「Red Hot」と一致するもの

 2017年早々に、南アフリカの最西南端の都市のケープタウンに行って来た。元ルームメイトが南アフリカ人で、彼の兄がケープタウンで音楽ライターをしていると言うので、音楽シーンを紹介して貰おうと思ったのだ。NYからヨハネスバーグまで16時間、そこからさらに2時間のフライトで、ケープタウンに降り立った。天気も良いし景色は最高。左手には山があり、右にはビーチが広がる。アフリカ大陸、最南端のポイント、喜望峰に行ったり、ワイナリーに行ったり、サーフィンをしたり、思う存分自然を楽しんだ。
 こんな平和で自然な場所に、興味深い音楽シーンがあると聞いた。南アフリカは、そもそもヨーロッパから入って来たハウス・ミュージックが人気で、私が好きなインディロック・ミュージックというのはまったく聞かない。南アフリカで、いま人気があるのは、gqom(ゴム)ミュージックで、その発祥は、ケープタウンではなく、東にあるダーバンらしい。勿論ケープタウンでも、若者達が集まる観光地エリア(ロングストリート、ループストリート、クルーフストリート辺り)では、大勢の人が集まり、大音量の音楽がかかり、活気に溢れていた。空港近くのタウンシップという貧しい地域には、朝から晩までダンス・ミュージックがかかり、キッズ達がたむろしていた。車で近くを通ると「窓を閉めろ」「物はやるな」と同乗者に注意されるのだが、そのタウンシップで、ゴム音楽やシャンガーンなどの南アフリカ・スタイルの音楽が生まれている。

 南アフリカは、ヨーロッパの影響を受けていると書いたが、音楽と人、自然に魅せられ、何度も南アフリカを行き来している(なかには移住した)ヨーロッパ人を何人か知っている。彼らは「いま、ヨーロッパのクラブ文化において、新しく新鮮なものを求められていて、ゴムの感覚は並外れている」と声を揃えて言う。ノルウェイで、音楽ディストリビューション会社で働くTrond Tornesもそのなかの一人。彼はここ10年の間に20回以上も南アフリカに来ていて、ダンス・ミュージックに精通している。
「南アフリカには、ハウス・ミュージック文化が入ってくる前に、独自の音楽とダンス文化があったし、90年代には自由への戦いが南アフリカであり、オーガナイズされた国の抗議者は至る所で団結していた。南アフリカのアンダーグランド音楽は、70年代後期のパンク・シーンのように、いつも海外の文化に影響を受けていたし、90年代には、ガレージ音楽やハウスがNYやシカゴから入って来た。南アフリカの新しい世代は、まさにアパルトヘイトが歴史で、新しい文化的な定義にニーズがある新しい社会に乗っかろうとしているんだ。プロデューサーたちは、ハウスをただコピーするだけでなく、自分達の独自の物を作った。例えば、テンポを下げたり上げたり(124 bpmから106bpm)、歌を加えたり、ベースラインを入れたりね。そしてクワイトが生まれ、いまはゴムが台頭している」
と熱く語る。

 ゴム音楽発祥のダーバンで音楽フェスティバル/国際音楽コンファレンス、「KZNミュージック・インビゾ」をオーガナイズするSiphephelo Mbheleは、南アフリカの音楽シーンをよく知る人物。この2人に、南アフリカの音楽(主にゴム)について語って貰った。

Pic credit: Thanda Kunene / Courtesy of Imbizo festival


インタビュー : Siphephelo Mbhele (KZN Music Imbizo)
https://www.kzn-musicimbizo.co.za/


まず自己紹介をお願いします。

Siphephelo Mbhele:僕は、Siphephelo Mbhele。南アフリカのダーバンと言う都市でKZN Music Imbizoと言う音楽フェスティバルをオーガナイズしている。今年(2017年)で9回目、8/31-9/2に開催される。世界中から音楽関係者が集まり、音楽や映画を発表したり、音楽機器のデモンストレーションをしたり、意見交換会をしたり、プロデューサーの研究室があったり、様々な可能性を試している。

南アフリカ版SXSWみたいなものですね。その南アフリカで、今話題はゴム(gqom)ですが、それについて教えて下さい。

Siphephelo Mbhele:ゴムは、ここダーバンで生まれた音楽のジャンルで、ハウス・ミュージックにブロークン・ビートやカットされたボーカル、チャンティングが入っている。ハイテンポで、大体はベースラインがなくて、DIYで、低予算のストリートサウンドで、何にも似ていないパターンで作られた、騒々しいトライバル音楽のコレクション。なんて、ゴムは、実はベース・キック(ダフ音)の音から来てるんだよ。

Pic credit: Thanda Kunene / Courtesy of Imbizo festival

ゴムは、何から影響されてスタートしたのでしょう。

Sphe:主にテクノロジーに帰するね。ほとんどのゴム音楽は、プロダクションを学んだ若者たちの深いループで出来ている。ソフトウエアへのアクセス権を通して、ファイルを共有するウエブサイトはスパークし、たくさんの人が、音楽を作れると信じてる。もうひとつの重要な要因は、ダーバンの人は、ダンスが好きなこと。ダンス音楽の、いろんな種類を見つけたかったら、ダーバンは完璧な所だよ。ヨハネスバーグは、クワイト(Kwaito-アフリカの音とサンプリングを組み込んだハウス・ミュージック)を90年代から2000年中盤にもたらしたのだけど、クワイト音楽が、そのアピールをなくした時、ダーバンが音楽を復活させた。なので、「ダーバン・クワイト」と呼ばれたものは、非常に商業的になり、誰もが作っていた。そして別の音楽が、タウンシップから成長して来た。それがゴム(gqom)音楽。ほとんどの初期のゴム音楽は、主にエクスタシーについてで、音楽は、タウンシップから出た町のなかの、薄汚い所でプレイされ、ミニバス・タクシーによっても広められた。

ゴムとクワイトでは、共通する所はありますか? どちらも南アフリカの音楽スタイルですよね。

Sphe:そうだね。クワイトが出てきた時のように、最初ゴムには悪い印象がついていた。ゴムも、クワイトのように、タウンシップ・キッズの実験で、音楽遊びだったし、音楽の流通は存在せず、いまでさえメジャーの企業は、つかまえることが出来ない。こういうことは今年は変わると思うけど。すべての動きは、洋服、タウンシップのスラング、ダンス、そして主に楽しい時間(歌詞は大体エクスタシーを含む)に関してで、ゴムは、自己表現の必要性から出て来たんだ。

ゴムはどのように広まっていったのでしょうか。

Sphe:ゴムは、特に、何人かのプロデューサー/ビートメイカーが、大きなレコードレーベルにサインしてから、少しずつ評判を得てきた。ミックス、マスターされてない、リッチなループをベッドルームで作る輩からのね。レーベルのAfrotainmentを通して、何年もかけ、全国に知れ渡った曲も少しはあったかな。そして2016年、この国の一番のヒット曲は、ゴムの「Wololo」だった。環境は変わり、ゴム音楽プロデューサーは、ベッドルームから抜け出し、いまでは、合唱音楽(聖歌隊)やヒップホップや他とコラボレーションしているよ。

ゴムは、純粋に南アフリカの現象ですか? それとも、南アフリカ以外の場所でも起こり得るのでしょうか?

Sphe:音楽には、地元のタッチが入っているけど、エレクトリック・ダンス音楽から影響されたもので、David Guettaのような、DJ/プロデューサーから広められた。

少し前に話題になった、シャンガーン・エレクトロとは関係ないのですか?

Sphe:南アフリカのタウンシップ(Soweto)で生まれたシャンガーン・エレクトロは、独自の発展を遂げたダンス音楽のスタイルで、地元のフォーク伝統を再現している。早いテンポで、ハードに、ハイパーに、電子的なニューウェイヴで、パフォーマーは、コスチュームやマスクを被ったりすることもある。プロデューサーのNozinjaによって世界的に広められたけど、ゴムとは直接関係してない。どちらも新しい動きだけどね。

ゴムDJのなかで、南アフリカ以外の、海外でプレイした人はいますか?もしいるならどこで、どのようなフィードバックがありましたか。

Sphe:Dj LAGは、ケープタウンのブラックメジャーによって、マネッジされていて、海外でもたくさんプレイし評価を得ている。事実上、地元では知られてないんだけど。The Rude BoyzとDj LAG に加えて、数人がこの4月にNYでプレイするよ。レッドブルに呼ばれてね。Spoek Mathamboも、音楽を海外に広めるのに重要な役割を果たしてる。僕は過去2年ぐらい、アフリカ中を旅をしたんだけど、南アフリカの音楽は、いつも取り上げられていて、Addis Ababa (Ethiopia) / Gaborone (Botswana)からRabat(Morocco)まで、ゴムはいつもプレイリストに入っていた。

ゴムでは、どのDJに注目すればいいですか?アップデートされたプレイリストはありますか?

Sphe:ほとんどどのアーティストは、www.audimack.comに載ってるけど、Datafile Hostからのリンクにもまだたくさんいるよ。チェックした方が良いDJは、Dj LAG, Dj Nkoh, Babes Wodumo (singer Wololo), Madanone, Rude Boys,Distruction Boys (producers Wololo), Sainty Baby, Nokzen, ManiqueSoulなどだよ。

どのクラブに行けば、キチンとしたゴム音楽が楽しめますか?

Sphe:Havana(ダーバン, CBD)、101(ダーバン, CBD)。

これから、ゴムはどうなっていくでしょうか。世界中から新しいトラックが出てくるのでしょうか。

Sphe:プロダクションの質は向上し、バトルも実験的なレベルで向上するだろうね。アフリカ中がそうなるのが見えるし、新しいダンスの形が伴うだろう。この動きには、たくさんの可能性があるし、メインストリームのディストリビューションを通して、簡単に世界中に広まるだろうね。

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質問作成&翻訳聞き手: Trond Tornes (phonofile)
https://phonofile.com/

質問作成 & 翻訳: Yoko Sawai

Khidja - ele-king

 アラビックでダビーなハウスを鳴らすルーマニアはブカレストのデュオ、カディージャ(Khidja)が来年1月21日に来日する。
 2014年にリリースされた12インチ「Mustafa & Abdul」で、ジ・アスフォデルスでアンディ・ウェザオールの相棒をつとめるティモシー・J・フェアプレイをリミキサーに迎えていたかれらは、同年、ウェザオール自身の主宰するフェスティヴァルにも出演を果たしている。その後もウェザオールは自身のDJセットでカディージャの手がけたリミックス音源をかけ続けており、これはもう寵愛を受けていると言ってもいいのではないだろうか。いわゆる民族音楽とハウスを融合させたかれらのサウンドは、今秋興味深いアルバムを発表したアシッド・アラブにも通じるところがあるし、この動き、これからどんどん加速していくものと思われる。
 いまのうちにチェックしておいて損はないですよー!



ハウスやテクノ・シーンまでも巻き込む新たな音楽ムーヴメント、モダン・エスニックを牽引する Khidja が国内屈指の Nu Disco Party、Huit Etoiles で初来日!

デビュー間もなく Andrew Weatherall に寵愛され、Red Axes からフル・サポートを受けるのも納得できる頭ひとつ飛び抜けたプロダクションとライヴ・セット! いま最も期待を集めているルーマニアの新鋭デュオ Khidja(カディージャ)が初来日!

近年、いわゆる Nu Disco シーンにおいて新たなるムーヴメントが起こっている。レーベル〈Disco Halal〉や、昨今破竹の勢いで活躍するデュオ Red Axes や Moscoman などはモダン・エスニックと呼ばれ、現在ハウスやテクノまでをも巻き込み時代の中心になりつつある。

そのなかでも彼らに並び称されている驚くべきユニットが Khidja である。彼らのサウンドは中東のエレクトロニック・ミュージックとオーガニック・サウンドを融合させ、シンセサイザーと伝統楽器やグランジーなギターを調和させ、クラウトロックを彷彿させる。

前例のないハイブリッドな進化を遂げ、過去の要素がすべて、電子音とドラムで強化されたら、何が起こるか。できあがるサウンドは、過去に積み上げてきた中東の雰囲気を残しつつ、ハウス、テクノ、ニューウェーヴ、インダストリアルなどに近い、新しいエリアを探求し続けている。

時代から時代へ、ジャンルからジャンルへと、時間を超えて形を変え続ける至極の音楽体験をぜひお見逃しなく!!

Khidja : https://soundcloud.com/poor-relatives

【イベント概要】
" Huit Etoiles Vol.12 ft Khidja "

DATE : 1/21 (SAT)
OPEN : 23:00
DOOR : ¥3,500 / FB discount : ¥3,000

=ROOM1=
Khidja
Sugiurumn
Que Sakamoto
Mustache X
Jun Nishioka

=ROOM2=
Tamaru & Sotaro
EMK & Butch
Ryota O.P.P
PALM BABYS
Bless Hacker
Ayana JJ

※ VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいますよう、よろしくお願いいたします。なお、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※ Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your cooperation.

VENT : https://vent-tokyo.net/schedule/huit-etoiles-vol-12-ft-khidja/
Facebookイベント・ページ : https://www.facebook.com/events/1613826875585829/

 

【INFO】
URL : https://vent-tokyo.net/
Facebook : https://www.facebook.com/vent.omotesando/
Twiter : https://twitter.com/vent_tokyo/
Instagram : https://www.instagram.com/vent.tokyo/

EQUIKNOXX - ele-king

 いま紙エレキングの年末号で死ぬほど忙しいのですが、重要なニュースを告知し忘れておりました。イキノックスが来日します!! 予告として言ってしまいますが、今年の年間ベスト30で、イキノックスは、満場一致でかなり上位に選んでおりまして、ダンス/クラブ系ではダントツ1位っすわ。
 まずはネットで探して聴いて。これ、ダブステップ/グライムの“次”を探していた人なら、間違いなく、「うぉ!」と唸りますよ。そして、このプロデューサーがジャマイカ人だと知ったら、さらに驚くでしょう。いや、ジャマイカの音の革新力、まったくいまも衰えていませんわ。UKのクラブでも大流行だっていうし。すげーよ、ホント、ダンス・ミュージックは更新される!

AHAU - ele-king

最近作業中に聴いていた音楽の中から

AHAU(tomoaki sugiyama)
グラフィックアーティスト、グラフィックデザイナー
1976年横須賀生まれ、東京在住
https://www.instagram.com/ahau_left/

10月16日から、BnA HOTEL Koenjiで展示します。
16日にオープニングパーティーやります。
ぜひ遊びに来てください。


Ahau Exhibition
“The Flyer”巡回展
BnA HOTEL Koenji
2016.10.16[sun] - 11.5[sat]
19:00 - 24:00
Entrance Free
※Close 10.29[sat]、10.30[sun]

Opening Party
10.16[sun] 18:00 - 22:00
LIVE
cinnabom + ARATA(チナボラータ)
DJ
MOODMAN
MINODA
Sports-koide
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Sunday Afternoon Party
10.23[sun] 14:00 - 22:00
DJ
ヤマベケイジ
Q a.k.a. INSIDEMAN
pAradice
弓J
nnn
町田町子
ぬまたまご部長
来夢来人
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Closing Party
11.5[sat] 14:00 - 22:00
DJ
bimidori
THE KLO
do chip a chi
Sports-koide
otooto22
hitch
LIVE
HELIOS
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BnA HOTEL KOENJI
https://www.bna-hotel.com
東京都杉並区高円寺北2-4-7
(JR Koenji Station - 30 seconds)
2-4-7 Koenjikita, Suginami, Tokyo, Japan 166-0003

Deep Medi 10 - ele-king

  去る10月1日、プロデューサーのマーラが2006年にスタートさせたダブステップ・レーベル〈Deep Medi Musik〉 のアニバーサリー・イベントが、彼のホームであるロンドンで開催された。
 多種多様なプレイヤーたちを紹介することにレーベルの目標は置かれ、その範囲はイギリスや同ジャンルのプロデューサーたちに収まるものではない。日本のエレクトロニック・ミュージックを代表するゴス・トラッドは、同レーベルからの諸作品で多くの注目を集め、〈Warp〉の看板ともいえるマーク・プリチャードやドラムンベースの鬼才、カリバーといった面々も、自身の顔のイラストがあしらわれた分厚い12インチをカタログに残している。そのサウンドをアップデートしているのは、若手のスウィンドルやカーン、グライム・シーンを支えるDJ、サー・スパイロらによるリリースだ。
 その飽くなき探究心を鑑みるに、先日、ジャイルス・ピーターソンの〈Brownswood Recordings〉からリリースした『Mirrors』において、ペルーで録音されたサウンド・マテリアルから幻想的な物語を作り上げたマーラ自身の魂は、レーベルに集うエネルギーと共にあると言っていいだろう。
 この夜のために総勢30名に登るDJやMCたちがひとつのステージに集結し、約1700人が入る会場のチケットも当然のごとくソールド・アウトだった。

Sir Spyro - Topper Top ft. Teddy Bruckshot, Lady Chann and Killa P - 2016

 オープン時刻の9時になると会場のエントランスには長蛇の列ができていた。ネットで買ったチケットの購入画面をスキャンし、厳重な荷物&ボディチェックをすませ、開始30分後に会場へ飛び込む。徐々に聴こえてくるのは、A/T/O/Sがシンガーを引き連れて放つ、悲哀に満ちたビートだ。サウンドシステムはヴォイドのインキュバスが設置され、重低音がまだ人がまばらなフロアに地鳴りを起こしていた。
 最初のDJであるサイラスと共に、リュックを背負ったドレッドヘアーのMCサージェント・ポークスもステージに登り、10年以上に渡ってロンドンのダブステップを支え続けてきた声を張り上げる。炎のような男だ。続くKマンがDJデックに立つ頃には、フロアは多くの人々で埋まり、〈Deep Medi〉のイラストを描き続けてきたタンニッジのプレイでこの日最初のリワインド(注:オーディエンスの反応が大きい曲を、DJが巻き戻して最初からプレイし直すこと)が巻き起こった。次の曲のメイン・シーケンスが流れた瞬間に上がる歓声とたくさんの拳。その曲がクラシックではなく今年リリースのこの曲であったことから、ベテランの彼もフロアとともに成長していることがうかがえる。

Dstrict - Drowsy - 2016

 日付が変わる頃には移動するのも困難なほどの数の人々で会場が溢れかえっていた。往年のファンから20代前半の若者まで、多くの世代が入り混じっている。
 ブリストル新世代を代表するカーン&ニーク、リーズ在住のコモドによるバック・トゥ・バックによって、会場はさらなる熱量で包まれた。ニークのシンプルでソリッドな選曲と、カーンのキラー・チューンとが相乗効果を生む。2012年の彼のレーベル・デビュー作である“Dread”がプレイされたとき、フロアは揺れに揺れた。コモドもそこに彼独自の変則的なトライバル・チューンを加えてうねりを生み出し、オーディエンスをロックし続ける。
 カーン&ニークと同じくブリストル出身のライダー・シャフィークが、ここではマイクを握った。ポークスの情熱的なパフォーマンスとは対照的に、彼はクールな立ち振る舞いで呪文を唱えるかのように淡々と言葉を紡ぎ、時に歪んだ声で低音を華麗に乗りこなす。クラブに舞い降りたダブポエットさながらのその姿は、奇しくもその日が命日だったMCスペースエイプに重なっても見えた。豊穣な才能とともに世代は確実に引き継がれているのだろう。続いてステージに上がった、ダブステップにファンクやジャズを持ち込んだ功績を持つシルキーとクエストのセットで、スウィンドルが流れた時も同じことを思った。

Kahn - Dread - 2012

 ゴス・トラッドとトゥルース、そこにマーラが加わって始まった2時15分からの怒涛の1時間、これは間違いなくこの日のピークだろう。マーラは自身のアンセム曲“Changes”でセットをスタートさせ、トゥルースが スクリームの“Midnight Request Line”をかけた時、フロアには狂気が渦巻いていた。僕の記憶が正しければ 、セット前半のゴス・トラッドの選曲はほぼ全てリワインドされていたように思う。“Babylon Fall”がかかったときの会場の一体感も素晴らしかった。
 ダブステップの定義が定まっていない頃に登場したゴス・トラッドのプロダクションは、計り知れない影響をUKのシーンに与え、マーラと初めて顔を合わせたときに彼が口にした「お前を日本に連れて行くから」のひと言は、日本でのダブステップのさらなる拡散に貢献した。人や情報の流れがトランスナショナルになった現在において、住んでいる場所や地域が個人の活動を遮るものではない。それを体現する一例がダブステップというムーヴメントであり、ゴス・トラッドのようなミュージシャンなのだろう。

Goth-Trad - Babylon Fall feat. Max Romeo - 2011

 これ以降も重低音は消えない。スプーキーとサー・スパイロによるMCにレディ・チャンとキラPを向かえたグライム・セット、レーベルの記念すべき第1作目である“Kalawanji” がリワインドされまくったクロームスターとジェイ・ファイヴのバック・トゥ・バック。ハイジャックとベニー・イルが“Cay’s Cray (Digital Mystikz Remix)”をプレイしたとき、終演間際であるにも関わらずフロアには多くの小さな火が灯っていた。

Fat Freddys Drop - Cay’s Crays (Digital Mystikz Remix) - 2006

 〈Deep Medi〉が作品をリリースし続けたこの10年の間に、ロンドンの音楽シーンには実に多くの変化が起きた。オリンピックの再開発などにより高騰した家賃のため、レコード店やクラブが閉鎖し、多くのプロデューサーたちがロンドンを離れている。最近では、ドラッグによる死亡事故が相次いだとはいえ、行政や警察の過剰に見える対応のもと、ロンドンの看板クラブであるファブリックの営業ライセンスが剥奪されてしまった。気のめいる出来事はこれからも続くのかもしれない。
 じゃあ、ここにはどんな希望がるのだろう。プレイの途中で、マーラはこんなことを言っていた。「〈Deep Medi〉は俺のものじゃない。いままで参加したプロデューサー全員のレーベルだ」。これは仲間に向けられた感謝の言葉であり、特定の中心を持たずに拡散していこうとする、ひとつの意思表示でもある。実際のところ、マーラは彼自身がレーベルに関わっていることを、2009年頃まで明らかにはしていなかった。この日のタイムテーブには彼の名前がなかったのだけれども、おそらくそれはそういう意図によるものだ。
 ここで先ほどのゴス・トラッドの例に視点を戻す。東京で実験を繰り広げていた彼がロンドンの地下室で産声を上げたばかりの音楽の一部になったように、世界のどこかで起きていることに関わることができるのは現在を生きる僕たちの権利だ。なんとかファブリックを救おうという活動もネットを介し世界規模で広がり、現在多くの支援金が集まっている。そして何より、10年前にロンドンで生まれたダブステップが今日も健在で、それを支えているのが、世界中でそこに耳を傾けている人々だということも忘れてはいけない。分断の風潮も至るところにある一方、確実に広がるこの水平の繋がりは、自分たちの人生を傾けることができる何かを守る大きな力なのだ。
 これからもダブステップと〈Deep Medi〉には夢を見させてもらおう。終演後、ゴミだらけになった会場でそう思ったのは僕だけだろうか。


NxWorries - ele-king

 次世代のモクモク・ユニットは、2016年に何を残すのか。
 アンダーソン・パークとノレッジからなる、ノー・ウォーリーズがファースト・アルバム『Yes Lawd!』を10月21日にリリースすることを発表した。
 昨年12月にノー・ウォーリーズとして初のEPとなる『Link Up & Suede』を発表し、話題となったが、2016年はアンダーソン・パークが自身名義のソロ・アルバム『Malibu』をリリースしたことも重なり、ノー・ウォーリーズとしての表だった活動はほぼ見られなかった。
 しかし今年6月にはアンダーソン・パークがツイッター上で、ノー・ウォーリーズのスタジオ・アルバムが完成したことを発言し、期待が高まっていた矢先でのリリース発表となった。
 本日9月20日は、WWW Xのオープニング・シリーズとしてアンダーソン・パークの単独公演が開催される。残念ながらチケットは売り切れてしまったようだが、このタイミングでの単独公演となると何か期待したくなるもの。新曲は披露されるのか、淡い期待を抱きながら、今夜は楽しもう。


ノー・ウォーリーズによる「Suede」のライブ映像


また、今回の発表に合わせて、アルバム収録曲の中から「Lyk Dis」が公開された。こちらもマスト・チェック。


『Yes Lawd!』:トラックリスト

1. Intro
2. Livvin
3. Wngs
4. Best One
5. What More Can I Say
6. Kutless
7. Lyk Dis
8. Can’t Stop
9. Get Bigger / Do U Luv
10. Khadijah
11. H.A.N.
12. Scared Money
13. Suede
14. Starlite
15. Sidepiece
16. Jodi
17. Link Up
18. Another Time
19. Fkku
https://www.stonesthrow.com/store/album/nxworries/yes-lawd

yahyel(ヤイエル)を聴いたか? - ele-king

窓の外まで何かが来ている。
風景を歪め、一変させるような何かが──。


yahyel - Once
ビート

iTunes Apple Music

 ジェイムス・ブレイクを方法的に消化しながら、持ち味ともいえるブルージーな節回しで“日本人離れ”したヴォーカル・スタイルを聴かせるこの強烈な個性は、ぜひポップ・フィールドでこそ鳴り響いてほしい。よくも悪くも天然鎖国状態の国内ポップ・シーンだが、まあそれはそれでいいじゃないかと思いかけていたアタマに、彼らは、しかしポップのスタンダードもまたけっしてここにあるわけでないということを思い出させる。ヤイエル(yahyel)の音楽はわたしたちを我に返らせる。

 ベース・ミュージックやR&Bのワールド・スタンダードとして自然に鳴っているヤイエルは、だから、世界進出したJポップでもなければヨウガクでもなく、そういうストレスフルな国境性を感じさせないところから聴こえてくる力強いオルタナティヴだ。しかも音がいい。欧州ツアーが好評だったようだが、国内のテレビなどで普通に流れたときに空気は一変するだろう。今週末に迫った〈フジロック〉にも出演予定だ。

 それでは最新MVの情報を。この“Once”のマスタリングは、ジェイムス・ブレイクはじめ、エイフェックス・ツインにアルカにブラッド・オレンジにFKAツイッグスなど、まさにオルタナにしてスタンダードな第一級の前線アーティストたちを手掛けるマット・コルトンが担当している。



 6/25に惜しまれながら閉店したアザー・ミュージックは、6/28に最後のインストアライブを行った。バンドは、75ダラービル、リック・オーウェン率いるドローンでジャミングなデュオである。5:30開演だったが、4:30にすでに長い行列が出来ていた。こんな人数が店内に入るのかなとの心配をよそに、時間を少し過ぎて、人はどんどん店の中に誘導されていく。すでにレコード、CDの棚は空っぽ、真ん中に大きな空間が出来ていた。こんながらーんとしたアザー・ミュージックを見るのは初めて。たくさんのテレビカメラやヴィデオが入り、ショーはリック・オーウェンの呼びかけでスタート。デュオではじまり、順々にスー・ガーナーはじめ、たくさんの友だちミュージシャンが参加し、ユニークで心地よいジャムセッションを披露した。たくさんの子供たちも後から後から観客に参加し、前一列は子供たちでいっぱいになった。私は、ジャム・セッションを聴きながら、いろんなアザー・ミュージックでの場面がフラッシュバックし、なきそうになった。インストア・ショーが終わると、彼らはそのままストリートに繰り出し、この後8時から、バワリー・ボールルームで行われる、「アザーミュージック・フォーエヴァー」ショーへ、マタナ・ロバート、75ダラービルなど、この日のショーで演奏するミュージシャンとプラスたくさんのアザー・ミュージックの友だちが、セカンドライン・パレード率い誘導してくれた。アザー・ミュージックの旗を掲げ、サックス、トランペット、ドラム、ギター、ベース、などを演奏しながら、アザー・ミュージックからバワリー・ボールルームまでを練り歩いた。警察の車も、ニコニコしながら見守ってくれていたのが印象的。バワリー・ボールルームの前で、散々演奏したあと、みんなはそのまま会場の中へ。


Geoff & daniel @ other music staff。私個人的にとってもお世話になりました。


Juliana barwick


Frankie cosmos

 バワリー会場内もたくさんの人であふれていた。コメディアンのジャネーン・ガロファロがホストを務め、バンドを紹介する(いつの間にか、アザー・ミュージックの共同経営者ジョシュ・マデルに変わっていたのだが)。ジョン・ゾーン、サイキック・イルズ、マタナ・ロバーツ、ビル・カラハン、ヨラ・テンゴ、ヨーコ・オノ、ジュリアナ・バーウィック、シャロン・ヴァン・エッテン、フランキー・コスモス、ヘラド・ネグロ、メネハン・ストリートバンド、ザ・トーレストマン・オン・アースがこの日の出演陣。ドローン、サイケデリック、ジャズ・インプロ、フォーク・ロック、ポップ、ロック、アヴァンギャルド、エレクトロ、インディ・ロック、ファンク、ラテン、ビッグ・バンド、などそれぞれまったくジャンルの違うアーティストを集め、それがとてもアザー・ミュージックらしく、ヘラド・ネグロのボーカルのロバート・カルロスは、「これだけ、さまざまなミュージシャンを集められるなら、アザー・ミュージックでミュージック・フェスティヴァルをやればいいんじゃない」、というアイディアを出していた。オーナーのジョシュが、バンドひとつひとつを思いをこめて紹介していたことや、お客さんへの尊敬も忘れない姿勢がバンドに伝わったのだろう。


Sharon Van etten

 サプライズ・ゲストのヨーコ・オノが登場したときは、会場がかなり揺れたが、ヨーコさんのアヴァンギャルドで奇妙なパフォーマンスが、妙にはまっていておかしかった。ヨ・ラ・テンゴとの息もばっちり。個人的に一番好きだったのは、トーレスト・マン・オン・アースとシャロン・ヴァン・エッテン、ふたりとも、個性的な特徴を持ち、いい具合に肩の力が抜け、声が良い。最後に、アザー・ミュージックの昔と今の従業員たちが全員ステージに集合し、最後の別れをオーナーのジョシュとクリスとともに惜しんでいた。スタッフを見ると、なんてバラエティに富んだ人材を揃えていたのか、それがアザー・ミュージックの宝だったんだな、と感心する。スタッフに会いにお店に通っていた人も少なくない(私もその中の一人)。バンド間でかかる曲も、さすがレコード屋、アザー・ミュージックでよく売れたアルバム100枚が発表されたが、その中からの曲がキチンとかかっていた。最後のアクトが終わり、みんなで別れを惜しみながら、写真を取ったり挨拶したり。会場で、最後にかかった曲はコーネリアスの“スター・フルーツ・サーフ・ライダー”だった。21年間、ありがとうアザー・ミュージック。

https://www.brooklynvegan.com/yoko-ono-yo-la-tengo-sharon-van-etten-bill-callahan-more-played-other-music-forever-farewell-pics-review-video/

■Other Musicで売れたアルバム100枚

1. Belle and Sebastian – If You’re Feeling Sinister
2. Air – Moon Safari
3. Boards of Canada – Music Has the Right to Children
4. Kruder and Dorfmeister – K&D Sessions
5. Yo La Tengo – And Then Nothing Turned Itself Inside Out
6. Os Mutantes – Os Mutantes
7. Neutral Milk Hotel – In the Aeroplane Over the Sea
8. Sigur Ros – Agaetis Byrjun
9. Arcade Fire – Funeral
10. Magnetic Fields – 69 Love Songs
11. Belle and Sebastian – Boy with the Arab Strap
12. Cat Power – Moon Pix
13. The Strokes – Is This It
14. Yo La Tengo – I Can Hear the Heart Beating As One
15. Talvin Singh Presents Anokha: Sounds of the Asian Underground
16. Joanna Newsom – Milk-Eyed Mender
17. Interpol – Turn on the Bright Lights
18. Cat Power – Covers Record
19. Cornelius – Fantasma
20. Serge Gainsbourg – Comic Strip
21. Belle and Sebastian – Tigermilk
22. Godspeed You Black Emperor – Lift Your Skinny Fists
23. Amon Tobin – Permutation
24. DJ Shadow – Endtroducing
25. Animal Collective – Sung Tongs
26. Dungen – Ta Det Lugnt
27. Beirut – Gulag Orkestar
28. Belle and Sebastian – Fold Your Hands Child, You Walk Like a Peasant
29. Clap Your Hands and Say Yeah – S/T
30. ESG – South Bronx Story
31. Cat Power – You Are Free
32. Broadcast – Noise Made by People
33. The Notwist – Neon Golden
34. Animal Collective – Feels
35. Mum – Finally We Are No One
36. Elliott Smith – Either/Or
37. White Stripes – White Blood Cells
38. Bjorn Olsson – Instrumental Music
39. Boards of Canada – In a Beautiful Place
40. Tortoise – TNT
41. Handsome Boy Modeling School – So How’s Your Girl?
42. Antony and the Johnsons – I Am a Bird Now
43. Zero 7 – Simple Things
44. Broken Social Scene – You Forgot It in People
45. Flaming Lips – Soft Bulletin
46. Devendra Banhart – Rejoicing in the Hands
47. Panda Bear – Person Pitch
48. My Bloody Valentine – Loveless
49. Kiki and Herb – Do You Hear What I Hear?
50. Thievery Corporation – DJ Kicks
51. Boards of Canada – Geogaddi
52. Yeah Yeah Yeahs – S/T EP
53. TV on the Radio – Desperate Youth
54. Yo La Tengo – Sounds of the Sounds of Science
55. Sufjan Stevens – Greetings from Michigan
56. Stereolab – Dots and Loops
57. Tortoise – Millions Now Living Will Never Die
58. Neutral Milk Hotel – On Avery Island
59. Le Tigre – S/T
60. ADULT. – Resuscitation
61. Langley Schools Music Project – Innocence and Despair
62. The Shins – Oh Inverted World
63. Slint – Spiderland
64. Air – Premiers Symptomes
65. Roni Size – New Forms
66. Shuggie Otis – Inspiration Information
67. Nite Jewel – Good Evening
68. Fennesz – Endless Summer
69. Bonnie ‘Prince’ Billy – I See a Darkness
70. Radiohead – Kid A
71. Stereolab – Cobra and Phases Group Play Voltage in the Milky Night
72. Franz Ferdinand – S/T
73. Amon Tobin – Supermodified
74. Fischerspooner – S/T
75. Stereolab – Emperor Tomato Ketchup
76. Cat Power – What Would the Community Think?
77. Elliott Smith – XO
78. TV on the Radio – Young Liars
79. UNKLE – Psyence Fiction
80. The Clientele – Suburban Light
81. Clinic – Walking with Thee
82. The xx – xx
83. Serge Gainsbourg – Histoire de Melody Nelson
84. Vampire Weekend – S/T
85. J Dilla – Donuts
86. Massive Attack – Mezzanine
87. Joanna Newsom – Ys
88. Sufjan Stevens – Illinoise
89. Portishead – S/T
90. Jim O’Rourke – Eureka
91. Pavement – Terror Twilight
92. Modest Mouse – Lonesome Crowded West
93. Sleater-Kinney – Dig Me Out
94. Tortoise – Standards
95. Sam Prekop – S/T
96. Blonde Redhead – Melody of Certain Damaged Lemons
97. Arthur Russell – Calling Out of Context
98. Aphex Twin – Selected Ambient Works Vol. 2
99. Grizzly Bear – Yellow House
100. Avalanches – Since I Left You

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Interview with Stuart Braithwaite (Mogwai) - ele-king

 2011年の9月、グラスゴーの小さなフェスでモグワイのライヴを見る機会があった。デリック・メイからジ・オーブ、ワイルド・ビースツなどのジャンル、新旧織り混ざったラインナップ、さらにザ・フォールの次という出番のなか、堂々とメイン・ステージの大トリを務めていた。ステージ上にはファンには馴染み深いセルティックのタオル、エフェクター、そしてスコットランドの国旗のシールが貼られたギター。客席にはスコティッシュ・アクセントで騒ぐ、スコティッシュ・ピープルたち。「荘厳」や「轟音」といったモグワイにかぶさる常套句ももちろん当てはまるライヴだったが、サウスロンドンのグライムMCが畳み掛けるような息づかいで自分の団地についてラップするのを聴いたときのような、圧倒的なローカリティに打ちのめされた夜として記憶に残っている。

 その年に出たアルバムは『ハードコアは死ぬことはないが、お前はちがう(Hardcore Will Never Die, But You Will)』だったが、彼らはそこにシリアスな意味を込めたわけではない。モグワイは2015年に結成20周年を迎えた平均年齢40歳のレペゼン・グラスゴーの「ヤング・チーム」だが、その20年という短くない期間において、彼らはこれまで音楽について、またそれ以外の事柄についても、あまり深くは語ってこなかったし、言葉を使うときは、シンプルなイメージ表現かジョークかのどちらかだったように思う。モグワイを取材した経験のある先輩ライターが「モグワイって音を聴くと思慮深そうだけど、メンバーはそこまで考えているわけでもない」なんて言っているのを聞いたこともある。音楽がすべてを語っていると言えば、それまでなのだが。

 だが近年のモグワイの活動を見ればわかるように、彼らの音や行動の裏には確固たるステートメントが存在しているようだ。2014年にスコットランドのUKからの独立を問う国民投票が行われ、独立派のカルチャー・アイコンとしてキャンペーンの先陣を切っていたのは、何を隠そうこのヤング・チームである。投票が近づくなか、彼らはインタヴューに応え、同郷のミュージシャンたちとライヴまでも行った。投票の結果、反対票が過半数を上回りスコットランドは独立することができなかったのだが、ギター上のナショナル・フラッグが一度もなびかなかったわけではない。彼らのホームであり、スコットランド一の人口を持つグラスゴーでは独立賛成票が過半数を超えていた。あの日、彼らの音楽は人々の声になっていた。


Mogwai - Atomic
Rock Action Records / ホステス

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 10年代も折り返した2016年、モグワイから強烈な1枚『アトミック』が届いた。ドキュメンタリー作家マーク・カズンズがイギリスの公共放送BBCのために作成した、広島の原爆投下以降の原子力と人間の関係を描いた作品『アトミック・リヴィング・イン・ドレッド・アンド・プロミス(Atomic Living in Dread and Promise)』のサウンドトラックをモグワイが担当し、その楽曲を発展させアルバムに仕上げた作品というだけあって、楽曲の内容もタイトルも、いままで以上にヘヴィーだ。ドキュメンタリーにはヒロシマだけではなく、フクシマも出てくる。つまり、モグワイの音はスコットランドから遠くに住むわれわれにとっても無関係ではないのだ。何度も繰り返し聴くのには適さないかもしれないが、聴かないでいることはためらわれるアルバムである。

 偶然にも米国オバマ大統領が広島を訪問した翌週、モグワイは『アトミック』を携え、広島を終着点とした日本ツアーを行った。取材に応じてくれたのは、チームのキーマンであるギターのスチュアート・ブレイスウェイトだ。彼らが考えてないって? まったくそんなことはなかった。原子力の特別な知識をいっさい使わず、「なんかおかしいよな」という素朴な疑問から編み出された彼のシンプルな言葉にはちゃんと切れ味がある。わからないことであっても閉口しないこと。2011年のあの日以来、列島の人々が学んだ教訓を彼の言葉から思い出す。六本木EXシアターの楽屋裏、スチュアートが口を開けば、そこはグラスゴーだった。

■MOGWAI / モグワイ
1995年にスチュアート(G)、ドミニク(B)、マーティン(Dr)、バリー(Vo,G, Key)によって結成されたグラスゴーの重鎮バンド。翌年、自身のレーベル〈ロック・アクション・レコード 〉 よりシングル「Tuner/Lower」でデビュー。数枚のシングルなどを経て、グラスゴーを代表するレーベル〈ケミカルアンダーグラウンド〉と契約、97年にデビュー・アルバム『モグワイ・ヤング・チーム』を発表する。以来、現在までに7枚のスタジオ・アルバムをリリース。フジロック'06でのトリや、メタモルフォーゼ'10の圧巻のステージその他、来日公演も語り草となっている。2015年10月、ベスト・アルバム『セントラル・ベルターズ』を発表。この4月には、広島への原爆投下70年にあわせて昨年放送されたBBCのドキュメンタリー番組『Atomic: Living In Dread and Promise』のサントラのリワーク集『アトミック』もリリースされた。5月には3都市をまわるジャパン・ツアーを開催し成功を収めている。

去年はまるまる『アトミック』の制作をしていたってことになる。

とうとう東京、大阪、そして広島を回る日本ツアーの開始ですね。けっこうスケジュールは詰まっているんですか?

スチュアート・ブレイスウェイト:いや、そうでもないな。今日は金曜日に日本に着いてから、伊豆に住んでいる友だちの家でゆっくりしていたよ。

すごく良いところじゃないですか(笑)。スチュアートさんはまだグラスゴーに住んでいるんですよね? バリー(・バーンズ)さんはドイツに住んでいるようですが、他のメンバーの方もグラスゴー在住ですか?

スチュアート:俺の住んでいる場所はあいかわらずグラスゴーのウエストエンドだよ(笑)。バリー以外はグラスゴー近郊に住んでいるけど、彼もグラスゴーに家を持っている、集まろうと思えば簡単に会える。

あなたが運営しているレーベル〈ロック・アクション(Rock Action)〉の調子はいかがですか? 

スチュアート:おかげさまで忙しくしているよ。2016年に入ってからもマグスター(Mugstar)とデ・ローザ(De Rosa)のアルバムを出したばかりだし、2015年もセイクレッド・ポーズ(Sacred Paws)やエラーズ(Erros)のアルバムを出せたしね。おっと、それから俺たちモグワイの新作も〈ロック・アクション〉からのリリースだ(笑)。グラスゴーのバンドが多い。リメンバー・リメンバー(Remember Remember)のグレアム(・ロナルド)は最近アメリカへ引っ越しちゃったんだけどな。

ではモグワイの新作『アトミック(Atomic)』について訊いていこうと思います。今作は2015年に放映されたBBCのドキュメンタリー番組(『Atomic Living in Dread and Promise』)のサウンドトラックのために作られたアルバムだとのことですが、制作にはどのくらいの時間がかかったのでしょうか?

スチュアート:最初にできた曲は“ファット・マン(Fat Man)”で最後にできたのは“イーサー(Ether)”だ。制作は2015年の春からはじまって、夏にサントラのためにレコーディングをして、秋にはアルバム用に作業をしていたね。だから去年はまるまる『アトミック』の制作をしていたってことになる。

たしかに、いままでの俺たちのやり方とはぜんぜん違うよな。ジョークを言う余地はなかった。

Mogwai / Ether

これまでのモグワイのインタヴューを読み返してみると、曲名やコンセプトにそこまでこだわっていないという趣旨の発言もされています。ですが、今回は「原子力」というとても明確なテーマがあり、曲名も“リトル・ボーイ(Little Boy)”や“ファット・マン(Fat Man)”といった、その黒い歴史を象徴するワードが多く、いままでのモグワイとはかなり対照的な作品だとも言えるでしょう。今回は制作にあたって、テーマに合わせて一から曲を作っていったのでしょうか?

スチュアート:まず「原子力」というテーマがあって、それに合わせて曲を作っていった感じだ。核技術、核爆弾、原発事故といったトピックがドキュメンタリーには登場するんだけど、それらに準じた事柄から名前がとられている。曲ができてから曲名をつけたんだけどね。たしかに、いままでの俺たちのやり方とはぜんぜん違うよな。ジョークを言う余地はなかった(笑)!

曲を作る段階でBBC側からあらかじめ映像や脚本を渡されていたのでしょうか? 

スチュアート:曲を作りはじめた初期段階から、監督のマーク・カズンズ(Mark Cousins)とは打ち合わせをしていて、そのときに映像に使用する予定の映像を見せてくれた。戦争や科学など、いろんな側面から核を捉えた映像だったね。ドキュメンタリーが完成する前だったから、そのときに見た映像の時系列はバラバラだったんだけど、着想を得るには十分だった。

映像制作陣から具体的な曲のディレクションはありましたか?

スチュアート:マークからディレクションがあったわけじゃなくて、基本的にバンドで自由に曲を作っているよ。もちろん映像に曲をフィットさせた部分もある。良いコラボレーションができたと思う。

広島を訪れる前から核兵器に反対していたけど、実際に平和記念公園へ行ってみたら自分は原爆についてほとんど何にも考えていなかったんだなって思わされたよ。

このアルバムの曲名には、一般的な日本人にはあまり馴染みのないものがあります。たとえば“U-235”は広島に投下された原爆に使用されたウランの同位体のことですが、恥ずかしながら僕はいままで知りませんでした。このサウンドトラックを作っている間、ご自分で原子力の歴史についてお調べになったのでしょうか?

スチュアート:ラッキーなことに、俺たちには化学者の友だちがいてさ。彼にも監督との打ち合わせに参加してもらって、そこで具体的な技術や核の歴史についても話してもらった。じつはその友だちに曲のタイトルをつけるのを手伝ってもらったんだよね(笑)。監督のマークにもテーマに関する助言をしていたよ。名前はアンディ・ブルー(Andy Blue)っていうんだけど、重要人物なのにアルバムにクレジットするのを忘れていたぜ(笑)! ははは!

アンディさんはモグワイのブレーンですね(笑)。一応事実確認なんですが、スチュアートさんはCND(注1)のメンバーなんですよね?

スチュアート:そうだよ。ドラムのマーティン(・ブロック)もメンバーだ。

メンバーになったきっかけを教えていただけますか?

スチュアート:俺はずっと核兵器には反対の立場をとってきた。10年くらい前にギグで広島へ行ったんだけど、そのときに平和記念公園にも行ってね。あれはでっかい体験で、その後にCNDのメンバーになることを決心した。  広島を訪れる前から核兵器に反対していたけど、実際に平和記念公園へ行ってみたら自分は原爆についてほとんど何にも考えていなかったんだなって思わされたよ。

スコットランドでは一般の人々は核兵器や原子力についてどのようなイメージを抱いているのでしょうか?

スチュアート:核は悪いものだって思っている人は多いと思うよ。とくにグラスゴーは近くに原子力施設があるから、核エネルギーに関して危機感を持っている人は一定数いる。それなのに政府は、「原発は雇用をつくっています」的ないい加減な情報を流しているんだよね。数千人規模の雇用を生み出しているって言っているくせに、実際に働いているのは数百人ってところだ。

原発の問題は原子力そのものだけではなくて、かなり複合的な問題だ。

日本でも同じようなことが起きていました。原発の安全神話が広告やメディアを通して世間に流布して、真実が見えにくくなっていった。原発産業の構造もいびつで、原発周辺住民にはお金を払っていたりしますね。住む場所によっても問題に対する意識が違ったりもします。

スチュアート:うんうん、そうだよな。原発の問題は原子力そのものだけではなくて、かなり複合的な問題だ。スコットランドには人口の少ない北部にも原子力施設があるんだけど、その地域の人々は違った考え方をしているかもしれない。

2011年の6月に、大量発生したクラゲが冷却装置に侵入したことが原因で、スコットランドのトーネス原発が停止しました。福島の原発事故の後だったので、日本でも反応している人が多かったですね。ちょうどその出来事の後、僕はグラスゴーにいて、それについて現地の人と話してみたんですけど、原発の停止を知らなかったり、「まぁ、事故が起きたわけじゃないだし」と言う人もいたりしました。原子力関連のニュースはあまり話題にならないんですか?

スチュアート:あの事件はよく覚えているよ。スコットランドのメディアはたいしたことないからなぁ(笑)。情報をかなり絞っているから、詳細がなかなか一般層に伝わっていないんだ。

まずはサン・ラーだろ。それからウィリアム・オニーバー(William Onyeabor)の“アトミック・ボム”。あとボブ・ディランの“戦争の親玉”だな。こういった曲を聴ききながら、原子力について考えるようになったのかもしれない。

スコットランドに限ったことじゃないですよ。ところで、日本には『ゴジラ』や『鉄腕アトム』など、原子力を背景に生まれた文化のアイコンがありますが、そういったものには馴染みはありますか?

スチュアート:『ゴジラ』は大好きだよ! あの作品に原子力と関連した背景があるとは考えて観ていたわけじゃないけど、たしかにその繋がりはかなり説得力があるね。

原子力について歌った曲で、何が真っ先に思い浮かびますか?

スチュアート:何曲か思い浮かぶな。まずはサン・ラーだろ。それからウィリアム・オニーバー(William Onyeabor)の“アトミック・ボム”。あとボブ・ディランの“戦争の親玉”だな。こういった曲を聴ききながら、原子力について考えるようになったのかもしれない。
 自分たちが曲を書いているときも、もちろん同じようなことを考えていた。でも同時期に作っていたすべての曲が、原子力に関する曲だったわけじゃない。自分がやっているもうひとつのグループのマイナー・ヴィクトリーズの曲を作っていたんだけど、その時は気持ちを切り替えて作っていた。自分が作る曲は、その時々でその裏にある伝えたいものは変わってくる。

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人間なんだからそれぞれの自分の考えを持っていて当然だし、俺たちがやることに対して反対意見があって当然だと思う。それでも俺は自分の意見を持つことが大事だと思うし、自分とは違った意見を持つ人々に対しても耳を傾けるべきだと思うし、そうすることに間違いなく価値があるんじゃないかな。

2011年の福島での原発事故のあと、日本では多くのミュージシャンたちが反原発を表明しました。彼らは賛同得た一方で、もちろんさまざまな批判にもあいました。今回、モグワイも原子力への考えを明確にしたわけですが、異なる立場の人々から自分たちが批判を受けるであろうことは予測していたと思います。なぜあなたたちは、そのようなリスキーな選択をする決心をしたのでしょうか?

スチュアート:人間なんだからそれぞれの自分の考えを持っていて当然だし、俺たちがやることに対して反対意見があって当然だと思う。それでも俺は自分の意見を持つことが大事だと思うし、自分とは違った意見を持つ人々に対しても耳を傾けるべきだと思うし、そうすることに間違いなく価値があるんじゃないかな。
 多少はリスキーなことかもしれないけど、今回のプロジェクトは素晴らしいものだってわかったから、自分たちの主張を前に出す決断をすることができた。原子力に関するステートメントだけではなく、俺たちのアティチュードや信条とも共鳴する部分がこのプロジェクトにはあったしね。
 もし自分たちが特定の意見??今回は原子力に関するもの??がなかったとしても、このプロジェクトを進めることができたかもしれない。俺たちの役割は曲を作ることだったからさ。このレコードにある政治的なテキストは監督のマークが考えたもので、俺たちはその考えを広める役割を担っただけだしな(笑)。でも音楽にだけではなく、さらには俺たちの考えにも耳を傾けてくれた人たちもいて嬉しかったよ。

原子力に関するバンドのなかでの意見はみんな一致しているのでしょうか?

スチュアート:もちろん。メンバー全員が同じ意見を100パーセント共有している。

偶然ですが、あなたたちが広島公演を行うのとほぼ同タイミングで、アメリカのオバマ大統領も広島を訪問するんですよね。

スチュアート:彼が訪問するなんて思いもよらなかったよな。日本の人たちがどの程度、普段から広島について考えているかわからないから、今回のオバマ大統領の訪問がどんな意味を持つのか、俺にはよくわからないんだけどね。モグワイがほぼ同じ時期に広島に来ることになるなんて、すごい偶然だよな。

本当に核兵器が必要なのかどうか疑問だし、核兵器を管理するお金を貧困層にまわせばいいのにと思う。なんかおかしいよな。

核軍縮を訴えたプラハ宣言が大きなきっかけとなり、2009年にオバマ大統領はノーベル平和賞を受賞しました。しかし、現段階でアメリカは核軍縮に向け具体的な努力をしているとは言えません。オバマ大統領に対して何か意見はありますか?

スチュアート:彼が核軍縮を訴える姿はかっこいいけどね(笑)。本当に核兵器が必要なのかどうか疑問だし、核兵器を管理するお金を貧困層にまわせばいいのにと思う。なんかおかしいよな。

このアルバムやドキュメンタリーのプロジェクトを通して、あなたたちが成し遂げたいこととは何でしょうか?

スチュアート:このアルバムやプロジェクトがどのような効果を及ぼすまでは俺にはわからない。でも、歴史を振り返ってみて、過去に起きたことを知るきっかけになればいいと思う。具体的に何が変わるかはわからないけど、多くの人々が、この原子力について考えるようになればそれでいいんだ。

スコットランドの独立を支持する意見のなかには、UK全体の政治のなかで、スコットランド票がまったく機能していないというものがある。つまりUKの政治にはスコットランドの声が届いていないということだ。


Mogwai - Atomic
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それではスコットランドに関連する質問をさせてください。モグワイは2014年のスコットランド独立を問う国民投票に合わせて、独立賛成派として同じくスコットランド出身のフランツ・フェルディナンドらとともに、独立派を支援するキャンペーンを行っていましたが、投票の結果、賛成票が過半数に届かずスコットランドは独立することはできませんでした。現時点から振り返ってみて、あなたはスコットランドの独立をどのように捉えていますか?

スチュアート:いまだって俺はスコットランドの独立を支持しているし、そうするべきだと思っているよ。たしかに俺たちは国民投票前に独立派のキャンペーンにも関わっていたから、票を得られなかったのはけっこう辛い経験だったことは事実だ(笑)。でも機会があればまた俺たちは関わるだろう。

スコットランド人の学生やミュージシャンに独立について意見を聞いてみたのですが、リベラルな意見を持った人々も独立を支持していますよね。またイングランドの労働党のサポーターにも、スコットランドの独立を肯定的に捉えている人々がいます。ですが、周辺国や日本には、保守派や「クレイジーな右派」が独立支持の多くを占めていると思っている人が多い印象があるんですよ。

スチュアート:実際にはぜんぜん違うのにね。スコットランドの独立を支持する意見のなかには、UK全体の政治のなかで、スコットランド票がまったく機能していないというものがある。つまりUKの政治にはスコットランドの声が届いていないということだ。なぜスコットランドも構成国のひとつなのに、イングランド側が決めた方針で核兵器やイラク戦争に国の金が使われなきゃいけないんだ? 難民問題に対するUKの対応だってひどいよな。独立派のなかには、スコットランドが政治的に自由になって、よりリベラルで社会主義的な姿勢を国政に反映させることを望む声だってあったんだよ。クレイジーな戦争なんてうんざりだって意見もあった。いまは少し変わってしまった部分もあるけどね。そういった人々にとって、当時のSNP(注2)は良いオルタナティヴに見えた。

セルティックは60年代にヨーロピアン・カップで優勝したことがあるんだけど、そのセルティックとレスターが重なって見えてさ。

残念ながら、日本にはユナイテッド・キングダムがどういう仕組みになっているのか、スコットランドがどういう立場にいるのかを理解している人が多いとは言えません。モグワイがもし次に大きなプロジェクトに取り掛かるとしたら、スコットランドへの理解を深めるようなものがいいかもしれませんね。現に僕はあなたのギターに貼ってある、スコットランドの国旗のシールがきっかけになって、スコットランド人のアイデンティティについて考えるようになりましたから。

スチュアート:日本はスコットランドから遠いからなぁ(笑)。それはやってみる価値があるかも。国際的なサポートを集めるのは大事だよな(笑)。

最後に政治とはまったく関係のない、フットボールのトピックへ移りましょう。リーグは違いますが、今年イングランドのプレミアム・リーグでは地方の弱小チームだったレスターが優勝しました。あなたはグラスゴーのセルティックの熱心なファンだと知られています。レスターの優勝はあなたのセルティック愛へ何か影響を及ぼしましたか?

スチュアート:隣の国のことだけど、めちゃくちゃ良い話だと思ったよ。とてもインスパイアされた。セルティックは60年代にヨーロピアン・カップで優勝したことがあるんだけど、そのセルティックとレスターが重なって見えてさ。当時のセルティックはいまよりももっと規模が小さなチームだったんだけど、さらに大きなイタリアやスペイン、そしてイングランドのチームに勝利したわけだから。

去年、清水エスパルスという日本のJリーグのチームが下部のリーグへ降格してしまったんですが、エスパルス・ファンにもレスターは大きな希望を与えたみたいです。国際的にものすごく勇気を与える存在ってなかなかいないですよね。

スチュアート:うわぁー、それは残念だったね。いまもセルティックはヨーロッパのなかでは小さなチームだから、レスターの優勝にはすごく大きな希望をもらったよ(笑)。こんなに広い範囲でインスピレーションを与えるってすごいことだよな。

(注1)
CND(Campaign for Nuclear Disarmament)、核軍縮キャンペーン。1957年に設立された反核運動団体。

(注2)
SNP(Scottish National Party)、スコットランド国民党。スコットランドの地域政党で、UKからの分離・独立、親EUを主張する。2015年5月のUK総選挙で、 SNPは56議席を獲得し、保守党と労働等につぐ第三党になった。

Bim One Productions - ele-king

日本にいながらにして世界で活動することは、今日においてはさほど難しいことではなくなった。東京のビム・ワン・プロダクションズがそのなかで埋もれずに個性を発揮しているのは、楽曲制作の実力だけではなく、足を動かして海外に出向く行動力、そして誰と何をどうやるかを見極める鑑識眼も彼らに備わっているからだろう。ふたりの軌跡をたどってみれば、そこにはザ・バグことケヴィン・マーティンや彼が見出したイスラエル出身の新世代シンガーのミス・レッド、そしてグラスゴーのダブ帝国、マンゴズ・ハイファイなど優れたミュージシャンたちの姿がある。
国境を越えた相互のコミュニケーションから生み出された楽曲はレゲエ/ダブ、ひいてはベース・ミュージック全体で着実にサポーターを獲得してきた。今回リリースされるアルバムでは、独自の音楽ネットワークを通して、ビム・ワンのふたりが作ってきたリミックスや新曲が収録される。共同体とは何かが問われている現在、こうして移動と交流から作り出された音楽を聴くことができるのは嬉しいことだ。
発売は7月20日を予定。今回も数々のミュージシャンの名前がクレジットされ、解説はディスク・ショップ・ゼロの飯島直樹氏が担当している。

Easy Skanking ft. Sr.Wilson | Forthcoming Album - Crucial Works

Bim One Productionは東京をベースに活動するレゲエのリズムの進化を促すエレクトロニック・レゲエ・リズム・プロダクション。メンバーに東京オリジナル・ラガマフィン・グループRub-A- Dub Marketのサウンドの要であるe-muraと、DJ兼トラックメーカーである1TA a.k.a. DJ 1TA-RAWが在籍。「世界基準のサウンドシステム・ミュージック」をコンセプトにドスの効いたサウンドプロダクションを提供、国内のみならず海外のアーティストとのコラボレーション、Remixなど様々な形で作品を生産。2014年結成にて同年3月にはフランスのレゲエMC、Shanti Dとのコラボレーション曲が収録された「Gun Shot E.P.」を世界リリース。2015年行われたDry & Heavy Dubコンテストにて見事優勝、UKのBBC Radioでもデヴィット・ロディガンやトドラ・ティーなどがへヴィー・プレイし海を越えてスマッシュ・ヒットした「Don't Stop The Sound」など、勢いを増す新星レゲエ・クリエーター・チーム待望の作品集が『Crucial Works』だ。

(リリース情報)
アーティスト: Bim One Productions
アルバムタイトル: Crucial Works
レーベル: Bim One Productions / Riddim Chango
品番: BIMPCD-001
発売日: 7/20 (水)
定価: 2340yen(税抜)
解説:飯島直樹(Disc Shop Zero)
Track List:
1. Bim One Productions feat. Shanti D - Dubshot
2. Bim One Productions feat. Pablo Gad - Hard Times VIP
3. Natty King - System (Bim One Mix)
4. Bim One Productions feat.Junior Dread - No Cocaine
5. Bim One Productions feat.Macka B - Don't Stop The Sound
6. Pupa Jim - UFO (Bim One RMX)
7. Mungo's Hi-Fi feat. Mr.Williamz - Thousand Style (Bim One RMX)
8. Danny-T feat.Parly B - Dreader Than Dread (Bim One RMX)
9. Original One feat.Parly B - Mi Bredren (Bim One Mix)
10. Bim One Productions feat. Sr.Wilson - Easy Skanking
11. Mr.Williamz - Pull Over (Bim One RMX) - Pure Niceness
12. Bim One vs Dry & Heavy - Jam Rock (Respect Remix)
13. Bim One Productions feat. Sr.Willson - New Life
14. Mungo's Hi-Fi feat. Cornel Campbell - Jah Say Love (Bim One RMX)

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