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interview with Yoshinori Sunahara

interview with Yoshinori Sunahara

夜よりも暗く

――砂原良徳、インタヴュー

野田 努    photos by Yasuhiro Ohara   Mar 30,2011 UP

いまの世界が問題山積みなのはわかるけど、それを解決するのに何がいちばん良い方法なのかっていうのが自分のなかではまだはっきりしないところがあるから......もちろん、争いや暴力がなくなるのが良いに決まっているんだけどね。


砂原良徳 / liminal
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それで、聴いて思ったのは、「まりん、何を怒ってるの?」っていう。

砂原:怒ってるかな?

"ビート・イット"とか怒ってるよ。

砂原:問題意識はあるけど怒っては......いや、わからないね。自分でもそこがわかならいのかも。実は怒っているのかもしれないし。

自覚はなかったんだ?

砂原:まったくなかったね。

"フィジカル・ミュージック"についても?

砂原:社会全体の問題がどんどん山積している感じはずっとしているけどね。日本もそうだし、世界もそうだし、人類の問題がどんどん増えていってるという感じはするしね。

パブリック・エネミーやURみたいに意識していたわけじゃないんだね。

砂原:ただ、リアリズムに基づいて音を出すという意味では、デトロイトのそうした連中のことはすごい理解できるし、自分もそれはそうだと思う。

『ラヴビート』の前後は、「ファンク」ってことをよく言ってたよね。「次はファンクやりたい」とか。ファンクって表現は、怒りとも関係あるじゃない。だからね、「まりんのファンクとはこういうことだったのか」と思ったけど。

砂原:昔はファンクって、リズムが気持ちよく流れていく感じだと思っていたけど、ファンクっていびつさだと思うようになって。いびつさこそファンクじゃないかと。

いや、今回のアルバムはそれがもっとストレートに出ているよ。それが怒りというものに思えてならないんだけどね。

砂原:そうかもしれない。自分でもよくわかならないんだよね。『ラヴビート』だって最近だからね、ちゃんと聴けるようになってきたのって。でもね、『ラヴビート』のときのほうが怒ってたかもしれない。

『ラヴビート』はまだ、メロディがある。アプローチしやすいじゃん。

砂原:構造もわかりやすい。

今回はメロディやメロウネスといったものを排除しているでしょ。

砂原:してるね。

それで、ささくれ立った感覚が際だっているんだよね。

砂原:それは意識的にやったかもね。

そういう意味では『ラヴビート』の対岸に飛んだというか。

砂原:そうかもね。でも軸足は『ラヴビート』のときから変わっていないんだけどね。でも、世のなかも変わるし、自分も変わるし、そうなると表現も変わってくるよね。

それで90年代のまりんの音楽を聴き直すと......。

砂原:ぜんぜん違うでしょ。

ぜんぜん違うし......。そもそもパンクに親しんでいた過去があるわけではないでしょ?

砂原:うん。

テイク・オフ・アンド・ランディング』の頃はぜんぜん違うもんね。娯楽に徹していたし、作り方もサンプリング主体だし、ドリーミーだし。

砂原:パンクは通っていないけど、初めてアート・オブ・ノイズを聴いたときはパンク以上にパンクだと思ったけどね。ピアノをぶっ壊した感じとか、歪んだドラムとか......。

あれはアートフォームにおけるパンクでしょ。

砂原:戦略的なこともあったからね。ただ、パンクのスピリットというのは、昔から自分のなかにあったことはあったんだけどね。

だけど、パンクに対して斜に構えて見ていたほうでしょ。

砂原:まあ当時はね。

だいたいまりんはP-モデルだからね。

砂原:そうね。

でも、P-モデルはパンクだよね。

砂原:P-モデルはパンクだよ!

そうだよ(笑)。

砂原:だいたいパンクって言った瞬間に終わる。アートもそうなんだけど、言った瞬間に終わるっていうのがあると思ってて、俺が見たときにはパンクってできあがっていたから。それで直接的にパンクのほうにはいかなかったんだと思うけど。でも、スピリットは強いと思うね。だいたい電気グルーヴのなかにいたってこともあるし......あのバンドはパンキッシュだったでしょ。

石野卓球にはあるよね。

砂原:いや、瀧にもあると思うし、そういう影響はあると思うね。

でも、もともとは世のなかに対して腹を立てている音楽はかっこ悪いと思っていたほうでしょ?

砂原:そんなことはない。やっぱ、ニューウェイヴってパンクの変形みたいなところがあるじゃないですか。P-モデルなんかはまったくそうだと思う。中学生のときはYMOにハマっていたんだけど、高校生ぐらいのときからじわじわとP-モデルにハマっていったんだよね。

坂本龍一の『B-2ユニット』なんかは?

砂原:あれもそうだね。ああいう感覚をYMOが取り入れたんだろうね。それを言ったら俺は『テクノデリック』や『BGM』にもパンクを感じるけどね。あと、ヤン(富田)さんにすごくパンクを感じるんだよね。そう、俺はああいうスタンスにパンクを感じることが多いかな。ギター持って、ベース持って、ドラム叩いて、Tシャツ着てジーンズ穿いてって、俺はスーツ着て、ネクタイ締めて、小型無線機を持って電車に乗り込むサラリーマンといっしょだと思ってるから(笑)。それといっしょじゃん。それよりも、俺、池田亮司にもパンクを感じるから。

『ラヴビート』以降は、とにかくこうした公の取材で社会問題について話すわけだけど、社会と音楽との関わりみたいなところでは、何か声明を出していきたいとは思わない?

砂原:いまの世界が問題山積みなのはわかるけど、それを解決するのに何がいちばん良い方法なのかっていうのが自分のなかではまだはっきりしないところがあるから......もちろん、争いや暴力がなくなるのが良いに決まっているんだけどね。

何かこう、メッセージを言うって感じではない?

砂原:そういう感じではない。それを言うことで、どこかにしわ寄せが来るのが嫌だし。

取材:野田 努(2011年3月30日)

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