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interview with Lone

interview with Lone

孤独な男のビート

──ローン、インタヴュー

高橋勇人    通訳:原口美穂   Jun 13,2014 UP

エレクトロニック・ミュージックをどうやって組み立てていくかの基礎を知ってるだけで、他の人がどうやってるのかは知らない。そっちの方がオリジナルになれると思うんだ。だから、手法が新しい必要はなくて、「あまり理解してない」、「知識がない」っていうことが他との違いを生み出してるんだと思う。

あなたはデータでDJをしますが、作品に散見されるレコード・ノイズからレコードへの愛着も感じられます。CD、レコードのうち、どのメディアを使って普段音楽を聴きますか?

ローン:そう。DJのときはレコードは使わないんだ。でも音楽を聴くときのメインはレコード。レコードを聴くのも好きだし、レコードのノイズをサンプルするのも好きなんだ。音に温かくてナイスな質感をもたらしてくれるからね。そういうサウンドが好きなんだ。

レコードはよく購入するんですか?

ローン:けっこう買うよ。前よりは買う枚数が減ったけどね。DJのためにデジタルでも曲を買うからさ。でもレコード・ショッピングはいまだに大好だよ。

ダンス・ミュージック以外でよく聴くジャンルとミュージシャンは誰ですか?

ローン:どうだろう……。しょっちゅうエレクトロを聴いてるからな……。よく聴くのはテクノとかヒップホップ。エレクトロ以外のものはあまり聴かない。バンド系の音楽も少しは聴くけど、昔のものが多いかな。あとは昔のソウル・レコードとかで、とくにこれっていうのはない。アルバムの制作中は自分の音楽をずっと聴いているしね。

今回のアルバムを作る上で現在のクラブ・シーンから影響を受けている部分はありますか? 

ローン:うーん、デトロイトのクラブ・ミュージックはそうかもしれないな。新しいデトロイトの音楽からは影響を受けていると思う。でも、クラブ・シーンそのものから影響は受けていない。僕のアルバムは自分のヘッドフォンや車のなかで聴く方があっていると思うから。

前作の『ギャラクシー・ガーデン』ではマシーン・ドラムやアネカと共演をし、2013年にはアゼリア・バンクスに楽曲提供をしています。他のミュージシャンたちと楽曲を制作するうえで心がけていることはありますか?

ローン:他のミュージシャンと作業するってことは、すでにその人たちの音楽、やることが大好きってことがわかって共演しているってこと。だから、ただただその人たちのアイディアを曲に持ってきてもらうってことだけでハッピーなんだ。あとは、彼らが持ってくるものが自分の作品に合うことを期待するだけ。そんなわけで、あまり話し合ったりはしないんだよね。流れに任せるだけ。とにかく彼らのやることが好きだから、一緒に出来るってだけで嬉しいんだ。

現在、コラボレーションしてみたいミュージシャンはいますか?

ローン:いや、いまのところいないね。このアルバムもひとりで作完全にインスト・オンリーで作りたかった。でも、これからだれかと共演することは考えるかもしれない。ラッパーとか面白そうだな。アール・スウェットシャツやジョーイ・バッドアスが大好きなんだけど、彼らとコラボできたら最高だろうね。ラッパーと一緒にヒップホップを作りたい。自分のアルバムでというよりは、彼らのために曲を作る感じかな。

“レストレス・シティ”や“オーロラ・ノーザン・クォーター”といった、特定のモノや状況を表した曲のタイトルが多いですが、そのなかで“2 is 8”は暗号のような響きを持っています。このタイトルは何を示しているのでしょうか?

ローン:あの曲はね……、曲を作っているとき僕はときどき紙に書いたりするんだ。とくに楽器に関しては本格的なトレーニングを受けたわけではないから、どうすればいいかわからないことが多々あるんだよ。だからときに自分のやり方でどうにかその音を作らないといけないことがある。で、その書き留めてたなかに"2 is 8"っていう言葉があって、それが良く見えたんだよね。みんなにはわからないかもしれないけど、"2 is 8"っていうのはこの曲のビートがどうやってできたかっていうのを表した暗号みたいな感じなんだよ(笑)。他人には暗号のように見えるだろうけど、僕にとっては意味があるんだ。

今作を日々の記憶を収めた日記のようなものだと答えていますが、普段の生活でどのようなものから音楽的にインスパイアされますか?

ローン:生活で起こるすべてのこと。友だちや家族、彼女との人間関係とか、自分が聴いている音楽といった自分の周りにあるもの全てだよ。それが自然と音に出てくるんだ。正直、それがどう繋がってるのかとか、どうやって出てくるのかは自分でもわからない。曲を作るとき、僕はあまり考えごとはせずに流れにまかせているからね。曲のなかで何かピンとくるものがあると「これあの日のことかな?」とかあとで思ったりするよ。言葉にしづらいけど、インスパイアされる事柄は、主に人、人生、音楽だね。あとは経験。そこからの影響が大きいと思う。

今作『リアリティ・テスティング(Reality Testing)』とは、心理学で用いられる用語で、自分の内面が現実世界とどれだけ一致しているかを試すことを意味していますよね? なぜこのタイトルをアルバム名にしたのでしょう?

ローン:僕が使っている意味でのリアリティ・テスティングっていうのは、夢のなかでどれくらいリアリティが意識できてるかっていうのをテストすることを表している。夢のなかの自分がどれだけ「目覚めているか」をテストすることだね。僕の音楽には夢っぽい部分もあるし、リアルな部分もある。自分にとっては、アルバムのサウンドが、自分が起きているときと夢のなかにいるときの中立のサウンドに感じられるんだ。だからそのタイトルにしたんだよ。

前作では、リズムやベースやコードから分かるように、テクノやハウスのスタイルが印象的でしたが、今作には“2+8”のような90年代のヒップホップを土台にしているとも思える曲があります。そこにはどのような意図があったのでしょうか?

ローン:さっきも言ったけど、前に作っていたような音楽を再び作りたくなかった。『ギャラクシー・ガーデン』とは全然違うものを作りたかったから、そこでまたヒップホップを聴きはじめてハマっていった。すごくインスパイアされたし、自分の音と混ぜることで結果違う音楽になったけど、最初はストレートなヒップホップを作りたかったくらいなんだよね。

あなたの表現する音は新鮮でユニークですが、そこで使われる手法は現在のあなたの音楽を形作っているヒップホップやテクノのシーンで長年使われてきたものです。決して新しくはないジャンルの音楽に、これからどんな可能性があると思いますか?

ローン:だね。僕はとくに新しいことはやってない。僕は、他人がどうやって曲を作っているかっていうのをあまり学ばないようにしているんだ。エレクトロニック・ミュージックをどうやって組み立てていくかの基礎を知ってるだけで、他の人がどうやってるのかは知らない。そっちの方がオリジナルになれると思うんだ。だから、手法が新しい必要はなくて、「あまり理解してない」、「知識がない」っていうことが他との違いを生み出してるんだと思う。僕は、あまり「これが正しい」とかそういうことは気にしないんだ。ただ自分が音楽作りを楽しんでるだけで。
 可能性はかなりあると思うよ。だって音楽はつねに変わっていくものだからさ。新しいスタイルの音楽はつねに出てきているし、そのヴァリエーションも豊富だよね。いまの時代、より多くの人が音楽を作っているから、いまからスタイルが多様になっていくと思う。これからもっとクレイジーになるんじゃないかな。僕みたいにあまり構成を理解できなくてもミュージシャンになる人がたくさん出てくるわけだからね。自分のやり方で作ったら違うものが出来た、みたいな機会も増えはずだ。だからジャンルの新旧は関係なく、数年後には音楽の可能性はもっと広がっていくと思うよ。

取材:高橋勇人(2014年6月13日)

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Profile

髙橋勇人(たかはし はやと)髙橋勇人(たかはし はやと)
1990年、静岡県浜松市生まれ。ロンドン在住。音楽ライター。電子音楽や思想について『ele-king』や『現代思想』などに寄稿。

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