「Red Hot」と一致するもの

DJ Marcelle & Kampire (Nyege Nyege) - ele-king

 これまで20回以上開催されてきた WWW のレジデント・パーティ《Local World》ですが、今年もやる気満々です。今回は、これまで都内のクラブで開催されてきた YELLOWUHURU 主宰の《FLATTOP》と Celter 主宰の《Eclipse》との共同パーティで、話題のウガンダのフェス/コレクティヴ〈Nyege Nyege〉主宰の Kampire と、そのレジデントでもあるアムステルダムの DJ Marcelle を初来日で迎えます(Marcelle は大阪公演も)。これまたすごい一夜になりそうです。

Local XX2 World FLATTOP x Eclipse - Super Freedom -

新しい伝統と自由への狂騒。アフリカからダンス・ミュージックの未来を切り開くウガンダの新興フェスティバル/コレクティブ〈Nyege Nyege〉主宰の Kampire と、そのレジデントでもあり、今最も “越境する” 奇矯のアーティストとして話題の DJ Marcelle を初来日で迎え、Local World、FLATTOP、Eclipse によるハイブリッド共同パーティ “Super Freedom” が開催。

Local XX2 World FLATTOP x Eclipse - Super Freedom -
2019/03/28 sat at WWW / WWWβ
OPEN / START 23:30
Early Bird @RA ¥1,800
ADV ¥2,300@RA | DOOR ¥3,000 | U23 ¥2,000

【詳細】https://www-shibuya.jp/schedule/012322.php
【前売】https://www.residentadvisor.net/events/1386693

DJ Marcelle / Another Nice Mess [Netherlands]
Kampire [Nyege Nyege / Uganda]
YELLOWUHURU [FLATTOP / GHPD]
Celter [Eclipse]

+ many more

※ You must be 20 or over with Photo ID to enter

【DJ Marcelle 大阪公演】

AltPass feat. DJ MARCELLE
2020.3.27.fri. 22:00-7:00 at Club Daphnia
ADV ¥2,500 | DOOR ¥3,000

GUEST DJ:
DJ MARCELLE / ANOTHER NICE MESS
(JAHMONI) from Nederland

DJ:
Toshio Bing Kajiwara
7e
Gyoku
Gunilla
KA4U

LIVE:
USK

Visual Effect:
catchpulse

and more act.

FOOD: カカト飯店

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Local 1 World EQUIKNOXX
Local 2 World Chino Amobi
Local 3 World RP Boo
Local 4 World Elysia Crampton
Local 5 World 南蛮渡来 w/ DJ Nigga Fox
Local 6 World Klein
Local 7 World Radd Lounge w/ M.E.S.H.
Local 8 World Pan Daijing
Local 9 World TRAXMAN
Local X World ERRORSMITH & Total Freedom
Local DX World Nídia & Howie Lee
Local X1 World DJ Marfox
Local X2 World 南蛮渡来 w/ coucou chloe & shygirl
Local X3 World Lee Gamble
Local X4 World 南蛮渡来 - 外伝 -
Local X5 World Tzusing & Nkisi
Local X6 World Lotic - halloween nuts -
Local X7 World Discwoman
Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
Local X9 World Hyperdub 15th
Local XX World Neoplasia3 w/ Yves Tumor Local XX1 World AI2X2X w/ ???


■DJ Marcelle / Another Nice Mess [Netherlands]

「異なるカルチャーに対してオープンでありながらも、そこのオーディエンスや自分の期待感に意識を向けすぎないこと。自分の道を進むためにね」@RA https://jp.residentadvisor.net/podcast-episode.aspx?id=679

アムステルダムを拠点にDJ、プロデューサー、ラジオ放送、ミュージシャンと多岐に渡って活動を続けるベテランDJ Marcelle / Another Nice Mess。

サプライズ、アドベンチャー、エンターテイメント、教育:オランダのDJ/プロデューサーの DJ Marcelle / Another Nice Mess を説明するためによく使用される4つのキーワードであり、ライブ(およびスタジオ内)では3つのターンテーブルとレコードを使用して、ミックスの可能性を高みに引き上げる稀有なDJであり、またそれ以上のミュージシャンでもある。 2016年以降、ドイツのレーベル〈Jahmoni〉から「In The Wrong Direction」、「Too」、「Psalm Tree」、「For」(Mark. E. Smith へのオマージュ)の一連のEPリリースを経て、昨年最新LP『One Place For The First Time』をリリース。2008年から2014年の間には、ドイツの〈Klangbad〉から伝説のクラウトロック・バンド Faust の創設メンバーである Hans-Joachim Irmler によってセットアップされた4枚のダブル・バイナルのアルバムをリリースしている。

異なるスタイルの音楽を異なるコンテキストに配置することにより、個々のスタイル変化させ、他に類を見ない音楽スタイルを融合し、3つのターンテーブルと膨大なコレクションであるレコードを使いながらオーディエンスに3つの同時演奏ではなく1つのトラックであると感じさせる。そのスタイルは環境音、アバンギャルド・ノイズ、動物の音、レフトフィールド・テクノ、フリージャズ、奇妙なヒップホップ、最先端のエレクトロニカ、新しいアフリカのダンス・ミュージック、ダブステップ、ダンス・ホールなどと組み合わせれている。

独創的で熟練したミキサーであり、独自のスタイルを持ち、ほとんどのDJのクリシエやこれまでのルールを回避し、フラクサス、ダダなどのアバンギャルドな芸術運動やモンティパイソンの不条理な現実に触発されるように、ダブ、ポスト・パンク、最新のエレクトロニック/ダンス・ミュージックの進化など、常に、非常に、密接に、音楽の発展を追い続け、革新的な “新しい” サウンドに耳を傾けている。創造と発展の芸術性と高まりを強く信じ、約2万枚のレコードと数えきれないほどの膨大なレコード・コレクションは過去と現代のアンダーグラウンド・ミュージックに関する強力な歴史的知識を体現している。

ステージにおいてはマルセルは開放と自由を超越し、しばしば「圧倒的な豊かさ」、「真の耳を開ける人」、「真の開拓者」と表現されている。ヨーロッパ中のクラブ、美術館、ギャラリーを回りながら、ウィーン、ベルリン、ミュンヘン、バーゼル、チューリッヒなど、多くの都市のレジデントDJ、 2015年と2016年には Barcelona circus / performance group のライブDJを務め、ウガンダの Nyege Nyege フェステイバルでは「ライフタイムのレジデントDJ」として任命され、最近では欧州の Dekmantel、Unsound、USの Sustain Release 等のフェステイバルに出演しワールドワイドな活躍を展開。

また Red Light Radio、FSK、DFM など、ヨーロッパのさまざまなラジオ局向けにウィークリーおよびマンスリーのラジオ番組も開催し、インターネット上の John Peel ディスカッション・グループでは「best post-Peel DJ」と評される。マルセルにとって、何らかの緊急性や固定する必要がない限り、音楽形式は意味をなさない。分類が難しいことでブッカー、ジャーナリスト、オーディエンスを最初は混乱させられる。もしマルセルを適切な言葉で説明するのであれば「アバンギャルド・エスノ・ベース」と言えるだろう。

https://soundcloud.com/marcelle


■Kampire [Nyege Nyege / Uganda]

「私が望むのは、ジェンダーや性的指向に関わらず、その人となりの本質をしっかり見極め、誰もが平等にチャンスを得られるようになること」@i-d https://i-d.vice.com/jp/article/kzvn4v/uganda-dj-kampire-interview

東アフリカで最もエキサイティングなDJであり、ウガンダはカンパラの Nyege Nyege コレクティブのコアメンバーであるKampire。活気に満ち溢れたそのサウンドは世界中のクラブやフェスティバルへの出演を呼ぶ。Mixmag 2018年のトップ10のブレイクスルーDJに選出され、Nyege Nyege フェスティバルでの Boiler Room での放送は合法的な「インターネットの瞬間」であり、SNSで何千ものシェアをされ、オンラインで視聴している世界中の電子音楽ファンからフォローされる。

Kampire のDJミックスは Resident Advisor、Dekmantel、Fact Magazine で紹介され、Pitchfork & Fact の年末のリストで2019年のベスト・ミックスにも選出。Rinse FM ラジオのレジデンシーは、Hibotep、Faisal Mostrixx、Catu Diosis など、東アフリカのDJやアーティストにフォーカスしている。

2019年には4大陸でツアーを行い、ヨーロッパ全土のすべての有力フェスティバルに出演、ニューヨークの Redbull Music Festival の Nyege Nyege のショーケースでアメリカでデビューを果たし、Best friend & Nyege Nyege day one Decay と共に2020年の夏には、彼らのショー「Bunu Bop」でヨーロッパのフェスティバル・ステージにウガンダの最高のパーティー・カルチャーをもたらすであろう。

科学、文化、芸術として “黒髪” を探求するアート・インスタレーション「Salooni」の共同設立者であり、その体験プロジェクトは La Ba Arts Festival、ウガンダ、ガーナ、Chale Wote Street Art Festival、East African Soul Train (E.A.S.T) のレジデンシー、ケニア、Africa Utopia、ロンドン、キガリ、ルワンダ、 Women’s day、Burkina Faso and N’GOLÁ Biennial、São Tomé e Príncipe などで展開されている。

https://soundcloud.com/kkaybie


■YELLOWUHURU [FLATTOP / GHPD]

棍底にHOUSEを抱えながら電子音と生音を有機的に混ぜる男。

https://soundcloud.com/yellowuhuru


■Celter [Eclipse]

2019年2月より自身の主宰するイベント “Eclipse” をCONTACTにて始動。エクスペリメンタル、アバンギャルドを軸としたプレイを得意とする。

https://soundcloud.com/cel_ter

日本語ラップ最前線 - ele-king

 端的に、いま日本のヒップホップはどうなっているのか? ヴァイナルやカセットテープ、CDといったフィジカルな形態はもちろんのこと、配信での販売や YouTube のような動画共有サイトまで含めると、とてつもない数の音楽たちが日々リリースされつづけている。去る2019年は舐達麻や釈迦坊主、Tohji らの名をいろんな人の口から頻繁に聞かされたけれど、若手だけでなくヴェテランたちもまた精力的に活動を繰り広げている。さまざまなラップがあり、さまざまなビートがある。進化と細分化を重ねる現在の日本のヒップホップの状況について、吉田雅史と二木信のふたりに語りあってもらった。

王道なき時代

トラップやマンブル・ラップのグローバルな普及で、歌詞の意味内容の理解は別として、単純に音楽としてラップ楽曲を楽しむ流れに拍車がかかっている感がありますよね。(吉田)

いまヒップホップは海外でも日本でも、フィジカルでもストリーミングでも、次々と新しいものが出てきていますが、初心者はいったい何から聴いたらいいのでしょう?

二木:いきなりかなり難しい質問ですねぇ……、では、すこし長くなりますが、まず国内のヒップホップについて大掴みで大局的な話をしますね。例えば、PUNPEE が星野源の “さらしもの” に客演参加、さらにNHKの『おげんさんといっしょに』に出演して日本のポップスの “ど真ん中” に現代のラップとブレイクビーツを持ち込んだ。それは画期的というよりも、2人のキャラクターもありますが、ナチュラルに実現しているように見えるのが、いまの時代の日本のラップとポップの成熟を示す出来事だなと感じました。一方でストリート系の DOBERMAN INFINITY や AK-69 らも作品を発表して変わらず存在感を示している。Creepy Nuts は作品の発表と並行してラジオ・パーソナリティとしても大活躍で、お笑いやアイドルの世界と接点をもって独自の立ち位置を確立している。R‐指定は般若から引き継いで、『フリースタイルダンジョン』の二代目ラスボスにもなった。他方で、2019年は自分のまとまった作品は発表しませんでしたけど、全国各地をライヴで回りつづける沖縄・那覇の唾奇のようなラッパーがいる。唾奇は新しい世代のインディ・シーンの象徴的存在だと思います。テレビやラジオで目立たっていなくても、全国各地のライヴハウスやクラブでのステージで腕を磨いて着実にファンを増やしていますね。彼のライヴは本当に素晴らしいのでぜひ観てほしいです。
 視点をすこしうつせば、鎮座DOPENESS と環ROY が U-zhaan、そして坂本龍一と “エナジー風呂 (Energy Flo)” を発表しました。あの教授と、です。曲名から察することができるように、“energy flow” を U-zhaan がタブラでアレンジしたラップ・ミュージック。シンプルに良い曲ですし、日本のヒップホップ史という観点でみると、ラップしているのは細野晴臣ですが、1981年にこの国の初期のラップである “RAP PHENOMENA/ラップ現象” を発表したYMOの教授と後続の世代との共作でもある。RHYMESTER は岡村靖幸と「岡村靖幸さらにライムスター」として “マクガフィン” を共作した。RHYMESTER が岡村靖幸とコラボすることそのものが彼らの日本のファンクの先駆者へのリスペクトの表明としてうつる。それら2曲は、そういう “ヒップホップ史” のような視点で見ても興味深い。それでもこれらは氷山の一角ですね。サブスクの浸透も大きいですし、単純にリリース量も尋常ではない。仮に『フリースタイルダンジョン』放送開始(2015年9月)をひとつの起点とすると、そこからのここ約4年ちょっとは、日本のヒップホップ史においても急激な変化の時代として記憶されるはずです。いろんな出来事が同時多発的に起きている。そういった数多くのアーティストの注目に値する楽曲や現象や動向を念頭に置いた上で、僕と吉田さんが2019年を振り返り、2020年に突入したいま、国内のヒップホップ、ラップについて語るといったときに、何に着眼するかということになりますね。どうでしょうか?

星野源 “さらしもの (feat. PUNPEE)”

吉田:そこでひとつの着眼点として、やはりサウンド面が挙げられると思うんですよね。ちょっとこれも長くなりそうですが(笑)、2019年の日本のヒップホップもUSと同様にざっくり、ブーム・バップ的なものとトラップ的なものの違いがまずは目に入ってきますよね。見立てとしては、前者については90年代からどうやって日本語で韻を踏むかという格闘の歴史があって、いまもその延長線上に括弧付きの「日本語ラップの歴史」的なものが続いていると。そのフィールドにトラップ的なものが新たに加わってきたとする。2019年の日本語のトラップ的な表現においては、もはやかつてのように日本語がフィットするのかしないのか、というような議論が出てくる段階にはないですよね。これはひとつには今日ラップ・ミュージックがいかにグローバルな言語となっているかということを示しているし、トラップの BPM70 にオンビートで言葉を置いていくスタイルが日本語ともいかに相性が良いかということも示していると思います。例えば LEX の『!!!』にしても、OZworld の『OZWOLRD』にしても、英語にちゃんぽんされている日本語含め、海外の人が聞いても、この曲って英語も聞こえてくるけど別の言語も少し入ってるよね、くらいの感覚で聞けるというか。トラップやマンブル・ラップのグローバルな普及で、歌詞の意味内容の理解は別として、単純に音楽としてラップ楽曲を楽しむ流れに拍車がかかっている感がありますよね。そもそも日本は90年代以前から必ずしも英語リリックの意味を理解することなしにUSヒップホップを楽しんできたという意味でも、ヒップホップ/ラップ・ミュージック先進国と言えると思いますが。

二木:ビートに関してはどうですか?

吉田:ビート面で言えば、先ほど挙げた LEX や OZworld がUSメインストリーム的な音で勝負する一方、トラップと一概にいっても、サウンドには相当の多様性があるわけですよね。USメインストリームのビートといったときに思い出すのが、2000年前後のティンバランドやネプチューンズの当時日本では「チキチキ」と呼ばれることもあったサウスのサウンド。それらがチャートを席巻したとき違和感を覚えた人たちがいた理由のひとつは、そのビートが非常にキャッチーで商業的な楽曲やアーティストと結びついていた点だと思うんです。当時のそういった新しいビートのモードを伴う商業化への反発を最近のトラップへの違和感と重ねる見方があるのはすごく理解できる。でもトラップというプラットフォームが面白いのは、かつてのホラーコアをルーツとするようなフロリダ勢のダークで激しく歪んだ表現や、トラップコアやトラップメタルと呼ばれるエクストリームなサウンドも同時に生み出していることです。例えば Tohji 『Angel』では MURASAKI BEATZ がアルバムのゴシックなムードと違わずダークで叙情的かつ歪んだビートをぶつけているし、Jin Dogg の『MAD JAKE』ではキラーチューン “黙(SHUT UP)” に象徴的なようにタイプビートを活用しながらトラップコアを展開しているし、MonyHorse の『TBOA Journey』の3chのビートも、メロウ寄りもダーク寄りもシンプルながら耳に残る異形のループを追求しているように聞こえる。

Jin Dogg “黙(SHUT UP)”

商業化への反発を最近のトラップへの違和感と重ねる見方があるのはすごく理解できる。でもトラップというプラットフォームが面白いのは、ダークで激しく歪んだ表現やエクストリームなサウンドも同時に生み出していることです。(吉田)

二木:MonyHorse といえば、MONYPETZJNKMN の “Gimme Da Dope” はやたら気持ち良い曲でした。これぞ快楽至上主義といった感じです。

吉田:一方でトラップ的なもの以外ではどうだったかというと、全編ビートを担当する Illmore がブーム・バップを再解釈する Buppon の『I’ll』、シングルですけど相変わらずぶっ飛んだ Ramza と Campanella の “Douglas fir”、全編アトモスフェリックなテクノ・サウンドの Hiyadam の『Antwerp Juggle』、田我流の『Ride On Time』も自身のビート・メイキングが満を持してすごく面白いところに到達したし、かと思えば釈迦坊主の『HEISEI』もそれこそカテゴライズを拒絶するようなサウンドで、少し前ならエレクトロニカと呼ばれたかもしれない。そういう状況だから MEGA-G のブーム・バップが超目立つわけですよね。そこには英語を内面化するトラップとは違って、これまでの日本語におけるライミングの格闘の蓄積をベースにさらにそれを突き詰めようとする、いわば良い意味でガラパゴス的な日本語ラップが追求してきた日本語のライムが乗る。例えば THA BLUE HERB、ZORN、田我流、舐達麻らが、それぞれブーム・バップを基軸にしたビートで、それぞれの日本語表現を追求する作品をリリースした。こうやってみると、王道と言われるようなサウンドは存在しないといっても過言じゃない。というか、日本のヒップホップが王道なき時代に突入していることを確認させられた2019年ですよね。

Campanella “Douglas fir (Prod by Ramza)”

二木:王道なき時代だからこそ、Campanella と Ramza の曲とかはもっと騒がれてほしい。2019年のこの国で、あえて言えば、菊地成孔の言う “ヒップホップはジャズの孫” をもっとも先鋭的に提示した曲のひとつではないでしょうか。ちなみにこの曲のMVを撮っている土屋貴史は、先日公開され話題となっている SEEDA の伝記映画『花と雨』を撮った監督でもあります。ところで、吉田さんがおっしゃった “ガラパゴス的な日本語ラップ” の追求で忘れてならないのは、Creepy Nuts ですよね。R‐指定がライターの高木 “JET” 晋一郎を聞き手にして日本語ラップについて語りまくった『Rの異常な愛情──或る男の日本語ラップについての妄想──』(白夜書房)がとても面白い。この本の Mummy‐D との対談を読むと、R‐指定の “日本人のヒップホップ” へのこだわりが内包するアンビヴァレントな感情が彼のラップのアプローチや方法論に直結しているのがわかる。『よふかしのうた』収録の表題曲は、「オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー」のテーマソングということもあると思いますが、フックのメロディには “ラップ歌謡” 的な側面がある。一方 “生業” ではトラップでセルフ・ボースティングを展開するわけですが、吉田さんの言葉を借りれば、これぞ “日本語におけるライミングの格闘の蓄積” の賜物。2019年時点でその最高峰のひとつと言って間違いないと思います。彼の、まさに異常ともいえる日本語ラップの知識量を考えれば、いろんな引用やオマージュが散りばめられていると推測できますが、ひとつ、イントロの「アカペラでも聴けるラップだぜ」というリリックは Maccho の「アカペラで聴けねえラップじゃねえぜ」(“24 Bars To Kill”)のオマージュだと思われます。
 そして、“日本人のヒップホップ” という課題にたいして、R‐指定とはまた異なる角度からアプローチをしていたのが、2018年2月に惜しくもこの世を去った FEBB ではないでしょうか。去年、GRADIS NICE & YOUNG MAS (FEBB)名義の『SUPREME SEASON 1.5』が出ています。この作品は、『L.O.C -Talkin' About Money-』(2017)に連なる作品です。『L.O.C』に収録された “THE FIRST” で FEBB は日本語を英語の発音に近づけたり、英語を日本語の発音に近づけるようにするのではなく、ふたつの言語を同居させて、おのおのの発音の特性を素直に活かして明瞭にフロウしている。言い換えると、ガラパゴス的な日本語ラップと英語を内面化したラップを1曲のなかで共存させている。彼がこの曲で歌う「引けを取らない日本人のヒップホップ」を体現したクラシックだと思います。

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ブーム・バップとトラップ

いまでもブーム・バップとトラップはどこかで対立するものとして語られたり、捉えられがちだけど、そういう二元論で思考していると聴き逃してしまうものがあまりに多くてもったいない。(二木)

吉田:USでは、ミーゴスやフューチャーのマンブル的な楽曲に加えて、毎年新人の注目ラッパーを紹介する XXL のフレッシュマンのサイファーの2016年版に、21サヴェージ、コダック・ブラック、リル・ウーズィ・バートらが登場してそのスキルが疑問視されたりした。5人もいてまともなのはデンゼル・カリーしかいないじゃないか!って(笑)。それでどうしても「マンブル・ラップ対インテリジェント・ラップ」のような図式が生まれて、ベテランのスキルフルなラッパーがマンブルを否定するというような対立構造になっていますよね。日本でも、両者が完全に異質なもの、相容れないもののように見えている感がある。でも、USでも、そもそもクリエイティヴな表現を追求しているアーティストは、いろんなスタイルでラップしたいと思っているはずですよね。エミネムの『Kamikaze』(2018)のように、トラップという文法に対して自分ならどうアンサーするかっていうのかっていうのがモチベーションになる。例えばケンドリックもリッチ・ザ・キッドとの “New Freezer” (2018)で俺だったらこう乗りこなすぜって感じの圧巻のフロウを披露しているし、フレディ・ギブスなんかも『Shadow of a Doubt』(2015)の頃から一枚のアルバムのなかにマーダ・ビーツとの曲もありつつ、ボブ・ジェームスネタのブーンバップでブラック・ソートと一緒にラップしちゃう(笑)。J・コールにしても、あからさまなトラップらしいビートはなくても、BPMがトラップ並みに遅い曲を挿入してブーム・バップ曲とのメリハリをつけている。BPM 90や100のブーム・バップでフロウするのと、60や70のトラップビートで三連符や32分音符でやるのはルールの違うゲームみたいなものだから、アーティストとしては自分でも試したくなるだろうと。

二木:そのようなルールの違いを認識していたからこそ、GRADIS NICE は “THE FIRST” について「トラップについていけない人たちのためだったりもする」とCDジャーナルの小野田雄のインタヴューで発言したのだと思います。FEBB とも共有されていたその目的意識のもとに作られたのが、『L.O.C』、そして『SUPREME SEASON 1.5』だったと考えられます。つまり、ブーム・バップとトラップというある種の “分断” をこえる、あるいはビートにしてもラップにしても両者の良さを融合してオリジナルのヒップホップを作る、そういった明確な目的のもとに作られているのではないか。後者では “THE FIRST” とは異なり、たとえば “skinny” という曲では日本語と英語の切り替えを短い尺のなかでより頻繁にくり返して、ガラパゴス的な日本語ラップと英語を内面化したラップを融合させようとするような高度なフロウを披露してもいる。そのように FEBB はとても短い期間のなかでいろんな試みを凄まじいスピードでやっていた。この連作からは、FEBB と GRADIS NICE の高い志が強く感じ取れます。

吉田:ブルックリンのアンダーアチーヴァーズやフラットブッシュ・ゾンビーズなんかも、特に初期の音源はトラップと同様の遅いBPMでブーム・バップを再解釈して、マンブル・ラップではないスキルを見せることがひとつの特徴になっている。プロ・エラとも組んでいる彼らは、ブーム・バップ・ルネッサンスを単に原点回帰だけではなくて、トラップとのハイブリッドという方法論で表現しようとしているところがあると思います。だから、FEBB が志向していたことと、共通する部分もあるんじゃないですかね。

二木:たしかに。僕もそう思います。たとえば、それこそプロ・エラのジョーイ・バッドアスも参加したスモーク・DZAの『Not for Sale』(2018)というアルバムもそういう文脈で聴くとより楽しめる作品ですね。また、さきほど名前が出た MEGA-G は素晴らしいソロ・アルバム『Re:BOOT』収録の “808 is coming” で彼なりのユニークなトラップ解釈を披露している。ビートは I-DeA です。タイトルが暗示していますが、オールドスクール・ヒップホップとトラップを直結させる試みですね。ぜひ聴いてほしいです。だから、これは自戒も込めて語りますが、いまでもブーム・バップとトラップはどこかで対立するものとして語られたり、捉えられがちだけど、そういう二元論で思考していると聴き逃してしまうものがあまりに多くてもったいない。さらに、それによって世代間対立みたいなものまで不必要に煽られてしまうのはネガティヴですよね。そういう定着してしまったジャンル分けや言語を使うことで耳の自由が奪われるときがある。そういう分節化はとても便利だし、もちろんこの対談でもそういう分節化に頼って語らざるを得ない側面はあります。ただ、ときにそれによって失うものがあったり、分断させられてしまう現実の関係があるというのは常に注意しておきたいなと。

吉田:日本でもそういう表面的な二元論とは別に、現場では様々な面でクロスオーヴァーが見られるのかなと。たとえば Red Bull の「RASEN」のフリースタイル。1回目は LEX、SANTAWORLDVIEW、荘子it (Dos Monos)、 Taeyoung Boy で、2回目は Daichi Yamamoto、釈迦坊主、dodo、Tohji。両方とも素晴らしいクオリティとセッションの緊張感で無限に繰り返し見ていられるんですが(笑)、この中だと荘子it や Daichi Yamamoto、dodo が日本語ラップ的なフロウをしているように聞こえる。確かに荘子it はエイサップ・ロッキーではなくて元〈デフ・ジャックス〉のエイサップ・ロックが好きだそうで、彼のインテレクチュアルなスタイルに照らすと頷けるけれど、SANTA はいわゆるトラップよりもフラットブッシュ・ゾンビーズとか、スキー・マスク・ザ・スランプ・ゴッド、レイダー・クランへのシンパシーを口にしていたり、釈迦坊主は志人から影響を受けたそうなんです。彼らのようにオリジナリティが際立っているアーティストたちは、一見全然別のことをやっているように見えるけど、結局はそんな風にエッジィな表現に惹かれていて、互いにコネクトするんだなと。だから、分断して考えたくなるのは外側だけなんだと改めて感じました。こういう風なメディアでの語りにしても、ある程度ジャンル分けしないと整理できないし、大きな潮流も取り出せないけれど、自分の好みはどのジャンルなのか線を引きやすくなってしまう弊害もありますね。あるサブジャンルを代表するいくつかのアーティストが肌に合わなかったときに、そのサブジャンル全体を否定的に見てしまうことのもったいなさがある。

LEX/ SANTAWORLDVIEW/ 荘子it/ Taeyoung Boy – RASEN

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ラップ~ビート~音響、それぞれの変質

マンブル・ラップの多様性もそうですし、そうやって自分のスタイルやイメージを規定せず、自分のなかに多様なスタイルを持つのもいまのラッパーのあり方だと思うんです。(二木)

二木:今年の1月に入ってから SANTAWORLDVIEW が出した『Sinterklass』も良かったですね。YamieZimmer のビートのヴァリエーションも面白かった。

吉田:それから SANTA や Leon、あと Moment Joon も “ImmiGang” で披露しているトラップビート上の32分音符基調の早口フロウにしても、Miyachi の『Wakarimasen』収録の “Anoyo” や JP The Wavy らが乗りこなす三連フロウにしても、近年のトラップとの格闘を通じて再発見された、日本語のラップ表現にとって大きな財産だと思います。オンビートの早口は子音と母音がセットになるいわゆる開音節言語の日本語とすごく親和性が高いし、Leon はサウンド重視と自分でも言っているけど、例えば『Chimaira』収録の “Unstoppable” なんかは早口であっても非常にメッセージが伝わってくる楽曲になっている。これは90年代の終わりにチキチキビートが世を席巻したときに、日本語でどうやって倍速の譜割でラップを乗せるか格闘した時期にもダブるものがありますね。

二木:わかります。TwiGy が『FORWARD ON TO HIP HOP SEVEN DIMENSIONS』(2000)というアルバムでいち早くサウス・ヒップホップにアプローチしたのとも被りますね。“七日間”、“GO! NIPPON”、“BIG PARTY”、“もういいかい2000”、特にこの4曲は TwiGy の先駆性を如実に示している。彼は日本のトラップ・ラッパーのパイオニアですね。スリー・6・マフィアなどのサウスのラップだけではなく、倍速/早口ラップの参考にしたのは、『リズム+フロー』にも登場していたシカゴのトゥイスタやUKのダンスホールのディージェー、ダディ・フレディだったという主旨の話も ele-king のインタヴューでしてくれました。もうひとつ、Leon Fanourakis の『Chimaria』から、自分のような世代の人間が個人的に連想するのは、DABO の『PLATINUM TONGUE』(2001年)でした。それは Leon が DABO を意識しているとかそういう意味ではなくて、セルフ・ボースティングの手数の多さで猪突猛進するスタイルという点において、ですね。DABO の “レクサスグッチ” を久々に聴きましたけど、この曲が20年前に切り拓いたものってでかいなとあらためて痛感しました。

吉田:当時 DABO のバウンスビートへのアプローチは早かったし、地声ベースの低音ヴォイス中心のアプローチも共通するところはありますよね。

二木:SANTAWORLDVIEW、Leon とともに、YamieZimmer がプロデュースを手掛ける Bank.Somsaart も素晴らしいラッパーですよね。さっき GRADIS NICE & YOUNG MAS “THE FIRST” について日本語と英語の発音のそれぞれの特性を活かして同居させていると話しましたけど、『Who ride wit us』の Bank はむしろ日本語と英語それぞれの発音やアクセントの境界線を消滅させて、ウィスパー・ヴォイスで呪文のようなフロウをくり出していく。さらに彼のルーツのひとつであるタイ語も含まれるということなのですが、正直に告白すれば、タイ語の部分がどこなのかまだ自信をもって聴き取れていない側面もあります。ただ、こんなにささやくようにラップしてリズミカルなのがすごいな、と。

吉田:Bank もまさにそういう境界を曖昧にするスタイルですよね。彼のラップがマンブル的かどうかという問題は別としても、マンブル・ラップの解釈もすごく多様になってきている。「日本語」ラップといっても、例えばブッダ・ブランドの頃から英語をミックスするラッパーたちは、もともとマンブル性というか、何を言っているかわからないところがあった。バイリンガル・ラップの系譜に Bank のようなラッパーもいるとして、日本語を徹底的に崩すという点では、釈迦坊主もそうですよね。最初は脱構築された日本語の発音に阻まれて、全然言っていることが分からないんだけど、歌詞を見ると間違いなく日本語だし、意味が途端に入ってくるという。かつて LOW HIGH WHO? 時代の Jinmenusagi や Kuroyagi がやっていたことにも近くて、曖昧母音を多用したり、あるいは開音節から母音を引いて閉音節にしてしまったりと、子音や母音のレヴェルで発音を英語的なものに近づけているわけですよね。5lack や冒頭で触れた LEX もそのような系譜にあると思います。でも釈迦坊主がとてもユニークなのは、日本語のアクセントや子音母音の仕組みを壊しているけど、だからといって個々の語の発音自体を英語に近づけているわけではないところです。日本語には聞こえないけど英語に空耳するわけではないという、まるで架空の言語を創造しているような。Tohji が “Hi-Chew” で聞かせるようなマンブル的発語なんかとも合わせて、これまでの日本語と英語の対立軸を超えているし、それは釈迦坊主が時々見せるインドへの目配りやエスニックなサウンドやスケールの導入ともリンクしている。最新EP「Nagomi」でも独特のメロディセンスが突き抜けてるのは勿論、ラップの声が持つパーカッシヴな側面をそれこそミーゴス並みに引き出してると思います。

釈迦坊主「NAGOMI」

二木:僕は釈迦坊主の「NAGOMI」のなかで、UKブレイクス×ラップ・シンギン×ニューエイジと言いたくなるような “Alpha” がとても好きでした。でも全曲良いですよね。ここですこし補足しますね。マンブル・ラップをざっくり定義すれば、歌詞の意味よりもリズムやノリを重視するラップとなります。それゆえに、マンブル・ラップは一部では否定的な意味合いを込めて使われる。これは FNMNL の記事で知りましたが、チーフ・キーフが自分がマンブルを発明したと主張する一方、ブラック・ソートのようなベテランまで自分が元祖だと主張したりもしているという。ただここで僕と吉田さんはマンブルだから良いとか悪いとかそういう価値判断をしたいわけじゃない、そういうことですよね。Bank が去年の11月にサンクラにアップした “you're not alone” という曲はこれまでとガラリとスタイルが異なり、前向きなメッセージを日本語の発音を明瞭にすることで伝えようとしていた。マンブル・ラップの多様性もそうですし、そうやって自分のスタイルやイメージを規定せず、自分のなかに多様なスタイルを持つのもいまのラッパーのあり方だと思うんです。

吉田:じゃあそういうマンブル的な状況でラッパーがどう表現していくかというと、やっぱりフレージングが重要になりますよね。先ほどの「RASEN」のサイファーでいえば Tohji や LEX が顕著ですが、フリースタイルでいかに2小節や4小節の印象的なフレーズを次々と繰り出すかということを競っている。従来のフリースタイルは2小節ごとに踏む韻を変えながらひとつの物語を作っていった。でもいまは2小節ごとに異なったリズムやメロディのフレーズを切り替えて、それでいかに耳をひけるかを追求する。韻ではなくてフレーズが牽引するという。USのトラップ以降のラップ・ミュージックは、いかにこのフックでリスナーを掴めるかの戦いですよね。かつてのヒップホップ・ソウルの時代はフィーチャーしたR&Bシンガーがコーラスを歌ったけど、ドレイク以降はラッパーが自分で歌う。より音楽的になったとも言えるし、メロディだけじゃなくてリズムの解像度も高くて、トラップのような隙間の多いビートを彩る新しい解釈が求められる。

従来のフリースタイルは2小節ごとに踏む韻を変えながらひとつの物語を作っていった。でもいまは2小節ごとに異なったリズムやメロディのフレーズを切り替えて、それでいかに耳をひけるかを追求する。韻ではなくてフレーズが牽引する。(吉田)

二木:“USのトラップ以降のラップ・ミュージック” というラインが出ましたが、Leon、SANTAWORLDVIEW、Bank.Somsaart、そして YamieZimmer にふたたび話を戻すと、彼らは FNMNL の磯部涼のインタヴューで特に YamieZimmer がサウス・フロリダのヒップホップを熱心に聴いていると語っていましたね。ただ、その発言ももう2年前ぐらいのことですから、そのあいだに本人たちのなかにもいろんな変化があったとも推測できます。それはそれとして、僕が最初に彼らの音楽に惹かれたのは、ダーティ・サウスのファンクネスを継承する音楽に通じるものを感じたからなんです。彼らの音楽を聴いて2000年前後の TwiGy や DABO を連想したのもそういうことかもしれない。ちなみに、スモークパープが昨年出した『Dead Star 2』というアルバムに入っていたデンゼル・カリーとの “What I Please” のMVが今年に入って公開されましたね。

吉田:スモークパープがようやくアングラから浮上してまるで新人のように扱われていることに複雑な思いもありつつ(笑)、フロリダはアトランタと比較しても洗練されていなくて、歪んでいて、ときに不穏で、ときにユーモラスという、ダーティ・サウスになぜ「ダーティ」という形容詞がついていたかを体現しているようなサウンドですよね。スキー・マスクやデンゼル・カリーは、トラップコア的な冷たい暴力性や、ウィアードな音を多用するところに作家性を感じます。Leon のアルバムはロニー・J 的というか、BPMもトラップ以降の遅さで統一されてるけど、一方で Bank のアルバムはドレやマスタードのファンクをもっとダーティでロウなサウンドで更新するようなBPM速めのビートも多くて、YamieZimmer の懐の深さを感じますよね。

二木:実際に、Leon の『Chimaria』に収録された “Keep That Vibe” はサウス・フロリダのベース・サンタナのビートです。ここから語るのは多少強引な極私的解釈ですが、スヌープ・ドッグとファレルの大名曲 “Drop It Like It's Hot” をサンプリングしたスキー・マスクの『STOKELEY』(2018)収録の “Foot Fungus” は、少ない音数と音色でファンクを捻り出すいわば “ミニマル・ファンク” です。そして、そういうファンクの源流にはスライ&ザ・ファミリー・ストーン『暴動』(1971)があるのではないかと。YamieZimmer が作り出すファンクの律動とグルーヴはその最先端を行っているのではないか。そんなことを考えたりしました。ちなみに彼は Bank の “Who ride wit us” という曲では、80年代後半のマーリー・マールを彷彿させる原始的なブレイクビーツ、それこそブーム・バップと言ってもいいようなビートを作っています。そういう柔軟性も YamieZimmer の魅力だと思います。彼が前述したインタヴューで Budamunk について言及していたのがまた印象的でした。「今の日本語ラップは全く聴かない」と前置きした上で、Budamunk のビートを称賛している。そういう日本のヒップホップの聴き方もある。例えば、Budamunk が90年代、00年代のヒップホップやR&Bのインストをミックスする『Training Wax』というミックス・シリーズが昨年2枚出ましたよね。

吉田:あれめっちゃいいよね! 完全に音響の世界に行ってて、元のハイファイ寄りの音源をいかにかっこよくローファイに汚せるかということをやっている。「あの曲がこういうふうに聞こえるのか!」という驚きがある。

二木:まさにそう! 吉田さんがあのミックスを聴いているのが、めちゃうれしいですし、信頼できます(笑)。フィジカルでこっそり流通していただけですもんね。あまりにもあの音響が衝撃的で、Budamunk 本人に「あの音響はいったい何なんですか?」って訊いたんですよ。これは、僕の記憶が間違っていたら謝るしかないんですけど、「EQをいじっているだけですよ」って答えてくれたと記憶しています。EQいじるだけでこんなにも独創的な作品を作れるのかとさらに驚いた。

吉田:当時多かった「ヒップホップ・ソウル」とも呼ばれていたような、ヒップホップマナーのサンプリングループでビートが作られたR&B曲を、単にDJミキサーのEQでモコモコにフィルタリングするだけで彼の色にしてしまうという。ヒップホップ的な価値転倒が全編で表現されていて最高です。

二木:そう。ヒップホップ・ソウル色が強かった『Training Wax VOL.1』も素晴らしかった。たとえば、セオ・パリッシュのDJが好きな人にはぜひ聴いてもらいたいし、絶対気に入ると思う。それと、これは、僕のいささかロマンチックな歴史認識のバイアス込みで語りますが、『Training Wax』は Budamunk のオリジナルのビートではないものの、DJ KRUSH の『Strictly Turntablized』のリリースから25年つまり四半世紀のときを経た2019年のビート・ミュージックのひとつの成果を示している、それぐらい重要な作品だと感じています。

吉田:Budamunk は基本サンプルを使うんだけど、ミニマルで音数が少ないから、空間が多くて、リズムと同じく一音一音のテクスチャーというか、音質にも凄く耳がいきますよね。2019年は仙人掌の『Boy Meets World』の傑作リミックス盤が出たけど、そのなかの “Show Off” の Budamunk リミックスは音響的にかなりこだわっていて、中央で鳴るサブベースにリヴァーブの効いたコードのスタブに、ざらついたスネアが少し右のほうで鳴っている。このスネアは中央で鳴るハットと位相がズレていて、さらにそのスネアの残響音は左の方から聞こえるという確信犯的な立体感。終盤ではさきほど話した得意のEQフィルタリングも聞こえてきます。ミニマル・テクノやアンビエントを聴く耳で、細かい音の肌理やテクスチャーを追うと全然違う楽しみ方ができると思います。ひとつひとつの音の追い込み方と、その結果生まれている快楽がずば抜けている。

仙人掌 “Show Off - Budamunk Remix”

日本という地域のローカルな言語で表現されるラップ。その2019年の代表格である舐達麻が、グローバルに耳を刺激するビートメイカーと組む。こういうことがいま起きている。(二木)

二木:『Boy Meets World』のリミックス盤の制作の相談役が Budamunk でしたからね。彼はLA、ニューヨーク、中国のヘッズにも知られていると聞きます。SoundCloud や Bandcamp を通したビート・ミュージックの世界的なネットワークのなかにいる、日本のビートメイカーの先駆的存在じゃないでしょうか。

吉田:Bugseed にしても GREEN ASSASSIN DOLLAR (以下、GAD)にしても海外のオーディエンスがたくさんついてますよね。Bugseed は『Bohemian Beatnik』の衝撃からもう10年なのか……ウィズ・カリファにビートを使われた事件で脚光を浴びたりしましたが、SoundCloud でワールドワイドに認知度を上げて Bandcamp で作品を販売する日本のビートメイカーの先駆けとなった感がありますよね。

二木:いま GAD の名前も出ましたが、彼が2019年に大躍進した埼玉・熊谷のグループ、舐達麻の作品における主要ビートメイカーである事実は忘れてはならないですよね。彼はドイツのレーベルから作品を発表していますね。対談の冒頭で吉田さんから、ガラパゴス的な日本語ラップという言葉が出ました。つまり日本という地域のローカルな言語で表現されるラップということですね。その2019年の代表格である舐達麻が、グローバルに耳を刺激するビートメイカーと組む。こういうことがいま起きている。この話の流れで付け加えておくと、冒頭で触れた星野源が PUNPEE を客演にむかえた “さらしもの” のトラックを作ったのは、チャンス・ザ・ラッパー “Juke Jam” (『Coloring Book』収録)のビートを手掛けたり、『ブラック・パンサー』のサントラに収録された “I AM” という曲にもクレジットされているドイツ人のプロデューサー、ラスカルでした。ということで、次は舐達麻の話からはじめましょうか。

(後編へ続く)

JPEGMAFIA - ele-king

 「お前は俺を知らない(You think you know me)」。プロデューサーというのはタグ好きだ。主役は誰かをリスナーに分からせるための、自らの楽曲群にグラフィティのように走り書きするタグが。WWEレスラー、エッジのテーマ曲をサンプリングしたJPEGMAFIAのプロダクション・タグは、彼のやることの多くと同様にいくつもの意味を兼ねてみせる。音響的な目印であり、ポップ・カルチャーの引用であり、挑発でもある、という具合に。お前は俺を知ってるつもりかい?(You think you know me?)

 バーリントン・デヴォーン・ヘンドリックスには、前作『Veteran』(2018)の思いがけないヒットでその混乱した、自由連想に満ちた音楽がより広い層の聴き手に達する以前に自らを理解する時間がたっぷりあった。その前の段階のとある名義で、彼はミドル・ネームと姓から派生したデヴォン・ヘンドリックス(Devon Hendryx)を名乗っていた。彼がJPEGMAFIAに転生したのは米空軍を名誉除隊した後に日本で生活していた間のことだった。彼はよくペギー(Peggy)の名も使いたがるが、その愛称は彼にどこかのおばあちゃんめいた印象を与える。

 しかしまた、JPEGMAFIAは自らを色んな風に呼ぶのが好きだったりする。『All My Heroes Are Cornballs』(2019)の“BBW”で、彼は「若き、黒人のブライアン・ウィルソン」を自称する──自らのプロダクション・スキルの自慢というわけだが、ウィルソンは録音音楽の歴史上おそらくもっとも白人的なサウンドを出すミュージシャンのひとりであるゆえに余計に笑いを誘う。“Post Verified Lifestyle”での彼は「ビートルズとドゥームを少々に98ディグリーズが混ざった、ビーニー・シーゲル」だ。ひとつのラインの中でジェイ–Zの元子分、王道ロック・バンド、顔を見せないアンダーグラウンドなラッパー、90年代のティーン・ポップ・グループの四つの名が引き合いに出される。この曲の後の方に出て来る「俺は若き、黒いアリG」は、さりげなくも見事なギャグになっていると共に考えれば考えるほどおかしな気分になるフレーズだ(註1)。

 JPEGMAFIAはつかみどころがなく、シュールなユーモアと政治的な罵倒、エモーショナルな弱さとの間を推移していく。『All My Heroes Are Cornballs』のリリース前、彼はアルバムが出るのはいつなのかという質問をはぐらかし続け、きっとがっかりさせられる作品になると言い張るに留まっていた。彼のYouTubeチャンネルにはジェイムズ・ブレイク、ケニー・ビーツをはじめとするセレブな友人たちが登場し、アルバムをヌルく推薦するヴィデオがアップされた。DJ Dahiの1本がそのいい例で、彼は冒頭に「たぶん俺はこのクソを二度と聴かないと思うよ、個人的に」のコメントを寄せている(※JPEGMAFIAがアルバム発表前にYouTubeに公開した、「友人たちに新作のトラックをいくつか試聴してもらい率直な感想を聞く」という主旨のジョーク混じりのヴィデオ・シリーズ「Disappointed」のこと)。

 これらの証言の数々は、ヘンドリックスがソーシャル・メディアのしきたりを享受すると共にバカするやり口の典型例だ。“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”に「ニガー、やりたきゃやれよ、俺は認証済みだぜ」の宣戦布告が出て来るが、ここでの彼は自らのツイッター・ステイタスを見せびらかしつつオンライン上のヘイターたちをからかっている。“Beta Male Strategies”で彼はこう預言する──「俺が死んだら、墓碑はツイッター、ツイッター」

 Veteran』が盛り上がり始めた頃、ヘンドリックスは左頬の上に、目にポイントを向けたコンピュータのカーソルのタトゥーを小さく入れた。英音楽誌『CRACK』に対して彼は「何かの形でインターネットにトリビュートを捧げたかったんだ」と語っている。

 多くのラッパーがインターネットからキャリアをスタートさせてきたとはいえ、これほどオンライン文化の産物という感覚を抱かせるラッパーはあまりいない。ツィッター・フィードをスクロールしていくように、JPEGMAFIAの歌詞はおふざけから怒りっぽいもの、真情から軽薄なものまで次々に切り替わる。歌詞にはバスケットボール選手からファストフード・チェーン、ヴィデオ・ゲーム、90年代のテレビ番組、政治コメンテーター、インターネットのミームまで内輪受けのジョークとカルチャーの引用がみっしり詰まっていて、それらをすっかり解読するのには何時間も要する。

 その不条理なユーモアと割れた万華鏡を思わせるプロダクションに対し、手加減なしのずけずけとした政治的な毒舌がバランスを取っている。「政治的なネタ」についてラップしてもいいんだとアイス–Tから教わったとする彼は、人々の神経を逆撫でする機会を避けることはまずない。“All My Heroes Are Cornballs”で彼は「インセルどもは俺がクロスオーヴァーしたんで怒ってやがる」とラップする──「じゃあ連中はどうやってアン・ハザウェイからアン・クルターに鞍替えしたんだ?」(註2)。“PRONE!”は「一発でスティーヴ・バノンはスティーヴ(ン)・ホーキンスに早変わり」とオルタナ右翼勢にとことん悪趣味な嫌がらせを仕掛ける。(註3)。こうしたすべてを彼がどれだけ楽しんでいるかが万一伝わらなかった場合のために、“Papi I Missed U”で彼は「レッドネックどもの涙、ワヘーイ、なんて美味いドリンクだ」とほくそえむ。

 その挑発には、敵対する側からさんざん人種差別の虐待を浴びせられてもレヴェルを高く維持しようというオバマ時代の考え方あれこれに対する反動、というロジックが備わっている。ヘンドリックスは2018年に『The Wire』誌との取材で「一体全体どうして俺たちは、俺たちを蔑む連中にこれだけおとなしく丁寧に接してるんだ?」と疑問を発した。「『向こうが下劣になろうとするのなら、我々は高潔になろう』。むしろ俺は右派に対し、奴らが出しているのと同じ攻撃性をお返ししてやりたいね。効果てきめんだよ!」

 彼はまた従軍時代に体験したマッチョなカルチャーを引っくり返すのを大いに楽しんでもいて、タフ・ガイ的な記号の数々と典型的にフェミニンなお約束とを混ぜ合わせる。かつてのプリンスがそうだったようにJPEGMAFIAもジェンダーが流動的で、曲の中で女性の声にすんなりスウィッチするのだ。“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”のコーラスで彼は「どうやったらあたしの股を閉じたままにしておけるか教えて」と歌うが、この曲のタイトルは性的に放縦な女性に対するヒップホップの中傷語(Thot)を女性の側に奪還している。彼は“BasicBitchTearGas”で再び女性の視点を取り入れるが、この曲は予定調和な筋書きを反転させた女性のためのアンセム=TLCの“No Scrubs”の、意外ではあるものの皮肉は一切なしのカヴァーだ。

 ペギーは「お前のおばあちゃんにもらったお下がりに身を包んで」(“Jesus Forgive Me, I'm a Thot”)けばけばしいファッションでキメることもあるが、それでも激しく噛み付いてくる。オンラインの他愛ない舌戦とリアルな暴力の威嚇との間にはピンと張り詰めた対比が存在する。“Beta Male Strategies”で彼はツィッター上で彼を批判する面々に「くそったれなドレス姿のニガーに撃たれるんじゃないぜ」と警告する。“Thot Tactics”では「ブラザー、キーボードから離れろ、MACを引っ張り出せよ」とあざける。アップル製コンピュータのことかもしれないが、おそらくここで言っているのはMACサブマシンガンのことだろう。

 ギャングスタ・ラップの原型からはほど遠いラッパーとはいえ、JPEGMAFIAは小火器に目がない。“DOTS FREESTYLE REMIX”の「お前が『Toonami』を観てた頃から俺は銃をおもちゃに遊んでたぜ」のラップは、昔ながらの「お前が洟垂らしだった頃から俺はこれをやってきた」に匹敵する愚弄だ(註4)。西側の白人オタクたちは自分のお気に入りのアニメ界のフェティッシュの対象を「ワイフ(wiafu)」と呼ぶが、“Grimy Waifu”でペギーが官能的なR&Bヴォーカルを向ける相手は実は彼の銃だったりする。

 突然注目を浴びたラッパーの多くがそうであるのと同じように、『All My Heroes Are Cornballs』も音楽業界およびその中における自身の急上昇ぶりに対する辛辣な観察ぶりを示してみせる。“Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind”で彼は「俺はコーチェラから出演依頼を受けたけど、敵さんたちはそうはいかないよな」と自慢する。このトラックの他の箇所では、彼に取り入り利用しようとするレコード業界の重役たちにゲンナリしている様が聞こえる──「この白いA&Rの連中、俺を気軽に注文できる単品料理だと思ってるらしい/俺をお前らのケヴィン・ジェイムズにしたいのかよ、ビッチ、だったら俺にケヴィン・ハート並みに金を払うこった」(註5)。自分のショウを観に来る怒れる白人男連中は彼のお気に召さないのかもしれないが(「ニガーに人気が出ると、黒人ぶるのが好きな白人どもが毎回顔を出すのはどうしてなんだ?」──“All My Heroes Are Cornballs”)、その見返りを彼は喜んで受け取る。「年寄りのホワイト・ニガーは大嫌いだ、俺には偏見があるからな/ただしお前らニガーの金を教会の牧師が寄付金を集めるように俺の懐に入れてやるよ」(“Papi I Missed U”)

 と同時にペギーは彼自身、あるいは他の誰かを台座に就かせようという試みに抵抗してもいる。アルバム・タイトルがいみじくも表している──「俺のヒーローはダサい変人ばかり」と。アルバムの中でもっともエモーション面でガードを下ろした“Free the Frail”で、彼は「俺のイメージの力強さに頼っちゃだめだ」と忠告する。「良い作品なら、めでたいこった/細かく分析すればいいさ、もう俺の手を離れちまったんだし」。それは受け入れられたいとの訴えであり、完璧な人間などいないという事実の容認だ。あなたは彼を知っているつもりかもしれない。彼はそんなあなたを失望させるだけだ。

〈筆者註〉
註1:「アリG」は、ケンブリッジ大卒のユダヤ系イギリス人であるサシャ・バロン・コーエンの演じた「自分は黒人ギャングスタだ」と思い込んでいる白人キャラクター。コーエンはこのキャラを通じて「恵まれた若い白人層が彼らの思うところの『黒人の振る舞い』を猿真似する姿」を風刺しようとしたのだ、と主調している。しかし一部には、そのユーモアそのものが実はステレオタイプな黒人像を元にしたものだとしてアリGキャラを批判する声も上がっている。
(※アリGはマドンナの“Music”のPVでリムジン運転手役としても登場)

註2:インセルども=女嫌いのオンライン・コミュニティ「involuntary celibate(不本意ながらヤれずにいる禁欲者)」の面々は、JPEGMAFIAが少し前に成功しアンダーグラウンドからメインストリームに越境したことに怒りを発した。アン・クルターはヘイトをまき散らすアメリカ右派コメンテーターで、『プラダを着た悪魔』他で知られるお嬢さん系女優アン・ハザウェイ好きから、インセルたちはどうやってアン・クルターのファンに転じたのか? の意。

註3:ドナルド・トランプの元チーフ戦略家スティーヴ・バノンを車椅子生活に送り込むには一発の銃弾さえあれば足りる、の意。

註4:『Toonami』は1997年から2008年までカートゥーン・ネットワークで放映されたアクション/アニメ番組専門のテレビ枠。

註5:レーベル側のA&R担当者たちは彼らの求めた通りの何かを自分からいただけると思っているが、だったらもっと金を払ってくれないと、の意。ケヴィン・ジェイムズもケヴィン・ハートも俳優だが、人気黒人コメディアンであるハートはジェイムズよりもはるかに多額のギャラを要求できる立場にいる。


“You think you know me.” Producers love a tag: a graffiti-like signature to scrawl across their tracks, letting listeners know who’s in control. Sampled from the theme song for WWE wrestler Edge, JPEGMAFIA’s production tag—like a lot of what he does—manages to be many things at once: a sonic marker, a pop culture reference, a provocation. You think you know me?
Barrington DeVaughn Hendricks had plenty of time to get to know himself before the unexpected success of 2018’s Veteran brought his messy, free-associating music to a wider audience. In a previous incarnation, he was Devon Hendryx, a moniker derived from his middle and last names. It was while living in Japan, after an honourable discharge from the US Air Force, that he became JPEGMAFIA. He often prefers to use the diminutive Peggy, which makes him sound more like someone's grandmother.
Then again, JPEGMAFIA likes to call himself a lot of things. On “BBW,” from 2019’s All My Heroes Are Cornballs, he’s “the young, black Brian Wilson”—a boast about his production skills, made all the funnier by the fact Wilson must be one of the whitest-sounding musicians in the history of recorded music. On “Post Verified Lifestyle,” he’s “Beanie Sigel, mixed with Beatles with a dash of DOOM at 98 degrees”—in the space of a single line, name-checking a former Jay-Z protégé, a canonical rock band, a reclusive underground rapper and a 1990s teen-pop group. Later in the same track, he’s “the young, black Ali G,” which is a great throwaway gag that gets stranger the more you think about it.
JPEGMAFIA is elusive, shifting between surreal humour, political invective and moments of emotional vulnerability. In the run-up to the release of All My Heroes Are Cornballs, he constantly dodged questions about when the album was due, merely insisting that it would be a disappointment. His YouTube channel released videos of celebrity pals, including James Blake and Kenny Beats, offering lukewarm endorsements. DJ Dahi’s was characteristic: “I'll probably never listen to this shit again, personally.”
These testimonials are typical of the way Hendricks both embraces and mocks the conventions of social media. “Nigga, come kill me, I’m verified,” he declares on “Jesus Forgive Me, I’m a Thot,” taunting the online haters while flaunting his Twitter status. On “Beta Male Strategies,” he prophesies: “When I die, my tombstone’s Twitter, Twitter.”
When Veteran started blowing up, Hendricks got a small image of a computer cursor tattooed on his left cheekbone, pointing towards his eye. As he told Crack Magazine: “I wanted to pay tribute to the internet in some way.”
Many rappers have launched their careers on the internet, but few feel quite so much like a product of online culture. Like scrolling through a Twitter feed, JPEGMAFIA’s lyrics whiplash constantly between playful and bilious, heartfelt and irreverent. They’re dense with in-jokes and cultural references—to basketball players, fast-food chains, video games, ’90s TV shows, political pundits, internet memes—that would take hours to fully decode.
The absurdist humour and fractured-kaleidoscope production is counterbalanced by some unapologetically direct political invective. He credits Ice Cube with teaching him it was OK to rap “about political shit,” and seldom shies away from an opportunity to rile people. “Incels gettin’ crossed ’cause I crossed over,” he raps on “All My Heroes Are Cornballs.” “How they go from Anne Hathaway to Ann Coulter?” On "PRONE!," he trolls the alt-right as tastelessly as possible: “One shot turn Steve Bannon into Steve Hawking.” And just in case it wasn’t clear how much he’s enjoying all of this, “Papi I Missed U” gloats: “Redneck tears, woo, what a beverage.”
There’s logic to the provocation, a reaction to all that Obama-era stuff about taking the high ground while your opponents douse you in racist abuse. “Why the fuck are we so civil with people who despise us?" Hendricks asked The Wire in 2018. “‘They go low, we go high.’ I’d rather give the right the same aggression back. It works!”
He also delights in subverting the macho culture he experienced serving in the military, mixing tough-guy signifiers with stereotypically feminine tropes. JPEGMAFIA is gender-fluid in the way that Prince was, slipping naturally into a female voice during songs. “Show me how to keep my pussy closed,” he sings in the chorus of of “Jesus Forgive Me, I’m a Thot,” the title of which reclaims a hip-hop slur (“thot”) used against slutty women. He adopts a female perspective again on “BasicBitchTearGas,” an unexpected—and wholly unironic—cover of TLC’s script-flipping anthem, “No Scrubs.”
Peggy may sport flamboyant fashions—he’s “Dressed in your grandmama’s hand-me-downs” (“Jesus Forgive Me, I’m a Thot”)—but he still bites. There’s a bracing contrast between the online shit-talking and the threat of real violence. On “Beta Male Strategies,” he cautions his critics on Twitter: “Don't get capped by a nigga in a muhfuckin’ gown”. On “Thot Tactics,” he taunts: “Bruh, put the keyboard down, get the MAC out”—which could be talking about Apple computers, but is probably referring to the MAC submachine gun.
He’s a far cry from the gangsta-rap archetype, but JPEGMAFIA can’t get enough of his firearms. “I’ve been playing with pistols since you watching Toonami,” he raps on “DOTS FREESTYLE REMIX,” the equivalent of the old “I’ve been doing this since you were in diapers” jibe. While Western otaku use “waifu” to refer to their favourite anime fetish object, on “Grimy Waifu,” Peggy’s seductive R&B vocal is actually addressed to his gun.
Like many rappers who’ve been thrust suddenly into the spotlight, All My Heroes Are Cornballs offers caustic observations on the music industry and his rapid ascent within it. “I got booked for Coachella, enemies can’t say the same,” he brags on “Rap Grow Old & Die x No Child Left Behind.” Elsewhere on the same track, he’s unimpressed by record industry execs hoping to take advantage of him: “I feel these cracker A&Rs think I’m al a carte / They want me Kevin James, bitch, pay me like Kevin Hart.” He may not like the angry white dudes in the audience at his shows (“Why these wiggas always showin’ up when niggas be poppin’?” on “All My Heroes Are Cornballs”), but he’s happy to reap the rewards: “I hate old white niggas, I’m prejudiced / But I’ma take you niggas money like a reverend” (“Papi I Missed U”).
At the same time, Peggy resists attempts to put him, or anyone else, on a pedestal. It’s right there in the title: all my heroes are cornballs. “Don't rely on the strength of my image,” he cautions on “Free the Frail,” the album’s most emotionally unguarded track. “If it’s good, then it’s good / Break it down, this shit is outta my hands.” It’s a plea for acceptance, an acknowledgment that nobody’s perfect. You think you know him. He can only disappoint you.

CHANGSIE - ele-king

 東京のアンダーグラウンドでその名を轟かせる実力派DJ、今年は〈BLACK SMOKER〉からミックス『THE FURY』をリリースしてもいる CHANGSIE (チャンシー)が、2020年1月24日、キャリア初にして渡英前最後のワンマン・パーティを WWWβ にて開催する。昨日公開されたRAのポッドキャストではUKガラージを軸にしたダイナミックなプレイを披露してくれているけれども、きたるパーティはオープンからクローズまでのオールナイトとのことで、より多彩なセットを楽しむことができそうだ。この機会を逃しちゃいけない。

interview with Kode9 - ele-king

 今年で設立15周年を迎える〈Hyperdub〉。ベース・ミュージックを起点にしつつ、つねに尖ったサウンドをパッケージしてきた同レーベルが、きたる12月7日、渋谷 WWW / WWWβ にて来日ショウケースを開催する。
 目玉はやはりコード9とローレンス・レックによるインスタレイション作品『Nøtel』の日本初公開だろう。ロンドンでの様子についてはこちらで髙橋勇人が語ってくれているが、サウンドやヴィジュアル面での表現はもちろんのこと、テクノロジーをめぐる議論がますます熱を帯びる昨今、その深く練られたコンセプトにも注目だ。この機会を逃すともう二度と体験できない可能性が高いので、ふだんパーティに行かない人も、この日ばかりは例外にしたほうが賢明だと思われる。
 ほかの出演者も強力で、アルカのアートワークで知られるジェシー・カンダの音楽プロジェクト=ドゥーン・カンダ(11月29日に初のアルバム『Labyrinth』をリリース済み)や、昨年強烈なEP「Enclave」を送り出したアンゴラ出身のナザールと、なんとも刺戟的な面子が揃っている。さらにそこに〈Hyperdub〉からリリースのある Quarta 330 をはじめ、Foodman や DJ Fulltono、Mars89 といった日本のアンダーグラウンドの最前線を牽引する面々が加わるというのだから、これはもうちょっとしたフェスティヴァルである。
 というわけで、来日直前のコード9にレーベルの15周年や『Nøtel』、まもなく発売されるベリアルの編集盤などについて、いくつか質問を投げかけてみた。(小林拓音)


photo: David Levene

『Notel』の世界はデジタル化された不死の概念を展示するような場所でもあって、そこでは死んだ友人たちが生き続けている。

今年で〈Hyperdub〉は15周年を迎えます。2004年にレーベルをスタートさせたとき、どのような意図や野心があったのですか?

スティーヴ・グッドマン(Steve Goodman、以下SG):はじめたときは、亡きスペースエイプと一緒にやっていた自分の音楽をリリースするレーベルにしたいと考えていただけだった。それ以上の目標は持っていなかったよ。

それは、いまでも続いていますか? この15年で大きな転換点はありましたか?

SG:それが、当初の目的はあっという間にどこかへ行ってしまって、他のアーティストたちの作品をリリースするようになった。ある意味、まったく逆のことをやっている──いまでは自分の音楽をやる時間はほとんど持てないからね。ベリアルのアルバムを出したのは、間違いなく大きな転機だった。2014年に起こったDJラシャドとスペースエイプの死もそうだ。

『Diggin' In The Carts』のリミックスは、あなたのオリジナル作品と言っていいくらい独自にリミックスされていましたけれど、そのとき意識していたことや、4曲の選出理由を教えてください。

SG:2017年から、アニメイターの森本晃司が制作した映像を使って、オーディオヴィジュアル・ライヴを続けている──音楽は、コンピレイション・アルバム『 Diggin' In The Carts』の中から14曲を自分でリミックスしたものを使っている。リミックスEPには、その14曲から好きなトラックを選んだだけなんだ。

12月7日の来日公演に出演するドゥーン・カンダ(Doon Kanda)はヴィジュアル・アーティストとしてのほうが有名ですけれど、その音楽についてはどう思っていますか?

SG:彼の映像表現は、驚きに満ちていてすごく独特だ。音楽にかんしては、鋭敏で優美なメロディ・センスを持ち合わせていると思う。初めてその音楽を聴いたとき、これは アルカの曲だろうかと思ったんだけど、いまでは彼独自のサウンドを徐々に見つけていると思う。今回のアルバムはリズムもすごくおもしろくて、電子音でワルツを刻んでいると言ってもいいくらいだ。


photo: David Levene

おなじく今回来日するアンゴラのナザール(Nazar)ですが、彼の音楽の魅力とは?

SG:ナザールは、ここ最近〈Hyperdub〉で契約した新人でもとくに楽しみなひとりだ。他にはまったくないサウンドを持っていて、それを自分で「ラフ・クドゥーロ」(訳註:クドゥーロはアンゴラ発祥の音楽形式)と呼んでいる。彼がふだん鳴らしている音を説明するなら、ベリアルの音楽をさらに騒々しくしたヴァージョンと、マルフォックスニディア、あるいはニガ・フォックスらによる〈Príncipe〉レーベルの音楽の中間にあると言える。パフォーマンスをするときは、自分の音楽だけを演奏していて、何から何まで独創的な音の世界を聴かせてくれる。彼の作品テーマはアンゴラの内戦と関わりがあって、それで僕の著書『Sonic Warfare』とも共鳴する部分がある。そこがたいていのプロデューサーとちがうところだ。

まもなくベリアルのコンピレイションがリリースされます。彼のことですので、たんにレーベル15周年を祝ってという理由だけでなく、何か考えがあるように思えます。すべて既出の音源ですが、曲順も練られているように感じました。これは実質的に彼のサード・アルバムと捉えてもいいのでしょうか?

SG:彼は適切な流れをつくれるように考えて曲順を決めていた。厳密にはサード・アルバムとは言えないだろう──アルバム『Untrue』以降にリリースされたトラックをほぼすべて網羅したものでしかない。ここに収録されたトラックはどれも、アルバムに入っていないからという理由で、見過ごされてきたように感じられる。われわれとしては、今回の楽曲には、アルバムの収録曲より優れたものさえ存在すると確信している。

今年はサブレーベルの〈Flatlines〉も始動しましたね。第1弾はマーク・フィッシャーとジャスティン・バートンによる作品『On Vanishing Land』で、フィッシャーゆかりのアーティストが多く参加しています。この作品は彼への追悼なのでしょうか?

SG:そうだと言ってかまわない。レーベルの名前は、彼が博士号を取得したさいのテーマにちなんでつけたもので、この作品は、彼の最後の著書『The Weird and the Eerie』に記されたアイディアのいくつかをオーディオエッセイというかたちで実践したものだ。

今後〈Flatlines〉はどのような作品を出していく予定なのでしょう?

SG:もしかしたら、僕自身のオーディオエッセイをいくつか出すかもしれない。

AIやテクノロジーのことがよく話題にのぼる昨今、「もともと人間のために作られたシステムが、人間消滅後もシステム自らのために稼働し続ける」という『Nøtel』の設定は示唆的です。作品のもととなったあなたのアルバム『Nothing』が出てから4年たちましたが、『Nøtel』にはどのような反応が返ってきていますか?

SG:『Nøtel』は興味深いプロジェクトとして続いてきた。最初は僕とローレンス・レックが加速主義(訳註:現行の資本主義プロセスを加速することで根本的な社会変革に結びつけようとする思想)について意見を交わすことからはじまった。それがアルバムの2つ折りジャケットのアートワークにつながった。それから仮想空間に建造物を再現し、僕がライヴ演奏をしているあいだにローレンスがゲーム用コントローラーを使って内部を移動する様子を映し出す(それぞれのトラックにひとつの部屋が割り当てられている)という形式ができて、さらにはユーザー参加型のVR作品に仕上がった。そして『Nøtel』を実際のホテルに見立てた架空の広告を制作し、香港のアート・バーゼルというイヴェントで最大規模のヴィデオ展示をおこなった。12月には上海での展示がおこなわれる──『Nøtel』はこれまで突然変異を繰り返して異なる環境をつくり出し、いまもなお発展を続けている。今回、初めて日本でのパフォーマンスが実現する。


photo: Philip Skoczkowski

『Nøtel』では、資本主義を打ち破るコンセプトとして、ジャーナリストのアーロン・バスターニが描いた全自動ラグジュアリー共産主義(Fully Automated Luxruy Communism)が、資本主義的に読み替えられた全自動ラグジュアリー(Fully Automated Luxury)というコンセプトとして登場します。『Nøtel』は、人間がいなくなったあとも資本主義リアリズムがテクノロジーによって構築され続ける世界です。わたしの記憶が正しければ、『Notel』のなかには、亡くなったスペースエイプやDJラシャドがまるで幽霊のようにホログラムや映像として登場します。人間のいない『Nøtel』の世界に幽霊がいるとすれば、それはどのような意味を持つのでしょうか?

SG:『Nøtel』の世界はデジタル化された不死の概念を展示するような場所でもあって、そこでは死んだ友人たちが生き続けている。『Nøtel』は、富裕な人びとが求める社会的分離が行き着くところまで行ってしまった皮肉な事態(従業員が機械化されたのみならず、『Nøtel』には、もはや宿泊客がやって来ない──ただ、なぜそうなったのかをわれわれは語らない)をあらわすと同時に、「完全自動ラグジュアリーコミュニズム」(訳註:技術革新によって実現できるとされる豊かな共産主義社会で、アーロン・バスターニの著書『Fully Automated Luxury Communism』のタイトルと一致する)という概念があっても、それが企業体によっていかに容易に私物化されうるかという皮肉を示している。『Nøtel』では、ドローンが従業員として仕事をする。そしてこの作品は、自分たちを使役する人間が存在しなくなったと認識したドローンが自由を獲得することで結末を迎える。

あなたは、今回一緒に来日するローレンス・レックの映像作品『AIDOL』に、声優として出演していますね。『AIDOL』の舞台は東南アジアです。では『Nøtel』の世界では、「東洋」はどのように存在しているのでしょう?

SG:物語の上で、『Nøtel』は国有の中国企業によって経営されている──そのブランド戦略を担うコンサルタントのひとりはロンドンのアートスクールで学んだ経験があり、そこで「完全自動ラグジュアリーコミュニズム」という言葉を耳にして、意味をとりちがえたまま中国に持ち帰り、迂闊にも高級ホテルチェーンのキャッチフレーズに転用してしまったんだ。

『Nøtel』における機械(ドローン)には、われわれ人間と同じような肉体があるわけではないですが、人間性のようなものが宿っているようにも見えます。われわれは機械の尊厳についても考えるべきでしょうか?

SG:ドローンには、自由になりたいという欲望がプログラムされていて、それは、主人である人間に仕えるよう定めたプログラムよりも根源的なものとして機能する。どうあれ、人間は自動化を進めたまま、やがて終焉を迎えたということだ。

Hyperdub

Kode9 率いる〈Hyperdub〉の15周年パーティーが "Local X9 World Hyperdub 15th" として WWW にて12月7日(土)に開催決定!
また、孤高の天才 Burial が歩んだテン年代を網羅したコレクション・アルバムが国内流通仕様盤CDとして12月6日(金)に発売決定!

00年代初期よりサウス・ロンドン発祥のダブステップ/グライムに始まり、サウンドシステム・カルチャーに根付くUKベース・ミュージックの核“ダブ”を拡張し、オルタナティブなストリート・ミュージックを提案し続けて来た Kode9 主宰のロンドンのレーベル〈Hyperdub〉。本年15周年を迎える〈Hyperdub〉は、これまでに Burial、Laurel Halo、DJ Rashad らのヒット作を含む数々の作品をリリースし、今日のエレクトロニック・ミュージック・シーンの指標であり、同時に先鋭として飽くなき探求を続けるカッティング・エッジなレーベルとして健在している。今回のショーケースでもこれまでと同様に新世代のアーティストがラインナップされ、東京にて共振する WWW のレジデント・シリーズ〈Local World〉と共に2020年代へ向け多様な知性と肉体を宿した新たなるハイパー(越境)の領域へと踏み入れる。

Local X9 World Hyperdub 15th

2019/12/07 sat at WWW / WWWβ
OPEN / START 23:30
Early Bird ¥2,000@RA
ADV ¥2,800@RA / DOOR ¥3,500 / U23 ¥2,500

Kode9 x Lawrence Lek
Doon Kanda
Nazar
Shannen SP
Silvia Kastel

Quarta 330
Foodman
DJ Fulltono
Mars89

今回のショーケースでは、Kode9 がDJに加えシミュレーション・アーティスト Lawrence Lek とのコラボレーションとなる日本初のA/Vライブ・セットを披露。そして最新アルバム『Labyrinth』が11月下旬にリリースを控える Doon Kanda、デビュー・アルバムが来年初頭にリリース予定のアンゴラのアーティスト Nazar、そしてNTSラジオにて番組をホストする〈Hyperdub〉のレジデント Shannen SP とその友人でもあるイタリア人アーティスト Silvia Kastel の計6人が出演する。

BURIAL 『TUNES 2011-2019』

Burial の久しぶりのCDリリースとなる『TUNES 2011-2019』が帯・解説付きの国内流通仕様盤CDとしてイベント前日の12月6日にリリース決定!

2006年のデビュー・アルバム『Burial』、翌年のセカンド・アルバム『Untrue』というふたつの金字塔を打ち立て、未だにその正体や素性が不明ながらも、その圧倒的なまでにオリジナルなサウンドでUKガラージ、ダブステップ、ひいてはクラブ・ミュージックの範疇を超えてゼロ年代を代表するアーティストのひとりとして大きなインパクトを残したBurial。

沈黙を続けた天才は新たなディケイドに突入すると2011年にEP作品『Street Halo』で復活を果たし、サード・アルバム発表への期待が高まるもその後はEPやシングルのリリースを突発的に続け、『Untrue』以降の新たな表現を模索し続けた。本作はテン年代にブリアルが〈Hyperdub〉に残した足取りを網羅したコレクション・アルバムで、自ら築き上げたポスト・ダブステップの解体、トラックの尺や展開からの解放を求め、リスナーとともに未体験ゾーンへと歩を進めた初CD化音源6曲を含む全17曲150分を2枚組CDに収録。

性急な4/4ビートでディープなハウス・モードを提示した“Street Halo”や“Loner”から、自らの世界観をセルフ・コラージュした11分にも及ぶ“Kindred”、よりビートに縛られないエモーショナルなス トーリーを展開する“Rival Dealer”、史上屈指の陽光アンビエンスが降り注ぐ“Truant”、テン年代のブリアルを代表する人気曲“Come Down To Us”、そして最新シングル“State Forest”に代表される近年の埋葬系アンビエント・トラックまで孤高の天才による神出鬼没のピース達は意図ある曲順に並べ替えられ、ひとつの大きな抒情詩としてここに完結する。

label: BEAT RECORDS / HYPERDUB
artist: Burial
title: Tunes 2011-2019
release date: 2019.12.6 FRI

Tracklisting

Disc 1
01. State Forest
02. Beachfires
03. Subtemple
04. Young Death
05. Nightmarket
06. Hiders
07. Come Down To Us
08. Claustro
09. Rival Dealer

Disc 2
01. Kindred
02. Loner
03. Ashtray Wasp
04. Rough Sleeper
05. Truant
06. Street Halo
07. Stolen Dog
08. NYC

Gang Starr - ele-king

 90年代のヒップホップ・シーンを代表する存在であり、その後に繋がるヒップホップ・サウンドの基礎を作ったデュオである Gang Starr が、まさか16年ぶりとなるニュー・アルバムを完成させるなんて、筆者も含めて誰も予想していなかったであろう。2003年にリリースされた前作となる『The Ownerz』を最後に、Gang Starr はグループとしては事実上、活動停止となり、その状態のまま2010年にMCである Guru がガンによって命を落とす。以降、Guru の相棒であった DJ Premier はDJ/プロデューサーとして精力的に活動を続けながら、Gang Starr 名義での作品の制作およびリリースについて度々言及していたものの、実現まで到ることはなかった。しかし、Gang Starr が活動停止していた時期に Guru のDJ/プロデューサーを務めていた Solar という人物が保有していた未発表のヴォーカル音源が2016年に売却され、それが DJ Premier の手に渡り、今回のアルバムが制作されたというわけだ。

 今年9月に本作リリースの一報と同時に、先行シングルとして J.Cole をフィーチャした“Family and Loyalty”が発表されたのだが、往年の Gang Starr のフレイヴァーがそのままダイレクトに表現されたこの曲に、Gang Starr ファンであれば誰もが驚かされたに違いない。もちろん、厳密な意味で技術的にはいま現在の質感の上にあるものであるが、チョップ&フリップによるサンプリング・ループにワードプレイを駆使したスクラッチが随所にはめ込まれたトラックは、一聴してすぐにわかるあの当時の DJ Premier のシグネチャー・サウンドそのもの。そして、J.Cole という現トップクラスのラッパーを従えながら、Guru のラップは相変わらずの最高の相性で DJ Premier のトラックの上でドライヴし、全盛期とも寸分違わない Gang Starr としての完成形に仕上がっている。それは本作『One of the Best Yet』も同様で、DJ Premier と Guru のふたりでなければ成立しない、誰もが思う Gang Starr サウンドそのものがアルバムの隅々にまで行き渡っている。

 繰り返しになるが、本作は Guru が『The Ownerz』以降、亡くなるまでの間にレコーディングした未発表のヴォーカル音源に、DJ Premier が後からトラックを合わせ、そして、曲によってはゲストを入れた上でアルバムとして完成させている。つまり通常のアルバム制作の流れとは異なるわけであるが、不思議なほどに不自然さを感じることはない。そんなことを考える前に、DJ Premier によるDJプレイで Gang Starr クラシックが“Full Clip”から全11曲立て続けに飛び出すイントロの“The Sure Shot”で一気に気持ちを持っていかれるだろう。Gang Starr Foundation とも呼ばれる彼らのクルーから M.O.P. (“Lights Out”)、Group Home (“What's Real”)、Jeru the Damaja (“From a Distance”)といったメンツが再度結集し、さらに Big Shug と Freddie Foxxx に到っては“Take Flight (Militia, Pt. 4)”にて Gang Starr クラシックである“The Militia”の続編を『The Ownerz』ぶりに披露。また、当時では共演の叶わなかった Q-Tip (“Hit Man”)や Talib Kweli (“Business of Art”)などもゲスト参加していたり、あるいはインタールード(“Keith Casim Elam”)で Guru の実の息子がシャウトアウトを送ったりと、こちらの予想を超える様々な仕掛けが盛り込まれており、さらにこのアルバムを魅力的なものにしている。

 もちろん、90年代や2000年代のヒップホップ・サウンドを知らないリスナーがこのアルバムを聴いても、単なるオールドスクールなものにしか感じないかもしれない。だが、10年以上も前にレコーディングされた Guru のラップのスタイルやリリックの内容も含めて、時代を超えたヒップホップとしての普遍的な魅力が本作には詰まっており、Gang Starr をリアルタイムでは経験していない世代にも、その良さが少しでも伝われば幸いです。

Lone - ele-king

 アクトレス主宰の〈Werk Discs〉から『Ecstasy & Friends』を送り出し、その後〈Magicwire〉からの『Emerald Fantasy Tracks』や〈R&S〉からの数々のリリースで、ぐんぐん知名度を上げていったプロデューサーのローンが来日する。今年は自らのレーベル〈Ancient Astronauts〉を始動させるなど新たな動きも見せているだけに、これは注目の公演だ。11月22日は VENT へ。

Radiohead からGilles Petersonまで
ジャンルを超えたレジェンド達が注目する才能、Lone

〈R&S〉を筆頭に、〈Dekmantel〉や〈Werk Discs〉などの人気レーベルからの作品が大人気! 今年には新レーベル〈Ancient Astronauts〉を始動するなど絶好調な活動を見せるエレクトロニック・ミュージック新世代を代表するアーティスト Lone (ローン)が11月22日の VENT に初登場!

UKのレイヴやデトロイトのテクノに影響を受け、ポスト・ダブステップ旋風が吹き荒れる時代にさっそうとシーンに現れた Lone。Actress 率いる〈Werk Discs〉から2009年にリリースしたアルバム『Ecstasy & Friends』が早耳リスナーの話題になり、2010年
の『Emerald Fantasy Tracks』、そして2012年に名門レーベル〈R&S〉からリリースした『Galaxy Garden』で一躍、世界的プロデューサーの地位にまで上り詰めた。

2011年には Radiohead にリミキサーに選ばれ、2014年には Gilles Peterson が Lone の“2 is 8”をベスト・トラックに選んだりと、Lone の才能はジャンルを超えたトップ・アクトにも認められている。過去には Redbull 主催の EMAF Tokyo や Taico Club などにも出演し、大きな舞台で日本のクラウドにも素晴らしい才能を披露してきた。Boards of Canada にも比肩される孤高のプロデューサーの VENT デビューは要注目だ!

イベント概要
- Lone -

DATE : 11/22 (FRI)
OPEN : 23:00
DOOR : ¥3,600 / FB discount : ¥3,100
ADVANCED TICKET : ¥2,750
https://jp.residentadvisor.net/events/1334405

=ROOM1=
Lone
DJ Conomark
Frankie $ (N.O.S. / KEWL)
shunhor (breathless / euphony)

=ROOM2=
Shintaro & Gradate (haktúːm)
Ueno (Charterhouse Records / sheep)
Jeremy Yamamura
Kyohei Tanaka
KATIMI AI

VENT:https://vent-tokyo.net/schedule/lone/
Facebookイベントページ:https://www.facebook.com/events/402200657399623/
※ VENTでは、20歳未満の方や、写真付身分証明書をお持ちでない方のご入場はお断りさせて頂いております。ご来場の際は、必ず写真付身分証明書をお持ち下さいます様、宜しくお願い致します。尚、サンダル類でのご入場はお断りさせていただきます。予めご了承下さい。
※ Must be 20 or over with Photo ID to enter. Also, sandals are not accepted in any case. Thank you for your
cooperation.

 スケシンさんの〈C.E〉がまた面白いパーティをやります。今回は、Joy OrbisonとRezzettのふたりに、ホンジュラスのテグシガルパ出身のプロデューサー、Low Jackも来日。最近は、自身のレーベル〈Editions Gravats〉からのリリースも注目を集めており、たぶんダンスホールをがんがんプレイしそうな予感。また、初来日となるマンチェスターをベースに活動をおこなうJon K、C.Eのパーティではお馴染みThe Trilogy Tapes / Hinge Finger主宰のWill Bankhead、1-Drink、LIL MOFOが出演。

 現在、激安のアーリーバードチケット(チケット代1000円+手数料50円!)が数量限定で発売中。前売りも1500円、当日も2500円と安い! 偉い!
 こりゃ、絶対に行ったほうがいいよ。

C.E, TTT & HINGE FINGER present

JOY ORBISON
REZZETT
LOW JACK
JON K
WILL BANKHEAD
1-DRINK
LIL MOFO

Friday 25 Oct 2019(2019年10月25日金曜日)
Open/Start: 12:00 AM(深夜12時オープン/スタート)
Venue: WWW X www-shibuya.jp
Advance ¥1,500 / Door ¥2,500

Tickets available from Resident Advisor https://www.residentadvisor.net/events/1316924
Over 20's Only. Photo I.D. Required

Mika Vainio Tribute - ele-king

 電子音楽の前進に多大なる貢献を果たしながら、惜しくも2017年に亡くなってしまったミカ・ヴァイニオ。きたる10月19日に、怒濤の《WWW & WWW X Anniversaries》シリーズの一環として、彼のトリビュート公演が開催されることとなった。会場は WWW X で、発案者は池田亮司。彼とカールステン・ニコライのユニット cyclo. や、行松陽介、Haruka など、そうそうたる面子が出演する。パン・ソニックをはじめ、さまざまなプロジェクト/名義でエレクトロニック・ミュージックの最前線を切り開いてきたミカの面影をしのびつつ、出演者による音の追悼を体験しよう。

WWW & WWW X Anniversaries "Mika Vainio Tribute"

極北の中の極北、電子音楽史に名を残すフィンランドの巨星 Mika Vainio (Pan Sonic) のトリビュート・イベントが Ryoji Ikeda 発案の元、WWW X にて開催。Mika Vainio とコラボレーション・ライブも行った同世代の Ryoji Ikeda と Alva Noto とのユニット cyclo. の8年ぶりの東京公演が実現、欧州やアジアでも活躍中の行松陽介と Haruka 等が出演。

テクノイズ、接触不良音楽、ピュア・テクノ、ミニマルとハードコアの融合、といった形容をされながら、90年代初期に Ilpo Väisänen (イルポ・ヴァイサネン)とのデュオ Pan Sonic の結成と同時に自身のレーベル〈Sähkö〉を立ち上げ、本名名義の他、Ø や Philus といった名義で、インダストリアル、パワー・エレクトロニクス、グリッチ、テクノ、ドローン、アンビエント等の作品を多数リリース、アートとクラブ・ミュージックのシーンをクロスオーバーした実験電子音楽のパイオニアとして、2017年の逝去後も再発や発掘音源のリリースが続き、新旧の世代から未だ敬愛され、後世に絶大な影響を与える故・Mika Vainio (ミカ・ヴァイニオ)。本公演では昨年音源化が実現し、〈noton〉よりリリースされた Mika Vainio とコラボレーション・ライブも行った Ryoji Ikeda の発案の元、Mika Vainio のトリビュート企画が実現。同じくそのコラボレーション・ライブに参加し、〈noton〉主宰の Carsten Nicolai (Alva Noto) が来日し、2人のユニット cyclo. で出演が決定。DJにはここ数年欧州やアジア圏でもツアーを行い、ベルリン新世代による実験電子音楽の祭典《Atonal》にも所属する行松陽介と、DJ Nobu 率いる〈Future Terror〉のレジデント/オーガナイザーであり、プロデューサーでもある Haruka が各々のトリビュート・セットを披露する。 ピュアなエレクトロニクスによる星空のように美しい静閑なサウンドス・ケープから荘厳なノイズと不穏なドローンによる死の気配まで、サウンドそのものによって圧倒的な個性を際立たせる Mika Vainio が描く“極限”の世界が実現する。追加ラインナップは後日発表。

WWW & WWW X Anniversaries "Mika Vainio Tribute"
日程:2019/10/19(土・深夜)
会場:WWW X
出演:cyclo. / Yousuke Yukimatsu / Haruka and more
時間:OPEN 24:00 / START 24:00
料金:ADV¥4,300(税込 / オールスタンディング)
チケット:
先行予約:9/7(土)12:00 〜 9/16(月祝)23:59 @ e+
一般発売:9/21(土)
e+ / ローソンチケット / チケットぴあ / Resident Advisor
※20歳未満入場不可・入場時要顔写真付ID / ※You must be 20 or over with Photo ID to enter.

公演詳細:https://www-shibuya.jp/schedule/011593.php

Mika Vainio (1963 - 2017)

フィンランド生まれ。本名名義の他、Ø や Philus など様々な別名義でのソロ・プロジェクトで〈Editions Mego〉、〈Touch〉、〈Wavetrap〉、〈Sähkö〉など様々なレーベルからリリースを行う。80年代初頭にフィンランドの初期インダストリアル・ノイズ・シーンで電子楽器やドラムを演奏しはじめ、昨今のソロ作品はアナログの暖かさやエレクトロニックで耳障りなほどノイジーなサウンドで知られているが、アブストラクトなドローンであろうと、ミニマルなアヴァン・テクノであろうと、常にユニークでフィジカルなサウンドを生み出している。また、Ilpo Väisänen とのデュオ Pan Sonic として活動。Pan Sonic は自作・改造した電子楽器を用いた全て生演奏によるレコーディングで知られ、世界中の著名な美術館やギャラリーでパフォーマンスやサウンド・イスタレーションを行う。中でもロンドンのイーストエンドで行った警察が暴動者を鎮圧する時に使う装置に似た、5000ワットのサウンドシステムを積んだ装甲車でのギグは伝説となっている。ソロや Pan Sonic 以外にも、Suicide の Alan Vega と Ilpo Väisänen とのユニット VVV、Vladislav Delay、Sean Booth (Autechre)、John Duncun、灰野敬二、Cristian Vogel、Fennesz、Sunn O)))、 Merzbow、Bruce Gilbert など、多数のアーティストとのコラボレーション、Björk のリミックスも行う。2017年4月13日に53歳の若さで永眠。Holly Heldon、Animal Collective、NHK yx Koyxen、Nicholas Jaar、Bill Kouligas (PAN) など世界中の世代を超えたアーティストたちから、彼の類稀なる才能へ賛辞が贈られた。
https://www.mikavainio.com/


Photo: YCAM Yamaguchi Center for Arts and Media

cyclo.

1999年に結成された、日本とドイツを代表するヴィジュアル/サウンド・アーティスト、池田亮司とカールステン・ニコライ(Alva Noto)のユニット cyclo.。「サウンドの視覚化」に焦点を当て、パフォーマンス、CD、書籍を通して、ヴィジュアル・アートと音楽の新たなハイブリッドを探求する現在進行形のプロジェクト。2001年にドイツ〈raster-noton〉レーベルより1stアルバム『. (ドット)』を発表。2011年には前作より10年振りとなる2ndアルバム『id』、そして同年、ドイツのゲシュタルテン出版より cyclo. が長年リサーチしてきた基本波形の可視化の膨大なコレクションを体系化した書籍『id』を出版。
https://youtu.be/lk_38sywJ6U

Ryoji Ikeda

1966年岐阜生まれ、パリ、京都を拠点に活動。 日本を代表する電子音楽作曲家/アーティストとして、音そのものの持つ本質的な特性とその視覚化を、数学的精度と徹底した美学で追及している。視覚メディアとサウンド・メディアの領域を横断して活動する数少ないアーティストとして、その活動は世界中から注目されている。音楽活動に加え、「datamatics」シリーズ(2006-)、「test pattern」プロジェクト(2008-)、「spectra」シリーズ(2001-)、カールステン・ニコライとのコラボレーション・プロジェクト「cyclo.」(2000-)、「superposition」(2012-)、「supersymmetry」(2014-)、「micro | macro」(2015-)など、音/イメージ/物質/物理的現象/数学的概念を素材に、見る者/聞く者の存在を包みこむ様なライブとインスタレーションを展開する。これまで、世界中の美術館や劇場、芸術祭などで作品を発表している。2016年には、スイスのパーカッション集団「Eklekto」と共に電子音源や映像を用いないアコースティック楽器の曲を作曲した新たな音楽プロジェクト「music for percussion」を手がけ、2018年に自主レーベル〈codex | edition〉からCDをリリース。2001年アルス・エレクトロニカのデジタル音楽部門にてゴールデン・ニカ賞を受賞。2014年にはアルス・エレクトロニカがCERN(欧州原子核研究機構)と共同創設した Collide @ CERN Award 受賞。
https://www.ryojiikeda.com/

Carsten Nicolai (Alva Noto)

本名カールステン・ニコライ。1965年、旧東ドイツのカールマルクスシュタット生まれ。ベルリンを拠点にワールドワイドな活動を行うサウンド/ビジュアル・アーティスト。音楽、アート、科学をハイブリッドした作品で、エレクトロニック・ミュージックからメディア・アートまで多彩な領域を横断する独自のポジションを確立し、国際的に非常に高い評価を得ている。彼のサウンド・アーティストとしての名義がアルヴァ・ノトである。ソロ活動の他、Pan Sonic、池田亮司との「cyclo.」、ブリクサ・バーゲルトなど注目すべきアーティストたちとのコラボレーションを行い、その中でも、坂本龍一とのコラボレーション3部作『Vrioon』『Insen』『Revep』により、ここ日本でも一躍その名を広めた。2016年には映画『レヴェナント:蘇りし者』(アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督)の音楽を坂本龍一、ブライス・デスナーと共同作曲し、グラミー賞やゴールデン・グローブ賞などにノミネートされた。また、1996年に自主レーベル〈Noton〉をByetone 主宰の〈Rastermusic〉と合併し〈Raster-Noton〉として共に運営してきたが、2017年に再解体し、Alva Noto 関連の作品をリリースする〈Noton〉を再始動。
https://www.alvanoto.com/

行松陽介 (Yousuke Yukimatsu)

2008年 SPINNUTS と MITSUKI 主催 KUHIO PANIC に飛び入りして以降DJとして活動。〈naminohana records〉主催 THE NAMINOHANA SPECIAL での KEIHIN、DJ NOBU との共演を経て親交を深める。2014年春、千葉 FUTURE TERROR メインフロアのオープンを務める。2015年、goat のサポートを数多く務め、DOMMUNE にも出演。PAN showcase では Lee Gamble と BTOB。Oneohtrix Point Never 大阪公演の前座を務める。2016年 ZONE UNKNOWN を始動し、Shapednoise、Imaginary Forces、Kamixlo、Aïsha Devi、Palmistry、Endgame、Equiknoxx、Rabit を関西に招聘。Arca 大阪公演では Arca が彼の DJ set の上で歌った。2017年、2018年と2年続けて Berlin Atonal に出演。2018年から WWW にて新たな主催パーティー『TRNS-』を始動。Tasmania で開催された DARK MOFO festival に出演。〈BLACK SMOKER〉からMIX CD『Lazy Rouse』『Remember Your Dream』を、イギリスのレーベル〈Houndstooth〉のA&Rを手掛ける Rob Booth によるMIXシリーズ Electronic Explorations にMIXを、フランスのレーベル〈Latency〉の RINSE RADIO の show に MIX を、CVN 主催 Grey Matter Archives に Autechre only mix を、NPLGNN 主催 MBE series に MIX TAPE『MBE003』を、それぞれ提供している。
https://soundcloud.com/yousukeyukimatsu
https://soundcloud.com/ausschussradio/loose-wires-w-ausschuss-yousuke-yukimatsu

Haruka

近年、Haruka は日本の次世代におけるテクノDJの中心的存在として活動を続けている。26歳で東京へ活動の拠点を移して以来、DJ Nobu 主催のパーティ、かの「Future Terror」のレジデントDJおよび共同オーガナイザーとして、DJスキルに磨きをかけてきた。彼は Unit や Contact Tokyo、Dommune など東京のメジャーなクラブをはじめ、日本中でプレイを続けている。また、フジロックや Labyrinth などのフェスでのプレイも経験。Haruka は、緻密に構成されたオープニング・セットからピークタイムのパワフルで躍動感のあるテクノ・セット、またアフターアワーズや、よりエクスペリメンタルなセットへの探求を続ける多才さで、幅広いパーティで活躍するDJだ。このような彼特有の持ち味は、Juno Plus へ提供したDJミックスや Resident Advisor、Clubberia のポッドキャスト・シリーズにも表れている。ここ数年都内で開催されている Future Terror ニューイヤー・パーティでは長時間のクロージングセットを披露、2017年にはロンドン・ベルリン・ミュンヘン・ソウル・台北・ホーチミン・ハノイへDJツアーを行なうなど、着実に活動の場を広げている。
https://soundcloud.com/haruka_ft
https://soundcloud.com/paragraph/slamradio-301-haruka

vol.116 : プライド月間 2019 - ele-king

 NYの夏は野外コンサートが盛りだくさん。先週末はTortoiseが1998年のアルバム『TNT』を通して演奏、その2日前は、テキサスのKhruangbinが雨の中、日本のKikagaku Moyoと一緒にライヴ、そして今週頭はJapanese BreakfastとHatchie、水曜6/26はカナダディで、トロントのAlvvays、カルガリーのthe courtneys、オンタリオのEllis……といった具合だ。

 野外ショーはフリーが多く、がっつりバンドを見たい人は前、雰囲気を楽しんだりまったりしたい人は後ろの方でシートを敷いてピクニックをしている。アルコールは持ち込めないが、スナックや水なは大丈夫。出店の飲み物やフードなどもあり、友だちとハングアウトするには持ってこいである。
 ここ何年かは、プロスペクトパークの野外ショーが気に入ってよく通っていたが、今年はセントラルパークのサマーステージによく来ている。3年前にはUnknown Mortal Orchestraも観たし、良いインディのラインナップが揃っている。
 こういったショーは、寄付をするパトロンで成り立っているので、VIPエリアやメンバーエリアがあるために、私たちは、フロアでぎゅうぎゅうになりながら見るのであるが、ショーがフリーで楽しめるので文句はあまり言えない。
 私が普段行くDIYショーは、若者、クィアが多く、まだまだ少数派だと感じるが、野外ショーはNYという街をここに持ってきたかのように、いろんな種類の人がいる。白人、黒人、アジア人、ラテン系、ユダヤ系、アラブ系など、野外コンサートに来るとあらためて自分はメルティングポットといわれるNYにいる、と感じる。今年は、LGBTと女性が良く目につく。6月はプライド月間ということもあり、マーメイドパレードやイベントがあったり、たくさんの企業がこぞってレインボー旗を掲げている。サマーステージのスポンサーのひとつのキャピタルワン銀行などは、ユニオン・スクエア支店が、レインボー柄になっていたし、他の銀行や企業も自分だけ取り残されたくないというように次々レインボーに染まっている。


 プレイするバンドも女性フロントのバンドが多く、オーディエンスもLGBTに対してとてもオープンに感じる。その背後では、まだまだコンサバな人も多く、この多様性をまとめるのは一筋縄ではいかないのだろうとも感じる。
 今月初めにポルトガルに行ってからというもの、アメリカのエキセントリックさが目に付くようになった。ポルトガルの人はめったなことでは声を上げないが、アメリカの人は小さなものにでもすぐ声を上げる。人種や国の違いと言えばそれまでだし、どちらが良いという問題でもないのだが、NYにいると、NY的にならないと生きていけない。今月最後の日曜日には5番街でLGBTの大きなパレードが行われるそうなので、NYの新たな団結を見れることを願う。


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