「IO」と一致するもの

消費税廃止は本当に可能なのか? (4) - ele-king

財政のために人々がいるのではなく、人々のために財政がある。

 本シリーズの第三回目では、政府や銀行はその支出に際し財源は必要ない、ただ金額を記帳するだけでお金が生まれるとする概念「スペンディング・ファースト(最初に支出ありき)」や「万年筆マネー(Key Stroke Money)」のことをお伝えした。

 このことは政府や中銀、市中銀行の会計を調査することによって明かになった経緯がある。関西学院大学の朴勝俊教授がランダル・レイ教授の著作「Modern Money Theory」の会計的側面に関する要点( https://rosemark.jp/2019/05/07/01mmt/ )をまとめてくれている。バランスシートを解読することはなかなか難しいかもしれないが、それによると資産と負債が常にイコールになっていることや、政府がただ支出することによって民間に預金が生まれていることがわかる。

出典:MMTとは何か —— L. Randall WrayのModern Money Theoryの要点:関西学院教授・朴勝俊

 「誰かの負債は誰かの資産」だ。例えば上図からは民間銀行の資産「⑩中央銀行券」は中央銀行の負債「⑩中央銀行券」に対応していて、そこからは私たちが普段使っている日本銀行券(通貨)は、もともとは日銀の負債だったこともわかる。

 信じられないかもしれないが、これは事実だ。主流経済学は「貨幣がどこでどうやって作られるか」に注目してこなかった貨幣ヴェール論のままにマクロ経済を論じてきた。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授はMMTにも好意を示しているが、ランダル・レイ教授が以下のように批判している。高名な経済学者でさえ理解していなかったのだから、多くの人が知らなくても無理はない。

「彼は『お金が無から生まれるだって?』『政府の資金は尽きないのか?』といった問いを止められない。彼は”お金”が貸方と借方へのキーストロークの記録であることを全く理解していない。いまだに銀行が預金を取り込み、それらを政府に貸していると考えているんだ」
出典:New Economic Perspectives

 さて、財務省のプロパガンダを信じておられる方は「それでも政府債務である国債が1100兆円にも膨れ上がっているのだから、早く返さなければいけないのだ!」とツッコミを入れるかもしれないが、その点もとくに心配はいらない。

 MMTの視点では、政府支出後に発行された国債は金融市場を介して中銀の発行する準備預金と両替されるだけであり、また「政府の赤字は民間の黒字」「政府の債務は民間の資産」だと認識しているため、国債発行残高(累積債務)はただ単に貨幣発行額を記したものに過ぎないとされる。逆に国債を償還するということは世の中にある通貨を消滅させるということになるので、とくに減らす必要もない。

 その他のポストケインジアンらの視点では、中銀に買い取られた既発国債は借換を繰り返し消化され、またその中銀保有国債に満期が到来した時は、日本の場合は特別会計の国債整理基金とのやりとりを介して公債金という名の現金として財源化、国庫に納付されるだけとなる。国債償還費の殆どは日本政府の子会社である日銀が払っているし、本来は税金で償還する必要さえないのだ。
(参考:政府債務の償還と財源の通貨発行権(借換債と交付債)について -富山大学名誉教授・桂木健次


出典:政府債務の償還と財源の通貨発行権(借換債と交付債)について ポストマルクス研究会報告 -富山大学名誉教授・桂木健次

 桂木教授本人は「私は覗き見ポストケインジアンのポストマルクス派」と自称されているが、経済学も時代と共に進化するので、一つの学派に限らずいろんな研究成果を取り入れるということだろう。財務省の皆さんにも、ぜひ時代遅れとなった新古典派から脱却し、情報をアップデートしてほしいものだ。

 上記のような国債会計処理の事実があることを知ってか知らずか、--知っていてやってるとしたら悪質極まりない背信行為であるが-- 政府がどケチで、その債務ヒエラルキー下部に属する民間銀行や民間企業もどケチなため、実体市場に貸し借りが生まれない。貸し借りが生まれないということは、債務証書たる通貨も創造されえないということだ。

 通貨がこの世に生まれないから、人々は通貨を手に入れる機会を失い、消費もしなければ投資もしない。繰り返しとなるが「誰かの消費は誰かの所得」だ。誰かが消費しなければ他の誰かの所得が増えるはずもなく、経済は縮小していくのみとなる。

 政府が通貨を創造し、実体市場に供給しなければ、民間はただただ限られたパイ(通貨)を奪い合う弱肉強食の資本主義ゲームに没頭せざるを得なくなるという寸法だ。更には、この実体市場に通貨が足りない状況に加えて、市場から通貨を引き上げる消費増税まで幾度も強行されてきた。

 このような狂ったことを20年間やり続けたことによって、この国の需要は損なわれ、あらゆる産業は衰退した。その結果、台風被害に対する治水などの防災体制や、復旧のための供給能力は毀損された。停電が長引いたことによる二次災害となる熱中症で亡くなる人まで出す有り様になってしまったのだ。被害にあわれた方たちのことを思うと強い憤りを感じずにはいられない。

 そう、まさに「Austerity is Murder(緊縮財政は人を殺す)」だ。

 筆者の目には、この状況は「欲しがりません、勝つまでは」と言いながら、兵站を削りインパールに向かった大日本帝国軍の行軍そのものに見える。

 ケルトン教授は来日時に、「大企業や富裕層らの既得権益を代表する一部の共和党議員は、ほかの国会議員にMMTのロジックが知られてはまずいと思っているからこそ、MMTを危険だとする非難決議を国会に提出した。MMTを理解した政治家によって大多数の国民が助かる政策にお金が使われてしまうことを恐れたからだ。これは逆に、彼らが、政府の赤字支出が誰かの黒字になることを知っている証拠ともなる」ということを語っていた( https://www.youtube.com/watch?v=6NeYsOQWLZk )が、MMTや反緊縮のロジックが知られるとよほど都合の悪い勢力がいるということだ。

 エスタブリッシュメントは、自身らの草刈り場である金融市場にお金を流すことで利益を得ようとしているため、財政政策を介して実体市場にお金が供給されることで、金融市場における自らの利益が減ることを防ごうとしているのだろう。実際にはそんなトレードオフが起こるとも限らないのだが。


 先月、日経新聞が「消費増税に節約で勝つ 日常生活品にこそ削る余地あり」と題した記事で、”買わないチャレンジ”として、「何カ月かすると、それまでは当然のように思っていた物欲が、ほとんど強迫観念のようなものだったことに気がつきました」「日常生活費を削減するため、まずは買わない生活を」といったことを書いていた。

 日経新聞も、本シリーズ冒頭で触れた経団連や経済同友会などと同様に「家計簿脳」まる出しである。このような記事を重ねることで国民の消費活動を抑制させれば、日本経済を破滅に導くことになりかねない。日経新聞が訴えるべきは政府にもっと各所に財政支出をしろ、減税しろということではないか。筆者には何かしらの意図があるように思えてならない。

 日本国内ではこのように気の滅入る論説ばかりが目につくが、海の向こうでは一つの兆しも生まれた。先日、欧州中央銀行のドラギ総裁が、「ECBと各国政府は、金融政策ではなく財政政策に力を入れるべきで、MMTやヘリマネのようなアイデアにもオープンになるべきだ」と発したのだ。

 ドラギ氏は、加えて「ECBが国債を直受け(財政ファイナンス)し、消費者に直接届ける」という向きでも発している。この一連の発言が、どこまで具体性を帯びた政策を想定しているのかはわからないが、各国政府に財政出動を勧めたうえで、ECBは最後の貸し手(Lender of Last Resort「LLR」)役以上の役も担うということなのかもしれない。富を吸い尽くすドラギラ伯爵とも揶揄された彼の、任期満了直前の置き土産といったところか。

 この手の「金融緩和は役割を終えた。財政出動が有効だ」とする論はドラギ氏だけではなく、ポール・クルーグマンをはじめ、IMFチーフエコノミストでMIT名誉教授のオリビエ・ブランシャールや、元ハーバード大学学長で元世界銀行チーフエコノミストのローレンス・サマーズらも同様の発言を重ねているほか、実際にドイツ政府は、景気後退への対応策として国民経済の需要を押し上げるために巨額の財政出動を準備していると伝えられている。

 また、先日開かれたG20では、主要国からは「金融政策頼み」をやめ、財政政策にシフトすべきだとの声も上がっている。IMFのゲオルギエワ専務理事は「金融政策だけでは役に立たない」とも主張していた。

 MMTer達は、この「役割を終えた説」よりもっとラディカルな「金融緩和無効論」を早くから論じてきている。ランダル・レイ教授は「中央銀行家は財政政策をどうすることもできない。彼らは、配られた唯一の手札、つまり金融政策でしかプレイできないが、その手札はバランスシート不況においては無力(インポ)である。回しているそのハンドルは経済に繋がっていなかった」と「MMT 現代貨幣理論入門(p473)」に綴っている。

 MMTが注目される背景には「金融緩和策は資産価格を上昇させ、富裕層だけに恩恵を与えた」という不信感もあるのだが、いずれにしても、上述したように、MMTerと同じような発言が、欧米の超大物エコノミスト達からも発せられているのだから、エスタブリッシュメントの庇護者である自民党や財務省、経団連も無視できないのではないだろうか。


 日本では、山本太郎氏の影響もあってか、共産党のみならず国民民主の小沢一郎議員原口一博議員、立憲の川内博史議員ら野党大物議員からも消費税減税ないし積極財政の声が聞こえつつある。加えて、山本太郎氏や松尾匡教授らとマレーシア視察に行った立憲若手の中谷一馬議員は、「MMT(現代貨幣理論)に関する質問主意書」と題した見事な質問書を衆議院に提出している。

出典:衆議院・第200回国会 中谷一馬議員 質問主意書

この質問書と、対する政府答弁に関しては、11月4日と5日に来日講演を予定しているMMT創始者の一人のビル・ミッチェル教授(ニューキャッスル大学)も呼応している。我々一般国民は、野党の議員たちにも声を届けつつ、議論の輪を拡大し、大いに期待して待てば未来は明るいと感じさせてくれる。

 消費税廃止は可能だ。わが国の財政にも心配はない。無意味な心配をし、出し惜しみをすることで余計に状況が悪化することを、わが国は20年かけて証明してきたじゃないか。

 「財政のために人々がいるのではなく、人々のために財政がある」とは、松尾匡・立命館大学教授の言だ。政府財政を均衡させることに意味はない。むしろ財政黒字化のために、徴税で人々のポケットからお金を奪うことは国力の衰退につながる。政府は人々にもっとお金を支出し、経済活動を活発化させることで、生産力を維持し、人々を幸せにしなければならないのだ。

 本稿のような情報に初めて触れられた方もおられるだろう。経済学初学者でミュージシャンである筆者の下手くそな理論解説にもどかしい思いをされたであろうことをお詫びしたい。

 と同時に、たとえば以下のような発言をみたとき、少なからず違和感を覚えていただけたら幸いである。こういう発言こそが、経済学でいう「合成の誤謬」と呼ばれるひとつの勘違いであり、この国を衰退させる考えだからだ。

 ユニクロ・柳井正氏「このままでは日本は滅びる。まずは国の歳出を半分にして、公務員などの人員数も半分にする。それを2年間で実行するぐらいの荒療治をしないと。今の延長線上では、この国は滅びます

interview with Adrian Sherwood - ele-king

 トロトロに様々な具材が溶け合った濃厚なスープのようなアルバム『Heavy Rain』。リーの軽快なヴォーカルを温かなルーツ・リディムで彩った『Rainford』に対して、サイケデリックで混沌としたコラージュ感と重心の低いリズム・トラックは〈ブラックアーク〉末期を彷彿とさせる。しかし、本作『Heavy Rain』は単なる“ダブ・アルバム”と呼ぶにはいささか不思議な体制のアルバムになっている。そう、リー・スクラッチ・ペリーの最新作『Heavy Rain』は不思議なアルバムだ。いわゆるダブ・アルバム──アルバムの頭からお尻まで全ての曲を単にエイドリアン・シャーウッドがダブ・ミックスしたヴァージョン集ではない。もちろん続編やアウトテイク集でもない。そのオリジナルとも言える『Rainford』に収録されている楽曲のダブ・ミックスも収録されているが、今回はじめて登場するリディム・トラックの楽曲も収録されている。また単にトラックだけでなく、新たなアーティストも参加している。まず、リーのダブワイズされたヴォーカルが行き交うなか、ヘヴィなリディムをベースに、トロンボーン特有のゆったりとした心地よい熱風のような旋律が流れてくる。その主は、ヴィン・ゴードン──レゲエ・ファンにはおなじみの伝説的トロンボニスト──1960年代末からポスト・ドン・ドラモンド(実際にドン・ドラモンド・ジュニアと名乗っていたこともある)としてジャマイカの音楽シーンにて大量に名演を残しているレジェンドが参加している。インストに管楽器奏者やキーボーディストが新たな旋律を加えることはジャマイカ・ミュージックの常套手段でもあるが……おっと忘れてはいけない、なにより本作の大きなトピックとなっているのはブライアン・イーノの参加だ。『Rainford』の先行シングル・カット曲とも言える“Makumba Rock”のクレイジーで強烈なイーノとエイドリアンによるダブ・ヴァージョン、すでに『Heavy Rain』に先駆けて先行公開されている“Here Come The Warm Dreads”(イーノが自身の『Here Come The Warm Jets』をもじったものだとすれば、往年の〈ON-U〉ファンにはアフリカン・ヘッド・チャージの『My Life In A Hole In The Ground』がニヤリと頭に浮かぶだろう)。本作はある種リー・スクラッチ・ペリーのヴォーカル・アルバム『Rainford』を、その存在そのものをダブで拡張してみせた、そんなアルバムだ。

新しい人と一緒にやって新たなアイデアを取り入れる必要があるんだ。1975年ではなく2020年におけるリー・スクラッチ・ペリーらしいレコードを作ろうとしたわけだ。

今回の『Heavy Rain』は、いわゆるオリジナルの『Rainford』をもとにした純然なスタイルのダブ・アルバムではありませんよね?

エイドリアン・シャーウッド(Adrian Sherwood、以下AS):確かにね。でも、だって同じもの、同じもの、同じ、同じ、同じ……ってやっててもなにも進歩がないだろう? 今回のレコードにはヴィン・ゴードンをはじめとする素晴らしいアーティスト、さらにブライアン・イーノも参加している。俺やリーはダブのはじまりからずっとやってきたけど、まだ新しい人と一緒にやって新たなアイデアを取り入れる必要があるんだ。そして1975年ではなく2020年におけるリー・スクラッチ・ペリーらしいレコードを作ろうとしたわけだ。実際すごく新鮮でエキサイティングなレコードになったと思うね。

リーをメインに添えた『Rainford』とも違ったものになっていると思いますが、アルバムのサウンド・コンセプトなどはあったんでしょうか?

AS:まず『Rainford』のコンセプトはリーの極私的なレコードを作るというものだった。リーが自らのライフ・ストーリーをその歌で語りつつ自分自身について明かしていくというね。実際とても親密で素晴らしいレコードになったと思う。対して『Heavy Rain』だけど、これは他のプロモーションのインタヴューでも話したことなんだけど、あえてリーの過去の傑作にたとえるならば『Super Ape』なんだ。これはダブの発展系であり、いろんなフレーバーが楽しめるものになっているんだよ。それに『Rainford』はあの形で完璧な作品だと思ったから、一緒にレコーディングした楽曲で、残念ながら入れられなかった曲がいくつかあった。でもクオリティ的には収録曲と何ら遜色のない素晴らしい曲たちだったから、それを『Heavy Rain』に入れたんだ。だから『Rainford』が好きなファンは絶対『Heavy Rain』も気に入ると思う。

『Rainford』に対して『Heavy Rain』というタイトルがつけられています、これはどこからもたらされたのでしょうか? よくあるダブ・アルバムっぽい、ヘヴィなサウンドとオリジナルのタイトルをもじったものだと思うけど。

AS:そこには明らかに二重の意味があって、まずひとつは、そのアルバムのヘヴィなベースラインを示唆している。そしてもうひとつは字義通りの「空から降ってくる激しい雨」という意味だけど、それは、このレコードが喚起するものすべてを表わしていると思う。「Rainford」はリーの名前で、彼も非常にパワフルでヘヴィだからね。

今回のジャケットは、キリストの肖像画をコラージュしたもののようですが、これにはなにか意味することがあるのでしょうか?

AS:いわゆる一般的に伝統的なキリストのイメージというのは白人のイタリア人として描かれている。それは、いまやいたるところで目にするわけだけど、実際のキリストはおそらくもっと肌の色が濃い誰かだったはずなんだよ(*おそらくエイドリアンは中東に生まれたことを示唆している)。ハイレ・セラシエ一世が古代イスラエルのソロモン王の末裔だとしたら、古代のイスラエル人は黒人の種族なわけだからね。つまりジャケットのアイデアは、キリストが黒人じゃないといまどうして言い切れるのかということなんだ。もっと言えば、黄色人種じゃないとも言い切れないだろ? こういうキリストのイメージを使うことで怒る人もいるかもしれないけど、でもそれはもう、ファック・ユー(失敬)と言うしかない。そもそもイタリア人が元のイメージを盗んで作り上げたものなんだしさ。伝統的と言われているものに、本当にひとつでも正確な描写があるのかよっていう。まあ俺の意見だけどね。

伝統的と言われているものに、本当にひとつでも正確な描写があるのかよっていう。

80年代、ジャマイカから移り住んだリー・ペリーとともにすでに40年近く作業を共にしていると思うのですが、いままでにリー・ペリーと一緒に作業をして驚かされたことはありますか?

AS:リーは不思議なものが好きで、いつもロウソクや電気で遊ぶんだ。『Time Boom X De Devil Dead』を作ってたときに、友だちのデヴィッド・ハロウ(*アフリカン・ヘッド・チャージなどに参加、1990年代に入るとテクノヴァ、ジェームス・ハードウェイ名義でテクノ・シーンで活躍)が、スタジオの中を指して「見ろ、見ろ」って言うんだよ。そうしたらリーがひとりでスタジオにいて椅子の上に立っていて。俺たちはそれを廊下から見ていたんだけど、彼は片手で天井の大きな電球を握っていて、それがショートして明滅してたんだ。そして左手には触ると電気ショックがくる子供のおもちゃを持っていたんだよ。だから右手で電球を握って自分の手を焦がしながら左手で感電していたわけさ。どうしてそんなことをするかって? そんなのリー本人のみが理由を知っているんだ。たぶん自分で電気を発生させようとしていたんじゃないかな。

リーがあなたのところにいたときに、いろんなもの(機材や7インチ・レコード)を土に埋めていたとききましたが、本当でしょうか? またあなたから見てそれはどういう意味があったと思いますか?

AS:埋めてたのは本当で、それはレコードを育てるため。そしてもっと売れるようにするため。面白がって一枚だけ庭に埋めてたんだよ。そしたらもっと売れると彼は考えたわけさ。

さて今回の一連の作品に関してリーはどの程度制作に関与していたのでしょうか?

AS:まずジャマイカに行ってリーと彼の妻の家で1週間ほど過ごしてヴォーカルを録り、次に彼がイギリスに来てそこでもいくつかリディムを作ったんだ。そのときにリー自身にもパーカッションを叩いてもらい、オーヴァーダブをした。もろもろサウンドの提案もしていったよ。そのあとで自分がミックス作業をしたんだ。だから彼の関与はミックスの工程よりもレコーディングの工程が大きいといえるね。『Time Boom X De Devil Dead』の頃とか、40年ほど前はもっとミキシングにも関わっていたけど。そうやって前にも一緒にミキシングもやっていて、ちゃんとコミュニケーションも取れていて、彼が求めているものは把握しているからね。逆に言えばリーから「これは好きだ、これは好きじゃない」といった意見も出てくるからうまくいっていると思う。

ブライアン・イーノとのコラボレーション“Here Come The Warm Dreads”はどのような経緯で?

AS:ブライアンとはこれまでに何度か会ったことはあったけど、お互いをよく知っているというよりも、お互いについて知っているという感じで、何かを一緒にやったことはなかった。ただマネージャーが同じなんだよ(笑)。だからマネージャーに「ちょっとブライアンに興味があるか聞いてみてもらえるかい?」と頼んだのがきっかけなんだ。そうしたら「ぜひともやりたい」という返事をもらったんだ。ものすごくシンプルな話なんだよ。

“Here Come The Warm Dreads”は片方のチャンネルが完全に喪失したりと、かなりトリッキーなミックスがなされていますね。相当スタジオで盛り上がって作ったんじゃないでしょうか?

AS:かなり楽しい作業だったよ。ただ一緒にスタジオに入ったわけじゃないんだ。作業の直前に、ブライアンがすぐに何週間かどこかへ行ってしまうというタイミングだったから一緒にスタジオに入れなくて。なので、素材を渡して彼は彼でミックスをして俺も俺でミックスをしたんだ。それを後で合体させたというわけ。事前のプランではスピーカーからそのまま音が飛び出してくる感じにしようと話してたから、ある瞬間に片方のスピーカーから俺のミックスが聴こえてきて、彼の音がもう片方から聴こえてきたり、次の瞬間にそれが真ん中で合流したりするという感じなんだ、まあ少々複雑なんだけど、あのトラックは完全にイカれてるね。

イーノはアンビエントの創始者ですが、リーもダブのパイオニアのひとりです。アンビエントとダブに共通するものはなんだと思いますか?

AS:余白、スペースがあるってことだね。たっぷりとしたスペースがあり、そして思考を刺激するところだ。

オリジナル・アルバム+ダブ盤ともに、バックヴォーカルで娘さんふたりが参加されていますね。彼女たちは音楽活動をしているんですか?

AS:ふたりとも声がすごくいいからさ。上の子は音楽をやっていて一緒に作ったレコードもあるんだけど、彼女は心理療法士なんだ。

今回の音源には、スタイル・スコットが殺される前、最後になってしまったレコーディング・セッションの音源が入っている。彼はジャマイカのリズムを変えたんだ。いまのバンドを聴いてみてもその影響がはっきりとわかるね。

ヴィン・ゴードンが多くの曲にフィーチャーされていますが、彼の起用はどんな理由から?

AS:彼は Ital Horns のトランペット奏者のデイヴ・フルウッドと友達で、デイヴからヴィンが来るという話をきいて、とにかく彼とレコーディングをするチャンスだと思ったんだ。彼との仕事はこの上ない喜びだった。もうだいぶ前に、ほんの少しだけ仕事をしたことがあったけど、今回参加してもらえて本当にうれしかったよ。ヴィンはものすごく紳士な人だ。その場で彼の演奏を聴いているときは彼がどんなにすごいことをしているのか気づかないんだけど、ふしぎとあとで聴くとすごいのがわかるんだよ。

フィーチャリングというと、ジ・オーブやユースなどとも活動している、ガウディというイタリア人のキーボーディストが今回のアルバムでフィーチャーされていますね

AS:ガウディは良い友だちで、めちゃくちゃ才能がある。そして、すごくいいやつだよ。珍しいおもちゃのシンセサイザーだったり、楽器をたくさん持っていたりとか、趣味が良いんだよね。正直、今回『Rainford』と『Heavy Rain』の両方でガウディが果たした役割は大きかったし重要だった。彼は今度出るホレス・アンディのアルバムもやってるよ。

また今回の作品は、最初期の〈On-U〉から活動しているクルーシカル・トニーなども参加しています、彼はあなたにとってどのような人物ですか?

AS:彼とは、俺が初めて作ったレコードから一緒だからね。今回のレコードにとってもトニーとジョージ・オバンは決定的に重要で、全曲で演奏してるんだ。言ってみれば彼らがバックボーンとして支えてくれているわけ。トニーは俺が一番好きなリズム・ギタリストでジョージは俺が一番好きなベーシストで、ふたりとも本物だよ。

そして今回は故スタイル・スコット、さらには〈On-U〉初期から活動しているパーカッショニストのマドゥーなどなど、往年のアーティストのクレジットがあります。それを考えると今回、古いマテリアルも入ってそうですが。

AS:今回の音源には、スタイル・スコットが殺される前、最後になってしまったレコーディング・セッションの音源が入っている。そのときのセッションから、リディムをふたつ使っていて、そのうちのひとつは『Rainford』の収録曲。さに、もうひとつ『Heavy Rain』で使っているよ。マドゥーは、〈On-U〉初期からの付き合いで若い頃から知ってるけど、昔の音源ということではなく、今回はわざわざパーカッションを演奏してもらってる。スタイル・スコットも21歳の頃から知っていて、40年来の仲だったわけだけどね。彼に起こったことを考えると毎日胸くそが悪くなる。彼はジャマイカのリズムを変えたんだ。いまのバンドを聴いてみてもその影響がはっきりとわかるね。本当に彼と友だちでよかったし、一緒にやることで自分のサウンドがすごくいいものになったと思えた。あれほど素晴らしい人物と接することができてよかったよ。

クレジットを見る限り、スタイル・スコットのドラムのマテリアル以外は“プリゾナー(Prisoner:囚人)”なる人物がプログラムしたドラムのようです。あなたの別名義なんでしょうか?

AS:ええと……まぁ、そうだね(苦笑)。昔ベースを弾いてる頃はクロコダイル(Crocodile)という名義だったけどね。ドラムのときはプリゾナーだったんだ。なぜその名前かというと、単に面白かったからだけど、あとはいろいろな音をサンプルして機械の中に音を閉じ込めてたからそういう意味もあったんだ。1980年代、いまのPCでのDAWができるもっと前に、AMS Audiofile (最初期のデジタル・オーディオ・エデター)という機材があって、それでサンプルした音を、テープを操作しながらレコードに挿入していったわけ。その当時、俺はその作業で作った音源を“キャプチャーした(捕らえられた)”サウンドと呼んでいたんだ。それでプリゾナーてわけさ。

本作に参加している往年のアーティストたちとの間に、〈On-U〉の音楽から派生したコミュニティがあるのでしょうか? かつてそこでパンクとレゲエが出会ったように、いまでも〈On-U〉の音楽に影響を与えていますか?

AS:コミュニティという感じは昔の方が強かったな。悲しいことに多くの友人が死んでしまったからね。リザード(Lizard、ベーシスト)も(ビム・)シャーマンもスタイル・スコットもプリンス・ファーライもさ。それに俺たちもみんな歳を取ったし……依然として出会いの場にはなってるけど音楽業界も昔とは違う。昔はそれこそ(マーク・スチュワート&)マフィアもタックヘッド、ダブ・シンジケート、リー・ペリー、あとはアフリカン・ヘッド・チャージもみんなしょっちゅうギグをやってたけど、いまはそうじゃない。アフリカン・ヘッド・チャージは調子いいけどね。いまでもレーベルは一目置かれているけど、全盛期のように毎週ギグがあるっていうことではないからさ。いまはレギュラーで活動しているというよりもスペシャルなイベントをやるという感じだな。まずはもうすぐレーベル40周年だからそれに向けて色々やる予定だよ。

Rian Treanor - ele-king

 数年前に〈The Death Of Rave〉からの12インチでデビューを飾り、昨年は復活した〈Arcola〉からの「Contraposition」(別エレ〈Warp〉号94頁参照)や、行松陽介がよくかけていたというホワイト盤エディット集「RAVEDIT」(紙エレ23号38頁参照)で注目を集め、今年は〈Planet Mu〉より強烈なファースト・アルバム『Ataxia』を送り出した新世代プロデューサーのライアン・トレナーが、なんと、早くも初来日を果たす! 迎え撃つのは、日本初のゴム・パーティ・クルーたる TYO GQOM の5人。いやいや、これは行くしかないっしょ。

Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM

大陸を超える未来のハイパーIDM、Autechre や Mark Fell を継承するUKの新星 Rian Treanor 初来日!

ゴム、シンゲリ、ハウス、テクノ等を交え現行のアフリカン・ミュージックを東京にて追随するクルー〈TYO GQOM〉を迎えた、ウガンダの新興フェス〈Nyege Nyege〉とも共振する新感覚のアフロ・エレクトロニック/レイヴ・ナイト。

Local X8 World Rian Treanor VS TYO GQOM
2019/12/06 fri at WWWβ
OPEN / START 24:30
ADV ¥1,800@RA | DOOR ¥2,500 | U23 ¥1,500

Rian Treanor - LIVE [Planet Mu / UK]

[TYO GQOM]
- KΣITO
- mitokon
- Hiro "BINGO" N'waternbee
- DJ MORO
- K8

詳細: https://www-shibuya.jp/schedule/011898.php
前売: https://jp.residentadvisor.net/events/1348973

※ You must be 20 or over with Photo ID to enter.

■ Rian Treanor [Planet Mu / UK]

Rian Treanor は、クラブ・カルチャー、実験芸術、コンピューター・ミュージックの交差点を再考し、解体された要素と連動する要素の洞察に満ちた新しい音楽の世界を提示する。2015年にファースト12”「Rational Tangle」と〈The Death of Rave〉のセカンドEP「Pattern Damage」で鮮やかなデビューを果たし、〈WARP〉のサブ・レーベル〈Arcola〉は2018年に彼のシングル「Contraposition」でリニューアルしました。〈Planet Mu〉のデビュー・アルバム『ATAXIA』はハイパー・クロマチックなUKガレージと点描のフットワークを再配線し、UKアンダーグラウンド・クラブ・ミュージックの破壊的で不可欠な新しいサウンドとして確立される。2019年は故郷のシェフィールドの No Bounds Festival のレジデント、最近のライブでは Nyege Nyege Festival (UG)、GES-2 (RU)、Serralves (PT)、Irish Museum of Modern Art (IRL)、Berghain (DE)、OHM (DE)、Cafe Oto (UK)、グラスゴー現代美術センター(UK)、Empty Gallery (HK)、Summerhall (UK)に出演。香港の yU + co [lab] やインドでの Counterflows 2016-2017 のアーティスト・レジデンスへ参加。

英国で最も刺激的な新しいプロデューサーの1人 ──FACT

シェフィールドの音楽史を参照しながら、まったく新しい方向性を提示した ──WIRE

音楽の好奇心に火をつけると同時に体も持って行かれてしまう。ダンス・ミュージックはこれ以上面白くなることはないであろう ──MixMag

https://soundcloud.com/rian-treanor

■ TYO GQOM [Tokyo]

南アフリカ・ダーバンで生まれたダンス・ミュージック「GQOM(ゴム)」を軸に現行のアフリカン・ミュージックをプレイする日本初の GQOM パーティー・クルー。GQOM が注目され始めた初期から自身のプレイや楽曲に取り入れてきたメンバーやアフリカの現行音楽に特化したメンバーを KΣITO が招集し、KΣITO、K8、mitokon、Hiro "BINGO" N'waternbee、DJ MORO の5人のDJにより発足。GQOM に留まらず、タンザニアの高速ダンス・ミュージック「シンゲリ」やアフロハウス、テクノなどを交えた5人それぞれの個性溢れるプレイと踊らずにはいられないグルーヴ、熱気を帯びた新感覚のパーティーは各地で話題を呼び、ホームである幡ヶ谷 forestlimit で定期的に開催される本編の他、様々なパーティーにも招かれるなど今熱い視線を集めているクルーである。

https://twitter.com/tyogqom

ヤプーズ情報 - ele-king

 予告通り、16年ぶりに再始動したヤプーズの復活ライヴ盤がリリースされます。今年8月に渋谷クアトロで行われたライヴ音源を中心にスタジオ録音も2曲収録。現在、ヤプーズのギタリストはDipのヤマジカズヒデが兼任していますが、今年2月に急逝された前任の石塚”BERA”伯広が参加する「好き好き大好き」も収録されています。令和になっても「ヤプーズの不審な行動」は続いています。
 なお、ele-king booksより来年2月20日、戸川純未発表写真集『ジャンヌ・ダルクのような人』も発売予定。

戸川純 芸能活動40周年記念盤!
平成のヤプーズの曲と令和の新曲「孤独の男」収録!
本年8月のライヴ音源を中心に「12才の旗」(作詞:戸川純、曲:中原信雄)と「孤独の男」(作詞:戸川純、曲:ライオン・メリィ)のスタジオ音源も収録。

■JUN TOGAWA 40th Anniversary


YAPOOS/ヤプーズの不審な行動 令和元年
2019.12.11 ON SALE
CD:TECH-26538 定価 : ¥2,364+税
発売元:テイチクエンタテインメント
(アナログ盤も来春発売予定!)

収録曲;

1. Y0817 -Introduction-
2. ヴィールス
3. 君の代
4. 赤い戦車
5. ヒト科
6. 好き好き大好き
7. 12才の旗
8. 孤独の男
Track 1 to 6 : Liveat Shibuya Club Quattro 17th Aug. 2019
Track 7,8 : NewlyRecordings.

YAPOOS;
戸川純(Vo)
中原信雄(B)
ライオン・メリィ(Key)
矢壁アツノブ(Ds)
山口慎一(Key)
ヤマジカズヒデ(G)
石塚”BERA”伯広(G) Track on Suki Suki Daisuki

発売記念ライブ
2020.1.28(tue) 渋谷 Club Quattro

出演:YAPOOS
18:00 open 19:00 start
Adv.¥4000 door¥4500(+drink¥600)
QUATTRO WEB先行:11/23(土) 12:00 ~ 11/25(月) 18:00
e+ pre-order:11/30(土) 12:00 ~ 12/2(月) 18:00
ぴあ、ローソン、e+、会場で12/7一般発売!

Manufactured and Distributed byTEICHIKU ENTERTAINMENT,INC. Japan

戸川純ライヴ情報(すべて戸川 純 avec おおくぼけいで出演)
11/25(月)渋谷duo MUSIC EXCHANGE 
12/1(日)神戸STUDIO KIKI
12/13(金)札幌KRAPS HALL

Yves Tumor - ele-king

 どこまで続くんだー! 盛り上がりまくりの〈Warp〉30周年、プラッドナイトメアズ・オン・ワックスの次はイヴ・トゥモアだって! 昨年、アルバム『Safe In The Hands Of Love』発表後のじつに適切なタイミングで初来日を果たしたイヴだけれど、今回は東京のDJ、speedy lee genesis が主催する《Neoplasia3》にジョイントするかたち。こりゃほんとうに年末まで気が抜けませんな(ちなみに今日は『WXAXRXP Sessions』の発売日ですよ~)。

YVES TUMOR
30周年を迎えた〈Warp〉新世代のカリスマ、イヴ・トゥモアの来日が決定!
12/14(土)、渋谷WWW にて一夜限りのライヴ・パフォーマンスを披露。

フライング・ロータス、!!!(チック・チック・チック)、バトルスの単独公演/ツアー、さらにスクエアプッシャー、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ビビオが集結したスペシャル・パーティー『WXAXRXP DJS (ワープサーティーディージェイズ)』の開催など、『WXAXRXP (ワープサーティー)』をキーワードに、様々なイベントを行なっている〈WARP〉より、新世代のカリスマ、イヴ・トゥモアの来日が決定! 2018年の『Pitchfork』最高得点を獲得したアルバム『Safe In The Hands of Love』をひっさげての初来日公演はソールドアウト。衝撃のパフォーマンスが話題となった。それ以来1年ぶりとなる今回は、渋谷WWW にて熱狂を生んできた謎のパーティー「Neoplasia3」にジョイントし、一夜限りのライヴ・パフォーマンスを披露する。

12月14日(土)
WWW, WWWβ: Neoplasia3 - Yves Tumor -

Line up:
Yves Tumor [WARP]
and more...

OPEN / START 24:00
Early Bird@RA ¥2,000+1D
ADV ¥2,800+1D | DOOR ¥3,500+1D | U25 ¥2,500+1D
Ticket Outlet: e+ / Resident Advisor

イヴ・トゥモアは2010年頃より Teams、Bekelé Berhanu など、様々な形態の活動を行なってきたショーン・ボウイという人物の物語である。2016年9月、Bill Kouligas が運営する〈PAN〉より幻惑的でノイジーなサイバーR&Bアルバム『Serpent Music』を発表。イヴ・トゥモアというショーン・ボウイの現在のメイン・プロジェクト人格が広く知られることとなった。さらに翌2017年9月には『Experiencing The Deposit Of Faith』というコンピレーション・アルバムをセルフリリースするなど、インディペンデントな活動を行いつつ、今年30周年を迎えたエレクトロニック・ミュージックにおける最もグローバルなレーベルのひとつ〈Warp Records〉へサインした。そして2018年9月にリリースした『Safe In The Hands of Love』は、その年の『Pitchfork』最高得点9.1を獲得した。

『Safe in the Hands of Love』は、抑圧された監禁状態を知覚し、自由への衝動を暴走させる音楽 ──Pitchfork

ここには、Frank Ocean と James Blake が探ってきたものの手がかりが確かに存在するが、何よりも Yves Tumor は黒人の Radiohead という装いが、自分に合うかどうかってことを試して遊んでいるのかもしれない ──The Wire

『Safe in the Hands of Love』を聴くと、大量のロービット音を積み重ねまくった、救済の祈りで塗りたくられたような、Yves Tumor の深くムーディーな循環型の愛を受け取ることが可能だ ──Tiny Mix Tapes

祈りを思わせる霊性とグロテスクで凶暴な獣性。二重性のらせんをポップへと昇華する音楽が大爆発し、2010年代を代表する傑作との評価を得た『Safe In The Hands of Love』。ジェネラルな集合意識を弄ぶかのような、反人間的、非ルーツ的なニュー・ヴィジュアルは混乱と共感を産み出した。

2019年のイヴ・トゥモアは、クラシックなロック・ミュージックのフォーマット、とりわけグラム・ロック的なアプローチを前進させた。9月にリリースされた新曲“Applaud”において、さらにその様相は強まっている。ニューオーリンズ出身で HBA のモデルとしても知られたミステリアス・ロックンローラーで、近年のライヴのコラボレーターでもある Hirakish とLAの才人 Napolian を召喚し、ラフでハードな側面がアップデートされた。

Yves Tumor - Applaud ft. Hirakish & Napolian (Official Video)
https://youtu.be/eeQZ93f2qNw

“Applaud”のミュージック・ビデオはフランシス・F・コッポラの孫、ジア・コッポラによってディレクションされている。円環、渦をモチーフに展開される、パーティーの混乱を収めたこのビデオは、ポスター・ヴィジュアルとともに Yves Tumor 流の古典へのルネサンス的感覚を映し出した。

母体となるのは、東京地下で暗躍するDJ、speedy lee genesis が主催する Neoplasia3。また、通算20回目を迎える WWW のレジデント・シリーズ〈Local World〉がイベント・プロモーションを務める。過去に前述の Hirakish を招聘したパーティーを敢行するなど、Yves Tumor との共感覚、親和性も見逃せない。同イベントは「Prelude 2020 Version」と題した特別編として WWW と WWWβ 両フロアを解放し深夜開催される。Yves Tumor に拮抗する注目の国内アクトの発表は後日。

label: WARP RECORDS
artist: Yves Tumor
title: Safe In The Hands Of Love
release date: NOW ON SALE

国内盤CD BRC-584 ¥2,400
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳冊子

TRACKLISTING
01. Faith In Nothing Except In Salvation
02. Economy of Freedom
03. Honesty
04. Noid
05. Licking an Orchid ft James K
06. Lifetime
07. Hope in Suffering (Escaping Oblivion & Overcoming Powerlessness) ft. Oxhy, Puce Mary
08. Recognizing the Enemy
09. All The Love We Have Now
10. Let The Lioness In You Flow Freely
11. Applaud (Bonus Track for Japan)

〈WARP〉30周年 WXAXRXP 特設サイトにて WXAXRXP DJS で即完したロゴTシャツ&パーカーの期間限定受注販売開始!
受付は11月30日まで。商品の発送は注文後約2週間後を予定している。また会場で販売されたアーティスト・グッズのオンライン販売 も同時スタート! 数量が限られているため、この機会をお見逃しなく。
https://www.beatink.com/wxaxrxp/

Yatta - ele-king

 やっぱり画期だったんだろう。こういうのは少し時間が経過してみないとわからないものだけど、ムーア・マザークラインといったアーティストの登場は、10年後に振り返ってみたときに、エレクトロニック・ミュージックの大いなる転換点として如実に浮かび上がってくるにちがいない。あるいはそこにアースイーターの名を加えてもいい。それぞれサウンドは異なっているが、彼女たちはみなおなじ暗い時代の空気を吸いながら、おのおのに実験を突きつめ、既存のスタイルとは異なる道筋を示そうと果敢に闘いを続けている。みずからを「digipoet(デジタル詩人)」と規定するヤッタも、その戦線に加わる者のひとりだ。
 ヤッタ・ゾーカー(Yatta Zoker)はヒューストン出身で、現在はブルックリンを拠点に活動する、シエラレオネ系のアーティストである。ムーア・マザーとおなじく2016年にファースト・アルバム『Spirit Said Yes!』を自主で発表しており、翌2017年には彼女といっしょにNYのアート・ギャラリーのイヴェントに出演。2018年にはブルックリンのバンド、アヴァ・ルナのリーダーたるカルロス・ヘルナンデスのソロ作でヴォーカルを披露する一方、やはりムーア・マザーがキュレイターを務めるケンブリッジのフェスティヴァル《ワイジング・ポリフォニック》にも参加している。どうやらふたりは深い絆で結ばれているようで、ムーア・マザーは今年8月のNTSラジオのライヴでも、アリサ・フランクリンアート・アンサンブル・オブ・シカゴ、バーリントン・リーヴィやラス・Gといったビッグ・ネームたちとともに、ヤッタの楽曲をピックアップしている。
 かくして届けられたのがこのセカンド・アルバム『Wahala』ということになるわけだが、本作ではとにかく、ひたすら、えんえん、声の実験が続いていく。 まずはポエトリーや合成音声、チベットの聲明などがせわしなく駆け抜ける冒頭“A Lie”を聴いていただきたいが、アルバム全体をとおしてじつにさまざまな音声が狂宴を繰り広げている。背後でコラージュされる種々の電子音や生楽器、具体音も聴きどころで、アースイーターの参加する“Rollin”や聖俗入り乱れる“Shine”など、すばらしい音響を聞かせてくれる。

 タイトルの「Wahala」は、シエラレオネのクリオ語で「困難」や「問題」を意味する。このアルバムの制作はまず、躁や鬱について詩を書くことからはじめられたそうで、そんなふうにメンタル・イルネスが主題のひとつになっているところなんかは、きわめて今日的である。たとえば“Blues”では「わたしはブルーズをうまく歌う/そうする必要があるから/ここは地獄だから」と歌われているが、忘れてはならないのはそれが性や人種の問題と結びついている点だ。レーベルのインフォに掲げられている「ブラックであること、トランスであること、そして異邦の地でアフリカンであること」というヤッタのことばは、個人のメンタル・イルネスが社会的、歴史的、政治的なファクターに起因するものであることをほのめかしている。日本では精神疾患や鬱が個人の問題として処理されてしまうきらいがあるけれども、じっさいのところ「地獄」はむしろ、当人の外部からこそもたらされるのだ。
 もっとも注目すべきは、シングル化された“Cowboys”だろう。例によってさまざまな音声がコラージュされていくなかで、ヤッタはずばり、「カウボーイはブラックだ」と歌っている。ようするに同郷のソランジュや、あるいは今年尋常じゃないバズり方をみせている“Old Town Road”のリル・ナズ・X同様、ブラックがカウボーイの姿に扮する「イーハー・アジェンダ(Yeehaw Agenda)」のムーヴメントに乗っかっているわけだけど、それ以上に重要なのは後続のフレーズで、ヤッタは抑制を効かせながら「テクノもそう、テクノも、テクノも」と声をしぼり出していく。ここでデトロイトが念頭に置かれているのはほぼ間違いない。じっさい後半の“Galaxies”や、ムーア・マザーがラジオでとりあげた“Underwater, Now”といった曲のタイトルは、いやでも G2G やドレクシアを想起させる。
 鬱やカウボーイといったポップ・ミュージックのトレンドに反応しつつも、ヤッタは、けっして資本のど真ん中を狙ったり、ネットでウケるためにあれこれ画策したりしない。むしろ、徹底的にアンダーグラウンドを志向している。それはやはり根底に、「黒いテクノ」にたいするリスペクトが横たわっているからではないだろうか。

 ところで『The Wire』のインタヴューによれば、ヤッタは本作に着手したのとおなじころ、カントリー歌手シャナイア・トゥエインのヒット・ソング(彼氏の浮気に悶々とする内容で、MVには白人のカウボーイが多数登場)を聴き返したことで、みずからのマスキュリニティを無視できなくなってしまい、そこで自分がノンバイナリであることを理解したらしい。「ヤッタ」と繰り返すことでなんとかここまで回避してきたけれど、単数形の「they」って日本語でどう表現したらいいんだろう?

Adrian Sherwood, Roots Of Beat & Exotico De Lago - ele-king

 いよいよ来週末に迫ったエイドリアン・シャーウッドの来日公演、その詳細が発表されました。いや、これがびっくりするほど濃い内容なのです。オーディオ・アクティヴおよびドライ&ヘヴィのメンバーからなる一夜限りのバンド ROOTS OF BEAT と、エイドリアンが惚れこんでいるという長久保寛之率いるバンド、エキゾティコ・デ・ラゴの出演が決定、彼らのライヴをその場でエイドリアンがダブ・ミックスします。エイドリアン本人はというと、リー・ペリーの素晴らしい新作およびこれまでの数々の名作をダブ・ミックス。こりゃもう最初から最後までずっとステージに張りつくしかないですな。11月22日、渋谷 WWW は深い深いダブの海へと沈む……!!

[11月14日追記]
 エイドリアン・シャーウッドが、今年4月にリリースされたリー・“スクラッチ”・ペリーのアルバム『Rainford』収録の“Makumba Rock”を、マルチトラック音源を用いて自身のスタジオでダブ・ミックス。その様子を捉えた映像がユーチューブで公開されています。ライヴではどんな感じになるのやら、楽しみですね。

ADRIAN SHERWOOD来日公演

ON-U SOUND、UKアンダーグラウンド・シーンの首領エイドリアン・シャーウッド来日公演開催間近!
オーディオ・アクティブ、ドライ&ヘビーのメンバーを中心に集結した一夜限りのスペシャルバンド “ROOTS OF BEAT” の出演も決定!
リー・スクラッチ・ペリーの名曲群をセッション&エイドリアンの生ダブMIX!!
狂気の音像を大爆音で体感せよ!

刺激的なダブミックスを武器にそのレフトフィールドなサウンドで、音楽シーンに多大な影響を及ぼして来た伝説的プロデューサー、エイドリアン・シャーウッドの来日公演がいよいよ来週金曜日、11月22日に迫る!

『Time Boom X The Upsetter Dub Sessions』と名付けられた今回のイベントでは、UKダブのゴッドファーザー:エイドリアン・シャーウッドが、オリジナルのマルチトラックやマスター音源を用いて、エイドリアンとリー・ペリーとの名盤『Time Boom X De Devil Dead』『From The Secret Laboratory』から『The Mighty Upsetter』『Dubsetter』『Rainford』 そして最新作『Heavy Rain』、さらにはリー・ペリーの伝説のスタジオ〈Upsetter Productions〉や〈Black Ark〉のアーカイブにまで潜り込み、ライブ・ダブ・ミックスを行う。さらに、エイドリアン自らの指名で、長久保寛之を中心にヴィンテージな質感とレイドバックした空気感、そして、ストレンジでムーディーなサウンドを展開するバンド、エキゾティコ・デ・ラゴも出演し、エイドリアンによるダブ・ミックスが行われることが決定している。そして新たに、〈ON-U SOUND〉の遺伝子を受け継ぎ日本のレゲエ/ダブ・シーンを牽引してきたオーディオ・アクティブ、ドライ&ヘビーのメンバーを中心に今回のために集結したスペシャル・バンド “ROOTS OF BEAT” の出演も決定! 珠玉のリー・ペリー・クラシックを生演奏し、エイドリアンがダブ・ミックスするという特別セットを披露!!

ダブに浸り、目の前で繰り広げられる仰天の神業ダブミックスに圧倒される夜。見逃せない体験となるだろう。来場者には、特典として、エイドリアン・シャーウッドが今回のために録り下ろした特典 MIX CD をプレゼント!

同日には今年4月にリリースされ各所から大絶賛されているリー・スクラッチ・ペリーのアルバム『Rainford』にブライアン・イーノやヴィン・ゴードンらゲストが加わり、エイドリアン・シャーウッドがダブ・ヴァージョンに再構築した『Heavy Rain』が日本先行リリース!

神業仰天生ダブMIX3本勝負!!

MIX 1 - EXOTICO DE LAGO - Live Dub Mixed by ADRIAN SHERWOOD
エイドリアンのお気に入り邦バンド、エキゾティコ・デ・ラゴの奇妙でムーディーなライブをダブミックス!

MIX 2 - ADRIAN SHERWOOD: Diving into Original Multi-Tracks
エイドリアンとリー・ペリーとの大名盤『Time Boom X De Devil Dead』『From The Secret Laboratory』から『The Mighty Upsetter』『Dubsetter』『Rainford』 そして最新作『Heavy Rain』まで、エイドリアンが手掛けた数々のリー・ペリー作品をマルチトラック音源を用いてダブミックス!

MIX 3 - ROOTS OF BEAT plays LEE ‘SCRATCH' PERRY Classics - Live Dub Mixed by ADRIAN SHERWOOD
オーディオ・アクティブやドライ&ヘビーのメンバーを中心に ROOTS OF BEAT としてこの日のためにスペシャル・バンドを結成! 珠玉のリー・ペリー・クラシックを、生演奏で再現! そしてエイドリアンのダブミックスが炸裂!
参加メンバー:七尾茂大、河西裕之、外池満広、Master PATA、ANNA OZAWA、ASSAN、Inatch

ADRIAN SHERWOOD
Time Boom X The Upsetter Dub Sessions

MIX 1 - EXOTICO DE LAGO - Live Dub Mixed by ADRIAN SHERWOOD
MIX 2 - ADRIAN SHERWOOD: Diving into Original Multi-Tracks
MIX 3 - ROOTS OF BEAT plays LEE ‘SCRATCH' PERRY Classics - Live Dub Mixed by ADRIAN SHERWOOD

2019.11.22 Fri WWW X
Ticket Adv.:¥5,800
Open 18:00 / Start 18:30

ADRIAN SHERWOOD
ポストパンク、ダブ、インダストリアル、パンキー・レゲエ、ファンク、エレクトロ……80年代から90年代にかけて確立したそのレフトフィールドなサウンドを通して、後の音楽史に多大な影響を及ぼした伝説的プロデューサー。マーク・スチュワート、ザ・スリッツ、マキシマム・ジョイ、ザ・フォール、アフリカン・ヘッド・チャージ、プライマル・スクリーム、ナイン・インチ・ネイルズ、ニュー・エイジ・ステッパーズ、デペッシュ・モード等々……時代やジャンルを跨ぎ様々なアーティストたちの楽曲を手掛け、同時にイギリスでもっとも先鋭的なレゲエ〜ダブを送り出してきたレーベル〈ON-U SOUND〉の総帥としてUKダブ・シーンを常に牽引、近年では〈Tectonic〉を主宰するピンチとのユニット、シャーウッド&ピンチとしても空間芸術と称されるサウンドを進化させている。

EXOTICO DE LAGO
2012年にアルバム『ROCKS "EXOTICA" STEADY』を発表した長久保寛之。その長久保を中心に、彼が選び抜いたメンバーと共に活動を開始したエキゾチカ・バンド。ヴィンテージな質感とレイドバックした空気感、そして、ストレンジでムーディーなサウンドで「ここではないどこか」を探し続ける音楽家たちが“EXOTICA”をキーワードに様々な音楽を飲み込んでゆく。

label: On-U Sound / Beat Records
artist: Lee "Scratch" Perry
title: Heavy Rain
release date: 2019.11.22 FRI ON SALE
日本先行リリース!

国内盤CD BRC-620 ¥2,400+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-620T ¥5,500+税
限定盤LP(シルバーディスク) ONULP145X

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10538

TRACKLIST
01. Intro - Music Shall Echo
02. Here Come The Warm Dreads
03. Rattling Bones And Crowns
04. Mindworker
05. Enlightened
06. Hooligan Hank
07. Crickets In Moonlight
08. Space Craft
09. Dreams Come True
10. Above And Beyond
11. Heavy Rainford
12. Outro - Wisdom
13. Drown Satan (Bonus Track for Japan)

label: On-U Sound / Beat Records
artist: Lee "Scratch" Perry
title: Rainford
release date: 2019.04.26 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-596 ¥2,400+税
国内盤CD+Tシャツ BRC-596T ¥5,500+税
限定盤LP(ゴールドディスク) ONULP144X ¥OPEN

TRACKLISTING
01. Cricket on the Moon
02. Run Evil Spirit
03. Let it Rain
04. House Of Angels
05. Makumba Rock
06. African Starship
07. Kill Them Dreams Money Worshippers
08. Children Of The Light
09. Heaven and Hell (Bonus Track for Japan)
10. Autobiography Of The Upsetter

Hair Stylistics - ele-king

 祝15周年ということでしょう、2004年に細野晴臣の〈daisyworld discs〉からリリースされたヘア・スタイリスティックスのファースト・アルバム『Custom Cock Confused Death』(タイトルを略すと「CCCD」)が、なんと、初めてヴァイナルでリリースされます。紙エレ夏号の「エレキングが選ぶ邦楽100枚のアルバム」にも選出した名作ですが(同号には中原昌也のインタヴューも掲載)、今回アートワークも刷新され、グレイ・ヴァイナル&ゲイトフォールドという豪華な仕様になっている模様。発売は12月13日です。

Hair Stylistics による2004年の名作が、15年越しに数量限定で初アナログ化!

中原昌也(ex.暴力温泉芸者)によるソロ・ユニット Hair Stylistics のファースト・アルバム『Custom Cock Confused Death』がアートワークを一新し、グレイ・ヴァイナル、ゲートフォールド・ジャケットの豪華仕様で2LP化です!

2004年に細野晴臣主宰のレーベル〈daisyworld discs〉よりリリースされた、日本のアンダーグラウンド・シーンを象徴する怪盤が、15年の時を経てついにアナログ化です。

不穏なSEと呻き声に潰れたブギーなベースラインが絡む、“Juicy Fruit”を闇鍋で煮詰めたようなアブストラクト・サイケ・ダブ“UNDERHAIR WORLD”。野太く凶悪なブリブリのシンセ・ベースに動物の鳴き声や雑音が挿入される、熱帯雨林を抜けスラムに迷い込んだかのようなスカム/ミニマル・アシッド“KILL THE ANIMALS PROJECT”。チープなリズム・マシーンに反復するベースライン、脳髄に浸食するようなクニュクニュと鳴るシンセ、時折差し込まれるジャジーなギターが不思議とレイドバックした感覚を起こさせる、ルードでアヴァンギャルドなチル・ナンバー“TIRED”など、全21曲を収録。

ノイズ、アヴァンギャルド、ヒップホップ、ダブ、テクノなどあらゆる音楽的要素を溶解させ、猥雑かつ緻密に再構築した、クラブ・ミュージック的視点でも再評価されるべき名作です。今回のアナログ化にあたりアートワークを一新、国内外で活躍する写真家、赤木楠平が手掛けています。

■リリース情報
Hair Stylistics
Custom Cock Confused Death』(2LP)
発売日:2019年12月13日(金)
価格:3,900円+税
レーベル:TANG DENG Co.
品番:TDLP3993
形態:2LP

収録曲:

Side-A
1. THE EXCITING INTRODUCTION
2. UNDERHAIR WORLD
3. 3
4. DOOMED LOVE PARADE
5. ORGANIC ORGASM

Side-B
1. 6
2. WOMAN
3. 8
4. THE SPECIAL
5. 11

Side-C
1. 10
2. 12
3. SPANISH 808
4. 14
5. I LIKE PERCUSSION
6. 16

Side-D
1. KILL THE ANIMALS PROJECT
2. THE PERFECT BONGO SESSIONS
3. A TRAGEDY OF THE ESPRESSO MACHINE
4. 20
5. TIRED

■JET SET Online Shop にて予約受付中
https://www.jetsetrecords.net/814005682359/

NITRODAY × betcover!! - ele-king

 昨年ファースト・アルバム『マシン・ザ・ヤング』をリリースし、去る10月にミニ・アルバム『少年たちの予感』を発売したばかりの新世代オルタナティヴ・ロック・バンド、ニトロデイが盟友 betcover!! とともにリリース・ツアーを開催。最終日となる11月21日(木)渋谷 WWW 公演には、『少年たちの予感』収録曲“ブラックホール”にフィーチャーされていた ninoheon がゲストとして参加する。平均年齢20歳だというニトロデイ、そのフレッシュな息吹を思うぞんぶん体感しよう。

Grischa Lichtenberger - ele-king

 グリシャ・リヒテンベルガーは2009年に名門〈Raster-Noton〉からシングル「~Treibgut」をリリースした。2年後の2011年にスヴレカ(Svreca)が主宰する〈Semantica Records〉からEP「Graviton - Cx (Rigid Transmission)」を発表。翌2012年には〈Raster-Noton〉よりアルバム『and IV [inertia]』をリリースする。3年を置いた2015年にセカンド・アルバム『La Demeure; Il Y A Péril En La Demeure』を発表し、翌2016年にはジェシー・オズボーン・ランティエとの競作による『 C S L M | Conversations Sur Lettres Mortes』をリリースした。同2016年には20世紀後半の歴史と思想をバックボーンにしたEP三部作をひとつのパッケージにしたトータル・アート作品的な傑作『Spielraum | Allgegenwart | Strahlung』を発表するに至る。
 本作『Re: Phgrp』は、ベルリンの電子音響作家グリシャ・リヒテンベルガー、待望の新作である。『La Demeure; Il Y A Péril En La Demeure』(2016)以来、実に4年ぶりのアルバムだ(EP三部作をまとめた『Spielraum | Allgegenwart | Strahlung』もカウントすれば3年ぶり)。

 グリシャ・リヒテンベルガーの音響音楽の特質はポスト・オウテカ的なグリッチ美学の応用にある。ノイズと音響の生成と構築によって律動を組み上げていくのだ。彼は思想から建築、科学まで援用・貫通しつつ聴覚の遠近法を拡張させる。私が彼の音楽に最初の衝撃を受けたのはご多分にもれず『and IV [inertia]』だったが、そのグリッチ・サウンドの中に、「音楽」以降の「音から思考」する意志を強く感じたものだ。リズムですらも解体されていくような感覚があった。いわばポスト・ポスト・テクノ/ポスト・ポスト・クラブ・ミュージック。リズムという無意識を冷静に解析する分析学者のようにすら思えたものである。
 新作『Re: Phgrp』も同様に感じた。いや、これまで以上に斬新ですらあった。本作では電子音響とジャズの融合を試みている。『Re: Phgrp』はアルバム名どおりドイツのサックス・プレイヤーにしてコンポーザーであるフィリップ・グロッパーによるフィリップ・グロッパーズ・フィルム(Philipp Gropper's Philm)『Consequences』(2019)のリワーク・アルバムなのである。しかしながら本作はいわゆるリミックス作品ではない。コラボレーションでもない。グリシャ・リヒテンベルガーのソロ・アルバムである。「リヒテンベルガーによる電子音響とジャズを交錯させるという実験報告のような作品」とでもすべきかもしれない。

 ジャズと電子音響をミックスした成功例はあまりないと思うのだが、それはジャズの音楽的構造が強固であり、ミニマルな構造と非楽音的なノイズとリズムを組み上げていく電子音響とでは食い合わせが良くないからだろう。だからこそジャズを音楽ではなく音響として「聴く」必要があった。本作の第一段階で、聴くことのジャズ聴取のパースペクティヴを変えていくモードがあったのではないかと想像する。そう、ジャズの演奏シークエンスを、大きな「音響体」として認識すること。それによってサウンドを解体すること。ジャズは豊かな和声を持った音楽だが、音響体としてジャズ音楽全体を認識したとき、細部からズームアウトするかのようにサウンドの総体は糸が解れるように解体してしまう。そして音楽が音響体へと変化する。「全体」への認識によって聴覚の遠近法が変わるのだ。ズタズタに切断されたジャズの音響体は、聴覚の遠近法の変化によってサウンドとして新たに息を吹き返すだろう。まるで新たな生命体に蘇生するかのように。

 フィリップ・グロッパーズ・フィルムの音楽性は2010年代的に高密度なインプロヴィゼーションとサウンドが交錯したポスト・フリージャズといってもいい端正かつ大胆なものだ。ジャズ・マナーに乗った上で音楽の内部からジャズを更新しようとする意志を感じた。

 グリシャ・リヒテンベルガーはいささかオーセンティックな彼らのサウンドから「律動」を抽出した。グリシャ・リヒテンベルガーが必要とするのは「ジャズの律動」エレメントだ。たしかにアルバム冒頭のトラックは、フレーズも旋律も和声も残存しているのだがアルバムが進むにつれ次第にジャズの残骸は電子ノイズの中に融解し、グリッチと律動へと変化させられていく(サウンド的にはこれまでの楽曲以上にビートの音色が強調されているのも律動への意志のためか)。
 だから本当のところ事態は反対なのだ。ジャズを解体し律動を抽出したのではない。ジャズの律動を抽出するためにジャズを解体したとすべきなのである。「律動」にジャズの本質を「聴く」こと。その律動のエレメントを抽出し音響化すること。そのときはじめてジャズが、オウテカ、カールステン・ニコライ、池田亮司、マーク・フェル以降ともえいえる先端的な電子音響/電子グリッチ・ノイズと融合可能になったとすべきではないか。本作はジャズ的律動とグリッチ的音響を交錯させる実験と実践なのである。

 その結果、『Re: Phgrp』からポストパンク的な切り裂くようなソリッドかつ重厚なリズムを感じ取ることができた。なぜか。もともとブルースを電気楽器と録音機器によって拡張に拡張を重ねたロックは、サイデリック・ムーヴメントを経て、プログレッシヴ・ロックやポストパンクへと極限的な変化を遂げたものである。ロックはブルースの解体の果てにある音楽(音響体)であり、それゆえ根無し草の音楽であった。同じように電子音響とジャズの解体/交錯が、新しい「ロック」(のようなものを)生成=蘇生させてしまった。和声も旋律も剥奪されたジャズのソリッドな律動は「ロック」のカミソリのようなリズム/ビートに共通する。私がこのアルバムにポストパンク的なものを感じた理由はここにある。

 確かに70年代以降、先端音楽としてのロックは終わった(ロック・エンド)。だが、その意志は、電子音響と尖端音楽に継承されていたのだ。『Re: Phgrp』はその証明ともいえる重要なアルバムである。

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