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interview with Yoshinori Sunahara

interview with Yoshinori Sunahara

夜よりも暗く

――砂原良徳、インタヴュー

野田 努    photos by Yasuhiro Ohara   Mar 30,2011 UP

あれはメッセージはメッセージなんだけど、あのなかに出ているCO2がどうたらこうたらとか、ああいうの、俺、CO2を無くしたいからああいうこと言ってるわけじゃないのね。CO2が環境にどれだけ悪いのかという証明を誰かが出したのか、これは我々は騙されているんじゃないのかという、そういう投げかけなんだよね。


砂原良徳 / liminal
キューンレコード E王

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■"サブリミナル"のPVを見たけど、あれすごいじゃない。レディオヘッドみたいだと思ったよ。

砂原:あれはメッセージはメッセージなんだけど、あのなかに出ているCO2がどうたらこうたらとか、ああいうの、俺、CO2を無くしたいからああいうこと言ってるわけじゃないのね。CO2が環境にどれだけ悪いのかという証明を誰かが出したのか、これは我々は騙されているんじゃないのかという、そういう投げかけなんだよね。

■CO2に限らず、グローバリゼーションの問題とか、資本主義経済の問題とか、いろいろな数字を地図にダブらせて、暗示させているよね。

砂原:そう、いろいろ出している。あれはけっこう踏み込んでやっているから。

■あれは何?

砂原:あれはプロテストというわけでじゃない。「こういう情報とどうやってつき合っているんだ?」っていう問いかけだよ。まあ、時間が経ったから言うけど、「CO2を無くしていきましょう」とか、そういうことを言いたかったわけじゃなくて、「震度5でこの建物は崩壊します」と言う、しかし「その情報は本当にあっているのか?」、「怪しいヤツが来て、税金集めて、何に使われているのかわからないんじゃないのか?」、そういうことを考えて欲しいというのが意図としてあったんだよね。

■惑わされるなと。

砂原:たとえば発展途上国の開発だって本当に現地の人たちのためにやっているのか利潤のためにやっているのかわからないと思うんだよね。「Win-Winの関係」って経済用語としてよく言われるじゃないですか。これをこうすることによって、お互いに利益がいくって。たとえば俺がいまここで水を飲める技術を提供してやれば、「おまえらも水が飲めるし、俺は金が儲かる」っていう。でも、「それって本当なのかな?」と思うんだよね。

■なるほど。そういういま社会で公然とおこなわれていることに対する疑問符みたいなものだね。

砂原:そうだね。俺、ぜんぶ経済に取り込まれている気がするんですよね。昔だったら、家に赤ん坊がいればそれを見てくれるお婆ちゃんがいた。でも、いまはいないからそういうサービスに電話する。それで金が取られるじゃないですか。資本主義が......進化なのか退化なにかわからないけど、いろんな価値観がどんどん経済に飲み込まれてるってことです。そういうシステムに飲み込まれずに自分を成立させるのがひじょうに難しいと思うんだよね。「俺は金なんかいいよ」と言っても、そうやって生きられない。自分の価値観を持って生きていくことがより困難になってきていると思うんですよ。

■それは『ラヴビート』以降、ずっと考えていることでしょ?

砂原:『ラヴビート』のときはもっと衝動的だったし、甘かったんですよ。『ラヴビート』のときのほうがはっきりモノを言えたと思うんだけど、当時の考えでいま有効ではなくなっているものも少なくないと思うんだよね。だから、『リミナル』のほうがよりはっきり言えなくなっている。

■その「はっきり言えない」感じは音にもすごく出ているね。

砂原:そう、はっきりは言ってないんだけど、(実は何かを)言ってるっていうね。

■去年会ったときには、「プログレみたいなアルバムになるかもしれない」って言ってたじゃない(笑)?

砂原:ちょっとはあるでしょ。ない?

■正直言って、まったくないと思う。

砂原:ああ、そう(笑)!

■良い意味でね。

砂原:ああ、そう。

■プログレになったらどうしようかと思っていたから。

砂原:俺としてはちょっとあるんだけどね。

■まあとにかく「サブリミナル」を発表した時点にあった構想からずいぶん変変更があったと。

砂原:あったね。初めて踏み込む領域があって、そこに入っていったら気がついたと思うんだよね。"サブリミナル"をリアレンジして入れようと思っていたんだけど、実際にできたらアルバムに馴染まなくてはじいちゃったんだよね。そういうことがあったりとか......、あと、アルバムのなかばの曲とか抽象的だと思うんですけど......。

■はいはい、"ナチュラル"とかすごいもんね。

砂原:うん、そういうところにも出ている。自分が具体的に表現しにくくなっているんです。

■そういう意味では『リミナル』はわかりづらいアルバムだよね。

砂原:そうかもね。

■曲名もわかりづいらい。

砂原:そう。

■わかりやすくしようとは思わなかったの?

砂原:わかりやすくできるんだったらしたほうがいいと思うけど、ただ、わかりやすくすることで......たとえば『ラヴビート』というタイトルがあったとしたら、そのキャッチフレーズに合わせて世のなかを理想的に見ようとしたときに、どこかに副作用があったらこれはもうダメだと思うようになってしまった。それで言葉をちょっとぼかすようになってしまったんだよね。

■正義というものがますます相対的になっているっていう感じ?

砂原:誰かが理想を掲げても、その理想の裏には悲しむ人がいるんじゃないかって。そういう副作用ができるようなマニフェストだったらはっきりしていないほうがいいと思うようになったんだよね。文明が物事を解決しようとして進んでいって、しかしそこには副作用が起きて、結局、堂々巡りのようになっているんじゃないかと思ったんだよ。何を解決しようと思ってもしわが寄る。それを強く感じていますね。

■まりんのディスコグラフィーだけを追っていくと、『ラヴビート』で急に社会に目覚めたように見えてしまうんだけど、いまあらためて訊くと、『ラヴビート』にいたるまでに何があったんだろうか?

砂原:『サウンド・オブ・70'S』をやっているときに「変わる」ってことを強く感じたんだよね。世のなかの秩序が変わるだろうと。

■あの当時、環境問題について強く話してくれたのはよく覚えているんだよね。

砂原:まあ、そういうこともあったかもしれないね。とにかく、『ラヴビート』をやっているなかで気づいたんじゃなくて、『サウンド・オブ・70'S』をやっているときに感じたことだったんだよね。「こりゃ終わりだな」と。98年ぐらいかな。

■『サウンド・オブ・70'S』までは、まりんのなかで自分の音楽がエンターテイメントであることにプライドを持ってやっていたと思うんだよね。

砂原:まだ若かったし(笑)。それに90年代なかばの音楽業界はお祭り騒ぎみたいだったから。

■ちょっとした黄金時代だったかもね。

砂原:そのなかにいて、気がつかなかったことがあったんだよね。だけど、いろいろやってくなかで無視できなくなってきた。あと、他の音楽からの影響もあったよね。『ラヴビート』をやる前にACOのプロデュースをしたんだけど、彼女が書いてきた曲が時代にすごくマッチしていたりとか......。ア・トライブ・コールド・クエストの『ラヴ・ムーヴメント』のような、自分にとって決定的なアルバムが出たりとか......あのアルバムを聴いたとき、自分が「変わるな」と感じていたことがそこにあるように思ったんだよね。ああ、ひょっとしたら音楽に最初に教えられたのかもしれないな。それでもっと現実を見ようと思ったのかもね。

■まりんほど大きく変化を遂げたミュージシャンも珍しいと思うんだよね。

砂原:そう? 中学校のときの友だちに会うと、「おまえ、インタヴュー読んだけど、まったく変わらねぇーなー」って言われるよ(笑)。

■やっぱ、でも......、昔の話になっちゃうけど、電気グルーヴ時代は、電気グルーヴのなかのまりんという役柄を引き受けていたところもあったんでしょ?

砂原:前半はとくにね。『ビタミン』以降は自然になっていったと思うけど、それまではやっぱ、勝手にそういうイメージができていて、それをなぞっていかないといけないのかなというのはあった(笑)。それまで俺、インディーズでやってきてて、それが突然、大きなステージに立って、たくさん取材を受けて、たくさん写真を撮られて、初期はすごく混乱していたからね。しかも、瀧が俺の足を持ってがーっとかふりまわしたら、それで何かが成立しちゃうから。

■ハハハハ。

砂原:もう何もやらなくていいわけ(笑)。

■ハハハハ。電気グルーヴはアイドルだったからね。

砂原:『ビタミン』以降は変わったけどね(笑)。やっぱあの頃はふたりの影響が大きいよ。

■インパクトが強すぎるからね(笑)。話を戻すと、そういう意味では『ラヴビート』というターニングポイントがあって、それで今回の『リミナル』ではさらにまた違うところに行こうとしているってことだよね。そこに迷いはなかった? 

砂原:なかったね。むしろの次のステップに行きかけていると感じていたから。そう、だから、本当は、そう感じるよりも前に、1枚のアルバムをまとめてしまったほうがわかりやすかったのかもしれないね。けど、もう(次のステップに)行きかけているから。で、全体的にグラデーションがかかってしまってるのかな。まあ、できたばかりかだから、まだ自分でも(『リミナル』の全体像が)わからないところもあるんだよ。

■なかなか客観的になれない。

砂原:何回か通して聴いたんだけど、「まだわかんねーや」っていう。

取材:野田 努(2011年3月30日)

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