Home > Interviews > interview with Deft & JJ Mumbles - UKベース、前進する音楽の力(フォース)
DJシャドウ、デイデラス、ジャイルス・ピーターソン、そして〈ライフ・フォース〉......僕らは新しい音楽というものにすごく興味があって、それを常に探し続けているという共通点はあるんじゃないかな。
■まあ、ふたりも若いと思いますけど(笑)、これまでにはどんな音楽を聴いてきたんですか?
デフト:いちばん最初はブリンク182とかランシド、ミスフィッツみたいなポップ・パンクが好きで、12歳のときにドラムを叩きはじめたんだ。で、いつからだったか、義理の兄が音楽制作ソフトのFL Studioを持っていたから、それをいじりはじめたんだよね。最初はそれでループを組んでるぐらいだったんだけど、だんだんプログラミングを覚えていって。そこから聴く音楽もヒップホップ、トリップホップになって、そこからサンプリングに興味を持ちはじめたんだ。大学に入る頃には、ボノボ、クアンティック、シネマティック・オーケストラとか、チルアウト/ラウンジ的な音楽を聴いていたかな。そこからドラムンベースやダブステップ。フライング・ロータスや〈ブレインフィーダー〉みたいなのを聴きはじめて。だから何か特定の、というわけではなく、興味を持った音楽をどんどん聴いていくタイプなんだよね。まわりの友だちはサッカーだとか、スポーツに熱心な人が多かったけど、自分は16歳ぐらいのときに、ずっと音楽をやっていこうと思うようになったんだ。
JJ:僕の場合は、義理の父がソウルとかルーツ・レゲエのレコードをすごくたくさん持っていて、そうした音楽がルーツなんだ。祖母もクラシックが好きだったし、家族みんなが音楽好きだったから、いろんな音楽を聴きながら育った。祖父が南アフリカのケープタウンの出身で、ジャズ・バンドでピアノを弾いていたから、自分も音楽をはじめたのは祖父からの影響もあるのかな。最初に大きく惹きつけられた音楽はヒップホップで、そこからMPCで自分でビートを作ったりしはじめたんだ。
最初にビートを作りはじめたのは13歳のときだね。その頃はマッシヴ・アタックとかトリッキーがすごく好きだった。とくに、父親が持っていたマッシヴ・アタックvsマッド・プロフェッサーの『ノー・プロテクション』のレコードが好きで。アメコミ風のジャケットの絵も含めて、あの作品にはすごく影響を受けてるよ。家族もそうなんだけど、まわりの友だちにも昔から音楽好きが多くて、新しいCDやレコードが出るたびにいろいろ交換し合って聴いてたんだよね。
デフト:僕のまわりには、音楽好きな友だちはあまりいなかったんだ。ジェド(JJ)と知り合って、彼からもいろんな友だちを紹介してもらったりして、ようやく自分と同じような志向の人に巡り合えたという感じ。だからすごく嬉しかったんだ。
JJ:デフトの音源は元々ネットで聴いてたんだけど、たまたま共通の友だちがいて紹介してもらったのが僕らの出会いなんだ。最初に会ったのは約2年前。Wotnotの最初のパーティのときだった。あとそうそう、ヒップホップのビートをメインに作っている時期があったんだけど、その頃のクルーと一緒にUKをツアーして回ったことがあって、そのときにビジネスとして音楽をやるための基礎を学んだんだ。その経験が、〈WotNot Music〉のレーベル運営にすごく役立っているよ。
■クラブ、パーティ体験については何かありましたか? クラブで忘れられない体験だとか。
デフト:初めてクラブに行ったのは16、17歳の時なんだけど、その頃のクロイドン(デフトの地元、南ロンドン。かつてあったレコード店〈Big Apple〉と共にベース・ミュージック縁の地として知られる)にはクラブ・シーンといったものはなくて、あったとしてもコマーシャルな感じで、音楽を聴きに行くというよりはお酒を飲んで騒ぐための場所という感じで、自分が行ったのもそういうクラブだったんだよね。その頃はダンス・ミュージックというよりもヒップホップにハマってたし。
自分がクラブ・ミュージックに目覚めたのはブライトンの大学に入ってからで、ある時にDJシェフ(DJ Chef)のプレイを聴いたんだ。そのとき彼が、当時はまだリリース前の、フライング・ロータスのマーティン・リミックスをかけた瞬間があって。それで初めて、クラブのサウンドシステムや空間でクラブ・ミュージックをすごく楽しむことができた。その瞬間にクラブミュージックに開眼したというか、「これだ!」と思ったんだよね。自分もこういう音楽がつくりたいと思って、その時から音楽をやってるつもりだよ。
JJ:自分はクラバーだったことは一度もないんだ。クラブ・ミュージックは部屋でヘッドフォンで楽しむもので、クラブという場所はナンパしに行く場所だと思っていた(笑)。自分の好みとしてはクラブで遊ぶよりも、ライヴ演奏を聴くことの方が好きかもしれないな。ラップトップでもバンドでも。
■さっき音楽遍歴について伺いましたけど、デフトのバイオグラフィを見ると、トキモンスタのリミックスコンペティションであったり、デイデラスのツアー・サポートだったり、またDJシャドウがあなたの曲『Drop It Low』をプレイしたらしい、など、国境や世代に関わらずいろんなアーティストとの絡みが出てきますよね。彼らと自分自身との間で、共有しているものは何だと思いますか?
デフト:うーん、自分ではよくわからないけど、ひとつ挙げればヒップホップが好きで、それが基本にあることなのかなぁ......。
シャドウに関しては、自分の曲をデモで送ったりしたわけじゃないから、彼がただ自分のトラックを見つけて気に入ってくれて、自分のセットに入れてくれたんだよね。シャドウはすごく有名になったいまでもアンダーグラウンドな音楽にちゃんと目を向けて、ずっとディグし続けている人なんだっていうことを実感できたし、すごく嬉しい出来事だったよ。
デイデラスとはツアー・サポートをした時に結構長く話をしたんだ。すごく情熱的な人だった。一緒のツアーがきっかけで、今もビートを交換したりしているんだ。うん、いま名前が挙がった人たちと僕とで何か共有していること......ひとつ言えるのは、僕らは新しい音楽というものにすごく興味があって、それを常に探し続けているという共通点はあるんじゃないかな。
■そういう、アンダーグラウンドのフレッシュなサウンドを一貫してディグし紹介し続けている存在としては、あなたたちの国にはジャイルス・ピーターソンもいますよね。そしてデフトは、ジャイルスのレーベル〈Brownswood〉から出ているギャング・カラーズ(Gang Colours)のEPにリミックスを提供しています(『Fancy Restraunt (Deft Remix)』)。
デフト:そのリリースのオファーにはものすごく驚いたし、同時に本当にすごく嬉しかったんだよ。ギャング・カラーズ自身から「サウンドクラウドで君の曲を聴いたんだけど、リミックスをやってくれないか。マシーンドラムのリミックスなんかと一緒にリリースしたいと思ってるんだけど」というメッセージが届いて、それを読んで即決したんだ。彼の曲は以前から好きだったし、「自分の曲を聴いてくれて、好きになってくれる人がいるんだ」という意味でもすごく自信となったし。自分のキャリアもそれをきっかけとして上がっていったところがあるしね。
■なるほど。ジャイルス・ピーターソンについてはどう思いますか。
デフト:彼がホストしているラジオ番組でも常に新しい音楽をプレイしているし、自分も影響を受けてるね。〈Brownswood〉を運営しているスタッフも人間的にもすごく良くて、そういうところも尊敬しているんだ。ジャイルスの凄いところは、エレクトロニック・ミュージックだけでなくてワールド・ミュージックやヒップホップとかも含めて、常に新しいものを、幅広く紹介し続けているところだよね。UKでそういったことを続けているのは、もしかしたらジャイルスただひとりかもしれない。ベンジ・Bも昔はそういうところがあったけど、いま彼はハウスやベース・ミュージック寄りの活動が中心だしね。
■JJの方は、単独名義での初リリースは〈WotNot Music〉カタログ2番の『Boxes & Buttons EP』になると思うんですけど、美しいUKソウルのオリジナル・ヴァージョンと、6ヴァージョン収録されたリミックスとで、ノース・ロンドンとUKのベース・ミュージックのいまが象徴されているように思えるんですよね。フィーチャーしている女性シンガーのナディーナ(Nadina)も魅力的ですし。このシングルが完成した背景を教えてください。
JJ Mumbles - Boxes and Buttons (Jamie Wilder remix)JJ:ナディーナは当時、僕の友だちと付き合っていたんだけど、彼女の声が最初から好きで。どんな風に唄ってもらうかというシンガーとしてのプロデュース、ディレクションも僕がやったんだ。あのEPに入ってる僕のビートが完成して2、3日後に彼女を家に呼んで、そこで歌ってもらって完成した。EPに6ヴァージョンもリミックスが収録されているのは、そう、いろんな音をつめ込んだEPにしたかったからだね。友人の中には「ヴァージョンの数が多すぎるんじゃないか」と言う人もいたんだけど。
『Boxes & Buttons』は、歌詞も僕が書いたんだ。音楽をしている者として「あまりお金はないけれど、楽しくやるのにそういうことは関係ないんじゃないか」みたいなことを唄っているんだ。一方で自分のなかにある、不安な気持ちだったりね。いまは別の男性シンガーと、新しい曲に取り組んでいるところなんだ。これはファンクというか、スロウなハウスのようなトラックになりそうだよ。
デフト:その曲は僕もまだ聴かせてもらってないんだ。
取材・文:メタル、 yasuda koichiro(WHY)(2013年6月03日)