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DJ Spoko

Bacardi House

DJ Spoko

Spoko Forever

DJ Spoko Fund

Bandcamp 小林拓音   Apr 11,2018 UP

 これからだったのに。
 3月14日。あまりにもはやく彼はその生涯を閉じることになってしまった。まだ35歳だった。

 DJスポコこと Marvin Ramalepe は、かつてDJムジャヴァとともに“Township Funk”を作り上げたことで知られる、南アフリカはプレトリアのプロデューサーである。彼の生み出すアフリカン・ハウス・ミュージックは「バカルディ・ハウス」という名で人口に膾炙しており、その活動は00年代半ばまで遡ることができるが、よく知られているのは「Ghost Town」(2013年)や『War God』(2014年)といった米英のレーベルから発表された作品だろう。2015年には Fantasma というコレクティヴの一員としてアルバム『Free Love』に参加、結核と診断されたことを明かしながら Bandcamp などをとおしてリリースを続け、2016年には再度ムジャヴァと組んだ決定的な1作「Intelligent Mental Institution」を発表、バカルディ・ハウスのオリジネイターの貫禄を思うぞんぶん見せつけてくれたのだった。
 そして、昨年。きっと彼は次の一手を模索していたのだと思う。マティアス・アグアーヨとの連名で送り出された「Dirty Dancing」は、スポコがもしかしたら今後生み落とすことになったかもしれない奇蹟的な名作を予感させる、実験的かつ越境的な試みだった。その経験が良い刺戟となったのだろう、以降も彼は積極的にコラボを重ねていたようで、ソンゴイ・ブルーズを発掘したスティーヴン・バッドによれば、スポコは死の前月までアフリカ・エクスプレスのアルバムの仕事に関わっていたのだという。
 ほんとうに、これからだったのだ。

 この「Spoko Forever」は遺されたスポコの家族を支援するために企画されたEPで、彼が生前取り組んでいた最後のトラックを収録している。バカルディ・ハウスの王道が示された冒頭“Bula ma”の風格にはただただひれ伏すほかないけれど、それ以上に2曲目以降のトラックがおもしろい。4つ打ちのキックとビッグ・ビート風のギターが織り成す躍動的なリズムのうえをウェイトレスなシンセとチョップされたヴォーカルが舞い踊る“The sweat of the Dragon”は、スポコが欧米からの影響を独自の形で消化=昇華していたことを教えてくれるし、90年代初頭のUKテクノを思わせるベースとズールーのギターが予想外の協演を繰り広げる“27 Strugles of our 4Fathers”は、陽気なはずなのにどこか不思議な哀愁を漂わせてもいて、繰り返し聴いていると目頭が熱くなってくる(フィーチャーされている Phuzekhemisi はマスカンディの先駆者のひとりで、レディスミス・ブラック・マンバーゾのアルバムに参加したことも)。

 さらに興味深いのはラファウンダをフィーチャーした“I lost my fear”で、バカルディ・ハウスのリズムにダブ・テクノのムードをかけ合わせながら、そこに実験的なヴォーカルを差し挟むという野心的な仕上がり。これまでの彼には見られなかったスタイルだけに、「恐れなんてない」という意味深げなラファウンダの声がいつまでも耳にこだまし続ける。

 ブレイクスルーとなった“Township Funk”からちょうど10年。スポコのネクスト・ステージを予告するこれらのトラックたちはいま、否応なく聴き手の身体を揺さぶると同時にその悲しみを増幅させもする。ありえたかもしれない彼の新たな音楽に想いを馳せながら私たちは、これから何度もこの遺作を聴き返すことになるのだろう。
 ほんとうに、これからだったのに。

小林拓音