降のバンドの進化を凝縮したような楽曲だ。躍動感のあるリズム・セクションにあわせて、キング・クルエルの渋くしゃがれたヴォーカルが炸裂する。
今作は3年間の濃密な創作活動の結晶である。その間、彼らは様々なアイデアをもとに試行錯誤しながら、他に類がないマウント・キンビーの本領を発揮すべく、曲作りを続け、磨きをかけてきた。ジェイムス・ブレイク、ミカチュー、キング・クルエルといった、ともにイギリスの若き才能の一角を占める親しい友人や共同制作者をヴォーカルに取り込み、聴き手を独特な世界に引き込むマウント・キンビーらしいアルバムをまたひとつ完成させた。
Marilyn (feat. Micachu)
https://youtu.be/VjSKEyR2vDo
We Go Home Together (feat. James Blake)
https://youtu.be/Q-7wzb7sRg8
アルバム全体に漂う、より開放的なオーラは、ロンドンとロサンゼルスの両都市にまたがって制作されたという事実も影響している。2016年にドム・メイカーがアメリカの西海岸へ移り住んだ後、彼らはふたつの都市を行き来しながら、ともに精力的なセッションを重ね、アイデアを磨き上げていった。生活拠点を異文化の広大な土地にある都市に置くことは、新鮮な視野とインスピレーションを得る機会をバントに与え、それが飛躍的進化へと繋がった。
また今作では、80年代のUKファッション・シーンに多大なる影響を与えた伝説のファッション集団〈バッファロー〉の一員でもあり、数多くのファッション・マガジンで活躍していた写真家マーク・ルボンとその息子であるフランク・ルボンが、ミュージック・ビデオの制作およびアルバムのアートワーク制作に参加している。
マウント・キンビーの最新アルバム『Love What Survives』は、9月8日(金)に世界同時リリース! 国内盤にはボーナス・トラック“SLP12 Beat (Part 2)”が追加収録され、解説書と歌詞対訳が封入される。iTunesでは「Mastered for iTunes」フォーマットでマスタリングされた高音質音源での配信となり、アルバムを予約すると“We Go Home Together (feat. James Blake)”、“Marilyn (feat. Micachu)”、“Blue Train Lines (feat. King Krule)”の3曲がいち早くダウンロードできる。
label: BEAT RECORDS / WARP RECORDS
artist: Mount Kimbie
title: Love What Survives
release date: 2017/09/08 ON SALE
BRC-553 ¥2,200(+税)
国内盤特典:ボーナス・トラック追加収録/解説・歌詞対訳付き
beatkart: https://shop.beatink.com/shopdetail/000000002180
amazon: https://amzn.asia/hYzlx5f
iTunes Store: https://apple.co/2uiusNi
Apple Music: https://apple.co/2t3YEeV
Spotify: https://spoti.fi/2uiwx
アルバム詳細はこちら:
https://www.beatink.com/Labels/Warp-Records/Mount-Kimbie/BRC-553
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マウント・キンビー + ヤイエルという夢の組み合せで実現する完売必至の来日ツアーはチケット好評発売中!
お見逃しなく!
MOUNT KIMBIE - JAPAN TOUR 2017
GUEST: yahyel
大阪 10/6 (FRI) Fanj Twice
東京 10/9 (MON) WWW X - "WWW & WWW X Anniversaries"
OPEN 18:00 / START 19:00
前売TICKET ¥6,000 (税込・1ドリンク別途) ※未就学児童入場不可
INFO: BEATINK 03 5768 1277 [www.beatink.com]
■Mount Kimbie | マウント・キンビー
ドミニク・メイカーとカイ・カンポスによるマウント・キンビー。かつてジェイムス・ブレイクもライヴ・メンバーとして在籍し、「ポスト・ダブステップ」という言葉が広く認知され、ひとつの分岐点を迎えたエレクトロニック・ミュージック・シーンにおいて、中心的な役割を果たしてきた。コーンウォールで育ったカンポス。ブライトンで育ったメイカー。ふたりはロンドンのサウスバンク大学在学中に学生寮で出会い、当時熱中しはじめていたエレクトロニック・ミュージック――とりわけ新興のダブステップ・サウンド――を通じて絆を深めていった。シーンに登場した2009年以来、マウント・キンビーは幾度も予想を裏切りながら、ベッドルーム・スタジオのプロデューサーから、近年最も完成されたエレクトロニック・アルバムのひとつを世に問うたクリエイターへと変貌、ポスト・ダブステップの最右翼として成長を遂げた。満を持して発表された3rdアルバム『Love What Survives』には、ジェイムス・ブレイク、ミカチュー、キング・クルエルといった、ともにイギリスの若き才能の一角を占める親しい友人や共同制作者をヴォーカルに取り込み、聴き手を独特な世界に引き込むマウント・キンビーらしいアルバムをまたひとつ完成させた。
■yahyel | ヤイエル
2015年3月に池貝峻、篠田ミル、杉本亘の3名によって結成。同年5月に自主制作の4曲入りEP『Y』をBandcampで公開。同年8月からライヴ活動を本格化、それに伴い、VJの山田健人、ドラマーの大井一彌をメンバーに加え、現在の5人体制へ。2016年、ロンドンの老舗ROUGH TRADEを含む全5箇所での欧州ツアー、フジロックフェスティバル〈Rookie A Go Go〉ステージへの出演を経て、9月に初CD作品『Once / The Flare』をリリース。11月にはアルバム『Flesh and Blood』を発売、一気に注目を集める。2017年にはWARPAINT来日ツアーでオープニング・アクトを務め、VIVA LA ROCK 2017でのステージが入場規制となるなど、精力的にライヴをおこなっている。
最新ミュージック・ビデオ:「Iron (アイアン)」
https://youtu.be/VrwXQ-JvLis
https://www.1969records.tv/2017/artists/yahyel
label: BEAT RECORDS
artist: yahyel
title: Iron
release date: 2017.06.23 FRI ON SALE
iTunes Store: https://apple.co/2sGMO94
Apple Music: https://apple.co/2sGYJDW
Spotify: https://spoti.fi/2sOhkyr
ototoy:
ハイレゾ版 https://ototoy.jp/_/default/p/76445
通常CD音質 https://ototoy.jp/_/default/p/76444
昨年オープンしたWWW Xに続き、新たな「場」が誕生する。クラブPAのワールドスタンダードであるファンクション・ワンを導入し、完全リニューアルしたB1FのWWWラウンジが、「WWWβ(ダブリューダブリューダブリューベータ)」に改称、深夜のクラブ・イベントを軸に新たなプログラムを発信していく。RP・ブー、ボク・ボク、エリシア・クランプトン、インガ・コープランド、インフラ、と、すでに決定している8月のラインナップもじつにアンダーグラウンドかつ豪華な顔ぶれだ。「テスト版」を意味する「β(ベータ)」をコンセプトに、今後もコンテンポラリーでカッティング・エッジなエレクトロニック/ダンス・ミュージック/ヒップホップが展開される「拡張の場」を目指していくとのこと。これは楽しみ!
WWW最深部!
新スピーカーの導入によって完全リニューアルしたWWWラウンジがWWWβ(ベータ)に呼び名を改められ、現代の多様なサウンドを紡ぐ“クラブ・オルタナティブ”をテーマに8月より新装スタート。各イベントの詳細は後日発表。
WWW Lounge completing the renewal with new speakers will be renamed “β” and launch in Aug on the theme “Club Alternative” as the deepest part of WWW spinning a variety of the contemporary sounds. The detail of each event will follow later.

WWWβ | Place to βe in Shibuya
WWWβは渋谷のライブ・スペースWWW / WWW Xにてコンテンポラリーなエレクトロニック/ダンス・ミュージック/ヒップホップを軸にプログラムされ、“クラブ・オルタナティブ”をテーマに多様なサウンドを紡ぐ、“拡張”の場です。
WWWβ is an extended place programing mainly contemporary Electronic / Dance Music / Hip Hop at WWW and WWW X, Live / Club venues in Shibuya Tokyo, spinning a variety of the sounds on the theme “Club Alternative”.
AUG17’
8.04 fri RP Boo - Local 3 World -
8.10 thu Bok Bok w/ Friends - a2z - *before holidays
8.12 sat Elysia Crampton - Local 4 World -
8.23 wed Inga "Lolina" Copeland - TBA - *daytime event
8.26 sat インフラ INFRA


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これはちょっとした事件かもしれない。これまで〈Pan〉から『Dutch Tvashar Plumes』や『Koch』といった尖った作品を発表し、また自身の主宰する〈UIQ〉から独創的なアーティストの数々を送り出してきたリー・ギャンブルが、なんと〈Hyperdub〉に移籍する。9月15日には新作『Mnestic Pressure』のリリースも決定しており、先行して新曲“Istian”が公開されている。やはり〈Hyperdub〉は目の付け所がいいというか、これはちょっとした事件かもしれない。
中古レコードショップじゃないところからこういう作品を探し出したかったという密かな希望は満たされた。久し振りに音楽のための音楽を聴いている気分にさせられるようなユーモアが、アルバムをしてベタつかせていない。だからといってただ軽いわけでもなく、ユーモアと不可分のバリエーションが耳を飽きさせない。キャリアからもよく伺えるブラジル音楽を基調とした音楽的説得力に裏付けされた圧倒的ユーモアと、それの独特なコミュニティでの共有によって作り上げられた作品は痛快そのものだ。
永い間、痛快ということは、民族音楽と言われるものやブルースの専売特許だと思っていた。いい意味での狭さの中の深さが誰しもをスカッとさせるような。『オルガンス山脈』を聴いてそれは古い考えだと気が付いた。
自国ブラジル音楽への尊敬は、ショーン・オヘイガンがプロデューサーとして参加しても、すでに言われているようにポスト・ロック的実験要素が加わっても、ブラジルらしさを損なっていないことからも伺えるが、リズムに目を向けると、ザ・ブラジルのリズムと言われているビートではない曲、例えば#2のUSインディーにあってもおかしくないようなビートでも、#3のショーン・オヘイガンらしいシンプルなビートでも、#8のカンドンブレのリズムにドラムが入っていても、#10のカシンらしいディスコ調のビートでも、ブラジル音楽から得たリズムの普遍性みたいなものを纏っていて、実に空間豊かである。そこに痛快さが残る余白があるし、ユーモアに説得力を与える一因にもなっている。
音の柔らかさや、圧倒的なユーモアという点では、ソフト・ロック的だと言えるかもしれないが、60年代後半のソフト・ロックがここまで全体を見渡せていたようには思えない。当たり前にあった自分たちの音楽が土台になってはいるが、その先は、偶然の産物みたいな曲やアレンジで、アルバムに1曲か2曲キラー・チューンがあって、他は退屈な曲で埋め尽くされている作品がほとんどだ(その1曲か2曲を探すのがエキサイティングなのではありますが)。
一方、『オルガンス山脈』は、必然の賜物だ。2006年にロンドンでの「ドメニコ+2」のショーで出会ったというショーン・オヘイガンのアレンジは、ドメニコのオーガニックなサウンドと相性抜群で、時にショーンの曲にドメニコがアレンジしたかのようにも思えてしまう(それがほんとに行われた時どうなるのかも楽しみだ)。実際、#13はショーンが歌詞、歌、演奏をすべて手掛けていて、ハイ・ラマズの新曲と聴き間違えるというか、そういっても過言ではない。2人の邂逅自体必然だろう。中原氏が指摘している「美しさの中にさりげない実験精神と遊び心と刺激がひそんでいる」という点も、作品をして飽きさせないバリエーションに繋がっている。そして、そのアイデアとセンスの共有の完成度たるや! 誰かが何か言い出して、誰かがそれに返して点とか、創作現場を想像するだけでも胸が躍る。そして、この作品のリズムの豊かさとユーモアに実際に踊る。
保守でもないけど、土台は必要だし、というか気持ちいい方がいいし、進歩でもないけど、土台を元に新しいものと出会う、と。そんな意志というか柔らかさみたいなものをドメニコからは感じる。
この機会に、カエターノの子供たちと言われているコミュニティの作品を色々聴き直してみたが、僕は、この作品が一番面白いと言いたい。確かに、ハイ・ラマズのファンということを差し引いているとは言えないが、まぁ差し引く必要もなく、2人の邂逅を素直に喜びつつ、ショーン・オヘイガン本人も言っている、彼らの「good vibes」に浸りたい。
聴くという行為は音が言葉で置き換えられなくても起こり得るということである。 (本書より)
先日多摩川に行ったら、鬱蒼と茂る土手の草むらのあちこちから、7月の上旬だというのに、早くも虫たちの声が大きく聞こえた。まさに立体音響。臨場感たっぷりのバイノーラル。バイオ・ミュージック。というか、これが自然音。聴かなければ聴こえてこない。ジョン・ケージ風に言えば、聴くことは創造的行為。
90年代に小山田圭吾はこう言った。作り手の想像力と聴き手の想像力が重なる領域で鳴る音楽を目指す。その領域をアンビエントと呼べるなら、『Mellow Waves』にも、ハウス・ミュージックにも、アンビエントがある。
この話は、90年代に某イギリス人ライターに言われたことともリンクしている。読者もいっしょに考えてもらえる文章を目指していると彼はぼくに言った。我こそはそのジャンルのプロパーなりという態度はしない。作品の作者は自分なのだから自分が言っていることが正しいなどと作品を作者の奴隷にしない。自然の音は聴く人が聴けば作品になる。芸術家を崇めることを止める代わりに、凡庸な日々こそが芸術になりえる。そもそも実験とは、“問い直し”を意味する。ゆえに実験主義とアンビエントは隣接し、ゆえに実験とは、保守的な社会への抗議にも結びつく。
デイヴィッド・トゥープの『音の海』には、こうした感覚が巧妙に描かれている。翻訳が出る数年前だったので、ぼくは自分の拙い英語力で苦労しながら原書で読んだものである。翻訳が出てからは、3人の友人に同書日本語版を買わせた。自慢ではないが、ぼくはトゥープをライターとして有名にした『The Face』誌の1984年の黄色い表紙のエレクトロ特集も所有していた。1993年の『The Face』誌の「Ambient Summer」の記事もリアルタイムで読んでいる(『Ambient Works Vol.2』リリース時におけるリチャード・D・ジェイムスのインタヴュー記事も)。影響を受けたと言えるほどトゥープの全著作物を読んでいるわけではないが、尊敬しているライターのひとりであることに間違いはない。
とはいえ、よくわからないところもあった。たとえば、元々はデレク・ベイリー以降に登場したインプロバイザーのひとりであり、イーノの〈オブスキュア〉からも作品を出しているトゥープは、何故いちはやくジャーナリストとしてヒップホップについて著した『Rap Attack』を上梓したのだろうか──。
本書には彼の音楽遍歴がこと細かく記されている。トゥープは前衛/実験音楽の徒である前に、ブルースやソウルといったブラック・ミュージックを幼少期から好んでいる。アカデミズムとも繫がる前衛/実験音楽界、とくにその書き手たちは、涙もろい人情的なソウル・ミュージックなどは本気で相手にしない傾向にある。生活のために書いたとトゥープは告白しているが、『Rap Attack』が気持ち良いのは、まだシーンがアンダーグラウンドだった時代(重要人物と会うのに、面倒な手続きを要しなかった時代)に立ち会えたという幸福が重要項目であるにせよ、テキストの根幹に、トゥープの無垢とも言えるブラック・ミュージックへの愛情があるからだろう。もちろん世のなかには、愛が言い訳にしかならない駄文は多々ある。が、音楽に関する経験と思考を重ねた成果を願わくば他者と共有したいと思うとき、結局のところはそこに行き着くものなのだ。
『フラッター・エコー』はデイヴィッド・トゥープの自伝である。まさかこんなものが読めるとは思わなかったので、嬉しくて、ページをめくるのがもったいない気持ちで本書を読んだ。長年読み続けていたライターの、労苦の絶えなかった人生を知ることができたという喜びも覚えた。とりわけ女性との別れ、そして貧困については赤裸々に書かれているわけだが、彼の人生を見ていると実験音楽やアンビエントといったマニアックな音楽が、知識偏重的でも、高年収専門の音楽でもない、ということがよくわかる。むしろそれは生き方の自由とリンクして、とくに、人生最大の苦境において、自分に残されたオプティミズムのすべてを注いで『音の海』が執筆されたという話は、ぼくを揺さぶるには充分過ぎた。
『音の海』を読んでいると、世界のいろんな“音”の場面が、人知れず接続して、ゆっくりとスムーズに拡がっているような感覚を覚える。それは音楽書の読書体験としては最高レベルのもので、と同時にそれは、聴くという行為が創造的行為であり、そしていまだ実験的かつ神秘的な体験であることを再認識させる。
ライターである私にとって事態をさらに複雑にしているのは、どのようにして言葉で置き換えられることなく音を聴き、その一方で言葉が不在の聴覚体験を言葉で説明するかという問題である。これは不可能に近い。私の一生の仕事であると言える。(本書より)
LAのコレクティヴdublabでDJとして活躍し、イベント〈Sketchbook〉を主宰することで後の〈Low End Theory〉や〈Brainfeeder〉が登場する下地を作ったLAビート・シーンの立役者、クートマことジャスティン・マクナルティ。グラフィック・アーティストにしてビート・メイカーでもある彼は、これまで〈Hit+Run〉を中心に多くのミックステープやミックスCDを発表してきたが、このたび遂にそのデビュー・アルバムのリリースが決定した。発売日は7月28日、レーベルは〈Big Dada〉。現在、先行シングルの「Bury Me By The River」と「Cooler Of Evidence」が公開されているが、なんともダーティでロウファイなこの質感……ガスランプ・キラーやゴンジャスフィのファンは必聴。
Kutmah
L.A.ビート・シーンの立役者クートマが、
ゴンジャスフィ、ジョン・ウェイン、ネイチャーボーイ・フラコ、タラーク、ジェレマイア・ジェイら豪華ゲストが参加したデビュー・アルバムをリリース!
また先行シングル「Cooler Of Evidence (feat. N8NOFACE)」を公開!
「いよいよ世界中の人々が、ビート・ムーヴメントで最も影響力のあるDJのひとりによるデビュー・アルバムを聴くことになると思うと、嬉しくてたまらない」
フライング・ロータス
「クートマは、穴を掘って首を切るような世界のために、光を灯し続けている。彼はこれを20年近く続けていて、その音楽は常に、我々が愛してやまないヒップホップの基盤にその署名を施してきた。そしてDJとしての数々の予想外な瞬間が、物語にいっそうの彩りを加えている」
ガスランプ・キラー
「自分の目指す方向性に合わせるために、これまでにないタイプの音楽を見つけなくてはいけなかった。型破りなビートと抽象的なライムこそが、おれの探していたものだった。そして、〈Jazz Fudge〉、〈Mo Wax〉、〈Asphodel〉、〈Fondle 'Em〉といったところと並んで、〈Big Dada〉は注目していたレーベルだった」
クートマ
長い間待望されていたクートマのデビュー・アルバム『The Revenge Of Black Belly Button!』(『TROBBB!』)が、7月28日に〈Big Dada〉からリリースされる。本作はゴンジャスフィ、ジョン・ウェイン、ネイチャーボーイ・フラコ、タラーク、ジェレマイア・ジェイ、ゼロ、ザッキー・フォース・ファンク、N8NOFACE、サッチ、アケロ・G・ライト、DJクリス・P・カッツといった豪華ミュージシャンが参加しており、禅僧が瞑想を実践するかのような実験的なサウンドを形成するに至っている。風変わりな鋭いビートと抽象的なラップがあり、その音楽はあからさまなパンクやノイズだけでなく、フォークやブルースまでをも網羅している。
また先行シングルとしてN8NOFACEが参加した「Cooler Of Evidence (feat. N8NOFACE)」が公開された。
Kutmah - Cooler Of Evidence (feat. N8NOFACE)
https://kutmah.lnk.to/trobbb/youtube
Kutmah
The Revenge Of Black Belly Button!
Big Dada
2017/07/28 FRI ON SALE
アルバム・プリオーダー(iTunes)
https://kutmah.lnk.to/trobbb/itunes

