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interview with Yoshinori Sunahara

interview with Yoshinori Sunahara

夜よりも暗く

――砂原良徳、インタヴュー

野田 努    photos by Yasuhiro Ohara   Mar 30,2011 UP

砂原良徳 / liminal
キューンレコード E王

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 取材したのが3月10日、つまり東北地方太平洋沖地震が起きる1日前というタイミングだった。ゆえに以下に紹介する取材のやりとりは震災前の世界でおこなわれていたもの。そしてこの原稿を書いている現在(3月24日)もなお、放射性物質の漏洩は止まることを知らないようで、もっとも危険だと評判の三号機は煙をあげている......。やだなー、恐いなーと思っても、逃げ場がない。
 原発事故によっても命が奪われ、多くの人が避難を迫られ、環境汚染がはじまり、そして節電を強いられている。僕はアンプに電流を通して毎日音楽を聴いている。『リミナル』は、震災前に聴いたときも強いものを感じたが、いまも変わらずよく聴こえている。むしろより共感している。
 以下のインタヴューを読んでいただければわかるように、『リミナル』は彼にとってのおそらく最初の抽象音楽である。が、砂原良徳のディテールへの執着......いや、執念のようなものがこのアルバムに収録された8曲すべてにある。それは聴覚体験においてスリリングで、そして、決して上昇することのないこの音楽――10年ぶりにリリースされる『リミナル』のリアリティは、いまの僕にはより圧倒的な存在感をもって響いている。
 「サブリミナル」のときにも書いたが、『リミナル』は僕のなかでは、コード9やブリアルの音楽の延長線上で聴こえている。僕は薄暗い都内の駅のホームで、iPodでこの作品を繰り返し聴いた。ひっそりとした電車のなかで、あるいは灯りの消えた青山通りで聴いた。奇しくもアルバムは、2011年のサウンドトラックとなった。

『ラヴビート』の頃はあらかじめテーマがあって、イメージがあって、それに沿ってやっていったんだけど、『リミナル』に関しては社会を生きながら感じたものをダイレクトに出してみようっていう。あんま考えずに出してみようっていうね、そこがいつもと違っている部分で、そうなると自分がどういう風にどうやってやったという説明がうまくできない。

■素晴らしいアルバムができたましたね。

砂原:いや、そんなことないんですけどね。まあ、いちおうできたっていうね。

■いまはどんな気持ち? ほっとしている感じですか?

砂原:けっこうね、次を作りたいというのが強いですね。

■なるほど。

砂原:『ラヴビート』を作ったときは、次のことを考えられなかったけど、いまは次に何をやるのかってことばかり考えていますね。

■そうかぁ。発売日が3月30日(注:その後、震災の影響で4月6日に延期)じゃない? それで、最初に池ちゃん(ソニーの担当者さん)から4曲入りのダイジェスト版のサンプルが送られてきたのが2月の初旬だったかな。そして、最終的な音源が送られてきたのが3月に入ってからだったでしょ。3月30日発売のCDでこのスケジュールは通常はあり得ないと思ったんだよね。舞台裏が相当にバタバタだったんじゃないかと推測したんだけど。

砂原:ハハハハ。

■ギリギリまで粘っていたの?

砂原:まったくその通り。27日にあがってますから。異常だよね。

■異常だよね(笑)。最初にダイジェストが来てから、わりとすぐに完成盤が来ると思っていたんだけど、けっこう時間がかかった。その間に何があったんでしょう?

砂原:『ラヴビート』のときは自分のスタジオで録音していたので、直そうと思えばすぐに直せたんだけど、今回は外のスタジオを使っていたんで、最終的に曲の足並みを揃えるのに時間がかかってしまったんだよね。

■とにかく時間ギリギリまで。

砂原:それはいつもだけど。

■それにしても本当にギリギリだったね。

砂原:そうだね(笑)。

■このドタバタ感が、この作品の内容にも関係している?

砂原:しているね。あとね、前回の「サブリミナル」の延長線上でやっていこうと思っていたんだけど、途中から別の要素が入ってきて、別のことをはじめてしまったんだよね。それが(このスケジュールにとっては)大きかったね。

■当初考えていたものとは違う方向にいった?

砂原:そうそう。

■去年の夏に取材したときは、「半年以内に絶対に出る!」って断言していたからね(笑)。

砂原:だから野田さんが言った通りになったんだよ。『ラヴビート』って2001年の3月だったから、ほんとに10年後に次が出た。スゲー、予言者だよ。

■あれは適当に言っただけだから。

砂原:ハハハハ。

■それで『リミナル』なんだけど、俺はすごく激しいものを感じたんだよね。

砂原:そうですか。

■いままでのアルバムにはまったくなかったモノを感じたんですよ。激しい何かを音楽から感じて、それにまずは驚いた。

砂原:そうですか。世のなかの切迫した感じが出たのかもしれないけど、こうしてやろうと思ったわけじゃない。ハードにしようと思った作ったわけじゃないんだけどね。自然にこうなったっていうか。

■前回の取材で話したときに、物事をなるべくロジカルに捉えているように思えたんだけど、音楽を聴くとずいぶんとエモーショナルな作品だと思ったし......。

砂原:そうですか。

■理詰めで作ったというよりも、エモーショナルに作ったっていう感覚が......。

砂原:『ラヴビート』の頃はあらかじめテーマがあって、イメージがあって、それに沿ってやっていったんだけど、『リミナル』に関しては社会を生きながら感じたものをダイレクトに出してみようっていう。あんま考えずに出してみようっていうね、そこがいつもと違っている部分で、そうなると自分がどういう風にどうやってやったという説明がうまくできない。だから自分でやっていることが口で説明できなくなってきてますね。だけど、説明できなきゃいけないのかというと、そうじゃないなと。自分がやっていることを何から何まで説明してしまうのは逆につまらないなって。

■聴いているほうにしてみても、作者に何から何まで説明されてしまうとつまらないっていうのもあるんだよね。想像力が使えなくなるから。

砂原:そこが音楽の面白い部分でもあるからね。

取材:野田 努(2011年3月30日)

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