「P」と一致するもの

TESTSET - ele-king

 昨年のフジにおいて、METAFIVEの特別編成バンドとしてスタートしたTESTSET。砂原良徳、LEO今井、GREAT3の白根賢一、相対性理論の永井聖一から成る彼らの初めての音源作品「EP1 TSTST」が8月12日にリリースされている。
 これまでもライヴで披露されていた “Carrion” を含む新曲4曲に加え、向井秀徳を招いたライヴ音源も追加。公式サイトではグッズも販売中とのこと。記念すべきこの初EPを堪能しつつ、今後の動向に注目しましょう。

TESTSET
待望の初音源作品「EP1 TSTST」を本日配信リリース

昨年のFUJI ROCK FESTIVAL ‘21にMETAFIVEの特別編成として出演したメンバーによるバンド:TESTSET(砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)による初音源作品「EP1 TSTST」が本日配信リリースとなった。

TESTSETと冠し、今年4月よりライブ活動を開始した彼らが、突如発表した初の作品はこれまでのライブでも披露されていた “Carrion” を含む4曲の新曲に、ボーナストラックとして、5月に開催されたZAZEN BOYSとの対バンイベント時に、向井秀徳を招き入れる形で披露したKIMONOS(向井秀徳とLEO今井によるユニット)の楽曲 “No Modern Animal” のライブ音源を加えた全5曲を収録。まさに「TESTSETの0年度」を予期させる作品となっている。

そんな彼らは、10月15日(土)、16日(日)に福井県大野市麻那姫湖少年旅行村で開催される「sea of green’22」への出演が決定。また、このリリースにあわせて、TESTSET OFFICIAL SHOPでは新作グッズの発売が開始となるのでお見逃しなく。

TESTSET「EP1 TSTST」配信URL
https://testset.lnk.to/tstst


TESTSET「EP1 TSTST」
発売日:8月12日(金)
収録曲
1. Carrion
2. Testealth
3. No Use
4. Where You Come From
5. No Modern Animal feat Mukai Shutoku (Live)

TESTSET OFFICIAL SHOP
https://store.wmg.jp/collections/testset

TESTSET情報
https://lit.link/TESTSET

PROFILE
TESTSET (砂原良徳×LEO今井×白根賢一×永井聖一)

昨年のFUJI ROCK FESTIVAL ‘21にMETAFIVEの特別編成として出演した砂原良徳とLEO今井が、サポートメンバーにGREAT3の白根賢一(Dr)と相対性理論の永井聖一(Gr)を迎え、グループ名を新たにTESTSET(テストセット)と冠してライブ活動を開始。
Twitter: @TESTSET_2022

Alchemy Records - ele-king

 JOJO広重が1984年に大阪で設立した、関西アンダーグラウンド・シーンを代表するレーベル〈Alchemy〉。自身がリーダーを務める非常階段をはじめ、赤痢やハナタラシ、THE原爆オナニーズや想い出波止場など多くのバンドを送り出してきた同レーベルだが、そのリイシュー・プロジェクト「Alchemy Records Essential Collections」が始動している。
 すでにCDがリリースされ、秋にLPの発売が予定されているものに SOB階段『NOISE,VIOLENCE & DESTROY』、Slap Happy Humphrey『Slap Happy Humphrey』、Angel'in Heavy Syrup『Angel'in Heavy Syrup』、ほぶらきん『グレイテストヒッツ』、赤痢『私を赤痢に連れてって』の5作がある。
 また、Angel'in Heavy Syrup「僕と観光バスに乗ってみませんかc/w春爛漫」(7”)、赤痢『PUSH PUSH BABY~LOVE STAR』(CD/LP)、シェシズ『約束はできない』(LP)、想い出波止場『水中JOE』(LP)、ウルトラ・ビデ『ザ・オリジナル・ウルトラ・ビデ』(LP)の5タイトルも今秋から来年にかけリリース予定。詳しくは下記よりご確認を。

1984年にJOJO広重(非常階段 他)が設立した〈Alchemy Records〉のリイシュー・プロジェクト!

1984年6月にノイズ・ミュージシャンであるJOJO広重が設立した〈Alchemy Records〉。リリース作品はJOJO広重がリーダーをとるバンド非常階段のアルバムをはじめ、ノイズ、パンク、サイケデリックなど幅広いジャンルをフォローしています。
その関西のインディーの雄、〈Alchemy Records〉の代表的なアーティスト/アルバムのリイシュー企画「Alchemy Records Essential Collections」がこの度始動します。


アーティスト名:SOB階段
タイトル:NOISE,VIOLENCE & DESTROY
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年6月2日(水)
LP:2022年10月19日(水)
品番
CD:ALPCD-1
LP:ALPLP-1
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き
★CD盤限定ボーナストラック収録

■トラックリスト
01. INTRODUCTION
02. NOT ME
03. SUDDEN RISE OF DESIRE
04. TRAP
05. FUCK OR DIE
06. NOISE, VIOLENCE&DESTROY
07. RISING HELL
08. LOOK LIKE DEVIL
09. NEVER AGAIN
10. TO BE CONTINUED
11. NEVER AGAIN *CD盤限定ボーナストラック
12. EPILOGUE *CD盤限定ボーナストラック


アーティスト名:Slap Happy Humphrey
タイトル:Slap Happy Humphrey
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年6月2日(水)
LP:2022年10月19日(水)
品番
CD:ALPCD-2
LP:ALPLP-2
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き
★CD盤限定ボーナストラック収録

■トラックリスト
01. 地平線
02. たとえばぼくが死んだら
03. 逆光線
04. センチメンタル通
05. G線上にひとり
06. みんな夢でありました
07. 蒼き夜は
08. ふるえているね
09. スナフキンのうた(Slap Happy Humphrey Ⅱ) *CD盤限定ボーナストラック


アーティスト名:Angel'in Heavy Syrup
タイトル:僕と観光バスに乗ってみませんかc/w春爛漫
フォーマット:7inch
レーベル:P-VINE
発売日:2022年10月19日(水)
品番:ALP7-1
価格:¥2,255(税込)(税抜:¥2,050)
★初回完全限定生産

■トラックリスト
A. 僕と観光バスに乗ってみませんか
B. 春爛漫


アーティスト名:Angel'in Heavy Syrup
タイトル:Angel'in Heavy Syrup
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年7月6日(水)
LP:2022年11月2日(水)
品番
CD:ALPCD-3
LP:ALPLP-3
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き
★CD盤限定ボーナストラック収録

■CD/LPトラックリスト
01. S.G.E (Space Giant Eye)
02. きっと逢えるよ
03. ぼくと観光バスに乗ってみませんか
04. Underground Railroad
05. My Dream
06. Crazy Blues(bonus track) *CD盤限定ボーナストラック


アーティスト名:ほぶらきん
タイトル:グレイテストヒッツ
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年7月6日(水)
LP:2022年11月2日(水)
品番
CD:ALPCD-4
LP:ALPLP-4
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■CDトラックリスト
01. 私はライオン
02. いけいけブッチャー
03. 牧場の少女
04. アックンチャ
05. 山はサンタだ
06. 陽気なサイパネ人
07. こがねむし(黄金虫)
08. ピーピーパピパピー
09. 暴れん坊将軍K
10. 村のかじや
11. 頭がほしい
12. ペリカンガール
13. アメリカこけし
14. 魚うり
15. ゴースン
16. センチメンタル・ヘッケル(カラオケ)
17. 単位踊
18. とんがりとしき
19. どまぐれじんぎ
20. 京阪牛乳
21. はちぶんぶ
22. かもられてかも
23. まらだしガンマン危機一髪
24. 金勝は信楽守る山
25. ゴースンゴー
26. 俺はなんでも食う男
27. わらびもち
28. ピコリーノ
29. おおがみらす
30. 俺はなんでも食う男 (2)
31. ああ我れ身に油をぬりて勇気百倍まっ先かけて突撃せん
32. うさぎ音頭で大暴れ
33. ますかきラッキー
34. ゴースンのテーマ
35. どくろ忍者の歌
36. 怪人タツドロド
37. ライオン丸のテーマ
38. 大仏小仏
39. 水中まつり
40. ゴースン,城を攻める
41. ゴースンの子守り歌
42. 猪股蟇衛門
43. タイガージョー
44. 秘密兵器コンパニオン
45. ゴースン鉄工所
46. ゴースンの川下り
47. 死んだら赤貝
48. 赤五筒~完~
49. 潜水艦
50. 京阪牛乳(un released studio track 1)
51. 京阪牛乳(un released studio track 2)

■LPトラックリスト
A01. 私はライオン
A02. いけいけブッチャー
A03. 牧場の少女
A04. アックンチャ
A05. 山はサンタだ
A06. 陽気なサイパネ人
A07. こがねむし(黄金虫)
A08. ピーピーパピパピー
A09. 暴れん坊将軍K
A10. 村のかじや
A11. 頭がほしい
A12. ペリカンガール
A13. アメリカこけし
A14. 魚うり
A15. ゴースン
A16. センチメンタル・ヘッケル(カラオケ)
A17. 単位踊
A18. とんがりとしき
A19. どまぐれじんぎ
A20. 京阪牛乳
A21. はちぶんぶ
A22. かもられてかも
A23. まらだしガンマン危機一髪
A24. 金勝は信楽守る山
A25. ゴースンゴー
B01. 俺はなんでも食う男
B02. わらびもち
B03. ピコリーノ
B04. おおがみらす
B05. 俺はなんでも食う男 (2)
B06. ああ我れ身に油をぬりて勇気百倍まっ先かけて突撃せん
B07. うさぎ音頭で大暴れ
B08. ますかきラッキー
B09. いけいけブッチャー
B10. 暴れん坊将軍K
B11. 魚うり
B12. アメリカこけし
B13. 山はサンタだ
B14. とんがりとしき
B15. ゴースン
B16. 私はライオン
B17. 村のかじや
B18. 牧場の少女
B19. アックンチャ
B20. 不思議な魔法びん
B21. 陽気なサイパネ人
B22. ミネソタの玉子売り


アーティスト名:赤痢
タイトル:私を赤痢に連れてって
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年8月3日(水)
LP:2022年11月2日(水)
品番
CD:ALPCD-5
LP:ALPLP-5
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■CDトラックリスト
01. デスマッチ
02. 4649
03. ヨーレイヒ
04. どろどろ大江戸
05. ウィウィロック
06. だーらだら(駄獣)
07. 春
08. 仏滅ラプソディー
09. カメレオン
10. ファック
11. ちった
12. エンドレス
13. ナンバー
14. ニャンニャンで行こう
15. 赤痢作用(セキリプロセス)
16. 夢見るオマンコ

■LPトラックリスト
A1. デスマッチ
A2. 4649
A3. ヨーレイヒ
A4. どろどろ大江戸
A5. かつかつロック
A6. だーらだら(駄獣)
A7. 青春
B1. 仏滅ラプソディー
B2. カメレオン
B3. ファックしよう
B4. ちった
B5. エンドレス


アーティスト名:赤痢
タイトル:PUSH PUSH BABY~LOVE STAR
フォーマット:CD / LP
レーベル:P-VINE
発売日
CD:2022年11月16日(水)
LP:2022年2月15日(水)
品番
CD:ALPCD-6
LP:ALPLP-9
価格
CD:¥2,750(税込)(税抜:¥2,500)
LP:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■CD/LPトラックリスト
01. PANCH
02. ORILLA
03. ベリー・グウ
04. HAPPY NEW YEAR
05. 俺のドジ
06. 駄馬
07. サバビアン
08. 19才
09. ラブラブショックラブショック
10. CHOCOLATE BLUES
11. くすり天国
12. 睡魔


アーティスト名:シェシズ
タイトル:約束はできない
フォーマット:LP
レーベル:P-VINE
発売日
LP:2022年12月21日(水)
品番:ALPLP-6
価格:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■LPトラックリスト
A1. I'm dancing in my heart~祭歌
A2. 連舞
A3. 君が目
A4. 火の海
A5. 月と明り窓
B1. 約束はできない
B2. 黒い瞳の
B3. カチューシャ
B4. 불의 바다
B5. 輪舞
B6. 三度目は武装して美しく無関心


アーティスト名:想い出波止場
タイトル:水中JOE
フォーマット:LP
レーベル:P-VINE
発売日
LP:2022年1月7日(水)
品番:ALPLP-7
価格:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■LPトラックリスト
A1. 22次元
A2. サムライ ACID CONTEMPORARY
A3. BLUES FOR TURN TABLE
A4. ROUTE 99999
A5. 水中JOE
A6. 中核
A7. SHOOTING DUB
B1. 太ッ腹(玉砕ワルツ)
B2. ハウ
B3. N.C.C.P1701-1
B4. 第三ROCK
B5. IN
B6. SEA MONK


アーティスト名:ウルトラ・ビデ
タイトル:ザ・オリジナル・ウルトラ・ビデ
フォーマット:LP
レーベル:P-VINE
発売日
LP:2022年1月18日(水)
品番:ALPLP-8
価格:¥4,378(税込)(税抜:¥3,980)
★LP初回完全限定生産
★LP帯付き

■LPトラックリスト
A1. インプロビゼーション・アナーキー(屋根裏'79)
A2. わかえらんわからんしゅびしゅびだ(屋根裏'79)
A3. やくざなコミューン(屋根裏'79)
A4. 落ちこんだらあかへんで(屋根裏'79)
A5. メリーゴーランド(屋根裏'79)
A6. 恋するベイリー(ギャルソン'78)
A7. 嫌われもののパンク(屋根裏'79)
A8. 大怪獣の歌
B1. 単なる曲(太奏'78)
B2. ポニーテイルのかわいいあの娘(ガレージ'79)
B3. 世界はひとつ(ガレージ'79)
B4. ウギャギャでパンクPart2(ガレージ'79)
B5. そしてジャマイカへ(日和'79)
B6. ラッパのあれ(医大'79)
B7. キンタロイド(恐怖'79)

Ashley Paul - ele-king

 アシュリー・ポールは、すでに10年以上のキャリア持つ音楽家で、それこそ10年前は、日本でもよく知られるイーライ・ケスラーと何枚も共同作品を発表している。ふたりはその頃、ニューヨークで共同生活を営んでいた。それから彼女は大西洋を渡って、イギリスを拠点に音楽活動を続けている。
 アメリカ中西部のアイオワ州はデモインで生まれた彼女の音楽の素地は、彼女の育ち(ジャズギターを弾く父、クラシック・ピアノに長けた姉のいる音楽一家)のなかで萌芽し、ニューヨークでの大学時代に多くの養分を吸収している。幼少期よりポール・デズモンドに憧れ、「将来はサックス奏者になる」と言い回ったほど早熟だったポールは、そして実際サックス奏者となるわけだが、19歳でアート・リンゼイに衝撃受けると、実験的な音楽やインプロヴィゼーションに惹かれていった。かくして彼女は、大学院で学位を取ってからも毎日地下鉄で6時間演奏するような生活をしばらく送ることになる(だから最初の1年間は、小銭で食事代を払い、家賃を払うにもすべて1ドル札だった)。そんなわけで、彼女のボヘミアン的な生き方は、彼女の音楽にも直結しているように思う。
 
 〈オレンジ・ミルク〉からリリースされた『 I Am Fog(私は霧)』は彼女の最新作で、ここにはジャズの実験とポスト・パンク的な失敗を恐れないアプローチがあり、そしてこの音楽はグルーパーやリーア・バートゥチの作品ようにマージナルな領域で身を潜めている。ポールは歌い、そしてサックスとクラリネットを演奏し、オットー・ウィルバーグとヨニ・シルヴァーがコントラバスとバスクラリネットでサポートする。音数は少ない。9分近くある1曲目の“A Feeling”では、楽器は旋律を奏でるというよりもドローンに引き伸ばされている。曲全体がスクリューされたかのようなこの曲の灰色の沈黙は、しかし奇妙なほど穏やかでもあり、切なくもある。ベースとドラムに導かれて、サックスによる不協和音が挿入されると歌が繰り返される“Escape”は、フライング・リザーズの前衛ジャズ・ヴァージョンだ。なかば絶望的なムードからはじまる“The Sun is Out”は、秋の気配を感じる今日ではいっそう心に染みる曲だが、彼女はこのやるせない無調な日々のなかに希望を見いだそうとする。
 元々ボヘミアン気質のあった彼女の「自由が奪われた」コロナ禍において制作されたこのアルバムは、全体的に不安定さを貫き、色彩を奪われたかのような荒涼さが広がる。かつてピート・スワンソンから「もっとも硬派なノイズ野郎の首の後ろの毛を立たせる」と形容されたその声は、孤独で、ときおり悲しみの表情を見せている。しかしながらこれは親密な音楽で、空間的でもある。椅子に座って聴いていると、自分のすぐ前に小さなステージがあり、手の届くところで3人が演奏しているように感じられる。グルーパーのように、彼女も唯一無二の音楽をやり続けている希有なアーティストのひとりで、その音楽は柔らかく美しい。もっと日本でも注目されていいと思う。

HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS - ele-king

文:ジェイムズ・ハッドフィールド(訳:江口理恵)[8月19日公開]

 1960年代に入ってしばらくするまで、カヴァー・ヴァージョンというのはロック・バンドが普通にやるものだった。ビートルズの最初の2枚のアルバムに収録されている曲の半分近くは他のアーティストの作品だ。初期のローリング・ストーンズは、自らのソングライターとしての才能を証明するよりも、ボ・ディドリーを模倣することの方に関心があった。しかし、LPがロック・ミュージックのフォーマットに選ばれるようになると、ファンはアーティストにより多くの革新を期待し、レーベルもオリジナルの音源の方が金になることに気付き出した。カヴァー・ヴァージョンは、ありふれたお馴染みのものから、ロック・ミュージシャンがより慎重に意図を持って使うものになっていった。敬意を表したり、いつもの定番曲に新風を吹き込んだり、キュレーターとしてのテイストをひけらかしたり、あるいは完全に冒涜的な行為を行うための。

 『きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか』の収録曲では、これらのことの多くが、時に同時進行で行われている。灰野敬二が70歳の誕生日を迎えたわずか数週間後にCDとしてリリースされたこの変形したロックのカヴァー集は、実質的にはパーティ・アルバムであり、クリエイターの音楽的ルーツを探る、疑いようのない無礼講なツアーのようだ。全曲を英語のみで歌う灰野敬二が、角のあるガレージ・ロック・スタイルのコンボ(川口雅巳(ギター)、なるけしんご(ベース)、片野利彦(ドラム))のヴォーカルを務め、ロックの正典ともいうべき有名曲のいくつかを、ようやくそれと認識できるぐらいのヴァージョンで披露している。

 灰野がカヴァー・バンドのフロントを務めるというのはそれほどばかげた考えではない。彼の1990年代のグループ、哀秘謡では、ドラマーの高橋幾郎、ベースの川口とともに、50年代・60年代のラジオのヒット曲の、幻覚的な解釈をしてみせた。ザ・ハーディ・ロックスの前には、よりリズム&ブルースに焦点を当てたハーディ・ソウルがあり、その一方で灰野はクラシック・ロックの歌詞を即興のライブ・セットに取り入れることでも知られていた。つまり、このアルバムが、一部の人間が勘違いしそうな、使い捨てのノヴェルティのレコード(さらに悪くいえば、セルフ・パロディのような行為)ではないことを意味している。

 2017年に、ザ・ハーディ・ロックスを結成したばかりの灰野にインタヴューしたとき、彼はバンドがやっていることを「異化」という言葉で表現した。これは英語では“dissimilation”あるいは“catabolism”と訳されるが、ベルトルト・ブレヒトの、観客が認識していると思われるものから距離を置くプロセスである“Verfremdung”の概念にも相当する。ここでは“(I Can’t Get No ) Satisfaction”のように馴染み深い曲でさえ、じつに奇怪にきこえる。キース・リチャーズの3音のギター・フックが重たいドゥームメタル・リフへと変わり、灰野が喉からひとつひとつの言葉をひねり出すような激しさで歌詞を紡ぐ。驚くべきヴォーカル・パフォーマンスを中心にして音楽がそのまわりを伸縮し、次の“Hey Hey Hey”への期待で、いろいろな箇所で震えて停止してしまう。

 あえて言うまでもないが、灰野は中途半端なことはしない。レコーディング・エンジニアの近藤祥昭が、不規則で不完全な状態を捉えたこのアルバムでの灰野のヴォーカルは、まるで憑りつかれているかのようだ。金切り声や唾を吐く音が多いにもかかわらず、何を歌っているのか判別するのはそれほど難しいことではない。バンドは重々しい足取りでボブ・ディランの“Blowin’ In The Wind”をとりあげているが、それはもっとも不機嫌な不失者のようでオリジナルとは似ても似つかないが、それでもディラン自身が2018年のフジロックフェスティバルで演奏したヴァージョンよりは曲を認識できる。

 注意深く聴くとたまに元のリフが無傷で残っているのがわかるが、音の多くの素材は、不協和音のコード進行や故意に不格好なリズムで再構築されている。このバンドの“Born To Be Wild”では、有名なリフレインに辿り着く前に灰野がジョン・レノンの“Imagine”からこっそりと数行滑り込ませている。“My Generation”では、崩壊寸前の狂気じみた変拍子でヴァースに突進していく。川口が灰野のヴォーカルに合わせて支えるように、しばしば、エフェクターなしでアンプに直接つないだ生々しいギターの音色を響かせる。なるけと片野は、様々なポイントでタール抗の中をかき分けて進むかのように演奏している。

 ビッグネームのカヴァーが多くの人の注目を引くだろうが、ザ・ハーディ・ロックスは、日本のMORでも粋なことをしている。アルバムのオープニング曲の“Down To The Bones”は、てっきり『Nuggets』のコンピレーションの収録曲を元にしていると思っていたが、YouTubeのプレイリストを見て、これが実際には1966年に「骨まで愛して」で再デビューした歌謡曲のクルーナー、城卓矢のカヴァーだと判明した。“Black Petal”は、水原弘の“黒い花びら”をプロト・パンク風の暴力に変えるが、日系アメリカ人デュオのKとブルンネンの“何故に二人はここに”については、灰野にかかっても救いようのない凡庸さだ。

 もっとも異彩を放つのは、アルバム終盤に収録されたアカペラ・ヴァージョンの“Strange Fruit”だろう。これは奇妙な選択であり、「Black bodies swinging in the southern breeze(黒い体が南部の風に揺れる)」という歌詞を静かに泣くように歌い、本当の恐怖を伝える灰野の曲へのアプローチの仕方には敬意を表するが、私はこの曲を再び急いで聴こうという気にはならない。しかし、アルバム全体は非常に面白く、このクリエイターの近寄り難いほど膨大なディスコグラフィへの入り口としては、理想的な作品である。



HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS


きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか
(“You’re either standing facing me or next to me”)


P-Vine Records

by James Hadfield

Until well into the 1960s, cover versions were just something that rock bands did. Nearly half of the songs on the first two Beatles albums were by other artists. The early Rolling Stones were more interested in channeling Bo Diddley than in proving their own abilities as songwriters. But as the LP became the format of choice for rock music, fans began to expect more innovation from artists, while labels came to realise there was more money to be made from original material. Cover versions went from being ubiquitous to something that rock musicians used more sparingly, and intentionally: to pay respects, put a fresh spin on familiar staples, flaunt their curatorial taste, or commit acts of outright sacrilege.

The songs on “You’re either standing facing me or next to me” are many of these things, sometimes all at once. Released on CD just a few weeks after Keiji Haino celebrated his 70th birthday, this collection of deformed rock covers is practically a party album, and a distinctly un-reverential tour of its creator’s musical roots. Singing entirely in English, Haino acts as vocalist for an angular, garage rock-style combo (consisting of guitarist Masami Kawaguchi, bassist Shingo Naruke and drummer Toshihiko Katano), who serve up just-about-recognisable versions of some of the most famous entries in the rock canon.

The idea of Haino fronting a covers band isn’t as absurd as it may seem. His 1990s group Aihiyo, with drummer Ikuro Takahashi and Kawaguchi on bass, did strung-out interpretations of radio hits from the ’50s and ’60s. The Hardy Rocks were preceded by the more rhythm and blues-focused Hardy Soul, while Haino has also been known to incorporate lyrics from classic rock songs into his improvised live sets. All of which is a way of saying that this isn’t the throwaway novelty record that some might mistake it for (or, worse, an act of self-parody).

When I interviewed Haino in 2017, not long after he’d formed The Hardy Rocks, he used the term “ika” (異化) to describe what the band were doing. The word can be translated as “dissimilation” or “catabolism” in English, though it also corresponds with Bertolt Brecht’s idea of “Verfremdung”: the process of distancing an audience from something they think they recognise. Even a song as familiar as “(I Can’t Get No) Satisfaction” sounds downright freaky here. Keith Richards’ three-note guitar hook is transformed into a lumbering doom metal riff, as Haino delivers the lyrics with an intensity that suggests he’s wrenching each word from his own throat. It’s a remarkable vocal performance, and the music seems to expand and contract around it, at various points shuddering to a halt in anticipation of his next “Hey hey HEY.”

As if it needed stating at this point, Haino doesn’t do anything by halves, and his vocals on the album—captured in all their ragged imperfection by recording engineer Yoshiaki Kondo—sound like a man possessed. But for all the shrieks and spittle, it’s seldom too hard to figure out what he’s actually singing. The band’s lumbering take on Bob Dylan’s “Blowin’ in the Wind”—like Fushitsusha at their most morose—may sound nothing like the original, but it’s still more recognisable than the version Dylan himself played at Fuji Rock Festival in 2018.

Listen closely and you can pick out the occasional riff that’s survived intact, though more often the source material is reconfigured with dissonant chord sequences and deliberately ungainly rhythms. The band’s version of “Born To Be Wild” eventually gets to the song’s famous refrain, but not before Haino has slipped in a few lines from John Lennon’s “Imagine.” On “My Generation,” they hurtle through the song’s verses in a frantic, irregular meter that’s constantly on the verge of collapse. Kawaguchi matches Haino’s vocals with a bracingly raw guitar tone, often jacking straight into the amp without any effects pedals. At various points, Naruke and Katano play like they’re wading through a tar pit.

While it’s the big-name covers that will grab most people’s attention, The Hardy Rocks also do some nifty things with Japanese MOR. I was convinced that album opener “Down To The Bones” was based on something from the “Nuggets” compilations, until a YouTube playlist alerted me to the fact that it was actually “Hone Made Ai Shite,” the 1966 debut by kayōkyoku crooner Takuya Jo. “Black Petal” turns Hiroshi Mizuhara’s “Kuroi Hanabira” into a bracing proto-punk assault, though the band’s take on “Naze ni Futari wa Koko ni,” by Japanese-American duo K & Brunnen , is a pedestrian chug that even Haino can’t salvage.

The most out-of-character moment comes near the end of the album, with an a cappella version of “Strange Fruit.” It’s an odd choice, and while I can respect the way that Haino approaches the song—delivering the lyrics in a hushed whimper that conveys the true horror of those “Black bodies swinging in the southern breeze”—it isn’t a track that I’ll be returning to in any hurry. But the album as a whole is a hoot, and an ideal entry point into its creator’s intimidatingly vast discography.

ジェイムズ・ハッドフィールド

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文:松山晋也[9月5日公開]

 9月7日に出るLPが届いた昨日だけで立て続けに3回聴いた。いま、そのハードさに改めて打ちのめされている。LP版は、11曲収録のCD版よりも2曲少ない9曲入りなのだが、「最初からLPを念頭に作ったアルバム」と灰野が語るとおり、サウンド全体のヘヴィネスと密度が強烈で、ハーディ・ロックスというユニット名に込められた灰野の思いもより明瞭に伝わってくる。5月に出たCDを買った人もぜひLPの方も聴いてほしいなと思う。ひとりのファンとして。

 ロックを極限までハードに表現すること──ハーディ・ロックスという名前に込められた灰野の思いは明快である。実際、ライヴ・パフォーマンスも極めてハードだ。灰野+川口雅巳(ギター)+なるけしんご(ベイス)+片野利彦(ドラム)から成るこのユニットでは灰野はギターを弾かず、ヴォーカルに専念している(曲によってはブルース・ハープも吹く)のだが、1回ライヴをやると体調が完全に回復するまで半年かかると本人は笑う。それくらい尋常ではないエネルギーを放出するわけだ。しかし、ハード=ラウドということでもない。バンドの演奏も灰野のヴォーカルもなるほどラウドではあるけど、彼らの表現の核にあるのは音量やノイズや速度では測れない何物かだ。原曲の歌詞やメロディに埋め込まれた思いや熱量にどこまで誠実かつ繊細に向き合えるのか、という “覚悟” が一音一音に刻み込まれている。その覚悟の真摯さ、強固さを灰野は「ハーディ」という造語で表明しているのだと思う。

 ハーディ・ロックスは、海外の楽曲(ロックや、R&B、ジャズなど)や日本の歌謡曲を英語でカヴァするためのプロジェクトとして数年前にスタートした。98年にアルバム『哀秘謡』も出た歌謡曲のカヴァ・プロジェクト=哀秘謡、2010年代にやっていたソウルやR&Bのカヴァ・プロジェクト=ハーディ・ソウルの延長線上というか、総決算的プロジェクトと言っていい。これら3つのプロジェクトに共通しているのは、“なぜ(原曲は)こんな演奏と歌い方なんだ!” という原曲に対する愛と不満だろう。
 今回のアルバム(CD版)に収録された曲目は以下のとおり。このうち⑤⑥の2曲はLP版ではカットされている。

① 城卓矢 “Down To The Bones(骨まで愛して)”
② ボブ・ディラン “Blowin’In The Wind”
③ ステッペンウルフ “Born To Be Wild”
④ エディ・コクラン/ブルー・チア “Summertime Blues”
⑤ バレット・ストロング/ビートルズ “Money (That’s What I Want)”
⑥ Kとブルンネン “Two Of Us(何故に二人はここに)”
⑦ ローリング・ストーンズ “(I Can’t Get No) Satisfaction”
⑧ ドアーズ “End Of The Night”
⑨ 水原弘 “Black Petal(黒い花びら)”
⑩ ビリー・ホリデイ “Strange Fruit”
⑪ フー “My Generation”

 ① “骨まで愛して” と⑥ “何故に二人はここに” は『哀秘謡』でも日本語でカヴァされていたが、今回の英語ヴァージョンと聴き比べてみると、20数年の歳月が灰野の表現にどのような変化/深化をもたらしたかよくわかる。“骨まで愛して” は『哀秘謡』版ではリズムもメロディも極限まで解体されていたが、その独特すぎる間合いと呼吸が今回はロック・バンドとしてのノリへと昇華された感じか。“何故に二人はここに” の『哀秘謡』版は灰野にしては意外なほどシンプルだったが、今回はそのシンプルさに拍車をかけたダイレクトなガレージ・ロック調。灰野の作品でこれほどポップな(演奏のコード進行もヴォーカルのメロディもほぼ原曲どおり!)楽曲を私は聴いたことがない。LPに収録されなかったのは、時間的制限という問題もあろうが、もしかしてシングル盤として別に出したかったからでは?とも勘ぐってしまう。ちなみに灰野が14才のとき(66年)に大ヒットした “骨まで愛して” は、発売当時から灰野はもちろん知ってはいたが、本当に惹かれたのは後年、前衛舞踏家・大野一雄のドキュメンタリー映画『O氏の死者の書』(73年)の中で、サム・テイラー(たぶん)がテナー・サックスで吹くこの曲をBGMに大野が豚小屋で舞うシーンを観たときだったという。また、第二のヒデとロザンナとして売り出されたKとブルンネンの “何故に二人はここに”(69年)は、『哀秘謡』を作るときにモダーン・ミュージック/P.S.F レコードの故・生悦住英夫から「歌詞が素晴らしい曲」として推薦されたのだとか。

 海外の曲の大半は、灰野が10代から愛聴してきた、あるいは影響を受けた作品ばかりだと思われるが、中でも④ “Summertime Blues” と⑧ “End Of The Night” に対する思い入れは強いはずだ。なにしろブルー・チアとドアーズは、灰野のロック観の土台を形成したバンドだし。70年代前半の一時期、灰野は裸のラリーズの水谷孝とともにブルー・チアの曲だけをやるその名もブルー・チアというバンドをやっていたこともあるほどだ。だから、曲の解釈や練り上げ方にも一段とキレと余裕を感じさせる。ジム・モリスンがセリーヌの「夜の果てへの旅」にインスパイアされて書いた “End Of The Night”(ドアーズの67年のデビュー・アルバム『The Doors』に収録)は短いフレーズのよじれたリフレインから成るドラッギーな小曲だが、原曲と同じ尺(約2分50秒)で演奏されるハーディ・ロックスのヴァージョンは、ドアーズが描いた荒涼たる虚無の原野を突き抜けた孤立者としての覚醒を感じさせる。灰野敬二の表現者としての原点というか、灰野の心臓そのもののように私には思えるのだ。

 その他、特に面白いのが、アカペラによる⑩ “Strange Fruit(奇妙な果実)” か。彼らは最初これを演奏付きで何度も試してみたのだが、どうもしっくりこず、最終的にヴォーカルだけにしたのだという。なるほど、この歌で描かれる凄惨な情景、木に吊り下げられた黒い躯の冷たさにここまで肉薄したカヴァはなかなかないだろう。あと、③ “Born To Be Wild(ワイルドで行こう!)” の途中で突然ジョン・レノン “イマジン” のワン・フレーズが挿入されているのも興味深い。ノー・ボーダーな野生児による宇宙との一体化という歌詞の共通点から挿入したのか、単なる直感や気まぐれなのか、そのあたりは不明だが。

 これらのカヴァ・ワークは、“何故に二人はここに” 以外はいずれも、ちょっと聴いただけでは原曲が何なのかわからないほどメロディもリズムも解体されており、ビーフハート作品のごとく極めて微妙なニュアンスに溢れた演奏の背後には、かなり長時間の集団鍛錬があったはずだ。抽象的な言葉を多用する灰野のヴィジョンをサウンドとして完璧に具現化するためだったら、すべての楽器を灰野自身が担当した方が録音もスムースだろうし、実際それは可能だと思うのだが、それをあえてやらないのがこのユニットの醍醐味だろう。誤解や齟齬によって生まれる別の匂いを楽しむこと、「わからないということを理解する」(灰野)ことこそが灰野にとっては大事なのだから。

 振り返れば、灰野の目はつねに “音楽の始原” という一点だけを見つめてきた。灰野のライヴでいつも驚かされるのは、どんな形態、どんな条件下であっても我々は音楽が生まれる瞬間を目撃できるということである。ここにあるのは、誰もが知っている有名な曲ばかりだが、同時に誰も聴いたことがない曲ばかりでもある。

松山晋也

Alva Noto + Ryuichi Sakamoto - ele-king

 『Vrioon』(2002)を皮切りに、先日は『Insen』(2005)もリマスター再発された、アルヴァ・ノトと坂本龍一のコラボレーション、〈V.I.R.U.S.〉シリーズ、9月9日にはその第三弾として2006年にリリースされた『revep』が登場。前2作よりも坂本龍一のピアノがフィーチャーされた本作には、“Merry Christmas Mr.Lawrence”のリミックス・ヴァージョンとも言えそうな“ Ax Mr.L.”も収録。
 なお、今回はオリジナル盤にボーナストラック3曲を追加してのリリース。


◆ボーナストラックとして収録された「City Radieuse」が使用されているカールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)の2012年の映像作品『future past perfect pt.02 -cité radieuse』 



Alva Noto + Ryuichi Sakamoto
Revep (reMASTER)

NOTON
流通:p*dis / Inpartmaint Inc.

Prison Religion - ele-king

 なははは、愛の夏ならぬ怒りの夏だった。やかましい。なんてやかましいことか。これでは眠れないぞ。たたでさえ眠りが浅いというのに、本当に止めて欲しい。が、しかし彼らは手加減などしなかった。この夏、耳を塞ぎたくなるノイズを高々と鳴らしていたのは、ヴァージニア州リッチモンドのパーカー・ブラック(Poozy)とウォーレン・ジョーンズ(False Prpht)のふたり、UKのリー・ギャンブルのレーベル〈UIQ〉からリリースされた、牢獄宗教(プリズン・レリジョン)という名の彼らのプロジェクトによる最新アルバムだった。
 「プリズン・レリジョンを聴くことは、体制を転覆させるために必要な素早い反射神経を身につけるために神経系を鍛えるようなものだ」と書いたのは『Wire』誌だが、こやつらは、ディストピアであることがもはや当たり前になってしまっている現状から目をそらさず、それをよしとしている体制に本気で怒っているのだ。現実社会で人びとが強いられている制度的な苦しみに共鳴し、戦闘的なマシンガン・ビートを打ち鳴らす。超アグレッシヴな周波数を発信し、ノイズまみれのラップ……いや、もはやラップではない、ほとんど原始的な叫びに近い声で訴える。(しかも、複数の評者が指摘していることだが、クラブ・サウンドともリンクするこのサウンドは決してマッチョではないのだ)

 悪酔いしそうなこの圧倒的な音楽を、本人たちはアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの1957年のアルバム、『ハード・バップ』に重ねている。同じように、プリズン・レリジョンの『ハード・インダストリアル・バップ』も時代への挑発であると。あるいはまた、彼らはこの激ハードなエレクトロニック・ノイズ・アルバムを、避けては通れない、作らなければならなかった作品としても見ているようだ。まあ、なんとかなるでしょ、などと彼らはのんきなことを考えていないという、それを音で表現したらこうなったと。当たり前の話だが、怒りはとは愛と裏表の関係にある。ノイズ音楽を聴いて涙した経験がある人にはわかるだろう。だからこれは感動的な作品でもあって、いや、しかしそれにしてもやかましいんだが。

J Jazz Masterclass Series - ele-king

 これまで、松風鉱一トリオ、相澤徹カルテット、森山威男、寺下誠、宮坂高志、峰厚介などなど、和ジャズの発掘シリーズ(J Jazz Masterclass Series)を続けているイギリスの〈BBE〉レーベル、9月に2枚のリイシュー盤をリリースする。

 1枚は、ピアニスト、中島政雄のデビュー・アルバム『Kemo-Sabe』 。1979年に〈ユピテル・レコード〉からリリースされた本作は、繊細で洗練された演奏とパワーに満ちた、勢いのある演奏のバランスが絶妙にとれた、和ジャズの分野では捉えどころのない名盤。エレクトリック・フュージョン全盛の時代に発表された本作は、アコースティック色に満ちている。ハービー・ハンコック作で、クィンシー・ ジョーンズや笠井喜美子などがカヴァーした“Tell Me A Bedtime Story”も収録。解説には、中島政雄本人の最新独占インタヴューが掲載。彼のキャリアや本作の制作の背景について語られている。ジャケットも最高だ。

 もう1枚は、鈴木勲が手がけた女性シンガー、宮本典子の、1978年に発表した、ソウル/ジャズの逸品であるデビュー作『Push』。中古市場でオリジナル盤の価格が高騰しているなかの、待望のリイシューになる。笠井紀美子、阿川泰子をはじめとする女性ジャズ・シンガーのブームの真っ只中に録音された名作、この機会にぜひどうぞ。


Masao Nakajima Quartet
Kemo-Sabe‏/キモサベ』

BBE Music


Noriko Miyamoto with Isao Suzuki
Push/プッシュ

BBE Music


Nwando Ebizie - ele-king

 先日……といってももうかれこれ2ヶ月以上前の話だが、坂本慎太郎のライヴに行って、ぼくがもっとも感動したのはベースだった。OOIOOのAYAのベースは、録音物にはない迫力で身体に響いてくる。それは宇宙的であり、瞑想的でもあったが、あの躍動感は傑出していた。
 女性には男性にはないグルーヴ感覚があるとぼくが確信したのは、テクノやハウス・ミュージックを好きになり、クラブで踊るようになってからだ。クラブに通いだすと、フロアで、ちゃんとリズムに乗って踊りたくなるもので、ロックのライヴのように頭の上下運動や手を振り回したりとか、そんな単純な動きしかできない自分も、それこそいつぞや三田格も書いていたように、腰で踊ることを会得したいと思ったのだ。まあ、壁に張り付いてビールを片手に頭をぐらぐらさせているような男性などまずいなかった時代だったし、踊りたいからそこに通っているわけで、おのずとダンスという行為に自覚的になるわけだが、はっきり言って、ダンスフロアで滑らかにリズムに乗れている多くは女性だった。だからぼくは、女性の動きを教師として踊り方を学んだ。ハウスはもちろんのことドラムンベースのパーティでも、プロのダンサーでもないのにちゃんとリズムに乗れているのは女性で、そこには男性にはない柔軟な身体感覚があるとしかぼくには思えない。フロアでつね女性が目立っていたのは、踊りがうまいからだった(いまでも、そうなのかな?)。
 
 Nwando Ebizie——「ンワンド・エビジ」のカタカナ表記で合っているのだろうか、わかる方がいたら教えてください。とりあえずここはンワンド・エビジで進めます。
 ナイジェリア系で、UKのウェスト・ヨークシャー州トッドモーデンを拠点にしている彼女は、音楽家であり、研究者でもある。2007年頃からアフリカの哲学や宇宙論、神話、〈Black Atlantic〉における儀式の文化を研究しているという。しかも彼女はダンサーでもある。
 エビジは最近、マシュー・ハーバートの〈アクシデンタル〉から『The Swan』なるアルバムを出したばかりで、これがじつになんというか、シャバカ・ハッチングとビョークとOOIOOをナイジェリアのひとつのスタジオに詰め込んだような、衝撃的で、ユニークな音楽だった。因習打破的で、リズムが魅力的で、そしてその音楽はジャンルの壁を越えている。母系社会の可能性を追求し、現在必要とされているものを増幅させるために古代を参照していると〈アクシデンタル〉は解説している。

 アルバムは、それこそサンズ・オブ・ケメットの扇情的な旋律と歩を合わせるかのようにはじまる。そして、ハイパー・ファンク・パンクの“I Seduce”へと展開。この曲は、その次の“The Swan”へと繋がる、共同体的な雰囲気をもったダンス・サウンドだ。先行シングルとして発表された“Myrrha”はアート・アンサンブル・オブ・シカゴを彷彿させるアヴァン・ポップといった趣で、“Liturgy”はムーア・マザーの『Sonic Black Holes』の隣に置きたい曲かもしれない。アリ・アップを思い出さずにはいられないコズミックなダブ空間“True Believer”のような曲もあれば、シャンガーンをやったレインコーツのような“No!”とか、どの曲にも面白いアイデアが詰まっている。最後の2曲、催眠的なリズムの“Renewal”、そしてアフロ版ビョークと形容できそうなクローサー“ Something Like Empathy ”もかなり良い。
 
 歌詞には、(反資本主義、インターネット文化の腐敗など)いろいろな意味が込められてるらしいが、ぼくにはわからないので割愛する。「この宇宙には、現在、未来、過去に存在する女性たちの社会があり、このアルバムはそのメタ・ストーリーのいち部です。彼女たちが見つけたもの、話しているもの、祝っているものを通して語られています」と彼女は『クワイエタス』の取材で話しているが、そのなかで、エビジは人種という概念は西欧の植民地主義が作ったものであることを強く説いている。黒人は白人から黒人と呼ばれたことで自分が黒人であることを認識するというこれは、学者ポール・ギルロイの「反人種(against race)」という考え方と同じで、彼女は植民地化される前のアフリカの音を収集し、作品のなかに注入にしている。これが彼女のいう「過去」から「未来」へという意味だ。
 ちなみに人種とはフィクションだとするギルロイの「反人種」なるコンセプトは、黒人性に特別な執着をもたなかったデトロイト・テクノ第一世代ともリンクしているのだが、アメリカでは受けなかったそうな。黒人社会学者W.E.B.デュボイスがいう「二重意識」、つまり他人の目を通して自己を見る感覚を内包しながら生きること、白人からの蔑称「ニガ」を逆手に取ってひとつの立派な芸(ラップ)にさえしているアメリカでは、それはたしかに夢見るユートピアも良いところ、理想主義的すぎる話だったのかもしれない。だが、いまここにその理想主義に準じるアート作品が生まれたという事実に、ぼくは密かに期待を寄せている。

Nick Cave & Warren Ellis - ele-king

 ザ・バッド・シーズやグラインダーマンという栄光がありながら、アーティストとしてさらに光沢を増しているニック・ケイヴとウォーレン・エリスのふたり。昨年はアルバム『Carnage』が多方面から高く評価された彼らが、その次に手がけたのが映画『ベルベット・クイーン ユキヒョウを探して』のサウンドトラックだった。

 もとよりこのふたりはいくつもサウンドトラックを手がけているのだが、今回は自ら「やりたい」と申し出たいわくつきの作品。しかも、チベット高地に生息する滅多に見ることができない動物、ユキヒョウを追い求める自然ドキュメンタリーとなると、いっしゅんピントが合わないザ・バッド・シーズのファンもいるかもしれないが、これがまた、ライ・クーダーの音楽が『パリ・テキサス』の一部であったように、ケイヴとエリスの歌とサウンドは『ベルベット・クイーン』とばっちり合っているのだ。この神秘的な自然を描写する映像の世界には、やはり一流の詩人が必要だし、その詩人の言葉と崇高な自然との溝を埋めることのできる一流の音楽家の腕前が必要だった。


 そんなわけで、これは音楽ファンもチェックして欲しい映画です。野生写真家と小説家のふたりの冒険を軸にした物語もじつに感動的で、最後に流れるニック・ケイヴの歌がまた泣かせる。
  8月27日から新宿K’s cinema 全国順次公開予定。詳しくはホームページをご覧ください。そういえば、グラインダーマンのジャケットは動物だった……
 


Takuma Watanabe - ele-king

 渡邊琢磨が10月1日、河口湖円形ホールにてライヴ公演をおこなう。
 昨年イギリスのレーベル〈Constructive〉よりリリースされた渡邊琢磨のアルバム『ラストアフタヌーン』と新作初演を、弦楽アンサンブルにドラマー山本達久を迎えた編成で演奏。またスペシャル・ゲストとして、ベルリンから次世代ECMを担う英国のピアニスト、オルガニスト、Kit Downes(キット・ダウンズ)と、ニューヨークからキップ・ハンラハンのディープルンバへの参加ほかで著名なキューバ出身ドラマー、Daphnis Prieto(ダフニス・プリエト)がリモートで参加する。

【日時】
2022年10月1日(土)
11:00〜21:00(予定)

【出演】
■12:00-13:15
地行美穂(vn1)波多野敦子(vn2)角谷奈緒子(va)橋本歩(vc)千葉広樹(cb)山本達久(dr) 渡邊琢磨(cond)Guest:Daphnis Prieto(drum)from New York ※海外オンライン出演

■19:00-20:15
渡邊琢磨アンサンブル
地行美穂(vn1)波多野敦子(vn2)角谷奈緒子(va)橋本歩(vc)千葉広樹(cb)山本達久(dr)渡邊琢磨(cond)Guest:Kit Downes(Charch organ)from Berlin ※海外オンライン出演

【会場】
河口湖円形ホール:https://stellartheater.jp/halls/enkei/
〒401-0304 山梨県南都留郡富士河口湖町河口3030
TEL:0555-76-8822
駐車場について:https://stellartheater.jp/halls/stellar/parking/

【料金】
1プログラム:¥5,000(前売)¥6,000(当日)
1日通し券 :¥10,000(前売)¥12,000(当日)
※チケット販売は2022年8月19日より

詳細:https://www.jjazz.net/jjazznet_blog/2021/08/post-89.php

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