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interview with Jouska

interview with Jouska

ノルウェーはとくにラッキーな国だと思う。僕たちほとんどの国民が政府を信じているし

──北欧ドリーム・ポップ新世代、ヨウスカを紹介する

序文・質問:野田努    通訳・質問:水嶋健人   Jul 14,2021 UP

グライムスはスペシャルだ。彼女が作り出したエイリアン・テクノ・ヴァイブスは僕らの音楽にも入っていると思う。FKAツイグスも本当に最高だしUSやUKからの影響はもちろん、フランスのエレクトロ・ミュージック・アーティストとかからも影響を受けている。

音楽制作について訊きたいんだけど、インスピレーションはどこから受けることが多いですか? 他の音楽からとかですか? それとも日常生活?

H:日常の経験から影響を受けるよ。僕たちは日常で起こったことをありのままに書いているわけではないけど、例えば何かに怒っているときは激しいビートができるし、いつも自然と頭に浮かんでくるモノをまずは作るようにしているから、落ち込んでいるときは自然とアンビエントなシンセサウンドが浮かんできたりする。ひとつの楽曲のなかにたくさんの感情が宿っていると思うけど、それは自然と湧き出てくる感情が音につながっているからだと思う。歌詞を書くのには苦労するときもあって、さっき話した自分たちのムードはサウンド面で表現することが多いのだけど、歌詞は抽象的に表現をして、聞いてくれる人がそれぞれの意味を見つけられるようんしたいんだ。これが僕たちの人生で起きたことだよって伝わえるわけではなくてね。僕たちは抽象画を書いて、最終的にそれがどのような絵なのかはリスナーに感じたまま受け取って欲しいんだ。

M:抽象的な音楽を作りたいというのは私たちのひとつのテーマであると思う。

リスナーに考えたり、色をつけるスペースを与えたいと?

M:そういうことだね。

たしかに”Everything Is Good” といいながらもサウンドはカオスティックで全然グッドではなかったり、頭のなかで映像が自然と浮かんでくる楽曲も多いですよね。

H:それは映画にも影響を受けることが多いからかな? たまに映画についての曲も書くよ。他のアートから影響を受けてまた別のアートを生み出すのは素晴らしいことだと思うんだ。

どんな映画に影響を受けたの?

H:『ショップリフター』って見たことある? 日本の映画だと思うんだけど。舞台は東京だっけ?

M:うーん、たぶん。

ああ、『万引き家族』ね。僕は観たことないけど、有名な映画です。

H:Hirokazu Koreedaの映画だよね。発音がわからないけど。

ヒロカズ・コレエダだね。

H:コレエダ? 発音するのが難しいね。でもとても影響を受けた映画のひとつだ。ベタだけど『パラサイト』も好きだね。

M:『マルホランド・ドライブ』……

H:イエス! 僕たちはデヴィッド・リンチが大好きだ。

M:最近私はMUBIというプラッフォトームでよく映画を見ている。知っている?

知らないなあ。Netflixみたいな感じですか?

M:似たような感じだけど、MUBIはもっと昔の映画、インディペンデントな作品やフィルム・フェスティヴァルで上映されたモノとかが取り扱われてるんだよね。最近『La Haine』というフランス映画は最高にクールだったわ。

へえ! 全然知らなかったよ。チェックしてみるよ!

H:日本のシリーズを見てたことあったよね? なんて名前だっけ?

M:名前忘れちゃったわ

H:あれ韓国のだっけ?

M:たぶん

H:ごめん日本と韓国はいつもゴチャゴチャになっちゃうんだ。

大丈夫だよ。僕もよくあるよ。あなたたちは自分たちの音楽を ”ベッドルームR&B”と呼んでいますね。プレスリリースによるとあなたたちはThe Internetやグライムスといったアメリカ(カナダ)のアーティストから影響を受けていると書いてあるけど、FKAツイグスやマッシヴ・アタックのようなUKのアーティストのスタイルとも親和性を感じます。ヨウスカが音楽を作る上で、アメリカのアーティストからの影響が多いのですか?

H: 面白いね。いま挙げてくれた4つのアーティストは僕たちにとっていちばん影響を受けているアーティストと言えるからね。とくにグライムスはスペシャルだ。彼女が作り出したエイリアン・テクノ・ヴァイブスは僕らの音楽にも入っていると思う。FKAツイグスも本当に最高だしUSやUKからの影響はもちろん、フランスのエレクトロ・ミュージック・アーティストとかからも影響を受けている。たくさんの音楽を聴いて、それぞれから影響を受けているし、国はあんまり関係ないかな。アメリカやカナダのアーティストが多い気もするけど、それは単純にアーティストがたくさんいるからだと思う。

M:私は自分がバンド・プレイヤーとしても参加しているノルウェーのSassy 009から大きな影響を受けている。バンドに参加してからはもちろんだけど、彼女と知り合う前からね。Sassy 009のアルバムのMixをしていた人が“Everything Is Good”のMixもしてくれたのよね。

マリットがSassy 009のプロジェクトに参加してから具体的にはからはどのような影響を受けましたか?

M:レコーディング・プロセスからソングライティング、とにかくいろんなことを影響されていると思う。彼女の音楽そのものはもちろん、美学のようなモノにも影響を受けているわね。スタジオワークで衝動的にイメージをサウンドに変化させるのがすごく魅力的で。音やテイク選びにも優れていて、彼女からサウンドのノイズ、アンビエント、歪みなどの使い分けを多く学んだと思う。

ヨウスカのサウンドには他にもテクノやアンビエントとかの音楽性も加えられていて、とてもオリジナルなモノだと思う。いつも音楽を作るときにヨウスカのオリジナリティーを出すことは意識してる?

M:そうだね! 私たちは自分たちのオリジナル・サウンドを作ることを意識してる。さまざまなアーティストからの影響を感じさせつつも、自分たちのオリジナル・サウンドとして成り立っているのはとても重要だし、聴いてくれた人がいままで聴いたことないような音楽を作りたいの。

インスピレーションをミックスして?

M:そういうことよ。

H:とにかくインスピレーションは多いほうが良いと思っているし、それをミックスすることで良いものが作れると思っているんだよね。

なるほど。楽曲制作では最初にゴールを作りますか?それとも感覚的に作りますか?

H:たまに制作に入る前にどんな曲を作りたいのかビジョンを描くことはあるね。もちろん感情に任せることもあるよ。怒りの感情が強いときはそういった曲になるし、悲しいムードだと自然とメランコリックな表現がキャプチャーされたりね。ただヴィジョンを描くとはいったけど、例えばあのアーティストのあの曲みたいな楽曲を作りたいとかはないかな。曲を作る前にこの曲を聞いてくれた人がどんなムードになってほしいのかを考える感じかな。

ライヴとかをイメージして?

H:そうだね。ライヴでのオーディエンスもヘッドフォンでひとりで聴いてくれる人もイメージかな。

H:ライヴで演奏することなんていまでは奇妙な話に思えちゃうね。悲しいけど。

日本ではキャパシティーを制限してライヴを開催できるよ。なんとかね。

M:本当に?

うん、完璧とは言えないけどね。僕も主催しているイベントがあったりするよ。

M:私たちを呼んでよ!

計画するしかないね! こんな時代終わったらね!

M:楽しみだわ。

話は代わるけど、マリットは好きなヴォーカリストやリリシストはいますか?

M:う〜ん、選ぶのが難しすぎるわ。

M:レナード・コーエンとスフィアン・スティーヴンスはとてもお気に入りね。私たちの音楽とはかけ離れてるけどね。

H:彼らのような少しメランコリックなアコースティック・ミュージックは小さいときから触れる機会の多い代表的なジャンルでもあるんだ。僕らは2人とも小さな街の出身だからカルチャーとかも発展してなかったし、悲しいムードから逃げ出したいときとかにレナード・コーエンやスフィアン・スティーヴンス、あとはダミアン・ライス(アイルランドのフォーク歌手)とかもよく聴いていたね。フォーク系のアコースティックな音楽は僕たちが10代の頃によく聴いていた音楽のひとつだと思う。

M:ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンも大好きだわ。彼の音楽を初めて聴いてたとき、言葉では説明できないような感情に初めて陥った。感情爆発したかのようだったし、いままで聴いたことのない音楽のようだったの。

H:僕もだよ。彼のセルフタイトル・アルバムからはかなり影響を受けている。あのアルバムを聴いている間は完全に彼の音楽の世界に溺れているような感覚にさせられる。音が瞬間的に伝わってきて、それが景色を作り出すんだ。

僕も彼が大好きだよ。初めてコーチェラで彼のステージを見たとき、本当に遠くにいて彼の姿も見えないくらいだったんだけど、それでも彼が鳴らす音はダイレクトに伝わってきたりしてね。

H:2011年に観た彼のライヴはいまでも人生でもっとも素晴らしかったライヴのひとつだよ。さっき言った大好きなSTアルバムのツアーでね。

そのとき見れたのは羨ましいな。マリット何を考えているの?

M:女性で好きなリリシストは誰かな〜って考えてて。たくさんいすぎて決められないわ。

(笑)

M:グライムスの話はしたしなあ。Joan BaezやLinda Perhacsは大好きだわ!

H:ニコも大好きだよ。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは聴いたことある?

もちろん

H:ルー・リードのバンドね。彼女はいくつかの曲でコラボしたんだ。アンディ・ウォーホルが仕組んだんだよね。

H:おかしいことに2015年より後のアーティストについては何も語ってないね(笑)。

M:たしかに(笑)

ノルウェーにはほかに、クラブ系ではリンドストロームやトッド・ティエリ、プリンス・トーマスのような国際的なDJ / プロデューサーがいるのと、〈Smalltown Supersoun〉というレーベルもありますが、ヨウスカや他の同世代のアーティストにとって彼らはどういった立ち位置ですか?

H:もちろん、彼らは知っているよ! 彼らに影響を受けたと声を大きくしては言えないけれど、彼らのライヴを何回か見ているから、もしかしたらどこかで知らずと無意識で影響を受けているかもしれないね。〈Smalltown Supersound〉についても知っているけど、残念ながら繋がりはないかな。ただ、ノルウェーのレーベルやアーティストが世界的に評価されるのは嬉しいことだし、僕たちの世代やさらに若い人たちも含めて世界中に自分たちの音楽を発信したいと思っているのは間違いないね。

ジェニー・ヴァルはどう? 彼女もノルウェーの画期的なアーティストだと思うけど。

M:大好きだわ! 『Blood Bitch』というアルバムをめちゃくちゃ聴いてるよ。

H:あ! ちょっとまって!

M:彼女のコンサートは素晴らしかったわ。思ってるほどにノルウェーで有名ではないけどね。

(ハンズがTシャツを持ってくる)

わお! ツアーTシャツ?

M:猫を飼ってるから穴が空いてるけどね。これは日本語だよね?(“血売女“ という字が書いてある)

それは漢字だね。僕たちも使うよ。「Blood Bitch」って漢字を使って書いてあるね。

H:なるほど!

M: 私は彼女のダウナー落ち込んでいるときによく聴くかな。そういったダークな感情から逃げるのにちょうど良いのよね。

H:彼女はたくさんのノルウェーのアーティストに影響を与えていると思うよ

M: とくに女性ヴォーカリストにはね。

H:彼女は新しい女性SSWのシーンを早い段階から作っているからね。たぶん2010年くらいからかな。ノルウェーのいまのシーンにも繋がっているとても重要なアーティストだと思うよ。

LAでも人気だったよ。彼女のツアーはすぐにソールドアウトしてね。ようやくだけど、アルバムの話しも聞いてもいいですか?

M:もちろん

序文・質問:野田努(2021年7月14日)

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