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音楽を読むことのおもしろさ、いまだからこそ湯浅学!

音楽を読むことのおもしろさ、いまだからこそ湯浅学!

文:松村正人

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Nov 17,2011 UP

 1997年の『音山』(水声社)以来の湯浅学さんの音楽評論集『音楽が降りてくる』はもう店頭に並んでいますので、耳も目も手も足も早いエレキング読者の中には手にとった方もいらっしゃるかもしれません。まだの方はぜひご一読ください。この本はなんといっても読み物としておもしろいので。とはいい、指南書、入門書、レコードやCD購入の手引きやファンブックの類を期待すると肩すかしをくうかもしれない。私は冒頭に音楽評論集と書いたが、この本は向こう10年あまり、湯浅氏が音楽雑誌を中心に寄稿した原稿を編集した本である。こういった体裁の本はすくなくなった。とくに音楽本ではなりをひそめた。90年代の天井しらずの音楽産業に追従してカタログ本が隆盛を迎えたのはゼロ年代初頭だった。以後、音楽の本をつくるには、カタログづくりの手法を磨くか、新書のようにワンアイデアを薄くひきのばすかに二分されたところはなくはない。つまり評論集が必要とされない時季が何年も続いた。読むより先に聴くことができるシステムができたからだともいえる。音楽について書いた言葉は事後承認を受ける立場になった。しかし同意や共感とは何であろうか。
 とまあ、外堀を埋めるような書き方をしてしまいましたが、先に書いた通り、『音楽が降りてくる』は音楽を読むことのおもしろさ、音楽を肴に宵の口といわず深夜といわず明け方まで、ギリギリまで考える、湯浅さんの粘り腰をあらためて感じさせる一冊であることは、この本に収めたいくつかの原稿を宵の口といわず深夜といわず明け方といわず翌日まで待ち続けた私がいうのだからまちがいありません。
 たとえば、下記目次にある「What is JAZZ?──ジャズ・1」。この原稿は当時英国の『Wire』誌の編集長だったトニーさんにお願いしたのが断られたので湯浅さんに書いてもらった。「ジャズ寓話も生まれた──ジャズ・2」はジャズ特集のために、故・平岡正明さんとのダブル巻頭言を書いてもらおうと頼んだ。平岡さんはジャズと落語について書いてきた。湯浅さんの原稿は論評というより寓話みたいだった。とくに注文はつけていない。それが何か響きあっていたのが編集者であった私はおもしろかった。ふたりとも手書きで文字面が原稿の中身を表していた。ありがちな裏話だが、それは仕事というより読者として、雑誌をパラパラめくりながら不意に目がとまる「あの感じ」にちかかった。その感じはこうして本になるとまたちがった感じになったとも思う。日本語ロックについての原稿、はっぴいえんど、遠藤賢司、裸のラリーズ、突然段ボールや浜田俊一、勝新、大竹伸朗や長新太という音楽と関係なさそうなものまでここには収めてある。洋楽ではプリンスとラモーンズと〆のディラン三連発。若いリスナーの方は昔のことと思われるかもしれないが、聴き方や考えは簡単に古びるものではない。それが「あの感じ」の背骨ともなる。で、結局「あの感じ」ってどんな感じ?かというのはこの本を読めばただちにおわかりになれます。

追記:『音楽が降りてくる』の刊行に際して、今週金曜日、下記のイベントを行います。

11.18 fri
「かくきくこと」第1回 ~湯浅学・連続講義 音楽を聴き、言葉を読む~
原宿VACANT 
開始 19 : 30
ゲスト/直枝政広(カーネーション)
http://event.n0idea.com/post/12109785984/11-18-fri


湯浅学
音楽が降りてくる
河出書房新社

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湯浅学『音楽が降りてくる』(河出書房新社)

音楽が降りてくる 目次

はじめに 

◎福は内
日本語はロックにのるか──日本語のロックvs英語のロック
ロックとは?の自問自答の中でまさぐった"ニュー"──日本のニューロック
洋楽好きだからこそなしえた発想と実践──はっぴいえんど
内なる響きを求める旅人──細野晴臣
"自分のことば"で歌い続ける──遠藤賢司『niyago』ライナーノーツ
菩薩の誘い、人生の一大事──遠藤賢司『満足できるかな』ライナーノーツ
豪胆な歌世界──布谷文夫『悲しき夏バテ』ライナーノーツ
漂うべき空を失った煙の行方──加藤晴彦 追悼
黒い太陽が昇る──裸のラリーズ
じゃがたらは軌跡だった。──じゃがたらライナーノーツ
名付けえぬ音を生む意志──アルケミーレコード
純粋なぐうたら──突然段ボール『成り立つかな?』ライナーノーツ
本当にど最低のクズ──浜田俊一『無芸術大王』ライナーノーツ
万物流転の流れをキャッチする──小杉武久
行き場のなかった駄々っ子の里に、つむじ風が吹く──武満徹
貼りまぜる力──大竹伸朗・1
あらゆる妄想の避雷針──大竹伸朗・2
歌謡解放宣言
ニッポン歌声ヒストリー
剣術とロックンロール──美空ひばり『ミソラヒバリ リズム歌謡を歌う 1949-1967』ライナーノーツ
自覚的アイドルの先駆──南沙織『シンシア・アンソロジー』
緊張の高まりと弛緩の塩梅の妙──中島みゆき『あ・り・が・と・う』
男女交わって歌は不滅なり
人間存在そのものの絶対的空漠感──ピーター『ベスト・オブ・ピーター』ライナーノーツ
天女のように舞う──青樹亜依『アンドロメダの異星人』ライナーノーツ
男 宇宙 裸──コンピレーション『男 宇宙』ライナーノーツ
ビッグバーン──藤本卓也
野放図な歌心が坂をころげ昭らかに地を揺るがせるが如し。──野坂昭如『マリリン・モンロー・ノー・リターン』ライナーノーツ
善悪の彼岸をひょいっと乗り越えた哲人──勝新太郎・1 追悼
世界はすでに勝新さんの中にあった──勝新太郎・2 勝新太郎『勝新太郎 夜を歌う』ライナーノーツ
慈しみの音像、市の風車──勝新太郎・3 『座頭市』
「俺は"社外人"だ」と勝新さんは言った。──勝新太郎・4
不振や陰気を吹き飛ばすロックンロールの根元──輪島大士
無邪気なオノマトペに圧縮された執念──谷啓
かこうと思えば──長新太

◎鬼は外
What is JAZZ?──ジャズ・1
ジャズ寓話も生まれた──ジャズ・2
土星からの使者サン・ラーが奏でた天空の音楽
新たなる"衝突と即興"を求めて──ジャズとの共振から生み出されたロック
永久現役──『俺がJBだ! ジェームズ・ブラウン自叙伝』解説
プリンスはいかにして"プリンス"になったか
愛と革命のディープ・リスニング──日本におけるソウル/ファンク聴取史
狼の闘争──ハウリン・ウルフ
歪んだ世界をギターで殴り書け!──ガレージ・ロックに近しいブルース
なにはなくとも1234ラモーンズ
しっぽが見えてる人でなし──ハウリング・ヘックス『ナイトクラブ・ヴァージョン・オブ・ジ・イターナル』ライナーノーツ
楽器破壊者の系譜
君は日本の空にぽっかり浮かぶエルヴィスの巨大な渋面を見たか──日本におけるエルヴィス・プレスリー受容史
エコーからさぐるアメリカ南部への道──フィル・スペクターとジョージ・ハリスン
『スマイル』の幻想──ビーチ・ボーイズ『スマイル』
ニール・ヤングが俺に教えてくれたこと
歪みとドローンの詩情を求めて──ヴェルヴェット的"音響"の背景
七四一週チャート・インのモンスター・アルバム──ピンク・フロイド『狂気』
敬意とパロディ精神の混在──グラム・ロックの背景としてのオールディーズ・ブーム
天国のスパークス
マドンナの利
速度探究から重厚なドラマへ──メタリカのメタル以外の側面
亡霊たちと歌い続けることを当然のものとした"歌極道"──ボブ・ディラン・1
生きることがそのまま現状打破──ボブ・ディラン・2
歌うことに身を捧げた音楽の使徒──ボブ・ディラン・3
あとがき
初出一覧


文:松村正人

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