「ANS」と一致するもの

These New Puritans - ele-king

 昨年のはじめにリリースされたディーズ・ニュー・ピューリタンズ(以下TNP)のセカンド・アルバム『ヒドゥン』を、今頃になって取り上げるのは他でもない、英国メディアが2010年の重要作としてこぞって賛辞を送るからである。『NME』などは年間ベストという特待ぶりだ。TNPとは何だろうか。クラクソンズらとともに2008年のシーンに浮上し、「ニュー・エキセントリック」等の呼称でメディアから祭り上げられた彼らは、身体性よりも観念を上位に置く点で、ブリティッシュの伝統に眠るプログレッシヴ・ロックの血統を呼び覚ます存在であったとも言えるだろう。セカンドとなる本作においてその傾向はいよいよ強まっている。一方でエディ・スリマンが惚れ込み、ディオールのショーに楽曲提供、また本人たちもモデルとして登場するなどデビュー当初からメジャー感のあるバンドでもあった。方法としては、ダークでミニマルなポスト・パンク的アプローチで強烈に異世界を立ち上げる。ポップ・マーケットにおいて、恋でもなく人生でもなく、種としての人類の卑小さを歌う。それが周囲に比して際立った存在感を放ち、批評性を帯びていることはよく理解できる。UKシーンはこうしたバンドの登場を欲していたわけである。

 しかし、音楽的な評価については少し注意を払いたい。TNPがおもしろいのは、純粋に音のためではないと思うからだ。「iPodのイヤホンなんかのしょうもない音で聴いていたら、きっと新しいスピーカーが欲しくなるだろう。信じてほしい、これはバング&オルフセンを強奪してでも聴く価値がある。(NME)」実際には、おそらく本作の基調を成すブラスや教会風のコーラス隊は、音楽制作ソフトやシンセサイザーなどにプリセットされている音源であり、生音のダイナミズムといったものはない。どちらかといえば平板でちゃちなものである。むしろここで名状されている「iPod」的な音環境にフィットするとさえいえる。しかし、こう考えるのはどうだろうか。本作がおもしろいとすれば、バング&オルフセンなど出る幕のない、こうした平板さのためである、と。

 TNPの佇まいや世界観には、英国中世への幻想をかき立てるところがある。ケルトの森、そこで束縛なく生きるアウトローたち、トラディショナルな楽器が奏でる陽気な舞曲、湿気と冷気にエキゾチックに覆われた伝承的な世界。そして、それを脅かす鎧と剣の世界。TNPのモチーフに重なるのは後者である。"ウィー・ウォント・ウォー"の「ウォー」のイメージは近代戦争ではありえない。トラック半ばで丁寧に「シュキン!」という長剣の音がフィーチャーされているが、その「シュキン!」は、我々が映画やアニメ、ゲームで親しんだファンタジックな中世を象徴するような音だ。本当のところがどうであれ、あの音をきくと無意識に宝飾や意味ありげな刻印のある西洋の剣を思い浮かべるだろう。シャーマニックなドラムと勇ましいブラスに縁どられ、呪文のようなつぶやきがミニマルな展開で高揚を生むこのポスト・パンク・チューンは、CGをふんだんに使った制作費何十億円という歴史ロマンやファンタジー映画が持つ、不思議な平板さを感じさせる。

 けっして論難するのではない。この平板さにリアリティを見たいのである。彼らは生楽器や西洋音楽の正統を継ぐブラス・アンサンブルを、まるで抵抗なくフェイクな音で代用する。彼らが好む中世や古代のイメージもまさに大衆映画的なもので、しっかりと考証されたものというよりはいつか見た勇者とお姫様のRPGのそれと本質的には変わらない。立体的で肉感的な世界をペラペラに圧縮するものである。歴史や時間性を簡単に飛び越えてしまう。本作は、そのようなCG/ゲーム/アニメ的な想像力で成り立ったアルバムである。ただし「虚構の世界をテーマとしたコンセプト・アルバム」などといったものとはおよそ違う。彼らにとってゲーム/アニメ的な世界はコンセプトなどではなく環境なのではないかと思える。音の安っぽさやファンタジー風の世界観はネタではない。彼らにとってオーソドキシーやオーソリティといったものは最初から意味を失っていて、このいびつで半出来なゲーム的音楽こそがリアリティなのではないか。ゲームに詳しくないのだが、それはニンテンドーのピコピコをサンプリングするという態度とも違っている。古い機器に対するフェティシズムを伴う、そんな批評的な遊戯ではない。これは自然であり環境。2次元的な虚構の世界だということは百も承知だけど、でもそんなのはもう普通で、みんなそうでしょう?と。べつに現実の世界にとくに期待するわけでもないし、任意に選んだ好みの世界で、好きなことをやっているだけなのだ、と。よってTNPの音を「ディストピア・ミュージック」として評価するのであれば、彼らの趣味性ばかりでなく、彼らの思惑を超えたところで、その在りよう自体が図らずもポスト・モダンのディストピア的な側面を体現しているととらえるのが正確だ。それはグローファイ/チル・ウェイヴ的な音について、政治的な批評性を欠く逃避音楽だとする「大人」たちからの批判に、「いや、これはオルタナティヴなサイキック・リアリティを伐り拓くものである」と応酬した「チョコレート・ボブカ」のマックレガー氏の言葉にまで繋がっていくだろう。

 "5"のリリックに「すべての木々が歩きはじめ、すべての河が話しはじめる」という部分がある。『NME』誌は「ここにおいて彼らは"タイム・ゾーン"(1曲目)の葬送のモチーフから自然の再生へと円環する」と結論しているが、そのリリックには決定的な続きがある。「それってデジタル操作でそうなるだけなんだけど」。あらゆる情報が平板な一画面に並ぶ世界に彼らと我々は生きている。『ガーディアン』誌はダーティ・プロジェクターズやヴァンパイア・ウイークエンドを引き合いに出しながら、インターネットが可能にした彼らのグローバルな感覚と想像力をTNPにも見出そうとしている。モニター上ですべてのことが起こるこの底の抜けた世界で「ほんとうのこと」とは何か。そこでは木も歩き、河も言葉を話す。TNPはこうした世界をデフォルトとして生きることで、音に強度と説得力とを獲得しているのだろう。

 『ガーディアン』に、1月12日掲載の「ロック・イズント・デッド、イッツ・ジャスト・レスティング(ロックは死んでない。ただ休んでいるだけ)」と題されたブログ記事がある。これは同紙がたきつけた『NME』との「ロックは死んだ」論争のひとつのアンサーだが、週間チャートに占める割合の低さなど全体的なロック不況を指摘しながらも、大きな跳躍力でもってロック・バンドが前線に飛び出てくることを期待する文章である。やはり、というか、もちろんUK国内でもロックの不調に対する深刻な認識があるのだ。これを休息ととるか衰微ととるか、次に何が生まれてくるのか、それとも何も生まれないのか。こうした黎明とも薄暮ともおぼつかない状況下で、オアシス系のコミューナルなバンド・サウンドではなく、TNPというプログレ的なひきこもり音楽に国内メディアの期待が集まっているのはとても興味深いことだ。

yoshimitsu - ele-king

singles & albums 2010


1
Michel Cleis - Gilles Peterson Presents Havana Cultura: Remixed - Brownswood Recordings

2
Theo Parrish - (You are)More Than Paradise(Theo Parrish Translation"Long Version 1" ) - Crue-L

3
DJ Nature - Win Lose And Dance - GOLF CHANNEL

4
Pal Joey - Somewhere In New York Sampler 1 - Pal Joey Music

5
Danny Krivit - Edits by Mr.K vol.2 limited 12" sampler #2. - Strut

6
Bilal - Airtight's Revenge - PlugResearch

7
Moodymann -Ol' Dirty Vinyl - KDJ

8
Dam-Funk - Adolescent Funk - Stones Throw

9
Mulatu Astatke - Timeless - Mochila

10
John Legend & The Roots - Wake Up! - G.O.O.D. Music/Columbia

#9:Flashback 2010 - ele-king

 先日『NME』が20もの音楽メディアによるアルバム・オブ・ザ・イヤーの集計を発表した。対象となったのは『NME』をはじめ『ピッチフォーク』、『ガーディアン』、『ローリング・ストーン』、『スピン』、『Q』、『モジョ』、『アンカット』ほか、ブルックリンで圧倒的に支持されている『ステレオガム』やUKのウェブマガジン『ドローンド・イン・サウンズ』、あるいは超メジャーの『MTV』などなど、主にロック系のメディア。

1. Arcade Fire - The Suburbs
2. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
3. LCD Soundsytem - This Is Happening
4. The National - High Violet
5. Beach House - Teen Dream
6. Vampire Weekend - Contra
7. These New Puritans - Hidden
8. Deerhunter - Halcyon Digest
9. Big Boi - Sir Lucious Left Foot: The Son Of Chico Dusty
10. The Black Keys - Brothers
11. Robyn - Body Talk
12. Yeasayer - Odd Blood
13. Caribou - Swim
14. John Grant - Queen of Denmark
15. Joanna Newsom - Have One On Me
16. Sufjan Stevens - The Age Of Adz
17. Janelle Monae - The ArchAndroid
18. Drake - Thank Me Later
19. Sleigh Bells - Treats
20. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today

 自分の好みはさておき、まあ納得のいく20枚だ。ちなみに僕の個人的なトップ10は以下の通り。

1. Beach House -Teen Dream
2. Darkstar - North
3. 神聖かまってちゃん-みんな死ね
4. Gold Panda - Lucky Shiner
5. Emeralds - Does It Look Like I'm Here?
6. Oneohtrix Point Never - Returnal
7. Factory Floor - Lying / A Wooden Box
8. M.I.A. - /\/\/\Y/\
9. Gayngs - Related
10. Mount Kimbie - Crooks & Lovers

 ビーチ・ハウス以外は『NME』が集計した20枚に入っていないけれど、好みで言えば、ビッグ・ボーイ、ドレイク、ジャネール・モネイ、カリブー......ジョアンナ・ニューサムとディアハンターとアリエル・ピンクに関しては今作がとくにずば抜けているとも思えなかったけれど、もちろん嫌いなわけではない。アーケイド・ファイアーの3枚目は実は最近になってようやく聴けたが、過去の2枚に顕著だった重さはなく、いままででもっとも親しみやすい音楽性だと感じられた。このバンドに関して言えば、対イラク戦争の真っ直なかに発表した反ネオコンの決定版とも言える『ネオン・バイブル』によって、音楽と社会との関わりを重視する欧米での評価を確固たるものにしている。こういうバンドがいまでも一目置かれるのは、欧米の音楽ジャーナリズムが音楽に何を期待しているかの表れである。
 そう、アルバム・オブ・ザ・イヤーとは、その作品の価値や誰かのセンスを主張するものではなく、ジャーナリズムがいまどこに期待しているのか、という観点で読むと面白い。そのセンで言えば、僕にとって2010年に興味深いのはカニエ・ウェストとジーズ・ニュー・ピューリタンズだ。どちらも個人的には好みではないけれど、僕がふだん読んでいるメディアではどこも評価している。おかしなもので、LCDサウンドシステムがいくら評価されても気にもとめないというのに、気にくわないと感じているカニエ・ウェストとジーズ・ニュー・ピューリタンズが高評価だと気になるのだ。
 以下、『ピッチフォーク』、『NME』、『ガーディアン』のトップ10を並べてみよう。

Pitchfork
1. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
2. LCD Soundsystem - This is Happening
3. Deerhunter - Halcyon Digest
4. Big Boi - Sir Lucious Left Foot: The Son of Chico Dusty
5. Beach House - Teen Dream
6. Vampire Weekend - Contra
7. Joanna Newsom - Have One on Me
8. James Blake - The Bells Sketch EP/ CMYK EP/ Klavierwerke EP
9. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today
10. Titus Andronicus - The Monitor

NME
1. These New Puritans - Hidden
2. Arcade Fire - The Suburbs
3. Beach House - Teen Dream
4. LCD Soundsytem - This Is Happening
5. Laura Marling -I Speak Because I Can
6. Foals - Total Life Forever
7. Zola Jesus -Stridulum II
8. Salem - King Night
9. Liars - Sisterworld
10.The Drums - The Drums

The Guardian
1. Janelle Monae- The ArchAndroid
2. Kanye West - My Beautiful Dark Twisted Fantasy
3. Hot Chip - One Life Stand
4. Arcade Fire - The Suburbs
5. These New Puritans - Hidden
6. Robyn - Body Talk
7. Caribou - Swim
8. Laura Marling - I Speak Because I can
9. Ariel Pink's Haunted Graffiti - Before Today
10.John Grant - Queen of Denmark

 カニエ・ウェストのアルバムでまずはっきりしているのは、それがヒップホップのフォーマットから離れていること。「イントローヴァースーフックーヴァースーフックーアウトロ」といった公式をチャラにして、膨大なサンプル(60年代のサイケデリックからゴスペルまで)によって新しい何かを生み出そうとしている......ある種のプログレッシヴな音楽と言えよう(実際プログレだろ、あれは......と僕は思ってしまったのだが)。僕や二木信のような保守的なブラック・ミュージック・リスナーの裏をかいているアルバムとも言えるし、そしてこれはジーズ・ニュー・ピューリタンズへの評価とも重なることなのだが、欧米の音楽ジャーナリズムが知的興奮を知らないチンピラにはもう期待していないということでもある。そしてそれでも(カニエ・ウェストの対極とも言える)ビッグ・ボーイが愛されているのは、暴力性というものに何のロマンスも見てはいないということでもある。まあ、要するにそれだけマッチョイズムと暴力性を日常的に身近に感じているからだろう。

 日本の音楽シーンに関しては、2010年は面白かったと思っている。それはポップ・フィールドにおける相対性理論と神聖かまってちゃんのふたつに象徴されるだろう。どちらもインテレクチュアルなポップで、2010年の日本に対する両極端の、際だった態度表明と言える。つまり、かたやナンセンスでかたやパンク、かたや"あえて抵抗しない"でかたや"とりあえず抵抗してみる"というか......そして好むと好まざるとに関わらず、時代は更新される。僕にとって興味深かったのは、神聖かまってちゃんへの表には出ない嫌悪感だった。それは僕が中学生のときに見てきたセックス・ピストルズやパンクに寄せられた嫌悪感、RCサクセションに寄せられた嫌悪感と見事にオーヴァーラップする。何か、自分の理解や価値観の範疇からはみ出したものが世のなかの文化的な勢力として強くなろうとするとき、それを受け入れる人と拒絶する人にはっきり分かれるものだが、同じことがいま起きているようだ。そして、気にくわないというのは、それだけ気にしているということでもある。(笑)

 エメラルズに関しては、面白いことに『ドローンド・イン・サウンズ』が1位にしている。こうしたチャートの見方というのは、「ではエメラルズを1位にするようなメディアは2位以下を何にするのだろうか」という点にもあるのだが、2位がザ・ナショナルで3位がデフトーンズというのはがっかりした。シューゲイザー好きな編集部のなかの偏執的な編集長があるときエメラルズで壮大なトリップをしてしまったのかもしれない。もちろん、多くの場合は個人的な経験が大切であって、『ガーディアン』の読者が言うように「メディアが選ぶトップ20をわれわれが聴かなければならないという義務はない」わけだが、話のネタとしては大いにアリなのだ。その年何が良かったのかについて話すことは、音楽ファンにとっては楽しみのひとつである。

ELECTRONIC TRIBE -YEBISU NEW YEAR'S PARTY 2011-
会場 THE GARDEN HALL/ROOM
開催日程 2010年12月31日(大晦日) - 2011年1月1日(元旦)
時間 20:30 OPEN / 21:00 start (ALL NIGHT)
料金 ¥6,800(前売券/枚数限定)、¥8,000(当日券)
出演者

DERRICK MAY (Transmat/USA)
DJ KRUSH (JPN)
GILDAS (Kitsune/FRA)
EYE (BOREDOMS/JPN)
rei harakami (JPN)
DEXPISTOLS (ROC TRAX/JPN)
DAEDELUS (Ninja Tune/USA)
FORCE OF NATURE (mule musiq/JPN)
AOKI takamasa (op.disc/raster-noton/commmons/JPN)
TREAD a.k.a. HIROSHI WATANABE (JPN)

VJ:
SO IN THE HOUSE (JPN)
TAKI KOHEI (JPN)
LIKI (JPN,HKG)

 ところで、入手困難になっていたデリック・メイのベスト盤的2枚組『Innovator』の再プレスが決定しました。解説には、私(野田)が1992年に弘石雅和にリズム・イズ・リズムの曲を録音したカセットテープをプレゼンした話から書きました。それはともかく、まだ聴いてない人は必聴ですよ。
https://shop.beatink.com/shopdetail/023005000001/

 ちなみに今回の「ハイテック・ジャパン・ツアー」の日程は以下の通り。私の故郷の静岡でもまわします。日本でもっともずぼらな男に会うためにも、行けたら行こうっと。

HI-TEK-SOUL JAPAN TOUR 2011
DJ: DERRICK MAY (TRANSMAT/DETROIT)

12/31(金)-東京 ELECTRONIC TRIBE @YEBISU GARDEN HALL
www.electronic-tribe.com

1/2(日)-群馬 SPROUT @RAISE
www.s-p-r-o-u-t.com

1/7(金)-静岡 @JAKATA
www.jakata.jp

1/8(土)-大阪 @GRAND CAFE
www.grandcafeosaka.com

Chart by UNION 2010.11.22 - ele-king

Shop Chart


1

MARK ERNESTUS VS. KONONO NO 1

MARK ERNESTUS VS. KONONO NO 1 Masikulu Dub CONGOTRONICS / GER »COMMENT GET MUSIC
自作機材&リサイクル・ジャンクな手作り楽器を用いて生み出す猛烈な電子アフロ・グルーヴで知られるコンゴ出身のストリート・ダンス・バンドKONONO NO1とMARK ERNESTUS(BASIC CHANNEL/RHYTHM & SOUND)による凄まじき邂逅!!!

2

MAYDAY

MAYDAY Relics Sampler RUSHHOUR / NED »COMMENT GET MUSIC
伝説のレーベル・BUZZより92年に発表されたTRANSMATのコンピレーション「RELICS」から、18年の時を越えオフィシャルでMAYDAYのスペシャルEPが登場! アルバムはCD/LP共に中古でも入手困難なだけにこれはマニア垂涎の作品でしょう! LTD 1000・アナログオンリー!

3

JAMIE 3:26

JAMIE 3:26 Basement Edits Vol.2 PARTEHARDY / US »COMMENT GET MUSIC
Theo Parrishのパワープレイもあり異例のロングセラーを記録しているJamie 3:26のBasement Editsの第2弾リリースはこれまでに様々なアーチストが手がけてきた屈指の名曲BLUE MAGIC「Welcome To The Club」 とFATBACK BANDの「Wicky Wacky」のリエディット。シカゴディスコシーンで古くから鳴らされてきた2曲がこの1枚に!

4

SHACKLETON

SHACKLETON Man On A String Part 1 & 2 WOE TO THE SEPTIC HEART / GER »COMMENT GET MUSIC
SKULL DISCOでの出世作を皮切りにPERLON、SCAPEと活動の粋を益々広げるシーン最大のダーク・ヒーローSHACKLETONの新レーベル???『WOE TO THE SEPTIC HEART!』の第一弾リリース!!両面恐ろしいドープっぷり、SHACKLETONにしかできない異形のアングラ・トラック!!必聴!!!!!!

5

PLASTIKMAN

PLASTIKMAN Slinky MINUS / CAN »COMMENT GET MUSIC
話題沸騰! MINUS首領・RICHIE HAWTINによるPLASTIKMAN名義の新作! 95年の「Nostalgik.2」以来実に5年ぶりとなる新曲を収録したファン感涙の1枚! この後リリースが予定されているBOX SET「ARKIVES」に入る予定のA面"Slinky"と、このアナログ盤オンリーのB面"Monkee"!

6

MATTHEW HERBERT

MATTHEW HERBERT Globus Mix Vol. 5 - Letsallmakemistakes TRESOR / JAPAN »COMMENT GET MUSIC
ドープな音の質感とリズムで唯一無二のダンストラックをクリエイトするRadio BoyやWishmountainなど明確なコンセプトを持たせた名義を平行して走らせ、2000年に辿り着いたのがこのミックスCD。「これはテクノか?ハウスか?」という問いを一蹴するかのような独創的な選曲と展開、そして何よりこのジャンルにおける最も大事な「リズムが持つ力」の大切さをリスナーへ楽しく伝えてくれる。

7

RECLOOSE / リクルース

RECLOOSE / リクルース Early Works MUSIC 4 YOUR LEGS/RUSHHOUR / JPN »COMMENT GET MUSIC
カール・クレイグに見出され、インナー・ゾーン・オーケストラにも参加。ジャザノヴァのリミキサーを努め、ジャイルス・ピーターソンにもヘヴィーローテーションされた才能の持ち主リクルースの素晴らしさをあらためて知る1枚。強烈なアブストラクト感覚溢れるデトロイトハウス「MYM230 (R.I.P.)」は今なお輝きを失っていない。

8

SOUND STREAM

SOUND STREAM All Night SOUND STREAM / GER »COMMENT GET MUSIC
出ました!!『SOUND STREAM』の5番!!SMITH 'N' HACKのHACKの方!SOUNDHACK a.k.a. FRANK TIMMの別名義SOUND STREAM最新作!!最近では『OSTGUT TON』の5周年コンピにも参加。久しぶりの今作でも変わらぬ仕事を披露。ディスコ・サンプルを切り貼り、切り貼り!!

9

DELANO SMITH

DELANO SMITH Mix CD 2 MIXMODE / US »COMMENT GET MUSIC
下北沢クラブミュージックショップオープン記念・独占入荷!ディープかつマイナーコードで淡々とリズムを体へと染み込ませてくる前半、そして中盤からはベテランならではのあの「グルーヴ」に乗せられ突き動かされるヴァイヴ、この約80分間という限られた中で最大限で披露した「溜め」と「疾走」の反復は終盤まで飽きることなく、音に浸かり続ける快楽そのものを教えてくれる。

10

BILL HARDY

BILL HARDY Disco Conspiracy PARTEHARDY / US »COMMENT GET MUSIC
Ron Hardyのオリジナルエディット音源をリリースするParte Hardy主催にしてRon Hardyの実の甥Bill Hardy、自信初となる12インチ。シカゴMusic Boxで幾度と無くプレイされTheo ParrishもUgly EditにてピックアップしたMade in USA "Never gonna let you go"、そしてJacksons" Living Together"という2曲をリエディット。オープンリールのカット&ペーストを彷彿とさせるオールドスクールなループが響き渡る1枚!

Haruka (FUTURETERROR) - ele-king

Impulse 10


1
Donato Dozzy & DJ Say - Your Transparent Eyes - Attic Music

2
Blakkat - In This World (Bkat Dtla Dub) - Mild Pitch

3
Space Dimension Controller - BBD Alignment - Royal Oak

4
Andre Zimma feat. Thief - Time Exists In Memories (Slope Dub) - Swedish Brandy

5
Lerosa - Plesso - Ost-Gut-Ton

6
Tiefschwarz - Renix - Classic

7
Dewalta - Eftive - Meander

8
Jacob Korn - Sand - Dolly

9
Sun Electric - Toninas(Fehlman / Meteo RMX) - Shitkatapult

10
Aybee - Ozzie Davis - Deepblak

Chart by UNION 2010.11.10 - ele-king

Shop Chart


1

RICARDO VILLALOBOS

RICARDO VILLALOBOS Au Harem D'archimede PERLON / JPN / »COMMENT GET MUSIC
ミニマル・シーンに留まらずクラブミュージック全般において、もはや別格といえる存在へと昇り詰めたカリスマ・RICARDO VILLALOBOS。そのVILLALOBOSが、歴史的ファースト・アルバム「ALCACHOFA」に続いて世に送り出した問題作がこの作品「THE AU HAREM D' ARCHIMEDE」。モダン・ミニマルの基本とも言えるマスターピース、待望の再発である。

2

MAGDA

MAGDA From The Fallen Page MINUS / JPN / »COMMENT GET MUSIC
RICHIE HAWTINと並びレーベルの顔といえる存在へと登り詰めた"MINUSのファースト・レディー"ことMAGDAが、「SHE'S A DANCING MACHINE」・「FABRIC 49」という2枚の傑作MIX CDを経て、遂に辿り着いたオリジナル・アルバム!

3

RECLOOSE

RECLOOSE Early Works MUSIC 4 YOUR LEGS/RUSHHOUR / »COMMENT GET MUSIC
カール・クレイグに見出され、インナー・ゾーン・オーケストラにも参加。ジャザノヴァのリミキサーを努め、ジャイルス・ピーターソンにもヘヴィーローテーションされた才能の持ち主リクルースの素晴らしさをあらためて知る1枚。強烈なアブストラクト感覚溢れるデトロイトハウス「MYM230 (R.I.P.)」は今なお輝きを失っていない。

4

RICK WADE

RICK WADE Requiem For A Machine Soul HARMONIE PARK / US / »COMMENT GET MUSIC
本作は現在ベルリン~オーストラリア~そして日本で行われているツアープロモーション用に製作された限定100枚のレア化必至のミニアルバム。そしてジャケ、中ジャケ、ラベルデザインを手がけているのはURはもちろんPlanet E、Transmatといったデトロイトのレーベル、そして初期R&SやMaurizio諸作品のアートワークを手がけてきたAbdul Haqqによる書き下ろし。Rick Wadeの奏でるディープな音と共に楽しめるプレミアムアイテム。

5

MOEBIUS & MEUMEIER

MOEBIUS & MEUMEIER Zero Set 2 Reconstruct (Reconstruct By DJ Nobu) MULE MUSIQ / JPN / »COMMENT GET MUSIC
話題騒然「ZERO SET 2 RECONSTRUCT」からのシングルカット! こちらのDJ NOBUリミックス収録盤のみ日本先行発売!アンビエンス漂う小宇宙と強烈な鳴り物ブレイクの2リミックスを収録!

6

A.MOCHI

A.MOCHI Primordial Soup II FIGURE / GER / »COMMENT GET MUSIC
アルバムリリースが待ち遠しいばかりの(リリースはあのLEN FAKI主宰FIGUREです!!)大注目日本人アーティストA.MOCHI、その最新アルバムからのシングル・カット第二弾が到着!!!スパスティックさながらの怒涛のリズム転がしにいやおうがなしでもアがってしまうA-1を筆頭に、彼らしい迫力の重低音を唸らせたソリッドなサウンド、圧巻のロング・ブレイク、深く、そしてタフな強力フロア・ユースを本作も3曲収録。アートワーク含めて◎の一枚!!

7

JAZ

JAZ A Mix By Jaz CLAREMONT56 / UK / »COMMENT GET MUSIC
これまでにリリースされたJAZのエディットを含むクラシック・レアディスコ名曲が満載のこのCDオリジナルの新たなJAZエディット全50曲をJAZがミックス。MUDDによるアートワークデザインに包まれて、限定200枚プレスで、UKと日本のみでの発売です。

8

JENIFA MAYANJA

JENIFA MAYANJA Exclusive BU-MAKO / US / »COMMENT GET MUSIC
ディスクユニオン限定MIX CD-R!!!! USディープ・ハウスシーンの注目レーベル『BU-MAKO』からJENIFA MAYANJAのミックス!!JUS-EDの妻でもあり、BU-MAKOレーベルのオーナーでもあるJENIFA MAYANJA。こちらは彼女が、ディスクユニオンの為に録り下ろしたオリジナルMIX。自身の音源のようなアトモスフィックな空気感と女性らしい思い切りの良いミックスセンスによって、じわりじわりと浸透するBU-MAKO SOUND。限定50枚プレス!!!!

9

TIMO MAAS

TIMO MAAS Balance 017 BALANCE / JPN / »COMMENT GET MUSIC
数多くのミックスシリーズが氾濫する現在において、「FABRIC」や「DJ KICKS」などと並び不動の人気を誇る名物シリーズ「BALANCE」、今作ではなんと世界的人気を誇るDJ/プロデューサーTIMO MAASを起用! かのPAUL OAKENFOLD に見出され、90年代~00年代にかけてトランス/プログレッシブハウスシーンを席巻した天才が、現在主流であるテックハウス~ミニマルハウスを中心に、このコンピのみのエクスクルーシブ・トラックもふんだんに盛り込み創り上げた圧巻の2枚組!

10

DJ JURI

DJ JURI Remixes 1 & 2 フラワーレコーズ / JPN / »COMMENT GET MUSIC
DJ JURIの作品を日本国内の気鋭のプロデューサーたちがリミックスをした作品集でリリースツアー会場だけでしか手に入れることが出来なかった限定盤。どうしてもツアーに足を運べなかった皆様からの多数のお問合せにお答えする形で限定数入荷。まとめ買いセットをご購入の方のみに、ディスクユニオン限定DJ JURIの最新ミックスCDをプレゼント!

You Kobayashi (SWC) - ele-king

YOUKOBA's CHOICE October.2010


1
Marc Houle - The Next - Minus

2
Andrei Fiber - I Want To Have 5 Noses - Indeks Music

3
Mar-T - Propaganda(Marc Marzenit Remix - Wow! Recordings

4
Fantastic Explosion - 血と掟(Blood And Rules) - ExT Recordings

5
Elad Emek - Dansvloer Bloedbad - Magic Powder Music

6
Egbert - Open - Cocoon Recordings

7
Bob Holroyd - African Drug(Four Tet Remix - Phonica Recordings

8
Traks Boys - Yellowbirds(TBD Remix) - Internasjonal

9
Mugwump - Losing Game - Kompakt

10
Mount Kimbie - Field - Hotflush Recordings

弓J(NYE/S) - ele-king

真っ暗なフロア専用 BEST 10


1
Oliver Huntemann & Dubfire - Fuego - Ideal Audio

2
Levon Vincent - Double Jointed Sex Freak(Part1) - Novel Sound

3
Roman Lindau - Sonnerie - Fachwerk

4
Alexander Kowalski - Reset - Damage

5
Brendon moeller - Mainline - Echochord Colour

6
Daniel Stefanik - Transmediale Reshape - Statik Entertainment

7
Robag Wruhme - Colbi Nekk - Musik Krause

8
Mike Sheridan & Mads Langer - Too Close - R&S Records

9
Tom Demac - In Your Eyes - Murmur

10
Onur Ozer - Oval - Cocoon Recordings

interview with Agraph - ele-king


agraph / equal
Ki/oon

Amazon

ゴールド・パンダから〈ラスター・ノートン〉の名前を聞いて、そしてアグラフの『イコール』にはアルヴァ・ノトが参加していることを知る。同じ時期にふたりの新世代の、背景も音楽性も異なるアーティストから、同じように、しかも久しぶりにカールステン・ニコライの名を耳にして、ひっかからないほうが不自然というものだろう。エレクトロニック・ミュージックの新局面はじつに忙しなく、かつて〈ミル・プラトー〉が宣言したようにいろんなものが絡み合いながら脱中心的に動いているように感じられる。
 クラブ・ミュージックに関して言えば、多くの論者が指摘するように、ジェームス・ブレイクが新しいところに向かっている。ドイツ語で"ピアノ作品"を意味する「クラヴィアヴェルクEP」を聴いていると、彼が単なるブリアル・フォロワーではないことを知る。ピアノの心得があることを、彼は5枚目のシングルで披露しているのだが、おかしなことにアグラフもまた、『イコール』において彼のピアノ演奏を打ち出している。なんというか、気兼ねなく自由に弾いている。彼のセカンド・アルバムを特徴づけているのは、ピアノとミニマリズムである。
 
 アグラフの音楽は清潔感があり、叙情的だ。きわめて詩的な広がりを持っている音楽だが、その制作過程は論理的で秩序がある。作者の牛尾憲輔と話していると、彼ができる限り物事を順序立てて思考するタイプの人間であることがよくわかる。その多くが感覚的な行為に委ねられるエレクトロニック・ミュージックの世界においては、彼のそれはどちらかと言えば少数派に属するアティチュードである。そして思索の果てに辿り着いた『イコール』は、いまIDMスタイルの最前線に躍り出ようとしている。
 
 リスナーが、スティーヴ・ライヒ・リヴァイヴァルとカールステン・ニコライを経ながら生まれたこの音楽の前から離れられなくなるのは時間の問題だ。アグラフの、傷ひとつないピアノの旋律を聴いてしまえば、多くの耳は立ち止まるだろう。息を立てるのもはばかれるほどの、控えめでありながら、どこまでもロマンティックな響きの前に。

実家が音楽教室でピアノをやっていたので、坂本龍一さんの曲は弾いてました。それは手癖として残っていると思います。坂本龍一さんの手癖にライヒがのっかているんです(笑)。だから混ざっているように聴こえるんでしょうね。

日常生活ではよく音楽を聴くほうですか?

牛尾:最近は聴かなくなりましたね。本ばっか読んでいます。ぜんぜん聴いてないわけじゃいんですけどね。

音楽が仕事である以上、当然仕事の耳で音楽を聴かなくてはならないと思うんですけど、自分の快楽として聴く場合の音楽はどんな音楽になるんですか?

牛尾:基本的にはすべて電子音楽かクラシックです。

どんな傾向の?

牛尾:一筆書きで描かれた、勢いのあるものよりかは、家で聴いて奥深くなっていける細かく打ち込まれたもの。アパラットみたいな、エレクトロニカとテクノのあいだにあるようなもの。ファーストを作っているときからそうだったんですけど、そういう音楽家、(スティーヴ・)ライヒ的な現代音楽......ミニマルであったりとか、そういう音像の作られ方をしているものをよく聴きますね。

いまの言葉はアグラフの音楽をそっくり説明していますね。

牛尾:そうかもしれません。僕の音楽はそういう影響を僕というフィルターを通して変換しているのかなと思うときもあります。

最初は鍵盤から?

牛尾:はい。

今回のアルバムの特徴のひとつとしては、鍵盤の音、メロディ、旋律といったものが挙げられますよね。

牛尾:そうですね。

自分の音楽をジャンル名で呼ぶとしたら何になると思います?

牛尾:さっき言った、エレクトロニカとテクノのあいだかな。

アンビエントはない?

牛尾:その考え方はないです。

ない?

牛尾:アンビエントをそれほど聴いてきたわけではないんですよ。ファーストを作ったときに「良いアンビエントだね」と言われたりして、それで制作の途中でグローバル・コミュニケーションを教えてもらって初めて聴いたりとか、ブライアン・イーノを聴いてみたりとか......。

イーノでさえも聴いてなかった?

牛尾:意識的に作品を聴いたのはファーストを出したあとです。

カールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)みたい人は、エレクトロニカを聴いている過程で出会ったんだ。

牛尾:そうです。東京工科大学のメディア学部で学んだんですけど、まわりにICC周辺、というかメディア・アートをやられている先輩や先生だったりとかいたんですね。そういう人たちに教えてもらったり、いっしょにライヴに行ったりとか、スノッブな言い方になりますが、アカデミックな延長として聴いていました。

なるほど。アンビエント......という話ではないんだけど、まあ、エレクトロニカを、たとえばこういう説明もできると思たことがあったんですよね。ひとつにはまずエリック・サティのようなクラシック音楽の崩しみたいなところから来ている流れがある。もうひとつには戦後マルチトラック・レコーディングの普及によって多重録音が可能になってからの、ジョージ・マーティンやジョー・ミークやフィル・スペクターみたいな人たち以降の、レコーディングの現場が記憶の現場ではなく創造の現場になってからの流れ、このふたつの流れのなかにエレクトロニカを置くことができるんじゃないかと。アグラフの音楽はまさにそこにあるのかなと、早い話、坂本龍一と『E2-E4』があるんじゃないかと思ったんです(笑)。

牛尾:なるほど(笑)。でも『E2-E4』はそこまで聴いてないんですよ。

やはりライヒのほうが大きい?

牛尾:大きい。『テヒリーム』(1981)みたいにリリカルなものより、彼の出世作が出る前の、テー プ・ミュージックであったりとか、あるいは『ミュージック・フォー・18ミュージシャンズ』(1974)であったりとか、当時のライヒがテープを使って重ねていたようなことをシーケンサーで再現できるように打ち込んだりはよくやりますけどね。

なるほど。

牛尾:坂本龍一さんはたしかにあります。実家が音楽教室でピアノをやっていたので、坂本龍一さんの曲は弾いてました。それは手癖として残っていると思います。坂本龍一さんの手癖にライヒがのっかているんです(笑)。だから混ざっているように聴こえるんでしょうね。

しかも坂本龍一っぽさは、ファーストでは出していないでしょ。

牛尾:出ていないですね。

今回はそれを自由に出している。ファーストの『ア・デイ、フェイズ』よりも自由にやっているよね。

牛尾:ピアノを弾けるんだから弾こうと思ったんですよ。

僕は3曲目(nothing else)がいちばん好きなんですよ。

牛尾:ありがとうございます(笑)。

あの曲は今回のアルバムを象徴するような曲ですよね。

牛尾:そうですね。

ファーストはやっぱ、クラブ・ミュージックに片足を突っ込んでいる感じがあったんだけど。

牛尾:そうです、今回は好きにやっている。ファーストも実は、制作の段階では4つ打ちが入っていたり、エレクトロのビートが入っていたりして、だけど途中で「要らないかな」と思ったんです。それで音量を下げたり、カットしたりしたんですけど、基本的に作り方がダンス・ミュージックだったんですね。展開の仕方もすべて、ダンス・ミュージック・マナーにのってできているんです。今回はクラシカルな要素、アンサンブル的な要素を取り入れていたんです。

まったくそうだね。

牛尾:こないだアンダーワールドの前座をやったんですけど、前作の曲は四分が綺麗にのっかるんです。でも、今回の曲ではそれがのらないので、ライヴをやってもみんな落ち着いちゃうんですよね(笑)。

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「人がない東京郊外の感じをロマンティックに切り取っているよ」と言われて、それはすごく腑に落ちる言い方だなと。とにかく僕の牧歌的な感覚は、そっから来ていると思います。


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今回自分の世界を思い切り出そうと思ったきっかけは何だったんですか?

牛尾:新しいことをやりかったというのがまずあります。前作ではやらなかったこと、まだ自分が出してないものを出そうと。それと、オランダ人で、シメオン・テン・ホルト(Simeon Ten Holt)というミニマルの作家がいて、その人の『カント・オスティナート(Canto Ostinato)』という作品があって、フル・ヴァージョンだとピアノ6台、簡略化された聴きやすいヴァージョンではピアノ4台なんですけど、そのCDのピアノの響きというか、サスティンの音に含まれる空気感みたいなものにとても気づくところがあって、まあ、具体的なものではないんですけど、その空気感に触発されというのはありますね。

ちょっとのいま言った、えー、シメオネ?

牛尾:シメオン・テン・ホルトです。

スペルを教えてもらっていいですか?

牛尾:はい。(といって名前と作品名を書く)

僕もスティーヴ・ライヒは行きましたよ(笑)。90年代に来たときですね。あれは生で聴くと本当に最高ですよ。

牛尾:僕は昨年の来日のときに2回行きました。質疑応答までいました(笑)。

この10年で、スティーヴ・ライヒは見事にリヴァイヴァルしましたよね。

牛尾:僕は技法的にはすごく影響受けましたね。

ミニマル・ミュージックには反復と非連続性であったりとか、ライヒの技法にもいろいろあると思いますが、とくにどこに影響を受けたんですか?

牛尾:フェイジングという技法があって、ずらして重ねていくという技法なんですけど、それを根底においてあとは好きなように作っていく。そうすると反復性と非連続性が、重ねた方であるとか響きの聴かせ方で、再現とまではいかないまでも自分のなかに取り込めるのかなという意識がありました。テクニカルな要素ですけどね。

それはやっぱ、アグラフがピアノを弾けるというのが大きいんだろうね。

牛尾:そうかもしれないですね。とにかくピアノを弾こうというのが今回はあったので。

楽器ができる人はそういうときに強い。ダブみたいな音楽でも、感覚的にディレイをかける人と、ディレイした音とそのとき鳴っている音との調和と不調和までわかる人とでは作品が違ってくるからね。

牛尾:僕はそこまで音感が良いほうではないんですけどね。音楽の理論も多少は学んだけど、ちゃんと理解しているわけでもないし、すごく複雑な転調ができるわけでもないし、ワーグナーみたいな方向の和声展開が豊富にできるわけでもないので、その中途半端さがコンプレックスでもあるんです。ただ、その中途半端さは自分のメロディの描き方にも出ているんですよね。だから、それが欠点なのか、自分の味なのか計りかねているんですよね。

なるほど。

牛尾:このまま勉強していいものなのか、どうなのか......好きなようにやるのがいいと思うんですけど。だからいま、菊地(成孔)さんのバークリー・メソッドの本を置いて、「どうしようかな」と思っているところなんです(笑)。

ハハハハ。まあ、音楽理論が必ずしも作品をコントロールできるわけではないという芸術の面白さもあるからね。それこそ、さっき「一筆書き」と言ったけど、ハウスとかテクノなんていうのは、多くが一筆書きでパンクなわけでしょ。感覚だけでやっていることの限界もあるんだけど、そのなかから面白いものが生まれるのも事実なわけだし。

牛尾:そうですね。そこをどうスウィッチングするのかは僕も考えていかなくてはならないことですしね。

きっと牛尾くんみたいな人は曲の構造を聴いてしまわない? 「どういう風に作られているんだろう?」とか。

牛尾:聴いてしまいますね。

だからエレクトロニカを聴いていても、曲の作り方がわかってしまった時点でつまらくなってしまうという。

牛尾:それはあるかもしれませんね。あと、楽典的な技術ではなくて、音響的な技術に関しては僕はもっとオタクなので、たとえば僕、モーリッツ・フォン・オズワルドのライヴに行っても音響のことばかりが気になってしまうんですね(笑)。だから、内容よりも音像の作り方のほうに耳がいってしまうんですね。

そういう意味でも、アルヴァ・ノトはやっぱ大きかったんですかね。最近、ゴールド・パンダという人に取材したらやっぱその名前が出てきたし、今回のアグラフの作品にもその名前があって、ひょっとしていまこの人も再評価されているのかなと。

牛尾:エポックメイキングな人ですね。

〈ラスター・ノートン〉もいま脚光を浴びているみたいですよ。

牛尾:それは嬉しいですね。僕が好きになったのは大学時代だったんですけど、とにかくやっぱどうやって作っているのかわからない(笑)。すごいなーと。そういえば、こないだミカ・ヴァニオのライヴに行ったら、グリッジを......ホットタッチと言って、むき出しになったケーブルを触ることでパツパツと出していて、僕はもっと知的に作っていたかと思っていたので、すごいパンクだなと思ったんです(笑)。

フィジカルだし、まるでボアダムスですね(笑)。

牛尾:しかもコンピュータを使わずにサンプラーだけでやっている。しかもエレクトライブみたいな安いヤツでやってて。スゲーなと思った(笑)。エイブルトン・ライヴであるとか、monomeというソフトがあって、そういうアメリカ人が手製で作っているハードウェアとソフトのセット、Max/MSPのパッチのセットであるとか、スノッブなエレクトロニカ界隈でよく取り立たされるようなソフトウェアって、実は適当に扱うようにできているんですね。僕からはそういう見えていて、僕はCubaseというソフトを使っているんですけど、すごく拡大して、できるだけ厳密に、顕微鏡的に作ることが多いんです。つまり(ミカ・ヴァニオみたに)そういう風にはできていなくて、ああいう音楽がフィジカルに生まれる環境が実はヨーロッパにはすごくあって......、で、そういう指の動きによる細かさが、ループだけでは終わっていない細かさに繋がっているのかなと。

なるほど。

牛尾:僕は典型的なA型なんで(笑)。

たしかに(笑)。そこまで厳密に思考していくと、どこで曲を手放すのか、大変そうだね。

牛尾:それはもう、そろそろ出さないと忘れられちゃうなとか(笑)。そういうカセがないと、本当にワーク・イン・プログレスしちゃうんで。

それは大変だ。

牛尾:でも、「あ、できた」と思える瞬間があったりもするんです。

ちょっと話が前後しちゃうんだけど、ダンスフロアから離れようという考えはあったんですか?

牛尾:それはないですね。ただ、自由にピアノを弾こうと思っただけで。フロアから離れようとは思っていなかったです。追い込まれた何かがあるわけではないですね。

音楽的な契機は、さっき言った......えー、イタリア人だっけ?

牛尾:いや、オランダ人のシメオン・テン・ホルト。ファーストのときはハラカミ(・レイ)さんへの憧れがすごく強かったんですね。高周波数帯域が出ていない、こもっているような、ああいう作りにものすごい共感があったんです。それでファーストにはその影響が出ている。だから、次の課題としてはその高い周波数をどうするのかというのがあった。それを思ったときも、ピアノのキラキラした感じならその辺ができるなと思って。ピアノの、たとえば高い方の音でトリルと言われる動きをしたときとか、感覚的に言えばハイハットぐらいの響きになるんですね。だから高周波数の扱いを処理すれば、新しいところに行けるかなと思ったんです。

ピアノは何歳からやっていたんですか?

牛尾:6歳です。でも、適当にやってました。

じゃ、ご両親が?

牛尾:いやいや、家が団地の真んなかにあったので、「それじゃ牛尾さん家に集まろうよ」という話になって、そのあと引っ越してから一軒家になってからもそのまま続いているってだけで、親が音楽をやっていたわけではないんですよね。

出身はどこなんですか?

牛尾:東京の多摩のほうです。だから、多摩川をぷらぷら散歩するのが好きで、ファーストは散歩ミュージックとして作っていたので。

牛尾くんの作品の牧歌性みたいなのもそこから来ているのかな?

牛尾:そうだと思いますね。ディレクターから「人がない東京郊外の感じをロマンティックに切り取っているよ」と言われて、それはすごく腑に落ちる言い方だなと。僕は人は描かないんですけど、橋とか建物とか人工物は描いていると思うので。とにかく僕の牧歌的な感覚は、そっから来ていると思います。ただ、ちょっと斜陽がかっていますよね。

なるほど。ずっとピアノだったんですか?

牛尾:とはいえ、ドラクエを弾いたり(笑)。

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夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。


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音楽体験として大きかったのは?

牛尾:アクセス。

なんですかそれは?

牛尾:浅倉 大介さんとか、どJ-POPです。僕はそれをテレビで見て、「将来ミュージシャンになろう」と。それからTMN、小室哲哉さんを見て、「やらなきゃ」と(笑)。

はははは。

牛尾:痩せているから運動部はやめようと(笑)。まあ、そういう感じでしたね。

自分で意識的にCDを買いに行ったのは?

牛尾:クラフトワークですね。中学校まではJ-POPだったんですけど、卒業間際に友だちの家で『ザ・ミックス』を聴いて、もう「すごーい!」と(笑)。"コンピュータ・ラヴ"の「ココココココ......」と短いパルスみたいな音にリヴァーブがかかっているだけというブレイクがあるんですけど、それだけテープに録ってずっと聴いてたっりとか。

はははは。

牛尾:音フェチみたいなのは、もうその頃からありました。気に入った音色をずっと追い続けていたりとか......ピアノを弾いていると戦メリを弾きたくなってくるので、そこから坂本龍一さんを聴いて、YMOを聴いて、みたいなのがちょうどクラフトワークを聴きはじめたのと同じ時期で。そうこうしているうちに90年代後半で、卓球さんやイシイさんも聴いたり、雑誌を見ると「〈ルーパ〉というパーティがあってそこでは80年代のニューウェイヴもかかっているらしい」とか、で、「あー、行かなきゃ」って(笑)。それからジョルジオ・モロダーを探してみたり。そうやって遡っていってるだけなんです。

最初から電子音楽には惹かれていたんだね。

牛尾:家にはピアノとエレクトーンがあったんですけど、ずっとエレクトーンに憧れがあったんですよ。それが大きかったかもしれないですね。で、クラフトワークにいって、それから......「卓球さんが衝撃を受けた"ブルー・マンデー"とはどういう曲なのか」とかね。

そうやって一筆書きの世界に近い付いていったんだね(笑)。

牛尾:そうです(笑)。だから、エレディスコなんです。卓球さんにコンピに入れてもらった曲も、最初に出したデモはオクターヴ・ベースがずっと「デンデンデンデン」と鳴っているような(笑)。ちょうど当時はシド・ミードのサウンドトラックを作るんだと自分で勝手に作っていた時期で。

いまのアグラフの原型は?

牛尾:浪人か大学のときです。でも、ハラカミさんを聴いたのは、高校生のときでしたけどね。だから、エレディスコを作りつつ、そういう、小難しい......。

IDMスタイル(笑)。

牛尾:そう、IDMスタイルと呼ばれるようなものを作りはじめたんです(笑)。だんだん知恵もついてきて、細かい打ち込みもできるようになったし、アグラフの原型ができていった感じですかね。

小難しいことを考えているかもしれないけど、ファーストよりも今回の新作のほうが若々しさを感じたんですよ。だって今回のほうが大胆でしょ。ファーストはもちろん悪くはないんだけどわりと型にはまっているというか。

牛尾:ハラカミさんへの憧れですからね。エレディスコをやっていたのも卓球さんやディスコ・ツインズへの憧れでした。それはいまでもあるんですけど、自分のなかで結実できていないんですよね。それよりも自分に素直に自分の味を出すべきだと思ったんですよね。自分がいま夕日を見ながら聴いて泣いちゃう曲とか(笑)、そこに根ざして曲を作りたかったんです。

なるほど。

牛尾:そうなんです。ファーストは(レイ・ハラカミへの)憧れでしたね。

この新作は時間がかかったでしょ?

牛尾:かかりましたね。ファーストをマスタリングしているときにはすでに取りかかっていましたから。でも、最初はうまくいかなった。『ア・デイ、フェイズ』の"II"になってしまっていたんですね。

最初にできたのは?

牛尾:1曲目(lib)と2曲目(blurred border )です。テクニカルな細かい修正を繰り返しながら、だんだん見えてきて、それで、1曲目と2曲目ができましたね。「行けるかも」とようやく思えました。

アルバムを聴いていてね、ものすごく気持ちよい音楽だと思うんだけど、たとえば1曲目にしても、かならず展開があるというか、だんだん音数が多くなっていくじゃない? ずっとストイックに展開するわけじゃないんだよね。そこらへんに牛尾くんのなかではせめぎ合いがあるんじゃないかなと思ったんですけどね。

牛尾:僕の曲は、後半に盛りあがっていって、ストンと終わる曲が多いんですよ。

多いよね。

牛尾:小説からの影響なんでしょうね。小説をよく読むんです。小説って、それなりに盛りあがっていって、ストンと終わる。あの感じを自分が紡ぎ出す叙情性の波で作りたいんだと思います。

なるほど。

牛尾:僕は散歩しながら聴くことが多いんですけど、曲を聴き終わって、いま見ている風景を......、夕焼けでも朝焼けでも夜の街でもいいんですが、曲が終わったときに風景をそのまま鳥肌が立ちながら見ている感覚というか、それをやりたいんです。

それは面白いね。実際に曲を聴いていて、その終わり方は、きっと考え抜いた挙げ句の結論なんだなというのが伝わってきますね(笑)。

牛尾:ありがとうございます(笑)。

あと、たしかにヘッドフォンで聴くと良いよね。

牛尾:まあ、やっぱ制作の過程で散歩しながら聴いているので、どうしてもそうなってしまいますね。でも、どの音量で聴いても良いように作ったし、爆音で聴かないとでてこないフレーズもあるんですよ。それはわざと織り込んでいる。

ちなみに『イコール』というタイトルはどこから来ているんですか?

牛尾:僕の音楽はコンセプトありきなんです。ファーストは日没から夜明けまでのサウンドトラックというコンセプトで作りました。今回は、夜の海を散歩したこと、夜の街を山の上から見たことが大きなヒントになっています。そのとき感じたのは、「そこにあるのに見えていない」ということだったんです。夜の海は真っ暗で海の存在感はあるのに見えない、夜の街も街はあるのに人が見えない。それはひょっとしたら見ている対象物と自分とが均衡が取れている状態なんだなと思ったんです。そのとき、今回のタイトルにもなった"static,void "とか"equal"とか、そういう単語が出てきた。それでは、これを進めてみようと。抽象的だけど、寄りかかれる柱ができたんです。

なるほど。最後のアルヴァ・ノトのリミックスがまた素晴らしかったですね。

牛尾:そうなんです。今回は10曲作って、最後はもう彼に託そうと。ドイツ人がわけのわからないアンビエントをやって終わるという感じにしたかったんです。そうしたらカールステン(・ニコライ)から「フロア向けにする?」というメールが来て。「あの人も、リミックスのときはフロアを意識するんだ」と驚きましたけどね。

しかもあれでフロア向けというのが(笑)。

牛尾:でも突出していますよね。マスタリングをやってくれたまりんさんにしても、もう1曲リミックスをしてくれたミトさんにしても、あとブックレットに小説を書いてくれた円城(塔)さんにしても、僕の描いた青写真以上のものを挙げてくれた。だから満足度がすごく高い。

僕、小説はまだ読んでないですよね。僕も日常で聴いている音楽はインストが多いんですけど、それはやっぱ想像力が掻き立てられるから好きなんですね。同じ曲を妻といっしょに聴いていても、僕と妻とではぜんぜん思っていることが違っていたりする。そこが面白いんです。

牛尾:そこは僕もまったく同じです。たとえばtwitterで曲を発表すると、僕が持っている「この曲はこういう気持ちで作りました」という正解と、ぜんぜん違った感想をみんな返してくれるんですよね。それが面白いんです。

まさに開かれた解釈というか。だから小説を読んでしまうと、イメージが限定されてしまうようで恐いんです。

牛尾:円城さんは文字を使っているんですけど、ホントに意味わかんないんですよ。言い方は悪いんですけど(笑)。せっかく音楽があるのに、愛だの恋だのと、なんで歌詞で世界観を狭めてしまうんだろうなというのはずっとあるんです。でも、円城さんの言葉は違うんですよ。もっと開かれている言葉なんです。小説を付けたかったわけじゃないんです。円城さんの言葉が欲しかったんです。

なるほど。

牛尾:さらに勘違いしてもらえると思うんです。

わかりました。じゃあ、僕も読んでみます。

牛尾:ぜひ(笑)。

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