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interview with Kikuchi Naruyoshi

interview with Kikuchi Naruyoshi

デート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの復活

――菊地成孔、インタヴュー

松村正人    Oct 04,2010 UP

リテラシーを高くとることで賞味期限を伸ばそうという戦略があったわけではないけど、結果としていまの日本人全体にはポリリズムとか複合リズムはリテラシーは高いものになってしまっている。だからいつまで経っても消費されない感じがある。

■『闘争のエチカ』はベスト盤......というか総括とも全集ともいえるものですが、菊地さんのいうゼロ年代は『闘争のエチカ』に集約されたと考えていいですか?


菊地成孔00年代未完全集『闘争のエチカ』(上下巻)
イーストワークス

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菊地:『闘争のエチカ』は最初、〈イーストワークス〉のワークスをCDボックスで出そうというありきたりな話で進んでいたんですよ。〈イーストワークス〉の仕事というのは、ゼロ年代というディケイドを前半と後半にわけると、後半なの。00年から05年はスパンク・ハッピー、デート・コース、『スペインの宇宙食』で、後半は歌舞伎町でジャズ。2005年に『情熱大陸』に出演しているから、ちょうどカードの裏表みたいにバチッとわかれる。ディケイドは半分に割れるものだから。その考えで、〈イーストワークス〉ワークスを出すとなるとカードの裏面、後ろ側の5年の全集が出ることになる。それで高見くんにムリは承知で「デート・コースとスパンクスも入れた、この10年の前半も入れた全集が出せたらいいね」っていったんですよ。そうしたら高見くんはもちまえの行動力でそれを実現したわけ。「全部いけますよ」となったときに「じゃあ徹底的にいこう」と。「CDの何枚組っていうのはやめて、4ギガのUSBメモリに全部入れる」となった。僕はご存じの通り、ハードは全然知らないから、「おもしろいね、これ」といっただけなんだけど、いずれにせよ、商品形態としては一個人の10年間の活動を動画と静止画とテキストをあわせて4ギガバイトのメモリに収録して1万円というのは世界初だからね。値段の設定もよくわからなかった(笑)。「安すぎ」だっていう声もあるし、「高くて買えない」っていう若い子もいるという。その意味ではすごく現代的で、昔みたいに鶴の一声で価格をいえば国民のコンセンサスが得られる時代じゃないから値段つけるところから楽しくやったわけだけど、仕事の総括ということとニュー・メディア、新しいプロダクトを出す喜びが重なってきた。デート・コースの活動再開とは時期がダブったのは偶然(笑)。デート・コースは映像がでかくて、夏目(現)くんが撮影した映像が膨大に残っているんだけど、初心者はもちろん、マニアでも見たことのない〈みるく〉でのライヴ映像なんかを入れたらちょっとしたプロモーションにはなるかな、と大急ぎでこれが野音前夜に向けて制作されたという事の次第です(笑)。

■〈みるく〉ももうないですからね。菊地さんはコンテンツを確認されたんですか?

菊地:もちろん。高見くんとふたりで全部確認して写真も全部選んで、ライヴ音源も山ほどあるもののこの部分を使おうと指示して、相当な難事業でした。最初は新録がいらないから楽だと思っていたんだけど(いままでで)一番キツかった(笑)。2004年の仙台でやったライヴとか、「ひょっとしたらいいテイクがあるかもしれない」って見るんだけど、全部"ヘイ・ジョー"とか"キャッチ22"なの(笑)。

■気が狂いそうですね(笑)。

菊地:狂うよ(笑)。それを乗り越えて、厳選に厳選を重ねました。

■キツかったのは過去の自分に対峙するのがキツかったわけではなくて?

菊地:いや、過去の自分の対峙するのは誰でもそうであるように僕だってキツかったですよ。10年前の映像を見るのなんてイヤなものじゃない。でもそのキツさは最初だけで、自分史を補強したというか、精神的なつらさはそれほどでもなくなった。

■そのうえで自己分析するとどうなります?

菊地:「多岐にわたる活動」といわれてきたけど、僕のこの10年やってきたのは構造レベルに還元すればひとつだなと思った。全部ポリリズムとポリグルーヴだよね。そういうことも頭では理解していたけど、目のあたりにすると「なるほどな」と思いました。

■「なるほど」というのは過去あるいは表現への所有感ですか? 

菊地:音楽の衝動っていうのは個人から出ているとはいえ、もっと共有的なものだと思うよね。だから所有感というより、ともすれば忘れてしまうちょっと前のことだとか、「いろんなことをやっている」といわれるうちに自分でも「いろんなことをやっている」と思いがちだけど、つまるところストーンズみたいな金太郎飴状態ではなくても同根感はあるということです。YMOとかソロとか、坂本龍一さんの音楽はいろんな要素を孕んでいそうだけど、結局のところ、ドビュッシー風の和音がポップスに乗っかってくるというそれだけをつづけている側面があるのと同じで、結局僕はブラック・ミュージック発のダンス・ミュージックの新しい形を模索し、ジャズをどうレコンキスタさせるかを模索しているだけです。

■それはこの10年のテーマですか? それとも通史的な?

菊地:10年間を総括して、掛け値なしでよかったと思ったのは消費されきってないということなんですよ。リテラシーを高くとることで賞味期限を伸ばそうという戦略があったわけではないけど、結果としていまの日本人全体にはポリリズムとか複合リズムはリテラシーは高いものになってしまっている。だからいつまで経っても消費されない感じがある。スパンク・ハッピーみたいに例外はありますけどね。あれはポップスだったから、即消費され即分析され、ネットで書かれたり二次制作にまわされたけど、ほかのものにはミスティフィケーションが生きているんですよ。

文:松村正人(2010年10月04日)

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