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interview with James Blake

interview with James Blake

愛の限界

――ジェームス・ブレイク、インタヴュー

名倉和哉野田 努    通訳:名倉和哉   Feb 10,2011 UP

R&Bそれ自体というよりも、R&Bのヴォーカルをサンプリングするやり方、とくにブリアルやマウント・キンビーのやり方に触発されて......というところが大きい。彼らの出音を聴いて面白いなぁと思って、でも同じことをやるのはどうかと思い、自分なりのやり方をできないかといろいろとトライして、ていう。


James Blake
James Blake

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"CMYK"ではケリスの"コート・アウト・ゼア"をサンプリングしていましたが、あなたにとってのR&Bからの影響について話してもらえますか?

ブレイク:R&Bそれ自体というよりも、R&Bのヴォーカルをサンプリングするやり方、とくにブリアルやマウント・キンビーのやり方に触発されて......というところが大きい。彼らの出音を聴いて面白いなぁと思って、でも同じことをやるのはどうかと思い、自分なりのやり方をできないかといろいろとトライして、ていう。それまで他の人がやることに影響を受けて、ということはほとんどなかったんだけど、これに関しては、彼らのことを追いかけながら自分の流儀を編み出していった。

"CMYK"のように、大ネタをわからないように借用するという手法は、あなたにとってある種の"悪戯"のような感覚だったのでしょうか?

ブレイク:悪戯というよりも、ヴォーカルのサンプリングという手法自体を、もう少し高い次元に持っていきたいというか、それ自体はもう当たり前の手法なんだけど、ひと手間加えてユニークなこと、オリジナルなことをしてみたいという意識があった。

デスチャの"ビルズ・ビルズ・ビルズ"やリル・ウェインの"ア・ミリー"の非公式のリミックスもしていますよね。ああいうのはあなたにとってどんな面白さがありますか?

ブレイク:実はあれにはテーマがあってね。その名の通りハーモニーを加えているんだ。リル・ウェインとかオリジナルはほとんどビートとヴォーカルだけだけど、いろいろとハーモニーさせてのリワークになってるんだよ。ただのアンオフィシャル、というわけではないんだ。

アルバムを聴くとあなたがとてもクラバーとは思えないのですが、しかしベースとビートからは確実にアンダーグラウンドのクラブ・シーンとの共振を感じます。あなたとダブステップ・シーンとの関係について話してもらえますか?

ブレイク:はじめて〈FWD〉に行ったときは衝撃だった。それまでダンス・ミュージックのことなんかまったく考えたこともなかったけど、あの日を境にすべてが変わった。それからロジックとかいじるようになって、少しずつトラック制作の技術を身に付けていったんだ。クラブで体験したような音楽をアウトプットしようといろいろと試行錯誤を重ねた。幸運にも〈ヘムロック〉や〈ヘッスル・オーディオ〉と知り合うことができて、ダブステップというシーンの一員に加わることができた。他方でマウント・キンビーを通じてザ・XXなんかと交流を持つようになったり、いま自分が置かれている環境を考えると、自分がどこにいるのかっていうのを言い表すのは簡単ではないよね。もともとロンドンという場所自体が、そういうところだと思うし。

ダブステップのクラブの何が好きかって、とても内省的な空気が流れているんだけど、そこにはとても強い繋がりというか連帯感を感じることがあるんだ。そういう雰囲気にそぐうものができるのではないかと思って、やった。

あなたのアルバムを聴いていると、音楽はそれぞれ違えど、ブリアルの世界観ととても近いものを感じます。真夜中の街角で、孤独で、そして雨が降っているような情景が浮かびます。あなたにとってブリアルはどんな存在ですか?

ブレイク:ハハハハ。そうだね、ブリアルのすごいところは、ダブステップのアイコンというか、そういう立場でありながら、なおかつそこからかなり逸脱しているというか。彼のファンって、必ずしもダンス・ミュージック・リスナーだけじゃないよね。ダブステップとかクラブとかを超えたところにまでその音が届いている。アンビエント的なファンも多いと思うし。本当に尊敬すべきアーティストだと思うよ。ダブステップ・シーンにとってだけじゃなくて、いまのイギリスの音楽全体にとっての大きな財産なんじゃないかな。あと彼もR&Bなんかのサンプリングをいろいろと駆使しているけど、その使い方や処理の仕方が他の誰よりもズバ抜けてうまいと思う。最近だとマウント・キンビーもそうだけど、それかブリアルか、という感じがするね。

2009年に「エア&ラック・ゼアオフ」で〈ヘムロック〉からデビューするにいたった経緯を教えてください。その後、どうして〈ヘッスル・オーディオ〉と〈R&S〉からリリースしたのかも。

ブレイク:"エア&ラック・ゼアオフ"は、プロデュースをするようになってから初めて完成させた曲だったんだけど、ある日、リンスかどこかで曲を聴いてくれたジャック(アントールド=〈ヘムロック〉主宰)のほうからアプローチしてきてくれたんだ。ジャックと〈ヘッスル・オーディオ〉の連中はもともと知り合いだったし、よく一緒につるんでいたりもしてたので、その〈ヘムロック〉を通じて〈ヘッスル・オーディオ〉とも仲良くなって......という感じ。〈R&S〉は、マネージャーがもともとそこで働いていた関係で繋がったんだよね。正直このレーベルにドップリな感じのテクノ・キッズではなかったけど、歴史のあるレーベルで、それでいてとても先進的な考え方を持ったレーベルだと思うし、ここでリリースすることができて本当に光栄だった。

"リミット・トゥ・ユア・ラヴ"が今回のアルバムのはじまりなんでしょうけど、あの曲をカヴァーした理由を教えてください。多くの曲があるなかで、あの曲を選んだ理由はなんでしょうか?

ブレイク:単純に、クラブでかかったらいいんじゃないかと思ったんだ。間違ってもポップ・ソングを作ってヒットを飛ばしたいとか、そういう理由ではないね。ダブステップのクラブの何が好きかって、とても内省的な空気が流れているんだけど、そこにはとても強い繋がりというか連帯感を感じることがあるんだ。そういう雰囲気にそぐうものができるのではないかと思って、やった。

"CMYK"のようなヒット曲、あるいは「クラヴィアヴェルクEP」に収録された曲を再録しなかったのは、レーベルの契約的な問題ですか? サンプリングの著作権的な問題ですか? それともアルバムのコンセプト的な問題ですか?

ブレイク:アルバムがどういうものになるか、という自分のイメージもあったけど、たとえば"CMYK"はケリスとか使ってるし、物理的に無理、というのもあったよね。

アルバム全体がメランコリックな雰囲気を持っているのは何故でしょう? あなたの世界の見方がそうなのか? あるいは、あなたの音楽的な好みの問題なのでしょうか?

ブレイク:必ずしも統一したひとつのテーマのもとに制作を進めたわけではなかったけど、ギグやDJの行き帰りに電車のなかでリリックを考えたり、深夜にひとりでコツコツとパソコンに向かいながら曲を作ったり、たいがいの作業はきわめて孤独のうちにおこなわれるものなんだ。それがある程度は影響していると思う。ただもとから愁いを帯びた曲が好きだったりもするけど。いっときジョニ・ミッチェルの『ブルー』ばかり聴いてたときなんかもあった......。

ああ、なるほど。ジョニ・ミッチェルの『ブルー』の感覚はたしかにアルバムから感じますが、これは間違いなく2011年の音楽です。

ブレイク:感情に訴えかけるようなものを作りたいという思いはつねにあるからね。歌詞に関しては、半分は哀しみや孤独について、あと半分は、もう少し皮肉がきいているようなものなんだよ。ぜひ意味を汲み取ってもらえたらいいな。

取材:野田 努(2011年2月10日)

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Profile

名倉和哉名倉和哉/Kazuya Nakura
1974年横浜市生まれ。元印刷会社、元レコード会社のサラリーマンを経て現在は音楽や翻訳にまつわるエトセトラをせっせと自営。

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