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interview with The Lemon Twigs

ロック/ポップスの素晴らしき忘れ物

──ザ・レモン・ツイッグス、インタヴュー

interview with The Lemon Twigs

質問・序文:柴崎祐二 Yuji Shibasaki    通訳:青木絵美 Emi Aoki
photo by Eva Chambers
May 08,2026 UP

 2016年のデビュー時、紛れもない「アンファン・テリブル」として不敵なオーラを放っていたブライアンとマイケルのダダリオ兄弟は、作を重ねるごとにその才能を磨き上げながら、徐々に「大人」としての成熟を身に着けてきたように見える。だがそれは、普通の意味での「成熟」≒カドが取れて丸くなっていく、みたいな意味とはどこかが違っているようにも思える。
 若いときから、既に歴史化の途に就いて久しい(文字通りの)ダッド・ロック的表現形態に与してきた彼らは、ある意味でははじめから老成していたのだともいえる。ロックが若者の音楽でなくなった時代において、紛れもない若者としてロックを演ること。ザ・レモン・ツイッグスの10年とは、そうした入れ子状の構造の中において、ひらすら――ある意味ではそうと意識するまでもない自明な課題として――上質なソングライティングとアンサンブル構築を追求することで、どのようにして内側からその構造を食い破ることができるのかという問いに答え続ける年月であったようにも見える。だが、その一方で、そうした構造の中で素直に遊んでしまえるのも彼らなのだ。そして、その遊び方があんまりにもアイデア豊かで鮮やかだものだから、私たちは常に胸のすくような気持ちを覚えてきたのだった。
 要するに彼らは、デビュー時から既にして反時代的だった自らの志向性を、時代の推移の中で研ぎ澄ませることで、結果としてその反時代性の実践こそが逆転的にコンテンポラリーな表現倫理たりうることを、ここに至って自らの手で浮かび上がらせたのだといえるかもしれない。更に言えば、ひょっとするとこのレトロトピア時代においてロックを(「実存」に密着した表現として)遂行するには、彼らのような方法以外にないのかもしれない(反対からみれば、仮に現在において進歩主義的なロックを素朴に標榜するのだとしたら、それこそがあまりにもお目出度い、アナクロニスティックな行為なのではないか?)。
 ロック(あるいはロックンロール)という音楽が、その始原の時点から(進歩主義的な装いをしておきながらも)実のところ反時代的な逸脱性を体現していたことを思い出してみれば、1960年代〜1970年代ロックの黄金の記憶から自らの飲み水を汲み出し続ける彼らの反時代的態度は、かつてのセックス・ピストルズやラモーンズがそうだったのと同じ程度に、ある種の捻じれを奥深くに内在しているのだともいえる。

 〈Captured Tracks〉に移籍してからの三作目となる本作『Look for Your Mind!』は、そんな彼らの危うくも美しい実践の軌跡が、再び「バンド」らしさとともに結晶化されているという意味で、是非とも傾聴すべきアルバムだといえる。個人的には、デビュー盤以来の爽快感を味わうことができた。そう、爽快なのだ。経験(年齢)を重ねてなお一層爽やかで軽やかにになるということがいかに成し難いことかを日々芯から実感せざるを得ないこの時代において、彼らが成し遂げたことは、稀有である以上に、なんらかの指針にすらなりうるのではないか。ヤンガー・ザン・イエスタデイ。いまやそれは、彼らのような反時代的な連中だけが嘯くことのできるテーゼなのかもしれない。それを成熟と呼ぶなら、成熟するのも結構楽しそうだと思う――などと、一足先に中年になった元ロック少年の私などは愚考するのである。
 だからそうか、「Look for Your Mind!」って、オレに向けて言ってくれているのね。おみそれしました&ありがとう。君らが楽しそうにロックを演り続けてくれることで、救われている連中が、ここにも、あそこにも、思いの外沢山いますヨ。

出発点がギターなんだと思う。だから日常の一部でもあるし、ツアー中でもいちばんよく触れている楽器だしね。もしギターに触れられなかったら、たぶん本当に困ると思う。(ブライアン)
ギターは人生だ。うーん、わかんないけど。(マイケル)

今年で早くもデビューから10年という節目を迎えますが、あっと言う間という感じでしょうか? それとも、ようやくここまでたどり着いたという感覚ですか?

ブライアン(以下、B):どうだろう。正直なところ、本当にちょうど10年って感じがする。ね、マイケル? あっという間だったっていう感じは、あまりないんだよね。むしろ、アルバムを出すごとに、少しずつ、ほんの少しずつ聴いてくれる人が増えていった。そういうすごく緩やかな積み重ねだったっていう感覚かな。

マイケル(以下、M):そうだね。なんていうか、いくつかの「章」がある感じかも。メンバーも何度も変わってきたし。いまのバンドと初期のバンドって、それぞれで区切られてるというか。だから、ずっと同じバンドだったっていう感覚でもないんだよね。だから一概には言えないけど。10年っていうのも……まあでも、ブライアンとは26年とか27年一緒にいるわけだからね。

いままでのキャリアを振り返ってみて、特に思い出深いターニングポイントがあるとしたらいつですか?

B:僕らは昔からレコーディングが好きだったし、人前で演奏する機会もずっと楽しんできたんだ。ライヴで演奏できるっていうこと自体、素晴らしいことだと思ってたしね。でも、ライヴを本当に心から楽しめるようになったのは、いまのメンバーになった3年くらい前からだと思う。ダニー(筆者注:現在のツアー・メンバーのダニー・アヤラ)とは、レコードを出し始めた10年くらい前から一緒にやっていて、その前にも別のバンドで少し一緒にやってたんだけど、そこにいまのドラマーのレザ(筆者注:同じくツアー・メンバーのレザ・マティン)が加わって、このメンバーが揃ったときに、一緒にライヴで演奏することが楽しめるようになってきたな、って感じたんだ。バンドの雰囲気も良かったし、ツアーを回るのもすごくいい感覚で。単純に、人の組み合わせがすごく良かったんだと思う。それで、ツアーに出ること自体も本当に楽しくなった、その感じは新しい曲にも少し出てる気がする。ライヴをやってからスタジオに戻ると、明らかにエネルギーが違うから。

〈Captured Tracks〉移籍後の作品を改めてきくと、グンとサウンドのクオリティが上がったように感じます。今作はそうした流れの集大成のような内容に感じるのですが、改めて、この5〜6年ほどで創作のモードが変わった感覚はありますか?

M:当時はブライアンと僕で距離ができてしまっていたというか、曲の作り方とかスタイルがだんだんバラバラになっていってたんだ。それで、〈Captured Tracks〉で最初に出した作品のとき――まだどのレーベルから出るかも決まってなかった段階だったけど――意識的にもう一度団結して、ちゃんとひとつの作品として成立するアルバムを作ろう、できる限りベストなものを作ろう、っていう方向に切り替えたんだ。それまでは、ただずっとアルバムを作り続けてきただけっていうか……若い頃にレーベル契約をもらって、その流れで半ば無意識に作ってたところがあったと思う。でも契約が終わって、「これはちゃんと良いものを作らないと次の契約につながらない」っていう状況になって、そこで初めて全部をちゃんと考えてやるようになった、っていう感じかな。

B:アルバムに何を入れるかとか、僕らそれぞれのソングライティングのスタイルをどうやってひとつに繋げるか、そういうことを前よりずっと意識的に考えるようになったんだ。それが大きな違いだったと思う。それと同時に、「自分たちが納得できないものは出さないようにしよう」って決めたんだよね。それまでは「自分たちで作ったものなんだから、どうせ後で聴きたいとは思わないだろう」みたいな前提がどこかにあって。アーティストって、自分の作品をどこかでは好きじゃないものなんだろう、って勝手に思ってたんだ。でもいまは違う。いまは、自分たちが出すものは全部、自分たちでちゃんと好きでいられるべきだと思ってる。

青木:なるほど、面白いですね。自分の作品をあまり聴き返さないアーティストもいますけど、いまはそういうタイプではなくなってきた、ということですよね。

M:まあ……よくわかんないけど。でも、自分が「こういうのを聴きたい」と思うものとか、「まだ世の中にない」と感じるものを作るべきだとは思うんだよね。それがいちばん自然だと思うし。もちろん、自分の作品ばかり聴いていたら飽きてくる、みたいなのはあると思うけど。でもさ、いま作ったばかりのものに対して、恥ずかしいとか嫌だとか思う必要はないと思う。それはちょっとおかしいと思う。

昨年のブライアンのソロ作制作の経験は、バンドとしての新作である今作に何か影響を与えましたか?

M:そうだね。後回しになっていた曲をある程度出し切って、そこから新しくスタートできた、という意味では影響はあったと思う。とはいえ、いちばん大きかったのは、ライヴでやっていて楽しいかどうかとか、スタジオで純粋にやっていて楽しいかどうか、そういう部分だったかな。今回はライヴのメンバーも何人かレコーディングに参加していて、それがブライアンと僕のコミュニケーションにもいい影響を与えたし、全体的な高揚感みたいなものにもつながったと思う。

B:僕にとっては、新しくリセットしてアルバムを作れたのはすごく大きかった。前の2作では、何年も前に書いた曲が少なくとも3曲か4曲は入っていたんだよ。それも、自分たちとしては、まあまあ満足している曲だと思っていたから出したんだけど、正直そこまでワクワクするものではなかった。でも今回は、すべて同じセッションの中で録音した素材で構成されていて、それぞれがちゃんとひとつのまとまりとしての感触を持っている。こういう作り方をここまで徹底したのは、たぶん今回が初めてに近いと思う。いつもはどうしても余った曲が出てくるからね。

前作に比べると、1968年後半的なサウンドから、シングル「I Just Can't Get Over Losing You」のジャケットやサウンドにあらわれているように、どちらかといえば1960年代半ば頃のギター主体のビート・バンドやジャングリーなフォーク・ロック的サウンドに寄ってきているように感じました。今作のサウンド上のコンセプトを教えてください。

M:前作に比べると、今回はもう少し削ぎ落とされた感じはあると思う。でも、そのベースになるロック・バンド的な形から外れている曲もいくつかあるよ。

B:とはいえ、どの曲も基本的には、バンドで一緒に演奏するっていう感覚を土台にしてる。たとえば “Gather Round” や “Joy” みたいな、よりオーケストラ的な曲でも、ストリングスはまとめて同時に演奏してもらっているし、クラリネットやフルートも同じ部屋で一緒に演奏しているんだ。もちろん後からオーバーダブして厚みを出したりはしているけど、それでも根本にはミュージシャン同士がその場でやり取りしている感覚がある。前作は基本的に全部オーバーダブで、マイケルと僕がひたすらレイヤーを重ねていって、楽器にもいろいろ人工的な処理を加えてサウンドを作っていたんだけど、今回は全体としてもっとナチュラルな音になっているし、いろんなプレイヤーのグループが実際に一緒に演奏している、そういう感触に近いと思う。

いきなりですが、おふたりにとって、ずばりギターとはどんな存在ですか?

B:うーん、そうだね……なんていうか、僕らにとって最初の……いや、マイケルにとっては最初の楽器ではないか。でもまあ、最初の「手段」というか、曲の作り方を覚えた入り口ではあるよね。僕らがどうやって曲を書くかっていう、その出発点がギターなんだと思う。だから日常の一部でもあるし、ツアー中でもいちばんよく触れている楽器だしね。もしギターに触れられなかったら、たぶん本当に困ると思う。それに単純に音が好きなんだよ。自分たちが感情的に強く共鳴する音楽のほとんどは、やっぱりギターが核になっているから。だから……うん、そういう存在かな。

M:ギターは人生だ(=Guitar is life)。うーん、わかんないけど。弾くのも好きだし、聴くのも好きだし……うん、なんだろうね。難しい質問だな。ほんとにわかんない。ブライアンがいっぱい話しちゃったし、もう言うことないよ。

質問・序文:柴崎祐二 Yuji Shibasaki(2026年5月08日)

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Profile

柴崎祐二/Yuji Shibasaki柴崎祐二/Yuji Shibasaki
1983年、埼玉県生まれ。2006年よりレコード業界にてプロモーションや制作に携わり、これまでに、シャムキャッツ、森は生きている、トクマルシューゴ、OGRE YOU ASSHOLE、寺尾紗穂など多くのアーティストのA&Rディレクターを務める。現在は音楽を中心にフリーライターとしても活動中。

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