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Home >  Interviews > interview with Ariel Pink - パティ・スミスは大嫌い

Interviews

interview with Ariel Pink

interview with Ariel Pink

パティ・スミスは大嫌い

――アリエル・ピンク、インタヴュー

取材:野田 努    通訳:伴野由里子   写真:小原泰広   Jul 24,2012 UP

僕が心と呼んでいるものには
どんなものが詰まっているんだろう
"ブライト・リット・ブルー・スカイ"

  赤ワインと餃子、それだけではない。スパゲティと唐揚げもあった。エレベーターから出てきた彼はよろめきながら、コップでワインを飲み干し、餃子を手づかみで貪り、次にスパゲティと唐揚げを同時に口に入れた。箸もフォークもなかった。
 ステージが思うようにいかなかったらしい。機嫌も悪かった。猫背で、うつろな目をした彼に挨拶した。握手はしなかった。紙eke-kingの最新号を渡す。受け取り、ぼそりと「グライムス」とだけ言った。「ジュリア・ホルターも載ってる」と教えると初めて笑顔を見せた。「友だちなんだ」と彼は言った。

 アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティの作品を初めて聴いたのは2004年のこと。3枚目のアルバム『ザ・ドルドラムス』がその作品だった。アニマル・コレクティヴが主宰していた時代の〈ポー・トラックス〉からのリリースで、当時の僕はアニマル・コレクティヴをよく聴いていた。欧米のメディアでも注目が高まりつつある時期だった。先を行くライターたちは『サング・トングス』と同時に『ザ・ドルドラムス』を持ち上げはじめた。僕はそれに乗せられて買った。

取材のため、橋元から『スケアード・フェイマス』(2007)と『ウォーン・コピー』(2003)の2枚を借りた。餃子にぱくつくアリエル・ピンクを前に、とりあえず『スケアード・フェイマス』をテーブルの上に出す。「それどうしたの?」と彼はびっくりしたようだった。「日本で売ってるの? 信じられない」、そんな感じだった。

E王
Ariel Pink's Haunted Graffiti - Mature Themes
4AD/ホステス

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取材の2時間前。恵比寿のガーデンホールの舞台では、アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティが演奏していた。彼らの音楽を聴きながら、僕は1970年代初頭のサイケデリック・ロックを思い出した。たとえばデヴィッド・アレンの『バナナ・ムーン』(1971)だ。あの時代特有のキラキラした夢のサウンド。やわらかいトリップ。しかし、アリエル・ピンクのサイケデリアにおいて、あんな風な楽天主義はない。

 いまいちど、ポップの意味を問うてみる。ポップとは......現実に対する大衆からのユートピア的な抗議なのか、現実との妥協の果てに生まれ、想像力を矮小化する消費物なのか。『バナナ・ムーン』は前者である。『マチュア・シームス』はそのどちらでもない。アリエル・ピンクス・ホーンテッド・グラフィティの新作は、ポップにおけるディストピア的な抗議である。

――ちなみに取材日は、彼の34回目の誕生日だった。

印象深かった誕生日はないね。10歳くらいの頃から、敢えて誕生日を覚えないようにしている。そう決めたことだけを記憶している。僕の両親はあまり宗教心とかがないんだ。

お誕生日おめでとうございます。誕生日と言えば、いままでで印象深かった誕生日はありますか?

アリエル:(実に素っ気なく)ないね。10歳くらいの頃から、敢えて誕生日を覚えないようにしている。そう決めたことだけを記憶している。

ははは......

アリエル:僕の両親はあまり宗教心とかがないんだ。

『スケアード・フェイマス』のインナーでは、アモン・デュールIIの『地獄』(1970)のジャケをコラージュしていますよね。

アリエル:そうそう、あのカヴァー、僕自身の写真をアモン・デュールの上にかぶせたやつね。

どうしてこの忌まわしいヴィジュアルを使おうと思ったんですか?

アリエル:これがすごく良いアルバムだからだよ。僕の銀行の口座のパスワードはみんな「Amon Duul II」さ。

はははは。で、アモン・デュールの何が好きですか?

アリエル:楽園に向かうデュール』(1970)とか、「Eternal Flow / Paramechanical World」(1970)とか。あと〈キャプテン・トリップ〉ってレーベル知ってる?

もちろんです。〈キャプテン・トリップ〉をやっている人も知ってますよ。

アリエル:へー、君の知り合いが経営してるの? あとは〈スカイ・レコーズ〉もいいよね。

〈スカイ・レコーズ〉も良いですよね。ちなみに、ケヴィン・エアーズ、デヴィッド・アレン、シド・バレットの3人のなかでは誰が好きですか?

アリエル:(即答)デヴィッド・アレン。

それはなぜ?

アリエル:彼はみんなの良いところを集めたみたいなんだ。3人のなかでいちばん何をやっているのかよくわからないしね。彼はシド・バレットやケヴィン・エアーズと同じくらい素晴らしいけど、ケヴィン・エアーズは保守的すぎるし、シド・バレットは商売っ気がなさすぎる。でもデイヴィッド・アレンはすべてのバランスが取れているんだ。もっとも、彼がいちばんイカれてるけどね。

はははは。新作はメロディが際立っているというか、前作以上に心に残るメロディがありますよね。

アリエル:ああ、そうだね。

70年代初頭の、いわゆるプログレッシヴ・ロックと呼ばれていた音楽と70年代初頭のA&M系のソフト・ロックのようなものが混じり合っているような印象を持ったのですが。

アリエル:うん、そう思う。でも......そうだね。

その頃の音楽でとくに好きだったのは?

アリエル:デヴィッド・アレンの『バナナ・ムーン』。

ちょうどインタヴューの前、あなたのショウの後に僕たちは『バナナ・ムーン』の話をしていたんですよ。

アリエル:ああ、『バナナ・ムーン』は大好きだね~。「♪well big bad businessman~"(と、ゴングの"Pretty Miss Titty"を歌いだす)

はははは。

アリエル:ほかには......ピーター・ハミルだね。ヴァンダー・グラフ・ジェネレイターの諸作、もちろんカンも大好きだよ。ほかにもいろいろあるな、ザ・シャッグスもお気に入りだよ。

ガールズ・バンドですよね。

アリエル:そうそう、アパラチア山脈出身のさ。とくに2枚目のレコード『The Shaggs' Own Thing』がまたいいんだ。"マイ・キューティ"とか、"マイ・パル・フット・フット"、カーペンターズのカヴァーの"イエスタデー・ワスモア"とか......1枚目のアルバムじゃなくて、2枚目のアルバムのほうが好きなんだよ。それともちろん、アリス・クーパー!

取材:野田 努(2012年7月24日)

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