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KODAMA AND THE DUB STATION BAND

KODAMA AND THE DUB STATION BAND

@六本木Varit

2019年8月4日(日)

文・写真:野田努   Aug 06,2019 UP
E王

 この酷暑のさなかの日曜日の六本木、時刻は20時から23時30分にかけて、明日何が起きてもいいと思えるようなライヴを見た。こだま和文とザ・ダブ・ステーション・バンドである。
 ミュート・ビートのライヴを経験している人が、もしいま現在のダブ・ステーション・バンドを見たら、こだま和文は3回目のピークを迎えていると言うかもしれない。あるいは、ミュート・ビートも『Stars』のころのライヴも見ていないというひとにはこう言おう。悪いことは言わない、ザ・ダブ・ステーション・バンドのライヴを見逃すな。

 1曲目は“風に吹かれて”、2曲目はボブ・マーリーの“ナチュラル・ミスティック”だった。「自分がまさかボブ・ディランのカヴァーをやるとは思いませんでした」と喋ったあと、こだまはこう続けた。「昨日テキサスで銃乱射事件がありました。こういうことがまるで風物詩のように常態化されては困るんです」
 相も変わらぬこだま節。が、しかしその夜の彼の言葉は、ネガティヴな嘆息ではなかった。もっと前向きな、能動的な「NO」に聞こえた。
 というのも、ザ・ダブ・ステーション・バンドの演奏が息を呑むほど素晴らしいからだった。コウチ(B)と森俊也(D)によるタイトなリズム、そのリズムをさらに固めるアキヒロのギター、楽曲に鮮やかな色彩を加えるHAKASE-SUN(K)、アンサンブルに心地よいそよ風を与えるアリワ(Trombone)、そしてダブミキシングの風間悠子──完璧と思えるほどのリズムとともに展開されるトランペットとトロンボーンによる重奏は、美しく、生命力があり、力強く、ときにエモーショナルだ。まずなによりも身体がうずうずしちまう。動かずにはいられない、演奏全体が躍動する完璧なダンス・ミュージックだった。
 中盤あたりで、こだまはじゃがたらの“タンゴ”を歌い、続いてアリワが“エンド・オブ・ザ・ワールド”を歌った。あの寒々しい曲“タンゴ”には鬼気迫るものがあったし、“エンド・オブ・ザ・ワールド”には愛らしさがあった。
 ビールをおかわりする暇もなく、あっという間に時間は過ぎ、カヴァー曲で構成された1部の演奏が終わったのは20時50分ぐらいだったか。甘いロックスティディを次々とかける石川道久のDJをはさんで、21時10分過ぎにバンドは再度ステージに現れた。

 2部は主に、新しいアルバムに収録されている曲で構成されていた。まだ具体的なリリースは決まっていないようだけれど、すでに録音されているという新作、こだまのMCによればそれは『かすかな希望』と題されるそうだ。雑草と青空をテーマにした曲は切なく、また、ミュート・ビートの曲、“Sunny Side Walk”に日本語詞を載せた曲は揚々としていた。そして表題曲になるであろう“かすかな希望”は、新しいアンセムになるだろう。
 アンコールは2回あった。2回目のアンコール、最後の曲は、じゃがたらの“もうがまんできない”で、これはもう言うまでもなく、この世知辛い時代のひとびとの声となって、場内の合唱となった。曲は最後に転調し、ミュート・ビートの『フラワー』の最後の曲“Beat Away”へと繫がった。それはこの“かすかな希望”を感じた一夜のエンディングとして、あまりにも完璧だった。
 断言しよう。いま、東京には最高にクールなダブ・バンドが存在している。若いのも年寄りも男も女もいる。日本人も外国人も。いま聴いておけ。あとで自慢できるぞ。

文・写真:野田努