「Nothing」と一致するもの

Jun Togawa - ele-king

 ヤプーズといえば『ヤプーズ計画』と『大天使のように』はアナログでリリースされましたが、いきなり押し寄せたCD化の波によって『ダイヤルYを廻せ!』以降はCDしかリリースされませんでした。これが20年の時を経てアナログ化されます! 針を落として目をくるくる回してアナログの音を楽しみましょう~。♪いろいろあったわよね~ 覚えているわ~ 


ヤプーズ
ダイヤルYを廻せ!

8月18日(水)
品番:PLP-7171
価格:¥3,850 (税込)(税抜:¥3,500)
★初回生産限定
Pヴァイン盤もベストセラーを続ける言わずと知れたヤプーズの1991年の3作目、『赤い戦車』収録! 邦楽ロック史上最強の大傑作アルバムが初のアナログLP化!(オリジナル・リリース:東芝EMI 1991年)



ヤプーズ
ダダダイズム

発売日:8月18日(水)
品番:PLP-7172
価格:¥3,850 (税込)(税抜:¥3,500)
★初回生産限定
これまたPヴァイン盤もベストセラーを続ける4作目。平成が始まらんとする年1992年に発売した、ヤプーズの底力を思い知らされる1枚。ジム・オルークの愛情たっぷりな解説も。(オリジナル・リリース:東芝EMI 1992年)

※各定価¥3,850(税抜¥3,500)


4日間限定アーカイブ配信
そして、先日行われたバースデイ・ライヴの模様が4日間配信されます!

■JUN TOGAWA BIRTHDAY LIVE 2021
3/31にクラブチッタ川崎で行われたライヴを、ほぼノーカットで配信!
新曲「おしゃれババア」を初披露! ゲストに高木完!

5/7(金)19:00 → 5/10(月)23:59
*チケットの販売は5/10 21:00まで

視聴チケット¥3500 4/24から販売。
Streaming+、ZAIKO
*ZAIKOは海外からの視聴可能。

Fishmans - ele-king

 まずはデビュー記念日の本日、4月21日(水) 20:00から、緊急無料配信イベント“Time passes and the future is now” が開催されます。茂木欣一がMCをつとめ、フィッシュマンズの30年間のこと、映画のこと、今後のことを大いに語る! そして、アコーステックなライヴもありです。

<イベント詳細>

オンラインイベント:”Time passes and the future is now”
配信日時:4月21日(水) 20:00 スタート予定
出演:フィッシュマンズ
チケット:無料 配信チャンネル:
https://www.youtube.com/channel/UCidxrkly1E665xDoTkaHNaw

*チャンネル登録お願いいたしますね!

 続いて、『映画:フィッシュマンズ』の続報です。
 以前、お知らせしした映画、いよいよ詳細があらわになってきました。ポスター&ティザー予告、そして、UA、ハナレグミ、YO-KING(真心ブラザーズ)、原田郁子(クラムボン)、こだま和文など豪華オールキャストも解禁。

【あらすじ】
90 年代の東京に、ただ純粋に音楽を追い求めた青年たちがいた。彼らの名前は、フィッシュマンズ。プライベートスタジオで制作された世田谷三部作、ライブ盤「98.12.28 男達の別れ」をはじめ、その作品は今も国内外で高く評価されている。
だが、その道のりは平坦ではなかった。セールスの不調。レコード会社移籍。相次ぐメンバー脱退。1999 年、ボーカリスト佐藤伸治の突然の死......。
ひとり残された茂木欣一は、バンドを解散せずに佐藤の楽曲を鳴らし続ける道を選ぶ。その想いに仲間たちが共鳴し、活動再開。そして 2019 年、佐藤が世を去ってから 20 年目の春、フィッシュマンズはある特別な覚悟を持ってステージへと向かう——。過去の映像と現在のライブ映像、佐藤が遺した言葉とメンバー・関係者の証言をつなぎ、デビュー30 周年を迎えたフィッシュマンズの軌跡をたどる。

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佐藤伸治
茂木欣一 小嶋謙介 柏原譲 HAKASE-SUN HONZI 関口“dARTs”道生 木暮晋也 小宮山聖 ZAK UA ハナレグミ YO-KING(真心ブラザーズ) 原田郁子(クラムボン) こだま和文
監督:手嶋悠貴
企画・製作:坂井利帆
ACTV JAPAN/イハフィルムズ 2021/日本/カラー/16:9/5.1ch/172 分
©2021 THE FISHMANS MOVIE

7月9日(金)より新宿バルト9、渋谷シネクイントほかにて公開決定!

※別冊エレキング『永遠のフィッシュマンズ』もいま作業の真っ直中です! 乞うご期待。

shame - ele-king

「shame + live show」で動画検索すれば、いま世界からもっとも失われているものがヒットするだろう。すなわち、満員になった小さなライヴハウスのステージで、野放図に楽器をかき鳴らし叫び散らす若者たちだ。学校に行けなくて教育や出会いの機会を奪われている学生の報道を見るたび僕は胸を痛めてしまうけれど、それと同じくらい、クラブやライヴハウスに行けない若者たちはどうしているのだろうと思う。2010年代中頃から顕在化しはじめ、現在ピークを迎えているように見えるUKを中心としたバンド・ブーム──そのほとんどがポストパンク的なものだ──は、「現場」が失われていることでむしろ訴求力を増しているようだ。シェイムはなかでもエネルギッシュなライヴとストレートにパンキッシュなサウンドで注目を集めたバンドであり、だから、彼らとそのオーディエンスはまさにいま「機会を失われた若者たち」としてここにいる。
 それにシェイムは、デビュー作の収録曲でテレーザ・メイ首相をおちょくったりするような分かりやすく反抗的な態度が受けていたところもある。最大の参照元のひとつにザ・フォールがあったという彼らは、音としてはブラック・ミディや〈ワープ〉と契約したスクイッドほどエクスペリメンタルではないものの、やはり反抗的な佇まいのホワイト・ファット・ファミリー周辺から出てきたというところも含め、自分たちの怒りや苛立ちをドライヴさせるためにパンク~ポストパンクを鳴らしているのだろう。再開発が進みパンデミック以前から(金のない若者たちの)「現場」が失われていたロンドンから、こうしたアティテュードのロック・バンドが登場し支持されたのは必然だった。

 ただ、彼らが若いエネルギーを発露させるロック・バンドとして人気を集めてきたということは、逆に言えばセカンド・アルバムが難しいということでもある。UKではとくに、デビュー作をメディアに持ち上げられたロック・バンドが続かないことがあまりにも多い。その点、シェイムは職人肌のジェームズ・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)をプロデュースに迎え、音のバラエティとサウンドの立体感を増すことで真っ当に成長を見せる道を選んだようだ。たとえば “Water in the Well” で方々から聞こえてくるユーモラスなパーカッションや、分厚いコーラス・パートへ突入するダイナミズムは、ファースト・アルバムから確実にビルドアップされたところだ。
 けれどもそれ以上に興味深いのは、『Drunk Tank Pink』をよく見ると浮かび上がってくる内省的なムードがパンデミック以降の閉塞感とシンクロしていることである。アルバム・タイトルはじっと眺めていると精神を落ち着かせるピンクのことで、バンドのフロントパーソンであるチャーリー・スティーンが自宅のクローゼットに塗った色のことだそうだが、それは過酷なツアー生活から心の平穏を取り戻すためのものだったという。歌詞を見れば、彼らの内側には行き場のない混乱が吹き荒れている。初期フォールズのように執拗かつミニマルなギター・リフではじまりカオティックなアンサンブルに突入していく “6/1” では「俺は自分が嫌悪しているすべてのものの象徴/それでも自分がずっとなりたいと夢見ていた者」という吐露からはじまり「俺は自分を憎み、自分を愛している」という叫びで終わるが、こうした分裂的な感覚がこのアルバムの肝だ。陰鬱なフィーリングを醸す “Snow Day” は偶然にせよ自己隔離期の孤独感を捉えているし(「いつものように会えないのなら、なぜ会うべきなのか?」)、ソリッドなギターと変拍子の応酬が不安定なグルーヴを生む “Harsh Degrees” では自分の意思で動けない苛立ちが蓄積される(「きみは俺の操り師/俺はきみの遊ぶオモチャ」)。もっともアップテンポで簡潔なパンク・ソングである “Great Dog” のような曲でさえ、よく聴けば下のほうでドローン音が鳴っているなど不穏な響きとなっており、なかば無理矢理に疾走するバンド・アンサンブルとも相まって抱えきれない不安が暴走していくようだ。
 そうした意味では、ミドル・テンポのなか濁った鍵盤音と迫力を増していくノイズが空間を覆っていくクロージングの “Station Wagon” はバンドにとってこれまででもっとも挑戦的なナンバーだ 。「新たな解決策を出さないと/新年の抱負を立てないと、まだ年末ですらないけれど」と投げやりに吐き出されるこの曲は、バンドや彼らのオーディエンスが抱える現在の行き止まり感と未来の不透明さをうまく捉えているように思える。だからこそ『Drunk Tank Pink』は2021年の子どもたちのためのロック音楽として鳴っているし、ここに収められた荒々しいパンク・ソングがライヴハウスで再び演奏されるときが待ち遠しい。“Station Wagon” ではそして、「腐っている暇はない/新車のステーション・ワゴンが旅に出ていく」と、同じように鬱屈する若者たちへのぶっきらぼうな励ましがこめられている。

Otagiri - ele-king

 Otagiri(オタギリ)の『The Radiant』はリアルではない。痛快なほどシュールだ。このアルバムを聴いていると想像力がかき立てられ、思いも寄らぬイメージがつぎつぎと湧きあがってくる。非常にスリリングな音響体験だが、これは日本で生まれたヒップホップのアルバムである。
 文脈を異にするさまざまな音の断片が入り乱れ、予測のつかないかたちでコラージュされていく。ことばも、ラップというよりはポエトリー・リーディングや演説に近い。ひとつひとつのサウンドや単語は、なるほどたしかにドキッとさせる瞬間もあるにはあるが、決定的な人生の物語や内面を描写することはなく、ただ曲全体のなかへと埋没していく。サックスやら声明やら具体音やらが転げまわり、日本語は唐突に英語へと切り替わる。まずは “Music Related” を聴いてみてほしい。

 Otagiri なるこの才能は、すでに10年ほどまえから活動をはじめていたようだ。これまで Soccerboy や S̸ といった名義で音源を発表したりライヴをしたり、劇作家の岡田利規や ECD とコラボしたり、沖縄を拠点にしているらしいこと……しかしより詳しい情報は出てこない。むかしのバンドキャンプのページも削除されてしまっている(コンピ『REV TAPE VOL.2』は生存を確認。ほかにフィジカル盤では、コンピ『Fresh Evil Dead』や ECD のベスト盤にその名が見える)。『fnmnl』のインタヴューから読書好きだというのはうかがえるのだが、バイオ的なことはほぼ不明。直近では KID FRESINO の新作『20,Stop it.』に参加していた。

 本作のプロダクションを手がけるのは横浜のDJクルー LEF!!! CREW!!! の DJ MAYAKU と Otagiri 本人。まず、彼らの音づくりが卓越していることは疑いない。マスタリング担当は90年代から活躍するヴェテラン音職人のツッチー。シンガーソングライターの butaji も客演している。
 このアルバムを聴いていると、 そもそもヒップホップそれ自体が以前までのポップ・ミュージックに抗う、ある意味で実験的な音楽だったことを思い出す。Otagiri は、キャラに頼らずとも音とことばだけで闘えることを証明しようとしている。なにより、これほどまでにサウンドと向き合い、独自の音楽を創造することを諦めない彼自身は、きわめてリアルというほかない。

Throttle Elevator Music - ele-king

 スロットル・エレヴェーター・ミュージックと言ってもご存じの方は少ないかもしれないので、カマシ・ワシントンの在籍するグループとして紹介したい。といってもカマシが関わるプロジェクトのなかではかなり毛色が異なるサウンドで、簡単に説明するならインスト系のジャム・バンドとなるだろうか。2015年にカマシが『ジ・エピック』でブレイクを果たす以前から活動していて、ファースト・アルバムの『スロットル・エレヴェーター・ミュージック』は2012年に発表している。
 バンドの中心人物はギタリストのグレゴリー・ハウで、彼がバンドのプロデュースをおこなうと共に、リリース元の〈ワイド・ハイヴ〉の運営もおこなっている。〈ワイド・ハイヴ〉は1999年に設立され、カルヴィン・キーズ、フィル・ラネリン、ラリー・コリエル、ロスコー・ミッチェルなどのジャズから、DJゼフなどヒップホップ系までリリースしている。グレゴリー自身はヴァリアブル・ユニットというジャズ・ヒップホップ・ユニットを率いて作品をリリースしており、そこに在籍したベーシストのマット・モンゴメリーと共に立ち上げたグループがスロットル・エレヴェーター・ミュージック(TEM)となる。

 カマシ・ワシントンは『スロットル・エレヴェーター・ミュージック』から録音に参加しており、ほぼ準メンバーと言える存在で、いくつかの作品では作曲もおこなっている。当時のカマシはジェラルド・ウィルソンのビッグ・バンドを経て、ソロ・アーティストとしていろいろキャリアを積んでいく渦中にあったのだが、伝説のジャズ・レーベルである〈トライブ〉創設者のフィル・ラネリンの『パーセヴェランス』(2011年)の録音に参加していて、これが〈ワイド・ハイヴ〉からのリリースということもあり、グレゴリー・ハウやマット・モンゴメリーとの交流が広がっていったようだ。『スロットル・エレヴェーター・ミュージック』以降、『エリアJ』(2014年)、『ジャッジド・ロックス』(2015年)、『IV』(2016年)、『レトロスペクティヴ』(2017年)、『エマージェンシー・エグジット』(2020年)とコンスタントにアルバムをリリースしてきており、カマシは全作品に参加している。
 グレゴリー、マット、カマシ以外のメンバーは作品ごとに替わることが多いのだが、基本的にはギター、ベース、ドラムスの3ピースにカマシを含めたホーン・セクション、グレゴリーの演奏するオルガンやマットのピアノを含めたキーボード類が加わるという構成である。そして、『ファイナル・フロア』が通算7枚目となるニュー・アルバムである。

 今回の録音はグレゴリー・ハウ(ギター、電気オルガン、シンセ)、マット・モンゴメリー(ベース、ギター、ピアノ)、カマシ・ワシントン(テナー・サックス)のほか、ランピー(ドラムス)、マイク・ヒューズ(ドラムス)、ギター(ロス・ハウ)、マイク・ブランケンシップ(オルガン、シンセ)、キャシー・ナッドセン(アルト・サックス、テナー・サックス)、エリック・イェカブソン(トランペット、フリューゲルホーン)という編成。グレゴリーとマットが作曲をおこない、エリック・イェカブソンがホーン・アレンジを担当している。それぞれベイ・エリアを拠点に活動するミュージシャンが参加しており、面白いところでマイク・ヒューズは1980年代から1990年代初頭にかけてリサ・リサ&カルト・ジャムのメンバーとして活躍した。
 タイトル曲の “ファイナル・フロア” が示すように、ギター、ベース、ドラムスのコンビネーションは骨太のロック・ビートを基本としていて、ウィルコなどのジャム・バンドに通じるところもある。“ハート・オブ・ヒアリング” のようにマットが刻むベース・ラインがバンドの推進力というか心臓部となっている。そして、グレゴリーのソリッドなギター・リフがスロットル・エレヴェーター・ミュージックの生命線で、“ファスト・リモース” のようにパワフルな破壊力を放っている。

 基本的にはジャズ・ロックやオルタナ・ロック的な内容のアルバムで、カマシのソロ・アルバムとは違ってどの曲もコンパクトな演奏時間となっている。ソロ作ではコルトレーンからファラオ・サンダース的な演奏を見せるカマシだが、本作ではどちらかと言えばレニー・クラヴィッツなどとも共演してきたジャム・バンド系のサックス奏者のカール・デンソンに近いラインだ。
 ソロ・インプロヴィゼイションも短く、“スープラリミナル・スペース” のようにホーン全体のアンサンブルで聴かせることが多い。その “スープラリミナル・スペース” はタイトルが示すようにコズミックで前衛的な作品で、“リサーキュレイト” においてもギターとホーン・セクションのコンビネーションが幻想的でアブストラクトなムードを高めていく。そうした中でも “キャスト・オフ” での演奏は、短い尺ではあるがカマシらしいエモーショナルなプレイを存分に発揮していて、彼のソロ・アルバムでファンになった人たちにもアピールする楽曲だろう。カマシの幅広さというか、もうひとつ別の顔を見せてくれるアルバムだ。

食品まつり a.k.a foodman が〈Hyperdub〉と契約!! - ele-king

 これはビッグ・ニュースだ。サン・アロウの〈Sun Ark〉から名作『Aru Otoko No Densetsu』がリリースされ、すでに2年半ほどが過ぎている。次のアルバムはいったいいつ……と期待を募らせていたリスナーも多いだろう。フットワークに触発されながらその後、文字どおり唯一無二のエレクトロニック・ダンス・ミュージックをつくりつづけてきた文字どおりの異才、食品まつり a.k.a foodman が、なんと、〈Hyperdub〉と契約。7月9日に新作『Yasuragi Land』をリリースする。これは、ビッグ・ニュースだ。
 現在、新曲 “星くず展望台” が公開中。曲名どおりロマンティックな要素を持ち合わせつつも、彼らしい独特のリズムが盛大に炸裂している。この夏の必聴盤、確定でしょう。

食品まつり a.k.a foodman

名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、
食品まつり a.k.a foodman
Pitchfork の年間ベストにも選出されるなど、
ワールドワイドな活動を続ける彼が、
レフトフィールド・ミュージックにおけるUKの最重要レーベル、
〈Hyperdub〉と契約!
最新作『Yasuragi Land』を7月9日にリリース決定!
新曲 “Hoshikuzu Tenboudai” がMVと共に解禁!

名古屋在住のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサー、食品まつり a.k.a foodman。これまでに Pitchfork、FACT Magazine、Tiny Mix Tapes などの海外メディアで年間ベストに選出され、Unsound、Boiler Room、Low End Theory といったシーンの重要パーティーへの出演も果たしワールドワイドな活動を広げる彼が、レフトフィールド・ミュージックにおける最重要レーベル の一つ、〈Hyperdub〉と契約、最新作『Yasuragi Land』を7月9日にリリースすることが発表された。併せて新曲 “Hoshikuzu Tenboudai” のMVが現在公開中となっている。

Foodman, Hoshikuzu Tenboudai
https://youtu.be/5qUCYUI1IqA

食品まつり a.k.a foodman こと樋口貴英(ひぐちたかひで)は、名古屋市出身で、現在も名古屋を拠点に活動をしている。アーティストとしては2010年代初頭に台頭したジュークやフットワークに大きな衝撃を受け、その後の自身の音楽形成に影響を与えたという。彼が伝えているのは、ジュークやフットワークの精神と感覚であり、彼の型破りなスタイルはそれに由来するとも言える。また、他のアーティストのプロデュースも行っており、アルバムにゲスト参加している Bo Ningen の Taigen Kawabe とタッグを組んで Kiseki というデュオでの活動も行なっている。

十代の頃から人前でのパフォーマンスを続ける彼は、人と集まってジャム・セッションしていたことがこのアルバムのインスピレーションになったという。それは一人で行う制作からは得られないものであり、そこから着想を得たサウンドとフィーリングをつなげて完成したのが本作『Yasuragi Land』の核心である。

また、アーティスト名やアルバムのアートワークから想像できるように、彼は食への大きな関心を持っており、アルバムに収録したトラックタイトルにもそれが反映されている。さらに、サウナ好きでも知られる彼が定期的に通う地元の銭湯や、道の駅、パーキングエリアの食堂でのささやかな楽しみにインスパイアされた楽曲も収録されている。

ああいう所に行ったら、その場の雰囲気を楽しむことができます。自分が作りたいと思ったのは、ギターとパーカッションのサウンドを、先が見えないながらも今感じられる穏やかな社会の感覚と組み合わせた真摯なアルバム。『Yasuragi Land』はそんな ‘平穏’ な場所なんです。 ──食品まつり a.k.a foodman

今回のアルバムは〈Hyperdub〉としては珍しくベースが使用されておらず、それによって『Yasuragi Land』は爽やかで洗練された印象を与える。このハイパー・リズミック・ミュージックとも形容できる作品は、2、3のシンプルなツールを用いて制作され、リスナーに脳内でのダンス体験をもたらす。“Yasuragi” や “Parking Area” は、まるで丁寧に分解されたアコースティック・ジャズのようで、“Ari Ari” はマンガに登場するしゃっくりが飛び散ったようなディープ・ハウスだ。“Hoshikuzu Tenboudai” と “Shiboritate” はライヒのようなミニマル・ミュージックのトランス的な要素がアップデートされポリリズム化した楽曲とも表現できる。“Food Court” には機械的なリズムと素朴なメロディが入り組み、“Galley Café” ではキュートな木笛のメロディとマイクロエディットされた木製ドラムが対になっている。ヴォーカル・トラック2曲のうち、Taigen の “Michi No Eki” では、Magma の楽曲のような複雑なロックをカジュアルでデジタルに描き、“Sanbashi ft. Cotto Center” は80年代のR&Bを彷彿とさせる。アルバムを締めくくる “Minsyuku” には、ダフトパンクのトラックから拝借したようなギターが聞こえ、隙間なくもつれ合ったドラムに織り込まれている。

彼の鬼才ぶりが発揮された待望の最新作『Yasuragi Land』は〈Hyperdub〉より7月9日にリリース! 国内盤CDにはボーナストラック “Super Real Sentou” が収録され解説が付属する他、輸入盤CD、デジタルと各種フォーマットで発売される。また、輸入盤LPは8月中旬に発売される予定となっている。

label: BEAT RECORDS / Hyperdub
artist: 食品まつり a.k.a foodman
title: Yasuragi Land
release date: 2021/07/09 ON SALE
* 輸入盤LPは8月中旬発売

国内盤特典:ボーナストラック追加収録 / 解説書封入
CD予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11814
LP予約: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11815

tracklist:
01. Omiyage
02. Yasuragi
03. Michi No Eki ft Taigen Kawabe
04. Ari Ari
05. Shiboritate
06. Hoshikuzu Tenboudai
07. Shikaku No Sekai
08. Food Court
09. Gallery Cafe
10. Numachi
11. Parking Area
12. Iriguchi
13. Aji Fly
14. Sanbashi ft Cotto Center
15. Minsyuku
16. Super Real Sentou (Bonus Track) [国内盤CDにのみ収録]

Aaron Cupples - ele-king

 本年2021年初頭に、ベルリンを拠点とするエクスペリメンタル・ミュージック・レーベル〈PAN〉からリリースされたアルバムを紹介したい。ロンドンのプロデューサー/映画音楽作曲家アーロン・カップルズによる『Island of the Hungry Ghosts (OST)』という作品である。
 このアルバムはその名のとおり同名映画作品のサウンドトラックだが、いわゆる「映画音楽を収録したアルバム」とは趣が異なっている作品に仕上がっている。いわばドローン、環境音、そしてノイズなどが混然一体となった「映画音響作品」とでもいうべき作品なのである。「音による映画」とでもいうべきか。
 とはいえ映画の「音響そのものをサウンドトラックとしたアルバム」というものはこれまでもいくつかの作品がリリースされていた。音楽だけではなく環境音、俳優の声、ノイズなどを収めている、文字通り映画のサウンドのトラックである。この『Island of the Hungry Ghosts (OST)』はその系譜に連なる作品といえる。

 例えばデレク・ジャーマン監督の遺作である青画面だけの映画『BLUE』のサウンドトラック・アルバムを思い出しておきたい。この映画はスクリーンにイヴ・クラインの青のような色だけが映し出され、そこにサイモン・フィッシャー・ターナーによる多層的な音響が重ねられていく。イメージを欠いた映画は、その音響の豊穣さによって、観客の聴覚を通して無のイメージを生成する。1994年にリリースされた同作のCD版にはサイモン・フィッシャー・ターナーが手掛けた音響が丸ごと収録されていたのだ。「青画面に覆われたイメージを欠いた映画」を、さらに音だけで聴取することによって研ぎ澄まされた音響体験が可能になる。ちなみにブライアン・イーノやモーマスも参加していたことも記しておきたい。
 そして1997年に〈ECM〉からリリースされたジャン=リュック・ゴダール監督、アラン・ドロン主演の映画『ヌーベルヴァーグ』(1990)のサウンドトラックもそのような「音響映画」とでもいうべきアルバムである。音業技師フランソワ・ミュジーが手掛けた『ヌーベルヴァーグ』の音響トラックすべてをCD2枚に収録し、ゴダールとミュジーの「ソニマージュ」を音だけで鑑賞できるアルバムである。同じくECMから2000年にリリースされたゴダール『映画史』のサウンドトラックCDもゴダール自身が手掛けた全8章に及ぶ『映画史』の音響トラックすべてをCD5枚に収録した豪華なボックスセットだった。
 近年では(映画全編ではないが)、〈Sub Rosa〉からリリースされたアピチャッポン・ウィーラセタクン監督のサウンドトラック『Metaphors』もアピチャッポンの映画に用いられた音響と音楽が収録され、さながら映画の音を用いたアピチャッポンのインスタレーション作品のようなアルバムに仕上がっていた。ありがたいことに日本盤が〈HEADZ〉からリリースされている。

 ここで紹介するアーロン・カップルズによる『Island of the Hungry Ghosts (OST)』もまたこれら映画音響作品と同様にガブリエル・ブレイディー監督による同名ドキュメンタリー映画作品の音響的サウンドトラック・アルバムである。環境音と音楽の境界線を無化させるようなトラックを収録しているのだ。このアルバムを聴くことで「イメージを持たない映画」が、われわれ聴き手のなかに生成されていくことになる。
 映画『Island of the Hungry Ghosts』はオーストラリアのクリスマス島のセラピスト、ポーリンリーが、島にある亡命者収容所に収容されている亡命希望者たちと会話し、その活動を支援していくさまに加えて、島の自然や儀式も同時に写し取っていくというドキュメンタリー映画である。レーベルは同作を「自然界、人間界、精神界の間を移動するハイブリッド・ドキュメンタリー」と表現している。
 映画『Island of the Hungry Ghosts』は、2018年にトライベッカ映画祭で初公開され、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞するなどの高評価を得た。アーロンによるサウンドトラックも「超自然的なオーラ」「異世界的で実験的な」と高く評価され、英国のインディペンデント映画賞で「ベスト・ミュージック」にノミネートされた。

 映画『Island of the Hungry Ghosts』のサウンドトラックはガブリエル監督とアーロンによって「島」自体を主人公として音響化していくコンセプトで設計された。まずアーロンたちは13フィートに及ぶ自作の弦楽器を自作し、それが発するワイヤー・ドローンと、フィールド・レコーディングされた環境音によって、音とノイズの境界線を溶かすようなサウンドを生み出した。
 ちなみにフィールド・レコーディングを手掛けているのはサウンド・デザイナーのレオ・ドルガンだ(彼は本作におけるアーロンの共作者に近い存在である)。レオ・ドルガンの仕事は完璧に近く、島の自然が発する音を見事に捉え、さながら森林の交響楽のような音を実現している。あのフランシスコ・ロペス的なフィールド・レコーディングのハードコアとでもいうべき録音だ。
 環境音とドローンの豊穣かつ深遠な交錯。『Island of the Hungry Ghosts (OST)』のサウンドにはそのようなミュージック/ノイズの領域が越境していくような感覚が横溢している。その意味では坂本龍一の名作『async』(2017)に近い作品かもしれない。『async』はサウンドトラックではないが、音(ノイズ)と音楽が交錯し、存在しない「映画」の「音響」のようなアルバムであった。

 『Island of the Hungry Ghosts (OST)』のノイズや環境音もまた同様である。ここでは環境音が音楽の中に融解し、音楽が環境音の中に溶け合っている。アルバム冒頭の1曲目 “Night” では島の自然が奏でる(発する)環境音のシンフォニーのような音響が、まるでオーケストラのアダージョのようにしっとりと鳴り響く。続く2曲目 “The Understorey” でやわらかいワイヤー・ドローンがレイヤーされ、環境音と持続が互いにゆっくりと浸透する。私見ではこの1曲目と2曲目に「間」に起きる変化こそが、『Island of the Hungry Ghosts』特有の「音の霊性」のようなものを象徴する瞬間ではないかと思う。
 3曲目 “Blowholes” では雨や波の音のような音が鳴り、対して4曲目 “The Long Walk” では世界から不意に解離した人の心の中のようなワイヤー・ドローンが鳴る。静謐な持続音がまるでオーケストレーションされるように音量を増していくだろう。このコンポジションはアーロンの作曲家としての力量を示しているように感じられた。音が浮遊するような緊張感に満ちている。
 5曲目 “Trapped Air” では儀式の始まりを告げるような鐘の音を収録している。その背後には透明な音の霧のように鳴っていることにも注意したい。6曲目 “The Hungry Ghost” では微細な鐘と響くような鐘の音が折り重なり、儀式それじたいの音響のように音響空間を支配する。アルバムのクライマックスのひとつともいえよう(アナログ盤ではここでA面が終わる)。
 7曲目 “Fire & Jungle” では文字通り火を燃やす音から始まり、島の森林に鳴る大自然の音(虫の音の大合唱!)へと変化を遂げていく。8曲目 “The Protester” ではその森林の音響が次第に消え、再びやわらかな絹のようなドローンが生成する。
 9曲目 “Ocean & Prayers” では海の音(波)が鳴り、やがて人の声(祈りか朗読のような)へと変化する。そしてアルバム最終曲10曲目 “Sand Return” ではドローンの折り重なりからオーケストラの序曲のような音の積み重ねを聴かせることで、アルバムは終わりを告げる。

 『Island of the Hungry Ghosts (OST)』の全10曲を通して聴くと、ノイズとドローンの反復によって、映画の重要なテーマである「セラピー」と「儀式」の問題を音から浮かび上がらせてくれるかのようだ。まるで心身に浸透する「儀式的音響」のようにも聴こえてくるのである。
 映像から音響へ。音響から環境へ。環境から身体へ。そして身体から心理へ。心身に「効く」音の織物がここにある。そう、『Island of the Hungry Ghosts (OST)』は、稀有な音響設計を誇るサウンドトラックであり、繊細にして豊穣な音響空間を誇る見事な音響作品なのである。

Godspeed You! Black Emperor - ele-king

 巷には、ゴッドスピード・ユー!ブラックエンペラー(GY!BE)はもう必要ないんじゃないかという言い方がある。90年代末に登場したモントリオールのボヘミアンたちのコミュニティから生まれたこのバンドは、『F♯ A♯ ∞ 』(1997)というその10年においてもっとも重要なロック・アルバムと言われている、世界の崩壊を憎しみと悲しみをもって表現した素晴らしく絶望的なその作品によって我々の前に現れた。政府の腐敗、貧困、悲しみ、刑務所、おそろしく暗い未来──、アルバムには押しつぶされた1ペンスが封入されていた。それから彼らは「Slow Riot For New Zero Kanada E.P.」(1999)の裏ジャケで火焔瓶の作り方を解説し、『Yanqui U.X.O.』(2002)のライナーにおいてはエンターテイメント産業と軍需産業との癒着について実名をもって暴き、新自由主義に支配されたディストピアを描写した。こうした彼らの、これまで執拗に訴え、批判し続けた世界は、今日では誰の目にも明かなものとなっている。ゆえにGY!BEは要らないというある種の皮肉だ。

 まあ、それはさておき、CRASSがそうであったように、GY!BEのような政治的なバンドは、評価され、有名になればなるほど際どいところに追い込まれたりもする。CRASSはまあ、極めてアンダーグラウンドな活動だったがゆえにポップ・カルチャーとはそこそこ距離があったけれど、GY!BEのようにその作品の魅力によって世界中に多くのファンを増やし、あるいは『'Allelujah! Don't Bend Ascend』によって、カナダではそれなりに栄誉ある、200人以上のジャーナリストや関係者の投票で決まるベスト・アルバム賞まで獲ってしまうと、世間はざわついてくるものだ。もっともGY!BEは授賞式には姿を見せず、賞金のすべてを刑務所での楽器代と音楽教育のために寄付したが、かつてアーケイド・ファイヤーやファイストも受賞したその賞に選ばれるほどに、GY!BEとは大きな存在であることを世間に知らしめもした。

 だからといってこのバンドは彼らの信念を曲げはしなかったし、日本を除く先進国では、音楽メディアはもちろんのこと文化を扱う有力新聞のほぼすべてが本作を取り上げているように、むしろポップ・カルチャーに混じってこそ彼らの思想と活動は世界中に伝達されたと言えよう。GY!BEは、作風が明るくなったと言われた前作『Luciferian Towers』(2017)では「医療、住居、食料、水の確保を人権として認めること」「侵略の禁止」「国境の廃止」「産獄複合体の完全解体」などを政府に要求し、そして本作『G_d's Pee AT STATE'S END!(国家の終わりにおける神の小便!)』においても「あらゆる形態の帝国主義の廃止」「刑務所の廃止」「富裕層へのそれがなくなるまでの課税」「警察権力の撲滅」などを要求している(これらのマニフェストは彼らのレコードのインナーないしはbandcampの解説欄で確認できる)。

 さて、その1曲目、7枚目のアルバムの冒頭を彼らは大胆不敵なことに、軍が機密使用する周波数を盗み取り、それらのコラージュからはじめている。タイトルに記されている周波数はそのことで、サブタイトルの“Five Eyes All Blind”にある「ファイヴ・アイズ」とは河野太郎が日本の加入を夢見ている、米、英、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド5カ国による機密情報の共有同盟のことだ。なんとも不吉なサウンド・コラージュのなか、闘いの狼煙を上げるかのようなジミ・ヘンドリックスめいたギターがうなりをあげる。そして激しく高揚していく“Job’s Lament”へと繫がっていく。

 おそらくは真性のアナキスト集団であろう彼らはいわゆるリーダー/中心人物を持たない。シンガーも擁さず、政治的なスローガンをがなりたてることもなければ、「ああしろ」「こうしろ」といった強制的なメッセージの発し方もしない。基本的にスローテンポのインストゥルメンタル主体の音楽で、CRASSというよりもシガー・ロスに近い。たとえばGY!BEには、『Lift Your Skinny Fists Like Antennas To Heaven』(2000)、つまり「あなたのか細い拳をあげよ、天国へのアンテナのごとく」というタイトルの作品がある。この絶妙な言い回しが暗示するように、闇雲に暴動を煽ったりはしないが気持ちを高揚させ、駆り立てはする。GY!BEはあたかも、この世界に見切りをつけた人たちが、ではそこから何が引き出せるのかという試みのひとつに思える。そして彼らがいくら憎しみや悲しみを主題にしようとその楽曲は美しいのだ。

 美しさは、GY!BEの場合は共鳴から生まれる。複数の楽器が共鳴し合い、重なり合ったときに高揚感がもたらされる。本作は、曲調やその構成もふくめ、いかにもGY!BEな作品で、長年彼らの音楽と付き合ってきたぼくにはもう特別新鮮な気持ちにはならないのだけれど、GY!BEがこうしていまも同じように活動していること自体に勇気づけられるし、じっさいその音楽のなかにも年季の入った力強さを感じる。そして、最後の曲のタイトルに“我々の側は勝たなければならない”という熱い言葉があるように、『G_d's Pee AT STATE'S END!』はGY!BEに共鳴する人たちへの励ましであり、街を行進するための序曲でもあろう。ちなみに今回の彼らのマニフェストにはこんな言葉がある。「このレコードは終わりを待っている我々すべてについてであり、すべての政治が失敗に終わったいま、はじまりを待っている我々すべてについてである」

Meemo Comma - ele-king

 オトナになれ。そういう話だそうだ。ググってネタバレは調査済みだが、映画自体はまだ観ていない。列島が『シン・エヴァ』一色に染まってしまったかのように見えなくもなかったこの3月、遠く海を隔てたUKから「いや、やっぱTV版でしょ」と言わんばかりの挑発的なタイトルを持つアルバムが届けられた。送り主はミーモ・カンマ、本名ラーラ・リックス=マーティン。マイク・パラディナスのパートナーである。これまでに3枚のアルバムをリリース、パラディナスと組んだヘテロティックとしても2枚のアルバムを残している。
 じつは、彼女の影響力は大きい。紙エレ年末号をお持ちの方は、いま一度パラディナスのインタヴューを読み直してみてほしい。黒人たちのメンタル・ヘルスを支援するためのチャリティ・コンピ『Music In Support Of Black Mental Health』は彼女の発案によるものだ。「妻は僕の物事に対する考え方の多くを変えてくれた」「彼女が僕のポリティクスを変えた」と彼は述べている。ふたりの信頼関係は『ワイアー』の「目隠しジュークボックス」や『クワイータス』の相互インタヴュー記事からもうかがい知ることができよう。そんな彼女が日本のアニメ・ファンでもあったことは興味深い。

 タイトル・シークエンスの “Neon Genesis” ではジャングルのリズムが用いられているが、なるほど、その神秘的なヴォーカルの響かせ方は “残酷な天使のテーゼ” (の間奏)を想起させなくもない。この手法は、やはりジャングルの断片がねじこまれた “Tif’eret” やビートレスの “Ein Sof”、“Tzimtzum” といった多くの曲で導入されており、アルバム全体のムードを決定づけている。
 だが、じっさい『エヴァ』からインスパイアされたのはヴィジュアルのほうで、サウンドのレファランスは『攻殻』のサントラだそうだ。たしかに、これは鷺巣詩郎ではない。14歳のリックス=マーティンは初号機ではなく、殻を着たゴーストと出会ったのだ。レーベルの紹介文では「GHOST IN THE SHELL」と「S.A.C.」の両方が言及されている。つまり、親は川井憲次と菅野よう子のふたり、ということになる。ファースト・アルバムのタイトルも『Ghost On The Stairs』だった。そうとう好きなんだろう。
 架空のアニメ・サントラと謳われているとおり、ビートのある曲は戦闘や疾走のシーンを想起させる。“Unit Chai” で戯れる電子音なんかは、タチコマ的なメカがなにかをサーチしているかのようだ。逆にビートのない曲はグライム以降のウェイトレス感を漂わせ、廃墟や心理描写の場面を想像させる。もっともよくできたトラックは “Merkabah” だろう。くぐもったドラムの鳴りとフットワークばりに切り刻まれたヴォーカルの応酬が、生命力あふれるリズムを紡ぎだしている。

 本作のより大きなテーマはずばり、ユダヤ教だ。アダムとイヴ、使徒(天使)、生命の樹……『エヴァ』や『攻殻』、『ハガレン』などのアニメを享受する過程で彼女は、そこにみずからのルーツたるユダヤ教的・旧約聖書的なモティーフが登場することに惹きつけられる。アニメに限らず、多くのSFにはカバラ──ユダヤ教にもとづく神秘主義思想──が影を落としていると、リックス=マーティンは指摘する。たしかに終末論は定番ではあるが、「カバラにも美しくて、希望に満ちた考えがあってね」と彼女は補足する。たとえば、最初の人間には性別がなかった。本作はそのセックスレス/ジェンダレスな発想をSFと結びつけることで、「サイボーグ宣言」への回路を開いている──そんな深読みも可能かもしれない。
 ともあれ彼女がユダヤの思想やモティーフを強く意識するようになったきっかけは、子どもができたことだったという。リックス=マーティン自身はずっとユダヤ人として生きてきたわけだが、パートナーとのあいだに生まれた子たちはそうではない。だから彼らに、自分たちが深い文化的背景を持っていることを知ってほしかった。そのような話を彼女は上述のインタヴューで語っている。親の、心だ。このポジティヴな動機が一見ダークな本作に、ある種の陽気さをもたらしているのだろう。

 たしかにこのアルバムは暗い。けれども悲愴感をまき散らしてはいない。重苦しさとも無縁で、ユーモラスで、ときにコミカルでさえある。そもそも「Neon Genesis」と題したアルバムを『シン・エヴァ』公開のタイミングで発表すること自体、ちょっとしたいたずらのようなものだ(まあ、映画は何度も公開延期の憂き目を見ているので、意図したことではないんだろうけど)。対象との距離が、ここにはある。滅びゆく世界の主人公と同化し、おのれを憐れみながらカタルシスを調達する視聴者の姿は、ここにはない。ラーラ・リックス=マーティンは子を持つ親なのだ。オトナにならざるをえない。
 ならばこれはTV版よりむしろ、『シン・エヴァ』に接近した作品ではないか。いやいや、「オトナになれ」というメッセージはTV版のころからずっと変わっていない、そんな意見も耳に入ってきてはいる。TV版や旧劇が描いていたのは「オトナになる」ことではなく、「他者と出会う」ことだとぼくは解釈しているので、さて新劇がほんとうはどのような結末を迎えたのか、この目でたしかめたくなってきた。

Scotch Rolex - ele-king

 90年代シーフィール作品のリイシューがアナウンスされたばかりだけれど、10年代シーフィールのメンバーであるブライトンのシゲル・イシハラは、もともとノイズ・ミュージシャンであり、DJスコッチ・エッグの名ではチップチューンのアーティストとして知られている(『ゲーム音楽ディスクガイド』監修の hally 氏とも交流あり)。近年はワクワク・キングダムの一員としても活躍中だ。
 その彼がなんと、いまもっとも注目すべきウガンダのレーベル〈Nyege Nyege Tapes〉傘下の〈Hakuna Kulala〉から新作をリリースする(名義もスコッチ・ロレックスへと進化)。同作にはケニアのメタル・デュオ、デュマ2020年のベスト・アルバム30選出)のロード・スパイクハートも参加しているとのことで、これは聴き逃せない。超チェックです。

artist: Scotch Rolex
title: Tewari
label: Hakuna Kulala
release: April 30, 2021

tracklist:
01. UGA262000113 - Omuzira (feat. MC Yallah)
02. Success (feat. Lord Spikeheart)
03. Cheza (feat. Chrisman)
04. Nfulula Biswa (feat. Swordman Kitala)
05. Afro Samurai (feat. Don Zilla)
06. Tewari
07. Juice (feat. MC Yallah)
08. U.T.B. 88
09. Sniper (feat. Lord Spikeheart)
10. Wa kalebule
11. Lapis Lazuli (feat. Lord Spikeheart)

https://hakunakulala.bandcamp.com/album/tewari

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