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interview with Seiho

interview with Seiho

ピクセルを切り裂いて

──セイホー、インタヴュー

取材:野田努    photos:小原泰広   May 16,2016 UP

喪失感よりも、機会が増えているだけなので、マイナスのものは僕らにとってひとつもないですよ。アーティストはiTunesで働いているわけじゃないから、iTunesがない世界も作れるわけじゃないですか? 


Seiho
Collapse

Leaving Records/ビート

ExperimentalEletronicadowntempo

Amazon

■今回の『コラプス』は魅力的な作品だけど、〈Leaving〉から出ているから良いのではなくて、この作品が面白いんだと思ったけどね。

S:このアルバムで現在やっていたことが、将来わかりやすいものになっているといかに証明できるか、みたいな。いまからそこに折り合いをつけていくと、2020年に普通の人が過去アルバムを聴いたときに「めっちゃポップやん! 当時にそんな難解に思われてたん?」って言われるような形にどうしていくか、みたいな。

■それはまたよくわからないことを(笑)。しかし、まあ壮大な計画があるんだね。

S:はははは。

■ぼくはさっきそのライヴとの対比を喋ったんですけど、よく考えてみれば、吐き出し方が違っているだけで、根本は変わってないというか、今回のエディット感もライヴの脈絡のない展開力と繫がっているんだろうね。

S:そうなんですが、そこはまだ僕もわかっていないんです(笑)。これをライヴでやるのも違うし、これをライヴでやれるような環境が2020年までにできるのか、いまのライヴ・セットにこれが組み込まれていくのかもわからないんです。けど、どういう曲を作りたいか決める前に、曲ができちゃうから難しいですよね(笑)。

■実験的なことをやっても、セイホー君がやるとポップに見えるでしょ。そのキャラがそう思わせるのかもしれないけど。

S:大阪人っていうのもあるかもしれないんですけど、ギリ笑ってくれないと面白くないじゃないですか? 

■ヨージ・ビオメハニカさんにも繫がる何かが(笑)。

S:それで阿木(謙)さんとの繋がりが出てくるんですね(笑)。僕が好きな映画監督もそうなんですけど、複雑な人であればあるほど、人懐っこいじゃないですか。

■若い人はステージ上のエネルギッシュなセイホーが聴きたかったんじゃない?

S:今回はとくに僕よりも上の人に聴いてほしいんですよね。そもそも僕は同世代の音楽を全然聴いてこなかったし、上の人に聴いてもらって正直な感想が欲しかったというか。同世代って、何をしても繋がれるじゃないですか。音楽に限らずスポーツをやっているやつらとも、同世代だからわかるんですよね。音楽の良いところは、同世代じゃない相手ともわかり合えること。もともとの音楽体験が親とのコミュニケーションだった。オヤジやオカンと話すために音楽を聴いて、それについて語るみたいな。だから上の世代の人にも聴いてほしいし、逆に言えば、もっと下の世代にも聴いてほしいけど。

■楽しみにしていることって何ですか?

S:最近はお茶会が楽しいんですよね。

■面白い人だね、セイホー君って。

S:あと関西でやってるアポストロフィーってイベントがあって、同じメンバーで定期的にやっているんですが、そのイベントで生花をやっていて楽しいです。この前も東京でイカと生花のイベントをやりまして。まな板にイカを置いてそこに花を生けていくっていう(笑)。そういうのを仲間同士でやっているのが一番楽しいですね。

■セイホー君が大切にしていることって何ですか?

S:僕は貧困層に生まれたわけじゃないですけど、家は商売をやっていて不安定だったので、品だけは良くしたいという思いがあって。貧乏人なのに肘をついて食べるのはカッコ悪いみたいな。だからこそ礼儀作法は大事やし、どんなに貧しくても品は保ちたいなと。さっきのコミュニケーションでいうと、礼儀さえ良くて学さえあれば、上の人とも喋れるじゃないですか。それがなかったら下とも話せないんですよね(笑)。お互い礼儀ができていたら小学生だろうが年寄りだろうが、フラットに喋れる。品というのは、レストランへ行ってマナー通りに使えるのが大事ということではありませんよ。例えばフレンチへ行って肘をつくのは礼儀が悪いし、けれども、アメ村の三角公園では友だちと酒飲みながらカップラーメン食べている方が品が良いんですよね。その場所に合った品の良さがあって、それってその場所に対する知識や学があるかってことにつながってくるんじゃないかと思うんです。

■その場に合った品の良さかぁ……セイホー君はさ、ファイル交換世代じゃん? CDを買わない世代だよね? そういう世代に属していながら自分の作品は発売するじゃない? そこはどう考えている?

S:野菜がタダでできる時代になったらタダで配るかなぁ。そのぐらいの感じ。やっぱり作る時間があって、作る人がいて、そこに時間がかかっている以上は物々交換をしなきゃいけないというか。野菜も曲もオートマティックになって、なんでもかんでもタダになって、食材も送られてくるようになったら、僕の音楽もタダでいいです。

■世のなかの動きはそれとは真逆へ行っているじゃない?

S:そうですよね(笑)。そうかー、ファイル交換か。でも交換は悪いことではないし。

■音楽産業は遅れているように見える?

S:それよりも、音楽というものを、あまりにも聴くものにし過ぎたというか。例えばUSJにタダで行かないじゃないですか? 音楽を聴くという行為がエンターテイメントとして成立できる土壌を作らなかったことは、業界としては悪かったと思いつつも、いまだにそこをきっちりやっている人もいるし。

■昔の音楽が好きだっていうけど、お父さん世代の音楽の消費のされ方といまは違うよね。フィジカルがないとか、アルバム単位では聴かないとか、そうしたことへの喪失感ってある?

S:喪失感よりも、機会が増えているだけなので、マイナスのものは僕らにとってひとつもないですよ。iTunesがない世界もアーティストとしては作れるじゃないですか? iTunesで働いている人は無理だけど、アーティストはiTunesで働いているわけじゃないから、iTunesがない世界も作れるわけじゃないですか? だからレコード会社がなくなろうが、マネージメント会社がなくなろうが、僕たちはギターが1本あって駅前で歌えばミュージシャンになれるので、……とは言いつつ、難しいですけどね。音楽業界の人たちも音楽が好きな人たちだから、全員で考えなきゃいけない問題ではあるんですよね。そこはちょっと最近大人になって言い切らないようになったんですよね(笑)。

■まわりの友だちとかはCDを買う?

S:買っているやつはいますよ。買うというのも体験と一緒で、僕がお茶会やるのも、原宿の女の子がわざわざパンケーキを食べにいくのと、あんまり変わらないことなので。音楽を聴くという体験にまで持っていければ、問題はないのかなと思います。

■お茶会って、どういう人たちが来るんですか?

S:おじいちゃんとかおばあちゃんですね(笑)。

■だよね(笑)。……ちなみに2年間でライヴをやった本数はざっくりどのくらいなの?

S:月に6本くらいやっていたと思います。

■すごいね。そういうもののフィードバックっていうものが、逆説的に今回の作品になったのかぁ……

S:けっこうそうですね。ライヴはライヴでめちゃくちゃ楽しくって、新しい出会いも増えるし。最近、クラブの店長と同い年ぐらいになってきたんですよね。これって大事なことじゃないですか。理解者が増えるほど理解が広まるから、上の世代と状況は変わらなくなるというか(笑)。

■DJをやろうとは思わないの?

S:たまにやるんですけど、そんなに好きじゃないですね。でも、DJって自分が知らない曲もかけられるじゃないですか? あれはすごいですよね(笑)。これからはDJ的な立ち位置の子が増えてほしいですね。なんでかというと、作るということもそうなんですけど、キュレーション能力もどんどん問われていくと思うからです。オーガナイザーもキュレーターみたいなところがあるじゃないですか? DJでもそっちの立ち位置へいく人が増えるのかなと思って。

■イベント全体を考えるってこと?

S:それもそうだし、あのアーティストとあのアーティストが一緒にやったらいいのになっていうのものの間を取り持つ役割をDJが担って、そこで完成したエクスクルーシヴを自分のセットで流すとか。そういうことができれば面白いかな。

■欧米をツアーしてどこが面白かった?

S:アメリカが面白かったですね。とくにフライング・ロータスの後にやったときがいちばん震えましたね。フライング・ロータスが僕のことを紹介してくれて、そっからライヴやったんですけど、けっこう盛り上がって。

■受け入れられたと?

S:はい。

■やっぱオープンマインドなんだね。

S:意外とロンドンは今一でしたね。〈PC Music〉系のイベントだったこともあったと思うんですけど。

■セイホー君の場合は、見た目では、そっちのほうに解釈されても不思議じゃないし(笑)。

S:まったくそうで、アメリカでもインターネット/ギーク系のオタクが集まるようなイベントにも呼ばれましたね。

■そういうときはどうなの?

S:日本と同じですよ。

■それはそうだよね(笑)。

取材:野田努(2016年5月16日)

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