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interview with Eiko Ishibashi

interview with Eiko Ishibashi

音の回廊、二面の歌

──石橋英子、インタヴュー

松村正人野田 努    Apr 05,2014 UP

ひとくちに「ポップ」といってもいろんな意味があるじゃないですか。演奏が難しくなる事はデモの時点でわかったのですが、でもそれは、難しく聞こえないようにするための難しさでした。


石橋英子
car and freezer

Felicity

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収録曲のなかでは日本語盤と英語盤それぞれ細部でアレンジがちがうものがありますよね。

石橋:オーヴァーダブの音がちょっとちがいますね。

それはなぜ?

石橋:まず日本語と英語では言葉のリズムや倍音で聞こえ方が変わるので、オーヴァーダブの楽器の音色や演奏やリズムも変えた方がいいと思いました。

その意味では今回は前作よりつくりが細かいといえますね。

石橋:でもかなりいきあたりばったりでしたよ。前はある程度、たとえば3ヶ月とか、それくらいの間にすべての作業を完了することが多かったんですけど、今回はベーシックを録り終えて、芝居の音楽をふたつやりながら英語の勉強をして歌詞を書きつつの歌録りだったので延べでは結構時間がかかりました。期間としては半年くらい。

その芝居の音楽が『car and freezer』にフィードバックされていたりするんですか?

石橋:去年ファスビンダーの戯曲を元にした芝居の音楽をやったんですがそのときは歌ったんですよ。オペラ的とまではいいませんけどわりと声を張る歌い方で。その歌い方を前野さんが気に入って下さったというのもあり、日本語の歌を歌う時に少し役にたったかも知れません。

自分のあまり手をつけていない唱法を試す機会になった?

石橋:そうですね。娼婦の歴史を歌ったナレーション的な歌なので、少し低音にドスがきいている感じで歌いました。

前野さんの歌詞にも「チジョ」が出てきます(“ゴリラの背”)もんね。

石橋:マスタリング前に前野さんに聴いてもらったとき(ややモノマネぎみに)「あれは石橋さん、世の中の女性への挑戦状になりますよ」っていってました。意味はよくわかりませんが(笑)。

彼なりの女性性をふまえているんでしょうね。

石橋:私は前野さんにとっての女性性はわかりませんけど。

普通ではないのはまちがいないでしょうね。バンド・メンバーの「もう死んだ人たち」は前作と同じ布陣ですね。

石橋:そうです。

彼らがもっとも石橋さんの音楽を理解しているということですか。

石橋:そうですね。それに全員の役割分担がチームとしてできているということがあって、私は譜面やコードで伝えるのがヘタで(山本)達久もそういったものを読むことはできない。でも達久はリズムを何拍子だとか何小節だとか数字で知りたい。それを須藤(俊明)さんがいいかんじでとりもってくれるんですよ。

バンド全体がうまくかみあっているということですね。

石橋:みなさんを信頼しているので、今回は私がアレンジをガチガチに決めるよりその場でやっていくほうが可能性も広がると思ったんです。

全体としてはポップにしようという意図はありましたか?

石橋:ひとくちに「ポップ」といってもいろんな意味があるじゃないですか。演奏が難しくなる事はデモの時点でわかったのですが、でもそれは、難しく聞こえないようにする為の難しさでした。昔のポップって演奏すると難しいじゃないですか。昔の歌謡曲もそうだし。そういうチャレンジをしたかったというのはあります。

石橋さんが今回の担当楽器はピアノとシンセサイザーと──

石橋:あとはマリンバ。

“ゴリラの背”のマリンバは“Frame By Frame”みたいですね。

石橋:なんですか、それ?

キンクリ(キング・クリムゾン)です。

石橋:ああ、あれはリズムで結構苦労した曲ですね。

あのテンポで実際に叩いているんですか?

石橋:そうですよ。

マリンバは習っていたんですか?

石橋:ピアノの先生からもらったんですけど、使いはじめたのはモンハン(MONGHANG)からですね。

そうでした。石橋さんが弾ける楽器はほかにドラムと──

石橋:フルート。ヘタですけど。ギターも弾きますけど人前では弾きません(笑)。

曲をつくるのは基本的ピアノですか?

石橋:そうです。私基本的にめんどくさがりだから押した音の出る楽器が好きなんですよ(笑)。ギターはチューニングして音出すまで時間がかかるじゃないですか。押さえた弦と弾いている弦がちがうとヘンになっちゃうし。

そんなこといったらなんだったそうですよ(笑)。



野田:『car and freezer』はジャケットはすごくいいですよね。シュールレアリスムの絵画的でもあるし山下達郎のジャケットっぽくもある。

石橋:そうなんですけど、実はただの廃墟(笑)。

遠目からだとリゾート音楽なんだけど近づくと違和感がある。

石橋:(笑)ポップってそういうところが多分にあると思うんです。一見聴き心地はいいけどよくよく聴くとエッっていう異様な部分があるものという気がする。

タイトルは曲名からきていますが、この曲名を選んだ理由はなんですか?

石橋:茂原(千葉県茂原市)に車と冷蔵庫が棄てられているんですよ。田んぼとかに。長年放置されているんですけど。

原風景ですか?

石橋:そうですね。この写真を撮ったのは行川アイランド(千葉県勝浦市)の廃墟だったんですが、そこにも車と冷蔵庫が棄てられていたんですよ。タイトルについては迷っていたんですけど、これしかないって(笑)。

野田:そのねじくれ方が石橋さんらしいですよね。

石橋:茂原にはほんとうに車と冷蔵庫が大量に棄てられているんですよ。

冷蔵庫ってさいきんあまり棄てられていないですもんね、以前は結構見かけましたが。日本のリアルな風景だという気がしますね。

取材:松村正人+野田努  文:松村正人  写真:澁谷征司(2014年4月05日)

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