「UR」と一致するもの

SILENT POETS - ele-king

 12年ぶりの新作『dawn』がいろんなジャンルのいろんな世代にまたがって好評のサイレント・ポエツですが、なんともスペシャルなライヴ公演が決定しました。出演者のメンツを見ていただければわかると思います。これはすごい! まさに必見。6月24日、渋谷wwwです。

NEW ALBUM "dawn" RELEASE PARTY -SILENT POETS SPECIAL DUB BAND LIVE SHOW-
2018年6月24日(日)
Shibuya WWW
出  演:SILENT POETS SPECIAL DUB BAND
feat. 5lack, NIPPS, こだま和文, 武田カオリ, asuka ando, 山崎円城 (F.I.B Journal)

Special Dub Band Set:
Guitar : 小島大介 (Port of Notes)
Bass : Seiji Bigbird (LITTLE TEMPO)
Keyboards : YOSSY (YOSSY LITTLE NOISE WEAVER)
Drum&Prc : 小谷和也 (PALMECHO)
Trumpet : 坂口修一郎 (Double Famous)
Trombone : icchie (YOSSY LITTLE NOISE WEAVER)
Sax : 春野高広 (LITTLE TEMPO / ex SILENT POETS)
Violin : グレート栄田 / 越川歩
Cello : 徳澤青弦
Electronics : 下田法晴 (SILENT POETS)
Mix : Dub Master X

VJ : Kimgym

時  間:open18:00 / start19:00
料  金:前売¥4,000 / 当日¥4,500(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)
チケット
 先行予約:4/21(土)10:00 ~ 5/6(日)23:59  e+: https://eplus.jp/silentpoets/
 一般発売:5/12(土)10:00~ 
e+ : https://eplus.jp/silentpoets/
ローソンチケット【Lコード:73248】 https://l-tike.com/order/?gLcode=73248
チケットぴあ【Pコード:115-835】 https://t.pia.jp/
WWW店頭
問い合せ:Shibuya WWW 03-5458-7685
主催・企画制作:ANOTHER TRIP
協力:Shibuya WWW

IDM definitive 1958 - 2018 - ele-king

 なぜ1950年代から……?
 このタイトルを目にした方がたの多くは、まずそこに戸惑いを覚えることだろう。でも、まさにそこにこそこの本の秘密がある。
 IDMすなわちインテリジェント・ダンス・ミュージックという言葉は90年代に作られたものだ。それはハウス・ミュージックより後に生まれた概念であり、ダンスを出自としながらそこに留まらないことを希求する、ひとつのオルタナティヴな態度でもある。とはいえ、その言葉に含まれる「インテリジェント」という部分がどうしても「それ以外のダンス・ミュージックには知性がない」というニュアンスを帯びてしまうため、その呼称を忌避する者も多い。それゆえUKや欧州では当時からエレクトロニカという言葉も用いられ続けてきたわけだが、不思議なことに合衆国ではその語はプロディジーやケミカル・ブラザーズのような音楽を指すために使われることとなった。このような奇妙なねじれ、このような言葉の揺らぎそのものに、IDM/エレクトロニカという音楽の持つ特質、すなわちそれを他とわかつ決定的な指標が潜んでいるのではないか? であるなら、その前史を振り返ってみることもまた有意義なことなのではないか?
 とまあ、堅苦しい言い方になってしまったけれど、本書はディスクガイドである。IDM/エレクトロニカとはいったいなんなのか――それについてどう考えるにせよ、その中心にエイフェックスがいることは間違いない。近年では、彼を筆頭とする90年代のIDM/エレクトロニカから大いに影響を受けたラナーク・アートファックスのような新世代が台頭してきている。あるいはそこに〈CPU〉やブレインウォルツェラ、バイセップダニエル・エイヴリーなどの名をつけ加えてもいい。昨年『ピッチフォーク』が「The 50 Best IDM Albums of All Time」という特集を組んだことも話題となった。いま、90年代前半に起こった音楽的旋回がさまざまな形で参照され、新たな意味を帯びはじめている。
 そのような今日だからこそ、この『IDM definitive 1958 - 2018』はあなたに音楽の新たな聴き方を提供する。エイフェックスを起点として過去と未来とその双方に向けて放たれた無数の矢、選び抜かれた800枚以上のタイトルがいま、あなたに聴かれることを待っている。

IDM definitive 1958 – 2018

監修・文:三田格
協力・文:デンシノオト
文:野田努、松村正人、木津毅、小林拓音

contents

Chapter 1
Musique concrète / Synthesizer Music (1958~1965)

Chapter 2
Sound Effects (1966~1971)

Chapter 3
Improvisation / Composition (1972~1979)

Chapter 4
New Wave / Industrial (1980~1989)

Chapter 5
Braindance (1990~1993)

Chapter 6
Glitch Electronica (1994~1999)

Chapter 7
Indietronica & Folktronica (2000~2006)

Chapter 8
Life and Death of Rave Culture (2007~2013)

Chapter 9
Now (2014~2018)

Gonno & Masumura - ele-king

 ブライアン・イーノによれば「地球上でもっとも偉大なミュージシャン」とはトニー・アレンだそうだ。実際、いま別冊エレキングで「UKジャズ特集号」を作っているのですが、トニー・アレンの影響の大きさにあらためて驚く。手と足で叩いているのではなく、ドラムセット全体を使ってリズムを創出する様は、腕以外の身体のあらゆる部位を使ってボールを蹴るブラジル人フットボーラーや、ターンテーブルを楽器にしてしまうターンテーブリストの発想を思わせる。ただただ踊らせるために、しかしだからこそ多彩なドラムフレーズを駆使する。
 さて、ここでゴンノ&マスムラの登場だ。インターナショナルに活動するDJ/プロデューサーのGONNO。そしてex森は生きているのドラマー、増村和彦。このふたりによるプロジェクト、Gonno & Masumuraのアルバム『イン・サークルズ』が4月25日にいよいよリリースされる。
 ディター・メビウスとコニー・プランクとマニ・ノイメイヤーの『ゼロ・セット』を忘れよう。フォー・テットとスティーヴ・リードの一連のコラボレーションも忘れよう。モーリッツ・フォン・オズワルドとトニー・アレンの共作も忘れていいでしょう。
 『イン・サークルズ』は、そうした先駆的作品と確実にリンクしているが、まったく似てないとも言える。日本のテクノ・シーンを牽引するプロデューサーによるエレクトロニクスと、そして本作においてトニー・アレンからの影響(フレージング)を出し切ろうとしたドラマーとのまったく素晴らしい邂逅。その純粋な音楽的化学変化は、このふたりだからこそ為しえたものであり、ジャケットが表すように、それは宇宙を目指すのだ。
 そもそも日本のDJカルチャーがこのような形で日本のインディ・ロックと融合するのは、90年代以来のことではないだろうか。松浦俊夫さんは早々と彼らの曲をラジオでオンエアーしたそうだが、いよいよ日本からもこうした雑種に対するオープンマインドな動きが出てきた。いっしょに飛んでくれ!


ゴンノ&マスムラ
イン・サークルズ

Pヴァイン
Amazon

078 KOBE 2018 - ele-king

 GWの4月28日、神戸のクロスカルチャー・フェスティバル「078」にて、デトロイト・テクノ・シーンのカリスマ、URがライヴ出演します。今回はマイク・バンクスとマーク・フラッシュのふたりによるDepth Charge名義でのライヴ、シンプルなテクノ・セットのなかで往年の名曲が聴けると思われます。「078」は無料の野外フェスです。こんな機会、なかなかないです。行ける方はぜひ行きましょう。(ほかにもKyoto Jazz Sextet+菊地成孔のライヴもあります)
 なお、4月30日には渋谷のCONTACTでもライヴ公演があります。神戸まで行けない方はこちらをどうぞ。

078 KOBE 2018 - MUSIC

 「若者に選ばれ、誰もが活躍するまち」神戸を実現するため、未来に向け魅力と活力あふれる都市として発展する神戸を発信するため、2017年から始まった市民参加型のクロスカルチャー・フェスティバル。
「078」は、神戸市のエリア・コードです。
 2年目となる2018年は、MUSIC X FILM X INTERACTIVE X FOOD X FASHION X KIDS X ANIMATIONの7つのサブジェクトが融合し、交差し、スケールアップして開催されます。MUSIC部門では、日本に最初にJAZZが降り立った街 "KOBE"として、国際色豊かな
ラインナップが揃っています。特筆すべきは、これまで15年に渡り、数々の楽曲制作を行い、KOBEを日本のホームタウンと呼ぶ"Underground Resistance"が、Mad MikeとMark Flashによる"Depth Charge"として来日。日本JAZZの聖地に、Hi-Tech JAZZを
響渡せます。また、今回は、完全なフリー・コンサートということもあり、DetroitTechnoファンには、初期DEMFを彷彿させるのではないでしょうか?

2018/4/27 - 29
*MUSIC部門は、4/28-29。UR出演は、4/28。
11:00 - 21:00
会場:神戸メリケンパーク内、特設野外ステージ
Time Table:
4/28(土)
12:00~12:30 THE APPLES
13:00~13:30 ハロルド
14:00~14:30 The Songbards
15:00~15:30 SODA!
16:00~16:30 Young Juvenile Youth
17:00~17:30 The fin.
18:00~19:00 Kyoto Jazz Sextet feat. Navasha Daya & 菊地成孔
19:00~20:45 UNDERGROUND RESISTANCE as Depth Charge
20:45~21:00 セッション

4/29(日)
11:00~11:20 バーバリアン
11:30~13:00 Japan × Asia Friendshipプロジェクト
13:10~13:30 神戸タータン × 神戸松蔭女子学院大学ファッションショー
14:00~14:30 黒猫チェルシー
15:00~15:30 THE NEATBEATS
16:00~16:30 レッツゴーSUN弾き(うじきつよし[子供ばんど] / 鈴木賢司[シンプリー
レッド] / 佐藤タイジ[シアターブルック])
17:00~17:30 ザ50回転ズ
18:00~18:30 THE TOMBOYS
19:00~19:40 WEAVER
20:10~20:40 KJPR ELECTRIC BAND

Underground Resistance (Detroit. USA)
1989年、Jeff MillsとMike Banksの2人によって、デトロイトで結成されたテクノ・グループ。彼らの融合は、Hip Hop、Jazz、Punk Rock、Funkを本質に、攻撃的な電子音を掛け合わせることで、独自のスタイルを構築し、90年代以降のエレクロニック・ミュージック・シーンに多大な影響を与え、彼らをリスペクトするミュージシャンは世界中、推挙に暇がない。

Depth Charge (デプス・チャージ)
過去29年に及ぶUnderground Resistanceとしての活動をすべて網羅したユニットを作ろうというテーマのもとに生まれたの が、今回出演するDepth Charge (デプス・チャージ)。リーダーであるMad Mike Banksと、初期からのメンバーであるMark Flashの2人による、Keyboards、Drum Machine、Turntables、Percussionsを駆使したパフォーマンスで、過去のURクラシック スから未発表曲までを縦横無尽に演奏する、これぞURというユニットである。一昨年の来日時には、1回のフェスティバ ルのみの公演であったが、いよいよ、彼らが日本のホームタウンと呼ぶ「KOBE」に凱旋を果たす。

078 KOBE 2018 公式ページ:
https://078kobe.jp/
078 KOBE 2018 - MUSIC ページ:
https://078kobe.jp/events_category/music/


■東京公演
日程:4/30
会場:CONTACT
17:00 Open / 23:00 Close
Time Table:
17:00 - DJ WADA
19:00 - Ken ISHII
20:30 - 22:30 Depth Charge
https://www.contacttokyo.com/schedule/underground-resistance-as-depth-charge
-live-in-tokyo/

R.I.P. Cecil Taylor - ele-king

 セシル・テイラーが亡くなった。

 4月5日にブルックリンの自宅でピアニストにして詩人は息を引き取る。89歳だった。最高気温は7度くらいだろう。寒くて雨がちだったこの日、家族のほかに彼を見送ったのは、サキソフォン奏者のエヴァン・パーカーと〈Cadence〉レーベルの主宰者ロバート・ラッシュだという(『ガーディアン』紙電子版)。巨漢のパーカーが共演したライヴは数え切れないし、ラッシュは最後のアルバムを作った人だ。1956年に出された最初の作品『Jazz Advance』から62年の時間が流れたのである。

 少し暖かくなったニューヨークの街では今ごろ、彼の音楽に励まされた人たちが記憶を紡ぐ催しを準備していることだろう。私もここでその試みに加わりたいと思う。

 3年前に彼がオーネット・コールマンの葬儀で演奏した音を聴きながら、これを書いている。2015年6月27日、場所はマンハッタンの西ハーレムにあるリバーサイド教会である。シャルトルの大聖堂を模したゴシック教会の高いドームに響くのは金属的なハイトーンだ。これが倍音を含んでちょっとハープシコードみたいに聞こえる。年を追うごとに南方に向かい、カーニヴァル的になっていったオーネットを送るセシルのピアノは、対照的に大都会の森厳な杜で鳴っているのである。ある種の「同志的」な共感が伝わってくるのと同時に、大きく距離をとった天空の眼を思わせる。骨に響き、脳幹を貫くすばらしい演奏だった。そう感じるのは、決して同じ時代を生きた者たちだけではないだろう。

 1929年のクイーンズ生まれ。この地区でニューヨーク万博が開かれたのは10歳の時である。セシルは根っからのニューヨーク人なのである。モンクやローチ、それにロリンズもそうだった。音楽は「街の気流」だ。どれほど孤独な音楽実験も、「自然」を志向するサウンドも、人びとの間で生まれる。実はモンクが産声を上げた1917年から1930年のロリンズまで13年間しかない。意外なのはロリンズの方がセシルより1歳若いこと。そしてオーネットはテキサス州フォートワースで生を享けたが、ロリンズと同い年だということだ。マイルスはセシルの3つ年上なだけ。何が言いたいのかって? つまりバップからフリーまで、すべてがこの街の蒸気と暗がりの中で一気に群がり起こったのである。

 訃報を伝える内外のどんな記事も「フリージャズの先覚者」という。オーネットの時もそうだった。そんな見出しを眼にすると「ああ、人はそうやって棺桶に蓋をされるのか」と思う。「棺桶」にもいろいろある。藝術の棺桶、ジャズの棺桶、フリーの棺桶、現代音楽の棺桶。そして立派な墓が立つ。20世紀の殿堂という墓穴に入れられて、それで一丁上がりである。

 セシルは、移民の缶詰のようなクイーンズ区の北東部で黒人ミドルクラス家庭の一人っ子として生まれた。「イミグラントでいないのは日本人くらいかな」と友人はいう。6歳でピアノを始め、後にボストンのニューイングランド音楽院に学んでいる。ボストンは批評家のナット・ヘントフが多民族エリアの縁でジャズに酔い痴れた街である。これはバイオグラフィーじゃない。エリントン、ミンガス、マイルスと続く自意識が絡み合うその足跡だ。そして「主流派のジャズクラブから追放された彼は」と『ガーディアン』紙でローラ・スネイプスは書いている。皿洗いやクリーニング屋(!)でどうにか喰いつないだという。民族混淆の下水道のような新宿2丁目の洗濯屋稼業で凌いだ身としては、実になんとも汚水が眼に染みてしょうがないのである。

 『Jazz Advance』の“You’d be so nice to come home to”には、セシルの自意識が辿ったこういう泥道が伺える。「ニューヨークの溜め息」ヘレン・メリルが歌うメロディーを弾くピアノはギクシャクと路地を曲がりくねって即興に突入していくのである。こういう捻れを振り払うように『Conquistador!』や『Unit Structures』の構造的土石流が押し寄せただろう。私には1980年代のFMPに残された稠密な集団即興が今でも耳に轟いている。

 オーネットへの葬送曲が、セシル・テイラー自身によるセシルへの挽歌のように聞こえないか。カテドラルの空間を昇っていくその何本もの音の線が、ラヴェルのヴァイオリン・ソナタが秘めた爆発的な繊細さを思わせるのである。そこから洩れてくる声は弔いの儀式にふさわしくない。「すべての棺桶をこじ開けろ」と私に囁くのである。

Moodymann - ele-king

 なんと、ムーディマンが6月に新作LPをリリースする。タイトル含め、アンプ・ドッグ・ナイト(アンプ・フィドラー)が参加していること以外はまだ何も明かされていないが、先行シングルと思われる12インチ「Pitch Black City Reunion / Got Me Coming Back Rite Now」はすでにリリース済み。いや、これ、むちゃくちゃかっこいいです。売り切れる前にレコ屋へ急げ!


DJ Spoko - ele-king

 これからだったのに。
 3月14日。あまりにもはやく彼はその生涯を閉じることになってしまった。まだ35歳だった。

 DJスポコこと Marvin Ramalepe は、かつてDJムジャヴァとともに“Township Funk”を作り上げたことで知られる、南アフリカはプレトリアのプロデューサーである。彼の生み出すアフリカン・ハウス・ミュージックは「バカルディ・ハウス」という名で人口に膾炙しており、その活動は00年代半ばまで遡ることができるが、よく知られているのは「Ghost Town」(2013年)や『War God』(2014年)といった米英のレーベルから発表された作品だろう。2015年には Fantasma というコレクティヴの一員としてアルバム『Free Love』に参加、結核と診断されたことを明かしながら Bandcamp などをとおしてリリースを続け、2016年には再度ムジャヴァと組んだ決定的な1作「Intelligent Mental Institution」を発表、バカルディ・ハウスのオリジネイターの貫禄を思うぞんぶん見せつけてくれたのだった。
 そして、昨年。きっと彼は次の一手を模索していたのだと思う。マティアス・アグアーヨとの連名で送り出された「Dirty Dancing」は、スポコがもしかしたら今後生み落とすことになったかもしれない奇蹟的な名作を予感させる、実験的かつ越境的な試みだった。その経験が良い刺戟となったのだろう、以降も彼は積極的にコラボを重ねていたようで、ソンゴイ・ブルーズを発掘したスティーヴン・バッドによれば、スポコは死の前月までアフリカ・エクスプレスのアルバムの仕事に関わっていたのだという。
 ほんとうに、これからだったのだ。

 この「Spoko Forever」は遺されたスポコの家族を支援するために企画されたEPで、彼が生前取り組んでいた最後のトラックを収録している。バカルディ・ハウスの王道が示された冒頭“Bula ma”の風格にはただただひれ伏すほかないけれど、それ以上に2曲目以降のトラックがおもしろい。4つ打ちのキックとビッグ・ビート風のギターが織り成す躍動的なリズムのうえをウェイトレスなシンセとチョップされたヴォーカルが舞い踊る“The sweat of the Dragon”は、スポコが欧米からの影響を独自の形で消化=昇華していたことを教えてくれるし、90年代初頭のUKテクノを思わせるベースとズールーのギターが予想外の協演を繰り広げる“27 Strugles of our 4Fathers”は、陽気なはずなのにどこか不思議な哀愁を漂わせてもいて、繰り返し聴いていると目頭が熱くなってくる(フィーチャーされている Phuzekhemisi はマスカンディの先駆者のひとりで、レディスミス・ブラック・マンバーゾのアルバムに参加したことも)。

 さらに興味深いのはラファウンダをフィーチャーした“I lost my fear”で、バカルディ・ハウスのリズムにダブ・テクノのムードをかけ合わせながら、そこに実験的なヴォーカルを差し挟むという野心的な仕上がり。これまでの彼には見られなかったスタイルだけに、「恐れなんてない」という意味深げなラファウンダの声がいつまでも耳にこだまし続ける。

 ブレイクスルーとなった“Township Funk”からちょうど10年。スポコのネクスト・ステージを予告するこれらのトラックたちはいま、否応なく聴き手の身体を揺さぶると同時にその悲しみを増幅させもする。ありえたかもしれない彼の新たな音楽に想いを馳せながら私たちは、これから何度もこの遺作を聴き返すことになるのだろう。
 ほんとうに、これからだったのに。

Dego / 2000Black - ele-king

 言わずもがな、90年代から今日にいたるまでUKのドラムンベース~ブロークンビーツ・シーンを支えてきた4ヒーローのディーゴが来日ツアーを決行します。近年は自身の主宰する〈2000ブラック〉からのみならず、フォルティDLの〈ブルーベリー〉やフローティング・ポインツの〈エグロ〉からも作品を発表、昨年はセオ・パリッシュの〈サウンド・シグネイチャー〉からカイディ・テイタムとのコラボ『A So We Gwarn』をリリースするなど、その横断的かつ精力的な活動は最近の南ロンドン・ジャズの盛り上がりとも呼応していると言っていいでしょう。今回のツアーでは東京、京都、大阪の3都市を巡回。一部の公演ではマーク・ド・クライヴ=ロウや沖野好洋も出演します。ゴールデンウィークはこれで決まりですね。

◆DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018◆

ロンドンのクラブ/ソウル・ミュージック・シーンを牽引してきた巨匠、DEGOの来日ツアーが決定!
自身が主宰するレーベル、〈2000BLACK〉でブロークンビーツ/ニュージャズの潮流を生み、デトロイトのTHEO PARRISHと共に現代ブラック・ミュージックのグルーヴマスターとして君臨。
昨年はTHEO PARRISHのレーベル、〈Sound Signature〉から盟友KAIDI TATHAMとの共作アルバム『A SO WE GWARN』を発表しスマッシュヒットを記録する。
飽くなきビートの追求とスピリチュアルな音楽へのこだわり、音楽への深い愛情を反映した21世紀のハイブリッド・ソウル・ミュージックを生み出し続ける。

今回の日本ツアーでは、東京のハウス・ミュージックを代表してシーン賑わせている「Eureka!」@Contact、京都のclub Jazzシーンを引率してきているMETROで開催される「Do it JAZZ! 」、そして大阪公演はDEGOの盟友、沖野好洋と共にCIRCUS OSAKA & CATSでプレイする。

◆DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018ツアー日程
【東京】 05.04 (FRI) CONTACT https://www.contacttokyo.com/
【京都】 05.05 (SAT) CLUB METRO https://www.metro.ne.jp
【大阪】 05.11 (FRI) CIRCUS OSAKA https://circus-osaka.com/

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【東京公演】
Eureka!
■日時
2018年5月4日(金)
Open 22:00~
■会場
Contact

■料金
¥3,500 on the door
¥3,000 with flyer
¥2,500 GH S member
¥2,000 under 23
¥1,000 before 11PM

■出演
Studio
Dego (2000Black / Sound Signature)
Mark de Clive-Lowe (CHURCH / Mashibeats) -Live-
Yoshihiro Okino (Kyoto Jazz Massive / Especial Records)
Midori Aoyama
sio

Contact
Kamma & Masalo (Brighter Days)
Endo Nao (CMYK)
hiroshi kinoshita
Ozekix (shaman / Weld)
I-BEAR’ (The Guest House)

Foyer
haraguchic (FreedomSunset)
Souta Raw
Kirioka (CMYK)

Contact
B2F Shintaiso Bldg No.4 , 2-10-12 Dogenzaka, Shibuya-ku, Tokyo 150-0043 Japan
+81(0)3 6427 8107

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【京都公演】
Do it JAZZ! × DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018
■日時
2018年5月5日(土)
22:00 open/satrt
■会場
京都CLUB METRO

■料金
前売¥2,500 ドリンク代別途  当日¥3,000 ドリンク代別途

[前売]
チケットぴあ (Pコード:111-916) 、ローソンチケット (Lコード:55077)、e+ (https://bit.ly/2Dlsxrk)

※前売りメール予約:上記早割チケット期間以降は、前売予約として、ticket@metro.ne.jpで、前売料金にてのご予約を受け付けています。前日までに、公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。

■出演
DEGO (2000BLACK/4hero,from UK)

LIVE :
T.A.M.M.I & NOAH

DJ:
Masaki Tamura (DoitJAZZ!)
Kazuhiro Inoue (DoitJAZZ!)
SOTA (Back Home / Rokujian)
Torei (SYN-C / SND)
and More!!

■お問合せ:京都 CLUB METRO
WEB:https://www.metro.ne.jp
TEL:075-752-4765

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【大阪公演】
DEGO / 2000BLACK Japan Tour 2018
■日時
2018年5月11日(金)
23:00 open/satrt
■会場
CIRCUS OSAKA & CATS

■料金
Door 2,500+1D Adv 2,000+1D

■出演
DEGO (2000Black | from UK)
YOSHIHIRO OKINO (Kyoto Jazz Massive)
QUETSA
NiSSiE
AKEMI HINO (SiiNE)

Dance Showcase:
NEW UK JAZZ DANCE TEAM
Irven Lewis・Michito “MITTO” Tanabe & Peri
(Elements Jazz Collective & Co )

■お問合せ:CIRCUS OSAKA
TEL : 06-6241-3822
https://www.circus-osaka.com/

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DEGO (2000BLACK, UK)
ロンドンに生まれたDEGOはサウンドシステムや海賊放送でのDJ活動を経て90年に〈Reinforced Records〉の設立に参加、4HEROの一員として実験的なハードコア・ブレイクビーツのリリースを開始。やがて4HEROはDEGOとMARC MACの双頭ユニットとなり、タイムストレッチング等、画期的な手法を編み出し、ドラム&ベースのパイオニアとなる。傑作『PARALLEL UNIVERSE』(94年)、『TWO PAGES』(98年)以降、4HEROはD&Bのフォーマットから脱却し、『CREATING PATTERNS』(01年)、『PLAY WITH THE CHANGES』(07年)で豊潤なクロスオーヴァー・サウンドを打ち出す。DEGOはTEK9名義でダウンテンポを追求する等、オープンマインドかつ実験的な制作活動は多岐に及び、98年に自己のレーベル、〈2000Black〉を始動、ブロークンビーツ/ニュージャズの潮流を生む。KAIDI TATHAMらBUGZ IN THE ATTIC周辺と密に交流し、DKD、SILHOUETTE BROWN、2000BLACK各名義による共作アルバムを制作。11年には1st.ソロ・アルバム『A WHA' HIM DEH PON?』を発表、ジャズ、ファンク、ソウルへの深い愛情を反映した傑作となる。その後も精力的な活動を続け、12年に『TATHAM, MENSAH, LORD & RANKS』を発表。14~15年、盟友KAIDIとの共作をFaltyDLの〈Blueberry〉、FLOATING POINTSの〈Eglo〉、THEO PARRISHの〈Sound Signature〉等から立て続けにリリース。15年にはDEGO名義の2ndアルバム『THE MORE THINGS STAY THE SAME』を〈2000Black〉から発表、21世紀のハイブリッド・ソウル・ミュージックとして喝采を浴びる。そして17年にはかねてから試行錯誤を重ねてきたライヴ活動をDEGO & THE 2000BLACK FAMILYとして本格化し、名門Jazz Cafeでの公演を成功させる。またDEGO & KAIDIのアルバム『A SO WE GWARN』を〈Sound Signature〉から発表、ルーツに深く根差しながらも未来のビートへの飽くなき探求を続け、UKブラック・ミュージックの新しいスタンダードとなる。
https://www.2000black.com/
https://www.facebook.com/2000blackrecords
https://twitter.com/2000black_dego
https://soundcloud.com/2000black

Kamasi Washington - ele-king

 待望の、という言葉がこれほどふさわしいニュースもそうないでしょう。〈ブレインフィーダー〉から放たれた『The Epic』で一躍ときの人となったカマシ・ワシントンが、3年ぶりとなるセカンド・アルバム『Heaven and Earth』を〈ヤング・タークス〉からリリースします。前作も3枚組の大作でしたが、今回も「Heaven」というパートと「Earth」というパートから成る荘厳な作品となっている模様。サンダーキャットロナルド・ブルーナー・ジュニアテラス・マーティンライアン・ポーターなど、仲間たちも勢ぞろい。いまかつてないほどの賑わいを見せているジャズ・シーンですが、そのなかでもこれは聴き逃すことのできない重要な1作となるでしょう。



KAMASI WASHINGTON

新世代ジャズ黄金期の象徴、カマシ・ワシントン
待望の最新アルバム『HEAVEN & EARTH』がリリース決定
新曲2曲のフル音源&短編映像解禁

サンダーキャット、テラス・マーティン、ロナルド・ブルーナー・ジュニア
キャメロン・グレイヴス、ブランドン・コールマン、マイルス・モーズリー
パトリース・クイン、トニー・オースティンら豪華ミュージシャンが参加

私の心が宿る世界は、私の心の中にある――この考えがアルバム『Heaven and Earth』を作るインスピレーションとなった。私たちが経験する現実は、我々の意識が作り上げたものに過ぎないが、そもそも我々の意識は、その経験をもとに現実を作り上げる。私たちは自らの宇宙の創造者であると同時に、自らの宇宙の創造物でもある。本作における『Earth』のパートは、私が“外向き”に見る世界を表現している。つまり私が存在している世界である。『Heaven』のパートは、私が“内向き”に見る世界、つまり私の中に存在している世界を表している。私が何者であるか、そしてどんな選択をしていくのか。その答えは、それら2つの世界の間にある。
- カマシ・ワシントン

新世代ジャズ黄金期の象徴として、特別な存在感を放ち続けるカマシ・ワシントンが、2015年のデビュー作『The Epic』に続く、待望のセカンド・アルバム『Heaven & Earth』を6月22日(金)にリリースすることを発表した。2時間半にも及ぶ本アルバムは『Earth』盤と『Heaven』盤の2枚組で構成されており、本日の発表に合わせて『Earth』盤収録の“Fists of Fury”、そして『Heaven』盤収録の“The Space Travelers Lullaby”の2曲が先行配信され、イギリス人アーティスト/監督のJenn Nkiruによる鮮やかな短編映像がそれぞれ公開されている。

Fists of Fur (from Earth)
https://y-t-r.co/spacetravelerlullaby

The Space Travelers Lullaby (from The Space Travelers Lullaby)
https://y-t-r.co/fistsoffury

『Earth』と『Heaven』の2部構成となっている本作を通じて、カマシは現実世界と宇宙とを衝突させ、その心理に迫る。世界の構造についての自身の考えをさらに探求した本作では、現状の世界的混沌に対する彼の考察と、彼が抱く未来へのヴィジョンが探求されている。

なお今回公開された“Fists of Fury”と“The Space Travelers Lullaby”の短編映像は、今後公開が予定されているという映像企画に着想を得て制作されている。

本作のレコーディングのため、カマシは自身のバンド、ザ・ネクスト・ステップと、新世代ジャズ勃興の出発点と言えるザ・ウェスト・コースト・ゲットダウンをロサンゼルスのヘンソン・スタジオに召集し、『Heaven & Earth』を構成する16曲をレコーディングした。作曲と編曲はカマシが行い、新たなオリジナル楽曲はもちろんのこと、ビーバップのレジェンド、フレディ・ハバードの“Hubtones”、さらに伝説の映画『ドラゴン怒りの鉄拳』のテーマ曲のカヴァーや、バンド・メンバーのライアン・ポーターによる曲も含まれる。

また本作には、サンダーキャット、テラス・マーティン、ロナルド・ブルーナー・ジュニア、キャメロン・グレイヴス、ブランドン・コールマン、マイルス・モーズリー、パトリース・クイン、トニー・オースティンなど豪華な面々を含む多数のミュージシャンが参加している。

カマシ・ワシントン待望のセカンド・アルバム『Heaven & Earth』は、6月22日(金)世界同時リリース! いずれも特殊パッケージ仕様のCDフォーマットと4枚組LPフォーマット、デジタル配信でリリースされる。

なおカマシ・ワシントンは、2018年8月18日(土)にサマーソニックへの出演が決定している。

SUMMER SONIC 2018
https://www.summersonic.com/2018/

label: Young Turks / Beat Records
artist: Kamasi Washington
title: Heaven and Earth
release date: 2018.06.22 FRI ON SALE

商品情報はこちら
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9597

Tracklisting

Earth
1. Fists of Fury
2. Can You Hear Him
3. Hub -Tones
4. Connections
5. Tiffakonkae
6. The Invincible Youth
7. Testify
8. One of One

Heaven
1. The Space Travelers Lullaby
2. Vi Lua Vi Sol
3. Street Fighter Mas
4. Song For The Fallen
5. Journey
6. The Psalmnist
7. Show Us The Way
8. Will You Sing

The Caretaker - ele-king

 秀逸なアンビエント作品で知られるザ・ケアテイカーの新作『Everywhere at the End of Time - Stage 4』が4月5日、自身のレーベル〈History Always Favours the Winners〉からリリースされた。今作は2016年に始動した6連作の4作目で、2018年にシリーズは完結するとのこと。「ele-king vol.21」における2017年の年間ベストでは、去年発表されたシリーズ前半3作をまとめたコンピレーション『Everywhere at the End of Time Stages 1-3』が選定された。


 この機会にこの作家の経歴をざっと振り返ってみたい。ザ・ケアテイカーとはジェイムズ・リーランド・カービーによる記憶と時間をテーマにしたプロジェクトだ。カービーは多くの名義を持つ作家だ。V/Vm名義ではハードコア・テクノやグリッチ・ノイズの作品を90年代から発表。ザ・ストレンジャー名義では2013年に〈Modern Love〉から傑作『Watching Dead Empires in Decay』をリリースしたことも記憶に新しい。また本人名義でもアンビエント(時にポストクラシックとも呼ばれる)作品を多数発表しており、これらの作品の多くはは自身のレーベル〈History Always Favours the Winners〉からリリースされている。
 カービーはイングランドのマンチェスターから車で20分ほど離れた街ストックポート出身で、現在はポーランドのクラクフに在住。彼の作品のアートワークの多くは、同じくストックポート出身でベルリン在住の画家、イヴァン・シールが手がけている。地元が近いアンディ・ストットやデムダイク・ステアとも交流があり、最近では2006年に録音され2017年にリリースされたV/Vm『Brabant Schrobbelèr』のミックスをデムダイク・ステアのマイルズ・ウィテカーが担当している。
 その作品はアンビエントやノイズのリスナーだけではなく、ダンスミュージックのファンも魅了してきた。海外ではフライング・ロータスをはじめとするミュージシャンたちも彼のファンであることを公言している。

ツイッターでザ・ケアテイカーに言及するフライング・ロータス


 日本における紹介者としては、評論家の阿木譲が積極的にカービーの作品をとりあげており、本人と直接連絡も取り合っているようだ。三田格はV/Vm時代からその活動に注目しており『裏アンビエント・ミュージック 1960-2010』(INFASパブリケーションズ、2010年)でカービーに言及し、ザ・ケアテイカー名義の『Patience (After Sebald)』(2012年)の評がウェブ版「ele-king」には掲載された。(筆者は「ele-king Vol.20」(2017年)のダンス・ミュージック特集で、カービーの『The Death of Rave』(2014年)における「レイヴの死」の表象について思想サイドから考察を行っている。)
 ザ・ケアテイカー名義では1999年に第一作『Selected Memories From The Haunted Ballroom』を発表。「ザ・ケアテイカー(The Caretaker)」とはスティーヴン・キング原作(1977年)でスタンリー・キューブリックが1980年に映画化した『シャイニング』から着想を得ている。この第一作目のタイトルにある「The Haunted Ballroom(取り憑かれた社交パーティ舞踏室)」とは、ジャック・ニコルソン演じる主人公が誰もいないはずのボールルームで、パーティを楽しむ大勢の幽霊(あるいは記憶)たちに遭遇するあの場面を指しており、「ザ・ケアテイカー(管理人)」とはそのシーンで主人公が出会うかつてホテルの管理人(彼も幽霊、あるいは記憶)を務めていた登場人物からとられている。


The Caretaker - Selected Memories from the Haunted Ballroom

 そのサウンドの特徴は、端的に説明すれば、レコードのクラック・ノイズのカーテンの向こうから聴こえてくる過剰なエフェクトが加えられた78回転レコードのサンプリング・ループである。また、このプロジェクトのコンセプトには、ザ・ケアテイカーという存在は認知症を患っているため、過去を正しく思い出すことができない、という設定がある(ちなみにカービー本人は認知症を患ってはいない)。『Everywhere at the End of Time』のシリーズ前半である1−3作は「Awareness」(「Consciousness」と同じく「意識」も指すが同時に「気づき」も含意する)がテーマで、4作目以降は「Post Awareness」、つまり「気づき」が及ばない領域におけるより混沌としたサウンドスケープが展開されていくそうだ(この連作では同様のサンプリング・マテリアルが違ったアレンジで各所に何度も現れてくる。それを認知症の設定と関連づけて「ele-king vol.21」の年間ベスト評で筆者は考察した)。なお、今シリーズを最後に、ザ・ケアテイカーとしてのプロジェクトは終了することをカービーは既に発表している。
 『Everywhere at the End of Time』をテーマにした2017年12月のライヴでは、ザ・ケアテイカーとそのライヴのヴィジュアルを手がけるウィアードコア(Weirdcore。エイフェックス・ツインとのコラボレーションでも知られる)がステージに現れた。ステージ上にはソファーが二つ、コーヒー・テーブルが一つ、マイクスタンドが一つ、コート掛けが一つ、ウィスキーが一瓶。そのどれもがヴィンテージ調である。爆音で音楽が流れ、ステージ上空の大きなプロジェクターに映る映像と大量のスモークがそれを彩る。その一方でふたりは機材を操作する行為は一切行わない。ただソファーに腰掛け、ウィスキーと会話を楽しんだ後、黙って回想に耽り、ザ・ケアテイカーはたまに立ち上がると曲に合わせて歌うふりをするだけ……、という強烈な「パフォーマンス」が披露された。ちなみに過去のライヴで、カービーはバニー・マニロウやブライアン・アダムスをアンコールで熱唱し(ジョークなのだろうが、これがなかなか良い)、V/Vm名義では豚の仮面を被りステージ上を豪快に動き回っていた。
 先日の『Stage 4』のリリースと同時に、2017年に発表された『Take Care, It's A Desert Out There...』も再発された。もともと同作は、ポーランドの音楽フェスティバルであるアンサウンドがロンドンのバービカン・センターでその年の12月に開催したイベントにザ・ケアテイカーがライヴ・アクトとして出演した時に無料配布されたもので(先ほど紹介したライヴはこの時のものだ)、マンチェスターに拠点を置くディストリビューター/ウェブ上の販売店であるブームカットから後ほど発売された。
 同作は今年の2月に日本語訳版が刊行された『資本主義リアリズム』(堀之内出版、2018年)の著者である批評家故マーク・フィッシャーに捧げられている。フィッシャーとカービーの親交は10年以上に及び、ザ・ケアテイカー名義で発表された『Theoretically Pure Anterograde Amnesia』(2005年、CD は2006年。なんと6枚組である)のライナーノーツを担当したのはフィッシャーだ。このライナーノーツの結びの言葉である「気をつけろ、外は砂漠なのだから……」から件の2017年作のタイトルはとられている。その文章と、英誌『Wire』2009年6月号に掲載されたフィッシャーによるカービーへのインタヴューは、彼の著作『Ghosts of My Life: Writings On Depression, Hauntology And Lost Futures』(Zero Books、2014年)に収録。本書において、フィッシャーはカービーをブリアルと並べて考察し、もはや未来が輝いていない現代を描いた作家として大きく評価した。
 フィッシャーは2017年1月に自らその命を絶つ。享年、48歳。晩年はうつ病を患っていた。彼の死に対して、コード9やサイモン・レイノルズをはじめとする多くのミュージシャンや批評家たちが哀悼の意を表してきたが、カービーはこの作品を発表するまで沈黙を通してきた。『Take Care, It's A Desert Out There...』の売り上げはイギリスのメンタル・ヘルス支援団体Mindへ送られるという。本作のCDには、並んで街を歩くフィッシャーとカービーの後ろ姿の写真がプリントされている。
 同様のジャンルで活動する他のミュージシャンたちに比べると、日本におけるザ・ケアテイカーをはじめとするカービーの作品の認知度はあまり高くはないかもしれない。しかしイギリスをはじめとする欧米の電子音楽のリスナーからの支持は大きく、その背景にはその独自なサウンドだけではなく、フィッシャーの文章による力や、その活動の方法なども影響しているのかもしれない。カービーはインディペンデントでの活動に重点を置くプロデューサーだ。基本的に毎回少数しか作られないLP(すぐにソールドアウトになる)とデータでのみ作品はリリースされる(新作のLP盤を手に入れてみたいという方は、彼のフェイスブック・ページで事前に発売日が発表されるのでチェックしてみてください。現時点ではアップル・ミュージックやスポティファイに彼の主要作品はなく、過去作の大半は〈History Always Favours the Winners〉のバンドキャンプのページで入手が可能だ。『Theoretically Pure Anterograde Amnesia』を購入すると、フィッシャーによるライナーノーツのPDFファイルも付いてくる。 
 「残念ながら、未来はもはやかつてのようなものではない」。カービーは2009年の自身名義のアルバム・タイトルでそう述べている。カービーはこの現代をどう見ているのか。ザ・ケアテイカーはなぜ記憶について語るのか。マーク・フィッシャーはどのようにこれらの作品を聴いていたのか……。そんなことを考えながら、認知症を患った記憶の管理人と、それを操るジェイムズ・リーランド・カービーの恐ろしく奇妙で美しいサウンドに耳を傾けてみてはいかがだろうか。

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