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Home >  Interviews > interview with T-GROOVE & GEORGE KANO EXPERIENCE - ディスコは世界共通のビート

interview with T-GROOVE & GEORGE KANO EXPERIENCE

interview with T-GROOVE & GEORGE KANO EXPERIENCE

ディスコは世界共通のビート

──T-GROOVE & GEORGE KANO EXPERIENCE、インタヴュー

取材:金澤寿和    Jun 30,2022 UP

いままでディスコ・リミキサーのイメージが強すぎたので、そろそろそれを払拭したいと思っていたんです。〔……〕早くも想定外のことが起こっていて、Spotify のプレイリストで僕がジャズ・アーティストとして扱われているんです(笑)。(T-GROOVE)

すごいですよね。話を戻すと、最初に GEORGE さんがソロ・プロジェクトをやろうとしたとき、T-GROOVE を巻き込んだのはどういう発想だったんですか?

GEORGE:最初はただ自分のやりたいことをやっただけで、自分が気持ち良ければイイと思って作っていました。でも音を聴いてもらったら、「リミックスとかやってみたい」と言ってくれて。だからこんなに話が広がるとは、初めはまったく思っていなかったんです。でも上がってきたモノがすごく面白くて、T-GROOVE さんが関わってくれたら可能性が広がるかも、と期待が膨らみました。

ストリートではどんなジャズをやっていたんですか?

GEORGE:スタンダード・ジャズですけど、激しい感じで。普通に想像されるオシャレなジャズとは全然違います。

T-GROOVE:アヴァンギャルドな感じですよね?

GEORGE:パンク・ロックに近いジャズというか。

T-GROOVE:GEORGE さん自身、プログレとかロック好きですしね。

GEORGE:仕事的にはファンクとかラテン系のジャズなのですが、聴くのはロックが好きでした。

T-GROOVE:YouTube に様々なドラマーの代表的ドラム・パターンの動画を上げているんですけど、本当に幅広いジャンルをやっていますよ。

GEORGE:ジャンルに関係なく、ドラムが好きなんです。面白いドラムを叩いてれば、その人が好きになって研究して。そうしたら膨大な数になっちゃって(笑)。

T-GROOVE:バーナード・パーディのとか、再生回数ヤバイですよね。

GEORGE:自分はカメレオン・ドラマーなので、何でも叩くんです。好きになると、自分のモノにしないと気が済まなくなる(笑)。

T-GROOVE:生粋のドラム好きですよね。ドラムを叩くのが好き。

おふたりのプロジェクトなので、ドラムのミックスがデカイのは当然なんですけど、出自が見えにくいドラミングのスタイルですよね。スタンダード・ジャズみたいに上品な感じではないので、ロックが入っているとお聞きして腑に落ちました。それに T-GROOVE のディスコ・スタイルになると、四つ打ちのシンプルなドラムになるじゃないですか? そこはプレイヤーとしてどうなんでしょうか?

GEORGE:それなりの制約があるなかで、自分の色を出していくのが面白いんです。いくらでもガシャガシャできるけど、あえて抑えるのが面白い。ディスコ・ビートのなかに、少し自分のノリを出そう、という感じですね。

T-GROOVE もいつものディスコ・スタイルとは違いますね。最近はジャズ・ファンクにハマっていると聞いていますが。

T-GROOVE:せっかくいいドラマーを捕まえたんだから、こんなことやりたいなぁ、というのがあって。いつもの打ち込みの音でやると、“Lady Champagne” みたいなドラム・パターンはショボくなっちゃう。だから打ち込みじゃできないことをやりたくて。4つ打ちの曲は “Cantaloupe Island” と “Haven”、“Do It Baby” くらいかな。それに連れて曲の作り方も変わって、ドラムから叩いてもらったりしました。

GEORGE:こんなパターンがあるけど、どうですか、とか。

トラックメイカー的な作り方ですね。

T-GROOVE:それをループさせて肉付けしていって、粗方できたらまたフルでドラムを録り直して、またミュージシャンたちに好きなように録音してもらって、それを再びまとめる感じ。なかなか変わったやり方ですね。

それなりの制約があるなかで、自分の色を出していくのが面白いんです。いくらでもガシャガシャできるけど、あえて抑えるのが面白い。(GEORGE)

このアルバムは、T-GROOVE の従来作に比べて、良い意味でブッ飛んでるところがあると思う。そのパワーの源はドラムだと思うんです。いわゆる4つ打ちからハミ出して、ジャズ・ファンクらしい自由さがある。しかも相手はストリート・ドラマーでもある GEORGE さん。スピリットが違いますよね。

T-GROOVE:いま日本のジャズ・フュージョンとか、ジャズ畑の人のトラックを聴くと、リズムが小難しい割には軽く感じちゃうんです。そこに対抗したかった。バス・ドラムとかスネアの音作り、その辺を重いサウンドにするにはどうしたらいいのか。そこは徹底的にディスカッションしました。

GEORGE:こんなピッチの低いスネアの調整、したことないです(笑)。

T-GROOVE:すごく緩めてミュートをつけているんです。ある意味70年代的な。お手本として渡したのはシルヴァー・コンヴェンション。キース・フォーシーみたいなドラムの音にしてほしいって。それと MFSB のアール・ヤングだったり、ちょっとシックのトニー・トンプソン感もあったりで。

パワー全開でタム回すみたいな?

T-GROOVE:それでもかなり重いサウンドになりますけど、さらにコンプレッサーの掛け方とか、エフェクト関係を研究したんです。ミキシングにもメチャクチャ時間を掛けました。

GEORGE:叩いて渡した音が返って来たとき、音がスゴくて。どうやったらこうなるんだ? と。

T-GROOVE:GEORGE さんがメンバーとして在籍している i-dep のリーダーが褒めてくれたんですよね?

GEORGE:うちのバンド・リーダーが東京オリンピックの音楽監督アシスタントをやってたんです。彼が、「このドラム、どうやってこの音になるの?」とビックリして、「もう一回勉強し直そう」って。

ある意味、真っ当なエンジニアさんだと出てこない発想ですね。荒っぽく聞こえるけど、すごく凝って作り込んでいるという。そこがわかる人はすごく面白がるんでしょう。

T-GROOVE:そこは企業秘密ですけどね(笑)。松尾潔さんに、「音楽としても音響としてもハイクオリティですばらしい」とお褒めいただきました。ミキシングだったり、音響面のこだわりを評価してくださる方が多いのは嬉しいです。

今回は作曲を手掛けた曲が多いし、T-GROOVE にとって転機というか、ステップ・アップ作になりますね?

T-GROOVE:ステップ・アップというより、イメージ・チェンジですね。いままでディスコ・リミキサーのイメージが強すぎたので、そろそろそれを払拭したいと思っていたんです。自分は作曲するし、アレンジもやるし、オリジナルのアルバムだって出しているのに、それがリミックスの仕事に隠されてしまって、フラストレーションを抱えていました。そのときにコロナが来たので、実は半年から1年弱ほどクリエイティヴ・ワークを休んでいたんです。表ではそれ以前の制作物が発売されたり、リイシューのライナー・ノーツの仕事をしていたので、誰もお休みしているとは思っていなかったでしょうけど。でもそうやって一度リセットして、「さぁ、これからどうしようか」というところで GEORGE さんから話があって。もう全編ナマ音でやらないとダメかな、と思っていたので、これなら面白いコトができるかもと。現に早くも想定外のことが起こっていて、Spotify のプレイリストで僕がジャズ・アーティストとして扱われているんです(笑)。GEORGE さんと作ったのも、基本的にはディスコ・アルバムのつもりで作っていましたが、意外とジャズ・フュージョン畑の人が飛びついたみたい。GEORGE さんがそっち方面にプロモーション掛けたワケじゃないですもんね?

GEORGE:イヤイヤ、してないです(笑)。

T-GROOVE:結構ジャズ系プレイリストに入れられて、自分がジャズ・アーティストになっているという、予想外のクロスオーヴァーぶりなんです。

最近、和ジャズのアナログ再発が進んでいるじゃないですか。60年代から70年代初めの。あの頃の和ジャズの熱量、パワー感やミックス感と共通してますよね。いまそれをやってる人はほとんどいないから、その飢餓感を埋めてる面があると思います。特に苦労した曲はあったんですか?

GEORGE:“Timeless Groove” のゆっくりした感じは、結構苦労しましたね。キープするのが難しかった。ジャズでもこういうゆったりしたのはやってないので、挑戦でした。でもその苦労が面白いんですけど。

T-GROOVE:意外にもスロウなドラムを叩いたことがなかったんですって。もちろん上がりは完璧なんですが。

ストイックなトラックですもんね。

T-GROOVE:これだけは結構前にデモができていたんです。でも世に出す機会がなくて、リリースできていなかった。それが、この企画の趣旨に合いそうだからと蔵出しして、GEORGE さんにドラム叩いてもらって……。

GEORGE:めちゃくちゃイイ曲なので、「叩きます」と。でも叩いてみたらすごく難しかった。ただその他は、あまり苦労した印象はないですね。アッという間に曲が溜まっちゃって。

T-GROOVE:僕は “Shallow Naked Love” のダビングに手間が掛かりました。ブラス・セクションとかヴォーカルのアイディア、オルガンとか、どんどん音を重ねて、トライ&エラーを重ねて仕上げました。ミックスもかなりやり直しました。みんなのアイディアの賜物ですね。

せっかくなので、ライヴとかはできないのですか? 普通の T-GROOVE 作品だと、ライヴなんてあり得ないけど、これならできるのではないですか?

T-GROOVE:ミキシングまで含めてこのアルバムなので、自分のなかではここで完結しちゃっているんです。だからコレと同じサウンドをライヴで再現するのは、現実的ではないかな。

GEORGE:セッションみたいな感じなら、何とかなるかもしれません。

T-GROOVE:パーティーみたいな感じなら面白いかも。でも僕、ちょっと表に出るのが恥ずかしいので(笑)。でもライヴという固いモノじゃなくて、オープン・セッションみたいに気楽な形なら楽しそうですね。

いずれにしろ、他にはない面白いアルバムができたと思うので、これだけで終わらせるには惜しいと思います。

T-GROOVE:そうですね。T-GROOVE & GEORGE KANO EXPERIENCE をベースに、DAISUKÉ みたいな外部のシンガーを呼んで歌モノ・シングルを作るとか、バリバリのロックやフレンチ・レゲエをやってみるとか。実は今レゲエにハマっているんです。

GEORGE:制限されたなかでのグルーヴにすごく楽しみを感じて作りましたし、レゲエみたいにまだやってないジャンルが残っているので、これからも続けていけると思います。自分でも楽しみです。

T-GROOVE:ディスコ・ミュージックっていろいろなジャンルとミックスできるし、世界共通のビートでもある。だから GEORGE さんが持っているテクニックやセンスをフルに使って、続けていけたらいいなと思っています。

取材:金澤寿和(2022年6月30日)

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Profile

金澤寿和/Toshikazu Kanazawa金澤寿和/Toshikazu Kanazawa
AOR、シティ・ポップを中心に、ロック、ソウル、ジャズ・フュージョンなど、70~80年代の都会派サウンドに愛情を注ぐ音楽ライター。CD解説や音楽専門誌への執筆の傍ら、邦・洋ライトメロウ・シリーズほか再発シリーズの監修、コンピレーションCDの選曲などを多数手掛けている。現在、ライフワークである洋楽AORのディスクガイド『AOR Light Mellow Premium』シリーズが進行中。ほぼ毎日更新のブログは、http://lightmellow.livedoor.biz

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