Home > News > 具体の映像 - ――牧野貴、西日本上映ツアー“EXP/2015”
やぶからぼうに恐縮ですが読者のみなさん、さいきん「ミュジーク・コンクレート」なることばを目にする機会が多くないですか。ピエール・シェフェールのはじめたこの音楽は端折っていえば、伝統的かつ抽象的な音楽にたいし録音した「具体音」の加工と再構成で音楽をつくる、もとは現代音楽のサブジャンルなのだけれど、録音技術と機材が劇的に亢進し一般化したのを境にひとの口の端にのぼるのもめっきり少なくなったのが、体感ではOPNあたりからだろうか、チラホラ見かけるようになったのはおそらくミュジーク・コンクレートが現在のなめらかな音楽にたいして異化のニュアンスをひそませるからだろう。などとここは考察を進める場ではないが、とまれミュジーク・コンクレートが2010年代の音楽の基調の響きの一部であるのはたしかだ。
牧野貴はジム・オルークからローレンス・イングリッシュ、タラ・ジェイン・オニール、コリーン、大友良英、山本精一、渡邊琢磨、イ・オッキョンらミュージシャンとの共同制作でも知られる映像作家だが、彼の新作『cinéma concret』はその名のとおり、誕生から半世紀以上を経たミュジーク・コンクレートへの21世紀の映像作家からのアンサーなのだという。フィルムとビデオによる具体映像(といういい方があるかはわからないが)を重層的に構成し、映画を観る行為を光の体験までひきあげる牧野貴の作品はもとからミュジーク・コンクレートに親和的ともいえる――というか、シオンあたりを引くまでもなく、光と音の現前である映画にとってその位置関係を措定するにあたり、ミュジーク・コンクレート的場面はあまたあるわけで、映画的な音楽あるいは音楽的な映画といった安易な比喩は厳に慎まなければならないが、牧野貴という点でそれらは交錯するにちがいなく、『cinéma concret』ほか、近年の代表作8作品をまとめて上映する今回の西日本ツアーはそれに目にするかっこうの機会になるだろう。でもなんで西日本だけなの。西日本がうらやましくてならない。
“EXP/2015”
牧野貴作品集『Cerulean Spectacles』リリースツアー
© 神山靖弘
■10月3日(土)岡山カフェモヤウ
15:00[フロクラム cinéma concret](上映作品:『The Low Storm』、『Generator』、『cinéma concret』)
17:00[フロクラム Phantom Nebula](上映作品:『Phantom Nebula』)
19:00[フロクラム cinéma concret](上映作品:『The Low Storm』、『Generator』、『cinéma concret』)
21:00 音楽の時間(DJ:牧野貴)
料金:予約・当日共に
1回券1,500円+1drink500円、2回券2,500円+1drink500円
(※音楽の時間は各回の入場券てご参加いたたけます)
cafe moyeu http://www.cafe-moyau.com
■10月4日(日)大阪シネ・ヌーヴォ
20:40 『The Low Storm』『still in cosmos』『Ghost of OT301』『2012 3D』
上映後、牧野貴&DOOM !によるトークあり
料金:1,500円(シネ・ヌーヴォ会員1,000円)
シネ・ヌーヴォ http://www.cinenouveau.com/
■10月5日(月)京都ジャポニカ
20:00 『Inter View』(音楽:Tara Jane O'Neil & Brian Mumford)
DJ : DOOM ! collective
料金:1,000円+1drink500円
JAPONICA http://www.japonica-cafe.com
■10月6日(火)京都同志社大学・寒梅館
19:00 『cinéma concret』
アフタートーク:牧野貴×川崎弘二(電子音楽研究)「ミュジーク・コンクレート / シネマ・コンクレート」
料金(当日のみ):1,000円均一(※同志社大学学生、教職員無料 同志社内諸学校含む)
同志社大学 寒梅館クローバーホール http://d-live.info/