「IO」と一致するもの

R.I.P. Ras G - ele-king

 LAのビート・シーンを代表するアーティストのひとり、Ras G こと Gregory Shorter Jr. が7月29日に亡くなった。直接の死因は発表されていないが、昨年12月、呼吸に異常を感じて救急搬送され、肺炎、高血圧、糖尿病、甲状腺機能低下、心不全と診断されたことを自らの Instagram で公表している。体の不安を抱えながらも、今年に入ってからは2月にハウス・アルバム『Dance Of The Cosmos』をリリースし、続いてビート集『Down 2 Earth, Vol.3』、『Down 2 Earth, Vol.4』を相次いでリリース。またLAローカルのイベントにもいままで通りに出演し続け、さらに今年6月に長野・こだまの森で開催されたフェス『FFKT』への出演も開催の約1ヶ月前に発表されていたが、しかし、健康上の理由で来日はキャンセルとなっていた。
 突然の訃報に際し、Ras G の盟友である Flying Lotus を筆頭に、LAビート・シーンの関係者はもちろんのこと、世界中から様々なアーティストが SNS にて追悼のメッセージを発表。そして、Ras G の遺族が彼の作品を未来へと遺すために基金を設立すると、それに呼応して、亡くなった6日後にはLAにてドネーション(寄付)を目的とした追悼イベント《Ohhh Rasss!》が開催され、入場が制限されるほどの大盛況になったという。また、《Low End Theory Japan》への出演や単独ツアーも含めて、幾度も日本を訪れていた Ras G であるが、この原稿を書いている翌日の8月10日には中目黒 solfa にて追悼イベント《In Loving Memory of Ras_G . . . Fund Raising TYO JPN》が開催される予定で、一晩で40組ほどのDJの出演が予定されている。音楽性はもちろんこと、彼の暖かい人間性なども含めて、Ras G がこの日本でもどれだけ愛されていたかが伝わってくる。

 Flying Lotus と共に〈Brainfeeder〉の設立にも携わったという Ras G だが、彼のアーティストとしてのキャリアはまさにLAのヒップホップの歴史と密接に繋がってきた。アフリカ系アメリカ人が多く住むサウスセントラルの中でも、特にアフリカン・カルチャーの濃いエリアとして知られるレイマート・パークが彼の出身地であるのだが、そのレイマート・パークからほど近いところにあった Good Life Café でのオープンマイク・イベントや、さらにそこから派生した『Project Blowed』の現場に彼は十代の頃から足を運んでいたという。つまり Freestyle Fellowship や Jurassic 5 らを輩出した、90年代から2000年前半にかけてのLAアンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンが彼のルーツとなっているわけだが、ラップよりもその後ろで鳴り響くビートに強い魅力を感じて、彼はビートメーカー/プロデューサーとしての道を選ぶことになる。
 2004年には、彼自身が店員として働いていたパサデナのレコード・ショップ、〈Poo-Bah Records〉にて自ら設立にも関わったレーベルより、同じくビートメーカーの Black Monk とのスプリットEP「Day & Night」をリリースし、これが彼のデビュー作となる。まだビートを作り始めたばかりの、荒削りな状態であった彼の才能に素早く気付いた Carlos Niño は、Dwight Trible & The Life Force Trio のアルバム『Love Is The Answer』にてプロデューサーのひとりとして起用。この作品をきっかけに Ras G はビートメーカー/プロデューサーとして本格的な活動を開始することになる。そして、現在はUKを拠点としているDJの Kutmah がオーガナイズしていた伝説的なイベント《Sketchbook》に Flying Lotus、Dibiase、DaedelusGeorgia Anne Muldrow らと共にレギュラー・メンバーとして出演し、彼らが中心となってLAビート・シーンの基盤が形成される。さらに Daddy Kev、D-Styles らが立ち上げた《Low End Theory》や〈Brainfeeder〉の成功によってシーンは一気に爆発することになる。
 そんなLAビート・シーンの創生期に、Ras G はEPのリリースやコンピへの参加を経て、〈Poo-Bah Records〉から Ras G & The Afrikan Space Program 名義で2008年にファースト・アルバム『Ghetto Sci-Fi』をリリースする。ヒップホップ、ダブステップ、スピリチャル・ジャズ、レゲエなど様々な音楽的要素がミックスされ、さらに彼のメンターである Sun Ra からも多大な影響を受けた、アフリカン・カルチャーと宇宙が融合したアフロフューチャリズムも大きなバックボーンとなったこの作品によって、彼はLAビート・シーンの最重要アーティストのひとりとしてLAローカル以外からも認識されるようになり、アルバム・タイトルである “Ghetto Sci-Fi” は彼のサウンドの代名詞にもなっていく。以降は〈Poo-Bah Records〉だけでなく、〈Brainfeeder〉や〈Leaving Records〉などからシングル、EP、アルバム、ビート・テープ、ミックスCDなど次々と作品をリリース。さらにラッパーの The Koreatown Oddity とのプロジェクトである 5 Chukles を含む、様々なアーティストのプロデュースやリミックスなども多数手がけ、自らのスタイルと地位を確立することになる。

 そんな文字通りのLAビート・シーンを代表する Ras G であるが、良い意味でアーティストらしからぬキャラクターも、彼の大きな魅力であった。筆者もLAに住んでいた頃に、様々な現場で彼と遭遇したが、自ら出演するイベントであっても、常にメローな雰囲気は崩さず、しかし、一旦、ステージ上で彼の愛機である SP-404 を叩き始めれば、スピーカーから爆音で流れてくるファットなビートとのギャップにいつも驚かされた。ちなみに最も彼と遭遇した場所は、おそらく《Low End Theory》だと思うが、出演しない週であっても、かなりの頻度で遊びに来ていて、あの場は彼にとっての本当の意味でのホームであった。そういえば、あるとき、レコードを掘りに〈Poo-Bah Records〉へ行った際にたまたま彼がお店にいて、その日がちょうど《Low End Theory》が開催されている水曜日だったので、車を持っていない彼を自分の車に乗せて、一緒に《Low End Theory》まで行ったことがある。いつもは挨拶程度の関係であった彼と一緒にLAの街をドライブしてるのが少し不思議で、そして嬉しくもあった。
 最後に Ras G と会ったのが、一昨年(2017年)の3月に来日したときで、会場となった Club Asia の楽屋で喋った彼は、LAで会っていたときと何ひとつ変わらないメローな雰囲気を纏っていたのを記憶している。結果的には最後の来日となった同年8月のイベントには行けなかったが、しかし、LAの《Low End Theory》に行けば、いつでも彼の姿があったように、またいつかすぐに会えるだろうと漠然と思っていた。だからこそ、彼の訃報を聞いてからずっと、心の中にぽっかりと穴が空いたような感覚がずっと続いている。その感覚の意味を確かめるためにも、明日は中目黒 solfa のイベント《In Loving Memory of Ras_G . . . Fund Raising TYO JPN》へ行こうと思う。

In Loving Memory of Ras_G . . . Fund Raising TYO JPN

Battles - ele-king

 00年代半ばに登場し、いわゆるマスロックの文脈に大きな衝撃を与え、10年代以降も革新的な試みを続けてきたNYの実験的ロック・バンド=バトルスが、通算4枚目となるオリジナル・アルバム『Juice B Crypts』をリリースする。前作『La Di Da Di』が2015年だから、4年ぶりのスタジオ盤だ。いつの間にかデイヴ・コノプカが脱退し、イアン・ウィリアムスとジョン・ステニアーのデュオになってしまった彼らだけれど、ゆえにもしかしたら方法論も変化しているかもしれない。イエスのヴォーカリストや台湾の落差草原 WWWW、シャバズ・パレセズにチューン・ヤーズから鼓童のメンバーまで、相変わらず独特のゲストたちが参加している模様。アナウンスとともに新曲“Titanium 2 Step”が公開されている。いまバトルスが打ち鳴らそうとする音楽とは、はたしてどのようなものなのか? リリースは10月11日(日本先行発売)。うーん、秋まで待ちきれないぞ。

[9月27日追記]
 2週間後に待望の新作『Juice B Crypts』の発売を控えるバトルスが、同アルバムより新たに“A Loop So Nice…”とセニア・ルビーノスをフィーチャーした“They Played it Twice”の2曲を公開。相変わらずかっこいいわー。11月の来日情報はこちらから。

[10月31日追記]
 まもなく来日公演を迎えるバトルズが、最新作『Juice B Crypts』より新たに“Fort Greene Park”のMVを公開した。ディレクターを務めたのは、スケートボード・ヴィデオの制作で知られる映像作家のコリン・リード。なお29日には彼らのボイラー・ルームでのパフォーマンス映像も公開されており、“Ice Cream”や“Atlas”などトリオ~クァルテット期の代表曲も演奏されている。いやー、ライヴが楽しみです。

interview with South Penguin - ele-king

 South Penguin の名をはじめて耳にしたのは、おそらく2015年頃、Taiko Super Kicks のメンバーからだったと思う。そのときの会話は才能豊かな若者の登場を私に強く印象付けるものだったと記憶している。後に人を介して邂逅することのできたリーダーのアカツカ氏は、当時大学生だったにもかかわらず、懐の大きさと人懐こさを抱えた好人物であった。その際に、岡田拓郎氏をプロデューサーに迎えデビューEP(「alaska」)を制作している旨も聞いていたのだが、果たして仕上がった作品を聴いてみて、非常に繊細な美意識に貫かれた高クオリティのインディー・ポップぶりに、その磊落(そうにみえる)な人柄とのギャップに少し驚きを覚えたりもしたのだった。
 以来 South Penguin というバンド並びにアカツカ氏は、私の音楽地図の中で不思議な存在感を占めている。2017年には、メンバーの大量脱退という決して慶賀すべきでないエポックを経ることで、一時期は音楽活動に膿み沈潜する期間もあったと言うが、見事な出来栄えのセカンドEP「house」が届けられると、やはりその妙味溢れるインディー・ポップに魅せられもした(また、活動の本格再開を陰ながら願ったりもした)。その後再びアカツカ氏に会うことになるのが確か昨年の秋ころで、プロデューサーの岡田拓郎氏とともに筆者が駐在する某スタジオへレコーディングに現れたのだった。そのとき、いよいよファースト・フル・アルバムを制作中であること、充実のサポート・メンバーを得てライヴ活動も順風におこなっていること、そしてアジア各国でにわかに人気者になっている、というようなことを聞いたのだった。冗談なのか本気なのかわからない皮肉を小気味よく繰り出す様に、かえってその活動の充実を感じ、ささやかながらのいちファンとして安堵するとともに、アルバムへの期待感を高めることにもなった。

 果たしてここに完成したアルバム『Y』は、これまでの South Penguin の堂々たる集大成にして、新たなスタートの門出を飾るに相応しい素晴らしい内容になっている。これまでの作品に聴かれたような内外のインディー・ロック~ポップの前線との共振や様々な音楽遺産への確かなパースペクティヴは更にその深度を増し、作曲、作詞、アレンジ、演奏、歌唱のあらゆる面で格段の音楽的伸長が認められる。
 繊細と磊落、緊張感とリラクゼーション、妙なる機微と豪放なダイナミズムが不思議にバランスするような本作はどのようにして制作されたのか。また今回再び音楽と対峙するに至るまで、アカツカ氏がどのような彷徨を経てきたのか、単なる「サポート」の仕事を超えて取材にまで参加してくれたサポート・メンバーたちを交えながら、じっくりと話を聞いた。

日本ってなんだかんだ集団意識がすごく強くある気がしていて。音楽をいわゆる「シーン」みたいなものとして捉えがちというか。大づかみのふわっとした空気感が支配力をもって、気づくとみんながそっちに引き寄せられていく。いま日本は、音だけで勝負していくのは難しい環境にあると思います。

まずは新作に至るまでのお話を訊きたいんですが、2017年に一旦アカツカさん以外の全メンバー脱退という転機を経ていますよね。辛い思い出だったら話さなくてもいいんですけど、なぜそういったことが起きたんでしょう……?

アカツカ:ア~、思い出すのも辛い……話すのやめておこうかな……っていうのは嘘で、単純にそのときのメンバーが仕事を始めたりして忙しくなってしまったっていうのだけですね。

Twitterでアカツカさんが、このアルバム作る以前、一時は音楽活動をやめようかと思っていた、と投稿していたのを見ました。

アカツカ:そのときの一斉脱退があって、思うようにバンド活動ができない状態が続いたので、「このまま普通に仕事して社会の歯車として経済を回していこうかな」とか考えていた時期があったんです。

そこから今回のリリースに至るまでになったわけですけど、やっぱり現在のサポート・メンバーと出会って再びライヴをできるようになったっていうのが大きかったんでしょうか?

アカツカ:そうですね。以前もサポート・メンバーに何人か入ってもらってその都度その都度流動的なメンツで活動したりもしたんですけど、みんな急遽集まって演奏を合わせるには僕の楽理的な知識や技量が足りなくて。だから、サポート・メンバーとはいえどもパーマネントな布陣で続ける方が自分にあっているかなって思っていたんです。そんな中でいまのメンバーと出会って、それからはずっとこのメンツですね。

確かに、アルバムからも「サポート・メンバー」というより更にコミット度合の深いアンサンブルを感じました。どういう出会いだったんでしょうか?

額賀涼太(bass):僕は学生時代からアカツカくんの友達で、South Penguin の発足から一緒にやっていて。

ニカホヨシオ(keyboard):僕はさっきアカツカの話にあった、うまく活動できていなかったっていうタイミングからの付き合いですね。前作EPの「house」のレコーディングに参加したのがきっかけでズルズルと……

アカツカ:まさに終わりの始まり……(笑)。元々みんな知り合いだったわけじゃなくて、音楽活動の中で出会った人が多いですね。

メンバーの中で誰々がバンマスとかありますか?

アカツカ:さっきも言った通り僕があまり譜面とか楽理的なことがわからないので、主にニカホくんにそういう面をクリアにしてもらっている感じです。自分が弾いているギターのコードが何なのかも良くわかってないし、そもそも一小節がどれくらいの長さなのかわからないというプチ問題をかかえていて……。

ニカホ:プチではないね(笑)。僕だけじゃなくて、それぞれアレンジもできるし、みんなバンマス感のあるメンバーですね。

このところ、いま South Penguin は中国とかアジア各地ですごく人気になっているって聞いたんですが。それこそ向こうだと tofubeats と同じくらいの集客力がという噂も……。

アカツカ:いやいや!(笑)。それは大きな間違いですね。

そうなんですか? 前お会いしたとき、「中国だったら300人お客さん来てくれるけど、東京だったら3人」って言ってませんでしたっけ?(笑)

アカツカ:あ~、そんなこと言った気がするなあ(笑)。完全に中国での集客数は盛ってますね。なんなら東京での集客も盛ってます……。

(笑)。

アカツカ:でもまあ、これまでアジアで度々ライヴをさせてもらっているし、ありがたいことに熱心に聴いてくれるお客さんがいることは事実ですね。

アジアと日本国内のシーンってやはり雰囲気が違う?

アカツカ:うーん、どうだろう。日本で僕らの活動を知ってくれている人ってまだまだかなり少ないっていう感覚があるんですけど、中国とか台湾に行くと、向こうのお客さんは僕らのことを僕らが思っている以上にちゃんと知ってくれた上で足を運んでくれているし、熱心に音楽聞いているということをアピールしてくれる人が多い気がします。日本でライヴをやるときよりも、向こうのお客さんと話したり、ライヴへのレスポンスを観ているときのほうが、みんな僕らのことを好きでいてくれているんだという実感はありますね。

なぜそういった違いがあるんだと思いますか?

アカツカ:そうですねえ~。僕らって基本的に捻くれた人間なんですけど、海外に行くとその要素に言語のフィルターがかかってあまり伝わらないから、とかかな(笑)。日本だとつい言動や挙動でにじみ出ちゃうというか……(笑)。

ニカホ:いやいや(笑)。単純に中国や台湾のお客さんはホットな人が多いよね。

アカツカ:日本ってなんだかんだ集団意識がすごく強くある気がしていて。「こういう人たちと一緒によくライヴしているこういう人たち」みたいに、音楽をいわゆる「シーン」みたいなものとして捉えがちというか。もちろん音楽自体も聴いているとは思うんですけど、「こういう感じでいま盛り上がっているよね」っていう、大づかみのふわっとした空気感が支配力をもって、気づくとみんながそっちに引き寄せられていくっていうのがよくある気がしていて。でも海外の人たちは、遠く海を隔ててそういう「シーン」みたいな空気感から離れているし、自然ときちんと音で判断してくれる環境になっているっていうのはある気がしますね。まあ、本来こういう話はあまり音楽をやってる側が言うべきことじゃないとは思うんですけど……いま日本は、「あのバンドいまグイグイ来ているよ」みたいな感じがないと、音だけで勝負していくのは難しい環境にあると思います。色々なカルチャーの中で特にいまポップ・ミュージックっていうのがそういう傾向にあるなあと思っていて。

昔から普通に美しいものに惹かれるところがあって。箱根駅伝とか、スポーツのキラキラした素直な感動のドラマみたいなのも好きで、それをよくある感じに斜に構えて見たりもしないし。普通にめちゃくちゃ美しいなって思う。

以前SNSで「日本の音楽業界には失望している」って言ってましたよね? 具体的にはどんな部分が……?

アカツカ:よく読んでますね(笑)。実はそう思ってしまう結構具体的な経験があって……。僕らが大好きで交流もある海外アーティストの来日公演に僕らが呼んでもらえなかったっていうのがあって。ああ、こういう規模感のところでもやっぱり政治的な部分で動いていくんだなあっていうガッカリ感。もちろん興行なわけでビジネスとしての側面も大切だと思うんですけど、僕らが信じてきた「インディーズ」っていう世界は、そういう政治的な部分じゃなくて、もう少し夢と希望を与えるものであってほしかったなあというのがあって。あと、仲良いと思ってた人からSNSのフォロー外されてたり……「ああ、こういうのも日本の音楽業界のクソな部分だな」って……。

いや、それは関係ないでしょ(笑)。まあ、ある文化圏の中では一種のサンクチュアリであったはずの「インディー」っていう概念自体が産業構造に組み入れられて資本主義の中で洗練されてきてしまった感じはここ数年ありますよね……。

アカツカ:そうなんですよ。実はそういうのに疲れてしまったのもあって、個人的にバンドをやることが億劫になっちゃってたっていうのもあります。まだ若いし(注:アカツカ氏は現在25歳)もう一度固定メンバーを揃えてバンドとしてガッツリやるってのも全然できると思ってたんですけど、一方で、そこまでしてこの日本でバンドをやることって何か意味あるのかな? って考えちゃったり。

そこを経て、いま一度音楽に立ち向かっていった上で完成されたのがこのアルバムですよね。それにあたって強く刺激を受けた人達として、コナン・モカシン、トーキング・ヘッズ、松任谷由実、吉岡里帆、霜降り明星ってツイートされているのを読んだんですが、コナン・モカシンやトーキング・ヘッズは音楽的な要素としてわかるんだけど、吉岡里帆と霜降り明星? って思って。すごいラインナップだなと。

アカツカ:昔から、実は音楽以外のカルチャーへの興味のほうが大きいところがあって。バンドをやる意欲が完全に失われていたときにその二組に大きな刺激をもらったんです。吉岡里帆さんも霜降り明星も僕と歳が近いっていうのがまず大きいかな。今回のアルバムのテーマに「美しさ」っていうのがあるんですけど、昔から普通に美しいものに惹かれるところがあって。箱根駅伝とか、スポーツのキラキラした素直な感動のドラマみたいなのも好きで、それをよくある感じに斜に構えて見たりもしないし。普通にめちゃくちゃ美しいなって思う。だから、同世代ですごく頑張っている人が普通に好き。吉岡里帆さんや霜降り明星は単純に彼らのやっていることに興味をもったのが入り口ですけど、インタヴューを読んだりしてその人たちを深く知っていくことで、同世代でこんなに頑張っていて自分で美しいと思える活動をしている人がいるっていうのにすごく勇気をもらって。

ひねくれていないものに美しさを感じるというのは、これまでのアカツカさんの発言からするとちょっと意外な気も。彼らの魅力って、いわゆる「セルフ・プロデュースに長けている」的なこととも違う?

アカツカ:そう。策略立てて自分を巧いこと見せている、とかとも違う。吉岡里帆さんがテレビでとある詩を朗読していて、その詩の世界に入り込んで泣いてしまっているところを観たんですけど、「この涙はめちゃくちゃ美しい!」と感動しまして。そういえば、(霜降り明星の)粗品さんもめちゃくちゃ泣きますしね。

松任谷由実、コナン・モカシン、トーキング・ヘッズは?

アカツカ:ユーミンとトーキング・ヘッズは単純に自分の音楽的なルーツなので。コナン・モカシンはバンドを始めて色んな音楽をディグっていく中で知った僕にとっての最新のヒーローです。

今回のアルバム制作に関してもそれらの音楽から焚き付けられることも多かった?

アカツカ:超あります。コナンとかトーキング・ヘッズに関しては相当オマージュをささげてます。過去の音楽含め、そういう元ネタみたいなのもめちゃくちゃあるから、どうか皆さんにはうっすらと聴いて欲しい(笑)。

(笑)。そういうルーツ探しも聴く者にとっての大きな楽しみだと思います。曲作りはどんなプロセスでおこなわれているんでしょうか?

ニカホ:アカツカくんがビートとメロディーの乗った簡単なデモを作ってきて、それをひたすらみんなでスタジオで練るっていう比較的オーセンティックなやり方です。

宮田泰輔(guitar):曲によってはデモの段階で相当作り込まれていたり、みんなでアレンジしたり、色々なパターンがありますね。

そうすると、日常的に相当頻繁にスタジオに入っている感じですね。

アカツカ:そうですね。サポート・メンバーとはいえども、ライヴの前に一回合わせてとかではないですね。曲作りの段階から全ての制作の過程に参加してもらっています。具体的なアレンジにもメンバーの意見がかなり入っています。

ニカホ:なんなんだろうね、この関係性って。一般的な「サポート」っていう言い方もしっくり来ない関係だよね。

アカツカ:かといって「ひとつのバンドのメンバー」っていうような一枚岩感があるわけでもなく……(笑)。

ヒップホップでいう「クルー」的な……?

アカツカ:ああ、それが一番近いのかもしれない。

これまで同様、今作にも岡田拓郎くんがプロデューサーとしてガッツリ関わっていますね。盤石の信頼関係なんだろうな、と感じます。

アカツカ:そうですね。やっぱり僕はバンドをやっていく上で、マーケティング的な理由で何かに音楽自体を寄せていくってことをしたくなくて。もちろん売れたいとかバンドの規模を大きくしていきたいっていう気持ちはあるから色々音以外の面で考えることもあるけど、そのために音の方を変えるってのは決してしたくないので、音の面に関しては絶対の信頼を置いている人たちとしかやりたくなくて。

岡田くんも最もそういうマーケティング的発想の音楽作りを嫌う人ですもんね。

アカツカ:そう。「早く売れてよ」とはいつも言ってくれますけどね(笑)。

制作において彼の役割はどんな感じだったんでしょうか?

アカツカ:音を録るときのマイキングとか、エンジニアリング的な舵取りもほとんどやってもらいました。それと、ミックス等のポスト・プロダクションの部分がとても大きいですね。ギターをあえてラインで録って岡田さんの思う音にしてもらったり、レコーディングのときもエフェクターの設定を岡田さんにセッティングしてもらったりとか。僕に関しては岡田さんのギターとエフェクターを全部借りて手ぶらでレコーディングに行くスタイル(笑)。

今回、ドラム・セットでタムを使わないという制限があったとききました。

アカツカ:あ、それは単純に僕がリハーサルのスタジオを狭い所ばっかり取ってて、6人もメンバーがいるんで省スペース化を図らなきゃいけないって思って、じゃあフロア・タムをどかすか、という……(笑)。

本当に?(笑)

ニカホ:荷物の多いメンバーが多いからなあ(笑)。

礒部拓見(drums):一番年下の僕が割を食って。本当は他の人が減らしてほしい……タム使いたい……。

(笑)。

アカツカ:やっぱ年下には先輩っぽいところ出さなきゃなって思ったときに、よし、先輩といえば理不尽なパワハラだろう、と。厳しい上下関係を築くためにまずナメられちゃけないなと。最初のリハのときに「おいお前! 何生意気にタム叩いてんだよ」っていって。俺がタムを蹴破ったんですよね。まあ、というのは冗談で、僕らにはパーカッション・プレイヤー(宮坂遼太郎)もいるので、そこと音域的にもぶつかってしまうのでなくしているというのが大きいですね。

その効果なのか、パーカッションに加えて、ドラム・セットにおいてもスネアとシンバルのサウンドの存在感がぐいっと全面に出てきている気がします。

アカツカ:そうですね。やっぱりあえて何か制限を課すことによって色々アイデアを考えるし、それによって個々人の演奏のポテンシャルを引き出したいっていうのはありますね。ドラム・セットに秘められた潜在能力を……。

ニカホ:アカツカくんがいないところで、礒部くんが「それでもタム叩きたい」と言っているのを聞いたことがあるけど……(笑)。

特に日本に顕著だと思うんですけど、昔ながらのライヴ・ハウス的ロック文化やリハスタ的な文化って、ドラム・セットはドラム・セットとして自明のものとして認識されていたり、ギターだったらJCかマーシャルでキュイーンみたいな、そういう固定化した常識ってありますよね。でも、それを South Penguin は意識的に脱構築しているのかなって。

アカツカ:他の人と違うことをしたいとか、自分たちならではの音を出したいとか、正直ぼくはあんまりないですけど、彼ら(サポート・メンバー)にはあるみたいなんで……(笑)。

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家の中でずっとアイドルの動画を観ているみたいな、一般的にはどろどろしてて気持ち悪いみたいに思われているような人の切なくて儚い感じ。そういう人の心の中にも美しさってあるよなっていう。僕はガチ恋おじさん大賛成。

各曲について話を聞かせて下さい。M1の“air”はネオ・ソウル風なベース・ラインが印象的ですが、一方でコナン・モカシンや、アンノウン・モータル・オーケストラとか、10年代後半以降のメロウなフォーク・ロック~サイケデリック・ロックに通じる美学を感じました。

アカツカ:ベースはスライ&ザ・ファミリー・ストーンの“Thank You For Talking To Me Africa”をオマージュしているんです。全体的にはあまりソウル的なものはイメージしていないけど、メンバーの通ってきた音楽のフィルターを通すことによってこういったテイストになっているんだと思います。僕がデモ作りでよく使う GarageBand の Rock Kit さんていうAIのドラマーがいるんですけど、のっぺりしたロックっぽいフレーズが礒部のフィルターを通すとブラック・ミュージックっぽいドラミングに変換される、みたいな。彼と宮田くんと宮坂くんは学生時代にブラック・ミュージック系のサークルに所属していたってのもあるし、今回の録音ではメンバーそれぞれの個性が出てきているのかなって気がしますね。

Dos Monos の荘子it さんのラップをフィーチャーしようと思ったのは?

アカツカ:サポート・メンバーのみんなともそうだし、僕は基本的に誰かと一緒に何かをやるっていうのが好きなんです。今回のアルバムは自分達的にリスタートの気持ちが強かったから、より一層外的な刺激っていうのを求めてて。僕は偏った音楽しか聞かないからヒップホップやブラック・ミュージック自体もそんなにちゃんと知らないんですが、いま日本で面白いことやっている人がいるんだったらそういう人を交えてなにがしかの化学反応が起きたら嬉しいなっていう気持ちだったんです。Dos Monos は元々知り合いではなくて、彼らの音源を聴いたときに、これはすごいかっこいいって思って。そこから声をかけた感じですね。

Dos Monos も同世代ですよね?

アカツカ:そうですね。デザインや映像など含めて、今回のアルバムに関わってくれている人って同世代が多いんですよね。ことさら意識したわけじゃないんですけど、やっぱり自分は同世代でやっているかっこいい人達に惹かれるってのがあるんだと思います。

M2“head”。

アカツカ:この曲は初めて Rock Kit 以外のドラマーでデモを作ったものです(笑)。プリンスの“All the Critics Love U in New York”という曲のドラムをサンプリングしてループさせただけのオケを僕が作って。それがめちゃくちゃかっこよかったんで「あー、このまま出したいな」と思ってたんですけど、それはさすがに難しいんで(笑)、礒部に頑張ってもらいました。

山田光さんによるフリーキーなサックスが印象的です。

アカツカ:激烈ですよね。ジェイムズ・チャンスとか、ファラオ・サンダースのような……。

宮坂:スタジオで「サウンドのイメージとして昇り龍みたいな感じ」とか言ってましたよね(笑)。

この強烈な反復ビートからはダンス・ミュージック的な肉体性も強く感じます。一方でポスト・パンク的というかNYノーウェーヴ的なアヴァンギャルドさもある。

アカツカ:僕は元々ニューウェーヴ大好きっ子なんです。ふつふつとミニマルに盛り上げいくこういう曲に関しては、やっぱりトーキング・ヘッズの影響が大きいですね。そういうアヴァンな一面とかいろんな側面を再始動のアルバムとして出したいなっていう気持ちがあったんで、こういう飛び道具的な曲を収録しました。

M3“alaska”は過去曲のリメイクですね。冒頭のドラム・マシン? の音が印象的です。

ニカホ:岡田くんと ACE TONE とかの昔のリズム・ボックスっぽい音を入れたいねって話をしてて。でも昔のリズム・ボックスってテンポも揺れたりするから実際にレコーディングで使うのって割と難しいんですよ。なので、岡田くんにプロツールスでループを作ってもらって。元々は“Space Commercial”っていうエディ・ハリスの曲から発想を得て。

制作にあたってのそういうリファレンスみたいなものについても日々みんなでコミュニケーションする?

ニカホ:いや、アカツカくんとはあんまりしないです(笑)。サポート・メンバー内や岡田くんとは結構話すかも。これはエディ・ハリスに加えてもう一個リファレンスがあって、Mild High Club の“Skiptracing”も意識しましたね。

M4“ame”。これも過去曲のリメイクですね。あえてリメイクを収録するのはどんな意図があるんでしょう?

アカツカ:単純にファーストEPの時点では音楽的に未熟だったし、いまのメンバーでこの曲をやったらもっと良くなるだろうっていうのが大きいですね。繰り返しになりますが、今回のファースト・フル・アルバムで再スタートを切りたいっていうのがあったので、現時点の自分たちのベスト的な内容にしたいというのもあって。

M5“idol”。曲名が印象的ですが、いわゆる日本のアイドル文化も視野に入っている感じなんでしょうか……?

アカツカ:はい、あやや(松浦亜弥)とかを賛美するつもりで作りました。

ニカホ:本当に?(笑)

MVが不思議ですよね。曲名から連想させるように実際に女の子が出てくるんだけど、そこへ銃火器の映像が挿入されたりと、支離滅裂な感じに批評性を感じて。最近よくある「可愛い女の子出しときゃいいでしょ」的なMVへのアンチテーゼなのかなと思いました(笑)。

アカツカ:そうですね……でもまあMVに関しては監督の Pennacky くんに任せちゃった部分もあるのでなんともいえないのですが。この曲は曲名通り偶像崇拝的なことをテーマにしている曲なんですけど、歌詞も他の曲よりは分かり易く書けたかなと思っていて。アイドル自体についての歌というより、そういう偶像に本気ですがっている人の歌。

ガチ恋おじさん。

アカツカ:あ、まさに。曲名「ガチ恋おじさん」にすればよかったな。

宮田:身も蓋もないな(笑)。

どことなく切なさと美しさを感じます。

アカツカ:そうなんですよ。アルバムのテーマとして考えていた「美しさ」がこの曲にも強く反映されていると思います。家の中でずっとアイドルの動画を観ているみたいな、一般的にはどろどろしてて気持ち悪いみたいに思われているような人の切なくて儚い感じ。そういう人の心の中にも美しさってあるよなっていう。もちろん馬鹿にしたりしているわけじゃなくて、むしろ僕はガチ恋おじさん大賛成。そういう刹那的な美しさみたいなものがこの曲におけるキーになっていると思います。

この曲を聴いて泣いちゃう人もいるかも。

アカツカ:ああ~、その涙が一番美しいですねえ。

日本のオタク文化いじりってどうしても愚弄的だったり自己憐憫的なものが多いけど、そこにある儚さをすくい取ろうとしている感じが素晴らしいですね。トッド・ソロンズの映画に通じる美しさというか。

アカツカ:そういうアイドルオタクの人たちが「避けるべき存在」みたいになってしまうのがすごく嫌で。女性アイドルや男性アイドルだけじゃなくて、みんなすごく好きなミュージシャンとか、いろんな趣味とか、そういうものに過剰に入れ込んで自分の生活の全てになっているような人ってたくさんいると思うんですけど、それって普通の恋愛と変わらないと僕は思うんです。

しかしMVに出ている雪見みとさん、可愛いですねー。ついフルでリピートしてしまいました(笑)。

アカツカ:いや~、本当ですよね。例えば、このMVをきっかけにあの子のことを本気で好きになってくれる人が出てきたら、曲の世界が全うされるなって(笑)。彼女、京都の子なんですけど、先日京都にライヴしに行くってことになったとき「せっかくだからライヴへ遊びにきなよ」って誘ったんですけど、そのときは残念ながら予定があわなくて。メンバーに「みとちゃん来れないっぽいよ」って言ったら、宮田くんが「じゃあ僕京都行かないです」って(笑)。

宮田:だってそんなの行く必要ない……。

アカツカ:そういうところで、「あ、バンドじゃなくてサポート・メンバーなんだなあ」って(笑)。

すごく好きなミュージシャンとか、いろんな趣味とか、そういうものに過剰に入れ込んで自分の生活の全てになっているような人ってたくさんいると思うんですけど、それって普通の恋愛と変わらないと僕は思うんです。

M6“alpaca”。アフロとブラジルの中間を行くようなリズムがカッコいい。

アカツカ:このリズム・パターンを作ったのも Rock Kit さん(笑)。かなりいじった記憶があります。でも僕はドラマーの足や手の動きっていうのを全然理解してないんで、それを礒部になんとかやってくれって頼んで。

礒部:必死にコピーしましたよ。かなり難しかったですね。

でもそれをたんとプレイできるのがスゴイですよね。いわゆるインディー・ポップ的な範疇からはみ出すダイナミズムを感じました。

ニカホ:彼は元々中南米音楽、特にレゲエに思い入れがあるプレイヤーですしね。

アカツカ:これはベース・ラインも僕が作りました。アルバム全ての中で一番僕が主導権を握った曲かもしれないですね。だから手柄は僕のものです。褒めて下さい。

(笑)。M7“spk”は打って変わってマイナー調。メロウだけどヘヴィーという。アルバム後半にかけて割とダウナーな展開になっていきますよね。

ニカホ:あ、いま気づいた。本当だ(笑)。

アカツカ:曲名にもしているんですけど、SPK という精神病患者とその看護師がやっていたオーストラリアのグループからインスピレーションを受けていて。後にその元患者は自殺しちゃうんですけど……SPK って元々はノイズとかインダストリアル系なんですけど、なぜかその死の前にめちゃくちゃポップになってエレ・ポップ路線になったり、相当不思議な魅力のあるバンドで。自分のルーツ的な音楽ですね。ここでは SPK の曲調とかは意識していないんですけど、そういうやるせなさや切なさは意識していますね。

確かに歌詞も鬱々としていますね……。

アカツカ:そうですね。「病葉」って言葉が出てくるんですけど、ユーミンの曲で知った言葉なんです。病床で木から病葉が落ちていくのを見るっていうかなり切ない描写の曲があって、そのイメージが精神病患者が抱いているかもしれない心理と一致して。

M8“aztec”。これもメロウだけどどこか苦い味わいもある。曲順についてはどのように決めていったんですか?

アカツカ:曲順については……あまり正直に話したくないんですけど実は今回曲名の頭文字が「a」の曲が多すぎて。それを固めるんじゃなくてバラけさせたかったというのがあります(笑)。それと、やっぱり全体にちょっと暗い感じの曲が多いなって印象があったんで、このあたりにビートは重めだけどポップな曲をちょっとクッション的に入れておこう、と。

実に美メロだな、と。メロディーメイカーとして個人的に好きなアーティストって誰かいますか?

アカツカ:やっぱりユーミンはメロディーメイカーとしても大好きですね……。他の曲は海外のアーティストの曲を参照して作っているんですが、この曲はわりと日本のポップスを意識しているかもしないですね。

なるほど。いわゆる「ニュー・ミュージック」的なテイストも感じました。

アカツカ:そうですね。そういう日本のポップスに加えて、MGMT の『Congratulations』のタイトル曲も結構意識しましたね。そのふたつの要素を融合したイメージですね。元々この曲はバンド結成の頃一番最初に作った曲なんです。今回そのときのリズムも大きく変更して。

宮田:元々は倍のビートだったんですよね。

アカツカ:この曲は当初上手くアレンジがまとまらなくて、最後まで入れるかどうか迷ってて。そこで MGMT を僕がひっぱりだしてきて、こういう感じでやったらどうかなって提案したんですけど、それがいい感じにハマって。最初にこのアレンジが形になったときは嬉しかったですね。

M9“happy”。終盤にかけてのドラムの音が凶暴で、それこそドゥーム・メタルみたいな……。

アカツカ:(笑)。この曲は他に比べてかなりヘヴィーで凶暴な音の処理になってますね。“aztec”が South Penguin として一番最初に作った曲で、これが一番最後に作った曲なんですが、“aztec”でいままでの僕らを終わりにして、一番新しく作った曲で最後締めることで、これからこのバンドを再びやっていくぞっていう気持ちを込めています。かなり暗い感じだからこれで終わらせるのはどうかなあと思って。だからせめて曲名だけでも“happy”にしました(笑)。ハッピーエンドですね。

そういうことだったんですね(笑)。曲調的に全然ハッピーじゃないよなと思っていました。これまでアカツカさんと話していて面白いなと思ったのが、いろいろ細かいところまで詰めていくのと、他人に任せてしまってあえてタッチしないということ、もっというならテキトーな感じとの不思議なバランス感です。没入して作り込むみたいなところから距離を取りたいという心理があるんでしょうか?

アカツカ:うーん、結構その心理はある気がしますね。それこそ岡田さんとかを見てて思うんですけど、自分の作品も凄く作り込むし、人の作品でももちろん手を抜かないし、すごいプロフェッショナルな仕事をしてくれる人だな、と。そういうのって本当にすごい体力だなって思うんですけど、僕は全然そういうのができない。まあ、それは生まれ持ったものなんで、諦めている部分もあるんですけど。

でも、そういうおおらかさみたいなものって、それこそアカツカさんが尊敬するコナン・モカシンにも通じる気もします。

アカツカ:そうですね、彼の活動にはそれを感じますね。ガチガチじゃないちょっとゆるい雰囲気というか。そっちの方が自分にあっていると思うし、無理のない形でやらないとかえって良いものはできないって常に思っているんで。

だからといって、パーティートライブ的に「ウェーイ!」って感じでもない。

アカツカ:まあ僕は夜な夜なクラブで遊び倒してますけどね。それはもう大変。夜はアヴィーチーしか聴きませんから。

ニカホ:なんでそんな嘘つくんだ(笑)。

ギークやナードな感じへも美しさ見出しつつ、おおらかな美意識を表現していくって稀有なことだと思います。なんだろう、今日のインタヴューではアカツカさんの器の大きさみたいなものを強く感じました(笑)。

アカツカ:いや~、常日頃みんなにそう言われますよ。

ニカホ:そんな場面見たことないけどな(笑)。

South Penguin
ライヴinfo.

・8/12 (mon) @江ノ島東海岸
TENGA PARK 2019
w/ Helsinki Lambda Club / and more...
start:11:00 close:16:00
Charge Free!!!

・8/31 (sat) @渋谷7th FLOOR
ARAM presents 『リスニング・ルーム』
出演:ARAM / 安楽 / South Penguin
open:18:00 start:18:30
adv:¥2,200 door:¥2,500 (各+1drink)

・9/16 (mon) @下北沢basementbar
Group2 presents『的(TEKI) Vol.3』
出演:Group2 / South Penguin / No Buses
DJ:鳥居正道 (トリプルファイヤー)
open:18:00 start:18:30
adv:¥2,500 door:¥3,000 (各+1drink)

KODAMA AND THE DUB STATION BAND - ele-king

 この酷暑のさなかの日曜日の六本木、時刻は20時から23時30分にかけて、明日何が起きてもいいと思えるようなライヴを見た。こだま和文とザ・ダブ・ステーション・バンドである。
 ミュート・ビートのライヴを経験している人が、もしいま現在のダブ・ステーション・バンドを見たら、こだま和文は3回目のピークを迎えていると言うかもしれない。あるいは、ミュート・ビートも『Stars』のころのライヴも見ていないというひとにはこう言おう。悪いことは言わない、ザ・ダブ・ステーション・バンドのライヴを見逃すな。

 1曲目は“風に吹かれて”、2曲目はボブ・マーリーの“ナチュラル・ミスティック”だった。「自分がまさかボブ・ディランのカヴァーをやるとは思いませんでした」と喋ったあと、こだまはこう続けた。「昨日テキサスで銃乱射事件がありました。こういうことがまるで風物詩のように常態化されては困るんです」
 相も変わらぬこだま節。が、しかしその夜の彼の言葉は、ネガティヴな嘆息ではなかった。もっと前向きな、能動的な「NO」に聞こえた。
 というのも、ザ・ダブ・ステーション・バンドの演奏が息を呑むほど素晴らしいからだった。コウチ(B)と森俊也(D)によるタイトなリズム、そのリズムをさらに固めるアキヒロのギター、楽曲に鮮やかな色彩を加えるHAKASE-SUN(K)、アンサンブルに心地よいそよ風を与えるアリワ(Trombone)、そしてダブミキシングの風間悠子──完璧と思えるほどのリズムとともに展開されるトランペットとトロンボーンによる重奏は、美しく、生命力があり、力強く、ときにエモーショナルだ。まずなによりも身体がうずうずしちまう。動かずにはいられない、演奏全体が躍動する完璧なダンス・ミュージックだった。
 中盤あたりで、こだまはじゃがたらの“タンゴ”を歌い、続いてアリワが“エンド・オブ・ザ・ワールド”を歌った。あの寒々しい曲“タンゴ”には鬼気迫るものがあったし、“エンド・オブ・ザ・ワールド”には愛らしさがあった。
 ビールをおかわりする暇もなく、あっという間に時間は過ぎ、カヴァー曲で構成された1部の演奏が終わったのは20時50分ぐらいだったか。甘いロックスティディを次々とかける石川道久のDJをはさんで、21時10分過ぎにバンドは再度ステージに現れた。

 2部は主に、新しいアルバムに収録されている曲で構成されていた。まだ具体的なリリースは決まっていないようだけれど、すでに録音されているという新作、こだまのMCによればそれは『かすかな希望』と題されるそうだ。雑草と青空をテーマにした曲は切なく、また、ミュート・ビートの曲、“Sunny Side Walk”に日本語詞を載せた曲は揚々としていた。そして表題曲になるであろう“かすかな希望”は、新しいアンセムになるだろう。
 アンコールは2回あった。2回目のアンコール、最後の曲は、じゃがたらの“もうがまんできない”で、これはもう言うまでもなく、この世知辛い時代のひとびとの声となって、場内の合唱となった。曲は最後に転調し、ミュート・ビートの『フラワー』の最後の曲“Beat Away”へと繫がった。それはこの“かすかな希望”を感じた一夜のエンディングとして、あまりにも完璧だった。
 断言しよう。いま、東京には最高にクールなダブ・バンドが存在している。若いのも年寄りも男も女もいる。日本人も外国人も。いま聴いておけ。あとで自慢できるぞ。

Flying Lotus × Ras G - ele-king

 去る7月29日、40歳という若さでこの世を去ったラス・Gことグレゴリー・ショーターは、LAビート・シーンの要人であり、縦横無尽にジャズやダブやグリッチを混合する音の魔術師であり、名作10インチ・シリーズで知られる〈Poo-Bah Records〉の共同設立者であり、昨年10周年を迎えた〈Brainfeeder〉の創設者のひとりであり、「ゲットー・サイファイ」の提唱者であり、サン・ラーの強力な支持者であり、すなわちアフロフューチャリズムの継承者でもあった。
 昨日、その彼と親しかったフライング・ロータスが追悼の意を込め、ふたりでコラボした新曲“Black Heaven”を発表している。これは8月3日に BBC Radio 6 で放送された、ジャイルス・ピーターソンによるトリビュート番組「Celebrating Ras G」にフライローが出演した際に公開されたもので、そのときの録音をフライローが自身の SoundCloud ページにアップロードしている。同曲はLAのラス・Gのスタジオ Spacebase で即興的におこなわれたセッションをもとにしているが(タイトルもラス・Gが命名)、それがふたりの最後の対面になってしまったそうだ。R.I.P. Ras G

※〈Brainfeeder〉はラス・Gのアルバムを2枚リリースしている。『別エレ』フライロー号をお持ちの方は66頁と110頁を参照。

WXAXRXP - ele-king

 今年で設立30周年を迎えるということで、大きな盛り上がりを見せているUK屈指の優良レーベル、〈Warp〉。先日のオンライン・フェスもどえらいことになっていましたが(とくに良かったのはケレラ)、ついに30周年特設サイトがオープン。各種Tシャツやら小物やら、よだれだらだらのグッズが山ほど……これまで日本ではオンライン販売されなかったエイフェックスのグッズも陳列。こいつはやばいぜ!

https://www.beatink.com/user_data/wxaxrxp.php

〈WARP〉30周年特設サイトが本日オープン!
これまでオンラインでは手に入らなかった
エイフェックス・ツインのレアグッズを含む
〈WARP〉グッズの販売がスタート!

音楽史に計り知れない功績を刻み続ける偉大なる音楽レーベル〈WARP〉。設立30周年を迎えた今年は、『WXAXRXP』(ワープ・サーティー)と題した様々な企画を実施中。6月には東京、大阪、京都でポップアップストアが行われ、カッティング・エッジなキュレーションで音楽ファンから絶大な支持を集める「NTS Radio」とのコラボレート企画では、100時間以上に渡って貴重な音源をオンエア。エイフェックス・ツインやボーズ・オブ・カナダ、ブライアン・イーノ、フライング・ロータス、バトルス、チック・チック・チック、オウテカ、スクエアプッシャー、Bibio ら、人気の所属アーティストのみならず、坂本龍一やエイドリアン・シャーウッドら豪華なゲスト陣の参加もファンを喜ばせた。

次なる展開に期待が集まる中、本日〈WARP〉30周年特設サイトがオープン! それに合わせ、これまで国内ではオンライン販売されてこなかったエイフェックス・ツインの『Donkey Rhubarb』テディベアや『Windowlicker』傘などのグッズや、大竹伸朗によるデザインTシャツを含む30周年記念グッズらが販売開始! アイテムによって、販売数に制限があるため、この機会をぜひお見逃しなく!

https://www.beatink.com/user_data/wxaxrxp.php

またサイトでは、今後の〈WARP〉リリースやイベントの情報も随時更新されていく予定。8月30日には、チック・チック・チックの最新アルバム『Wallop』のリリースが控え、フライング・ロータスの単独公演が9月に、チック・チック・チックの単独公演が10月に開催決定している。

OOIOO - ele-king

 日本でもっともオルタナティヴなバンド、ボアダムスの一員であり、昨年はロバート・アイキ・オーブリー・ロウ、スージー・イバラとともに素晴らしいライヴ録音盤『Flower Of Sulphur』を発表している YoshimiO。彼女の率いるバンド OOIOO が6年ぶりにアルバムをリリースする。タイトルは『nijimusi』で、10月10日に〈SHOCHY〉より発売。年明けには〈Thrill Jockey〉よりワールドワイドで発売されることも決定している。また、それに合わせて全国ツアー《OOIOO 滲ム ON 2019》もスタート、京都・大阪・宮城・東京をまわる。もしあなたが刺戟的なサウンドを求めているなら、この機会を逃してはならない。

OOIOO 滲ム On 2019

Thursday 3 October
In KYOTO @ Club Metro

京都市左京区川端丸太町下ル下堤町82 恵美須ビルB1F
B1F Ebisu Bldg. 82 Simodutsumi-cho Kawabata Marutamachi Sagaru Sakyoku Kyoto Japan
京阪・神宮丸太町駅2番口直通

Open 18:30 / Start 19:15
adv. 3000yen / door 3500yen (+1Drink)

w / 山本精一 & アリマサリ Seiichi Yamamoto and ARimasaLLi
α area (Sojirou from Abraham Cross)
DJ ALTZ

sound / kabamix

total info.
Kyoto Club Metro
phone: 075-752-4765

ticket
・ mail reserve
件名に「10/3 OOIOO 前売予約」と記入し、枚数、代表者さまのお名前と連絡先をお書きの上、ticket@metro.ne.jp に送信してください。*基本的にキャンセルはご遠慮くださいませ。
・ チケットぴあ (Pコード:159-428)
・ ローソンチケット (Lコード:56003)
e+

Friday 4 October
In OSAKA @ NOON+CAFE

大阪市北区中崎西3-3-8JR京都線高架下
3-3-8 Nakazakinishi Kitaku Osaka Japan

Open 18:00 / Start 19:00
adv. 3000yen / door 3500yen (+1Drink)

w/ α area ( Soojiro from Abraham Cross )
CROSSBRED
DJ YAMA

sound / kabamix

food : WOOST engine meals
アジアの食卓と地球エネルギーをイメージして、今の気分と食感のリズムを大切にお料理する亜細亜的移動食堂屋

total info.
NOON+CAFE
phone: 06-6373-4919
email: info@noon-cafe.com

ticket
・ mail reserve
件名に「10/4 OOIOO 前売予約」と記入し、枚数、代表者さまのお名前と連絡先をお書きの上、info@noon-web.com に送信してください。*基本的にキャンセルはご遠慮くださいませ。
・ ローソンチケット (Lコード:55265)
e+

Sunday 6 October
In MIYAZAKI @ Wandern

宮崎県都城市中町1-9
1-9 Nakamachi Miyakonojo Miyazaki

Open 18:00 / Start 19:00
4000yen (Includes 1drink)

live / OOIOO
sound / kabamix

total info. & ticket
・ tel.reservation
phone: 090 4601 8653 (セキ リョウタロウ)
・ mail reserve
件名に『OOIOO』と記入し、お名前・枚数・連絡先を書いて、wwd.ryotaro518@gmail.com に送信してください。確認後、返信メールをお送りします。
*電話 / eMAIL 予約、いずれの場合もキャンセルされる場合は必ずご連絡をお願い致します

Thursday 7 November
In TOKYO @ O-WEST, Shibuya

東京都渋谷区円山町2-3 2F
2-3 2F Maruyamachi Shibuya, Tokyo

Open 18:30 / Start 19:15
早割 early bird rate 2500yen / advance 3500yen (+1drink)

abura derabu 2019
live / GEZAN, FUCKER, OOIOO
sound / ZAK

ticket info
early bird rate O-WEST店頭早割 2019/7/21 13:00 - 2019/8/5 17:00 (03-5428-8793)
advance 一般販売 2019/8/10 11:00 e+

total info
シブヤテレビジョン 03-5428-8793 (mon to fri 12:00-18:00)

Bon Iver - ele-king

 先日新たに“Jelmore”と“Faith”の2曲が公開され、ますますニュー・アルバム『i, i』への期待が高まっているボン・イヴェールですが、なんと、新作の全世界同時先行試聴会が催されることになりました。日本では渋谷 Galaxy - Gingakei にて8月7日に開催。2019年の代表作になりそうな1枚をいち早く試聴する絶好の機会です。予定の空いている方はぜひ足を運んじゃいましょう。

Bibio - ele-king

 春先に喚起力豊かなニュー・アルバム『Ribbons』をリリースしたばかりのビビオが、未発表の新曲“Spruce Tops”を公開した。同作に収録されたサックスの映える素敵な1曲“The Art Of Living”のシングルカットに伴い、B面として採用された次第である。フルートとギターの対比がじつに麗しい。ビビオの旅路はまだまだ続くのだ……

BIBIO

最新アルバム『Ribbons』未収録の新曲“Spruce Tops”をカップリングした2曲入りシングル「The Art Of Living」をリリース!

聴く者の記憶や、心に浮かぶ情景に寄り添う心温まるサウンドで幅広い音楽ファンから支持を集める Bibio が、待望の最新アルバム『Ribbons』に収録された“The Art Of Living”に、アルバム未収録の新曲“Spruce Tops”をカップリングした2曲入りシングルをデジタル・ダウンロードとストリーミングでリリースした。

The Art Of Living
https://youtu.be/NMZ7NKj0wMw

Spruce Tops
https://youtu.be/Q41voFN0e5c

Bibio ことスティーヴン・ウィルキンソンは“The Art Of Living”を制作した際のインスピレーションを次のように語っている。

人生は目的のない旅だ。経験が素晴らしい師となり得る。その経験が辛いものであればあるほど。感動っていうのは、自分の足元にあるものだ。最もインスピレーションを与えてくれるものは、シンプルで身近にあるものだと思う。僕らの体や心には、順応し、回復する機能が備わっている。人生の旅っていうのはAからBに行くっていうようなものではなくて、もっと大きくて、曖昧なものなんだ。それは音楽に関しても言える。この曲は、個人的な経験や観察、そして哲学の教え、詩、その他の僕に影響を与えた色々な考え方を通して感じた可能性というのを反映している。 ──スティーヴン・ウィルキンソン (BIBIO)

新曲となる“Spruce Tops”は、控えめで美しいギターのサウンドが、それとは対照的に優雅なフルートのサウンドと重なり合った、瞑想的でのびのびとしたグルーヴを感じるインストゥルメンタルの楽曲だ。

作曲作詞はもちろん、歌唱、そしてほぼすべての楽器を自ら演奏する Bibio だが、最新作『Ribbons』はさらに独学で学んだマンドリンやバイオリンなどにも挑戦し、作品に新たな色を与えている。国内盤にはボーナストラック“Violet”が追加収録され、歌詞対訳、さらに本人によるセルフライナーノーツを含む解説書が封入される。

電気じかけのサイケデリックな田園空間が花開いていく。家にいながらにして春を味わえる1枚。 ──rockin'on

ビビオのつくりだす手工芸品のような細部は聴くものを魅了し、その儚くも美しい世界がたしかに存在するのを感じさせる ──intoxicate vol:139

フォークミュージックと西海岸のドリーミーさを詰め込んだ力作~。 ──POPEYE 5月号

美しく詩情ゆたかなサウンドは、新たらしい季節をより鮮やかに彩ってくれる ──FUDGE 5月号

label: WARP RECORDS
artist: Bibio
title: The Art Of Living
release: 2019.08.02 FRI ON SALE


label: WARP RECORDS/BEAT RECORDS
artist: Bibio
title: Ribbons

【CD】
cat no.: BRC-593
国内盤CD ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳冊子封入
2019.04.12 FRI ON SALE

【カセット】
cat no.: BRC-593CS
国内盤カセット ボーナストラック収録
2019.04.12 FRI ON SALE

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10210

反緊縮候補たちの参院選 - ele-king

 反緊縮候補たちの参院選が終わった。
 選挙結果と今後の反緊縮ポピュリズムの動きを考える。


 参院選が終わった。選挙前の予測どおり大勢に影響はなかったと言えるだろう。自民党の議席は微減し、立憲民主党は議席数を倍増させた。しかし、この立憲の躍進に見える結果も、実情は比例票を約300万票も減らす形で、16年の参院選前に民進党の保有していた議席が立憲と国民民主党とに割り振られたかっこうになっただけとも言える。依然として参議院での過半数は与党に抑えられ、「ねじれ国会」を作るには至らなかった。(https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201907/CK2019072202000321.html

 メディアから「台風の目」とも称された反緊縮・れいわ新選組は、山本太郎代表はどうなっただろう。れいわ新選組は228万票を獲得し政党要件を獲得、山本氏自身も99万もの比例票を獲得したが、新設された特定枠で擁立した重度障がい者の2人を優先的に当選させ、3議席目を得られなかったため落選した。01年以降の現行選挙制度で落選者の最高得票も更新した形となり話題を呼んだが、 山本氏は自分の保身のための参議院での1議席など、ハナから捨てる覚悟でいたんじゃないかとも感じる。彼が次期衆院選について、「政権選択なので、立候補者100人ぐらいの規模でやらなければいけない」と発している(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190722-00000009-mai-pol)通り、「本丸」はあくまで政権奪取であり、現在は「一の門」である参議院の門を突破したに過ぎない。実際に、欧州の反緊縮ポピュリズム政党は、結党からわずか数年で政権の座に手をかけるほどに急速に巨大化していて、れいわに限っても非現実的な目標と言い切れないのだ。

 選挙結果を伝える各テレビ報道でも、リベラル系メディアはこぞって当選した重度障がい者の舩後靖彦氏と木村英子氏を特集した。元郵政・金融大臣の亀井静香をして「戦術家」と言わしめる山本氏の作戦勝ちだろう。山本氏が「障がいのある政治家を国会に送り込むことが、障害に関連する政策を進めるための効果的な一歩になる」とロイター・国際版に語った(https://www.reuters.com/article/us-japan-election-disabled/japan-disabled-challenge-stigma-barriers-to-run-for-upper-house-seat-idUSKCN1UC0ZL)ように、この世界初の試みは、国会のバリアフリー化のみならず、社会福祉分野への財政拡大に繋がる経済政策ともなりえる。人口の8%にも及ぶ身体的および知的障がい者の代表の誕生が、山本氏の掲げる「生産性で人間の価値をはからせない世界」の構築にどう影響を与えるか、今後の活躍が期待される。

 さて、今参院選では不名誉な記録も作られた。投票率が48.8%で戦後2番目の低さになった(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190722/k10012002661000.html)というのだ。マスコミ報道によると「関心がなく盛り上がりに欠ける選挙」だったそうで、「与党支持に大きな広がりはみられないものの、低投票率に支えられた」そうだ。しかしこの低投票率と無関心、与党の安定を支えたのは、「大本営発表」とも揶揄されるマスコミ自身であることは言うまでもない。(https://www.asahi.com/articles/DA3S14102991.html

 「スポンサーであるグローバル企業や大企業の顔色を伺い、忖度をすることによるスピンコントロールが行われている」とは、投開票日の山本太郎氏の言だ。筆者の知る限り、これほど国民対マスコミの対立が表面化した選挙は他に類を見ない。既得権者たるマスコミは、ネットユーザーから「上級国民」と疎まれるが、この構造も欧州のポピュリスト政党をめぐる状況とよく似ている。投開票日における、れいわ新選組の候補者たちによるマスコミ批判(https://www.youtube.com/watch?v=5Fr8h28yPYE)が大変興味深かったので拾ってみたい。

 新聞やテレビなどの主流メディアが、れいわ新選組を扱わない状況について、マスコミの記者から質問された山本氏は「メディアもガチンコで喧嘩してほしい。明らかにおかしな報道が続いている。言葉を選ばずに言うと、“どこまで自民党のお尻を舐めるんだろう”みたいな。争点がまったく見えない、それだけを観ていれば自民党に入れてしまうような報道」と表現し、れいわ候補の安冨歩氏(東京大学教授)も「インターネットの力がなかったられいわは2議席取れなかった。メディアの皆さんの存在基盤がまもなく失われることを認識してほしい」と続いた。

 同党候補で、財政・金融システムに詳しい大西つねき氏(元J.P.モルガン銀行)は「メディアのみなさんは、税収で借金を返済したらどうなるかわかりますか? それを理解していない。私たちが消費税ゼロと言ったときにはちゃんとロジックがある。皆さんの仕事は真実を知って暴くことだが、その根本的な能力が足りていない。なぜアメリカからMMTのようなものが出てきたのか皆さん理解してないでしょう? それでよく報道機関だといえますよね。お金の発行の仕組みを知ることが日本を、世界を良くすることにつながる。レクチャーするのでぜひ取材に来てください」と発破をかけた。

 同じく候補で、コンビニのブラック問題で闘う三井よしふみ氏は、「コンビニ問題を、長年マスコミの人に話していますが、現場ではわかったと言いながら、なんで本社に帰ったら話が消えるんですか?皆さんはジャーナリストになった時には真実を伝えたいと思ってこの職業を選んでないですか?いつからサラリーマンになっちゃったんですか。コンビニの本部はマスコミなんかいくらでも操作できると思っている、ナメられてるのは貴方たちだ。俺たちと世界を変えようじゃないか」と奮起を促した。

 筆者も現場で一部始終を見守っていたが、彼らが本気で政権を取り、このぶっ壊れた日本を変えようとガチンコでケンカをしかけているのだと再認識した次第だ。こうして「天才!たろうの元気が出る選挙・シーズン1」は幕を閉じることになったが、いかに批判者が冷笑し、誹謗中傷を加えてもれいわ新選組の躍進は止まりそうにない。MMTのファウンダーの1人、L・ランダル・レイの言葉を引用する。「現代貨幣理論(MMT)は、3つの段階を経るだろう。まず、馬鹿にされる。 第二に、激しく反対される。 第三に、それが自明のものだと認められる。 MMTの教義の多くは、すでに第三段階に入っている。元批評家達は現在、それらを”最初から知っていた”と主張している」。MMTに対する評価に限らず、れいわの評価も同じ道を歩むことが予想される。

 さて、他野党の反緊縮候補たちはどうなっただろう。反緊縮候補を認定・推薦する団体、薔薇マーク・キャンペーンによると、認定した反緊縮候補の50人中10人が当選(https://rosemark.jp/2019/07/22/02-19/)した。その中でも注目したいのが立憲民主党の石垣のりこ氏だ。石垣氏は野党統一候補として挑み、自民現職の愛知治郎氏との接戦を制し、1人区で立憲の公認唯一の当選者となった。選挙戦中も党議拘束になかば反する形で「消費税ゼロ」の主張を発し続けたが、皮肉にも、国民生活の底上げを訴えるその声が有権者に届くかっこうとなり、当選を成し遂げたといえるだろう。山本太郎氏と行ったジョイント街宣では、仙台駅西口を1000人以上もの聴衆で埋め尽くした。「1枚目の投票用紙(選挙区)には石垣のりこと、2枚目の投票用紙に(比例)は山本太郎とお書きください」と訴えた石垣氏、山本氏双方の演説が、野党共闘のうねりをより大きく共振させた。従前の参院・衆院選の結果から野党が強い土壌であることは知られるところだが、経済評論家の池戸万作氏は「野党が東北の4県を制したのはこの街宣の影響が大きい」と評している。

 前回コラムで、筆者が注目していた社民党の相原りんこ候補は、激戦区・神奈川で健闘したが、惜しくも敗れた。選挙中もブレることなく財政出動、消費減税を訴え続ける姿勢は、多くの反緊縮派から賞賛を得たが、社民党の脆弱な組織力も背景に、望みどおりの選挙戦を闘うことができなかった印象だ。選挙後、筆者がヒアリングしたところ、本人は反緊縮活動を行うため新たな道を歩むということだったが、多くのネット市民からは、1年以内に行われると予想される衆院選には、れいわからの出馬を望まれているようだ。

 薔薇マークを認定された候補も、その認定自体が当選に結びついたとは言えず、まだまだ反緊縮が市民権を得るような状況には至ってはいない。しかし反緊縮の波は確実に拡がっている。今年の初めから、立命館大学教授・松尾匡氏の薔薇マークをはじめ、京都大学大学院教授・藤井聡氏の主宰する「令和の政策ピボット」、山本太郎氏のれいわ新選組などの反緊縮グループが次々に立ち上がり、2019年は日本での反緊縮元年といえる年になった。年初からわずかながらではあるけど、メディア報道も増えていった。まさか、MMTerのランダル・レイ教授やステファニー・ケルトン教授が、テレビのゴールデンタイムで特集されようなど、つい半年前まで想像さえしていなかった状況だ。イタリアの反緊縮ポピュリズム政党・五つ星は、結党からわずか9年で政権の座についたが、このトレンドが止まることはないだろう。次の衆院選が勝負となる。

 今回、反緊縮派候補やれいわの躍進を支えたのは、大衆だ。普段政治に興味のなかった層が初めて自発的に投票したという話も聞く。しかし、日本では、民主主義とは投票行動のことであり、国会での多数決のことだと勘違いしている人たちも多い。首相自らが「憲法は国の理想を語ったもの」だと、誤った認識にもとづく発言を重ね、テレビはそれを無批判に垂れ流すような国だ。

 今後、消費増税で消費が落ち込み、オリンピック特需も終了、さらには外国人労働者の流入や働き方改革により、労働者全体の賃金が引き下げられるような事態にならないとは限らない。まだまだ状況を楽観視することなどできないが、掃き溜めにえんどう豆の芽が顔を出し、沼地にも蓮の葉が育とうとしていることに希望を見出したい。

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