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interview with Seiho

interview with Seiho

ピクセルを切り裂いて

──セイホー、インタヴュー

取材:野田努    photos:小原泰広   May 16,2016 UP

Seiho
Collapse

Leaving Records/ビート

ExperimentalEletronicadowntempo

Amazon

 世界の終わりには広告だけが残る。単位はピクセル、資本主義に食い尽くされた世界。エレヴェーターから景色を見る。高解像の過去と低解像度の未来。抵抗することはできない。感覚は麻痺しているが、ただクリックするだけでいい。なんてドリーミーな、このヴァーチュアルな広場……よそよそしいほどの無人のビル……
 たとえばこのように、我々の生活を浸食する仮想現実空間の、一見ノーマルな、その異様さ、その不穏さを捉えようとした音楽が2011年から2012年にかけて台頭した。OPNの『レプリカ』もハイプ・ウィリアムスもジャム・シティも、ファティマ・アル・カディリも、そしてヴェイパーウェイヴも、時代への敏感なリアクションだった。それはテクノとは呼べない。もちろんハウスでもエレクトロニカでもない。なにしろそれは感情を記述しないし、心地良い電子的音響でもない。視覚的な音楽という点では、アンビエントに近いかもしれないが……。
 日本にもこうした感覚の音楽がある。仮想現実のなかの薄暗いアンダーグラウンドに散らかっている音楽、テクノロジーに魅惑されながら同時に抵抗している音楽。セイホーのライヴにはそれを感じる。ピクセルの空間を切り裂くような感覚。彼の最新作『コラプス』にもそれは引き継がれている。

野菜も曲もオートマティックになって、なんでもかんでもタダになって、食材も送られてくるようになったら、僕の音楽もタダでいいです。

今作は本当に力作で、素晴らしいアルバムだと思うんですけど、ダンサブルな前作とはだいぶ印象が違う作品になりましたね。ジャズを粉々にカットアップしたはじまりも面白かったんですが、2曲目のパーカッシヴな展開もスリリングで、いっきにアルバムに引き込まれていきました。

セイホー(以下、S):ありがとうございます。この作品を作ったのが2014年から2015年なんですよ。前のアルバムが出たのが2013年。「I Feel Rave」が出て、『Abstraktsex』が出て、それから2年くらい止まったんですよね。ブレーキがかかっていたというか、エンジンがかからなかったというか。でもライヴは続いてました。

ここ数年は東京のクラブの月間スケジュール表を見ると10回くらいセイホーの名前が出てたんじゃない(笑)?

S:はははは(笑)。逆に言えばライヴに逃げていたというか。そうしないと制作モードに全然なれなくて。そのときに作っていた曲がこのアルバムの中核になるものですね。ライヴでは派手なことをやっていたんですが。

エンターテイメントもしていたしね。

S:だから途中からそこの折り合いがつかなくなってしまって。作品自体はこういうものがずっと作りたかったんですけど。

作っているときはどんな感じで作っているの? ライヴのような激しく動きながら作っているわけじゃないでしょ?

S:僕って作品を作るときとか……、たぶん人間性が変なんですよね。それをどう一般の人にわかってもらえるように折り合いをつけるかみたいな生き方をしてきたので。幼稚園のときも小学校のときも、自分の変なところをどうキャッチーに見せるかを考えていました。僕はあんまり普通にしようという気はあんまりなくて、変なところをどんどん包括してキャッチーにしていけば輪の中に入れるみたいな。

あのキャッチーさの裏にはそんな屈折した自意識があったんですね(笑)。

S:でも2010年に〈Day Tripper Records〉をはじめたときから2015年までのいろんな目標を立てていたんですよ。どんなフェスに出たいか、どんな作品を作りたいか、みたいな。でもそれが意外にも2013年くらいに全部かなってしまって。

なんとも、控え目なヴィジョンだったんだね(笑)。

S:はは、ほんまそうですね(笑)。

もっとでっかい夢があるでしょう!

S:いやいや(笑)。レーベル・メイト全員でフェスに出るのもソナーでかなったし、フジロック、サマソニに出るのも2013年で実現したし。だからこの2年間は目標がなく進んでいた惰性の期間でしたね。でもこのアルバムを作ってみて、そういう状態だったのは自分だけじゃなかったと気づいたというか。

世代的に共有する意識があったと?

S:「去年どんなアルバムがよかった?」と話したときに、みんな2013年の12月に出たものを挙げたことがあって。それはつまりみんな2年くらい新譜を聴いていないってことかと(笑)。それから同じ世代の間で空気がボヤッとして止まっているように思えたところがありました。

その空気の止まった感じというのは面白いね。あの頃セイホー君がやっていたことは、強いて言えば、海外の〈Lucky Me〉が一番近かったよね?

S:近かったですね。

シーンの動きが止まって感じてしまったのって、たとえばどんな場面でそれを感じたの?

S:SoundCloudやBandcampが遊び場として利用できていたのが、そうじゃなくなってきたというか。twitterの発言もそれはまではラフだったのに、厳密でなければいけないというか、アーティストとしてどう見られているかが大きくなってきたり……。

かつてあったアナーキーさがどんどん制限させれていった?

S:経験は、1回しかできないじゃないですか。インターネットを介してみんなが繋がっていく高揚感って、たぶん1回しか経験できないんですよ。たとえばUstreamがはじまったとき、クリスマスに岡田さんがDJをして一気に(SNSを介して)注目されたときとか、やっぱすごい高揚感があったんですね。ぼくのように大阪でレーベルをはじめた人間に、東京のクラブからオファーがきたりとか。SNSを通して音楽が広がるのをダイレクトに経験できた時期が2010年以降にあったんです。でもいまtwitterでライヴをオファーされても、もはやそんなの当たり前の話ですからね。この間アメリカ・ツアーに行ったんですけど、「いつもfacebookを見てるよ」って言われたんですけど、そういうことが物珍しく感じられなくなったというか。それが2010年だったら、すごい新鮮に思えたのかもしれないんですけど。

先日、京都のTOYOMUというビートメイカーがBandcampに上げた作品が世界的にどえらいことになったばかりで、インターネットにまだポテンシャルはあると思うけどね。俺はセイホー君のライヴを見て、「新しいな」って思ったんですけど、それが惰性でやっているようには見えなかったんだけどさ(笑)。まだ大阪からやってきたばかりのパワーが、そのときはみなぎっていたんだろうね。

S:いまもライヴをするモチヴェーションが下がったわけではないです。でも、折り合いをつけるために、パワーを使っていたというか。どこの馬の骨かわからん若者を、どうしたら見てもらえるかを考えるじゃないですか? でもその環境がある程度でき上がったときに、それと同じパワーを使えなくなったというか。

俺はあの路線でもう1枚作ってほしかったけどね。

S:でもそういうことなんですよね。逆に言うと、あの路線で作らなくなったのも、たぶん何かがスタートしているからなんです。2015年の11月くらいに、僕のなかの2016年がはじまっている(笑)。2020年までの目標がそのときにできたんですよ。オリンピックをどうするか、みたいなところまで(笑)。

なんだ、それは(笑)。

S:はははは。そこから折り合いをつけていけば、いままでの作品はまた作れるから、今作は種まきから収穫が終わったあとの冬の時期なんですよね。でも冬の時期も悪くはなかったな、みたいな。

取材:野田努(2016年5月16日)

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